今年度実施予定の主要統計調査 - stat ·...

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今年度実施予定の主要統計調査 4 新たな「経済センサス - 基礎調査」への期待 法政大学経済学部教授 菅 幹雄 経済センサス - 基礎調査(以下、「基 礎調査」と略す)は事業所母集団データ ベース(以下、「事業所 DB」と略す)の基 礎となる調査です。一般に産業統計調査を実施 するためには名称、所在地、電話番号などの連 絡先情報、産業分類や従業者数などの層化情報 などが必要で、統計調査ごとにこうした情報を 収集して整理することは非効率ですから、名簿 情報をデータベース化して共用したものが事業 所 DB です。我が国では 1947 年に開始した「事 業所統計調査」以来、伝統的に統計調査によって 事業所の母集団名簿を整備してきました。最近 では商業・法人登記や労働保険情報などの行政 記録も整備に用いていますが、個人で行ってい る事業者は行政記録ではなかなか把握できない など、依然として事業所 DB 整備のための統計 調査、すなわち基礎調査が必要です。 調査の重要性 今回の 2019 年基礎調査では、全地域を一時 期に調査するのではなく、地域を分けて、各地域 を異なる時期に順番に調査していく方法や外観 等から営業状態を把握する調査方法(外観調査) を導入する予定です。これまで基礎調査は5年に 1回、悉 しっ かい 調査として実施されてきましたが、最 近では「一時期に大量の調査員を雇用することが 調査方法の見直し

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Page 1: 今年度実施予定の主要統計調査 - Stat · 礎調査」と略す)は事業所母集団データ ベース(以下、「事業所db」と略す)の基 礎となる調査です。一般に産業統計調査を実施

1. 今年度実施予定の主要統計調査

今年度実施予定の主要統計調査

新たな「経済センサス - 基礎調査」への期待法政大学経済学部教授 菅 幹雄

 経済センサス - 基礎調査(以下、「基礎調査」と略す)は事業所母集団データベース(以下、「事業所 DB」と略す)の基礎となる調査です。一般に産業統計調査を実施するためには名称、所在地、電話番号などの連絡先情報、産業分類や従業者数などの層化情報などが必要で、統計調査ごとにこうした情報を収集して整理することは非効率ですから、名簿情報をデータベース化して共用したものが事業所 DB です。我が国では 1947 年に開始した「事業所統計調査」以来、伝統的に統計調査によって事業所の母集団名簿を整備してきました。最近では商業・法人登記や労働保険情報などの行政記録も整備に用いていますが、個人で行っている事業者は行政記録ではなかなか把握できないなど、依然として事業所 DB 整備のための統計調査、すなわち基礎調査が必要です。

を実施ど 連

調査の重要性

 今回の 2019 年基礎調査では、全地域を一時期に調査するのではなく、地域を分けて、各地域を異なる時期に順番に調査していく方法や外観等から営業状態を把握する調査方法(外観調査)を導入する予定です。これまで基礎調査は5年に1回、悉

しっ

皆かい

調査として実施されてきましたが、最近では「一時期に大量の調査員を雇用することが

 基礎調査が今後も持続されることにより、事業所 DB の情報の更新をタイムリーに実施できるだけでなく、事業所 DB から作成した統計、すなわち「レジスター統計」が充実していくことが期待されます。米国の「米国共同体調査」(American Community Survey)では、地域を分けて、各地域を異なる時期に順番に調査する方法を採用することにより、かつての米国国勢調査の詳細調査票(long form)レベルの情報を、現在では毎年推計して提供しています。我が国について言えば、基礎調査の情報を、「経済センサス - 活動調査」の中間年調査である「経済構造実態調査」の情報と事業所 DB 上で接続することにより、詳細な情報を毎年推計して提供できるようになることで、大変に役立つものと思われます。今後、その技術開発が重要になってくると思います。

