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整数論概説2014年度
-1-
3
目 次
第 1章 合同式 5
第 2章 1次不定方程式 11
第 3章 ピタゴラス数 17
第 4章 2次の不定方程式 25
第 5章 フェルマーの小定理 33
第 6章 Pell方程式 43
第 7章 オイラー関数・約数の個数・完全数 51
第 8章 連分数と不定方程式 63
5
第1章 合同式
入試問題から� �2個の正の整数 a, bを正の整数 dで割ったとき、同じ余りが得られたとする。このとき、a, b
は法 dで合同であるといい、a ≡ b (mod d)と表す.
(1) a ≡ a′ (mod d) ,かつ b ≡ b′ (mod d)ならば、a + b ≡ a′ + b′ (mod d) であることを証明せよ.
(2) 10k ≡ 1 (mod d) (k = 1)なので、A = 348092159を9で割った余りは、 である.
(3) P 2r ≡ 1 (modP + 1) , P 2r+1 ≡ −1 (modP + 1) であることを利用して、5桁の整数37 x y 8が11の倍数になるように、x, yを定めよ.
【明治大学】
� �___
___整数論では剰余が重要な働きをする。そこで、そのための記法が合同式である。定義は本問にあ
る通りで、その基本的性質と演算は、
1 a ≡ a (modd)【反射律】
2 a ≡ b (modd)⇒ b ≡ a (modd)【対称律】
3 a ≡ b (modd) , b ≡ c (modd) ⇒ a ≡ c (modd)【推移律】この3つの性質をみたすとき、整数全体は有限個の互いに素な集合に分割できる。例えば、任意の整数は、
C0 = {m |m ≡ 0 (mod2)} , C1 = {m |m ≡ 1 (mod2)}
のいずれかに属し、
C0 ∪ C1 = Z, C0 ∩ C1 = ∅
である。つまり、2で割った剰余は、0か1だから、C0 は剰余が 0,C1 は剰余が 1の集合である。これらを類とよぶ。この類から代表を1つずつ選んで系を作る。これを剰余系という。3の剰余系は、{0, 1, 2}であるが、{−1, 0, 1}も剰余系である.
第 1. 合同式
4a ≡ a′ (modd) , b ≡ b′ (modd)
⇒ a + a′ ≡ b + b′ (modd) , aa′ ≡ bb′ (modd)
5 c, dが互いに素のとき、
ca ≡ cb (modd)⇒ a ≡ b (modd)
これらから、1次不定方程式を解くことができる。例えば、3x + 5y = 7⇔ 3x ≡ 7 (mod5)⇔ 2 · 3x ≡ 2 · 7 (mod5)⇔ x ≡ 14 (mod5)⇔ x ≡ 4 (mod5)
のように。解答
(1)
a ≡ a′ (modd)⇔ a = a′ + q1d
b ≡ b′ (modd)⇔ b = b′ + q2d
のとき、a + b = a′ + b′ + (q1 + q2) d
⇔ a + b ≡ a′ + b′ (modd)
(2)
10k ≡ 1 (mod9)[∵ 10k − 1 = 9
(10k−1 + 10k−2 + · · ·+ 10 + 1
)]だから、
348092159
= 3 · 108 + 4 · 107 + 8 · 106 + 9 · 104 + 2 · 103 + 1 · 102 + 5 · 10 + 9≡ 3 + 4 + 8 + 9 + 2 + 1 + 5 + 9 (mod9)≡ 5 (mod9)
よって、余りは5である。
(3) 102r ≡ 1 (mod11) , 102r+1 ≡ −1 (mod11)だから、
37xy8 = 3 · 104 + 7 · 103 + x · 102 + y · 10 + 8≡ 3 · 1 + 7 · (−1) + x · 1 + y · (−1) + 8 (mod11)≡ x− y − 7 (mod11)⇔ x− y = 11m + 7
0− 9 5 x− y 5 9− 0−9 5 11m + 7 5 9
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第 1. 合同式
だから、m = 0,m = −1∴ x− y = 7,−4∴ (x, y) = (9, 2) , (8, 1) , (7, 0) ,
(0, 4) , (1, 5) , (2, 6) , (3, 7) , (4, 8) , (5, 9)
入試問題から� �an = 19n + (−1)n−1 24n−3 (n = 1, 2, 3 . . .)
のすべてを割り切る素数を求めよ 【東京工業大学】
� �解答
a1 = 21 = 3 · 7, a2 = 329 = 7 · 47 だから、求める素数の候補は7。
an = 19n + 4 (−1)n−1 24n−4
= 19n + 4 (−16)n−1
とかけるから、
an+2 − (19− 16) an+1 + 19 · (−16) an = 0
が成り立つ。これより、an, an+1が7の倍数ならば、an+2も7の倍数.a1, a2も7の倍数だったから、数学的帰納法により、an はつねに7の倍数である。……という証明法が1つ。ここでは、合同式を使って証明してみよう。
an = 19n + (−1)n−1 24n−3
≡ 19n + 2 (−16)n−1 (mod7)
≡ 5 · 5n−1 + 2 (5)n−1 (mod7)
≡ 7 · 5n−1 (mod7)≡ 0 (mod7)
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第 1. 合同式
練習問題
ai ≡ bi (modm) (i = 1, 2, · · · , n)
のとき、
(1)
a1 + a2 + · · ·+ an ≡ b1 + b2 + · · ·+ bn (modm)
(2)
a1 × a2 × · · · × an ≡ b1 × b2 × · · · × bn (modm)
を証明せよ。
(1) a1 + a2 + · · ·+ an ≡ b1 + b2 + · · ·+ bn (modm)とすると、a1 + a2 + · · ·+ an = mQ1 + r
b1 + b2 + · · ·+ bn = mQ2 + r
an+1 = mq1 + s, bn+1 = mq2 + s
であるから、a1 + a2 + · · ·+ an + an+1 = m (Q1 + q1) + r + s
b1 + b2 + · · ·+ bn + bn+1 = m (Q2 + q2) + r + s
よって、a1 + a2 + · · ·+ an + an+1 ≡ b1 + b2 + · · ·+ bn + bn+1 (modm)
ゆえに、数学的帰納法により成立する。
(2)
a1 × a2 × · · · × an ≡ b1 × b2 × · · · × bn (modm)
とすると、a1 × a2 × · · · × an = mQ1 + r
b1 × b2 × · · · × bn = mQ2 + r
と書ける。an+1 = mq1 + s, bn+1 = mq2 + s
とおくと、a1 × a2 × · · · × an × an+1 = mL1 + rs
b1 × b2 × · · · × bn × bn+1 = mL2 + rs
よって、a1 × a2 × · · · × an × an+1 ≡ b1 × b2 × · · · × bn × bn+1 (modm)
ゆえに、数学的帰納法により成立する。
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第 1. 合同式
練習問題m1,m2 が互いに素であって、a ≡ b (modm1) , a ≡ b (modm2)のとき、
a ≡ b (modm1m2)
であることを示せ。
a− b = m1q1, a− b = m2q2
とおけて、
m1q1 = m2q2
m1,m2 が互いに素であるから、q1 = m2qである。
∴ a− b = m1m2q ⇔ a ≡ b (modm1m2)
練習問題
111333 + 333111
は7の倍数であることを示せ。
111 ≡ −1 (mod7) , 333 ≡ −3 (mod7)
である。
∴ 111333 ≡ (−1)333 ≡ −1 (mod7)
また、
333111 ≡ (−3)111 (mod7)
(−3)111 ≡ −(33)37 ≡ − (−1)37 ≡ 1 (mod7)
∴ 111333 + 333111 ≡ −1 + 1 ≡ 0 (mod7)
練習問題
1! + 2! + 3! + · · ·+ 100!
を 15で割った余りを求めよ、
n! ≡ 0 (mod15) (n = 5)
であるから、1! + 2! + 3! + · · ·+ 100! ≡ 1! + 2! + 3! + 4! (mod15)≡ 1 + 2 + 6 + 24 ≡ 3 (mod15)
求める余りは 3である。
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第 1. 合同式
練習問題
52n + 3 · 25n−2
は7の倍数であることを示せ。
52n + 3 · 25n−2 = 25n + 3 · 23(25)n−1
≡ 4n + 3 · 23 (4)n−1 (mod7)≡ 4n (1 + 3 · 2) (mod7)≡ 0 (mod7)
練習問題
3n+2 + 42n+1
は13の倍数であることを示せ。
3n+2 + 42n+1 = 9 · 3n + 4 · 16n
≡ 9 · 3n + 4 · 3n (mod13)= 13 · 3n ≡ 0 (mod13)
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第2章 1次不定方程式
入試問題から� �(1) 4m + 6n = 7を満たす整数m,nは存在しないことを証明せよ.
