鉱山水系を対象にした 河川水質予測シミュレーショ...

30
鉱山水系を対象にした 河川水質予測シミュレーション JOGMEC共同研究) 独立行政法人 産業技術総合研究所 安全科学研究部門 石川 百合子 1 平成25年度第一回鉱害環境情報交換会 ~テーマ:坑廃水処理の効率化に向けて~ 2013.7.3

Upload: others

Post on 04-Apr-2020

0 views

Category:

Documents


0 download

TRANSCRIPT

Page 1: 鉱山水系を対象にした 河川水質予測シミュレーショ …鉱山水系を対象にした 河川水質予測シミュレーション (JOGMEC共同研究) 独立行政法人

鉱山水系を対象にした

河川水質予測シミュレーション (JOGMEC共同研究)

独立行政法人 産業技術総合研究所

安全科学研究部門

石川 百合子

1

平成25年度第一回鉱害環境情報交換会

~テーマ:坑廃水処理の効率化に向けて~

2013.7.3

Page 2: 鉱山水系を対象にした 河川水質予測シミュレーショ …鉱山水系を対象にした 河川水質予測シミュレーション (JOGMEC共同研究) 独立行政法人

本日の発表内容

1.鉱山水系におけるシミュレーション

モデルの必要性

2.MS鉱山を対象とした重金属の

河川水質予測シミュレーション

3.今後の課題

2

Page 3: 鉱山水系を対象にした 河川水質予測シミュレーショ …鉱山水系を対象にした 河川水質予測シミュレーション (JOGMEC共同研究) 独立行政法人

1.鉱山水系におけるシミュレーション モデルの必要性

国内の休廃止鉱山では、坑廃水を未処理のままで河川等へ放流すると、下流の公共水域において人の健康や農産物等に被害を与える恐れがある。 現在、地方公共団体等が中和処理等の鉱害防止事業を実施しているが、中長期にわたる国民経済負担の軽減という観点から、リスク評価を踏まえた処理コスト削減に向けた取り組みが重要な課題となっている。 処理の効率化の観点において、例えば、坑廃水の一部を未処理で放流した場合に予測される下流河川水質への影響を検討し、処理コストと環境リスクを正しく評価する必要がある。 過去に定量化されたデータがないことから、現状の坑廃水情報を整理したうえで、河川水質予測シミュレーション等をツールとした定量的なリスクを評価することが望まれている。

3

Page 4: 鉱山水系を対象にした 河川水質予測シミュレーショ …鉱山水系を対象にした 河川水質予測シミュレーション (JOGMEC共同研究) 独立行政法人

最も簡単な単純希釈モデル

さらに、排出後の移流拡散、吸着、沈降、再浮上などを考慮する必要がある。

4

水中の物質濃度(M/L3)= 単位時間当たりの物質量(M/T)

単位時間当たりの水量(L3/T)

排出量

河川の流量

河川水濃度

一般的な河川水質評価モデル

Page 5: 鉱山水系を対象にした 河川水質予測シミュレーショ …鉱山水系を対象にした 河川水質予測シミュレーション (JOGMEC共同研究) 独立行政法人

リスク評価・対策評価のためのモデル

日本の国土は狭く、山地が多いため、急勾配の河川が多い。また、台風や梅雨、降雪や融雪により、流量の時空間変動が大きい。

河川水濃度は流量に依存するため、流量も推定する必要がある(国土交通省の流量観測は地点数が限られており、流量分布を把握することができない)。

2001年当時、日本の河川流域を対象とした化学物質のリスク評価のためのモデルがなかったため、産総研-水系暴露解析モデル AIST-SHANEL(national institute of Advanced Industrial Science and Technology-Standardized Hydrology-based

