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運用管理のベストプラクティス集 「ITIL」とは何か? ITmedia エンタープライズ編 西野弘・東郷茂明(プロシード) 初出:ITmedia エンタープライズ 編集:TechTarget ジャパン 発行:アイティメディア株式会社 Copyrightⓒ 2005 ITmedia, Inc. All Rights Reserved. [TechTarget ジャパン 電子ブックレット]

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運用管理のベストプラクティス集

「ITIL」とは何か? ITmedia エンタープライズ編

西野弘・東郷茂明(プロシード)

初出:ITmedia エンタープライズ

編集:TechTarget ジャパン

発行:アイティメディア株式会社

Copyrightⓒ 2005 ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

[TechTarget ジャパン 電子ブックレット]

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TechTarget ジャパン 電子ブックレット【運用管理のベストプラクティス集「ITIL」とは何か?】

Copyrightⓒ 2005 Hiroshi Nishino, Shigeaki Togoh / ITmedia,Inc.

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「ITIL」という用語が以前より広く知られるようになった。ITIL は、システムの運用管理を

見直すには格好のフレームワークといえる。ITIL の内容を見ていく前に、まずは ITIL の持

つ意義を知っておく必要がある

■ITIL は本来の IT 取得の意味を開かせる!

ITIL(Information Technology Infrastructure Library)の言葉が知られるようになって 2 年ほ

どになる。ITIL を検索エンジンの Google で検索すると、2002 年では 50 件程度の情報しかなかっ

たが、2005 年現在では 30 万件以上とうなぎ昇りにその情報は増えた。

簡単に ITIL を説明すると、現在世界でもっとも多くの行政・企業などで活用されている IT サービ

スを行うためのベストプラクティス集といえる(構成や内容については次回以降に詳しく説明する)。

1980 年代後半に英国政府の手で作成され、その後改定を繰り返し、欧米中心に IT サービスのた

めのフレームワークとして広く活用されている。「サービスデリバリ」と「サービスサポート」の大きく 2 つ

に分けており、下図のような 11 のフレームで構成されている。

図 1 サービスサポート全体関連図

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図 2 サービスデリバリ全体関連図

英国では既に BS15000規格として組織の認証が行われている。ISO 化についても現在検討が進

んでおり、来年には ISO20000 として世の中に出てくる予定である(詳しくは itSMF ジャパンのサイ

ト参照のこと。http://www.itsmf-japan.org/)。

ITIL という言葉や内容を知っている人間は、つい 近まで IT に関わる者の中でも少数にすぎな

いのが実情であった。日本の IT 事業者やユーザーの 大の欠落点は、技術の変化に追いつくこと

があたかも進化のように感じていた一方で、IT の取得をライフサイクルの視点で捉えて、適正化に

向けて何をすべきかという点に興味や行動を示してこなかったことである。そのため、IT の適正化の

ための標準化や仕組みを作ろうとしてこなかった傾向がある。

ここで指摘しているのは、1 つの会社の中でさえ事業部が異なるとそのやり方が違うというような、

組 織 的 な 標 準 化 と 実 践 が 行 わ れ て い な い 状 態 の こ と で あ る 。 あ な た の 企 業 で PDCA

(Plan-Do-Check-Act)サイクルを基盤にした、組織的な進化の仕組みと人財の育成が行われてい

るだろうか?

またライフサイクルの視点とは、企画から発注仕様書を作成し、システムの調達を行い、発注側も

受注側もそれぞれの視点でプロジェクトマネジメントを実施し、品質チェックを行ってから。実際の運

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用に入り、その運用を高度化して、いずれは廃棄かグレードアップをしていく一連のサイクルのこと

