より詳細なペプチドマッピングによる - thermo...

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Application Note

1159より詳細なペプチドマッピングによる特性解析のためのリツキシマブにおけるSMART Digestと従来の溶液中消化との比較

キーワードSMART Digest、トリプシン消化、溶液中タンパク質消化、モノクローナル抗体、mAb、Vanquish、逆相、質量分析、Q Exactive、Orbitrap、バイオ医薬品、生体分子、ペプチドマッピング

目的タンパク質配列カバレッジおよび脱アミド化、酸化、糖鎖付加などの特定された翻訳後修飾(PTM)に焦点を当て、新たに開発されたThermo Scienti�c™ SMART Digest™キットを使って得られた結果と従来の溶液中タンパク質消化で得られた結果との比較。従来の水/アセトニトリルによるグラジエントを用いるThermo Scienti�c Acclaim™ VANQUISH™ C18カラムおよびThermo Scienti�c Vanquish™ Flex UHPLCシステムを分離に使用し、Thermo Scienti�c Q Exactive™ HFハイブリッド四重極Orbitrap™質量分析計を用いて測定

はじめにペプチドマッピングは、バイオ医薬品業界において医薬品の同一性と安定性を担保するため、モノクローナル抗体(mAbs)の特性解析に使用される一般的な手法です。従来のサンプル調製法は消化に数時間かかるなど時間を費やすものが多く、脱アミド化、酸化、カルバミル化などの修飾が導入されてしまうことがあります1。本アプリケーションノートでは、治療用組み換えmAbの翻訳後修飾および化学修飾の程度の定量において、2種類の従来の溶液中消化法とSMART Digestキットとを比較しました。各方法の重要な必須条件を、軽鎖および重鎖の完全な配列カバレッジおよび重鎖の301番目のアスパラギンに付加された糖鎖の正確な同定および(相対)定量としました。脱アミド化、酸化、およびカルバミル化は、主にサンプル調製中に引き起こされるため、異なる消化法を直接比較するためにモニタリングしました。また、修飾導入に対する消化時間の影響を評価するために、SMART Digestキットによる経時的実験を実施しました。

2

実験消耗品• Thermo Scienti�c Acclaim VANQUISH C18、2.2 µm、

2.1×250 mm(P/N 074812-V)• Thermo Scienti�c SMART Digestキット(P/N 60109-101)• Fisher Scienti�c LCMSグレード水(P/N W/011217)• Fisher Scienti�c LCMSグレード アセトニトリル(P/N A/0638/17)• Fisher Scienti�c Optima™ LCMSトリフルオロ酢酸(P/N 10125637)• Thermo Scienti�c Pierce™ ギ酸LCMSグレード(P/N 28905)• Thermo Scienti�c PierceトリプシンプロテアーゼMSグレード(P/N 90057)

• Thermo Scienti�c Pierce DTT(ジチオスレイトール)、No-Weigh™ Format (P/N 20291 )

• Thermo Scienti�c Pierce 尿素(P/N 29700)• Thermo Scienti�c Pierce ヨードアセトアミド(P/N 90034)• Thermo Scienti�c Invitrogen™ UltraPure™ Tris塩酸(P/N

15506017)

サンプル前処理およびサンプル調製市販のモノクローナル抗体リツキシマブ製剤(Hoffmann La

Roche、スイス)は、0.7 mg/mLのポリソルベート80、7.35 mg/

mLの無水クエン酸ナトリウム、9 mg/mLの塩化ナトリウム、および水酸化ナトリウムでpH 6.5に調整した滅菌水を含む緩衝液を10 mg/mLの濃度で使用しました。

変性のために尿素を用いた溶液中消化プロトコルリツキシマブ400 µgは、pH 8 .0の7 Mの尿素および50 mMのTris塩酸塩(HCl)中で75分間変性させた後、5 mMのジチオスレイトール(DTT)を用いて37℃で30分間還元しました。アルキル化は15 mMのヨードアセトアミド(IAA)により室温で30

分間実施し、9 mMのDTTを添加して反応を停止させました。続いてサンプルを50 mMのTris HCl(pH 8 .0)で1:10(v/v)に希釈して、最終尿素濃度が 1 Mを下回るように調製しました。トリプシンは、タンパク質 /プロテアーゼ比が40:1(w/w)になるように添加し、37℃で一晩消化させました。その後トリフルオロ酢酸(TFA)を最終濃度が0.5%になるように添加して消化を停止させました(サンプル名:溶液中、尿素)。