(2) 3m + 5n = 2を満たすすべての整数の組 (m,n)を求めよ.
(3) a, bを互いに素な正の整数とする.kを整数とするとき、akを bで割った余り r(k)で表す.k, lを b− 1以下の正の整数とするとき、k \= lならば r(k) \= r(l)であることを示せ.
(4) am + bn = 1を満たす整数m,nが存在することを示せ.
【2000大阪女子大学】
� �___
___方程式は未知数の個数と方程式の個数が同数でないと解けないが、方程式の個数が不足している
ときは、解は一意的に定まりません。例えば、
x2 + 2xy + 2y2 = 1
を満たす実数解は無数にあります。yの値を決めるたびに x の2次方程式になって、xが決定するからです。ところが、解の条件(定義域)を整数と限定すると、解の個数は有限個になることがあります。(もちろん、無数のときもありますよ)それは、整数が、数直線上で離散的に分布しているからです。それに対して、有理数はどんな近接している有理数の間にも必ず有理数は存在します。(これを有理数の稠密性(dense)といいます。)この例では、
x2 + 2xy + 2y2 = 1⇔ (x + y)2 + y2 = 1
で、x + y, yがともに整数だから{x + y = ±1y = 0
,
{x + y = 0y = ±1
⇔ (x, y) = (±1, 0) , (∓1,±1)
の4組が解になります。このような方程式を不定方程式といいます。本問は、
ax + by = c (a, b, c ∈ Z)
第 2. 1次不定方程式
の形をした不定方程式の問題です。この方程式を最初に扱ったギリシャのディオファントス(Dio-phanntos)にちなんでディオファントス方程式とよびます。解答
(1) 4m + 6n = 7が整数解をもたないことをいうには、(m,n)を整数解として、矛盾が生じるといえばいいのです。つまり、背理法です。このとき、4m+6n = 2 (2m + 3n)は偶数です。ところが、右辺の 7は奇数。偶数=奇数。これは矛盾!よって、4m + 6n = 7は整数解をもたない。
それじゃ、3m + 5n = 2はどうなるだろうか。とりあえず、じっと観察 ∗すると、1個の解が見えてきたりする。m = 4, n = −2がそれさ。もちろん、他にもあるから、これでなきゃ∗ 整数問題では、この
観察というのがなかな
か、馬鹿にできない技
術なんだ。
いけないってこともない。すると
(2) 3m + 5n = 2⇔ 3 (m− 4) + 5 (n + 2) = 0と変形できる。これを、3(m− 4) = −5(n + 4) とみると、右辺は5の倍数だから、左辺の 3(m− 4)も5の倍数。3,5には共通の公約数が1しかない。これを 3,5は互いに素であるという。だから、
m− 4 = 5k, n + 2 = −3k
⇔ m = 5k + 4, n = −3k − 2 (k ∈ Z)
とかける。つまり、無数の解をもつことになるんだ。さて、ここで、このタイプの方程式が整数解をもつための条件をもとめようというのが次の(3)(4)だ。
(3)
r (k) =「r (l)⇔ ak − al = a (k − lは bで割り切れる)」
とすると、a, bは互いに素で、2 5 bだから、k − lが bで割り切れることになる。−b + 1 < k − l < b− 1より、k − l = 0⇔ k = l
よって、対偶をとって、k \= l⇒ r (k) \= r (l)
が示せた。
(4) m = 1, 2, 3, . . . , b− 1に対して、r(1), r(2), r(3), · · · , r(b− 1)はどの2つも異なり、a, bが互いに素だから、
1 5 r(1), r(2), r(3), · · · , r(b− 1) 5 b− 1
であって、r(i) = 1, 1 5 i 5 b− 1
となる iが存在する。つまり、ai = bQ + 1
となる整数 i, Qが存在する。よって、am + bn = 1 となる整数m,nが存在する。
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第 2. 1次不定方程式
,<除法の原理>を証明しておこう。定理 除法の原理
整数 a,正の整数 bに対して、
a = bq + r, 0 5 r < b
となる整数 q, rがただ1組存在する。
<証明> bの倍数を数直線上にならべると、
· · · · · · < −3b < −2b < −b < 0 < b < 2b < 3b < · · · · · ·
となる。このとき、任意の整数 aはある区間;
qb 5 x < (q + 1) b
にはいる。したがって、
qb 5 a < (q + 1) b
そこで、r = a− qbとおくと、
a = bq + r, 0 5 r < b
が成立する。 �
さて、本問の結論は<定理>として記憶しておこう。つぎに重要な定理を確認しておこう。定理 Euclidの互除法
自然数 aを自然数 bで割ったときの商をQ,余りを rとすると、a, bの最大公約数は、b, rの最大公約数に一致する。
<証明>
a = bq + r
と書ける。a, bの最大公約数を g1,b, rの最大公約数を g2とする。このとき、aは g2を約数にもつから、g2 は a, bの公約数である。
∴ g1 = g2
r = a− bqと書けるから、rは g1 を約数にもつ。g1 は b, rの公約数である。
∴ g2 = g1
以上より g1 = g2 となる。 �
以下では a, bの最大公約数を (a, b)とか、gcd(a, b)と表すことにする。aを bで割った商を Q1,余りを r1 とすると、
a = bQ1 + r1
(a, b) = (b, r1)
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第 2. 1次不定方程式
bを r1 で割った商を Q2,余りを r2 とすると、b = r1Q2 + r2
(b, r1) = (r1, r2)
r1 を r2 で割った商を Q3,余りを r3 とすると、r1 = r2Q3 + r3
(r1, r2) = (r2, r1)
これを繰り返していくと、(a, b) = · · · = (rn, rn+1) = · · ·r1 > r2 > r3 > · · · · · ·
数列 {rn}は自然数の単調減少列であるから、
rm > rm+1 = 0
となるmがある。(rm, 0) = rm であるから、
(a, b) = rm
である。a, bが互いに素であるときは、rm = 1となる。6105 = 2886× 2 + 3332886 = 333× 8 + 222333 = 222× 1 + 111222 = 111× 2 + 0
であるから、6105,2886の最大公約数は 111である。この互除法を用いると不定方程式 ax + by = 1の特殊解が得られる。例えば、37x + 127y = 1を
解いてみよう。127 = 37× 3 + 1637 = 16× 2 + 516 = 5× 3 + 1
これより、(127, 37) = (5, 1)となり、127と 37は互いに素である。
1 = 16− 5× 3= 16− (37− 16× 2)× 3= 37× (−3) + 16× 7= 37× (−3) + (127− 37× 3)× 7= 127× 7 + 37× (−24)
この一連の計算を逆にたどって、1を 127と 37で表せば、x = −24, y = 7という解が見つかる。
37x + 127y = 137 · (−24) + 127 · 7 = 1
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第 2. 1次不定方程式
辺々ひいて、
37 (x + 24) + 127(y − 7) = 0
37,127は互いに素であるから、{x + 24 = 127m
y − 7 = −37m⇔ x = 127m− 24, y = −37m + 7
これが一般解である。定理
2つの整数 a, bが互いに素であることと、ax + by = 1を満たす整数 x, yが存在することは同値である。
例題 1� �任意の正の整数 kに対して、7k + 6と 6k + 5は互いに素であることを証明せよ。� �<証明>
6 (7k + 6) + (−7) (6k + 5) = 1
が成り立つから、7k + 6と 6k + 5は互いに素である。
例題 2� �21x + 14y + 12z = 1
を満たす整数解を求めよ。� �解答
21x + 14y = 7w ⇔ 3x + 2y = w · · · 1©
とおける。そこで 3x + 2y = 1を満たす解を1組求めると、
x = 1, y = −1
であるから、 1©を満たす x, yの1つは x = w, y = −w
これより、3x + 2y = w ⇔ 3 (x− w) = −2 (y + w)∴ x = w − 2k, y = 3k − w
つぎに、
7w + 12z = 1⇔ 7 (w + 5) + 12 (z − 3) = 0
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第 2. 1次不定方程式
を解くと、
w + 5 = −12j, z − 3 = 7j
だから、x = −12j − 2k + 5y = 3k − 7j − 3z = 7j + 3
例題 3� �3で割ると 1余り、5で割ると 3余り、7で割ると 4余る自然数で最小のものを求めよ。� �
求める数N は
N = 3x + 1 = 5y + 3 = 7z + 4
と表せる。まず、3x + 1 = 5y + 3⇔ 3x− 5y = 2⇔ 3 (x + 1)− 5 (y + 1) = 0
より、
x + 1 = 5k, y + 1 = 3k
このとき、N = 15k − 2 = 7z + 4⇔ 15k − 7z = 6⇔ 15 (k − 6) = 7 (z − 12)∴ k − 6 = 7j, z − 12 = 15j
となって、
∴ N = 7 (15j + 12) + 4 = 106j + 88
よって、求めるものは、N = 88である。
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第3章 ピタゴラス数
入試問題から� �x2 + y2 = z2 を満たす自然数 x, y, z で、それらの最大公約数が1であるものを既約のピタゴラス数という.
