若手看護師における退職の予測要因の ... -...

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17 日看管会誌 Vol. 15, No. 1, 2011 The Journal of the Japan Academy of Nursing Administration and Policies Vol. 15, No. 1, 2011 原著 若手看護師における退職の予測要因の検討 Predictors on Personnel Turnover among Japanese Young Nurses 渡邊 里香 1) 荒木田 美香子 2)  清水 安子 1) 鈴木 純恵 3) Rika Watanabe 1) Mikako Arakida 2) Yasuko Shimizu 1) Sumie Suzuki 3) Key words : young nurses, turnover, longitudinal questionnaire study, presenteeism キーワード : 若手看護師, 退職, 縦断的質問紙調査, 労働遂行能力の低下 Abstract The aim of this longitudinal questionnaire study was to find predictors for young nurses leaving their hospitals within one year of hire in the aspect of individual, organizational and health related factors, and to suggest a way to prevent turnover among nurses who had less than five years of experience. First survey was conducted in September 2007; 1430 nurses responded (response rate: 63.7%). The questionnaire was comprised of individual factors, organizational factors, and health- related factors. Subsequently, we investigated into whether the respondents resigned from their jobs in the respective hospitals within one year as of September 2008. Among the 1307 analyzed people, 182 (13.9%) resigned within one year, while 1125 continued to work. We clarified as fellow. 1. The more years of experience the nurses had, the higher the rate of leaving within one year was. 2. The group of nurses leaving hospitals had more subjective health problems than those who stayed, and health related presenteeism predicted turnover of nurses, so it is important to pay attention to health and work performance among nurses with less than 2 years of experience. 3. The study presented significant predictors of turnover were a chance to discuss, the relationship between nurses and doctors, adequate facilities, and overtime among nurses with 3-5 years of experience. This result revealed the ways of preventing their resignation were to prepare further education appreciated their roles and positions, to mutually understand among healthcare members, and to manage working hours and the work environment. 4. The health related presenteeism of the group of leaving hospitals was higher than staying nurses hence it was important to the organization to manage safety and health, especially health management. 本研究の目的は,看護師経験 5 年未満の看護師の 1 年以内の退職の有無を予測する要因を個 人要因,組織要因,健康関連要因から検討することにより,若手看護師の退職予防について示 唆を得ることであった.2007 年 9 月に個人要因,組織要因,健康関連要因について自記式質問 紙調査を行い,1年後に退職の有無を調査した. 初回調査では1430部を回収し(回収率 63.7%),分析対象者は 1307 名であった.1 年以内の退職者 ( 以下,退職群 ) は 182 名(13.9%), 勤続者(以下,継続群)は 1125 名であり,以下のことが明らかとなった. 受付日 :2010年9月22日  受理日 :2010年12月18日 1) 大阪大学 Osaka University 2) 国際福祉医療大学 International University of Health and Welfare 3) 独協医科大学 Dokkyo Medical University

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17日看管会誌 Vol. 15, No. 1, 2011

The Journal of the Japan Academy of Nursing Administration and Policies Vol. 15, No. 1, 2011

原著

若手看護師における退職の予測要因の検討Predictors on Personnel Turnover among Japanese Young Nurses

渡邊 里香1) 荒木田 美香子2) 清水 安子1)

鈴木 純恵3)

Rika Watanabe1) Mikako Arakida2) Yasuko Shimizu1)

Sumie Suzuki3)

Key words : young nurses, turnover, longitudinal questionnaire study, presenteeism

キーワード : 若手看護師, 退職, 縦断的質問紙調査, 労働遂行能力の低下

AbstractThe aim of this longitudinal questionnaire study was to fi nd predictors for young nurses leaving

their hospitals within one year of hire in the aspect of individual, organizational and health related factors, and to suggest a way to prevent turnover among nurses who had less than fi ve years of experience. First survey was conducted in September 2007; 1430 nurses responded (response rate: 63.7%). The questionnaire was comprised of individual factors, organizational factors, and health-related factors. Subsequently, we investigated into whether the respondents resigned from their jobs in the respective hospitals within one year as of September 2008. Among the 1307 analyzed people, 182 (13.9%) resigned within one year, while 1125 continued to work. We clarifi ed as fellow.1. The more years of experience the nurses had, the higher the rate of leaving within one year was.2. The group of nurses leaving hospitals had more subjective health problems than those who

stayed, and health related presenteeism predicted turnover of nurses, so it is important to pay attention to health and work performance among nurses with less than 2 years of experience.

3. The study presented signifi cant predictors of turnover were a chance to discuss, the relationship between nurses and doctors, adequate facilities, and overtime among nurses with 3-5 years of experience. This result revealed the ways of preventing their resignation were to prepare further education appreciated their roles and positions, to mutually understand among healthcare members, and to manage working hours and the work environment.

4. The health related presenteeism of the group of leaving hospitals was higher than staying nurses hence it was important to the organization to manage safety and health, especially health management.

要 旨本研究の目的は,看護師経験 5 年未満の看護師の 1 年以内の退職の有無を予測する要因を個

人要因,組織要因,健康関連要因から検討することにより,若手看護師の退職予防について示唆を得ることであった.2007 年 9 月に個人要因,組織要因,健康関連要因について自記式質問紙調査を行い,1 年後に退職の有無を調査した. 初回調査では 1430 部を回収し(回収率63.7%),分析対象者は 1307 名であった.1 年以内の退職者 ( 以下,退職群 ) は 182 名(13.9%),勤続者(以下,継続群)は 1125 名であり,以下のことが明らかとなった.

受付日 : 2010年9月22日  受理日 : 2010年12月18日1) 大阪大学 Osaka University2) 国際福祉医療大学 International University of Health and Welfare3) 独協医科大学 Dokkyo Medical University

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Ⅰ. はじめに

日本における就業看護師約 81 万人のうち,25 歳未満の看護師は 9.5%,30 歳未満は 26.1%であり(厚生労働省,2008), 全労働人口と比較して(総務省,2010)若年層の労働力の割合が高い.また看護師は類似の科で 3-5 年勤務することにより中堅レベルへ達するといわれており(Benner, 1984),経験年数 5年程度までの若手は全くの新人から中堅へと専門職として成長する重要な時期である.しかし経験年数の少ない若手の時期の離職願望が高いことが報告されている(金井,2007).日本看護協会(以後,日看協)による調査では若年層看護職員(20-29 歳)が最初の職場を離職した主な理由は,割合の高いものから進学,出産・育児,結婚,勤務時間が長い・超過勤務が多い,であった(日看協,2005).看護師の過酷な労働状況も明らかとなってきており(日看協,2009),家庭と仕事の両立支援を含め,労働環境の整備による離職対策が求められている.現在,看護師確保対策の観点から新卒看護師の離

職は特に注目され,リアリティショックや教育の問題などに対し,病院ごとの取り組みのみならず,新人臨床研修等の努力義務化が 2010 年 4 月より開始されるなど政策的にも対応がすすめられている.今後看護師不足を解消し質,量ともに看護師を確保していくためには,確保した新卒看護師が若手の時期を経てさらに職業を継続できることが重要である.看護師の不足,離職率の高さは世界的に共通の問

題であり(WHO,2006),2002 年より欧州 10 カ国の看護師を対象に離職に関連する Nurses Early Exit-Study (Hasselhorn et al., 2005) や 米 国にて1980 年代より看護師の定着率の高い病院に注目して

研究された,マグネットホスピタルの研究(Scott et al., 1999),労働環境の国際比較を行った研究(Aiken, 2001)など大規模調査が存在する.Irvine & Evans (1995)のメタアナリシスでは離職は離職意向と強い正の相関があり職務満足と弱い負の相関があることが示された.Borda & Norman (1997)は職務満足よりも離職意向のほうが実際の離職には関連があること,離職に先行して欠勤(absence)が存在する可能性を報告している.Hayes et al. (2006)は,32 の文献より離職の要因を業務負担やスケジュール,マネージメントスタイル,勤務表といった組織要因,年齢や経験年数などの個人要因,報酬や就職の機会などの経済的要因とした.筋骨格系の障害(Fochsen et al., 2006),精神的健康度(水田ら,2004),BMI や コ レ ス テ ロ ー ル(Shimizu et al., 2005)といった健康状態も離職に関連する要因と報告されている.健康に関連し,米国では病院管理部門が看護師の presenteeism に注目している(Pilette, 2005).近年,産業保健では,欠勤している状態「absenteeism」の対義語として,出勤しているが心身の不調のために労働遂行能力が低下している状態をさす「presenteeism」の概念が用いられている(山下 , 荒木田,2006).代替者の得にくい医療職,教育職では体調不良時に適切な休養を取得することができず,presenteeism に陥りやすいといわれているが(Aronsson et al., 2000),特に看護師は複雑な仕事や家庭の問題のために自己の健康をケアする時間がとれず presenteeism が高いと考えられている(Pilette, 2005).慢性的な人員不足の中で交代勤務を行う本邦の看護師においても,不調を自覚しても予定外の休暇をとることができない.健康問題により生じた労働遂行能力の低下と離職の関連についても検討す

1. 経験年数 5 年未満の看護師では経験年数が高くなるほど 1 年以内に退職する割合が高くなっていた.

