中国で新しく誕生した極光ブランド ngg-kt88...kt88は大出力を取...
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連戦:現代曹情報シリーズ
中国で新しく誕生した極光ブランド
NGG-KT88(Part-4)
e 都来往人 e
はじめに
先月号では 中国で護生した新ブランド:「桂光
(GuiguanD」製真空管の第三弾として,実に約10年
ぶりに復活したチタン・プレート型の4300Bをご紹
介しました.
今回は現時点で同社製唯一の傍熱型多極出力管であ
るKT88をご紹介しますか まずその前に中国製
KT88の系譜に触れておきたいと思います.
中国製のKT鍵というと.多くの方は背丈の短い
ズンダ)した球をイメージするのではないかと思いま
すがこれは現在の曙光電子喧叫叩狐dがまだ国
営工場だった1950年頃に 以前から製造していた
6550(SG-6550)の電極を新しく製作したKT88風
のバルブに封入することによって生まれたモデルです
(SG-KT88).M一〇.Valve製のオリジナルKT88
とは異なり,プレート側面部に穴が開いているのはそ
のためです.
SG-KT88の管頂都(ドーム部分)や胴周りの直径
はオリジナルKT泌とほほ同様ですが 背丈は約
10mm短くなっています.まだ フォルムはほぼ同
様ですが よく見るとドーム部分と胴部はそれぞれオ
リジナルよりも約5mm短くなっています.
SG-KT88はSG-6550と背丈がほぼ同じことか
ら.バルブはSG-6550をベースに直径やフォルムを
オリジナルKT88風に改修したのではないかと思わ
れます.
余談になりますが プレート側面部に大きな丸穴が
3つ開いた電極を丈の短いST-16型バルブに封入L
JAN.2011
たSG-6550はTung-Sol製オリジナル6550の後期
型(Type-3)によく似ていますがトップの主マイ
カに粗み合わされたサイド・マイカは矩形状の2枚タ
イプ(オリジナルは菱形の3枚タイプ)で Gl放熱
板は浅い凸字状断面の2枚板(オリジナルはU字状
断面の1枚板),バルブは約5mm短いといった違い
があります.
ドーム部分の直径が一回り大きくなったSG-KT88
は,原型(SG一統50)のトップ・マイカでは髄を管
壁に支持できなくなるため.新たに製作した大口径の
ドーナツ状のものに交換し,さらに構造強化を図るた
めにサイド・マイカを1枚足した3点支持に改めてい
ます.
SG-KT88はゼロ・ペースで開発されたのではな
く.当時の国営工場の持てる技術(=SG-6550の製
造能力)の中でアレンジを加えてオリジナルの復刻を
目指した成果と言えます.
市場からオリジナル球が枯渇してゆく中で 非常に
安価な中国製真空管は代替品として急速に世界中に普
及してゆきましたが その一方で材料や品質管理等に
問題があって特鮭や外観にはムラがあり.寿命や耐久
性の点ではオリジナルのレベルには及ばず 流通経路
の違いによって市捌こ出回る製品には規格外の質の悪
いものまでが混在するといった有様でした
けれども,大手商社やセット・メーカー等力湘次い
で品質の向上を強く求めた結果,中国側の努力もあっ
て,数年後には大幅に改善されることになります.