を指している。本来は、このサイクルを IT ベンダーも発注者と一緒になってきちんと推進すべきであ

るが、日本ではその多くは発注側が悪くいえば「丸投げ」をし、緊張感のない関係の中で一連の IT

取得行為を行ってきたのが現実ではないだろうか。

IT 業界の出身ではない筆者は、その構造にシンプルな疑問を持っている。発注仕様書なるものを

ベンダーがすべて書いていたり、これだけテクノロジーが進化しているにもかかわらず、技術を学ぶ

ことはできても発注仕様書の書き方の本もなければ、講座もないのが不思議でならない。

行政であろうが企業であろうが、PC やサーバ、ルータが欲しくて IT 投資を行う人はいない。IT を

活用して行政サービスや事業を行うために取得したいだけなのである。言い換えれば、IT サービス

を受けたいとうことである。つまり、IT サービスをどのように受けるかが 大のポイントとなる。

IT 業界の方に聞くと、ITIL が日本に本格的に入ってきて、保守運用の担当部門やそこで働く人

にはじめて「われわれに日が当たってきた」と聞くが、これは大変おかしな話だ。本来ユーザーが一

番求める、安定した品質の IT サービスにこれまで日が当たらないとはどのようなことであろうか?

先に書いたように技術の変化に日が当たり過ぎ、それを使いこなして IT システムを構築する点ばか

りに視点がいっていたせいであろう。

ITIL が日本に入ってきたことで、日本のユーザーと IT 事業者にとって、今後の IT 活用に大きな

変化をもたらす可能性があると感じている。ITIL が保守運用のマネジメントフレームであると紹介さ

れるが、まさに ITIL は本来の IT 取得の目的を達成するための重要なフレームワークの 1 つである

と認識している。

■保守運用での活用の仕方

IT サービスの大きな課題である保守運用の効率と品質を上げるために、ITIL にはいくつかの活

用の仕方がある。

(1)ITIL により、現在行っているオペレーションの状態の診断を行う。その状態を把握することで、

将来の改善の方向や優先順位をつけられる

(2)ITIL では IT システムに関わる利害関係者の共通の認識や知識を持つことになり、同じ土俵の

上で議論や行動を起こすことができる

(3)発注者側と SLA や SLM など今後重要な決め事や実際のマネジメントを実現させるための参照

となる

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(4)言い方は悪いが、保守運用の現場を担う人が間違った方法論を押し付けようとしたり、仕事を理

解していない発注者や上司から身を守り、無理・無駄な仕事そして無用な残業から開放される

上記のことができていくことが、 終的に保守運用の近代化へとつながるのではないだろうか。そ

してそれは、IT ガバナンスとビジネスガバナンスを結びつける、組織本来の IT の取得行為を本来

の形にしていくことになるのではないかと信じている。

IT サービス全体に関わる組織や人にとって、ITIL を活用することは救世主になりえる可能性を持

っているのは事実である。問題は、日本の組織が非常に優秀な現場の人々に支えられているため

に、属人的な勘と経験、度胸で進めてしまう傾向を変えて行くことである。

マネジメントフレームの導入はサーバを入れ替えるのとは大きく違う。組織にも個人にも多くの負荷

や時間・コストなどが必要であり、生半可なものではないこと再認識する必要がある。半年ぐらいの時

間軸で、到底すべてが導入できるわけではない。

何故このようなことをあえて指摘するかといえば、一部のソフトベンダーなどが自社の IT ツールさ

え導入すれば ITIL の実装が終わると吹聴し、導入を図る傾向があると聞いているからである。人間

の体質と同じで地道な努力が必要であり、そうしないと真の体質が進化するとは思えない。ITIL は

自らが現状を打破し表面的な変化ではなく、自らの努力で進化を求める組織や人にとっては力強

い見方になるはずだ。

■知らないと恥ずかしい、ITIL 超基礎

1980 年代後半、当時の英国政府機関が直面していたシステム運用の問題を解決するため、実際

の効果のあった IT 業務プロセスをフレームワークとしてまとめた書籍(ライブラリ)が ITIL

(Information Technology Infrastructure Library)である。当初は 40 冊程度の書籍としてまと

められていたが、現在では、次の 7 つの領域に体系化され、英国政府機関の OGC(Office of

Government Commerce:英国政府調達庁)がそれを所有している。日本語訳はユーザー組織と

なる itSMF Japan が担当している。

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図3 ITIL の概要

ITIL は、あくまで業界のベストプラクティスをまとめたものである。実際の運用をおこなうには、内

部のプロセスや運用の手順書、マニュアルなどが必要になる。組織の特性に応じて、採用する範囲

やレベル感を変える必要があるので、注意が必要となる。

■ ITIL を取り巻く環境

現在、ITIL を取り巻く環境は以下のようになっている。

図4 ITIL を取り巻く環境

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ITILの啓蒙促進を担っている団体が itSMFである。ユーザー会員向けの団体で、現在、世界27