変性のために加熱を用いた溶液中消化プロトコルリツキシマブ400 µgは、50 mMのTris HCl(pH 8 .0)中で70℃で75分間変性させた後、5 mMのDTTを用いて70℃で30分間還元しました。アルキル化は15 mMの IAAにより室温で30分間実施し、9 mMのDTTを添加して反応を停止させました。続いてサンプルを50 mMのTris HCl(pH 8 .0)で1:10(v/v)に希釈しました。トリプシンは、タンパク質/プロテアーゼ比が40:1(w/

w)になるように添加し、37℃で一晩消化させました。その後TFAを最終濃度が0.5%になるように添加して消化を停止させました(サンプル名:溶液中、加熱)。

SMART Digestキットプロトコル水で2 mg/mLになるように調製した50 µLのリツキシマブのサンプルは、キットに同梱されているSMART Digestバッファーで1:4(v/v)に希釈しました。このサンプルを、耐熱性固定化トリプシン14 µgに相当するSMART Digest樹脂スラリー 15 µLの入った反応チューブに移しました。経時的実験を実施し、トリプシン消化を70℃において1,400 rpmで15分、30分、45分、および75分間行い、mAbサンプルの完全消化を達成するには45 ~ 60分で十分であることが分かりました(図2)。消化後、反応チューブを7,000 rpmで2分間遠心分離し、上清を新しいチューブに移し、遠心分離を繰り返し行いました。ジスルフィド結合は5 mMのDTTと共に37℃で30分間インキュベートして還元しました(サンプル名:SMART Digest、15分、30分、45分、75分)。

すべてのサンプルをタンパク質の最終濃度が100 ng/µLになるように 0 .1%のギ酸(FA)水溶液で希釈し、すべての分析で2.5 µgをカラムにロードしました。

3

LC条件装置以下で構成されるVanquish Flexクォータナリシステム:• Flex システムベース(P/N VF-S01-A)• クォータナリポンプF(P/N VF-P20-A)• スプリットサンプラーFT(P/N VF-A10-A)• カラムコンパートメントH(P/N VH-C10-A)• アクティブプレヒーター(P/N 6732.0110)• ダイオードアレイ検出器HL(LC-MS分析では使用せず)(P/N VH-D10-A)• スタティックミキサー混合容量200 µL(P/N 6044.5110)• MS接続キットVanquish用(P/N 6720.0405)

分離条件(本文中で特に明記しない場合)カラム:Acclaim VANQUISH C18、2.2 µm、2.1×250 mm

移動相A:水 + 0 .1% FA

移動相B:水 /アセトニトリル(20:80 v/v) + 0 .1%FA

流量:0.3 mL/min

温度:50℃、Forced Airモードグラジエント:図1を参照

MS条件装置Q Exactive HF質量分析計(MS)を検出に使用しました。MSイオン源パラメーターおよびメソッドパラメーターの詳細は、表1Aおよび表1Bに記載しています。

100

20 40 60 800

20

40

60

80

0

1

0.2

0.4

0.6

0.8

0

0.0 96 4 0.3 50.0 25 75 0.3 51.0 0 100 0.3 60.0 0 100 0.3 61.0 96 4 0.3 80.0 96 4 0.3

流量(mL/min)

流量(mL/min)

溶離液B(%)

時間(分)

B(%)A(%)

Full MSパラメーター 設定値 MS2パラメーター 設定値Full MS Mass Range m/z 140 ~ 2000 Resolution Settings 15,000(m/z 200におけるFWHM)Resolution Settings 60,000(m/z 200におけるFWHM) Target Value 1.0×105

Target Value 3.0×106 Isolation Width 2.0 Da

Max Injection Time 100 ms Signal Threshold 5.0×103

Default Charge State 2 Normalized Collision Energy (HCD) 27

SID 0 eV Top-N MS2 5

Microscans 2

Max Injection Time 200 ms

Fixed First Mass m/z 140.0

Dynamic Exclusion 10.0秒

MSイオン源パラメーター 設定値

イオン源 HESI-II、Ion Maxイオン源

シースガス圧 45 psi

Auxガス 12

プローブヒーター温度 350℃

イオン源電圧 3.5 kV

キャピラリー温度 350℃

SレンズRF電圧 60 V

図1: LC グラジエント

表1A:Q Exactive HF質量分析計イオン源パラメーター

表1B:MSメソッドパラメーター

4

データ処理データは、Thermo Scienti�c Dionex™ Chromeleon™クロマトグラフィーデータシステム(CDS)、7.2 SR4を使って取得しました。データ解析には、Thermo Scientific BioPharma

