肺疾患に対する手術治療 ~胸腔鏡手術について~ · 2015-10-29 · 18...
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小さな傷で大きな成果!!
肺疾患に対する手術治療
~ 胸腔鏡手術について ~
NTT東日本札幌病院 呼吸器外科
道免寛充
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1. 呼吸器外科ってどんな科?
2. 肺癌について
3. 気胸について
4. 胸腔鏡手術とは
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1. 呼吸器外科ってどんな科?
2. 肺癌について
3. 気胸について
4. 胸腔鏡手術とは
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心臓や食道以外の胸部臓器の手術治療を行う科
治療対象となる臓器肺・気管・気管支・縦隔・胸壁・横隔膜など
外科(一般外科)
呼吸器外科
消化器外科
肺と縦隔の場所
5右肺 左肺縦隔
呼吸器外科で治療する病気は?
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気腫性肺疾患気胸肺のう胞肺気腫
肺悪性腫瘍性疾患肺がん転移性肺腫瘍肺良性腫瘍
縦隔疾患縦隔腫瘍(とくに胸腺腫))重症筋無力症神経原性腫瘍
胸壁・胸膜の疾患胸膜中皮腫胸壁腫瘍
炎症性肺疾患、その他膿胸(のうきょう)肺化膿症先天性肺疾患肺動静脈ろう胸部外傷
呼吸器外科医の数
7
全国
北海道
・ 日本呼吸器外科学会会員数 3200人
(日本外科学会会員数 39797人)
・ 呼吸器外科専門医 1315人
(外科専門医数 21275人)
・ 呼吸器外科学会の基幹施設260、関連施設385
・ 呼吸器外科専門医 39人
・ 呼吸器外科学会の基幹施設8、関連施設25
呼吸器外科手術件数(全国)
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2015年4月~10月における当院での手術症例は40例
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412
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肺癌(葉切除)
肺癌(部分切除)
その他膿胸
気胸
縦隔腫瘍転移性肺腫瘍
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1. 呼吸器外科ってどんな科?
2. 肺癌について
3. 気胸について
4. 胸腔鏡手術とは
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・ 肺がんは1950年以降、増加し続けている
・ 罹患数男性 胃がんに次いで第2位女性 乳がん、胃がん、結腸がんに続き第4位
・ 死亡数男女ともに第1位
肺癌患者さんの数
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肺癌の特性
★ 患者数の多い主要がんである。
★ 難治がんである。
★ 早期発見が困難。外科切除率は50%以下に過ぎない。
(比較的早期の症例が外科治療の対象となる)
★ 病理組織型が多様で治療反応性の違いから、治療戦略も多様である。
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(手術を受ける患者さんの中では)
無症状で発見される場合が圧倒的に多い
肺癌発見のきっかけ
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手術を受けることができるのは、比較的早期の患者さん
肺癌の進行度
肺をどのくらい切ればよいのか?
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肺葉切除
肺区域切除 肺部分切除
「標準」手術
「縮小」手術
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術式と肺切除量の関係
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肺癌手術の歴史
1933年 肺癌に対して肺摘除成功第1例
1950年代 肺摘除が肺癌に対する標準術式
1960年代 肺葉切除がcompromized host に対し ての縮小手術として適応
1970年代 肺葉切除(およびLN郭清)が肺癌に対 する標準術式
1970年代後半~ 区域切除と部分切除がcompromizedhost に対しての縮小手術として適応
肺癌の標準術式は肺葉切除
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肺葉切除と縮小手術(区域切除十模状切除)を比較した唯一の第Ⅲ相臨床試験「肺癌の標準手術は肺葉切除」となった根拠となる論文
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① 非浸潤癌は、腫瘍との距離を確保できるのであれば、部分切除でよい
② 浸潤癌でも、リンパ節転移をきたしていない
のであれば、肺葉切除でリンパ節郭清を省略してもよい
肺癌の縮小手術の考え方
どのようにして非浸潤癌と浸潤癌を区別するか?
どれくらいの距離が必要なのか?
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腫瘍径2cm以下かつ充実部/腫瘍径が25%以下が非浸潤癌
どのようにして非浸潤癌と浸潤癌を区別するか?
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腫瘍径とおなじ分だけの断端距離が必要
どれくらいの距離が必要なのか?
当科における縮小手術の方針
部分切除 区域切除 葉切除
≧75% <75%GGO 率
≦1.5原発腫瘍のSUVmax
>1.5
腫瘍径> 2cm≦ 2cm
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当科における肺癌手術
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1. 呼吸器外科で治療する病気
2. 肺癌について
3. 気胸について
4. 胸腔鏡手術とは
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気胸ってどんな病気?
症状は、・ 咳・ 胸の痛み・ 呼吸困難
肺の弱い部分が破れることで発症する
気胸の治療
保存的治療
経過観察
(安静臥床)
胸腔
ドレナージ
手術治療
胸腔鏡手術
開胸手術
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どの治療を選ぶべきか?気胸治療ガイドラインによると、
治療を選ぶにあたって、何よりもまず大事なことは、
肺虚脱の程度どのくらい肺がしぼんでいるか?
自覚症状の程度どのくらい苦しいか?
と、記載されています。
気胸の治療
保存的治療
経過観察
(安静臥床)
胸腔
ドレナージ
手術治療
胸腔鏡手術
開胸手術
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肺虚脱が軽度で、症状も軽ければ、
それ以外の場合は、
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それ以外の場合、
胸腔ドレナージでいいのか、手術を受けるべきか?
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当科の方針
再発率を充分に考慮に入れた上で、治療を決定
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1. 呼吸器外科で治療する病気
2. 肺癌について
3. 気胸について
4. 胸腔鏡手術とは
胸腔鏡手術とは
胸腔鏡による観察下に行う胸部手術
– モニターを通した胸腔鏡画像を使った,胸の中に手を入れない手術
– 内視鏡や手術用の器具を胸腔内に挿入して、内視鏡に接続したビデオカメラで胸の中をモニターに映し出し、手術操作を行う。
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胸腔鏡(下)手術VATSvideo-assisted thoracic surgery
開胸手術
背部から側胸部にかけての大きな切開
肋骨を1~2本切離
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傷のちがい胸腔鏡手術 開胸手術
胸腔鏡手術の長所と短所
<長所>:患者さんの負担が少ない・ 傷が小さく目立たない・ 痛みが少ない・ 胸壁の筋肉や骨の損傷が少ない・ 出血量が少ない
<短所>:術者の負担は多い・ 触覚を利用できず、病巣の位置や範囲を確認し難い・ 視野がせまく平面的・ 緊急時の対処が困難・ 開胸手術に比べて手術時間が長い
胸腔鏡手術が困難な症例
• 強固な癒着– (再手術例、炎症既往など)
• 気管支形成や血管形成など複雑な手術
• 化学療法後
など
手術中に、開胸手術に移行する
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当科における気胸手術2015年4月~10月 全11例
胸腔鏡手術の比率は100%
平均2.3日 平均4.9日
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当科における肺癌手術2015年4月~10月 全20例
胸腔鏡手術の比率は90%
平均2.8日 平均7.9日
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肺や縦隔の手術は安全に受けることができるようになってきています。
肺の手術について心配がある方は、ぜひ一度当院に御相談ください。