SG-KT88も,品質や寿命.高プレート損失時の安
定杜や耐久性以外に ルックスがオリジナルとはかな
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KT88は大出力を取
り出すために高電圧・大
電流動作で使われること
が多いのですか SG-
KT88は30Wを超える
ような高プレート掘失状
態での安定性や耐久性が
ネックになっていたた
め,次に手がつけられた
のは定格と安定鮭の向上
でした
プレート材質を炭化処
理したニッケル・メッキ
鉄板(=Carbonized
IronwithNickelplated)
から,銅をコアに鉄とア
ルミで被覆しだ 熱伝導
性に優れた複合素材(=
ALCu-Fe)に変更する
ことで プレート損失を
絶対最大定格で5Wア
ップさせたKTl00Od
=45W)が1996年に
発表されましたが 見た
目(内部構造やバルブ)
は原型(SG-KT88)と変わりませでした そこで
KT94用に開発されたオリジナルにより近いサイズ
とフォルムの新形状バルブを組み合わせたKTl00A
も発表されました
新形状バルブによって中国製KT88のルックスは
オリジナルにかなり近くなりましたが プレート側面
部には大きな穴が開いていて.トップ・マイカには矩
形状のサイド・マイカが組み合わされているなど内部
構造は従来のままで 依然として外観に不満が残りま
した けれども.1995年頃にGolden-Dragonブラ
ンドから“KT88Classic’という画期的なモデルが発
表されたことによっで 大きな転機が訪れました
GD-KT88ClassicはKT94(=GD-KT88L)同
様に丈の長いバルブを採用していますが 管頂部のカ
ープはゆるやかで オリジナルのフォルムをほほ忠実
に復刻しています.まだ 内部構造はさらに復刻のレ
ベルが高くなっています.
具体的には(Dプレート側面部はオリジナル同様の
穴無しで かつ,②問に支柱を挟んで溶接されたプレ
ラ ジ オ技術
◆KT勝一銘(Ty畔一命の構造的特徴
り異なるといった課題を抱えていたため.その後,
様々なバリエーションの改良型が生まれることになり
ました
まず最初に手がつけられたのはルックスの改良で
寸詰まりだったバルブを延長してフォルムをオリジナ
ルに近づけたKT_壁がl遡年に発表されました
同モデルで初めて採用された新形状バルブによって
曙光電子製KT88の背丈はほぼオリジナル同様にな
りましたが 管頂部はカープがきつくなって.まるで
栗饅頭のような形状に変わりました 管頂部のライン
だけを見ればカープの緩いSG-KT88のほうがオリ
ジナルに近いのですか バルブの成形型を改修する際
に.丈を延長するだけではなく管頂部の曲率にまで手
を加えた理由は不明です.なお.KT94はルックス
のみの改良型で 能力的にはSG-KT88と変わりま
せん.また.同モデルは英国:PM-Componentsが
展開するGolden-DragonブランドからKT88Lとし
て発表されたため,恐らく同社の要求で開発されたも
のと思われます.
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構造的に見て,新桂光のNGG-KT88は柳州製LZ
-KT88(Type-2)の復刻版と言えるような内容であ
ることがわかりましたが 肝腎の音質が気になりま
す.
残念ながらKT88をそのままセットできるアンプ
が手許にないため,自作の6V6シングル・アンプ
(初段はECC88-SRPP,整流管はGz32という陣容)
のバイアスと負荷抵抗を調整した上でテストすること
にしました
今回,比較試聴用に用意したのは ヴィンテージ球
はオリジナルM-0.Varveの1979年製(7917:Gold-
Lionブランド)を,現代管は曙光電子製KT88-98
の現行品(Type-4)と柳州製LZ-KT88の後期型
(Type-2),NGG-KT88の計4種類です.LZ-KT88
(Type-2:01dTimeブランド)を選んだのは新桂
光の製品に構造的に最も近いからです.
リファレンスとして最初に試聴したオリジナル
KT泌(1979年製)は一聴して明るく元気がよく,
ダイナミックで温かみのある.パワフルで押し出しの
よい音です.どちらかと言うとややナロー気味です
が 明瞭度が非常に高くてくっきりしており.かつ
瑞々しいのが特徴です.馬力のある低域は適度に締ま
っていて.高域まで素直によく伸びており,音の芯は
中城にあります.バランスは最高です.響きや余韻は
豊かで メリハ1)があって粒立ちも良く,かつどっし
り落ち着いた.なめらかでこなれた感じの音です.ス
テレオ感や奥行き感.スピード感も十二分に伝わって
きます.密度の濃いその昔はトロリと濃くてダ)-
ミイな感じで「艶っぽさや何とも言えないスウィート
さが感じられます.ヴォーカルは艶かしぐ アコース
ティック楽器だけではなくエレキ・ギターやキー・ボ
ードなどの電子楽器も魅力的に聴こえます.演奏者の
息遣いや指使いなど微妙な表現力は非常に高く感じ
ました アナログ的な傾向の音ですが古きを感じさ
せません.M一〇.ValveオリジナルのKT88は 様々
な要素が非常にバランスよく高次元でうまくまとまっ
ており.かつ.包み込まれるような余裕感や英国風の
センスの良さも感じられリスナーを納得させるよう
な魅力を持っていることが再確認できました.オーデ
ィオ愛好家やミュージシャンの双方から銘球として評
価が商いのもよくわかる気がします.
