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2018年2月2日NEDO TSC Foresightセミナー
材料開発を加速する計測分析技術
名古屋大学イノベーション戦略室 一村信吾
NEDO TSC Foresight計測分析機器2018年2月2日 15:55-16:20
• いま何が求められているか
• CPS(Cyber Physical System) 複合計測分析とは
• CPS複合計測分析に向けたプラットフォーム構築 学振研究開発専門委員会
• CPS複合計測分析の試行 NEDO エネルギー・環境技術先導プログラム
• 今後の展開
本日の内容
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いま何が求められているか
ニーズ(計測分析機器ユーザーの声)① 異なるメーカー装置のデータを有機的に統合
したい② 新旧装置間で測定データの継続性を確保し
たい③ 担当者が代わっても、継続的に測定データを
有効活用したい
課題① 装置(メーカー)毎に異なるデータ形式が存在② 複数のデータを統合的に取り扱う環境の不
備
解決にむけて CPS型複合計測に向けた検討と実践(共通
データフォーマット、統合解析ビューアー) 学振研究開発専門委員会 NEDO先導プログラム
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CPS型複合計測分析とは 個別装置群をサイバー空間で統合し、複合(統合)解析性能を実現
これまでの複合計測装置
複数の測定モジュールを一つの装置に搭載 高い計測分析性能の
実現不可 複合機能の数に制限
試料
形状計測
組成計測
構造計測
CPS複合計測分析装置
電子状態計測
データデータ
データ
データ
サイバー空間で統合解析
試料試料ホルダ
試料試料ホルダ
試料試料ホルダ
試料試料ホルダ
個々の計測分析装置だけでは対応できない複雑化した課題の解決に寄与 生産性向上の早期実現などのものづくり現場ニーズに迅速に対応する手段
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CPS複合計測分析装置のメリット
複合計測分析装置の利用者(素材、部材メーカー等)にとって 個別装置の持つ高い計測分析性能を保持したまま、試料情報の解析が可能 個別解析結果がサイバー空間に集積。AI技術を援用した統合解析可能 マクロスケールからミクロ(ナノ)スケールまでの連続的な解析により、
平均情報と局所情報の俯瞰的解析が可能 均質と不均質、分散と凝集
必要なのは計測分析のオープンプラットフォームの構築とそれを実現する研究開発
グローバリゼーションで進んだ製品開発サイクルの短縮化に
応える
複合計測分析装置の提供者(計測機器メーカー)にとって
個別装置の開発は、自社のポテンシャルを発揮
強いところをますます強く
個別装置は、従来通り(独自に)市場展開
顧客ニーズに迅速に応える複合計測分析装置開発が可能
他社の個別装置の活用で、不足している複合解析ポテンシャルを補完
オンデマンド型の市場に応えることで、新たな市場開拓と国際競争力の強化
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複合計測分析が不可欠な事例
「ナノマテリアル」とは、非結合状態、または強凝集体(アグリゲート)または弱凝集体(アグロメレート)であり、個数濃度のサイズ分布で50%以上の粒子について1つ以上の外径が1 nmから100 nmのサイズ範囲である粒子を含む、自然の、または偶然にできた、または製造された材料(マテリアル)を意味する。
欧州の研究機関JRC/IRMMは、ECによる”ナノマテリアルの定義“を担保するため8つの測定手法を提案 [2012, 2014]
ECによるナノマテリアルの定義
予防原則の立場から欧米で検討が進められているナノ材料規制の対応で複合計測が不可欠 届け出規制で先行しているサイズ・サイズ分布でも、計測法を一つに決められない状態
ナノ粒子の弱凝集体
ナノ粒子と強凝集体の弱い凝集
ナノ粒子の強凝集体
ナノ粒子
強凝集体の弱い凝集
ナノマテリアルの様々な存在形態例
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複合計測分析装置の開発事例 5つの手法でナノ粒子のサイズ・サイズ分布計測が可能な複合計測分析装置の開発
産総研コンソーシアム(COMS-NANO)として、計測機器メーカー5社が結集 世界に先駆けたナノ材料特性評価システムを構築し、測定結果の相互比較を実施。 素材・材料・化学産業を中心に、ナノ材料測定のプラットフォームを提供
COMS-NANO
分析機器産業
大学・公的研究機関技術交流会
標準化
製造装置産業
素材・材料・化学産業2013年6月発足 (3社+産総研)