2. 1‒ 2 年目では退職群で心身の不調の自覚症状が有意に多く,また心身の不調による労働遂行能力の低下が 1 年以内の退職の予測要因であったことより,健康管理と労働遂行能力の低下に注意して見守ることが重要である.

3. 3 ‒ 5 年目では話し合う場,医師との良好な関係,設備,超過勤務が退職の予測要因として有意となり,役割や立場の変化に応じた教育やチーム医療メンバーの相互理解,労働時間の管理,作業環境管理が重要である.

4. 退職群では継続群に比べて不調に伴う労働遂行能力の低下が認められたことより,組織的な労働安全衛生管理の実施,特に健康管理が重要であると考えられた.

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ることが重要である.本研究では,これまでに先行研究で報告されている組織要因,個人要因に加えて健康問題とそれに起因する労働遂行能力の低下を退職の要因として検討することとした.以上より,本研究の目的は,看護師経験 5年未満

の看護師の 1年以内の退職の有無を予測する要因を個人要因,組織要因,健康関連要因から検討することにより,若手看護師の退職予防について示唆を得ることである.

Ⅱ. 方法

1. 研究デザインと調査手順集団的自記式質問紙調査とした.本研究における若

手看護師を看護師経験 5年未満の者と操作的に定義し,調査対象を病院に勤務する5年未満の看護師とした.2007年 9月に以下の手順にて質問紙調査を行い,1年後の 2008 年 9月時点では同対象者について勤務

先における退職の有無を調査した.ここで調査した退職は,所属していた病院の退職であり,看護師を継続したか,看護職から離れたかは確認していない.調査手順はまず,便宜的抽出法にて,関西・東海・

関東圏の 200 床以上の病院より 25 箇所の病院を抽出した.次に,25 病院より協力の同意を得た 12 病院に勤務する看護師の中から,2007 年 9 月時点で看護師経験 5 年未満の看護師を対象とし,質問紙を2244 部配布した.回収は郵送法と留め置き法の併用にて行った.12 病院の特徴は,設置主体では自治体が 5箇所と最も多く,次いで独立行政法人が 4箇所であり,その他は,社会福祉法人,医療法人,社会保険関係団体であった.9病院が調査開始の 2007 年9月時点で一般入院基本料1の届出をしていた.なお,調査の流れと分析対象者の選出は図 1に示した.

2. 概念枠組みと質問項目先行研究の看護師の退職に関連すると思われる要

因を抽出し,図 2のように個人要因,組織要因,健

(WIS, WOS, absenteeismでは対象外)

(階層的ロジスティック回帰分析の対象者)

(分析対象者)

回収率63.7 %

初回 2007 年9月 調査票配布 2244 名

回答あり 1430 名回答なし 814名

継続群 1125 名離職群 182名

2回目 2008 年9月 調査対象者 1307 名除外(男性など ) 73名

不調あり 1228 名

不調なし 79名

9月時点での離職の有無を把握 1307 名

図1. 調査の流れと対象者の選出

個人要因・看護業務上の自律性・看護師のコミュニケーションスキル・自尊感情

組織要因・人的環境:話しやすい雰囲気、師長の理解など・物的環境:物品、休憩空間など・勤務状況:夜勤、給料など・職場役割:プリセプター・勤務帯リーダーの経験

健康関連要因:SPSJ・心身の不調:PHC・労働遂行能力の低下:WIS

退職

図2. 概念枠組み

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康関連要因が退職に影響すると考え,質問項目を 3要因から構成した.個人要因は,看護業務上の自律性,看護師のコミュニケーションスキル,自尊感情から構成した.看護業務上の自律性は菊池らの「看護師の自律性

測定尺度」47 項目(菊池,原田,1997; 堀,2001)を参考に原版作成者の許可を得て 14 項目を抽出した.菊池らは,看護職の職務上の自律性を,専門技術に裏付けられた自主的・主体的な判断と適切な看護実践という,看護活動における専門的な能力の発揮であるとして認知,判断,実践の 3領域の能力を5件法で測定した.本研究では共通性,因子寄与率の高さ,下位尺度の構成を考慮して「私は,治療が患者に及ぼす心理的影響を予測することができる(認知)」「私は多くの情報から必要な看護を選択できる(判断)」「私は,緊急時にも落ち着いて看護を行うことができる(実践)」のような質問項目を用いた.看護師のコミュニケーションスキルは,6-Dimension Scale of Nursing Performance の日本語・改良版(松山ら,1997)から,日本語版作成者の許可を得て,下位尺度の一つである対人関係 /コミュニケーション 8 項目を用いた.「患者自身の決定や希望をケアに取り入れる」「医療チームメンバーと良い関係を築こうとする」のような質問項目を含む 8項目 4件法の尺度を構成した.自尊感情については,ローゼンバーグの尺度,クーパースミスの尺度,ジャニスとフィールドの尺度などがあるが,それらの先行研究結果(遠藤ら,1992; Arakida et al., 2004; Hirokane & Arakida, 2008; Shimizu et al., 2004)を検討し,若手看護師が回答しやすい質問として「自分には,良いところがたくさんあると思っている」「時々,自分が全く役立たずだと感じる」「私は,少なくとも他の人と同じくらい値打ちのある人間だと思う」「私は,何をしてもうまくできない人間であると思う」という 4項目を 4件法で構成した.組織要因は,人的環境,物的環境,勤務状況,職

場役割から構成した.人的環境は「話しやすい雰囲気がある」「師長の理解がある」など 9項目 4件法,物的環境は「物品の十分さ」「休憩空間の十分さ」など 5項目 4件法,勤務状況は「夜勤の多さ」「給料」など 6項目,職場役割は「プリセプターの経験」「勤

務帯リーダーの経験」の 2項目であった.健康関連要因は心身の不調とそれによって引き

起こされる労働遂行能力の低下を位置づけた.測定には Stanford Presenteeism Scale 日本語版(以下,SPSJ)を使用した.SPS の版権はアメリカのMerck & Co. Inc とスタンフォード大学が所有している.日本語版の信頼性・妥当性については女性を対象に検証されている(Yamashita &Arakida, 2008).SPS は過去 4 週間を想起して回答する質問紙である.構成は以下の 4 パートから成る.• 労働遂行能力に影響をした不調:Primary Health Condition (以下,PHC)を特定するパート.複数の不調の選択肢の中から該当するすべての不調を複数回答で選択し,その中から最も労働遂行に影響した不調,すなわち PHC を一つ特定することを求めた.なお,本調査は看護師を対象とした調査であり,女性が大多数を占める,平均年齢が低い,という特徴のある集団であるため,心身の不調に関する選択肢では,原版の心疾患や糖尿病は除き,月経困難など女性特有の不調等を加えた.なお,Presenteeism は不調に起因する労働遂行能力の低下であり,不調がないと回答した者は以下 の Work Impairment Score,Work Output Score,absenteeism の測定に関しては対象外となる.• PHC による労働遂行能力を妨げた程度:Work Impairment Score (以下,WIS)を測定するパート.5 件法 10 項目から構成され,これを合計し(range:10-50 点),0-100%に換算したものがWISである.労働遂行能力の低下はWIS の測定にて把握する.WIS の得点が高いほど労働遂行能力の低下の程度が大きいことを表す.• PHC を自覚しながらも発揮できた労働遂行能力の程度:Work Output Score (以下,WOS)を把握するパート.0-100%の Visual Analog Scale1 項目にて問う.WOSの得点が高いほど,発揮できた労働遂行能力が大きいことを表す.• PHCによる休業時間:absenteeism を把握するパート.過去 4週間における PHCによる失われた労働時間を問う.  基本属性は性別,年齢,看護師経験年数,同居家族の有無,婚姻の有無,子どもの有無を尋ねた.

