初年次教育における学生と共同した アクティブ・ラーニングの展開 ·...

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初年次教育における学生と共同した 初年次教育における学生と共同した アクティブ・ラーニングの展開 アクティブ・ラーニングの展開 関西大学 教育推進部 教育開発支援センター 岩崎 千晶 2010.8.7 2009年 教育GP 採択 「実践三者協働型アクティブ・ラーニングの展開」 学生と共同したアクティブ・ラーニングの展開 主に,初年次教育を対象とした実践 上位学年次への接続 多人数双方向授業 (岩﨑千晶,中橋雄(2010)「LMSを活用した多人数授業におけるアクティブ・ラーニング の実践」ICT活用教育方法研究 第13巻第1号) 1 報告の概要 1. 1. 関西大学におけるスタディスキルゼミの概要 関西大学におけるスタディスキルゼミの概要 2. 2. LA(Learning LA(Learning Assistant Assistant)による活動 )による活動 3. 3. 活動の評価 活動の評価 4. 4. LA LAの育成, の育成,LA LAと共同した授業実践の仕組み と共同した授業実践の仕組み 5. 5. 今後の展望 今後の展望 報告の概要 1. 1. 関西大学におけるスタディスキルゼミの概要 関西大学におけるスタディスキルゼミの概要 2. 2. LA(Learning LA(Learning Assistant Assistant)による活動 )による活動 3. 3. 活動の評価 活動の評価 4. 4. LA LAの育成, の育成,LA LAと共同した授業実践の仕組み と共同した授業実践の仕組み 5. 5. 今後の展望 今後の展望 スタディスキルゼミ <「知」の創出プロセスの俯瞰・把握・体験> スタディスキルゼミ 6テーマ (全学共通教育科目) 主体的な関わり 他者への伝達 課題の発見 成果発表 アクティブ・ラーニング 検討 継承 相互理解 「考動力」の育成 他者との共有 調査・分析 科目 スタディスキル (ノートをまとめる) スタディスキル (パソコンで学ぶ) スタディスキル (レポートを作成す る) スタディスキル (プレゼンテーショ ン) スタディスキル (課題探求) スタディスキル (ディベート) 難易 基礎的なレベル 基礎的なレベル 導入教育として 中核的なレベル 導入教育として 中核的なレベル 応用的なレベル 応用的なレベル 高校までと違 う大学での授 業を、どう聞 いたらいいの か、ノートを どう取り、整 理するのか、 など、大学の 授業をしっか り「聞いて、 理解して、ま とめる」ため のスキルを 身につけます。 パソコンを 使って学んで ゆくための初 歩的なスキ ルを中心に 学んでいきま す。 主にグルー プでの作業を 通じて、文書、 表、スライド などの作成 や、インター ネットでの情 報検索などを 学習します。 大学で学ぶ際 に必ず必要と なる基本的ス キル(調べる、 聞き取る、読 解する、書く、 発表する、議 論する、など) を、演習形式 で訓練します。 「レポートの作 成」スキルを重 点的に訓練し ていきます。 大学で学ぶ際 に必ず必要と なる基本的ス キル(調べる、 聞き取る、読 解する、書く、 発表する、議 論する、など) を、演習形式 で訓練します。 「プレゼンテー ション」スキル を重点的に訓 練していきま す。 既に基本的な スタディスキ ルを身につけ た方を対象と しています。 興味のある具 体的な課題に 取り組むこと で、調べる、 聞き取る、読 解する、書く、 発表する、議 論するという 複数のスキル を自在に駆使 できるように 訓練してゆき ます。 既に基本的 なスタディス キルを身に つけた方を 対象としてい ます。調べる、 聞き取る、読 解する、書く、 発表する、議 論するという 複数のスキ ルを活用しな がら、「ディ ベート」という 発展的なス キルを身に つけます。

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初年次教育における学生と共同した初年次教育における学生と共同したアクティブ・ラーニングの展開アクティブ・ラーニングの展開

関西大学 教育推進部

教育開発支援センター

岩崎 千晶

2010.8.7

• 2009年 教育GP 採択

「実践三者協働型アクティブ・ラーニングの展開」

• 学生と共同したアクティブ・ラーニングの展開

• 主に,初年次教育を対象とした実践

• 上位学年次への接続 多人数双方向授業

(岩﨑千晶,中橋雄(2010)「LMSを活用した多人数授業におけるアクティブ・ラーニング

の実践」ICT活用教育方法研究 第13巻 第1号)