AssessmeNt tool for chemical Exposure Load) の開発に着手し、

公開を行ってきた。http://www.aist-riss.jp/projects/AIST-SHANEL/

5

Page 6: 鉱山水系を対象にした 河川水質予測シミュレーショ …鉱山水系を対象にした 河川水質予測シミュレーション (JOGMEC共同研究) 独立行政法人

AIST-SHANELの計算のながれ

6

対象水系の流域情報

流量解析

濃度解析

人口

排出量推計

1kmメッシュ月平均河川水中の溶存態・懸濁態***濃度

河川底泥濃度

地先からの排出量下水処理場からの排出量

1kmメッシュ月平均流量

標高 土地利用 工業統計 下水道普及率

気象(降水量、気温など)

排出量(PRTRなど)

物性(半減期など)

下水処理除去率

ユーザー入力 出力結果内蔵データ

大気沈着量*(湿性・乾性)

バックグラウンド濃度**

Page 7: 鉱山水系を対象にした 河川水質予測シミュレーショ …鉱山水系を対象にした 河川水質予測シミュレーション (JOGMEC共同研究) 独立行政法人

線形貯留モデル 土壌の深い部分

復帰量

貯留

中間流出

地下浸透量

地下浸透量 蒸発散量

線形貯留モデル 土壌の深い部分

復帰量

貯留

中間流出

地下浸透量

地下浸透量 蒸発散量

鉛直方向: 線形貯留モデル

復帰量

復帰量

地下浸透量

地下浸透量

蒸発散量

中間流出

流量解析

7

地下浸透量

地表面

表面流出

中間流出

水深

降水量蒸発散量

復帰量

kinematic wave法

地下浸透量

地表面

表面流出

中間流出

水深

降水量蒸発散量

復帰量

kinematic wave法

地下浸透量

地表面

表面流出

中間流出

水深

降水量蒸発散量

復帰量

kinematic wave法

降水量 蒸発散量

地下浸透量 復帰量

地表面: Kinematic wave法

表面流出

中間流出

地表面と深部に分けた流出解析 表面流出量と中間流出量を推定

Page 8: 鉱山水系を対象にした 河川水質予測シミュレーショ …鉱山水系を対象にした 河川水質予測シミュレーション (JOGMEC共同研究) 独立行政法人

地表面 河川

大 気

土壌

A層土壌

B層土壌

C層

気相 液相 固相

土壌

D層

河川水

河川底泥液相

河川底泥固相

移流:流域(土壌A~C層)

移流:流域内水路(堆積掃流過程)

移流:流域網(土壌D層、河川水)

拡散:分子拡散

拡散:物質移動

懸濁態SS

沈降

再浮上

排出負荷:地先排出(農薬)

排出負荷:地先排出(点源排出起因)

排出負荷:下水処理場排出

取水

湿性沈着

乾性沈着

揮発

微生物分解8

1kmメッシュを大気、土壌、河川、河川底泥の媒体に分割

媒体間の移動、移流拡散、生分解、SSとの吸脱着、沈降・再浮上などを考慮

1km

濃度解析

Page 9: 鉱山水系を対象にした 河川水質予測シミュレーショ …鉱山水系を対象にした 河川水質予測シミュレーション (JOGMEC共同研究) 独立行政法人

0 10km

(mg/m3)

32.0024.0016.00 8.00 4.00 0.10 0.01

0.0

5.0

10.0

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12

濃度(μ g/L)