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3. 分析方法経験年数別に,1年以内に退職した群と退職しな

かった群の 2 群の傾向を比較するため,個人要因,組織要因,健康関連要因の平均値の差の比較,回答傾向の差の比較を行った.次に,2008 年の 2回目調査時における退職の有無を予測する要因を検討するため,初回調査における個人要因,組織要因,健康関連要因を説明変数とする階層的ロジスティック回帰分析を行った.各要因を投入する段階ごとの説明率の差によって,各要因の影響力を比較することを意図した.分析は統計ソフト SPSS16J for Windowsを用い有意水準は 5%とした.経験年数別の分け方は,看護師は類似の科で 1-2

年程度勤務することで一人前,3-5 年程度で中堅となる,とするベナーの理論を参考に,1-2 年目(2年未満)と 3-5 年目(2 年以上 5 年未満)に分けて分析した.新人を教育するプリセプターの役割をとるのは 3 年目からが多く(日看協,2004),職場での役割の変化も考慮した.

4. 倫理的配慮対象者の追跡にはダミーコードを用い,対象者と

ダミーコードの割り振りはデータ分析に携わらない研究協力者が行ったため,匿名でデータ処理を行うことが可能であった.個人情報の利用目的や情報の扱い方については,質問紙に同封した説明書に記載し,質問紙の回答をもって同意を得た.大阪大学医学部保健学倫理委員会の承認を得て行った.

Ⅲ. 結果

1. 分析対象者の属性回収数は 1430 部(回収率 63.7%)であった.男性

50 名,経験年数が対象外であった 73 名を除外した1307 名を分析対象とした.退職理由には性差があると考えられ,男性が少数であったことから,今回の分析対象から男性は除外することとした.分析対象者 1307 名中,1年以内の退職者(以下,退職群)は182 名(13.9%),勤続者(以下,継続群)は 1125 名であった.分析対象者全体の年齢の平均と標準偏差は 24.5 ± 3.1 歳,看護師としての経験期間は平均27.3 ± 17.0 ヶ月(約 2年 3 ヶ月)であった.退職群は年齢が有意に高く,婚姻している者が多い傾向であった(表1).経験年数が長くなるほど退職者の割合は高くなる傾向であった(表1).また,WISは不調を回答していない 79 名は分析対象外となるため,WIS の記述統計やWIS を投入した階層的ロジスティック回帰分析の分析対象は 1228 名(1-2 年目 569 名,3-5 年目 659 名)であった.除外とした79 名の年齢は平均 25.5 ± 4.0 歳であり,それ以外の1228 名の 24.5 ± 3.0 歳と比較し有意に高かったが,経験年数,婚姻・子どもの有無,退職の有無では差はなかった.

2. 各要因における退職群と継続群の比較経験年数 1-2 年目,3-5 年目の 2群の個人要因と健

康関連要因(表2),組織要因(表3)の記述統計を退職群と継続群の 2群間で比較した.個人要因の各尺度について,信頼係数は看護業務

表1. 基本属性

総数 離職群 継続群 p 総数 離職群 継続群 p 総数 離職群 継続群 pN=1307 n=182 n=1125 N=603 n=57 n=546 N=704 n=125 n=579

基本属性

年齢a) 24.6(3.1) 25.2(3.0) 24.5(3.1) 0.00*

経験月数a) 27.3(17.0) 32.2(16.3) 26.5(17.0) 0.00*

婚姻ありb) 104(8.0) 24(13.2) 80(7.1) 0.01* 22(3.6) 6(10.5) 16(2.9) 0.01* 82(11.6) 18(14.4) 64(11.1) 0.07

子どもありb) 55(4.2) 11(6.1) 44(3.9) 0.23 17(2.8) 3(5.4) 53(94.6) 0.14 38(5.4) 8(6.4) 30(5.2) 0.14

経験年数別の1年以内離職割合b)

1年目 328(100.0) 27(8.2) 301(91.8)

2年目 275(100.0) 30(10.9) 245(89.1)

3年目 250(100.0) 41(16.4) 209(83.6)

4年目 237(100.0) 43(18.1) 194(81.9)

5年目 217(100.0) 41(18.9) 176(81.1)

a) 平均値(標準偏差), t検定,  b) n(%), χ2検定

目年5-3目年2-1

0.00*

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22 日看管会誌 Vol. 15, No. 1, 2011

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上の自律性 : α= 0.889,看護師のコミュニケーションスキル : α= 0.817 であり,自尊感情は因子分析の結果,一因子構造をとり,α= 0.723 であった.個人要因は 1-2 年目では退職群より継続群においてコミュニケーションスキルが高かった.組織要因では,退職群のほうが継続群よりも「な

し」,「不十分」などのネガティブな回答傾向が多かった.話し合う場は 1-2 年目,3-5 年目のどちらにおいても有意な関係性があり,いずれも継続群で「いつもある」「ときどきある」と回答するものの割合が高い傾向がみられた.1-2年目では話しやすい雰囲気,勤務帯リーダーの働き,職場教育において,3-5 年目では師長の理解,学習意欲,知識伝達,医師との良好な関係,夜勤においても有意差がみられた.退職群と継続群で割合に差はなかったが,3-5 年目の68.8%がプリセプター,81.2%が勤務帯リーダーを経験していた.健康関連要因では,対象者の 94%が何らかの不調

を有すると回答していた.1-2 年目においては退職群のほうが継続群よりも不調数が多く,またそれぞ

れの疾患についても胃腸障害や頭痛など 6つの不調で退職群の有訴数が多かった.3-5 年目では不調数や各不調の有訴数,休業時間に差はなかった.労働遂行能力の低下の大きさを表すWIS の平均値はどちらの経験年数においても,継続群よりも退職群のほうが有意に高かった.また 3-5 年目の退職群と 1-2年目の継続群のWIS は同程度の点数であった.

3. 階層的ロジスティック回帰分析2 回目調査時点の退職の有無を従属変数とする階

層的ロジステッィク回帰分析を 1-2 年目,3-5 年目でそれぞれ行った.各要因の投入前後の決定係数の差を比較すると,組織要因の投入時において,Nagelkerke R 二乗の値が一番増加した.1-2 年目において基本属性投入時には退職と婚姻の有無に有意な関係性がみられ,組織要因投入時には婚姻は消失し職場教育に有意な関係性をみとめた(表4).さらに健康関連要因を投入すると最終的にはWIS のみが退職と有意な関係性がみられた (表4).3-5 年目では組織要因投入時に話し合う場,医師との良好

1-2年目 3-5年目総数 離職群 継続群 p 総数 離職群 継続群 p

N=603 n=57 n=546 N=704 n=125 n=579離職意向a) 14.7(5.6) 18.7(4.8) 14.3(5.5) 0.00* 14.9(5.1) 16.7(4.9) 14.5(5.1) 0.00*

個人要因看護業務上の自律性a) 39.9(7.0) 39.1(7.6) 40.0(6.9) 0.36 45.1(6.1) 45.1(6.1) 45.1(6.2) 0.94コミュニケーションスキルa) 23.0(3.3) 22.1(3.3) 23.1(3.3) 0.04* 23.9(2.8) 23.7(3.1) 24.0(2.7) 0.44自尊感情a) 9.2(1.9) 9.1(1.8) 9.3(2.0) 0.53 10.0(1.9) 10.1(1.9) 10.0(1.8) 0.94