カ国に支部が存在する。この日本支部となる itSMF Japan は、2003 年に設立され、会員同士によ

るベストプラクティスの研究、ホームページでの情報共有、啓蒙普及のイベント・セミナー、会報誌の

発行、ITIL 書籍の日本語訳などの活動を行っている。日本での ITIL の普及には、itSMF Japan

が非常に大きな役割を果たしてきた。

■IITL は国際規格にも

あまり知られていないが、ITIL は英国規格の BS15000 として規格化されている。IT サービスマネ

ジメントのプロセス、品質が組織に採用されているかを証明するもので、来年度には ISO20000 とし

て国際標準化される予定もある。日本でも既に BS15000 の認証を取得した企業が出始めている。

欧米では、政府の調達基準の 1 つとして扱われだし、システム運用のアウトソースを図る際の品質の

評価基準としても機能している。

BS15000 実際の認証は、itSMF の認定を受けた監査機関が実施する。認証取得流れは下記の

ようになる。

1.「理解」

まずは ITIL や BS15000 の内容などに関して理解する必要がある。書籍や研究会への参加、研

修・教育サービスの受講などの利用が考えられる。

2.「対象範囲の決定」

認証の対象となる範囲を決定する。組織全体を対象とするのか、特定のサービスを提供している部

門を対象とするのか、1 つのサービス提供拠点を対象とするのかなどを決定する。

3.「現状分析」

ITIL や BS15000 の診断項目に基づいた現状分析を行なう。これには、自己診断と現状分析(アセ

スメント)サービスの利用が考えられる。

4.「プロセス改善」

現状分析結果に基づき、BS15000 を取得するにあたって、不足があるプロセス、文書などを組織に

導入する。

5.「レビュー」

プロセス改善を行なった後、再度、診断項目に基づき、BS15000 の取得の準備が整っているか確

認する。

6.「監査」

監査機関の監査を受ける。

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7.「認証の取得」

BS15000 の場合も、ISO の場合も、定期的に監査を受けそれに合格することが必要だ。

図5 BS15000 を取り巻く環境

BS15000は、組織が ITサービスマネジメントを採用していることの証明になるが、認証を取得する

にあたってまず検討しなければならないのは、BS15000 が、逆に、サービスの品質を低下させ、非

効率化、コストの増大を生む結果となる可能性があることだ。

BS15000 は、IT サービスマネジメントの全プロセスを対象にしている。組織によっては、全プロセ

スの導入が逆に負荷になる場合もあるかもしれない。こうなっては本末転倒である。BS15000 認証

を取得する組織には、IT サービスの品質の向上、コストの削減、ビジネス目的への整合など、認証

に恥じない IT サービスの運営が求められる。

ITIL の導入と BS15000 の認証取得は、同一線上にある。認証を目指すなら先程の図 3 で示し

た「内部プロセス及び手順」を ITIL ベースで構築することが、効果的な実装の早道になるだろう。

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■個人資格もある

IT サービスマネジメントの ITIL がこれだけ世界に広まったのは、もちろん ITIL の内容が優れて

いることや前述の itSMF の活動によるものもあるが、もう 1 つ外せないものに個人資格の普及があ

る。

個人資格としては、以下の 3 種類がある(注:ほかに、BS15000 の資格としては、「itSMF コンサ

ルタント認定」と「itSMF 監査員認定」がある)。

・IT サービスマネジメント ファンデーション認定

・IT サービスマネジメント プラクティショナ認定

・IT サービスマネジメント マネージャ認定

これら資格試験は、英国政府機関 OGC に認定を受けた試験機関の管轄の下に行われている。

特にファンデーション認定は、業界の標準資格として、全世界で受け入れられている。資格取得者

は、全世界で 15 万人を超えるといわれ、2004 年度だけでも 6 万人をこえる資格取得者がいる(注:

