赤外線ビジョンによる 歯車の歯当たり解析技術 ·...
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赤外線ビジョンによる歯車の歯当たり解析技術
同志社大学 理工学部
機械システム工学科
教授 廣垣 俊樹
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研究背景
光明丹による歯当たり評価
かみ合わせる 剥れた部分を確認
赤外線ビジョンを用いたハイテクな歯当たり評価技術の開発
歯面に塗料を塗る
欠点
大半が歯車測定機を使用(歯面形状精度/インボリュート曲線を基準として)
・幾何学的基準がない・測定機が高価で精度も?・歯車対の共役性
ヘリカルギヤ
歯面精度の管理
歯当たり評価ベベルギヤハイポイドギヤ
Helical gear Spiral bevel gear
① 接触判定(輪郭境界の判定)が難しい(S/Nが低い)② 接触面内の面圧の強弱がわからない
ヘリカルでもベベルでも,実用的である程度の効果がある汎用的な手法
(開発および製造現場)
(低騒音で信頼性の高い歯車動力伝達装置の開発)
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製造ラインでの各種計測
加速度ピックアップ
運転ベンチ
<組立状態での評価>
運転ベンチ
<組立状態での評価>
歯車測定機
<歯車単体での評価>
歯車測定機
<歯車単体での評価>
歯当たり評価
<歯車単体での評価>
歯当たり評価
<歯車単体での評価>
背景(ギヤの試験方法)背景(ギヤの試験方法) 駆動系振動騒音 対処療法的
根治療法的
輪郭?
面圧?
歯車自体での性能向上
かみあい状態を最終的に判別するには優秀な手法であるが,ブレークスルーする新規技術は少ない
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新技術の基となる研究成果・技術
ヒトの五感古来からの分類:視覚,聴覚,触覚,味覚,嗅覚
ヒトの第六感の可能性・・・
(マムシ)
ピット器官ニシキヘビ科・マムシ亜科など(温血動物をとらえる)
ヘビの目からみた歯当たり画像とは?
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可視領域 赤外線領域
0.5 1 3 5 10 100 1000
Wavelength (um)
0.4~0.8 0.8~1000
○観察に用いる光の波長領域
可視領域に比べ波長帯が広い
(1)カラー画像処理による歯当たり評価(2)赤外線サーモグラフィによる歯当たり評価
最新鋭の赤外線サーモグラフィ1.温度分解能の向上(公称0.025℃)2.応答性の向上(公称2~8ms)3.トリガ機能の向上しかしフレームタイム1/120秒の問題が残るが
(3)近赤外線カメラ・半導体製造プロセスの表面検査用
熟練技能者・技術者の第六感に迫る可能性
新技術の基となる研究成果・技術
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Wavelength (um)
中間赤外線領域
(MIR)
3~50.8~1.10.8 1 3 5 10 100 1000
近赤外線領域
(NIR)
○赤外線領域
0.2~0.30.1~0.2
0 ~0.1
○中間赤外線画像からの歯当たり抽出歯当たり評価歯面のみを抽出
Drive gear
Driven gear
駆動時の歯面の赤外線画像
回転開始前との差分処理を行う
赤外線画像の差分処理による歯当たり抽出手法赤外線画像の差分処理による歯当たり抽出手法
・中間赤外線領域 :歯当たり接触面内の温度分布のS/N比の向上
赤外領域画像を総合的に活用した新しい歯当たり評価手法の確立
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歯車かみあい接触部表面の温度上昇を示す基礎式歯車かみあい接触部表面の温度上昇を示す基礎式
Tf :歯面温度(℃) μ:摩擦係数ωN :単位歯幅あたりの歯面法線荷重(N/mm)2b :ヘルツの接触幅(nm)v1,2 :歯面接線方向速度(mm/s)k1,2 :比熱,比重量,熱伝導率を掛け合わせた
ものの平方根
○Blokの式
bvkvkvvT
s
Nf )(
)(83.0211
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+−
=μω
歯面接触時に発生する温度上昇
摩擦係数μと熱物性値k1,2がポイント
撮影する歯車の回転数設定と使用する赤外線サーモグラフィのシャッター速度をチューニングすることで鮮明な画像が取得できる.