健康関連要因少なくとも一つ以上の不調あり 569(94.4) 56(98.2) 513(94.0) 0.09 659(93.6) 118(94.4) 541(94.7) 0.83不調数b)

5個以下 385(63.8) 24(42.1) 361(66.1)0.00*

473(67.2) 84(67.2) 389(67.2) 1.00

6個以上 218(36.2) 33(57.9) 185(33.9) 231(32.8) 41(32.8) 190(32.8) 1.00

不調の種類b)

肩こり、腰痛 438(72.6) 46(80.7) 392(71.8) 0.15 502(71.3) 88(70.4) 414(71.5) 0.66足のだるさ 399(66.2) 41(71.9) 358(65.6) 0.37 448(63.6) 85(68.0) 363(62.7) 0.41うつ、不安感、イライラ 343(56.9) 37(64.9) 306(56.0) 0.20 348(49.4) 65(52.0) 283(48.9) 0.69胃腸障害 292(48.4) 36(63.2) 256(46.9) 0.02* 306(43.5) 56(44.8) 250(43.2) 0.84頭痛 236(39.1) 31(54.4) 205(37.5) 0.01* 272(38.6) 47(37.6) 225(38.9) 0.76月経障害、更年期障害 221(36.7) 29(50.9) 192(35.2) 0.02* 243(34.5) 46(36.8) 197(34.0) 0.68眼精疲労 177(29.4) 25(43.9) 125(22.9) 0.01* 186(26.4) 32(25.6) 154(26.6) 0.82不眠傾向 166(27.5) 19(33.3) 147(26.9) 0.28 185(26.3) 35(28.0) 150(25.9) 0.73皮膚のかゆみ、アトピー 159(26.4) 16(28.1) 143(26.2) 0.75 191(27.1) 34(27.2) 157(27.1) 1.00アレルギー 134(22.2) 10(17.5) 124(22.7) 0.50 140(19.9) 30(24.0) 110(19.0) 0.27風邪症状 114(18.9) 17(29.8) 97(17.8) 0.03* 119(16.9) 27(21.6) 92(15.9) 0.15貧血 80(13.3) 13(22.8) 67(12.3) 0.04* 79(11.2) 15(12.0) 64(11.1) 0.76その他 96(15.9) 11(19.3) 85(15.6) 0.28 100(14.2) 13(10.4) 87(15.0) 0.21

離職群 継続群 p 離職群 継続群 pN=569 n=56 n=513 N=659 n=118 n=541

WISa) 43.0(16.2) 51.5(17.2) 42.1(15.9) 0.00* 38.7(16.0) 41.5(17.5) 38.1(15.6) 0.04*

WOSa) 70.6(16.0) 63.1(16.8) 71.4(15.7) 0.00* 72.5(15.1) 71.0(16.1) 72.8(14.9) 0.28absenteeismb)

0時間 462(88.3) 39(75.0) 423(89.8)

0.01*

543(88.1) 99(86.8) 444(88.4)

0.474時間以下 22(4.2) 4(7.7) 18(3.8) 34(5.5) 9(7.9) 25(5.0)5-8時間 11(2.1) 2(3.8) 9(1.9) 15(2.4) 3(2.6) 12(2.4)9-24時間 15(2.9) 5(9.6) 10(2.1) 15(2.4) 3(2.6) 12(2.4)25時間以上 13(2.5) 2(3.8) 11(2.3) 9(1.5) 0(0.0) 9(1.8)a) 平均値(標準偏差), t検定, b)n(%), χ2検定

表2. 個人要因,健康関連要因の退職群と継続群の比較

KangoGakkai.indb 22KangoGakkai.indb 22 2011/09/08 19:17:112011/09/08 19:17:11

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23日看管会誌 Vol. 15, No. 1, 2011

The Journal of the Japan Academy of Nursing Administration and Policies Vol. 15, No. 1, 2011

総数 離職群 継続群 p 総数 離職群 継続群 p

N=603 n=57 n=546 N=704 n=125 n=579

組織要因

人的環境

話しやすい雰囲気 145(24.1) 7(12.3) 138(25.3) 233(33.2) 32(25.6) 201(34.8)

いつもある 354(58.8) 32(56.1) 322(59.1) 0.01* 393(56.0) 78(62.4) 315(54.6) 0.07

ときどきある 83(13.8) 10(17.5) 73(13.4) 68(9.7) 15(12.0) 53(9.2)

あまりない 20(3.3) 8(14.0) 12(2.2) 8(1.1) 0(0.0) 8(1.4)

まったくない

話し合う場

いつもある 193(32.1) 9(15.8) 184(33.8) 240(34.2) 36(29.0) 204(35.4)

ときどきある 314(52.2) 30(52.6) 284(52.1) 0.00* 352(50.2) 57(46.0) 295(51.1) 0.01*

あまりない 86(14.3) 15(26.3) 71(13.0) 100(14.3) 27(21.8) 73(12.7)

まったくない 9(1.5) 3(5.3) 6(1.1) 9(1.3) 4(3.2) 5(0.9)

師長の理解

いつもある 147(24.5) 14(24.6) 133(24.4) 156(22.3) 22(17.9) 134(23.2)

ときどきある 294(48.9) 20(35.1) 274(50.4) 0.06 326(46.6) 51(41.5) 275(47.7) 0.01*

あまりない 126(21.0) 13(22.8) 113(20.8) 162(23.1) 33(26.8) 129(22.4)

まったくない 34(5.7) 10(17.5) 24(4.4) 56(8.0) 17(13.8) 39(6.8)

勤務帯リーダーの働き

いつもある 199(33.3) 11(19.6) 188(34.8) 142(20.3) 22(17.7) 120(20.9)

ときどきある 341(57.1) 38(67.9) 303(56.0) 0.03* 475(68.0) 84(67.7) 391(68.0) 0.22

あまりない 54(9.0) 7(12.5) 47(8.7) 76(10.9) 14(11.3) 62(10.8)

まったくない 3(0.5) 0(0.0) 3(0.6) 6(0.9) 4(3.2) 2(0.3)

助け合い

いつもある 251(41.8) 19(33.3) 232(42.6) 228(32.5) 36(29.0) 192(33.3)

ときどきある 298(49.6) 28(49.1) 270(49.6) 0.05 410(58.5) 73(58.9) 337(58.4) 0.20

あまりない 47(7.8) 9(15.8) 38(7.0) 56(8.0) 13(10.5) 43(7.5)

まったくない 5(0.8) 1(1.8) 4(0.7) 7(1.0) 2(1.6) 5(0.9)

役割達成意識

いつもある 270(44.9) 22(38.6) 248(45.6) 198(28.3) 35(28.2) 163(28.3)

ときどきある 295(49.1) 31(54.4) 264(48.5) 0.32 433(61.9) 359(62.4) 359(62.4) 0.66

あまりない 35(5.8) 4(7.0) 31(5.7) 64(9.2) 14(11.3) 50(8.7)

まったくない 1(0.2) 0(0.0) 1(0.2) 4(0.6) 3(0.5) 3(0.5)

学習意欲

いつもある 192(31.9) 18(31.6) 174(31.9) 108(15.5) 10(8.1) 98(17.0)

ときどきある 356(59.1) 30(52.6) 326(59.8) 0.44 472(67.6) 83(67.5) 389(67.7) 0.00*

あまりない 53(8.8) 9(15.8) 44(8.1) 112(16.0) 28(22.8) 84(14.6)

まったくない 1(0.2) 0(0.0) 1(0.2) 6(0.9) 2(1.6) 4(0.7)

知識伝達

いつもある 166(27.6) 13(22.8) 153(28.1) 110(15.8) 15(12.3) 95(16.5)

ときどきある 319(53.0) 32(56.1) 287(52.7) 0.43 366(52.4) 58(47.5) 308(53.5) 0.03*

あまりない 112(18.6) 11(19.3) 101(18.5) 210(30.1) 46(37.7) 164(28.5)