Finder™ソフトウェア、バージョン1.0 SP1を用いました。表2

で規定しているアルゴリズムパラメーターは、すべてのサンプルで同じ設定にしました。

結果および考察SMART Digestキットを用いることで、優れた再現性で、迅速かつシンプルにタンパク質消化を行うことが可能です。mAb

サンプルの完全消化は通常45~ 60分以内で達成できます(図2)。ここでは、図3に示すように相対標準偏差(RSD)を用いて再現性を評価しました。同じmAbサンプルについて異なる日に3名の分析者が別々に消化を実施したところ、ペプチドマップはピーク面積のRSD平均値が5%未満と、完全に重なり合いました。Vanquish Flex UHPLCシステムには、高い保持時間再現性を得るためのインテリジェントなサンプルプレコンプレッションテクノロジーであるSmartInjectを備えており、これらの結果から、Vanquish Flex UHPLCシステムとこのSMART Digestキットを併用することで、卓越した再現性を実現できることが分かります。

溶液中消化サンプルと SMART DigestサンプルのTICクロマトグラムの比較(図4)から、これら二つの方法が類似していることが分かります。一晩の消化における長いインキュベーション時間を再現するため、75分という消化時間を選択しました。消化方法が多少変わったとしても、一般的に、ペプチドパターンは均一であり、検出されたペプチドの大部分は同じピークの溶出のパターンを示します。二つのクロマトグラムの異なる点と、同定されたペプチドを強調表示しています。一部のペプチドについては、たとえばペプチド「1:103–107」やペプチド「2:87–98」などのように、SMART Digestサンプルと溶液中消化サンプルの分析で強度がわずかに異なっているものもあります。その他、ペプチド「1:188–206 + alkyl」のように、二つの消化法のうち一方にのみ現れているものもあります。

SMART Digestサンプルにおいてボイドボリュームに応じて溶出される注入ピークは、溶液中消化サンプルと比べて高くなっていますが、これは高温で消化効率を最適化するためにSMART Digestバッファーに含まれている塩由来です。このピークはペプチドマップの結果に影響を与えませんが、必要であれば簡単に除去することができます。一つは、MSイオン源の前にポストカラムダイバートバルブを使用する方法です。また別の方法として、固相抽出(SPE)によりペプチドサンプルを高い再現性で消化後に脱塩できる Thermo Scienti�c

SOLAµ™ SPEプレートを使用することもできます3。

Component Detection 設定値 Variable Modifications 設定値

Absolute MS Signal Threshold 3.00×105 counts N Terminal Carbamylation Gln – > Pyro-Gln

Identification 設定値 C Terminal Lys

Mass Accuracy 5 ppm

Side Chain

Carbamidomethylation(C)Minimum Con�dence 0.80 Carbamylation(K)

Maximum Number of Modi�cations for a Peptide 2

Deamidation(N)Dimethylation(K)

Unspeci�ed Modi�cation -58 ~ +162 Da Double Oxidation(MWC)N-Glycosylation CHO Glycation(K)Methylation(K)Protease Speci�city High Oxidation(MWC)

0 20 40 60 80 100

消化時間(分)

ピーク面積(カウント × 秒)

表2:全サンプルのBioPharma Finderパラメーターの設定値

図2: SMART Digestキットを用いた15~ 90分の消化時間でmAbペプチドVVSVLTVLHQDWLNGKをモニタリングした IgG消化プロファイル2

5

mAbのペプチドマッピング解析では、軽鎖と重鎖について100%の配列カバレッジが達成されなければなりません。異なる消化条件の場合の配列カバレッジを表3に示します。15

分および30分という短時間の消化法も含めた六つすべての方法で、軽鎖と重鎖の両方に関して100%のカバレッジが達成されました。驚くべきことに、SMART Digestキットを使用した場合には、わずか15分というインキュベーション時間で、軽鎖

と重鎖の両方に関して100%のカバレッジを達成できました。 SMART Digestキットで消化したサンプルで検出されたMSピーク数は、概して溶液中消化サンプルより多くなっていました。すべての配列および電荷状態を加味した成分数およびMSでの全イオンカウント数の比較でも、同じ傾向が確認されました(表4)。

カラム: Acclaim VANQUISH C18サイズ: 2.1 × 250 mm移動相A: 水 + 0.05% TFA移動相B: 水/アセトニトリル(20:80 v:v) + 0.04% TFA流量: 0.4 mL/min注入量: 5 μL温度.: 80 °C検出: 214 nmグラジエント: 時間(分) A(%) B(%) 0 96 4 30 50 50 31 10 90 35 10 90 36 96 4 45 96 4