(1) x, yのうち一方だけが偶数であることを示せ.
(2) そこで yを偶数としてよい.このとき、すべての既約のピタゴラス数は
x = a2 − b2, y = 2ab, z = a2 + b2 · · · · · · 1©
で与えられることを示せ.ただし、a, bの一方が奇数、他方が偶数で、a > bかつ、a, b
は互いに素であるものとする.� �解答(1)は当然背理法である.まず、
(2m)2 = 4m2, (2m + 1)2 = 4(m2 + m
)+ 1
より、任意の整数の平方数は、4で割ると,余りは0または1である.いま、x, yともに、奇数とすると、
x2 + y2 = (2p + 1)2 + (2q + 1)2
= 4(p2 + p + q2 + q
)+ 2 = z2
z2が4で割ると,余りが2となって、矛盾する.よって、x, yの少なくとも1つは偶数であるが、ともに偶数であることは、既約であることから、あり得ない.よって、x, yのうち一方だけが偶数である. �
さて、(2)であるが、 1©は確かにピタゴラス数である;
x2 + y2 =(a2 − b2
)2+ (2ab)2
=(a2 + b2
)2= z2
であるからだ.では、 1©の x, y, z が既約なピタゴラス数であることはどうしてだろうか.x, z はともに奇数である.いま、素数 pが x, zの公約数であると仮定すると、pは奇数である.pは x, z
の公約数だから、pは x + z = 2a2, z − x = 2b2 の約数になる.よって、pは a, bの公約数になり、
第 3. ピタゴラス数
a, bは互いに素であることに矛盾する.よって、 1©で与えられる x, zは互いに素.これより、x, y
も互いに素.y, zも互いに素であることがわかる.つまり、x, y, zが既約なピタゴラス数である.逆に既約なピタゴラス数は 1©で与えられることを示す.上に示したように、xを奇数、yを偶数としてよい.そして、zは奇数であるから、z + x, z − xは偶数である.そこで、
z + x = 2m, z − x = 2n⇔ z = m + n, x = m− n (m,n ∈ N)
ここで、m, nの公約数を gとおくと、gは x, zの公約数にもなって、x, zが互いに素であるから、g = 1. よって、m,nも互いに素である.
y2 = (z + x) (z − x) = 4mn⇔(y
2
)2
= mn
これより、mnは平方数であるが、m,nは互いに素であるから、
m = a2, n = b2
とかける.これより、
x = a2 − b2, z = a2 + b2
そして、y = 2ab
xが奇数であるから、a, bの一方は奇数、他方は偶数であり、m > nだから、a > bであり、a, bの公約数が g \= 1とすると、gは x, y, zの公約数になってしまうので、a, bは互いに素である. �
,半径1の単位円 x2 + y2 = 1と点 (−1, 0)を通り、傾き tの直線との交点で、(−1, 0)ではないも
のは、(1− t2
1 + t2,
2t
1 + t2
)いま、tを 0 < t < 1の任意の有理数とすると、この点は第1象限上にある単位円周上のすべての有理点を表すことになる. y=tx
t =n
m(m > n,m, nは互いに素)
とおくと、(1− t2
1 + t2
)2
+(
2t
1 + t2
)2
= 1
⇔(1− t2
)2+ (2t)2 =
(1 + t2
)2⇔(
1−( n
m
)2)2
+(2( n
m
))2
=(
1 +( n
m
)2)2
⇔(m2 − n2
)2+ (2mn)2 =
(m2 + n2
)2-18-
第 3. ピタゴラス数
よって、(m2 − n2, 2mn,m2 + n2
)はピタゴラス数である.
【演習 1】a, b, cはどの 2つも 1以外の共通な約数をもたない正の整数とする。a, b, cが,a2 + b2 = c2 を満たしているとき,次の問いに答えよ。
(1) cは奇数であることを示せ。
(2) a, bの 1つは 3の倍数であることを示せ。
(3) a, bの 1つは 4の倍数であることを示せ。
【2004旭川医科大学】
1 平方数を4で割った余りは、0か1である。
2 平方数を4で割った余りは、0か1である。
【解答】(1) 条件より a, bの少なくとも1つは奇数である. J a, b は互いに素であるから、同時
に偶数とはならない。{
(2k)2 = 4k2
(2k + 1)2 = 4(k2 + k
)+ 1
であるから、完全平方数を4で割ると,余りは0か1である。いま、a, bともに奇数であるとすると、a2 + b2は4で割ると J 任意の整数 n で、
n2 ≡ 0, 1( mod 4)2余る数になり、c2 が4で割ると2余る数となって、矛盾.よって、a, bの一方が偶数、他方が奇数である.ゆえに、cは奇数である.
(2) {(3k)2 = 9k2
(3k ± 1)2 = 3(3k2 ± 2k
)+ 1
だから、完全平方数は3で割ると余りは0か1である. J 任意の整数 n で、n2 ≡ 0, 1( mod 3)
a, bともに3の倍数でないとすると、a2 + b2 は 3で割ると2余る数になり、c2 が 3で割ると 2余る数となって、矛盾.よって、a, bの1つは3の倍数である.ともに3の倍数とはならないから、a, bの一方が3の倍数である.
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第 3. ピタゴラス数
(3) (4k)2 = 16k2
(4k ± 1)2 = 8(2k2 ± k
)+ 1
(4k + 2)2 = 8(2k2 + 2k
)+ 4
a, bともに4の倍数でないとすると、a2 + b2 は、8M + 2, 8M + 5, 8M + 8
のいずれかであるが、c2はこのいずれの形になることもないから、矛盾.よって、a, bの1つは4の倍数である.
___
___議論のポイントは平方剰余である。
【演習 2】次の条件 (a),(b)をみたす直角三角形を考える.ただし、斜辺の長さを p,その他の2辺の長さを q, rとする.
(a) p, q, rは自然数で、そのうちの少なくとも2つは素数である.
(b) p + q + r = 132
(1) q, rのどちらかは偶数であることを示せ.
(2) p, q, rの組をすべて求めよ.
【2006一橋大学】
(1) nを整数とするとき、 J 余りで分類!は整数問題の1つの技法
( i ) n = 2N ならば、n2 = 4N2
( ii ) n = 2N + 1ならば、n2 = 4(N2 + N) + 1
であるから、整数の平方が4で割って2余ることはない· · · · · · (?)
いま、q, rのどちらも奇数とすると J 背理法で証明.q2 + r2 = (2Q + 1)2 + (2R + 1)2
= 4(Q2 + R2 + Q + R
)+ 2 J 3平方の定理より、p2 = q2 + r2
これは、pが4で割って2余ることになって、(?)に矛盾する.よって、q, rのどちらかは偶数である.