まったくない 5(0.8) 1(1.8) 4(0.7) 12(1.7) 3(2.5) 9(1.6)

医師との良好な関係

いつもある 211(35.0) 19(33.3) 192(35.2) 178(25.4) 31(25.0) 147(25.5)

ときどきある 340(56.5) 31(54.4) 309(56.7) 0.51 412(58.8) 55(44.4) 357(61.9) 0.01*

あまりない 46(7.6) 5(8.8) 41(7.5) 105(15.0) 36(29.0) 69(12.0)

まったくない 5(0.8) 2(3.5) 3(0.6) 6(0.9) 2(1.6) 4(0.7)

物的環境

物品

十分である 105(17.5) 9(15.8) 96(17.7) 106(15.2) 18(14.6) 88(15.3)

まあ十分である 277(46.2) 21(36.8) 256(47.2) 0.11 291(41.7) 50(40.7) 241(41.9) 0.79

やや不十分である 183(30.6) 22(38.6) 161(29.7) 244(35.0) 46(37.4) 198(34.4)

不十分である 34(5.7) 5(8.8) 29(5.4) 57(8.2) 9(7.3) 48(8.3)

設備

十分である 83(13.9) 7(12.3) 76(14.0) 72(10.3) 11(8.9) 61(10.6)

まあ十分である 257(42.9) 20(35.1) 237(43.7) 0.19 239(34.1) 48(38.7) 191(33.2) 0.41

やや不十分である 214(35.7) 25(43.9) 189(34.9) 280(40.0) 50(40.3) 230(39.9)

不十分である 4587.5) 5(8.8) 40(7.4) 109(15.6) 15(12.1) 94(16.3)

空間

十分である 72(12.0) 5(8.8) 67(12.3) 75(10.7) 12(9.7) 63(11.0)

まあ十分である 213(35.5) 14(24.6) 199(36.6) 0.06 188(26.9) 35(28.2) 153(26.6) 0.95

やや不十分である 215(35.8) 27(47.4) 188(34.6) 261(37.3) 47(37.9) 214(37.2)

不十分である 100(16.7) 11(19.3) 89(16.4) 175(25.0) 30(24.2) 145(25.2)

休憩場所

十分である 137(23.0) 8(14.5) 129(23.8) 145(20.9) 22(18.0) 123(21.5)

まあ十分である 178(29.9) 14(25.5) 164(30.3) 0.05 193(27.8) 30(24.6) 163(28.5) 0.13

やや不十分である 177(29.7) 21(38.2) 156(28.8) 207(29.8) 39(32.0) 168(29.4)

不十分である 104(17.4) 12(21.8) 92(17.0) 149(21.5) 31(25.4) 118(20.6)

職場教育

十分である 158(26.3) 7(12.3) 151(27.8) 123(17.6) 15(12.2) 108(18.8)

まあ十分である 259(43.2) 22(38.6) 237(43.6) 0.00* 287(41.1) 52(42.3) 235(40.9) 0.15

やや不十分である 134(22.3) 16(28.1) 118(21.7) 203(29.1) 40(32.5) 163(28.3)

不十分である 49(8.2) 12(21.1) 37(6.8) 85(12.2) 16(13.0) 69(12.0)

勤務状況

夜勤

少ない 18(3.3) 4(8.2) 14(2.8) 10(1.6) 1(0.9) 9(1.7)

やや少ない 48(8.7) 5(10.2) 43(8.5) 29(4.6) 3(2.7) 26(5.0)

ふつう 351(63.5) 26(53.1) 325(64.5) 0.70 368(58.7) 58(52.7) 310(60.0) 0.03*

やや多い 109(19.7) 13(26.5) 96(19.0) 161(25.7) 36(32.7) 125(24.2)

多い 27(4.9) 1(2.0) 26(5.2) 59(9.4) 12(10.9) 47(9.1)

超過勤務

少ない 16(3.0) 1(2.0) 15(3.2) 38(6.2) 10(9.0) 28(5.6)

やや少ない 9(1.7) 0(0.0) 9(1.9) 26(4.3) 6(5.4) 20(4.0)

ふつう 132(25.1) 10(19.6) 122(25.7) 0.18 150(24.6) 28(25.2) 122(24.4) 0.22

やや多い 164(31.2) 17(33.3) 147(30.9) 192(31.5) 33(29.7) 159(31.9)

多い 205(39.0) 23(45.1) 182(38.3) 204(33.4) 34(30.6) 170(34.1)

給料a)

多い 4(0.7) 0(0.0) 4(0.7) 0(0.0) 0(0.0) 0(0.0)

ふつう 199(33.4) 16(28.1) 183(34.0) 0.52 146(20.9) 26(21.0) 120(20.9) 0.98

少ない 392(65.9) 41(71.9) 351(65.2) 553(79.1) 98(79.0) 455(79.1)

年休消化率a)b)

0-30% 79(30.2) 9(30.0) 70(30.2) 221(34.1) 34(30.1) 187(34.9)

30-50% 46(17.6) 3(10.0) 43(18.5) 0.61 172(26.5) 33(29.2) 139(25.9) 0.06

50-80% 54(20.6) 8(26.7) 46(19.8) 92(14.2) 12(10.6) 80(14.9)

80-100% 38(14.5) 5(16.7) 33(14.2) 63(9.7) 18(15.9) 45(8.4)

不明 45(17.2) 5(16.7) 40(17.2) 101(15.6) 16(14.2) 85(15.9)

勤務融通a)

利きやすい 67(11.3) 7(12.5) 60(11.2) 73(10.5) 15(12.0) 58(10.1)

場合による 371(62.7) 33(58.9) 338(63.1) 0.83 426(61.6) 74(59.2) 352(61.5) 0.80

利きにくい 154(26.0) 16(28.6) 138(25.7) 198(28.4) 36(28.8) 162(28.3)

勤務形態a)c)

3交代 494(81.9) 43(75.4) 451(82.6) 528(75.1) 96(76.8) 432(74.7)

2交代 72(11.9) 6(10.5) 66(12.1) 0.03 104(14.8) 13(10.4) 91(15.7) 0.21

日勤のみ 16(2.7) 6(10.5) 10(1.8) 25(3.6) 9(7.2) 16(2.8)

夜勤のみ 0(0.0) 0(0.0) 0(0.0) 0(0.0) 0(0.0) 0(0.0)

その他 21(3.5) 2(3.5) 19(3.5) 46(6.5) 7(5.6) 39(6.7)

職場役割a)b)

プリセプター経験 11(4.0) 2(6.7) 9(3.6) 0.42 484(68.8) 86(68.8) 398(68.7) 0.99

勤務帯リーダー経験 135(22.6) 15(26.3) 120(22.2) 0.51 566(81.2) 98(79.0) 468(81.7) 0.69

n(%), *:p<0.05, Mann-whitney検定,  a)χ2検定, b)1年目は除く, c)その他は除いて検定

1-2年目 3-5年目

表3. 組織要因の退職群と継続群の比較

KangoGakkai.indb 23KangoGakkai.indb 23 2011/09/08 19:17:112011/09/08 19:17:11

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The Journal of the Japan Academy of Nursing Administration and Policies Vol. 15, No. 1, 2011

な関係,設備,超過勤務が退職と有意な関係性がみられ,健康関連要因の投入後もすべて残り,この 4つの変数が最終的な説明変数となった(表5).最終的な説明率は 1-2 年目のほうが 3-5 年目よりも高かった.ここで 3-5 年目において有意な変数となった設備

について,筋骨格系の障害と関連がないか確認するため設備,腰痛,退職の変数間でクロス集計をしてχ 2検定を実施したところ,有意な関係性がみられなかった.また超過勤務について,婚姻,職場役割,不調の有無との関連を確認するため,同様に検定を行ったが,有意な関係はみられなかった.