調査方法の見直し

今後への期待

だんだん困難になってきた」という声が、実査を担当する地方自治体から聞かれるようになってきました。そこでこの新たな調査方法を導入することにより、大量に調査員を集めなくても調査を可能とする工夫を行いました。この各地域を異なる時期に順番に調査していく調査方法は、フランスや米国の人口調査に既に適用されており、定評がある調査方法ですので、今回それを産業統計に適用したことは新しい試みとして国際的に注目されると思われます。また、新たな基礎調査では報告者負担を最大限減らすために、外観調査を導入したことについて評価しています。

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1. 今年度実施予定の主要統計調査

今年度実施予定の主要統計調査

新たな「経済センサス - 基礎調査」への期待法政大学経済学部教授 菅 幹雄

 経済センサス - 基礎調査(以下、「基礎調査」と略す)は事業所母集団データベース(以下、「事業所 DB」と略す)の基礎となる調査です。一般に産業統計調査を実施するためには名称、所在地、電話番号などの連絡先情報、産業分類や従業者数などの層化情報などが必要で、統計調査ごとにこうした情報を収集して整理することは非効率ですから、名簿情報をデータベース化して共用したものが事業所 DB です。我が国では 1947 年に開始した「事業所統計調査」以来、伝統的に統計調査によって事業所の母集団名簿を整備してきました。最近では商業・法人登記や労働保険情報などの行政記録も整備に用いていますが、個人で行っている事業者は行政記録ではなかなか把握できないなど、依然として事業所 DB 整備のための統計調査、すなわち基礎調査が必要です。

を実施ど 連

調査の重要性

 今回の 2019 年基礎調査では、全地域を一時期に調査するのではなく、地域を分けて、各地域を異なる時期に順番に調査していく方法や外観等から営業状態を把握する調査方法(外観調査)を導入する予定です。これまで基礎調査は5年に1回、悉

しっ

皆かい

調査として実施されてきましたが、最近では「一時期に大量の調査員を雇用することが

 基礎調査が今後も持続されることにより、事業所 DB の情報の更新をタイムリーに実施できるだけでなく、事業所 DB から作成した統計、すなわち「レジスター統計」が充実していくことが期待されます。米国の「米国共同体調査」(American Community Survey)では、地域を分けて、各地域を異なる時期に順番に調査する方法を採用することにより、かつての米国国勢調査の詳細調査票(long form)レベルの情報を、現在では毎年推計して提供しています。我が国について言えば、基礎調査の情報を、「経済センサス - 活動調査」の中間年調査である「経済構造実態調査」の情報と事業所 DB 上で接続することにより、詳細な情報を毎年推計して提供できるようになることで、大変に役立つものと思われます。今後、その技術開発が重要になってくると思います。

調査方法の見直し

今後への期待

だんだん困難になってきた」という声が、実査を担当する地方自治体から聞かれるようになってきました。そこでこの新たな調査方法を導入することにより、大量に調査員を集めなくても調査を可能とする工夫を行いました。この各地域を異なる時期に順番に調査していく調査方法は、フランスや米国の人口調査に既に適用されており、定評がある調査方法ですので、今回それを産業統計に適用したことは新しい試みとして国際的に注目されると思われます。また、新たな基礎調査では報告者負担を最大限減らすために、外観調査を導入したことについて評価しています。

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1. 今年度実施予定の主要統計調査

経済センサス - 基礎調査の概要 2014年経済センサス - 基礎調査の結果から

 経済センサス - 基礎調査は、我が国の全ての産業分野における事業所の活動状態等の基本的構造を全国及び地域別に明らかにするとともに、事業所・企業を対象とする各種統計調査の母集団情報を整備することを目的としています。

(1)調査対象 全国全ての民営事業所(2)調査期間 2019 年6月から 2020 年3月までの 10 か月間で全国の事業所を順次調査(3)調査方法〈調査票の配布等〉・ 調査員は外観等から全ての民営事業所の活動状

態等を確認し、その結果を『調査員用端末』(タブレット端末)に入力

・ 新たに把握した事業所など一部の事業所には、調査員が調査票を配布

〈調査票の回収〉・国がオンライン又は郵送により回収(4)調査事項 事業所の名称、所在地、活動状態のほか、新たに把握した事業所については従業者数、事業の内容、法人番号なども把握