(2) q, rの1つは奇数で、もう1つは偶数であるから、qを奇数、r を偶数としてもよい.p, q, r は自然数で、そのうちの少なくとも2つは素数であるから、q, rの少なくとも1つは素数
-20-
第 3. ピタゴラス数
である.rが素数であるとすると、r = 2である. J 偶数の素数は 2だけであり、それ
以外の素数はすべて奇数であるp2 = q2 + 4⇔ (p− q) (p + q) = 4⇔ p− q = 1, p + q = 4⇔ 2p = 5, 2q = 3
J 整数問題の原則、積形を作れ!
これは不適.従って、p, qが素数である.p2 = q2 + r2
⇔ (p− r) (p + r) = q2
と変形して、1 5 p− r < p + rであるから、 J p − r = q, p + r = q なんて分解はない.p + r = q2, p− r = 1
⇔ p =12(q2 + 1
), r =
12(q2 − 1
)これを、p + q + r = 132に代入して、
12(q2 + 1
)+
12(q2 − 1
)+ q = 132
⇔ q2 + q − 132 = 0⇔ (q − 11) (q + 12) = 0
qは素数だから、q = 11
r = 12
(112 − 1) = 60, p = 60 + 1 = 61
___
___
p2 = q2 + r2 を満たす整数解をピタゴラス数といい、このような、p, q, rの解は
p = m2 + n2, q = m2 − n2, r = 2mn
であることが知られている.このとき、rが素数ならば、m = n = 1となって、q = 0で不適.したがって、p, qが素数である.
q = (m + n)(m− n)が素数だから、m− n = 1である.m = n + 1より、
p = (n + 1)2 + n2, q = (n + 1)2 − n2, r = 2n(n + 1)
p + q + r = 132、だから
2 (n + 1)2 + 2n(n + 1) = 132
2n2 + 3n− 65 = 0(n− 5) (2n + 13) = 0∴ n = 5
-21-
第 3. ピタゴラス数
【演習 3】各辺の長さが整数となる直角三角形がある。
(1) この直角三角形の内接円の半径は整数であることを示せ。
(2) この直角三角形の三辺の長さの和は三辺の長さの積を割り切ることを証明せよ。
【2002お茶の水女子大学】
【解答】(1) 直角三角形の3辺の長さを a, b, cとし、a2 + b2 = c2とする.内接円の半径を rとすると、
a− r + b− r = c
∴ r =a + b− c
2a, b, cがすべて偶数のときは rは整数である.そうではないとき、a, b,がともに奇数とすると、{
(2k)2 = 4k2
(2k + 1)2 = 4(k2 + k
)+ 1
だから、a2 + b2 は4で割ると2余る数になるが、完全平方数 c2 がこのようになることはないから、a, b,の1つが奇数であり、したがって、cも奇数になるから、rは整数である.
(2)12ab =
a + b + c
2r
が成り立つから、
r =ab
a + b + c
rc =abc
a + b + c
よって、直角三角形の三辺の長さの和は三辺の長さの積を割り切る
-22-
第 3. ピタゴラス数
【演習 4】正の整数 a, b, c, dが等式 a2 + b2 + c2 = d2 を満たすとする。
(1) dが3の倍数でないならば、a, b, cの中に3の倍数がちょうど2つあることを示せ。
(2) dが2の倍数でも3の倍数でもないならば、a, b, cのうち少なくとも1つは6の倍数であることを示せ.
【一橋大学】
【解答】(1) {
(3k)2 = 9k2
(3k ± 1)2 = 3(3k2 ± 2k
)+ 1
であるから、d2 = 3M +1とおける.このとき、a2+b2+c2 =3M +1となるのは、a, b, cのうち、1つだけが3の倍数でなく、2つが3の倍数のときである.
(2) {(2k)2 = 4k2
(2k + 1)2 = 4(k2 + k
)+ 1
であるから、d2 = 4M +1とおける.このとき、a2+b2+c2 =4M +1となるのは、a, b, cのうち、2つだけが偶数になるときであるから、(1)の結果と合わせれば、a, b, cのうち少なくとも1つは6の倍数である.
-23-
25
第4章 2次の不定方程式
入試問題から� �(1) x2 + 5xy + 6y2 − 3x− 7y = 0を満たす整数 x, yを求めよ.
(2) 1p
+ 1q
+ 1r
= 12
(p = q = r) を満たす整数の組の個数はいくつか.� �解答
x2 + 5xy + 6y2 − 3x− 7y = 0を満たす整数解の1つはすぐに分かる.(x, y) = (0, 0)である.他に解はないか。1文字着目ということで、xについて解いてみようか。
x2 + (5y − 3) x + 6y2 − 7y = 0
⇔ x =−5y + 3±
√y2 − 2y + 9
2
Ohhh! ここで「観察」. xが整数になるためには、√
y2 − 2y + 9が整数になればいい。そのためには y2 − 2y + 9は平方数にならないとだめ。そこで
y2 − 2y + 9 = m2 (m = 0)
とおこう.ここにmは整数である.さて、整数問題の鉄則:「積形をつくれ!」という技法を思い出そう。
(y − 1)2 −m2 = −8⇔ (y − 1−m) (y − 1 + m) = −8
と変形すれば、
(y − 1−m) + (y − 1 + m) = 2 (y − 1)
だから、y − 1 + m, y − 1−mはともに偶数。そして、y − 1 + m = y − 1−mだから、{y − 1 + m = 4y − 1−m = −2
,
{y − 1 + m = 2y − 1−m = −4
⇔ (y,m) = (2, 3) , (0, 3)⇔ (x, y) = (0, 0) , (3, 0) , (−5, 2) , (−2, 2)
さて、ここでの2次式 x2 + 5xy + 6y2 − 3x− 7y = 0のグラフは双曲線です。この双曲線上にある格子点を見つけようというのがこの問題です。そこで、x2 + 5xy + 6y2 − 3x− 7y = 0を双曲線ら
第 4. 2次の不定方程式
しく変形してみます。
x2 + 5xy + 6y2 − 3x− 7y = 0⇔ (x + 2y) (x + 3y)− 3x− 7y = 0
ここで、{x + 2y = X
x + 3y = Y⇔
{x = 3X − 2Y
y = Y −X
とおくと、XY − 3 (3X − 2Y )− 7 (Y −X) = 0⇔ XY − 2X − Y = 0⇔ (X − 1) (Y − 2) = 2∴ (X − 1, Y − 2) = (1, 2) , (2, 1) , (−1,−2) , (−2,−1)⇔ (X, Y ) = (2, 4) , (3, 3) , (0, 0) , (−1, 1)⇔ (x, y) = (−2, 2) , (3, 0) , (0, 0) , (−5, 2)
-3 -2 -1 1 2 3 4 5 6 7 8
-3
-2
-1
1
22次の不定方程式が、双曲線の typeならば、積の形にすればいいことはわかった。では、楕円のときはどうしたらいいのか。方程式の係数をちょっと変えて、
x2 + 5xy + 7y2 − 3x− 7y = 0
を考えよう。するとグラフは図のような楕円になる。双曲線と楕円の違いの一つは、楕円は有限の範囲に収まってしまうことである。そこで、虱潰しに格子点を checkしていこうという技法が生まれる。
x2 + 5xy + 7y2 − 3x− 7y = 0
⇔ x2 + (5y − 3) x + 7y2 − 7y = 0
を満たす実数 xが存在するために、
D = (5y − 3)2 − 4(7y2 − 7y
)= 0
⇔ 3y2 + 2y − 9 5 0
⇔ −1− 2√
73
5 y 5 −1 + 2√
73
これをみたす整数 yは y = −2,−1, 0, 1. この yを x2 + (5y − 3)x + 7y2 − 7y = 0に代入して、
⇔ (x, y) = (6,−2) , (7,−2) , (0, 0) , (3, 0) , (−2, 1) , (0, 1)
こうして、2次の不定方程式は、
-26-
第 4. 2次の不定方程式
bababababababababababababababab
• 楕円型 …… 範囲を絞って虱潰し。
• 双曲線型…… 積の形に変形。
と技法を定型化しておけばいい。しかし、双曲線型で、x2 − 2y2 = 1のような typeはそうはいかない。これはペル方程式とよばれているもので、後の主題でとりあげる。つぎの(2)のタイプもよく出題される.