アジア、米国での資格取得者の伸びが著しく、毎年、前年の倍の伸びをみせている。2004 年度の

米国での資格取得者は約 1 万 8000 名、国内では現在、7000 名の資格取得者がいるとされる)。

既に欧米では、システム運用に携わる人間の常識となっており、新入社員の研修や採用の際の要

求事項として扱われている。日本でも、幾つかの教育機関で研修や試験の実施を行っている。

■ユーザー企業とベンダー企業の状況

ITILや ITサービスマネジメントを導入したという話しをよく聞くようになってきたが、前回述べたよう

に、マネジメントシステムの導入というのはそれほど簡単なものではない。

マネジメントシステムの導入は、組織の体質改善でもある。 低でも 1年、2年の運用、継続的なプ

ロセス、品質の改善があって、はじめて導入が成功したといえるだろう。例えば、ITIL の導入に携わ

ったチームやプロジェクトマネジャーが去ったあとに、プロセスや日々の運用の水準が低下しては意

味がないのである。

そういった意味では、一部の外資系企業を除いて、国内における ITIL の導入・採用はまだ始まっ

たばかりであるといえる。実際に導入を始めた企業でも、ITIL のフレームワークで、既存の運用を照

らし合わせてみただけの段階が多く、日本のユーザー企業への普及はまだこれからだ。

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既に欧米では、品質改善、コスト削減、ビジネスの目的に沿ったシステム運用の実現という点で、

ITIL は実際に効果を発揮している。今後、システム運用のデファクトスタンダードになることは確か

であろう。

ベンダー企業は、さまざまな ITIL サービスを提供している。実際、2004 年より、IT サービスマネ

ジメント・ITIL の方法論を提供するベンダーは急速に増えている。主なサービスには次のようなもの

がある。

(1)教育、研修事業

主に、ITIL 資格対象研修(ファンデーション認定、マネジャー認定)。ITIL の内容を学ぶ、理解す

るためのもの。

(2)コンサルティング事業(現状分析、改善、導入支援)

組織に ITIL のフレームワークを導入するためのサービス。システム運用のプロセスを改善するため

のもの。

(3)ツール導入事業

ITIL の実装、運用を手助けするためのツールの導入。サービスデスクの運用支援、構成管理デー

タベース(CMDB)の運用、サービスレベル管理の支援など。

(4)アウトソース事業

顧客のシステムを預かって運用する際に、ITIL に即した運用を行い、顧客に対して品質の向上とコ

ストの削減を提案する。現状の運用の問題の課題解決を図る。

(5)認証(BS15000)事業

BS15000 を取得することにより、IT サービスマネジメントのプロセスを採用した運用を証明する。コ

ンサルタント、監査員向けの資格対象研修もある。

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図6 IT サービスマネジメント導入の例

IT サービスマネジメントや ITIL が、ここまで広がったのには、さまざまな理由が考えられる。「経

営・ユーザー部門から見て、IT 部門がブラックボックス化されており、何をやっているのか分からな

い」「運用のプロセスが属人的である」「運用業務、トラブル対応の優先順位が明確でない」「現場の

残業が多い」――などである。

1 つ確かなことは、ITIL の採用がそれを解決する一助になるという点である。ITIL の重要な効果

の 1 つに「明確化」というものが挙げられる。「IT 部門と経営・ユーザー部門との間での SLA」「ユー

ザー企業とベンダー企業との間での共通言語の利用」「ワールドワイドにおける標準の採用」――こ

れらはいずれも IT の運用を明確化する。

ITIL は今後も日本でさらに急速に広がりを見せると思われる。競争力強化のため、IT 部門の業

務内容の明確化のため、ぜひ採用を検討する必要があるだろう。