(1)調査対象 全国全ての国及び地方公共団体の事業所(2)調査期日 毎年6月1日現在(経済センサス - 活動調査実施年は除く。)(3)調査方法 市町村長、都道府県知事、総務大臣それぞれが市町村、都道府県、国の事業所ごとに調査票を送付・回収(4)調査事項 事業所の名称、所在地、活動状態のほか、新たに把握した事業所については職員数、事業の内容なども把握

1 調査の目的

2 甲調査の概要3 乙調査の概要

地域メッシュ統計でみる全産業事業所数2014年経済センサス -基礎調査に関する地域メッシュ統計─全産業事業所数

 2014 年経済センサス - 基礎調査に関する地域メッシュ統計※から、全産業事業所数を約1km 四方の基準地域メッシュ地図に表したものです。 全産業事業所数階級区分別にみると、全国的には1~9事業所の区分(水色)が最も多くなっていますが、関東大都市圏、中京大都市圏、近畿大都市圏や政令指定都市などの地域には 100 事業所以上の区分

(赤、紫、茶色)が多く、事業所が密集していることがわかります。

※  地域メッシュ統計とは、緯度・経度に基づき、地域を隙間なく網の目(メッシュ)の区域に分けて、統計データをそれぞれの区域に編成したもの

資料:経済センサス - 基礎調査に関する地域メッシュ統計

八重山列島

宮古列島

尖閣諸島沖縄諸島

大東諸島

火山列島

小笠原諸島

鳥島

沖ノ鳥島 南鳥島

凡例事業所数

0事業所1~910~2930~99100~299300~499500事業所以上

基準(約1㎞四方)地域メッシュ地図

注  地域メッシュ統計地図は、国土交通省の

「国土数値情報(行政区域、湖沼)」を利用して作成しています。

Page 4: 今年度実施予定の主要統計調査 - Stat · 礎調査」と略す)は事業所母集団データ ベース(以下、「事業所db」と略す)の基 礎となる調査です。一般に産業統計調査を実施

1. 今年度実施予定の主要統計調査

経済センサス - 基礎調査の概要 2014年経済センサス - 基礎調査の結果から

 経済センサス - 基礎調査は、我が国の全ての産業分野における事業所の活動状態等の基本的構造を全国及び地域別に明らかにするとともに、事業所・企業を対象とする各種統計調査の母集団情報を整備することを目的としています。

(1)調査対象 全国全ての民営事業所(2)調査期間 2019 年6月から 2020 年3月までの 10 か月間で全国の事業所を順次調査(3)調査方法〈調査票の配布等〉・ 調査員は外観等から全ての民営事業所の活動状

態等を確認し、その結果を『調査員用端末』(タブレット端末)に入力

・ 新たに把握した事業所など一部の事業所には、調査員が調査票を配布

〈調査票の回収〉・国がオンライン又は郵送により回収(4)調査事項 事業所の名称、所在地、活動状態のほか、新たに把握した事業所については従業者数、事業の内容、法人番号なども把握

(1)調査対象 全国全ての国及び地方公共団体の事業所(2)調査期日 毎年6月1日現在(経済センサス - 活動調査実施年は除く。)(3)調査方法 市町村長、都道府県知事、総務大臣それぞれが市町村、都道府県、国の事業所ごとに調査票を送付・回収(4)調査事項 事業所の名称、所在地、活動状態のほか、新たに把握した事業所については職員数、事業の内容なども把握

1 調査の目的

2 甲調査の概要3 乙調査の概要

地域メッシュ統計でみる全産業事業所数2014年経済センサス -基礎調査に関する地域メッシュ統計─全産業事業所数

 2014 年経済センサス - 基礎調査に関する地域メッシュ統計※から、全産業事業所数を約1km 四方の基準地域メッシュ地図に表したものです。 全産業事業所数階級区分別にみると、全国的には1~9事業所の区分(水色)が最も多くなっていますが、関東大都市圏、中京大都市圏、近畿大都市圏や政令指定都市などの地域には 100 事業所以上の区分