1p
+1q
+1r
=12
(p = q = r)
のとき、条件の厳しい rから、その範囲を限定していこう。1p
5 1q
5 1r
だから、1r
<1p
+1q
+1r
=12
5 3r⇔ 3 5 r 5 6
( i ) r = 3のとき、1p
+1q
+13
=12⇔ 1
p+
1q
=16
⇔ pq − 6p− 6q = 0 ← 双曲線型
⇔ (p− 6) (q − 6) = 36 ← 積形に変形⇔ (p− 6, q − 6) = (36, 1) , (18, 2) , (12, 3) , (9, 4) , (6, 6)
の5組の解。
( ii ) r = 4のとき、1p
+1q
+14
=12⇔ 1
p+
1q
=14
⇔ pq − 4p− 4q = 0⇔ (p− 4) (q − 4) = 16⇔ (p− 4, q − 4) = (16, 1) , (8, 2) , (4, 4)
の3組の解。
(iii) r = 5のとき、1p
+1q
+15
=12⇔ 1
p+
1q
=310
⇔ 3pq − 10p− 10q = 0⇔ (3p− 10) (3q − 10) = 100
-27-
第 4. 2次の不定方程式
3p− 10, 3q − 10は3で割ると余る数だから、(3p− 10, 3q − 10) = (50, 2)
の1組の解。
(iv) r = 6のとき、1p
+1q
+16
=12⇔ 1
p+
1q
=13
⇔ pq − 3p− 3q = 0⇔ (p− 3) (q − 3) = 9⇔ (p− 3, q − 3) = (9, 1) , (3, 3)
の2の解。結局、全部で、12組の解がある。
【演習 5】
4x2 + 10x− y2 − y = 0
を満たす整数の組 (x, y)をすべて求めよ。 【日本女子大学】
【解答】4x2 + 10x− y2 − y = 0
⇔ 4(
x +54
)2
− 254−(
y +12
)2
+14
= 0
⇔ 4(
x +54
)2
−(
y +12
)2
= 6
⇔(
2x +52
+ y +12
)(2x +
52− y − 1
2
)= 6
⇔ (2x + y + 3) (2x− y + 2) = 6
J 平方完成
であって、 J 積形完成2x + y + 3 + 2x− y + 2 = 4x + 4 + 1
に注意すると、 J 和が4で割ると1余る数になる(2x + y + 32x− y + 2
)=
(23
),
(32
),
(−1−6
),
(−6−1
)
⇔
(x
y
)=
(0−1
),
(00
),
(−3−3
),
(−32
)___
___
1 次のように積形を作るのもよい。4x2 + 10x− y2 − y = 0⇔ (2x + y) (2x− y) + 10x− y = 0
-28-
第 4. 2次の不定方程式
ここで、{2x + y = X
2x− y = Y⇔ 2x =
X + Y
2, y =
X − Y
2
とおくと、
XY + 5(
X + Y
2
)− X − Y
2= 0
⇔ XY + 2X + 3Y = 0⇔ (X + 3) (Y + 2) = 6
X + Y + 5 = 4x + 5 = (4の倍数) + 1だから、
(X + 3, Y + 2) = (2, 3) , (3, 2) , (−1.− 6) , (−6,−1)
以下略。
2 双曲線型である。
【演習 6】
abcd = a + b + c + d
を満たす正の整数 a, b, c, dを求めよ。 【東京女子大学】
【解答】対称性より 0 < a 5 b 5 c 5 dとおいて考察する。
abcd = a + b + c + d
⇔ 1 =1
bcd+
1acd
+1
abd+
1abc
1bcd
,1
acd,
1abd
,1
abc5 1
a3
だから J 不等式を用いて範囲をしぼれ
1 5 4a3⇔ a3 5 4⇔ a = 1
J 最小の a が厳しい。だから、まずは a
1 =1
bcd+
1cd
+1bd
+1bc
と、1
bcd5 1
b3,
1cd
,1bd
,1bc
5 1b2
-29-
第 4. 2次の不定方程式
とより、1 5 1
b3+
3b2
⇔ b3 − 3b 5 1
⇔ b(b2 − 3
)5 1
J b > 1 で単調増加
これを満たす bは b = 1である。cd = 2 + c + d
⇔ (c− 1) (d− 1) = 3
と変形して、(c− 1, d− 1) = (1, 3)⇔ (c, d) = (2, 4)
∴ {a, b, c, d} = {1, 1, 2, 4} J {· · ··}は組み合せ
___
___
1 大小関係を導入することがポイント。
2 1文字ずつ量化していこう。必要条件でしぼりだしていく。(1− bcd) aは aの単調増加関数だから、
abcd = a + b + c + d
(bcd− 1) a = b + c + d = bcd− 1
よって、bcd− b− c− d 5 1(cd− 1) b− c− d 5 1
b 5 1だから、cd− 1− c− d 5 1(c− 1) (d− 1) 5 3∴ c− 1 = 1, d− 1 = 2
以下略。
【演習 7】x, y, zは自然数で、x 5 y 5 zとする。
(1)1x
+1y
+1z
= 1を満たす x, y, zの値をすべて求めよ。
(2) x, y, zが 1x
+1y
+1z
< 1を満たすとき、1x
+1y
+1zの最大値と、最大値を与える x, y, z
の値を求めよ。
【1981都立大学】
-30-
第 4. 2次の不定方程式
【解答】(1) J 前演習で修得済みの技術
1 =1x
+1y
+1z
5 1x
+1x
+1x
=3x
∴ x 5 3
だから、x = 1, 2, 3であるが x = 1は適さず。x = 2のとき、 J 積形つくれ
12
=1y
+1z⇔ yz = 2y + 2z
⇔ (y − 2) (z − 2) = 4⇔ (y − 2, z − 2) = (1, 4) , (2, 2)⇔ (y, z) = (3, 6) , (4, 4)
x = 3のとき、23
=1y
+1z⇔ 2yz = 3y + 3z
⇔(
y − 32
)(z − 3
2
)=
94
⇔ (2y − 3) (2z − 3) = 9⇔ (2y − 3, 2z − 3) = (3, 3) (∵ 2y − 3 = 3)⇔ (y, z) = (3, 3)
以上より、(x, y, z) = (2, 3, 6), (2, 4, 4), (3, 3, 3)
(2)
f (x, y, z) =1x
+1y
+1z
とおく。x 5 y 5 z とする。ここに、f は x, y, z の単調減少関数である。x = 4とすると、 J 分母を小さくして、最大値を求め
る。f (x, y, z) 5 1
x+
1x
+1x
=3x
5 34
x = 3のとき、f (3, y, z) < 1⇔ 1
y+
1z
<23
のもとで 1y
+1zを最大にすることを考える。z を固定して、
3 5 y 5 zのもとでは、 J 多変数で困ったら、1変数に着目、他は固定
1y
+1z
5 13
+1z
<23
∴ z = 4
∴ f (3, y, z) 5 13
+13
+14
=1112
-31-
第 4. 2次の不定方程式
最後に x = 2のときを考える。f (2, y, z) < 1⇔ 1
y+
1z
<12
このもとで、1y
+1zを最大にすることを考える。zを固定し
て、2 5 y 5 zのもとでは、f (2, 2, z) > 1
となるから、y = 3が必要。zを固定して、3 5 y 5 zのもとでは、
f (2, 3, z) =56
+1z
< 1⇔ z > 6
となるから、f (2, y, z) 5 f (2, 3, 7) =
4142
これが求める最大値で、x = 2, y = 3, z = 7である。___
___
1 この問題は頻出である。(2)は離散量の最大最小値問題である。一般には階差で議論するのが常道であるが、ここでは単調減少は明らかに分かる。
2 x = 4, x = 3, x = 2と場合分けをして議論するのがポイントである。
-32-
33
第5章 フェルマーの小定理
入試問題から� �n, pが任意の自然数とするとき、np, np+4 の1の位の数字が一致することを証明せよ.