河川縦断変化

経月変化

濃度分布図

高濃度が出現する地域や時期を推定 排出量や流量の観点から河川水濃度を検討

⇒対策評価が可能

AIST-SHANELのアウトプット

全国1級109水系

Page 10: 鉱山水系を対象にした 河川水質予測シミュレーショ …鉱山水系を対象にした 河川水質予測シミュレーション (JOGMEC共同研究) 独立行政法人

2.MS鉱山を対象とした重金属の 河川水質予測シミュレーション

平成24年度休廃止鉱山鉱害防止技術等調査研究事業のJOGMECとAISTの共同研究「河川水質シミュレーションモデルによる水質予測に関する研究」において、

AIST-SHANELをMS鉱山水系に適用

① 現況解析:鉱山下流地点での河川水質を再現

② 将来解析:坑廃水を未処理で放流した場合の

下流河川水質の予測

10

Page 11: 鉱山水系を対象にした 河川水質予測シミュレーショ …鉱山水系を対象にした 河川水質予測シミュレーション (JOGMEC共同研究) 独立行政法人

休廃止鉱山鉱害防止等調査研究事業の水系調査地点

Y河川

O河川

第一利水点(Y河川)やO河川流末等での

影響評価

①現況の坑廃水処理水と

②坑廃水処理をしない

場合の水量・水質を入力

Page 12: 鉱山水系を対象にした 河川水質予測シミュレーショ …鉱山水系を対象にした 河川水質予測シミュレーション (JOGMEC共同研究) 独立行政法人

モデルの改良点(1) 時空間分解能の詳細化

空間分解能 : 250m

(独)国立環境研究所の250mメッシュ単位の落水線データ(世界流域データベース、Global Drainage

Basin Database:GDBD)を利用

時間分解能 : 1日

豊水期、渇水期、融雪期の濃度を推定するため、日単位の非定常解析を実施

12

Page 13: 鉱山水系を対象にした 河川水質予測シミュレーショ …鉱山水系を対象にした 河川水質予測シミュレーション (JOGMEC共同研究) 独立行政法人

モデルの改良点(2) 重金属の濃度解析

溶存態、懸濁態別の濃度推定 溶存態、懸濁態間の相互作用はなし 懸濁態は河川水から河川底泥への沈降、河川底泥から河川水への再浮上を考慮

13

河川水

沈降 再浮上

河川底泥

懸濁態

排出負荷 取水流達負荷

溶存態

固相:底泥層

Page 14: 鉱山水系を対象にした 河川水質予測シミュレーショ …鉱山水系を対象にした 河川水質予測シミュレーション (JOGMEC共同研究) 独立行政法人

14

下流端

21:M湧水、J湧水の発生地点

14:処理水の放流地点 27 28

30

32

33:第一利水点

対象水系の250mメッシュデータと評価地点

MS鉱山およびY河川

流域を包含するように

緯度・経度を指定し、

第一利水点の下流地

点を下流端境界として

対象水系を抽出

12:O河川上流

29:O河川流末

23

Page 15: 鉱山水系を対象にした 河川水質予測シミュレーショ …鉱山水系を対象にした 河川水質予測シミュレーション (JOGMEC共同研究) 独立行政法人

解析に使用したデータ

気象: MS鉱山水系に関係する2か所の気象官署のデータ 降水量と気温は標高に基づく高度補正を実施

排出源(坑廃水処理施設)に係る流量および水質:

JOGMEC調査結果に基づく処理水、M湧水、J湧水の平成23年11月と12月の平均値 (定常排出を仮定) バックグラウンド濃度:

JOGMEC調査結果に基づくO河川上流の濃度 河川流量および水質の検証:

第一利水点までの平成23年11月,12月,平成24年5月のJOGMEC調査結果

15

Page 16: 鉱山水系を対象にした 河川水質予測シミュレーショ …鉱山水系を対象にした 河川水質予測シミュレーション (JOGMEC共同研究) 独立行政法人

シミュレーションの検討条件

対象物質: 鉄(Fe)、銅(Cu)、鉛(Pb)、亜鉛(Zn)、砒素(As)、カドミウム(Cd)、アルミニウム(Al)

対象期間: 平成23年9月1日~平成24年8月31日

溶存態比率:

平成24年10月のJOGMEC調査(物質別の溶存態、懸濁態濃度の調査)結果に基づいて設定

16

Page 17: 鉱山水系を対象にした 河川水質予測シミュレーショ …鉱山水系を対象にした 河川水質予測シミュレーション (JOGMEC共同研究) 独立行政法人

モデルの検証:蒸発散量と積雪融雪量

蒸発散量 年間の蒸発散量は500~800mm/年と推定

近藤らの研究成果と整合していることから、蒸発散量の

推定は妥当と判断

文献)近藤純正・渡辺力・中園信:本各地の森林蒸発散量の熱収支的評価,

天気39(11),pp.685-695,1992.