(赤、紫、茶色)が多く、事業所が密集していることがわかります。

※  地域メッシュ統計とは、緯度・経度に基づき、地域を隙間なく網の目(メッシュ)の区域に分けて、統計データをそれぞれの区域に編成したもの

資料:経済センサス - 基礎調査に関する地域メッシュ統計

八重山列島

宮古列島

尖閣諸島沖縄諸島

大東諸島

火山列島

小笠原諸島

鳥島

沖ノ鳥島 南鳥島

凡例事業所数

0事業所1~910~2930~99100~299300~499500事業所以上

基準(約1㎞四方)地域メッシュ地図

注  地域メッシュ統計地図は、国土交通省の

「国土数値情報(行政区域、湖沼)」を利用して作成しています。

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1. 今年度実施予定の主要統計調査

2019 年全国家計構造調査への期待中央大学経済学部教授 伊藤 伸介

 全国家計構造調査(旧「全国消費実態調査」)は、1959年から5年に1回実施されている我が国の基幹統計調査の1つで、世帯の消費、所得、資産に関する詳細な情報を調べることを目的とした国内最大規模の家計に関する統計調査です。10月・11月の2か月間について、単身の学生を除く世帯(約90000世帯)を対象に調査が行われます。調査対象となった世帯に年単位の所得と資産・負債に関する情報、さらには2か月間の家計簿について回答していただくことによって、家計の収入と支出、貯蓄・負債の保有高、土地・住宅資産の保有高等の家計の状況を細かく捉えることが可能です。

全国家計構造調査とは

 全国家計構造調査の前身である全国消費実態調査は、国の政策立案のための基礎資料として用いられています。例えば、社会保障・税の見直しに関する検討においては、世帯類型ごとの平均消費支出額が利用されていますし、税制の見直しのための検討資料として、年齢階級別の資産残高の分布状況等が用いられています。また、国民経済計算におけるマクロの家計消費支出を推計するための一次統計としての役割も担っています。経済財政白書、労働経済白書等、政府が刊行する白書においても、家計の所得格差の指標であるジニ係数、相対的貧困率、貯蓄率等、

 近年、統計調査環境が厳しくなってきたことから、統計調査員の方々の調査対象世帯への訪問や地方自治体における統計調査の事務手続きに関しても負担が増大しております。こうした状況は、全国家計構造調査においても例外ではないと思われます。2019年全国家計構造調査では、家計簿を含める「基本調査」と家計簿を含めない「簡易調査」によるロング・ショートフォーム方式を導入したり、家計簿の回答期間を従来の3か月から2か月に短縮したりする等、調査方法を変更することによって、調査対象世帯の記入負担の軽減が図られています。 公的統計は我が国の経済社会を映し出す「鏡」であり、その重要性はより一層認識される必要があります。そのことは、我が国における公的統計の信頼性の確保にもつながっていくことでしょう。2019年全国家計構造調査も、世帯の消費、所得と資産の実態を表す「鏡」としての役割を果たしていくことが求められます。

調査結果の利活用

2019 年全国家計構造調査に向けて

全国消費実態調査を用いた分析結果が数多く使われています。さらに、匿名化措置が施されたミクロデータ(匿名データ)が作成・提供されており、公的統計の二次利用という形で、筆者を含む多くの研究者が全国消費実態調査のデータを利用しています。その一方で、一般ミクロデータもホームページから入手可能になっていることから、大学等の高等教育機関において教育目的による利用が広範に行われています。このように、様々な形で調査結果の利活用がなされています。

注  全国家計構造調査は、1959 年以来5年ごとに実施してきた「全国消費実態調査」を全面的に見直して実施するもので、2019 年調査は 13 回目に当たります。

れー計がの手関

家計

変減

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1. 今年度実施予定の主要統計調査

2019 年全国家計構造調査への期待中央大学経済学部教授 伊藤 伸介

 全国家計構造調査(旧「全国消費実態調査」)は、1959年から5年に1回実施されている我が国の基幹統計調査の1つで、世帯の消費、所得、資産に関する詳細な情報を調べることを目的とした国内最大規模の家計に関する統計調査です。10月・11月の2か月間について、単身の学生を除く世帯(約90000世帯)を対象に調査が行われます。調査対象となった世帯に年単位の所得と資産・負債に関する情報、さらには2か月間の家計簿について回答していただくことによって、家計の収入と支出、貯蓄・負債の保有高、土地・住宅資産の保有高等の家計の状況を細かく捉えることが可能です。