【甲南大学】
� �___
___np, np+4の1の位の数字が一致するということは、np, np+4を10で割った余りが等しい、つまり、np+4− npが10の倍数ということです。np+4− np = np
(n4 − 1
)が任意の自然数 pに対し
て、10の倍数であるためには、n(n4 − 1
)が10の倍数であることが必要十分です。倍数問題の
技法は次のようにまとめておきましょう。
bababababababababababababababab
• 1© 剰余で分類
• 2© 連続 p整数の積を作る。
• 3© 階差を調べる。
• 4© 漸化式を作る。
まず 1©の技法ではf (n) = n
(n4 − 1
)= n (n− 1) (n + 1)
(n2 + 1
)とおくと、
( i ) n = 5mのときは、f(n)の因数の nが5の倍数
( ii ) n = 5m + 1のときは、f(n)の因数の n− 1が5の倍数
(iii) n = 5m + 2のときは、f(n)の因数の n2 + 1が5の倍数
(iv) n = 5m + 3のときは、f(n)の因数の n2 + 1が5の倍数
( v ) n = 5m + 4のときは、f(n)の因数の n + 1が5の倍数
第 5. フェルマーの小定理
よって、f(n)は5の倍数である.また、
( i ) n = 2mのときは、f(n)の因数の nが2の倍数
( ii ) n = 2m + 1のときは、f(n)の因数の n− 1が2の倍数
よって、f(n)は2の倍数である.2と5は互いに素だから、f(n) は10の倍数である。2©の技法では
M = (n− 2) (n− 1)n (n− 1) (n + 2)
は連続5整数の積だから、5! = 120の倍数。
N = n (n− 1)
は連続2整数の積だから2の倍数である。よって、
f (n) = n(n4 − 1
)= n
(n4 − 5n2 + 4
)− 5n3 + 5n
= M − 5N (n + 1)
は10の倍数である。3©の技法では、
f (n + 1)− f (n) = (n + 1)5 − (n + 1)− n5 + n
= 5n4 + 10n3 + 10n2 + 5n
= 5(n3 + 2n2 + 2n + 1
)n
= 5n (n + 1)(n2 + n + 1
)は10の倍数。f (1) = 0倍数。も10の倍数。よって、数学的帰納法により、f(n)は10の倍数である。, ここで、n5 − nは5の倍数であるという事実の背景が、次に Fermartの小定理です。
Fermartの小定理� �pが素数のとき、np − nは pの倍数である.� �
これによれば、n2 − nは2の倍数.n3 − nは3の倍数.n7 − nは7の倍数になります.<証明>f(n) = np − nとおく.
f (n + 1)− f (n)= (n + 1)p − (n + 1)− np + n
=p−1∑r=1
pCrnr
-34-
第 5. フェルマーの小定理
ここに、pは素数だから、pCr (1 5 r 5 p − 1)は pの倍数である.よって、f(n + 1) − f(n)は p
の倍数.また、f(1) = 0も pの倍数.ゆえに数学的帰納法により、f(n)は pの倍数となる. �
-35-
第 5. フェルマーの小定理
【演習 8】選択肢から最も適切なものを選びその番号を解答欄に記入しなさい。相異なる自然数 aと bが 1以外に共通の約数を持たないとき,aと bは互いに素であるという。自然数 nを素数 pで割った余りをMp(n)で表すことにする。また p − 1以下の自然数x, yに対して,x⊗ y = Mp(xy)と演算⊗ を定義する。ただし右辺の xyは通常の積である。たとえば,M11(6 × (1) ) = 2である。この演算 ⊗は交換法則 (2) (3) や結合法則 (4) (5)
を満たす。ここで x, y, zは p− 1以下の自然数である。次の命題はフェルマーの小定理とよばれている。命題 自然数 aと素数 pが互いに素ならば ap−1 を p で割った余りは 1である。この命題を証明しよう。上の記号を用いればMp( (6) ) = (7) を示せばよい。以下,Mp の添字 pは省略する。x, yを p− 1以下の自然数とする。M(ax) = M(ay)ならば a(x− y)は(8) (9) の (10) (11) となる。よって x = yでなくてはならない。この (12) (13) を考えれば,
(14) (15) ならば (16) (17) である。このことから
M(1a), M(2a), · · · , M((p− 1)a)
は異なった自然数である。よって
M(1a)⊗M(2a)⊗ · · · ⊗M((p− 1)a) = 1⊗ 2⊗ · · · ⊗ (18) (19)
となる。一方,M の性質を使えば
M(1a)⊗M(2a)⊗ · · · ⊗M((p− 1)a) = M( (20) )⊗ 1⊗ 2⊗ · · · ⊗ (21) (22)
となる。x⊗ y = yのとき,x = (23) となることに注意すれば,M( (6) ) = (7) を得る。
(1) 1 (2) 2 (3) 3 (4) 4(5) 0 (6) a (7) ap−1 (8) ap
(9) ap+1 (10) x− y (11) x⊗ y (12) xy(13) x + y (14) x \= y (15) M(ax) = M(ay) (16) x = y(17) p + 1 (18) p (19) p− 1 (20) M(ax) \= M(ay)(21) 逆 (22) 対偶 (23) 裏 (24) 否定(25) 矛盾 (26) 倍数 (27) 約数 (28) 素数(29) 互いに素 (30) p− 1以下 (31) x⊗ y = 0 (32) x⊗ y = y ⊗ x(33) x⊗ y ⊗ z = y ⊗ z ⊗ x = z ⊗ x⊗ y(34) x⊗ (y ⊗ z) = (x⊗ y)⊗ z(35) x⊗ (y + z) = x⊗ y + x⊗ z
【2005慶應義塾大学】
【解答】
(1)
4
(2)(3)
32
(4)(5)
34
(6)
7
(7)
1
(8)(9)
18
(10)(11)
26
(12)(13)
22
(14)(15)
14
(16)(17)
20
-36-
第 5. フェルマーの小定理
(18)(19)
19
(20)
7
(21)(22)
19
(23)
1
自然数 n を素数 p で割った余りを Mp(n) で表すことにする。また p − 1 以下の自然数 x, y
に対して,x ⊗ y = Mp(xy) と演算 ⊗ を定義する。ただし右辺の xy は通常の積である。た
とえば,M11(6 × 4 ) = 2 である。この演算 ⊗ は交換法則 x⊗ y = y ⊗ x や結合法則
x⊗ (y ⊗ z) = (x⊗ y)⊗ z を満たす。ここで x, y, zは p− 1以下の自然数である。次の命題はフェルマーの小定理とよばれている。命題 自然数 aと素数 pが互いに素ならば ap−1 を p で割った余りは 1である。この命題を証明しよう。上の記号を用いれば Mp(ap−1 = 1 を示せばよい。以下,Mp の添字
pは省略する。x, y を p − 1以下の自然数とする。M(ax) = M(ay)ならば a(x − y)は p の
倍数 となる。よって x = yでなくてはならない。この 対偶 を考えれば, x \= y ならば
M(ax) \= M(ay) である。このことから
M(1a), M(2a), · · · , M((p− 1)a)
は異なった自然数である。よって
M(1a)⊗M(2a)⊗ · · · ⊗M((p− 1)a) = 1⊗ 2⊗ · · · ⊗ p-1
となる。一方,M の性質を使えば
M(1a)⊗M(2a)⊗ · · · ⊗M((p− 1)a) = M( ap−1 )⊗ 1⊗ 2⊗ · · · ⊗ p-1
となる。x⊗ y = yのとき,x = 1 となることに注意すれば,Mp(ap−1) = 1を得る。
【演習 9】自然数 nの関数 f(n), g(n)を
f (n) = nを 7で割ったあまり、
g(n) = 3f
(7∑
k=1
kn
)によって定める.
(1) すべての自然数 nに対して、f(n7) = f(n)を示せ.
(2) あなたの好きな自然数 nを1つ決めて g(n)を求めよ.その g(n)の値をこの設問 (2)におけるあなたの得点とする.
【1995京都大学】
1 フェルマーの小定理
-37-
第 5. フェルマーの小定理
【解答】(1)
(n− 3) (n− 2) (n− 1)n (n + 1) (n + 2) (n + 3)
= n(n2 − 1
) (n2 − 4
) (n2 − 9
)= n
(n6 − 14n4 + 49n2 − 36
)= n7 − 14n5 + 49n3 − 36n
= n7 − n + 7(−2n5 + 7n3 − 5n
)(n− 3) (n− 2) (n− 1) n (n + 1) (n + 2) (n + 3) は連続7整数の積だから7の倍数である.よって、n7−nも7の倍数である.すなわち、f(n7) = f(n)が成り立つ.