Ⅳ. 考察

関西・東海・関東圏の 12 病院に勤務する看護師経験 5 年未満の看護師 2244 名に対し,縦断的自記式質問紙調査を行い,経験年数別に退職の予測要因

と対策について考察した.本研究は,3年間の縦断調査の初回と 2回目のデータにあたり,今後,職場環境や家庭の状況などの経年的変化について縦断的データの分析を予定している.研究の実施可能性を考慮し,比較的入手しやすい標本を作為的に抽出する便宜的抽出法を用いたため,一般化には限界がある.しかし,本邦では経験年数 3から 5年程度の看護師について,対象が 10 以上の病院にわたり,対象者数が 1000 を超える規模での縦断的調査報告はない.本研究では経験年数が上がるごとに退職率は高くなっていた.日看協の調査における離職率の算出方法とは異なるため数値を直接比較することはできないが,新卒看護師だけでなく,経験年数 5年未満の若手の時期も離職率が高いことを示唆し,退職に関連する要因を明らかにした貴重な資料といえる.また,看護師の presenteeism の測定を行い,労働遂行能力の低下と退職の関連は本邦でこれまでに報告がなく,若手看護師の退職予防策を検討する上で有意義といえる.

表4. 経験年数1-2年目の看護師における退職の予測要因 n=569

Exp(B)

pExp(B)

pExp(B)

pExp(B)

pExp(B)

p

下限 上限 下限 上限 下限 上限 下限 上限 下限 上限基本属性

婚姻 5.79 1.50 22.32 0.01 * 5.34 1.37 20.86 0.02 * 2.57 0.53 12.54 0.24 4.01 0.69 23.17 0.12 3.18 0.45 22.20 0.24子ども 0.77 0.11 5.63 0.80 0.82 0.11 5.91 0.84 2.58 0.25 26.28 0.42 2.59 0.24 28.33 0.44 2.46 0.16 38.28 0.52

個人要因自律性 1.00 0.95 1.05 0.94 0.99 0.93 1.04 0.65 0.99 0.93 1.05 0.72 1.00 0.94 1.06 0.96コミュニケーションスキル 0.89 0.80 1.00 0.06 0.95 0.84 1.07 0.39 0.94 0.82 1.07 0.34 0.96 0.83 1.10 0.52自尊感情 0.98 0.82 1.16 0.80 1.01 0.83 1.22 0.95 1.09 0.88 1.36 0.41 1.19 0.94 1.49 0.15

組織要因話しやすい雰囲気 0.81 0.29 2.24 0.68 0.77 0.25 2.31 0.64 0.51 0.16 1.67 0.27話し合う場 1.40 0.52 3.78 0.51 1.08 0.37 3.15 0.89 1.16 0.39 3.46 0.78師長の理解 1.87 0.84 4.17 0.13 1.71 0.71 4.12 0.23 1.57 0.60 4.10 0.36勤務帯リーダーの働き 0.45 0.11 1.78 0.26 0.40 0.09 1.73 0.22 0.45 0.09 2.15 0.32助け合い 2.35 0.63 8.75 0.20 2.35 0.56 9.82 0.24 3.02 0.72 12.63 0.13役割達成意識 0.32 0.06 1.76 0.19 0.29 0.05 1.67 0.17 0.18 0.03 1.17 0.07学習意欲 2.51 0.71 8.89 0.15 2.58 0.66 10.09 0.17 2.71 0.66 11.15 0.17知識伝達 0.73 0.28 1.89 0.52 0.78 0.28 2.15 0.63 0.77 0.26 2.28 0.63医師との良好な関係 1.60 0.48 5.32 0.44 1.06 0.28 4.02 0.93 1.60 0.40 6.47 0.51物品 0.66 0.25 1.74 0.40 0.72 0.27 1.96 0.52 0.66 0.23 1.94 0.45設備 1.34 0.49 3.67 0.57 1.35 0.46 4.01 0.59 1.28 0.41 3.96 0.67空間 0.58 0.25 1.34 0.20 0.54 0.22 1.34 0.18 0.48 0.18 1.27 0.14休憩場所 1.29 0.56 2.97 0.55 1.27 0.50 3.20 0.61 1.58 0.57 4.37 0.38職場教育 0.44 0.20 0.99 0.05 0.48 0.20 1.14 0.10 0.64 0.26 1.58 0.33夜勤認識 0.90 0.41 1.99 0.80 1.02 0.44 2.38 0.96 1.09 0.44 2.70 0.85超過勤務認識 0.71 0.30 1.72 0.45 0.81 0.32 2.05 0.66 1.05 0.39 2.84 0.92給料 0.83 0.36 1.91 0.67 0.89 0.36 2.18 0.80 0.59 0.22 1.55 0.28勤務融通 1.64 0.71 3.82 0.25 2.18 0.86 5.53 0.10 2.65 1.00 7.04 0.05

交代勤務a) 0.41 0.12 1.42 0.16 0.36 0.10 1.33 0.13 0.45 0.12 1.74 0.25健康関連要因

HC個数 0.82 0.21 3.23 0.78 1.22 0.29 5.15 0.79花粉症、鼻炎 0.66 0.26 1.71 0.39 0.73 0.27 1.96 0.53皮膚のかゆみ、アトピー 0.88 0.34 2.30 0.80 0.70 0.25 1.95 0.50風邪症状 0.94 0.34 2.55 0.90 0.97 0.34 2.75 0.96うつ、不安感、イライラ 0.68 0.27 1.72 0.42 0.41 0.15 1.10 0.08不眠傾向 0.74 0.30 1.85 0.52 0.54 0.21 1.41 0.21頭痛 1.34 0.57 3.15 0.51 1.02 0.42 2.49 0.97胃腸障害 1.64 0.69 3.90 0.27 1.49 0.59 3.76 0.39月経随伴症状、更年期 1.31 0.58 2.96 0.51 1.26 0.52 3.05 0.62貧血 2.30 0.85 6.27 0.10 1.86 0.65 5.32 0.25眼精疲労 1.91 0.81 4.47 0.14 1.78 0.72 4.41 0.22肩こり、腰痛 0.96 0.37 2.49 0.94 0.83 0.30 2.30 0.72足のだるさ 1.53 0.53 4.37 0.43 1.60 0.53 4.88 0.41WIS 1.03 1.00 1.07 0.03 * 1.01 0.97 1.04 0.77

離職意向離職意向 1.29 1.14 1.45 0.00 *

定数 0.10 0.00 1.58 0.72 0.78 0.87 0.03 0.12 0.00 0.00Nagelkerke R 2 乗

階層的ロジスティック回帰分析, 従属変数;離職群=1,継続群=0, a)二交代勤務=1

0.342

Exp(B)の95.0%信頼区間

Exp(B)の95.0%信頼区間

Exp(B)の 95.0%信頼区間

Exp(B)の95.0%信頼区間

Exp(B)の95.0%信頼区間

0.2470.1630.0580.033

KangoGakkai.indb 24KangoGakkai.indb 24 2011/09/08 19:17:112011/09/08 19:17:11

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25日看管会誌 Vol. 15, No. 1, 2011

The Journal of the Japan Academy of Nursing Administration and Policies Vol. 15, No. 1, 2011

1. 退職の予測要因階層的ロジスティック回帰分析では,1-2 年目と

3-5年目で共通して有意に関連があった変数はなかった.以下に,経験年数別に退職と関連が見られた変数について考察を述べた.1-2 年目では,WIS が退職に影響する要因となった.退職群に不調の有訴者が多かったことから,心身の不調から労働遂行能力の低下により退職が生じていることが示唆された.特に,胃腸障害や頭痛などが退職群に多いことから緊張感やストレスの高さが伺える.新卒看護師の辞めたい理由の調査では,入職後 3ヶ月,6ヶ月では仕事の失敗や人間関係であるが,1年後は過酷な勤務を挙げる者が多かった(水田ら,2004).1-2 年目では仕事に不慣れであり身体的疲労を感じるようになるといえる.3-5 年目では組織要因の影響が大きく,話し合う

場がない,医師との良好な関係がない,設備が不十分,超過勤務が少ないことも退職と関連があった.