5 10 15 20 25 30

0

mAU

200

RSD (n=3, 15 peaks)0.024%4.466%

n=3

保持時間:ピーク面積:

2 4 6 8 10 12 14 16 18 20 22 24 26 28 30 32 34 36 38

1:103-107

1:188-206+ alkyl

1:207-213

2:360-364

2:87-98

2:311-321

1:77-102

SMART Digest、75 分

2:152-184

溶液中、加熱

未同定

未同定

図4: 加熱により変性させた溶液中消化サンプル(溶液中、加熱)および還元したSMART Digestサンプル(SMART Digest、75分)のTICクロマトグラムの対称表示。ピークラベルは、軽鎖(1)または重鎖(2)および配列における位置を示しています。

図3: 同一のmAbを3名の分析者がSMART Digestにより消化して得た別々のUVクロマトグラムの重ね合わせ。各サンプルにおいてマークした15個のペプチドを用いて分析者間および日間の相対標準偏差を計算しました。

6

ペプチドマッピングでは、アミノ酸残基に存在している可能性のあるさまざまな翻訳後修飾(PTM)や化学修飾の特定、位置確認、および(相対)定量が可能です。図5に、各分析における特定されたすべての修飾(n = 85)の相対存在量をプロットしています。軽鎖および重鎖のN末端グルタミンにおけるピログルタミル化(NH3欠損)および重鎖の301番目のアスパラギンに付加されたもっとも存在量の多いグリコフォーム(A2G1F、A2G0F、およびA2G2F)などの主要な修飾の相対存在量は図5に示しています。16番目のシステインのカルバミドメチル化は、溶液中消化サンプルでのみ特定され、SMART

Digestサンプルでは確認されませんでした。これは、サンプル調製中に IAAによるアルキル化によって引き起こされる修飾と一致しています。分かりやすくするために、図5にはカルバミドメチル化は示していません。全体として、すべての消化プロトコルにおいて修飾が同等程度検出され、いずれの実験条件でも量が増えるまたは減るという顕著な傾向は確認されませんでした。特筆すべきこととして、N319の脱アミド化やW106の酸化など多くの修飾部位に関して、SMART Digestで75分(以上)消化した場合であっても、還元したSMART Digest

サンプル中の量は溶液中消化サンプルよりも少なくなっていました。

本実験で使用しているモノクローナル抗体リツキシマブは、1328個のアミノ酸残基と16個のジスルフィド結合で構成されています4。起こる可能性のある数種類のアミノ酸PTMのうち、下流の処理や保管時にmAbで多くみられる化学修飾としてアスパラギンまたはグルタミンの脱アミド化およびメチオニンまたはトリプトファンの酸化が挙げられます。図6Aおよび図6Bは、異なる消化方法におけるアミノ酸の酸化および脱アミド化の程度をそれぞれ示しています。表5に個々の修飾部位に関する定量結果をまとめています。六つの消化法間の分散を、各消化プロトコルにおける各修飾に対して測定された相対存在量のRSDとして表しています。溶液中消化サンプルで高かったW106の酸化を除き、すべての結果は同等であり、RSD値は1%以下になっています。特定された脱アミド化に関して、最大RSD値は3.164%で、RSDの平均は0.913%でした。六つの消化法間で比較すると、サンプルインキュベーション時間の延長に伴い脱アミド化が増加するという明らかな傾向が確認されましたが(図6B)、SMART Digestキットを推奨消化時間である45分以下で使用した場合には、溶液中消化と比べて脱アミド化量が同等かそれ以下になっていました(図6Bおよび図7)。