積雪融雪量 最も近い地方気象台地点における積雪深の推定値と

観測値とを比較した結果、両者は良好な一致を示した

ことから、積雪融雪量の推定は妥当と判断

対象流域内でMS鉱山地点の最大積雪深は約1mと推定

ヒアリング結果と整合していたため、積雪融雪量の推定は

妥当であると判断 17

Page 18: 鉱山水系を対象にした 河川水質予測シミュレーショ …鉱山水系を対象にした 河川水質予測シミュレーション (JOGMEC共同研究) 独立行政法人

モデルの検証:河川流量

流量の推定値と観測値はおおむね整合しており、流れ解析モデルは妥当であると判断

18

0.001

0.01

0.1

1

10

100

11/09

11/10

11/11

11/12

12/01

12/02

12/03

12/04

12/05

12/06

12/07

12/08

流量 m3/s

0

36

72

108

144

180

降水量 mm/d

Pr(K)mm/d

MS-21(推定値)

MS-21(観測値)

0.001

0.01

0.1

1

10

100

11/09

11/10

11/11

11/12

12/01

12/02

12/03

12/04

12/05

12/06

12/07

12/08

流量 m3/s

0

36

72

108

144

180

降水量 mm/d

Pr(K)mm/d

MS-29(推定値)

MS-29(観測値)

0.001

0.01

0.1

1

10

100

11/09

11/10

11/11

11/12

12/01

12/02

12/03

12/04

12/05

12/06

12/07

12/08

流量 m3/s

0

36

72

108

144

180

降水量 mm/d

Pr(K)mm/d

MS-33(推定値)

MS-33(観測値)

MS-29: O河川流末

MS-33: 第一利水点

MS-21: R沢との合流前の

O河川

Page 19: 鉱山水系を対象にした 河川水質予測シミュレーショ …鉱山水系を対象にした 河川水質予測シミュレーション (JOGMEC共同研究) 独立行政法人

モデルの検証:河川水濃度(1)

鉄(Fe): 流量の変動に伴う懸濁態濃度の変化あり

19

0.0

0.2

0.4

0.6

0.8

1.0

11/09

11/10

11/11

11/12

12/01

12/02

12/03

12/04

12/05

12/06

12/07

12/08

河川水濃度 mg/l

0

20

40

60

80

100

流量 m3/s MS-29(P推定値)

MS-29(D推定値)

MS-29(流量)

MS-29(観測値)

MS-29(T推定値)

0.0

0.2

0.4

0.6

0.8

1.0

11/09

11/10

11/11

11/12

12/01

12/02

12/03

12/04

12/05

12/06

12/07

12/08

河川水濃度 mg/l

0

20

40

60

80

100

流量 m3/s MS-33(P推定値)

MS-33(D推定値)

MS-33(流量)

MS-33(観測値)

MS-33(T推定値)

MS-29: O河川流末

MS-33: 第一利水点

Page 20: 鉱山水系を対象にした 河川水質予測シミュレーショ …鉱山水系を対象にした 河川水質予測シミュレーション (JOGMEC共同研究) 独立行政法人

モデルの検証:河川水濃度(2)

鉛(Pb): ほとんどがバックグラウンド濃度の範囲内

亜鉛(Zn)、銅(Cu)、カドミウム(Cd)も同様

0.000

0.003

0.006

0.009

0.012

0.015

11/09

11/10

11/11

11/12

12/01

12/02

12/03

12/04

12/05

12/06

12/07

12/08

河川水濃度 mg/l

0

20

40

60

80

100

流量 m3/s

MS-33(P推定値)

MS-33(D推定値)

MS-33(流量)

環境基準値

MS-33(観測値)

MS-33(T推定値)

20

MS-29: O河川流末

0.000

0.003

0.006

0.009

0.012

0.01511/09

11/10

11/11

11/12

12/01

12/02

12/03

12/04

12/05

12/06

12/07

12/08

河川水濃度 mg/l

0

20

40

60

80

100

流量 m3/s

MS-29(P推定値)