この 4項目についての考察を以下に述べた.3-5 年目において話し合う場や医師との関係といっ

た他職種との連携やチームワークに関係する人的要因の項目が退職の予測因子として有意な変数となったことについては,多くがプリセプターや勤務帯リーダーを経験しており,役割や視野が拡大したために重要な要因となっているためと考えられる.そのため,役割や立場に応じた実践力を導いてくれる教育が重要であり,クリニカルラダーの活用が有効である(小島,野地,2005).また,職種や経験年数を超えて対等に話し合える場を設けるなどチーム医療メンバーの相互理解の推進が重要であるといえる.超過勤務に関しては,超過勤務が少ない者が退職

しているという結果であった.超過勤務が少ないということは,職場の役割を任されておらず意欲のない人,婚姻や体調不良などのために超過勤務を実施していない理由がある人が退職に至っているためと推測されたが,3-5 年目ではリーダー役割,婚姻,

Exp(B)

pExp(B)

pExp(B)

pExp(B)

pExp(B)

p

下限 上限 下限 上限 下限 上限 下限 上限 下限 上限基本属性

婚姻 1.36 0.62 2.97 0.44 1.36 0.62 2.97 0.45 1.36 0.58 3.21 0.48 1.22 0.51 2.91 0.65 1.17 0.48 2.82 0.73子ども 0.84 0.22 3.20 0.80 0.85 0.22 3.27 0.82 0.88 0.21 3.60 0.86 0.94 0.22 3.95 0.93 1.02 0.24 4.40 0.98

個人要因自律性 0.99 0.95 1.04 0.75 0.99 0.95 1.04 0.82 0.99 0.95 1.04 0.81 1.00 0.95 1.05 0.85コミュニケーションスキル 0.97 0.88 1.07 0.55 1.01 0.91 1.12 0.89 1.01 0.90 1.13 0.86 0.99 0.89 1.11 0.93自尊感情 1.02 0.89 1.17 0.77 1.00 0.87 1.16 0.97 1.05 0.89 1.23 0.59 1.07 0.91 1.26 0.42

組織要因話しやすい雰囲気 0.56 0.23 1.38 0.21 0.54 0.21 1.39 0.20 0.45 0.17 1.17 0.10話し合う場 2.29 1.14 4.62 0.02 * 2.27 1.10 4.68 0.03 * 2.32 1.12 4.83 0.02 *

師長の理解 1.51 0.82 2.78 0.18 1.42 0.76 2.67 0.27 1.31 0.70 2.48 0.40勤務帯リーダーの働き 0.72 0.33 1.58 0.41 0.75 0.33 1.68 0.48 0.71 0.31 1.59 0.40助け合い 1.09 0.42 2.85 0.86 0.98 0.36 2.69 0.97 1.09 0.39 3.03 0.86役割達成意識 0.83 0.32 2.15 0.69 0.91 0.34 2.45 0.85 0.95 0.35 2.58 0.92学習意欲 1.30 0.63 2.69 0.47 1.28 0.61 2.72 0.51 1.22 0.57 2.60 0.61知識伝達 1.16 0.64 2.09 0.62 1.11 0.60 2.05 0.73 1.06 0.57 1.97 0.86医師との良好な関係 2.85 1.45 5.59 0.00 * 2.99 1.48 6.01 0.00 * 2.71 1.34 5.51 0.01 *

物品 0.63 0.33 1.21 0.16 0.61 0.31 1.20 0.15 0.56 0.28 1.11 0.10設備 2.12 1.05 4.31 0.04 * 2.33 1.11 4.91 0.03 * 2.43 1.14 5.17 0.02 *

空間 0.78 0.41 1.48 0.45 0.72 0.37 1.39 0.33 0.72 0.37 1.40 0.34休憩場所 0.78 0.44 1.38 0.39 0.82 0.45 1.50 0.52 0.87 0.48 1.61 0.67職場教育 1.39 0.79 2.44 0.25 1.51 0.84 2.72 0.17 1.69 0.93 3.08 0.09夜勤認識 0.75 0.43 1.29 0.30 0.76 0.43 1.34 0.34 0.82 0.46 1.45 0.49超過勤務認識 1.94 1.11 3.37 0.02 * 1.96 1.10 3.48 0.02 * 2.08 1.16 3.74 0.01 *

給料 1.11 0.56 2.21 0.76 1.05 0.52 2.11 0.89 0.94 0.46 1.92 0.87勤務融通 1.31 0.73 2.35 0.36 1.32 0.73 2.40 0.36 1.47 0.80 2.68 0.21

交代勤務a) 0.48 0.21 1.10 0.08 0.47 0.20 1.10 0.08 0.46 0.20 1.09 0.08

プリセプター経験 1.33 0.73 2.42 0.35 1.28 0.69 2.36 0.43 1.27 0.68 2.39 0.45勤務帯リーダー経験 0.78 0.39 1.58 0.49 0.81 0.39 1.68 0.57 0.78 0.37 1.65 0.52

健康関連要因HC個数 0.72 0.27 1.92 0.52 0.65 0.24 1.77 0.40花粉症、鼻炎 1.15 0.58 2.30 0.69 1.11 0.56 2.22 0.76皮膚のかゆみ、アトピー 1.11 0.60 2.08 0.73 1.24 0.66 2.33 0.51

風邪症状 1.80 0.91 3.58 0.09 1.97 0.98 3.96 0.06うつ、不安感、イライラ 1.05 0.57 1.94 0.88 0.93 0.50 1.75 0.83不眠傾向 0.93 0.48 1.81 0.84 0.92 0.47 1.81 0.81

頭痛 0.99 0.54 1.83 0.99 1.00 0.54 1.86 1.00胃腸障害 1.31 0.73 2.34 0.37 1.33 0.73 2.40 0.35月経随伴症状、更年期 1.36 0.77 2.42 0.29 1.36 0.76 2.43 0.29

貧血 0.86 0.37 1.99 0.73 0.87 0.37 2.04 0.75眼精疲労 0.74 0.38 1.45 0.39 0.75 0.38 1.47 0.40

肩こり、腰痛 1.06 0.59 1.92 0.85 1.12 0.61 2.05 0.71足のだるさ 0.88 0.45 1.72 0.71 0.87 0.44 1.72 0.68WIS 1.02 1.00 1.04 0.08 1.01 0.99 1.03 0.44

離職意向離職意向 1.10 1.03 1.18 0.01 *

定数 0.20 0.00 0.46 0.52 0.09 0.09 0.02 0.02 0.01 0.00Nagelkerke R 2 乗

階層的ロジスティック回帰分析, 従属変数;離職群=1,継続群=0a)二交代勤務=1

0.1850.1310.004

Exp(B)の95.0%信頼区間

Exp(B)の95.0%信頼区間

Exp(B)の95.0%信頼区間

Exp(B)の95.0%信頼区間

0.002 0.162

Exp(B)の95.0%信頼区間

表5. 経験年数3-5年目の看護師における退職の予測要因 n=659

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26 日看管会誌 Vol. 15, No. 1, 2011

The Journal of the Japan Academy of Nursing Administration and Policies Vol. 15, No. 1, 2011

不調の有無と超過勤務には関係がなかった.縦断調査における選択バイアスが一因となっている可能性が考えられた.つまり,1-2 年で既に就労の維持が困難な健康状態不良者が集団から除かれ,比較的健康な集団が継続していることによる選択バイアスであるヘルシーワーカー効果(青山,2005)のために,3-5 年目の継続群にいる影響と考えられた.その中でもさらに超過勤務を多く実施しても働き続けられるような労働者の存在による影響が考えられた.しかし本調査の超過勤務は実際の時間ではなく自覚的な多さの程度を尋ねたため,さらなる今後の検討が必要である.設備に関しては,設備が不十分と回答した者が退

職しているという結果であった.「腰痛予防対策指針」において看護師のように腰痛対策が必要な職業では,作業環境管理すなわち設備の充実も重要とされるため(中央労働災害防止協会 , 2010),設備と腰痛と退職の変数間でクロス集計をしてカイ二乗検定を実施したところ,本研究においては有意な関係性がみられなかった.超過勤務,設備について先行研究では,超過勤務