タンパク質 MSピーク数

MSピーク面積

配列カバレッジ

相対存在量 サンプル

1:リツキシマブ軽鎖

521 26% 100% 40% SMART Digest, 15分

532 24% 100% 38% SMART Digest, 30分

526 22% 100% 38% SMART Digest, 45分

516 19% 100% 36% SMART Digest, 75分

404 28% 100% 37% 溶液中、尿素

407 31% 100% 38% 溶液中、加熱

2:リツキシマブ重鎖

827 43% 100% 54% SMART Digest, 15分

833 47% 100% 56% SMART Digest, 30分

827 45% 100% 55% SMART Digest, 45分

855 37% 100% 59% SMART Digest, 75分

638 54% 100% 62% 溶液中、尿素

619 52% 100% 61% 溶液中、加熱

特定された成分の数 合計MS面積 [カウント数 × 秒] サンプル1702 3.48 × 109 SMART Digest, 15分

1678 4.12 × 109 SMART Digest, 30分

1688 3.96 × 109 SMART Digest, 45分

1551 3.13 × 109 SMART Digest, 75分

1171 3.65 × 109 溶液中、尿素

1145 4.04 × 109 溶液中、加熱

表3:異なる消化法における配列カバレッジ

表4:異なる分析における特定された成分の数およびTIC面積

7

二つの脱アミド化部位(N236およびN388)のみがSMART

Digest条件下で脱アミド化を受けやすくなっており、インキュベーション時間を30分に短縮することが必要でした。また他の重要な修飾としては、タンパク質N-末端(+43.006 Da)とリジン残基のカルバミル化があり、これはタンパク質の老化に関連している非酵素的PTMです5。この修飾は、尿素をタンパク質変性剤として用いるサンプルの調製中に人為的に導入されることがあります。サンプル調製で尿素を使う溶液中消化では、リジンの平均カルバミル化は相対存在量が1%以下でし

た(n=6)。SMART Digestサンプルの場合、カルバミル化が大幅に低下しており、pptオーダーまたはまったく検出されないレベルでした(表5)。C-末端リジンの有無、重鎖のアスパラギンのN-糖鎖付加、軽鎖と重鎖におけるN-末端のピログルタミル化、およびリジンの糖化など、その他一般的にターゲットとされる修飾は表5に記載しています。全体で、六つのリジン糖化および12パターンのN301の糖鎖付加を特定し、RSDの平均値0.423%で(相対的に)定量することができました。

Q1+NH3 loss

N301+A2G1F

N301+A2G0F W106+Oxidation

N319+Deamidation

N301+A2G2F

G450+Lys

溶液中、尿素n = 1

溶液中、加熱n = 1

SMART Digest,15 minn = 3

100

60

70

80

90

50

40

0

10

20

30

SMART Digest,30 minn = 3

SMART Digest,45 minn = 3

SMART Digest,75 minn = 1

N301+A2G1F

修飾の相対存在量(%)

脱アミド化、 n=7酸化、 n=12

相対存在量(%)

相対存在量(%)

AB

N319+Deamidation

N388+Deamidation

N136+Deamidation

N365+Deamidation

N290+Deamidation

W106+Oxidation

M256+Oxidation

6

7

8

9

5

4

0

1

2

3

30

35

25

20

0

5

10

15

M21+Oxidation N33+Deamidation

溶液中、尿素n = 1

溶液中、加熱n = 1

SMART Digest,15 minn = 3

SMART Digest,30 minn = 3

SMART Digest,45 minn = 3

SMART Digest,75 minn = 1

溶液中、尿素n = 1

溶液中、加熱n = 1

SMART Digest,15 minn = 3

SMART Digest,30 minn = 3

SMART Digest,45 minn = 3

SMART Digest,75 minn = 1

10

図5: 酸化、二重酸化、糖化(グリケーション)、糖鎖付加、NH3欠損、異性化、リジントランケーション、メチル化、ジメチル化、およびカルバミル化など85の同定された修飾の相対存在量

図6: 各種消化法を使用した場合の各分析における同定された12カ所の酸化(A)および7カ所の脱アミド化(B)の相対存在量

8

特定されたすべての酸化(n=12)および脱アミド化(n=7)に基づいて、各サンプルの脱アミド化係数と酸化係数を算出しました(図7)。加熱変性した溶液中消化サンプルは、比較した方法のうち導入された修飾の割合がもっとも高く、脱アミド化係数が8.754、酸化係数が2.923でした。対照的に、ペプチドレベルで還元されたSMART Digestサンプルでは、二つの溶液中消化サンプルと比べて脱アミド化と酸化のレベルがもっとも低くなっていました。脱アミド化の程度は消化時間の延長と共に増加し、脱アミド化量はSMART Digestキットで15分間消化したサンプルでもっとも少なくなっていました。一般的に、脱アミド化は高温および高pH条件下で加速されます6。導入される脱アミド化の程度を最小限に抑える方法の一つは、消化バッファーのpHを下げることです。SMART Digestプロトコルは高温条件下で実施されますが、pHは7.2で、これは従来の溶液中消化法よりもかなり低いです。そのため、脱アミド化が最小限に抑えられ、標準的な37℃での溶液中消化で確認されたレベルと同等になっています。図5では、脱アミド化の程度が場所による影響を受けていることも確認できます。部位

によっては、尿素処理した溶液中消化と比べても、SMART

Digestの方が脱アミド化のレベルが低くなっています(N33、N136、N319など)。また、SMART Digestで消化時間が45分を上回った場合に、尿素処理したものと比較して高いレベルで確認されるものもありました(N388など)。