(2) nを6で割った余りを r,商を qとおくと、n = 6q + r
kn − kr = k6q+r − kr
= kr(k6q − 1
)= kr
(k6 − 1
){(k6)q−1
+(k6)q−2
+ · · ·+(k6)
+ 1}
= kr−1(k7 − k
){(k6)q−1
+(k6)q−2
+ · · ·+(k6)
+ 1}
であるから、r = 1, 2, 3, 4, 5のときは、f (kn) = f (kr)
したがって、g (n) = 3f (1 + 2n + 3n + 4n + 5n + 6n + 7n)= 3f (1 + 2n + 3n + 4n + 5n + 6n)= 3f (1 + 2r + 3r + 4r + 5r + 6r)
6r + 1 = (7− 1)r + 1 = 7M + (−1)r + 1
5r + 2r
= (7− 2)r + 2r
= 7M + (−2)r + 2r
4r + 3r
= (7− 3)r + 3r
= 7M + (−3)r + 3r
だから、rが奇数のときは、これらはみな7の倍数になる.だから、
g (n) = 3f (1 + 2r + 3r + 4r + 5r + 6r) = 0
.r = 2のとき、1 + 2r + 3r + 4r + 5r + 6r
= 7M + 2 (1 + 4 + 9) = 7N
だから、g (n) = 3f (1 + 2r + 3r + 4r + 5r + 6r) = 0
r = 4のとき、1 + 2r + 3r + 4r + 5r + 6r
= 7M + 2(1 + 42 + 92
)= 7N
-38-
第 5. フェルマーの小定理
だから、g (n) = 3f (1 + 2r + 3r + 4r + 5r + 6r) = 0
よって、r = 1, 2, 3, 4, 5のとき、g(n) = 0
n = 6qのとき、
【演習 10】(1) 正の整数 nで n3 + 1が 3で割り切れるものをすべて求めよ。
(2) 正の整数 nで nn + 1が 3で割り切れるものをすべて求めよ。
【2003一橋大学】
1 余りで分類.
2 連続 p整数の積は p!の倍数.
【解答】(1) n3 − n = (n− 1)n(n + 1)は連続3整数の積ゆえ3の倍数である.したがって、n3 + 1 = n3 − n + n + 1が3の倍数になるのは、n + 1が3の倍数のときである.
(2) f(n) = nn + 1とおく.
( i ) n = 3mのとき、f (3m) = (3m)n + 1
は3の倍数ではない.( ii ) n = 3m + 1のとき、
f (3m + 1) = (3m + 1)n +1 = 3M +1+1 = 3M +2
は3の倍数ではない.(iii) n = 3m− 1のとき、
f (3m− 1) = (3m− 1)n + 1 = 3M + (−1)n + 1
が3の倍数であるのは、nが奇数のとき.3m−1 = 2l−1とおけるから、mは偶数.
∴ n = 3 (2k)− 1 = 6k − 1
-39-
第 5. フェルマーの小定理
【演習 11】nを 2以上の整数とするとき,次の問いに答えよ。
(1) n3 − nが 6で割り切れることを証明せよ。
(2) n5 − nが 30で割り切れることを証明せよ。
【2005弘前大学】
1 連続 p整数の積は p!の倍数.
2 漸化式.数学的帰納法.
【解答】(1) n3 − n = (n− 1)n(n + 1)は連続3整数の積ゆえ 3! = 6の倍数である.
(2)(n− 2) (n− 1) n (n + 1) (n + 2)
= n(n2 − 1
) (n2 − 4
)= n5 − 5n3 + 4n
は連続5整数の積だから、5! = 120の倍数である.n5 − n = (n− 2) (n− 1) n (n + 1) (n + 2) + 5n3 − 5n
= (n− 2) (n− 1)n (n + 1) (n + 2) + 5(n3 − n
)と変形して、(1)の結果を合わせると、n5 − nは30の倍数である.
【演習 12】3以上 9999以下の奇数 aで,a2 − aが 10000で割り切れるものをすべて求めよ。
【2005東京大学】
1 aと a− 1はお隣さん.
2 1次不定方程式に.
【解答】a (a− 1) = 10000Q = 24 · 54Q
aが奇数、a− 1が偶数であって、しかも同時に5の倍数になるこ
-40-
第 5. フェルマーの小定理
ともないから、a = 54M (M :奇数) , a− 1 = 24 ·N または、a = M (M :) , a− 1 = 24 · 54N
後者の場合はa = 10000N + 1 > 10001
となり、条件に適さず.a = 54M,a− 1 = 24N
のとき、aを消去すると、54M − 1 = 24 ·N ⇔ 625M + 16N = 1
625 = 16× 39 + 1⇔ 625 · 1 + 16 · (−39) = 1
を利用すると.625 (M − 1) + 16 (N + 39) = 0
と変形でき、625と 16は互いに素だから、N + 39 = 625m
N = 625m + 39
∴ a = 24 · (625m + 39) + 1= 10000m + 625
a < 10000だから、a = 625___
___ax + by = c · · · ♣を満たす整数解 (x, y)を求めるには、定数項 cを消去して、♣を積形にす
るのがポイントです.例えば、73x + 18y = 3 · · · 1©のとき、この式を満たす特殊な解を1つ求めます.73を 18で割ると、73 = 18× 4 + 1であるから、73× 3 + 18× (−12) = 3 · · · 2©となり、特殊な解が見つかります. 1©− 2©より
73(x− 3) + 18(y + 12) = 0⇔ 73(x− 3) = −18(y + 12)
73と 18は互いに素だから、
x− 3 = −18m, y + 12 = 73m⇔ x = 3− 18m, y = 73m− 12
と一般解が得られます.さて、特殊な解が割り算1回で求められましたが、いつもこううまくは行きません.そのような
ときは繰り返し割り算を実行します.ユークリッドの互除法という手法で求めることができます.
-41-
43
第6章 Pell方程式
次の の中に適当な数または式を入れよ。また、(イ)~(ホ)の「 」で囲まれた文章の理由を、述べよ。方程式 x2 − 3y2 = 1 · · · · · · 1©を満たす整数の組 (x, y)を求めることを考える。(以下この方程式の整数解を単に解と略称す
る。)準備のために次のことを確かめておく。
(イ) 「a, b, c, dが整数であって、a + b√
3 = c + d√
3ならば、a = c, b = dである」次に (x, y)が解であれば、(x,−y), (−x, y), (−x,−y)もかいであることは、方程式 1©により、明らかであるから (x, y)がともに負でない解を求めることが基本的である。それでそのような解を求める手段として、
(2 +√
3)n = xn + yn
√3 · · · · · · 2©(xn, ynは負でない整数、n = 1, 2, 3, · · · )
とおく。そうすると(イ)によって
x0 = 1, y0 = 0.x1 = 2, y1 = 1 · · · · · · 3©
x2 = , y2 = , x3 = , y3 =
である。一方、(2 +√
3)2 と (2 −√
3)2,(2 +√
3)3 と (2 −√
3)3 などを比較することによって、一般に、
(2−√
3)n = xn − yn
√3, n = 0, 1, 2, 3 · · · · · · 4©
であることがわかる。 2©と 4©と (2 +√
3)(2−√
3) = 1とを使って、
1 = (2 +√
3)n(2−√
3)n = xn2 − 3yn
2
となるから、 2©で定まる (xn, yn)は方程式の解であることがわかる。とくに x, yの一方が 0となるような負でない解は、明らかに、x = 1, y = 0でそれは 3©の (x0, y0)にほかならない。次に (xn−1, yn−1),と (xn, yn)との関係を求めてみる。(n = 1)
xn + yn =(2 +√
3)n
= (xn−1 + yn−1)(2 +√
3)
=
第 6. PELL方程式
ゆえに、xn = , yn =
したがって、(x0, y0)から出発して、負でない解 (x1, y1), (x2, y2), · · · , (xn, yn), · · · ,を順次求めて行くことができる。しかも、y1 < y2 < y3 < · · · である。
以上のことで負でない解を多数みつけたのであるが、これらで負でない解が尽くされているかどうかを次に吟味する。
いま任意の正の解 (x, y)(x > 0, y > 0)とすると、
(x +√
3y)(2−√
3) = (2x− 3y) + (2y − x)√
