小樽開発建設部におけるi-construction推進計画...constructionの分野での「世界の後志」を目指すために、...

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Katsuhiro Takahashi,Kazuhiro Terai,Kunio Tsubonishi 第63回(2019年度) 北海道開発技術研究発表会論文 小樽開発建設部におけるi-construction推進計画 ―(Ti-4による普及活動の取り組み)― 小樽開発建設部 技術管理課 ○高橋 勝宏 寺井 一弘 特定道路事業対策官 坪西 邦夫 小樽開発建設部では、計画的かつ先導的に建設部全体でICTの全面的な活用を推進し、発注者 と建設業界が一体となり、関係機関や団体と相互に連携しながら、後志地域の建設業における 『生産性の向上』と、『魅力ある建設現場』を目指しています。今回は、小樽開発建設部にお けるi-Constructionの取組状況や普及活動について報告します。 キーワード:生産性向上、モデル事務所 1. はじめに 国土交通省において建設現場における生産性を向上さ せ、魅力ある建設現場を目指す新しい取組であるi- Construction を推進することとなった。これを踏まえ北海 道開発局ではi-Construction (「ICT技術の全面的な活用」、 「規格の標準化」)を国の現場に導入するためのアクシ ョンプラン策定や地方公共団体及び業界団体への普及活 動を推進することとした。 これらの背景により小樽開発建設部では今後工事が本 格化する北海道横断自動車道「倶知安余市道路」をはじ めとする管内の建設現場において、i-Constructionの導入 を促進し、ICT工事の普及・推進を円滑かつ効率的に図 り、発注者と建設業界(施工工事業者・建設コンサルタ ント)が三位一体となり、関係機関や団体と相互に連携 しながら、後志地域の建設業における『生産性の向上』 と、『建設現場の魅力UP』を着実に実現し、i- Construction の分野での「世界の後志」を目指すために、 推進連絡会議を設置することとした。 2. 小樽開発建設部i-Construction 推進連絡会議の設置 推進連絡会議の体系は図-1 の示す体型で構成される。 -1 推進連絡会議の体系図 (1) 推進連絡会議 推進連絡会議は、議長を小樽開発建設部長。委員とし て小樽開発建設部次長(河川・道路担当、港湾・農水担 当)、技術管理官、小樽建設協会会長、副会長、小樽測 量設計協会会長、副会長。さらにオブザーバーとして北 海道後志総合振興局小樽建設管理部長、産業振興部長を 構成員としている。 連絡会議では、発注者、工事施工業者、設計測量コン サルタント、関係機関や団体と相互に連携して、次に掲 げる事項について必要な検討・取組を行う。 i-Construction の導入・活用に必要な基本的な知識や 技術の習得に関する事項 i-Construction の導入から普及・推進を図るための活 動計画に関する事項 その他、設置目的を達成するために必要な事項。 具体的には、各種研修会や工事現場の視察、新技術や 新基準などの各種情報共有、発注方式や積算方法につい ての意見交換などの実施やi-Constructionの導入から普

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Page 1: 小樽開発建設部におけるi-construction推進計画...Constructionの分野での「世界の後志」を目指すために、 推進連絡会議を設置することとした。