リツキシマブからトリプシン処理した二つのペプチドは、ストレス条件下で脱アミド化の影響をもっとも受けやすいことが判明しています7。N319を含む2:V306-K321(VVSVLTVLHQDWLNGK)およびN388を含む2:G375-K396(GFYPSDIAVEWESNGQPENNYK)という二つのペプチドは重鎖のFc領域に位置しており、他のヒトmAbやヒト化mAbと同じ配列を持っています。配列には複数のアスパラギンが存在していますが、太字で強調表示されているアスパラギンが脱アミド化のホットスポットであることが特定されています7。後者のペプチドは「PENNYペプチド」として知られており、両ペプチドともmAbに導入された脱アミド化の適切な指標です7。

1.000

1.902

2.730

4.533

7.286

8.754

1.000 0.924 0.926 0.621

2.502 2.923

0

1

2

3

4

5

6

7

8

9

溶液中、尿素

(n = 1)

溶液中、加熱

(n = 1)

SMART Digest,15 min(n = 3)

SMART Digest,30 min(n = 3)

SMART Digest,45 min(n = 3 )

SMART Digest,75 min(n = 1)

溶液中、尿素

(n = 1)

溶液中、加熱

(n = 1)

SMART Digest,15 min(n = 3)

SMART Digest,30 min(n = 3)

SMART Digest,45 min(n = 3)

SMART Digest,75 min(n = 1)

10

相対量

脱アミド化係数 酸化係数

図7: 六つの異なる消化条件において測定された全脱アミド化修飾および酸化修飾の相対量(SMART Digest、15分を基準に規格化)

9

相対存在量[%]

SMART Digest、

15分(n=3)

SMART Digest、

15分、RSD (n=3)

SMARTDigest、

30分(n=3)

SMART Digest、30分、RSD (n=3)

SMART Digest、

45分(n=3)

SMART Digest、45分、RSD(n=3)

SMART Digest、

75分(n=1)

溶液中、尿素(n=1)

溶液中、加熱(n=1)

RSD (%)*

中央値(%)* 修飾

0.000 0.000 0.002 0.003 0.000 0.000 0.010 0.140 0.063 0.042 0.000 K63+Glycation0.039 0.009 0.120 0.004 0.200 0.019 0.233 0.000 0.000 0.085 0.118 K102+Glycation0.144 0.020 0.136 0.006 0.142 0.005 0.036 0.000 0.000 0.060 0.138 K137+Glycation0.208 0.024 0.288 0.030 0.339 0.012 0.017 0.403 0.248 0.101 0.274 K148+Glycation0.075 0.008 0.085 0.008 0.087 0.006 0.121 0.580 0.197 0.144 0.088 K168+Glycation0.325 0.178 0.631 0.009 0.626 0.019 0.550 0.529 0.490 0.151 0.581 K182+Glycation0.411 0.033 0.480 0.014 0.515 0.012 0.632 0.244 0.177 0.125 0.473 N301+A1G012.448 0.899 13.703 0.618 14.255 0.080 14.672 9.657 12.410 1.462 13.467 N301+A2G2F5.141 0.373 5.476 0.186 6.166 0.148 4.852 4.088 5.777 0.642 5.458 N301+A1G1F0.000 0.000 0.000 0.000 0.000 0.000 0.000 0.322 0.307 0.123 0.000 N301+A1S1F0.703 0.050 0.776 0.035 0.796 0.029 0.928 0.895 0.880 0.080 0.781 N301+A2G030.052 2.351 28.838 1.471 28.667 0.971 26.689 30.825 29.838 1.652 29.229 N301+A2G0F0.363 0.036 0.451 0.004 0.490 0.021 0.576 0.396 0.302 0.079 0.449 N301+A2G138.932 3.324 38.235 1.881 36.765 1.840 38.505 38.349 37.450 1.999 37.701 N301+A2G1F1.386 0.055 1.496 0.067 1.435 0.047 0.714 1.093 0.739 0.288 1.404 N301+A2S1G1F0.838 0.079 0.816 0.038 0.836 0.031 0.003 0.584 0.306 0.274 0.813 N301+A2S2F0.278 0.005 0.302 0.030 0.291 0.030 0.268 0.000 0.000 0.114 0.274 N301+M40.753 0.068 0.994 0.104 0.966 0.088 0.577 0.728 0.489 0.188 0.847 N301+M5

