高い生体親和性を有する 高分子材料の設計技術の開発 ·...
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山形大学大学院理工学研究科バイオ化学工学専攻機能高分子工学専攻
田中
賢(Tanaka Masaru)[email protected]
http://www.bio‐material.jp/
高い生体親和性を有する 高分子材料の設計技術の開発
2012年9月7日(金)新技術説明会
Q.国際社会のニーズ:健康寿命の延伸に必要なものは何か?
医療分野に必要とされる表面処理材料医療分野に必要とされる表面処理材料
• 毒性がないこと(生体と環境に優しい)
• 安全であること
• 低コストであること
• 簡単にコーティングできること
• 環境耐性があること(性能の長期維持)
• 品質保証が容易であること
今後の製品開発の必須条件:“生体親和性”+“α”を有する材料
日本発の新コンセプトの医療製品
Honeycomb
50 µm ○抗癌効果
○低副作用
○生体親和性
○留置安定性
○優れた柔軟性
May 13th, 2010
Press release“Medical implants with anti-cancer effect”
新規生体適合性材料:
PMEAとは?ナノテク材料と癌:産官学連携成功例1
M.Tanaka et al, JP2003/399195,PCT/JP/2006/308980, etc.
Poly (2-methoxyethyl acrylate) PMEA
・生体成分との相互作用が小さい‐タンパク質吸着/変性が軽微‐血小板粘着/活性化が軽微‐補体系、凝固系、白血球系などの活性化が軽微
‐低毒性・安全性・非水溶性・非イオン性・粘着性、透明性・合成が簡便で低コスト
( CH CH )n
C=O
CH CH O CHO
2 2 3
2
*人工心肺等の医療デバイスへのフルコーティングが可能*FDA・厚生労働省から認可*癌細胞の接着選択性機能を見出し、特許出願中(山形大学)*高分子学会旭化成賞受賞(2011年9月27日)
新規生体適合性材料:
PMEAとは?
“2006年~
世界シェア第1位”
ナノテク材料と癌:産官学連携成功例2
優れた生体親和性安全性、品質保証性
生理環境下における水の構造と運動性に特徴:生体高分子との共通点
(2D, 3D)
生理環境下でのナノテク材料の理解が必要不可欠
9th World Biomaterials Congress2012/6/1-6, ChinaThe Roles of water molecules in the biointerface –clarification of biocompatibility mechanisms Chair: Masaru Tanaka (山形大)
Co-Chairs: Shigeaki Morita (名古屋大)Tomohiro Hayashi(東工大)
医療製品が使用される環境下でのナノテク材料の解析が必要
新技術の概要
病気の診断や治療方法の開発のためには、 生体親和性に優れた材料の開発が必要であ る。しかし、タンパク質や細胞の接着、異物反 応を制御できる材料の設計指針は確立され
ていない。当研究室は、生体親和性を有する 天然および合成高分子に共通する基本物性 を見出し、分子設計指針を確立した。
◆従来技術・競合技術との比較これまでに、タンパク質吸着抑制、抗血栓性、組織適合性などの性
質を個別に示す材料開発は行われてきたが、特定の細胞が接着で きる機能を有する材料の開発には成功していない。
汎用性高分子など
リン脂質高分子、製品化されている合成高分子など
ターゲットの材料(PMEA、新規合成品)
特定の組織細胞接着数
多い
生体(血液)適合性・遺物反応低い
良い
毒性が高い材料生体適合性が悪い⇒埋め込み不可(汎用性材料)
細胞が接着・増殖しない
(PHEMA,
PMPC)
高分子材料に水和した水
凍結可能な水
(昇温過程で
0 Cより低温で
凍結する水または 0 Cより
低温で融解する水:
高分子
または不凍水と中間的な相
互作用をしている水)
(0 Cで融解するが、
高分子または不凍水
と弱い相互作用をして
いる水)
(高分子との強い相互作用により–100 Cでも凍結
しない水)
“自由水”
“中間水”“不凍水”
高分子に含水した水の構造の分類(本研究での定義)
ドライ状態⇒水和(純水)状態⇒医療製品が使用される生理環境(水和、イオン存在)下
測定手段:熱、IR、NMR、AFMなど
0‐50‐100
温度 (℃)
生体親和性の指標となる中間水(水の低温結晶形成)
下限臨界
溶液温度
自由水の融解
中間水の低温融解
50
ガラス転移点
吸熱
発熱
生体親和性高分子に共通して観察される中間水
生体親和性に優れている高分子材料表面:中間水が安定に
存在し材料表面の不凍水をシールドしているので、タンパク質や細胞表面の水和構造が破壊されにくい。
合成高分子であるリン脂質(MPC)ポリマー、PMEA などのメトキシ基やエトキシ基などのアルコキシル 基を有する(メタ)アクリレート、ポリテトラヒドロフル フリルアクリレート(PTHFA)、ポリエチレングリコール
(PEG)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリメチルビニル エーテル(PVME)、ポリスルホベタイン、ポリカルボキ シベタイン、ポリ(2-ヒドロキシエチルメタクリレー
ト)をベースとするPHEMA‐graft‐phema、PHEMA‐アミ ンなどの共重合体など( 各種新規合成高分子)。
生体高分子であるゼラチンやアルブミン、チトクロー ムCなどのタンパク質、ヘパリン、ヒアルロン酸、コン ドロイチン硫酸、アルギン酸などの多糖、DNA、RNA などの核酸にも共通して観測された。
生体親和性高分子に共通して観察される中間水
山形大学、特許出願(2010年11月)
想定される用途
生体成分(タンパク質など)の吸着、変性抑制材防汚染材料センサーチップ表面処理材料、病気の診断細胞の選択的接着、濃縮材料薬剤スクリーニング、医療デバイス、再生医療
本技術に関する知的財産権
• 発明の名称:
溶液から細胞を分離する細
胞分離方法、および、細胞分取用水和性
組成物
• 出願番号:
特願2010-256467• 出願人
:
山形大学
• 発明者
:
田中
賢ら
産学連携の経歴
• 2000年
人工心肺、血球分離膜、カテーテル用
のコーティング材などの製品化
• 2004年
JST研究成果活用事業などに採択
• 2010年
胆管ステントの製品化
• 2011年
内閣府最先端・次世代研究開発支援
プログラムライフイノベーション分野に
採択