全国家計構造調査とは

 全国家計構造調査の前身である全国消費実態調査は、国の政策立案のための基礎資料として用いられています。例えば、社会保障・税の見直しに関する検討においては、世帯類型ごとの平均消費支出額が利用されていますし、税制の見直しのための検討資料として、年齢階級別の資産残高の分布状況等が用いられています。また、国民経済計算におけるマクロの家計消費支出を推計するための一次統計としての役割も担っています。経済財政白書、労働経済白書等、政府が刊行する白書においても、家計の所得格差の指標であるジニ係数、相対的貧困率、貯蓄率等、

 近年、統計調査環境が厳しくなってきたことから、統計調査員の方々の調査対象世帯への訪問や地方自治体における統計調査の事務手続きに関しても負担が増大しております。こうした状況は、全国家計構造調査においても例外ではないと思われます。2019年全国家計構造調査では、家計簿を含める「基本調査」と家計簿を含めない「簡易調査」によるロング・ショートフォーム方式を導入したり、家計簿の回答期間を従来の3か月から2か月に短縮したりする等、調査方法を変更することによって、調査対象世帯の記入負担の軽減が図られています。 公的統計は我が国の経済社会を映し出す「鏡」であり、その重要性はより一層認識される必要があります。そのことは、我が国における公的統計の信頼性の確保にもつながっていくことでしょう。2019年全国家計構造調査も、世帯の消費、所得と資産の実態を表す「鏡」としての役割を果たしていくことが求められます。

調査結果の利活用

2019 年全国家計構造調査に向けて

全国消費実態調査を用いた分析結果が数多く使われています。さらに、匿名化措置が施されたミクロデータ(匿名データ)が作成・提供されており、公的統計の二次利用という形で、筆者を含む多くの研究者が全国消費実態調査のデータを利用しています。その一方で、一般ミクロデータもホームページから入手可能になっていることから、大学等の高等教育機関において教育目的による利用が広範に行われています。このように、様々な形で調査結果の利活用がなされています。

注  全国家計構造調査は、1959 年以来5年ごとに実施してきた「全国消費実態調査」を全面的に見直して実施するもので、2019 年調査は 13 回目に当たります。

れー計がの手関

家計

変減

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1. 今年度実施予定の主要統計調査1. 今年度実施予定の主要統計調査

2014年全国消費実態調査(全国家計構造調査の前身調査)の結果から全国家計構造調査の概要

 「全国家計構造調査」は、家計における消費、所得、資産及び負債の実態を総合的に把握し、世帯の所得分布及び消費の水準、構造等を全国的及び地域別に明らかにする調査で、国が実施する統計調査のうち、統計法により特に重要なものとされる「基幹統計調査」です。この調査は、1959年以来5年ごとに実施してきた「全国消費実態調査」を全面的に見直して実施するもので、2019年調査は 13回目に当たります。

 所得や資産に関する結果や、単身世帯及び総世帯の精度向上を図り、全国の家計の収支、資産・負債の状況を総合的に明らかにする統計に刷新します。一方で、調査世帯や実査に携わる方の負担軽減のため、調査期間の3か月間から2か月間への短縮、耐久財の保有状況に関する調査の廃止など、調査の全面的な見直しを行います。

 2019年10月及び11月の2か月間実施します。

 全国から無作為に選定した約 90,000 世帯が対象です。

(1)市町村調査 「家計簿」、「年収・貯蓄等調査票」及び「世帯票」の3種類の調査票により、日々の家計の収入と支出、年間収入、預貯金などの金融資産、借入金、世帯構成、世帯員の就業・就学状況、現住居の状況(床面積、建築時期など)、現住居以外の住宅・宅地の保有状況を調査します。 市町村調査は、3種類全ての調査票に回答をお願いする「基本調査」と、「年収・貯蓄等調査票」及び「世帯票」の2種類の調査票に回答をお願いする「簡易調査」で調査します。