96.850 0.066 96.802 0.208 96.946 0.486 96.788 97.655 97.886 0.428 96.815 Q1+Gln→Pyro-Glu99.824 0.015 99.810 0.009 99.815 0.003 99.586 99.853 99.920 0.077 99.816 Q1+Gln→Pyro-Glu1.348 0.537 1.685 0.036 1.778 0.045 0.673 3.083 2.684 0.667 1.735 G450+Lys

0.043 0.012 0.034 0.013 0.069 0.015 0.818 0.699 0.608 0.302 0.056 N33+Deamidation 0.334 0.069 0.778 0.054 1.213 0.027 1.545 3.159 2.233 0.842 1.014 ~N136+Deamidation 0.035 0.008 0.132 0.004 0.219 0.004 0.321 0.823 0.734 0.261 0.175 ~N137+Deamidation 0.034 0.005 0.070 0.037 0.115 0.020 0.343 0.879 1.399 0.428 0.103 N290+Deamidation 0.001 0.000 0.002 0.001 0.002 0.001 0.168 6.786 9.248 3.164 0.002 N319+Deamidation 0.368 0.038 0.747 0.019 1.257 0.045 1.951 0.738 1.314 0.486 0.757 N365+Deamidation 1.267 0.137 2.198 0.183 2.811 0.134 4.462 2.089 2.694 0.905 2.304 N388+Deamidation

2.177 0.040 2.211 0.125 2.522 0.059 0.065 0.000 0.001 1.043 2.200 M21+Oxidation 0.342 0.093 0.336 0.069 0.455 0.015 0.001 0.617 0.445 0.153 0.424 ~M34+Oxidation 0.248 0.061 0.189 0.037 0.164 0.013 0.549 0.926 1.113 0.327 0.210 M81+Oxidation 3.654 0.683 2.560 0.348 2.435 0.152 3.556 25.225 29.209 9.505 3.064 W106+Oxidation 0.630 0.150 0.591 0.042 0.562 0.023 0.378 0.008 0.000 0.241 0.553 ~W111+Oxidation

0.000 0.000 0.000 0.000 0.000 0.000 0.000 0.034 0.199 0.057 0.000 C133+Double Oxida-tion

0.000 0.000 0.000 0.000 0.000 0.000 0.000 0.011 0.179 0.051 0.000 C148+Double Oxida-tion

0.000 0.000 0.000 0.000 0.000 0.000 0.000 0.032 0.192 0.055 0.000 C193+Double Oxida-tion

2.673 0.158 2.843 0.254 2.686 0.243 1.820 2.215 2.407 0.344 2.578 M256+Oxidation

0.000 0.000 0.000 0.000 0.000 0.000 0.000 0.019 0.057 0.017 0.000 C265+Double Oxida-tion

0.016 0.004 0.021 0.002 0.033 0.002 0.068 0.000 0.000 0.018 0.020 C371+Double Oxida-tion

2.591 0.179 2.646 0.188 2.558 0.029 1.218 1.760 2.243 0.460 2.545 M432+Oxidation

0.000 0.000 0.000 0.000 0.001 0.001 0.000 2.192 0.000 0.633 0.000 ~K38+Carbamylation0.000 0.001 0.000 0.000 0.000 0.000 0.000 0.087 0.000 0.025 0.000 K38+Carbamylation0.124 0.008 0.190 0.011 0.232 0.016 0.001 0.000 0.000 0.092 0.155 K102+Carbamylation0.003 0.003 0.003 0.002 0.007 0.004 0.004 0.900 0.019 0.258 0.005 K278+Carbamylation0.000 0.000 0.000 0.000 0.000 0.000 0.000 0.202 0.000 0.058 0.000 K321+Carbamylation0.000 0.000 0.001 0.000 0.001 0.001 0.000 1.254 0.000 0.362 0.001 K338+Carbamylation

*Between 6 digestion methods

表5:異なる消化法で同定された酸化、脱アミド化、およびカルバミル化の比較

10

図8に、SMART Digestサンプルの TICクロマトグラム(図8A)および質量抽出範囲が5 ppmの異なるサンプルの抽出イオン(XIC)クロマトグラム(図8B)を示しています。青色のXICトレースは未変性2:V306-K321ペプチド由来で、すべての分析に存在していました。赤色のトレースは、クロマトグラムで未変性ペプチドの前に溶出されるペプチドの脱アミド型(N319)に相当します。脱アミド化ペプチドのすべての荷電状態に基づいた相対存在量は、15分のSMART Digestサンプルでもっとも低く、0.001%となっています。対照的に、PENNYペプチド2:G375-K396にSMART Digest(消化時間45分および75分)で多くの脱アミド化(N388)が確認されましたが(表5)、15分の消化法ではもっとも低い値1.267%となりました。