MS-29(D推定値)

MS-29(流量)

環境基準値

MS-29(観測値)

MS-29(T推定値)

MS-33: 第一利水点

Page 21: 鉱山水系を対象にした 河川水質予測シミュレーショ …鉱山水系を対象にした 河川水質予測シミュレーション (JOGMEC共同研究) 独立行政法人

モデルの検証:河川水濃度(3)

砒素(As):検出限界で一定

アルミニウム(Al)も同様

21

0.000

0.003

0.006

0.009

0.012

0.01511/09

11/10

11/11

11/12

12/01

12/02

12/03

12/04

12/05

12/06

12/07

12/08

河川水濃度 mg/l

0

20

40

60

80

100

流量 m3/s

MS-29(P推定値)

MS-29(D推定値)

MS-29(流量)

環境基準値

MS-29(観測値)

MS-29(T推定値)

0.000

0.003

0.006

0.009

0.012

0.015

11/09

11/10

11/11

11/12

12/01

12/02

12/03

12/04

12/05

12/06

12/07

12/08

河川水濃度 mg/l

0

20

40

60

80

100

流量 m3/s

MS-33(P推定値)

MS-33(D推定値)

MS-33(流量)

環境基準値

MS-33(観測値)

MS-33(T推定値)

MS-29: O河川流末

MS-33: 第一利水点

Page 22: 鉱山水系を対象にした 河川水質予測シミュレーショ …鉱山水系を対象にした 河川水質予測シミュレーション (JOGMEC共同研究) 独立行政法人

モデルの検証:まとめ

蒸発散量、積雪融雪量、河川流量に関しては、妥当と判断

河川水濃度に関しては、地点や物質でばらつきはあるが、推定値は観測値に対して1オーダー以内の精度であり、概ね妥当と判断

単純希釈予測よりも、AIST-SHANELによる水質予測の方が、実測値に近く、信頼性が高いことを確認した。上流よりも中流~下流の方が精度が高かった。

ほとんどの物質や地点で、バックグラウンド濃度の影響大

⇒推定精度はバックグラウンド濃度の面的分布に依存

22

Page 23: 鉱山水系を対象にした 河川水質予測シミュレーショ …鉱山水系を対象にした 河川水質予測シミュレーション (JOGMEC共同研究) 独立行政法人

坑廃水処理効果の評価

現況解析と将来解析の結果の比較検討

将来解析として、すべての水処理を中止し、M湧水とJ湧水は上流側にポンプ圧送されずに地先放流が行われると仮定したときの河川水濃度を推定

現況解析と将来解析の坑廃水量の設定 単位:m3/min

23

地点

現況解析

(処理あり) 将来解析

(処理なし)

処理原水

(M湧水、J湧水除く)

0.0320

処理水(放流水) 0.0555

M湧水 0.0180

J湧水 0.0055

Page 24: 鉱山水系を対象にした 河川水質予測シミュレーショ …鉱山水系を対象にした 河川水質予測シミュレーション (JOGMEC共同研究) 独立行政法人

坑廃水処理効果の評価結果:流量

流量の変化は、処理水と処理原水の放流地点以外、ほとんどなし

24

0

36

72

108

144

1800.001

0.01

0.1

1

10

100

11/09

11/10

11/11

11/12

12/01

12/02

12/03

12/04

12/05

12/06

12/07

12/08

降水量

mm

/d

流量

m3/s Pr(K)mm/d

将来

現況

0

36

72

108

144

1800.001

0.01

0.1

1

10

100

11/0

9

11/1

0

11/1

1

11/1

2

12/0

1

12/0

2

12/0

3

12/0

4

12/05

12/0

6

12/0

7

12/0

8

降水量

mm

/d

流量

m3/

s Pr(K)mm/d

将来

現況

MS-29:O河川流末

MS-33:第一利水点(環境基準点)