1

報告の概要

1.1. 関西大学におけるスタディスキルゼミの概要関西大学におけるスタディスキルゼミの概要

2.2. LA(LearningLA(Learning AssistantAssistant)による活動)による活動

3.3. 活動の評価活動の評価

4.4. LALAの育成,の育成,LALAと共同した授業実践の仕組みと共同した授業実践の仕組み

5.5. 今後の展望今後の展望

報告の概要

1.1. 関西大学におけるスタディスキルゼミの概要関西大学におけるスタディスキルゼミの概要

2.2. LA(LearningLA(Learning AssistantAssistant)による活動)による活動

3.3. 活動の評価活動の評価

4.4. LALAの育成,の育成,LALAと共同した授業実践の仕組みと共同した授業実践の仕組み

5.5. 今後の展望今後の展望

スタディスキルゼミ

<「知」の創出プロセスの俯瞰・把握・体験>

スタディスキルゼミ 6テーマ(全学共通教育科目)

主体的な関わり

他者への伝達

課題の発見 成果発表

アクティブ・ラーニング

検討 継承

相互理解

「考動力」の育成

他者との共有

調査・分析

科目名

スタディスキル(ノートをまとめる)

スタディスキル(パソコンで学ぶ)

スタディスキル(レポートを作成す

る)

スタディスキル(プレゼンテーショ

ン)

スタディスキル(課題探求)

スタディスキル(ディベート)

難易度 基礎的なレベル 基礎的なレベル

導入教育として中核的なレベル

導入教育として中核的なレベル 応用的なレベル

応用的なレベル

内容

高校までと違う大学での授業を、どう聞いたらいいのか、ノートをどう取り、整理するのか、など、大学の授業をしっかり「聞いて、理解して、まとめる」ためのスキルを身につけます。

パソコンを使って学んでゆくための初歩的なスキルを中心に学んでいきます。

主にグループでの作業を通じて、文書、表、スライドなどの作成や、インターネットでの情報検索などを学習します。

大学で学ぶ際に必ず必要となる基本的スキル(調べる、聞き取る、読解する、書く、発表する、議論する、など)を、演習形式で訓練します。「レポートの作成」スキルを重点的に訓練していきます。

大学で学ぶ際に必ず必要となる基本的スキル(調べる、聞き取る、読解する、書く、発表する、議論する、など)を、演習形式で訓練します。「プレゼンテーション」スキルを重点的に訓練していきます。

既に基本的なスタディスキルを身につけた方を対象としています。興味のある具体的な課題に取り組むことで、調べる、聞き取る、読解する、書く、発表する、議論するという複数のスキルを自在に駆使できるように訓練してゆきます。

既に基本的なスタディスキルを身につけた方を対象としています。調べる、聞き取る、読解する、書く、発表する、議論するという複数のスキルを活用しながら、「ディベート」という発展的なスキルを身につけます。

kajitani
公益社団法人 私立大学情報教育協会 平成23年度 教育改革ICT戦略大会

求められる実践と課題

• 円滑なグループワークの実践

– 集団的凝集性,合意形成などの課題

– 成長の軌跡を伝える

– 生産性のある取り組みの実行

• プレゼンテーションなどの経験の欠如

– 模倣学習につながるプレゼンテーション

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学習者中心の取り組み

教授者中心教授者中心How to Teach

教員 → 学生

教員 → LA → 学生

AS教員 職員

【従来型】

TA →SA →

【本取組】

教育支援

授業支援

学習支援

LAの育成と活動を支える 三者協働体制

Active Learning

学習者中心学習者中心How to Learn主体的な学習で主体的な学習で

考動考動力ある人材を!力ある人材を!

LAの活動状況 (各クラス2名程度) 報告の概要

1.1. 関西大学におけるスタディスキルゼミの概要関西大学におけるスタディスキルゼミの概要

2.2. LA(LearningLA(Learning AssistantAssistant)による活動)による活動

3.3. 活動の評価活動の評価

4.4. LALAの育成,の育成,LALAと共同した授業実践の仕組みと共同した授業実践の仕組み

5.5. 今後の展望今後の展望

LAとは?