図8Cで分かるように、3価に荷電した未修飾ペプチドの同位体分布は脱アミド型とは異なっています。太字で強調表示しているモノアイソトピックピークは二つの種の共溶出のため、未修飾ペプチドのモノアイソトピックピーク(*; m/z 603.340)が脱アミド型の質量スペクトルの低質量側にも確認されます。脱アミド化により、モノアイソトピックピークは理論上0.984

Daの質量増加となり、その結果3価荷電シグナルには0.328

Daの質量シフトが発生します。これは測定値と良好に相関しています。

XIC: V306-K321, N319 未修飾型

20

40

60

80

100603.675

z=3

604.008z=3

604.342z=3

604.676z=3

603.342z=3

N319 未修飾型

1.05 E8

603 604 605 606m/z

20

40

60

80

100603.670

z=3 604.004z=3

604.338z=3

603.340*z=3

604.672z=3

605.006z=3

N319 + 脱アミド化

4.35 E526 28 30 32 34

時間(分)

26.9826.41

30.7230.0028.46 33.50

29.89

29.86

30.00

XIC: V306-K321, N319 + 脱アミド化

SMART Digest, 75 min

溶液中、尿素

溶液中、尿素

溶液中、加熱

溶液中、加熱

SMART Digest, 75 min

1.62 E9

3.64 E8

3.91 E8

3.61 E8

2.05 E8

3.91 E8

1.09 E8

4 6 8 10 12 14 16 18 20 22 24 26 28 30 32 34 Time (min)

26.98

16.3912.89 30.72

9.68 18.7214.5211.01

28.467.36 33.504.24 37.17

306-VVSVLTVLHQDWLNGK-321

A

BC

∆0.328

リツキシマブ重鎖ペプチド

強度2.54 E9カウント

相対的存在量

相対的存在量

図8: 還元したSMART Digestサンプル、75分のTICクロマトグラム(A)、異なる分析におけるペプチドV306-K321の未修飾型および脱アミド型の抽出イオンクロマトグラム(B)、未修飾型および脱アミド型V306-K321ペプチドの[M+3H]3+イオンの同位体分布の比較(C)。

11

結論本実験で実施したSMART Digestキットと従来の溶液中消化法との直接比較では、データ品質および得られた異なる方法間でのmAbリツキシマブについて、情報の内容に大きな違いは確認されませんでした。調べた六つすべての消化方法でリツキシマブのタンパク質配列カバレッジが100%となり、SMART Digestキットを使用することによりわずか15分で達成することができました。C-末端リジンの有無、重鎖のアスパラギンのN-糖鎖付加、軽鎖と重鎖におけるN-末端のピログルタミル化などもっとも一般的な分析ターゲットであるPTMを同定、相対定量し、異なる消化法で比較しました。全体的に、検出された化学修飾の程度はすべての消化法でほとんど同じでした。SMART Digestキットを使用した場合、酵素消化中の高温により、溶液中消化サンプルと比べて導入される脱アミド化の量は増加しませんでした。実際、算出された脱アミド化係数(および酸化係数)は尿素処理サンプルより低いか同じで、溶液中消化で加熱変性したものでは修飾レベルがわずかに上昇しました。これは、インキュベーション時間の最適化により、SMART Digestキットを使用した消化における化学修飾の導入をさらに少なく抑えられることを示しています。リツキシマブの場合、15分という消化時間が適しており、100%の配列カバレッジとPTMの正確な相対定量が達成されます。対照的に、消化時間が45分を上回る場合、化学修飾の量が増える可能性があります。興味深いことに、ある条件では他の条件よりいくつかの位置が脱アミド化しやすいことが確認されましたが、特定の消化条件との相関は認められませんでした。SMART

Digestによる消化では尿素が不要なため、リジンのカルバミル化はSMART Digestサンプルにも尿素未処理サンプルにも実質的に発生しませんでした。これにより、複雑なステップが不要で、包括的なペプチドマップを得られます。

SMART Digestは、その大幅な時間節約の可能性、使いやすさ、および卓越した再現性により、包括的なペプチドマッピングワークフローの中心となります。Smart Digestキットは、Vanquish Flex UHPLCシステム、Orbitrap型質量分析計、ChromeleonソフトウェアとBioPharma Finderソフトウェアに搭載されたシンプルかつ強力なツールと併用することで、標準化された迅速かつ再現性の高いペプチドマッピングワークフローを促進します。

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