Katsuhiro Takahashi,Kazuhiro Terai,Kunio Tsubonishi

第63回(2019年度) 北海道開発技術研究発表会論文

小樽開発建設部におけるi-construction推進計画

―(Ti-4による普及活動の取り組み)―

小樽開発建設部 技術管理課 ○高橋 勝宏

寺井 一弘

特定道路事業対策官 坪西 邦夫

小樽開発建設部では、計画的かつ先導的に建設部全体でICTの全面的な活用を推進し、発注者

と建設業界が一体となり、関係機関や団体と相互に連携しながら、後志地域の建設業における

『生産性の向上』と、『魅力ある建設現場』を目指しています。今回は、小樽開発建設部にお

けるi-Constructionの取組状況や普及活動について報告します。

キーワード:生産性向上、モデル事務所

1. はじめに

国土交通省において建設現場における生産性を向上さ

せ、魅力ある建設現場を目指す新しい取組であるi-Constructionを推進することとなった。これを踏まえ北海

道開発局ではi-Construction(「ICT技術の全面的な活用」、

「規格の標準化」)を国の現場に導入するためのアクシ

ョンプラン策定や地方公共団体及び業界団体への普及活

動を推進することとした。 これらの背景により小樽開発建設部では今後工事が本

格化する北海道横断自動車道「倶知安余市道路」をはじ

めとする管内の建設現場において、i-Constructionの導入

を促進し、ICT工事の普及・推進を円滑かつ効率的に図

り、発注者と建設業界(施工工事業者・建設コンサルタ

ント)が三位一体となり、関係機関や団体と相互に連携

しながら、後志地域の建設業における『生産性の向上』

と、『建設現場の魅力UP』を着実に実現し、 i-Constructionの分野での「世界の後志」を目指すために、

推進連絡会議を設置することとした。

2. 小樽開発建設部i-Construction推進連絡会議の設置

推進連絡会議の体系は図-1の示す体型で構成される。

図-1 推進連絡会議の体系図

(1) 推進連絡会議 推進連絡会議は、議長を小樽開発建設部長。委員とし

て小樽開発建設部次長(河川・道路担当、港湾・農水担

当)、技術管理官、小樽建設協会会長、副会長、小樽測

量設計協会会長、副会長。さらにオブザーバーとして北

海道後志総合振興局小樽建設管理部長、産業振興部長を

構成員としている。 連絡会議では、発注者、工事施工業者、設計測量コン

サルタント、関係機関や団体と相互に連携して、次に掲

げる事項について必要な検討・取組を行う。 ・ i-Constructionの導入・活用に必要な基本的な知識や

技術の習得に関する事項 ・ i-Constructionの導入から普及・推進を図るための活

動計画に関する事項 ・ その他、設置目的を達成するために必要な事項。 具体的には、各種研修会や工事現場の視察、新技術や

新基準などの各種情報共有、発注方式や積算方法につい

ての意見交換などの実施やi-Constructionの導入から普

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Katsuhiro Takahashi,Kazuhiro Terai,Kunio Tsubonishi

及・推進を図るための課題や問題点などについて、解

消・改善に向けた意見交換や提案などの実施するもので

ある。

(2) 幹事会 幹事会は、幹事長を小樽開発建設部特定道路事業対策

官が担い、メンバーは小樽建設協会員、小樽測量設計協

会員小樽開発建設部各事業課長。オブザーバーは北海道

後志総合振興局担当事業課長が担当する。 幹事会では連絡会議に付議する事項の内容について協

議する。 (3) ワーキング会議 ワーキング会議は座長を小樽開発建設部技術管理課長

が担いメンバーには小樽開発建設部各事務所工務課長、

各事業課補佐、小樽建設協会員、小樽測量設計協会員。 オブザーバーは北海道後志総合振興局担当職員を適宜置

くようにしている。 ワーキング会議は連絡会議の活動内容について具体的

な検討、取組を行う。

3. Ti-4略称とロゴマーク

平成30年12月25日の幹事会(ワーキング会議合同)で推

進連絡会議の略称を「Ti-4」としロゴマークを制定

した。

図-2 Ti-4ロゴマークと由来

4. Ti-4の活動内容

Ti-4は平成30年9月6日に設立総会を予定していた

が、北海道胆振東部地震で延期となり、10月24日に設立

確認を兼ねた1回目の幹事会をワーキング会議と合同で

開催され活動を開始した。 (1) 第1回(幹事会&ワーキング会議合同)

平成30年10月24日実施

幹事会では、推進連絡会議の設立を承認したほか、今

後の活動内容を確認。意見交換では、ICT工事の普及促

進に向けた現状や今後の活動計画の具体的な内容、取り

組むべき項目について話し合った。

また後半は本局事業振興部より、「i-Constructionを取

り巻く最近の状況」、「自治体をフィールドとしたモデ

ル事業」について講話を頂いた。

写真-1 幹事会(次長挨拶) 写真-2 幹事会(設立承認)

(2) 第2回(現地研修&勉強会)平成30年11月6日実施

発注者側の監督員をメインとして、「一般国道5号共

和町稲穂改良外一連工事(登川工区)」にて「ICT建機の

仕組み及び稼働状況」、「「コマツ」による最新技術の

紹介」の研修を受けた。また本部に戻ってからの勉強会

では、「UAV(無人航空機)を使用した空中写真測量の

点群生成と3次元設計データの作成について」、「ICT活用工事の実践と考察」について講義を受けた。

写真-3・4 現地研修(MC技術-左 空中写真測量-右)

写真-5・6 勉強会(座学の様子-左 VR体験-右)

(3) 第3回(現地研修会)平成30年11月29日実施

北海道ICTモデル工事となっている「泊共和線防災安

全B(地方道)工事(函渠工)その2」にて、ICT施工の紹

介やICT施工デモ及び建設機械等の見学を実施した。

写真-7・8 現地研修(建設機械)

(4) 第4回(幹事会&ワーキング会議合同)

12月25日実施

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Katsuhiro Takahashi,Kazuhiro Terai,Kunio Tsubonishi

幹事会では、これまでに開催した幹事会や研修会、参

加した見学会について報告し、小樽開建のHPアップに併

せて作成した略称とロゴマークについて改めて説明を行

った。BIM/CIMについて小樽開建として積極的に取り組

んでいくことについて説明した後、ICT工事の普及・推

進に向けた各機関が抱える課題、問題点、要望、改善事

項等について意見交換を行った。

図-3 HP掲載(小樽開発建設部)