(2) 都道府県調査(「家計調査」調査対象世帯への追加調査)

 「家計調査」にご回答いただいている世帯のみなさまに、以下のいずれかの調査をお願いします。 家計調査世帯特別調査:「基本調査」の調査事項のうち、家計調査と重なる事項を除いた項目を1枚の調査票で調査します。 個人収支状況調査:通常の「家計調査」では捉えきれていない「個人の判断で自由に使えるお金」の収支内容を、世帯員一人一人に配布する「個人収支簿」で調査します。

 調査員が調査対象世帯に調査票を配布することにより行います。調査票の提出は、次のいずれかの方法を世帯が選択することができます(「都道府県調査」はイのみ)。 ア インターネット回答 イ 調査員に提出 ウ 郵送により提出(「簡易調査」の場合) なお、「都道府県調査」については、家計調査と一体的に実施します。

 国や地方公共団体において、国民年金・厚生年金の年金額の検討、介護保険料の算定基準の検討、生活保護の扶助額基準の検討、税制改正に伴う政策効果の予測、所得格差・資産格差の現状把握、高齢者の金融資産保有状況の把握など、重要な政策に使われます。

相対的貧困率と子どもの相対的貧困率

購入先に占める「ネットショッピング」での購入割合は神奈川県が最も高い

相対的貧困率と子どもの相対的貧困率の推移(1999 年~ 2014 年)

都道府県別「ネットショッピング」での購入割合(2014年)─二人以上の世帯

 2014年の相対的貧困率※は 9.9%と、2009年(10.1%)から 0.2 ポイント低下しました。 また、子どもの相対的貧困率(17歳以下)は7.9%と、2009年(9.9%)から2.0ポイント低下しました。

 二人以上の世帯について、都道府県別に購入先に占める「ネットショッピング」での購入割合をみると、 神奈川県、埼玉県、東京都が高くなっています。

1 調査の目的

2 今回調査の特徴

3 調査の期間 6 調査方法

7 結果の利用

4 調査の対象

5 調査事項

※ 全国平均(1.7%)=100として換算

■ 2.2%以上■ 1.7%以上 2.2%未満■ 1.2%以上 1.7%未満■ 1.2%未満

に購入先に占める「ネットショッピン玉県、東京都 が高くなっています。

資料:日本は全国消費実態調査結果、他国は OECD デ ー タベース

主要 7カ国の相対的貧困率(2014年)

※  相対的貧困率とは、等価可処分所得(世帯の年間可処分所得を当該世帯の世帯人員数の平方根で割ったもの)が貧困線(等価可処分所得の中央値の半分の額)に満たない世帯人員の割合をいいます。

相対的貧困率

9.1 9.5

10.1 9.9

7.99.9

率9.7

9.2

9子どもの相対的貧困率

99貧 率

」での

0.2ポイント低下

2.0ポイント低下

12.0

10.0

8.0

6.0

4.0

2.0

0.0

(%)

1999年 2004 2009 2014

.199.1 .9 59.5 77 97 97 97 9

79.72299.2

19.1子どもの相対的貧子 貧子ども子 対的貧貧

77 97.95

貧困率貧困率

999 99.9

資料: 全国消費実態調査

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1. 今年度実施予定の主要統計調査1. 今年度実施予定の主要統計調査

2014年全国消費実態調査(全国家計構造調査の前身調査)の結果から全国家計構造調査の概要

 「全国家計構造調査」は、家計における消費、所得、資産及び負債の実態を総合的に把握し、世帯の所得分布及び消費の水準、構造等を全国的及び地域別に明らかにする調査で、国が実施する統計調査のうち、統計法により特に重要なものとされる「基幹統計調査」です。この調査は、1959年以来5年ごとに実施してきた「全国消費実態調査」を全面的に見直して実施するもので、2019年調査は 13回目に当たります。