続いて試聴した中国製KT鎚の標準的モデル:
KT88-98の現行品(Type-4)は約12年の問で数
次の改良と進化を遂げたおかげか.初代のSG-KT88
JAN.2011
に比べて様々な要素が改善されています.特に.よく
伸びた高域にはSG-KT88に見られた荒れがほとん
ど感じられず 音の重心も少し下がって.オリジナル
同様に芯は中城にあります.響きは豊かで明瞭度は
高く,メリハ1)があって,粒立ちも良く かつ,落ち
着いた なめらかでこなれた感じの音です.ステレオ
感や奥行き感,押し出し感やスピード感もアップして
おり.細かいニュアンスまでよく伝わってきます.バ
ランスは良好で包み込まれるような余裕感もあり.
オリジナルに近い感じでうまくまとまっています.
他方,10年前に生産終了した柳州製LZ-KT88
(Type-2)は-聴してクl)アかつワイド・レンジ
で 明るく元気が良く,押し出しが良いのが特徴で
す∴低域は豊かで高域までよく伸びており.音の芯
は中域にあって,バランスは良好です.響きや無恥ま
豊かです.レスポンスの速いその昔はダイナミックで
スピード感があり.かつなめらかです.音楽性や表現
力は良好ですが どちらかと言うとKT泌-98より
やや軽めな印象です.
最後に試聴したNGG-KT88の基本的な傾向はLZ
-KT88(Type-2)によく似ていますが 一曝して
瑞々しさがぐっと増して見通しがよく,かつKT泌-
98よりもなめらかでクリーミイさが増しています.
豊かな低域は適度に締まっていて.高域まですっとよ
く伸びており芯は中城にありますが重心が少し下が
ってバランスはKT鍵-98よりも良好です.音楽性や
表現力はさらに磨きがかかり,各要素が高次元でうま
くまとまっています.M一〇.Vかe製のオリジナル
KT88により近づいたような印象で 完成度は非常
に高いと思います.
まとめ
新桂光から昨年頃に発表されたNGG-KT88のル
ックスは 一見して曙光電子製KT88-98の現行品
(Type-4)に酪似しているように見えますがGl放
熱板はオリジナルと固形状でかつバルブの寸法や形
状もオリジナルにより近いため.復刻のレベルは
KT88-98よりも高くなっています.
仔細に観察すると,約10年前に製造中止になった
柳州製LZ-KT88(Type-2)の復刻品と言えるよう
な内容であるものの,バルブの胴が数mm短くて.
ベースの底板が茶色で プレートには放熱翼が4枚セ
ットされている.といった違いがあります.特にプレ
ートへの放熱翼の追加は中国製KT88では同モデル
107
形式 K T 8 8 (初期型) K T 8 8 (後 場型) N c o - K T e e 備看
絶対最大定性
E p m a∴義 6 0 0 V 8 0 0 V e O o V ● 事 韻椙 か?
E g 2 n o∴具 6 0 0 V 6 0 0 V 6 o o V 章 年 賦櫨か?
l k m a∴賃 1 7 nn A 2 3 0 m A 2 3 o nn A
プ レー ト櫨失 3 S W 4 2 W 4 2 W
6 2 標失 6 W 8 W e W
動作例
E p 2 5 0 V 2 5 0 V 2 e o V
6 8 2 2 5 0 V 2 5 0 V 2 e O V
E g l - - l s V - 1 4 V
t p 1 4 0 m A 1 4 0 m A 1 4 e nnA
l g 2 - 3 m A 2 o nn A 蕪 ※実測億は 2 . 8 m A
G n l l m A / V 1 1 . 5 m A / V 1 1 m ▲/V
内部低統 1 2 K O 1 2 K O 1 2 K e
機照準 (6 11 ;2) 8 8 -
注釈 1 9 5 9 年規格 表 1 9 7 4 年 債格 表 公義H P 篤農〃
〈第1表〉NGG-KT秘の規格
が初めてです.