〈〈授業内授業内〉〉「学習プロセスをファシリテート」学生が自らの活動を省察し,新たな考えに気付いたり,意見を整理したりすることを支える教育補助者が支援できるよう目指した.「グループワークをファシリテート」効果的な共同学習を成立させる

「授業のラーニングモデルやメッセンジャーとして活動すること」学生が模倣できるようなロールモデルや生産的な計画を促す助言

LAによるアクティブ・ラーニングの支援

ラーニングモデル

メッセンジャーファシリテーター

エンカレッジングメッセージの発信

グループワークを円滑に

積極的な自己の表現

知的な憧れ

LA

kajitani
公益社団法人 私立大学情報教育協会 平成23年度 教育改革ICT戦略大会

LAとは?

〈〈授業外授業外〉〉•研究発表

•新聞、機関紙の発行LA通信の定期的発行ex. 「夏休みをどう使うか」

•研修会への参加

•研修会の企画・運営・実施

スタディスキルゼミ (PCで学ぶ)

• 2分間スピーチ (論理的な話し方)

• デジタルストーリーテリング (意図を映像に反映,情報発信)

• プレゼンテーション (情報収集,レポートの書き方,クリティカルリーディング)

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LAの活動 (この授業では2名のLAが活動)

• 2分間スピーチ (論理的な話し方 PREP)• スピーチの見本

• 司会

– 発表者の緊張を和らげる

– 挙手を促す

• スピーチへのコメント (コメントの見本)

学生は,発表態度に関するコメントが多い

→LAによる構成に関するコメント

→次第に学生も,構成に関するコメントをするように14

LAの活動 (この授業では2名のLAが活動)

• デジタルストーリーテリング

• 構成段階

– 主張が明確でない

– 主張したいことと内容,結論が結びついていない

• 制作段階

– 技術的な支援 (ソフトの利用方法,音声の録音方法)

• 発表段階

– コメントシートの記載

15

LAの活動

• プレゼンテーション

• 主題の設定段階

• 調査・発表内容の構成段階

– 拡散している話題を収束,収束している話題を拡散

– グループでの合意形成を促す(反対意見の調整,力を持った学生の意見の調整)

– 共に考える

• 発表段階

– コメントシートの作成,司会,コメント

16

報告の概要

1.1. 関西大学におけるスタディスキルゼミの概要関西大学におけるスタディスキルゼミの概要

2.2. LA(LearningLA(Learning AssistantAssistant)による活動)による活動

3.3. 活動の評価活動の評価

4.4. LALAの育成,の育成,LALAと共同した授業実践の仕組みと共同した授業実践の仕組み

5.5. 今後の展望今後の展望

kajitani
公益社団法人 私立大学情報教育協会 平成23年度 教育改革ICT戦略大会

調査方法

• 2010年秋学期の授業終了後,受講生に質問紙調査 (有効回答数は75名) 5件法

①「授業のモデレータやメッセンジャーとしての活動(項目1-4)」

②「学習プロセスのファシリテート(項目5-8)」③「グループワークのファシリテート(項目9,10)」

• 自由記述欄を設け,「LAがいてよかった場面」,

「LAがいて困惑した場面」

18

質問項目 平均値 SD1. LAには,教員に聞きにくいような質問を気軽にできたので,

授業に取り組みやすかった

3.79 0.97

2. LAによる課題や文章の書き方などの見本を見ることで,

活動の目標を具体的に理解できた

3.80 0.95

3. LAが,教員の説明や授業内容を分かりやすい言葉で伝

えてくれ,授業への理解が深まった

3.92 0.89

4. LAからたくさん話しかけられることで,自分も授業でたくさ

ん発言するようになった

3.41 1.05

5. LAに自分(あなた自身)の考えを説明するよう促されたこと

で,自分の考えを整理できた

3.71 1.00

6. LAに授業やグループ活動で発言をするよう促されたこと

で,自信を持って発言できた

3.36 1.08

7. LAが自分の考えを整理してくれたことで,自分の考えが

不十分な部分を把握できた

3.64 1.02

8. LAから自分の考えに対する質問を受け,それに答えるこ

とで,自らの考えが深まった

3.79 1.00

9. LAがグループに話題や問いを投げかけたことで,グルー

プでの活動が円滑に進んだ

4.13 0.87

10. LAがグループ活動を円滑に進める様子を見て,自分も

同じようにグループ活動を円滑するようになった

3.76 0.85

19(N=75)