 所得や資産に関する結果や、単身世帯及び総世帯の精度向上を図り、全国の家計の収支、資産・負債の状況を総合的に明らかにする統計に刷新します。一方で、調査世帯や実査に携わる方の負担軽減のため、調査期間の3か月間から2か月間への短縮、耐久財の保有状況に関する調査の廃止など、調査の全面的な見直しを行います。

 2019年10月及び11月の2か月間実施します。

 全国から無作為に選定した約 90,000 世帯が対象です。

(1)市町村調査 「家計簿」、「年収・貯蓄等調査票」及び「世帯票」の3種類の調査票により、日々の家計の収入と支出、年間収入、預貯金などの金融資産、借入金、世帯構成、世帯員の就業・就学状況、現住居の状況(床面積、建築時期など)、現住居以外の住宅・宅地の保有状況を調査します。 市町村調査は、3種類全ての調査票に回答をお願いする「基本調査」と、「年収・貯蓄等調査票」及び「世帯票」の2種類の調査票に回答をお願いする「簡易調査」で調査します。

(2) 都道府県調査(「家計調査」調査対象世帯への追加調査)

 「家計調査」にご回答いただいている世帯のみなさまに、以下のいずれかの調査をお願いします。 家計調査世帯特別調査:「基本調査」の調査事項のうち、家計調査と重なる事項を除いた項目を1枚の調査票で調査します。 個人収支状況調査:通常の「家計調査」では捉えきれていない「個人の判断で自由に使えるお金」の収支内容を、世帯員一人一人に配布する「個人収支簿」で調査します。

 調査員が調査対象世帯に調査票を配布することにより行います。調査票の提出は、次のいずれかの方法を世帯が選択することができます(「都道府県調査」はイのみ)。 ア インターネット回答 イ 調査員に提出 ウ 郵送により提出(「簡易調査」の場合) なお、「都道府県調査」については、家計調査と一体的に実施します。

 国や地方公共団体において、国民年金・厚生年金の年金額の検討、介護保険料の算定基準の検討、生活保護の扶助額基準の検討、税制改正に伴う政策効果の予測、所得格差・資産格差の現状把握、高齢者の金融資産保有状況の把握など、重要な政策に使われます。

相対的貧困率と子どもの相対的貧困率

購入先に占める「ネットショッピング」での購入割合は神奈川県が最も高い

相対的貧困率と子どもの相対的貧困率の推移(1999 年~ 2014 年)

都道府県別「ネットショッピング」での購入割合(2014年)─二人以上の世帯

 2014年の相対的貧困率※は 9.9%と、2009年(10.1%)から 0.2 ポイント低下しました。 また、子どもの相対的貧困率(17歳以下)は7.9%と、2009年(9.9%)から2.0ポイント低下しました。

 二人以上の世帯について、都道府県別に購入先に占める「ネットショッピング」での購入割合をみると、 神奈川県、埼玉県、東京都が高くなっています。

1 調査の目的

2 今回調査の特徴

3 調査の期間 6 調査方法

7 結果の利用

4 調査の対象

5 調査事項

※ 全国平均(1.7%)=100として換算

■ 2.2%以上■ 1.7%以上 2.2%未満■ 1.2%以上 1.7%未満■ 1.2%未満

に購入先に占める「ネットショッピン玉県、東京都 が高くなっています。

資料:日本は全国消費実態調査結果、他国は OECD デ ー タベース

主要 7カ国の相対的貧困率(2014年)

※  相対的貧困率とは、等価可処分所得(世帯の年間可処分所得を当該世帯の世帯人員数の平方根で割ったもの)が貧困線(等価可処分所得の中央値の半分の額)に満たない世帯人員の割合をいいます。

相対的貧困率

9.1 9.5

10.1 9.9

7.99.9

率9.7

9.2

9子どもの相対的貧困率

99貧 率

」での

0.2ポイント低下

2.0ポイント低下

12.0

10.0

8.0

6.0

4.0

2.0

0.0

(%)

1999年 2004 2009 2014

.199.1 .9 59.5 77 97 97 97 9

79.72299.2

19.1子どもの相対的貧子 貧子ども子 対的貧貧

77 97.95

貧困率貧困率

999 99.9

資料: 全国消費実態調査