個人的な試聴結果ではクリアかつワイド・レンジ
で 明るくて元気が良く,押し出しが良いといった基
本的な昔の傾向は10年前に生産終了した柳州製:LZ
-KT88(Type-2)によく似ていますが瑞々しさが
ぐっと増して見通しがよくなり.かつ曙光電子製:
KT総-98よりもなめらかでクリーミイさが増してい
ます,音楽性や表現力に磨きがかかってオリジナル
KT88により近づいたような印象で 完成度は非常
に高いと思います.
ところが 公式ホームページに掲載された規格表に
はかなりの疑問符がついてしまいます.
Ikmax(230mA)やプレート損失(42W).G2損
失はW)がオリジナルの後期型と同レベルにもかか
わらずEpmaxはオリジナルの前期型と同レベル
(600V)でEg2maxはさらに100Ⅴ低く(5m)Ⅴ)
なっています.
構造的に見て,KT88-98(Pd=43W)に放熱異
を4枚追加した設計のNGG-KT88は 素人目には
プレート表面積が増えた分だけ耐損失もアップしてい
るのではないかと思われますが 公称値は控え目に抑
えられているようです.(信頼性の裏付けがあっての
話ですが)オーバー・ロードに耐えうる能力はかなり
商いのではないかと思われます.プレートやG2の耐
圧が低く抑えられている理由は現時点では不明です
が メーカーに問い蝕せたところ「プレートに800V
までかけてもOK」という回答が得られたので 誤植
の可能性が極めて高いように思われます.
まだ標準接続時の代表動作例はEp=Eg2=
108
250V.EGl=-14V時 にIp
=140mA.Ig2=20mA.cm
=llmA/Vで オリジナルに
比べてEglはlV浅くて,Gm
は0.5mA/V低くなっていま
す.さらに,オリジナルと同条件
下でありながらIg2が約7倍も
多いのはKT88を名乗る球とし
ては通常は考え難いので実測した
ところ,オリジナルとほぼ同じ
(約3mA)であったことから.
これが明らかに誤瞳であることは
確実と思います.他方,バイアス
がlV浅くてGmが若干低いこ
とを誤植とみなすか?あるいは個
性ととらえるかは微妙なところですが KT88はグ
リッド・バイアスIVでIpが10mA以上も変化する
高Gm特性のため.NGG-KT飴を使用する際には,
念のため.固定バイアス動作ではグリッド・バイアス
を再調整しておいたほうが無難です.
せっかく構造的に見て現行品で最もオリジナルの復
刻レベルが高くで.かつ音質的にも良好なのに.公開
されたスペックが見劣りあるいは信じ難い数値になっ
ているのば オリジナル並みの能力が出せない欠陥商
品とみなされかねないので ぜひとも近いうちに正し
い情報が発表されることを期待しています.
実際のところは少なくてもEpが脚Ⅴ未満での
動作においでは 能力的にはオリジナルと同程度と見
てよいかと思われます.
NGG-KT88は国内のショップではまだ販売されて
いないようですが ネット・オークション等では入手
可能です.
新棟光のマークの変遷について(訂正)
先月号では これまでに確認できた新極光のブラン
ド・マークは都合3回の変遷を経ており,印刷色が赤
色で‘NGG.の3文字が付記されたものが現行品とお
伝えしましだ これは当時,同社の公式ホームページ
に掲載されていた製品が全て赤色プリントで“NGG”
の3文字が付記されていたからでした
ところが11月頃になってからネット通販で新桂
光製の球を扱う業者が増えてきて,そこで紹介されて
いる製品のいずれもが金色プリントの“NGG録無し
で 中には「金色プリントは日本向け」という説明も
ラ ジ オ技術