(5) 第5回(幹事会&ワーキング会議合同) 平成31年3月6日実施

幹事会では、活動経過について報告し、BIM/CIMにつ

いて小樽開建として積極的に取り組んでいくことや、小

樽開建からハイスペックパソコン導入方針について説明、

北海道ICTモデル工事の報告会について説明した後、今

後の活動計画の具体的な内容、取り組むべき項目につい

て意見交換を行った。また、i-Constructionの取組を先導

する「i-Constructionモデル事務所」に登録されたことも

あり、その推進体制として本会議が位置づけられること

になったので、継続して各種活動に取り組むことを確認

した。

写真-9 幹事会の様子

(6) 第6回(幹事会)令和元年6月21日実施

幹事会では、平成30年度活動及び令和元年度の活動計

画について報告した後、BIM/CIMについて小樽開建とし

て積極的に取り組んでいくことや、i-Construction(ICT施工)の導入に関する補助金の活用について説明。客観的

効率性検証に向けた指標について発注者・受注者より説

明した後、現状での問題点、取り組むべき項目について

意見交換を行った。

写真-10 幹事会の様子

(7) 第7回(現地研修&勉強会)令和元年9月27日実施

発注者側の監督員をメインとして、「一般国道5号仁

木町銀山大橋P6橋脚外一連工事」にて「現場状況」、

「橋梁工事におけるCIMについて」、「施工における

CIMモデルの活用について」、「効果の展望」「運用方

法」「問題点」の考察、「VR体験」の講義を受けた。

写真-11 勉強会(座学)

写真-12 現地研修

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Katsuhiro Takahashi,Kazuhiro Terai,Kunio Tsubonishi

5. 意見交換で挙がった内容

これまでの幹事会等では次のような意見が出された。 (一部抜粋) (1) ICT活用工事の普及・推進に向けた各機関の現状 ・管内の企業でICT専門の部署がある会社は少なく、外

注に頼るしかないのが現状。 ・これまでは一部コンサルに任せきりなところもあり、

これからは各社で対応出来るように努力する(最低でも

機材一式揃えると約2千万)。 ・BIM/CIMに対応した業務発注はまだまだ少ないのが現

状。←R元は1本発注。 ・レーザースキャナ等購入で1200万円かかって補助金を

活用しようと思ったが申請書類の書き方が難し く最終

的には銀行にお願いして書いてもらうケースがある。 ←ICT機械購入に伴い補助金を受けるのに書類の作成は

大変であるが銀行の営業担当にお願いしたり、補助金獲

得のためのコンサルもいるので活用してほしい。 ・管内でICT機械を持っているのが1社程度で大土工の場

合は札幌の会社にお願いすることになるが札幌で も保

有している会社はまだ少ないと思われる。 ・年齢を重ねると新しい物を覚えるのが面倒くさいとい

うのがあり機械はそろえてもらったが覚えるのが面倒、

それならば若者に覚えてもらおうとなるので、年齢層の

高い会社では普及は難しいと思われる。 (2) ICT活用工事の普及・推進に向けた課題・要望等に

ついて ・現場によっては、監督員が熟知してない場合、本局に

確認してからの回答となるため、確認等に時間を要し、

現場が止まるケースも。また、ICT工事を把握しきれて

ない監督員の場合、確認の必要の無い計測を行い、簡素

化となってないケースも(例えば、法面管理など)ある

のでこのようなケースを想定してQ&Aを作成し、情報

共有して欲しい。←開発局や国総研のHPにアップされ

随時更新中。 ・起工測量から3次元データの作成までは問題無く出来

ているが、ICT建機にデータを読み込み、不具合なく動

作出来るかいつも不安に思っている。経験が必要な作業

なので人材育成が課題である。 ・ICT工事の現場が少なくてコストがかかっている感じ

が強いのでとにかく使える現場を増やしてほしい。

・安定してICT活用工事があれば業者も機械を購入でき

ると思うので土工だけでなくほかの工種(床掘など)に

も拡大されるのか。←ICTの工種については順次拡大さ

れている。

6. モデル事務所へ登録

平成31年3月に、i-Constructionの取組を先導する「i-Constructionモデル事務所」として、全国で10事務所が選

定され、北海道では唯一『小樽開発建設部』が位置付け

られた。その中で、調査・設計から維持管理まで

BIM/CIMを活用しつつ、3次元データの活用やICT等の新

技術の導入を加速化させる「3次元情報活用モデル事

業」として『倶知安余市道路』が登録された。

図-4 i-Constructionモデル事務所

7. おわりに

小樽開建ではTi-4を設置しi-Constructionの普及を

進めてきたが更にモデル事務所として登録されたことを

踏まえて、次の項目について取り組んでいく予定。

・維持管理に必要な統合モデルの構築を進めると共に、

点検管理に必要な属性情報等についても検討する。

・「どれだけ生産性が向上されたのか?どれだけ効率的

に完了したのか?」について、達成度を示す指標を検討

する。