Page 25: 鉱山水系を対象にした 河川水質予測シミュレーショ …鉱山水系を対象にした 河川水質予測シミュレーション (JOGMEC共同研究) 独立行政法人

坑廃水処理効果の評価結果:河川水濃度(1) Fe濃度:O河川流末では、流量の多い時期は数倍、流量の少ない時期は1桁高くなる傾向が見られた。

25

MS-29:O河川流末

MS-33:第一利水点(環境基準点)

Page 26: 鉱山水系を対象にした 河川水質予測シミュレーショ …鉱山水系を対象にした 河川水質予測シミュレーション (JOGMEC共同研究) 独立行政法人

坑廃水処理効果の評価結果:河川水濃度(2)

26 MS-33:第一利水点(環境基準点)

MS-29:O河川流末

Pb濃度:O河川流末では、流量の少ない時期に1桁高くなり、環境基準を超過する様子も見られた。

Page 27: 鉱山水系を対象にした 河川水質予測シミュレーショ …鉱山水系を対象にした 河川水質予測シミュレーション (JOGMEC共同研究) 独立行政法人

坑廃水処理効果の評価:まとめ

坑廃水処理を中止したとき、どの物質も、O河川流末までは影響が及ぶと推定された。

特に、1~3月の積雪時の河川流量が少なくなる時期に、濃度が1桁程度高くなるため、坑廃水が希釈されないことによる影響が大きいことが示唆された。

Y河川の第一利水点(環境基準点)では、影響はほとんど見られないことが推定された。

本研究により、バックグラウンドを考慮した坑廃水処理水の下流河川への時空間的な影響評価や、坑廃水処理対策の定量的なリスク評価に本モデルが有用であることを示した。

27

Page 28: 鉱山水系を対象にした 河川水質予測シミュレーショ …鉱山水系を対象にした 河川水質予測シミュレーション (JOGMEC共同研究) 独立行政法人

3.今後の課題(1)

より正確な落水線の設定

問題点として、最上流の流域面積の不確かさや伏流水の影響が挙げられる。

溶存態と懸濁態の比率の変化や化学反応を考慮したシミュレーションモデルの開発

本モデルでは、溶存態と懸濁態の比率を一律に設定したが、対象物質が金属の場合、酸化還元や凝集沈殿、錯体化などの化学反応により、溶存態と懸濁態の比率が時間的に変化するため、それらを考慮する必要がある。

28

Page 29: 鉱山水系を対象にした 河川水質予測シミュレーショ …鉱山水系を対象にした 河川水質予測シミュレーション (JOGMEC共同研究) 独立行政法人

3.今後の課題(2)

バックグラウンド濃度の空間分布の設定

本研究により、重金属の河川水濃度は、バックグラウンド濃度に大きく依存することが示された。JOGMECの調査結果では、地点や時期によるバックグラウンド濃度の違いが見られたため、それらの濃度分布を調査し、モデルに設定する必要がある。

河川底質濃度の評価

懸濁態の重金属は河川水中で底質へ沈降するため、河川底質濃度の評価も重要となる。現モデルでは、底質の濃度も出力されるが、過去からの堆積を考慮できないこと、底質の性状の違いを考慮できないことなどの課題があり、精度が不確かな状況にある。

29

Page 30: 鉱山水系を対象にした 河川水質予測シミュレーショ …鉱山水系を対象にした 河川水質予測シミュレーション (JOGMEC共同研究) 独立行政法人

3.今後の課題(3)

日本全国の任意の鉱山水系へのモデルの適用

将来的には本シミュレーションモデルを日本全国の任意の鉱山水系へ適用可能とするため、共通基盤となるモデルのプラットフォームを構築する。

現在のAIST-SHANELには、全国の標高、土地利用、人口、河川等の流域に関するメッシュデータが既に内蔵されており、本研究で落水線の250mメッシュデータを設定したことにより、全国1級水系の250mメッシュ単位の河川水濃度の推定が可能となった。

今後、上記の課題のほか、非定常排出に対応可能とすることや、対象領域を2級水系も含むすべての河川流域へと拡張することも検討している。

30