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○外端当たり
差分熱画像
光明丹による観察温度差分画像
0.3~0.2~0.30.1~0.20.0~0.1
○中央当たり
差分熱画像
光明丹による観察温度差分画像
0.3~0.2~0.30.1~0.20.0~0.1
赤外線画像と従来歯当たり試験画像の比較1
赤外線画像と従来歯当たり試験画像の比較1
回転数:60rpm トルク:98Nm撮影装置:中間赤外線サーモグラフィ (波長:3.5~4.1,4.5~5um)
差分:回転開始直後と約 30秒後の歯面
○内端当たり
差分熱画像
光明丹による観察温度差分画像
0.3~0.2~0.30.1~0.20.0~0.1
Drive gear
Driven gear
Targeted tooth surface
Rotationdirection
昇温の箇所から,接触面内のPV値の情報が取得可能赤外線画像(差分処理後)
従来歯当たり試験画像
赤外線画像(差分処理前)
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Contact area Temperature distribution
赤外線画像では外端に歯当たりが見られない
25M
Pa
One pitch
Root stress
荷重分布を精度よく測定荷重分布を精度よく測定
かみあい始め → 外端に無応力外端当たり→かみあい始め
toe middle heelA
かみあい接触線 Aかみあい接触線 Aかみあい接触線
0~0.1℃0.1℃~0.2℃0.2℃~
toemiddle
heel
塗料の厚みにより剥れた
接してはいるが,無荷重
赤外線画像と従来歯当たり試験画像の比較2
赤外線画像と従来歯当たり試験画像の比較2
正確な面圧分布の計測により,高い精度で強度および振動騒音の予測および管理が可能になる.
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従来技術とその問題点
Micrograph
Red signal picture
Bule signal picture
Picture of subtractionblue from red
赤の信号では輝度値が大きい
青の信号では輝度値が小さい
光明丹は赤色に近い
<<問題点>> 画像処理で金属である歯面と塗料の識別が難しい.
画面分解能:512×512画素
輝度階調:8ビット(256 階調)
カラー画像処理により歯車の歯面と光明丹の
区別が明瞭
カラー可視画像を用いた歯当たり判定法の限界カラー可視画像を用いた歯当たり判定法の限界
しかしながら,収差や短波長散乱による歯当たり境界の不明瞭さが残る.また,接触面の面圧の強弱の情報の抽出は難しい
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新技術の特徴・従来技術との比較
• 従来技術では不可能であった,歯車のかみあい接触部における接触面圧の分布情報を取得可能にした.
• 本技術の適用により、歯車のかみあい接触部における面圧Pとすべり速度vの両者の情報が取得可能で,新たな限界面圧設計,低騒音歯車を目指した歯当たり管理の技術が期待される。
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想定される用途
• 研究開発フェーズにおいては,試作段階で歯車歯面の実面圧分布を調べ,歯面の強度設計に応用する.また,歯車のかみあい伝達誤差や振動騒音との相関より,歯面の狙い歯形を決定する.
• 生産製造フェーズにおいては,従来の視覚画像を用いた歯当たり試験の代替として,低騒音歯車の品質管理に利用する用途などが考えられる.
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想定される業界
• 利用者・対象歯車動力伝達機器のメーカーの研究・開発設計および生産製造現場など
(自動車,航空機,風力発電,建設機械,農業機械など)
• 技術導入に必要な機器赤外線サーモグラフィ・歯車負荷かみあい試験機
画像処理ソフトなど.
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実用化に向けた課題• 現在,スパイラルベベルギヤ,ハイポイドギヤなど直交軸系の歯車装置について歯面の温度分布の検出が可能なところまで開発済み.しかし,検出温度から歯面上の面圧Pとすべり速度vを分離する技術は未開発.また並行軸系の歯車に関しては未トライ.また画像の差分処理の自動化が不完全.
• 今後,面圧Pとすべり速度vと検出温度の関係を明確化し,設計および品質管理への応用展開を検討する.
• 実用化に向けて,画像の差分処理の自動化を行い,現場でも容易にデータ取得可能なシステムにする必要がある.
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企業への期待
• 検出精度の向上およびデータ取得の自動化処理が課題である.ハード面としては赤外線カメラの見直し,ソフト面としは画像処理方法の見直しで対応可能と考える.
• 基礎技術面では,赤外線熱画像の技術を持つ企業との共同研究を希望する.
• 応用技術面では,歯車の高性能化・低騒音化を目指す企業との共同研究を希望する.
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本技術に関する知的財産権
• 発明の名称 :歯車の噛み合い起振力推定方法及び装置
• 出願番号 :特願2004-28560• 出願人 :学校法人同志社
• 発明者 :上西康弘、廣垣俊樹、
青山栄一
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お問い合わせ先
同志社大学リエゾンオフィス
産学連携コーディネーター 平尾 正三
TEL 0774-65 - 6223
FAX 0774-65 - 6773
e-mail jt-liais@mail.doshisha.ac.jp