2013年10月時点 (5社+産総研)
ナノ材料の産業利用を支える計測ソリューション開発コンソーシアムーCOMS-NANOー
日立ハイテクAFM
日本電子TEM
島津製作所分級
FFF/MS
リガクSAXS
堀場製作所DLS
産総研
ナノ材料特性評価装置システム
規制対象の更なる広がり: サイズから形状・反応性へ、ナノ粒子からナノ構造へ幅広い計測分析プラットフォーム構築が必要
2018年2月2日NEDO TSC Foresightセミナー
計測分析技術は、我が国が得意とするものづくりへの展開を通して、イノベーション創出の基盤を支えてきました。その技術を提供する計測分析機器産業界や、それを利用する素材・部材産業界は、現在、研究開発の転換点を迎えています。即ち、高い国際競争力を維持・向上する上で、基盤共有化・オープン化の必要性が高まっています。このために本研究開発専門委員会では、計測分析機器開発を共通展開するプラットフォームと、生産現場での計測・分析ニーズにソルーションを提供するプラットフォームの構築を主題とします。産業界、アカデミアからなる委員会での活発な意見交換を通して、構築戦略を取り纏めることを目指しています。
イノベーション創出に向けた計測分析プラットフォーム戦略の構築
日本学術振興会研究開発専門委員会のホームページから
日本学術振興会 研究開発専門委員会
設置期間: 2014(H26).10.1~2017(H29).9.30
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推進体制
運営幹事会の設置 委員長 一村信吾(名大・イノベーション戦略室) 副委員長 村山英樹(三菱ケミカル)、鳥山素弘(富山県工業技術センター) 幹事 藤田大介(物材機構)、藤本俊幸(産総研) 安永卓生(九州工大情報工学研究院)、柳内克昭(TDK) 幹事補佐 大村英樹、重藤和夫(産総研)、永富隆清(旭化成) 顧問 榊 裕之(豊田工業大学)、志水隆一(阪大)
4つのWGの設置 共通基盤(ソフトウエア)WG ① 安永幹事、重藤幹事補佐 共通基盤(ハードウエア)WG ① 藤田幹事、大村幹事補佐 ソルーションWG ② 柳内幹事、重藤幹事補佐 標準化WG ①、② 藤本幹事、永富幹事補佐
①計測基盤構築、 ②ソルーション構築
日本学術振興会 研究開発専門委員会
アカデミア(大学、研究開発法人、公設研)委員・顧問 15名
産業界(計測企業、ものづくり企業)委員 12名 計測系企業からは若手が常にオブザーバー参加
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成果2 具体的な提案●データのモデル構造:XMAILの提案データがもつべきメタデータの提案 Document:データの信頼性の保証
文書の正当性、作成者、オーナーの定義 変更由来の保証
Protocol:データの再現性の保証 測定のフロー、条件、試料(クラス)の指定
Data:多様なデータフォーマットを包含 測定データ、試料(インスタンス)の情報 外部データファイルの参照を導入
XLog:追跡可能性の保証 測定、計測、分析のワークフローのログ
成果1 【プラットフォーム化の基本原則】
1:CPS型計測分析時代の到来の予見サイバー空間と物理的な計測分析機器と行き来すること
2.計測分析機器における共通化の5原則
信頼性マザー技術として持続的発展を支える原則
可視化信頼性を支える原則ID(identity)の付与が必須であること
デジタル化可視化を支える原則XML等による全ての情報の表現を行う事
再現性持続的発展を支えるために、Protocolとしてデータ化
追跡可能性信頼性に繋がる遡及性を支えるためにXLogとしてデータ化
3.データの独立可用性の保障サイバー空間においてデータ自らが、計測分析の全てを語り、利用できる性質をもつこと
① 異なるメーカー装置のデータを有機的に統合② 新旧装置間での測定データの継続性を確保③ 個々の機器の個別の情報に接続
ソフトウェアWGの成果と今後の課題
【今後の課題】
1.データ工場の必要性(ビッグデータへの対応)大量の計測分析機器からのデータを排出する組織の必要性
2.計測分析機器間の接続に関する検討サイバー空間からの機器接続に向け、データのPUSH型PULL型の共通リクエストが必要
3.学び、思考する場(ソフトウェアの特性への対応)ソフトウェアはPDCAサイクルを回すことで活きたものであり続けるので、CPS型計測分析を保障する組織が必要。ともに学び、具体と繋ぎ、現場感覚を持ち続ける場が必須。
日本学術振興会 研究開発専門委員会
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1.設置の目的2.設置期間3.委員氏名及び協力者氏名
3.1 委員3.2 WG活動に参画した協力者
4.委員会の体制及び活動概要4.1 委員会の体制4.2 活動状況