が腰痛など筋骨格系の障害を引き起こすという報告(Caruso &Waters, 2008)や看護ケアにおける設備を十分に活用していないために筋骨格系の障害を予防できず離職にいたるという報告(Fochsen et al., 2006)があったため,適切な労働時間の管理や設備の整備などを行うことは慢性疲労,筋骨格系の障害のみならず退職の予防に有効といえる.3-5 年目では,1-2 年目と比較してモデルの説明率

が低かった.この理由としては,結婚は離職理由の上位であり(日看協, 2005),3-5 年目には婚姻者の割合も高くなっていることより,結婚や出産など生活の変化を契機とした予期せぬ退職が起きる可能性があると考えられた.職場での責任や家庭があるがゆえの経済的な理由などからすぐに退職には結びつかないという報告もあり(Lynn & Redman, 2005),退職への要因が本調査項目以外にも多様になるためと考えられた.次に,退職の予測要因として有意な関係とはなら

なかったが,退職群と継続群の比較において特徴のみられた内容を以下に述べた.1-2 年目の退職群の特徴として,表 2,表 3よりコ

ミュニケーションスキルが低く,話しやすい雰囲気

や話し合う場がないと回答する傾向が見られた.退職した者は,職場でコミュニケーションを十分にとれていないと考えられ,コミュニケーションを円滑にする支援は必要である.本研究結果は,新卒看護師の離職予防へのソーシャルサポートの重要性(Suzuki et al., 2006; Tominaga & Miki, 2010)を報告した先行研究を支持する結果であったといえる.また,健康面では,対象者の 94%が心身の不調を

自覚しながらもほとんどが欠勤していなかった.また,本研究のWIS は先行研究(Collins et al., 2005;和田ら,2007)と比較して高いことより看護師の労働遂行能力の低下の程度が大きいことが示唆された.特に退職群ではWIS が高くなっており,労働遂行能力の低下をきたしていたことが推測される.看護師の労働遂行能力低下は判断力の低下,注意力の低下などにより患者の命に直結する問題につながりうる.日看協の調査(2004)によると,新卒看護職員の仕事を続けていく上での悩みの上位には「医療事故を起こさないか不安である」「ヒヤリハットレポートを書いた」が挙げられており,若年層では医療事故への不安を持つ者の割合が高い(日看協,2010).一方,3-5 年目の退職群と 1-2 年目の継続群のWIS

が同程度の点数であり,1-2 年目の継続群の労働遂行能力は 3-5 年目でさらに低下することはないが,3-5 年目での継続群ではWIS が低下する傾向,つまり労働遂行能力が改善する傾向がみられた.中堅看護師の実践能力は新人より高くなるが,実力と期待される役割との葛藤や仕事と私生活との葛藤など様々な葛藤を課題として持っているという(小山田,2009).中堅看護師の定義のほとんどに経験 5 年目が含まれているといわれるが(小山田,2009),中堅もしくは中堅期に入ろうとする時期である 3-5 年目では,葛藤や問題に直面していく中で労働に支障を出さないようなスキルを身につけてきていることが推測された.例えば不調の対処には不調を予測し,早期の治療や私生活での休養の確保などの労働遂行能力を落とさない工夫が考えられる.また,1-2 年目の退職群は心身の不調数や各疾患の有訴率が高かったが,3-5年目では退職群と継続群の間で不調数,有訴率に有意差はなかったことも考慮すると,ヘルシーワーカー効果(青山,2005)も一因であると考えられた.

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27日看管会誌 Vol. 15, No. 1, 2011

The Journal of the Japan Academy of Nursing Administration and Policies Vol. 15, No. 1, 2011

2. 退職予防策への示唆日看協では今後の離職防止の柱として,「新卒看護職員の教育研修体制の整備充実」「ワークライフバランスの推進」「労働条件の改善」を挙げている(日看協,2010).WISが1-2年目の退職の予測要因となった,退職群に心身の不調が多くWIS が高かった,という本研究結果から,これに加えて若手看護師が職業継続するためには組織的な心身の健康管理が有効であると考える.特に不調を持っていても休暇を取得していないという本研究の結果から,必要時には休暇・休息をとることができるような人員体制を取ることが望ましい.病気休業がとれずに出勤した場合でも,その日の配置や受け持ち人数に融通を利かせて,体力をセーブして働けるような配慮が重要である.しかし,上司や同僚に体調不良を申告するためには,健康管理上のシステムとよいコミュニケーションといった職場風土が必要と考えられた.特に1-2 年目では,心身の不調による労働遂行能力の低下が退職に影響しており,新卒看護師では蓄積疲労が離職意向を高めるという報告(Tominaga &Miki, 2010)もあるため,健康管理は退職予防に重要である.労働遂行能力の低下による仕事のミスがないよう見守ることも重要である.健康管理以外にも,特に 3-5 年目においては労働

時間の管理や設備の整備といった作業管理,作業環境管理も疲労や筋骨格系の障害などを予防するため有効と考えられた.三木(2002)は病院でストレス対策が進まない理由の一つに,医療従事者自身が医療専門職として自身の健康に関しては各人が対処すべきという認識があることを指摘している.その意識を変え,職員の健康は労働安全衛生管理の観点から組織的な取り組みにより守るものだという認識を看護師自身が持つことが看護職員の定着を高めると考えられた.さらに若手看護師は労働遂行能力の低下のために

仕事のミス等を起こしやすくなっているということに注意して支援する必要があり,ゆとりを持って看護に臨める環境を整えていくということが重要といえる.特に新卒看護師は,看護基礎教育終了時点での能力と就職してから求められる能力の差が大きいといわれているため(日看協,2004),卒後教育の充実の重要性が再確認された.

本研究の限界として,本研究の退職には現職場からの退職と看護師からの離職の 2つを含んでいる点がある.退職には向学心からの進学や発展的な転職が含まれるため必ずしも問題ではない.しかしその両者を分けなかったのは,退職者に理由を確認する手段を持たなかったことに加えて,本対象の経験 5年未満における退職は病院組織にとってはキャリア開発中の人材を失うことであり,個人にとっては一定の経験を認められる以前であり損失となる可能性があると考えられたため,どちらも問題があるとしたからであった.

Ⅴ. 結論

1. 経験年数 5年未満の看護師では経験年数が高くなるほど 1年以内に退職する割合が高くなっていた.2. 1-2 年目では退職群で心身の不調の自覚症状が有意に多く,また心身の不調による労働遂行能力の低下が 1年以内の退職の予測要因であったことより健康管理と労働遂行能力の低下に注意して見守ることが重要である.3. 3‒5 年目では話し合う場,医師との良好な関係,設備,超過勤務が退職の予測要因として有意となり,役割や立場の変化に応じた教育やチーム医療メンバーの相互理解,労働時間の管理,作業環境管理が重要である.4. 退職群では継続群に比べて不調に伴う労働遂行能力の低下が認められたことより,組織的な労働安全衛生管理の実施,特に健康管理が重要であると考えられた.

謝辞:本研究の実施にあたりまして,調査にご協力い

ただきました病院の看護部の方々,質問紙にご回答いた

だきました看護師の方々に厚く御礼申し上げます.

なお,本研究は労働リサーチセンター「健康状態の労

働生産性への影響測定尺度-日本語版 Stanford

Presenteeism Scale -の標準化に関する研究」の援助を

得て実施した.また,本調査の初年度のデータの一部を

用いて横断的分析を行った研究を日本看護科学会誌 30

巻 1 号に報告した.

KangoGakkai.indb 27KangoGakkai.indb 27 2011/09/08 19:17:122011/09/08 19:17:12

Page 12: 若手看護師における退職の予測要因の ... - UMINjanap.umin.ac.jp/mokuji/J1501/10000002.pdf · されるなど政策的にも対応がすすめられている.今 後看護師不足を解消し質,量ともに看護師を確保し

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責任著者 渡邊里香大阪大学〒565-0871 大阪府吹田市山田丘 1-7E-mail [email protected]

Correspondence: Rika WatanabeOsaka UniversityYamadaoka, Suita, Osaka 565-0871 [email protected]

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