報告の概要

1.1. 関西大学におけるスタディスキルゼミの概要関西大学におけるスタディスキルゼミの概要

2.2. LA(LearningLA(Learning AssistantAssistant)による活動)による活動

3.3. 活動の評価活動の評価

4.4. LALAの育成,の育成,LALAと共同した授業実践の仕組みと共同した授業実践の仕組み

5.5. 今後の展望今後の展望

LAの育成

• 研修

• 教員によるOJT

• LAを支える組織体制

21

LAの育成

「ラーニング・スキル研修会」の実施

• 学期開始前研修

• LA自主企画研修

• 春休み合宿

• 夏休み合宿

• レポートライティング

教員・職員との協働作業の経験

企画・立案を通じたマネジメント・スキルの育成

研修を「作ること」自体がひとつの学びの場

LALA自身が自身が

企画・立案・運営企画・立案・運営

LAの育成

kajitani
公益社団法人 私立大学情報教育協会 平成23年度 教育改革ICT戦略大会

LAの育成

• 学期開始前に,ファシリテーター研修

研修は学外の講師を招聘

内容は、聴き方、議論を活性化させる方法、合意形成への導き方、など

⇒よき聴き手が受講学生の資質をひきだす⇒よき聴き手が受講学生の資質をひきだす

アドバイザリースタッフ(AS)の活動

教育開発支援センターの研究員(2007年までは教務センター授業支援グループのスタッフとして活動)

博士課程前期・後期課程の大学院生スタッフ

<これまでの主な活動>

教員の授業コンサルテーション

ICT活用支援

「授業支援」に関する教員へのヒアリング

大規模講義における双方向授業のフォロー

授業支援SAの研修の企画・実施

教員によるOJT

• 自分のクラスの履修生を勧誘

• 自分のクラスで半年間OJT• 別の教員のクラスで

• 3年生【活動1年以上】になると,比較的どのクラ

スにおいても効果的な活動が可能になるが,

教員の考える教育観を共有している必要がある

• MLを活用して,対面のミーティングで授業のふり

かえり

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三者協働体制

OJTによる支援LA候補者の発掘 LA・TA・SAの育成

研修制度のデザイン

事務職員 専任教員アドバイザリー

スタッフ

情報・事例収集学習環境への反映

双方向型教育

教員

学習支援

L Aラーニングアシスタント

双方向型教育

受講生

報告の概要

1.1. 関西大学におけるスタディスキルゼミの概要関西大学におけるスタディスキルゼミの概要

2.2. LA(LearningLA(Learning AssistantAssistant)による活動)による活動

3.3. 活動の評価活動の評価

4.4. LALAの育成,の育成,LALAと共同した授業実践の仕組みと共同した授業実践の仕組み

5.5. 今後の展望今後の展望

教員間での連携

• 担当教員間の理念・メソッド・知見の共有– 教員向けのFD ワークショップの継続実施

– ハンドブックの作成

• 科目間の連携による関与意欲の喚起

– 複数クラスでの合同合宿

– 複数クラス間でのプレゼン・ディベート大会の実施

kajitani
公益社団法人 私立大学情報教育協会 平成23年度 教育改革ICT戦略大会

広がるアクティブ・ラーニング

各学部の開講科目における

アクティブ・ラーニングの授業実践の支援

~全学共通教育科目から学部科目へ~

1. 文学部開講科目「知のナヴィゲーター」,総合情報学部開講科目「メディア表現論」におけるLAの活用

2. 「クリッカー」を用いた各学部での授業実践とその拡大

• 法学部 「現代政治論1」

• 商学部 「国際協力論」

• 人間健康学部 「少子高齢化社会を考える」

• 外国語学部 「M外国語教育メディア論」

• 総合情報学部 「メディア表現論」 など

広がるアクティブ・ラーニング

アクティブ・ラーニングを学び、考動力を身につけた学生の増加

考動力を育む多層的・複線的なプログラム

本取組の成果

大規模私立大学における大規模私立大学におけるきめ細かい教育・学習環境の創出きめ細かい教育・学習環境の創出

教育の質を高める汎用性の教育の質を高める汎用性の高い実践モデルの構築高い実践モデルの構築

学生と共同した学習環境の構築学生と共同した学習環境の構築

ご清聴を感謝いたします

岩﨑 千晶

[email protected]

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kajitani
公益社団法人 私立大学情報教育協会 平成23年度 教育改革ICT戦略大会