5.調査研究のまとめと提言5.1 計測分析プラットフォームの構築に向けて5.2 統合解析、CPS型複合計測に向けて -ソフトウエアWGの活動展開を中心に-
5.3 オンデマンド型の機器開発環境の構築 -ハードウエアWGの活動展開-
5.4 ビッグデータ、AI化への対応 -ソルーションWGの活動展開-
5.5 プラットフォームの実効的な社会実装 -標準化WGの活動展開-
5.6 まとめ6.委員会活動概要(開催日、開催場所、議事、特別講演)7.情報発信、普及活動
7.1 特別シンポジウムの開催と発表7.2 研究会等での成果発表
8.結言
報告書の作成
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標準化WGの活動概要と成果
検討項目 計測の信頼性を担保する仕組みとその認証システム 計測担当人材の育成および能力認定 計測機器のIoT化を可能とする環境整備 Just-required機器開発環境 ソフトウエアWG提案の共通データフォーマットの普及・活用に向けた標準化
成果 計測値の信頼性付与するために必要となる重要な要件の抽出
計測方法の精確さ検証 トレーサビリティーソースの明確化、計測手続きおよび保存記録の規定 計測オペレーターの能力 → 認定システム構築を提言
測定データが持つべき新たな特性:独立可用性の提言
計測機器のIoT化を可能とする環境整備 装置状態および稼働状況把握に必要な基盤を明確化
Just-required機器開発環境 製品製造のKCCs(Key Control Characters)を計測できる装置の迅速開発
日本が主導権を発揮できるTCISO/TC 201: 表面化学分析ISO/TC 202: マイクロビーム分析ISO/TC 229: ナノテクノロジー------
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NEDO エネルギー・環境先導プログラム
ナノ粒子のサイズ・サイズ分布計測に向けたCPS型複合計測装置のモデル機の開発
新しい検査評価技術の基盤構築ビッグデータ解析(AI技術の活用)に適応したソフト/ハードプラットフォーム構築
※CPS (cyber physical system)
実施課題A)共通データフォーマットを用いたデータコンバータの開発B)統合的データ表示を活用したナノ材料検査技術の開発と評価
C)革新的検査技術に向けたビッグデータ環境利活用に関する調査研究
FS課題の目標
ナノオーダーの微粒子等の解析に向けた新しい複合計測装置(CPS型複合装置)の実現
当該装置を核とした革新的検査評価技術の実現
最終目標
共通データフォーマット
Viewer
CPS型複合計測装置 モデル機
個別装置A
個別装置B
個別装置C
個別装置D
CPS型複合計測装置による革新的評価技術
物性分析
化学分析
画像観察
共通フォーマット
個別装置バーチャル統合
総合的評価
材料コフォート
BIG DATA
の解析
欠陥原因寿命予想 等
ビッグデータ適応型の革新的検査評価技術の研究開発
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A:共通データフォーマットを用いたデータコンバータの開発B:統合的データ表示を活用したナノ材料検査技術の開発と評価C:革新的検査技術に向けたビッグデータ環境の利活用に関する調査研究
株式会社島津製作所・研究項目:A、B、C
国立大学法人 九州工業大学・研究項目:A、C
国立研究開発法人 産業技術総合研究所・研究項目:B、C
国立大学法人 名古屋大学・研究項目: C
日本電子株式会社・研究項目:A、B、C
株式会社堀場製作所・研究項目:A、B、C
株式会社日立ハイテクノロジーズ・研究項目:A、B、C
委託
研究開発責任者::一村 信吾
ビッグデータ適応型の革新的検査評価技術の研究開発
実施期間2017年1月4日~2018年1月31日
AFM
DLS
SEM/TEM
Mass/ FFF
NEDO
NEDO エネルギー・環境先導プログラム
2018年2月2日NEDO TSC Foresightセミナー
ま と め
CPS型複合計測分析に関連する技術の開発は、計測機器ユーザー、計測機器メーカーの双方にとって喫緊の課題 サイバー空間での情報統合・解析は、繋がる計測(計測分析のAI化、人
工知能化)に向けての必須要素 必要なのは、“データが語る”構造 オープン、クローズドの開発戦略を支える技術
マルチスケールの連続解析に対する計測分析ニーズに応える有力な手段
ハードウエア、ソフトウエアのプラットフォーム構築が必要。NEDOのエネ環先導プログラム、経済省の研究開発プロジェクトをトリガーにして、加速展開すべき
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ご清聴有難うございました