3
(ロ) 「x′ = 2x− 3y, y′ = 2y − xとおくとき、(x′, y′)も解である。」
(ハ) 「それで、任意の正の解 (x, y)から出発して、(ロ)における (x′, y′)を求める操作を順次行うことによって、 3©に示す負でない解 (x0, y0)に達する」
(ニ) 「したがって、任意の負でない解 (x, y)は式 2©によって定まる (xn, yn)(n = 0, 1, 2, · · · )のどれか1つである。」
【京都大学】
解答 数学の問題としては長文の問題で出題者の思考について行くのも大変ですが、整数問題の有名な問題です。(イ)の理由
a + b√
3 = c + d√
3 (a, b, c, d ∈ Z)
のとき、b− d \= 0とすると、√
3 =c− a
b− d=有理数
となって矛盾。よって、
a = c, b = d
である。(2 +√
3)n
= xn + yn
√3 · · · · · · 2©
とおくと、
xn+1 + yn+1
√3 =
(2 +√
3)(
xn + yn
√3)
= 2xn + 3yn + (xn + 2yn)√
3
∴{
xn+1 = 2xn + 3yn
yn+1 = xn + 2yn
-44-
第 6. PELL方程式
これより、(x0, y0) = (1, 0) , (x0, y0) = (2, 1)(x2, y2) = (7, 4) , (x3, y3) = (26, 15)
xn+1 − yn+1
√3 = 2xn + 3yn − (xn + 2yn)
√3
=(2−√
3)(
xn − yn
√3)
∴ xn − yn
√3 =
(2−√
3)n (
x0 + y0
√3)
=(2−√
3)n
∴(xn + yn
√3)(
xn − yn
√3)
=(2−√
3)n (
2 +√
3)n
∴ x2n − 3y2
n = 1
だから、 2©で生成される (xn, yn)は Pell方程式 x2 − 3y2 = 1の負でない解である。(ロ)の理由 いま任意の正の解 (x, y)(x > 0, y > 0)とすると、
(x +√
3y)(2−√
3) = (2x− 3y) + (2y − x)√
3
x′ = 2x− 3y, y′ = 2y − xとおくとき、x′2 − 3y′2 = (2x− 3y)2 − 3 (−x + 2y)2
= x2 − 3y2 = 1
であるから、(x′, y′)も解である。(ハ)の理由
x− x′ = x− (2x− 3y)= −x + 3y
=9y2 − x2
3y + x=
6y2 − 13y + x
> 0
x′ = 2x− 3y =4x2 − 9y2
2x + 3y
=4(3y2 + 1
)− 9y2
2x + 3y=
=3y2 + 122x + 3y
> 0
だから、x > x′ > 0y − y′ = y − (−x + 2y)= x− y
=x2 − y2
x + y=
2y2 + 1x + y
> 0
y′ = −x + 2y =−x2 + 4y2
x + 2y
=−(3y2 + 1
)+ 4y2
x + 2y=
y2 − 1x + 2y
= 0
-45-
第 6. PELL方程式
だから、y > y′ = 0
(ニ)の理由
(x, y)→ (x′, y′)
の操作を繰り返していけば、この列は単調に減少するから、有限回の操作によって、(x0, y0)に達する。(ホ)の理由任意の負でない解 (x, y)に対して、(
x +√
3y)(
2−√
3)n
= 1
⇔ x +√
3y =1(
2−√
3)n =
(2 +√
3)n
となる nが存在するから、任意の負でない解 (x, y)は式 2©によって定まる (xn, yn)(n = 0, 1, 2, · · · )のどれか1つである。
【演習 13】(1) 等式 (x2 − ny2)(z2 − nt2) = (xz + nyt)2 − n(xt + yz)2 を示せ。
(2) x2 − 2y2 = −1の自然数解 (x, y)が無限組であることを示し、x > 100となる解を1組求めよ。
【1998お茶の水女子大学】
解答
(1)
(xz + nyt)2 − n (xt + yz)2 = x2z2 + 2xznt + n2y2t2 − nx2t2 − 2xznt− ny2z2
= x2z2 − nx2t2 + n2y2t2 − ny2z2
=(x2 − ny2
) (z2 − nt2
)(2) (1)で n = 2, z = t = 1とおくと、(
x2 − 2y2)(−1) = (x + 2y)2 − 2 (x + y)2
が成り立つ。これより、(x, y)が x2 − 2y2 = 1を満たすならば、
X = x + 2y, Y = x + y
で定まる (X.Y )はX2 − 2Y 2 = −1を満たす。また、
(x, y)が x2 − 2y2 = −1を満たすならば、
X = x + 2y, Y = x + y
-46-
第 6. PELL方程式
で定まる (X.Y )はX2 − 2Y 2 = 1を満たす。そこで、x, yが、x2 − 2y2 = 1を満たすならば、{X = (x + 2y) + 2 (x + y) = 3x + 4y
Y = (x + 2y) + (x + y) = 2x + 3y
なる (X.Y )はX2 − 2Y 2 = 1を満たすことがわかる。このとき、1つの自然数の解 (x, y)のに対して、この (X, Y )は
X > x, Y > y
なる異なる大きな解の組が得られる。そこで、解 (1, 1)から初めてこの変換を繰り返せば、より大きい解がいくらでも得られる。こうして、無数に解が存在することがわかる。
(7, 5)→ (41, 29)→ (239, 169)→ (571, 264)
と求めれば、(x, y) = (239, 169)が1つの解になる。
【演習 14】2つの条件
( i ) a2 − 2b2 = 1または a2 − 2b2 = −1
( ii ) a +√
2b > 0
を満たす任意の整数 a, bから得られる実数 g = a +√
2b全体の集合をGとする。1より大きい Gの元のうち最小のものを uとする。
(1) uを求めよ。
(2) 整数 nと Gの元 gに対し、gun は Gの元であることを示せ。
(3) Gの任意の元 gは適当な整数mによって、g = um と書かれることを示せ。
【東京工業大学】
解答
(1) 条件 (i)(ii)を満たす (a, b)の存在範囲は図のようになる。
a
b
O
この中の格子点 (a, b)を通り、k = a +√
2bを最小にするものは、a = 1, b = 1でこのとき、1 +
√2 > 1となる。
つまり、u = 1 +
√2
(2)
a + b√
2 ∈ G, c + d√
2 ∈ G
-47-
第 6. PELL方程式
のとき、(a + b
√2)(
c + d√
2)
= (ac + 2bd) + (bc + ad)√
2
であり、(ac + 2bd)2 − 2 (bc + ad)2
= a2c2 + 4b2d2 − 2b2c2 − 2a2d2
=(a2 − 2b2
)c2 − 2d2
(a2 − 2b2
)=(a2 − 2b2
) (c2 − 2d2
)= ±1
∴(a + b
√2)(
c + d√
2)∈ G
であるから、Gは乗法について閉じている。したがって、自然数 nについて、gun ∈ G · · · 1©
u−1 =1
1 +√
2= −1 +
√2
も条件を満たすものだから、u−1 ∈ Gとなるので、 1©は負の整数でも成立する。
(3)k < j ⇒ uk < uj
が成り立つ。いま、任意の g ∈ Gに対して、uk <5 g 5 uk+1
となる整数 kが存在する。このとき、1 < gu−k 5 u
ここに、uの最小性より、gu−k = u⇔ g = uk+1
となる。
【演習 15】A =
{m + n
√3 |m,nは整数
}とする。
(1) 集合 Aを定義域とする関数 f を f(m + n√
3) = m2 − 3n2と定める。このとき、Aの2元 x, yに対し、f(xy) = f(x)f(y)が成り立つことを示せ。
(2) 0でない整数 k が与えられたときに、方程式 m2 − 3n2 = k が整数解 (m,n)を1つでももつならば、この方程式は解を無数にもつことを示せ。ただし、(1) の f についてf(2 +
√3) = 1となることを用いよ。さらに、k = 4のときは解があるかどうか、もし
あるならば3組求めよ。
【津田塾大学】
解答
-48-
第 6. PELL方程式
(1)
x = m + n√
3 ∈ A
y = p + q√
3 ∈ A
のとき、
xy =(m + n
√3)(
p + q√
3)
= mp + 3nq + (np + mq)√
3
だから、f (xy) = (mp + 3nq)2 − 3 (np + mq)2
=(m2 − 3n2
) (p2 − 3q2
)= f (x) f (y)
(2) m2 − 3n2 = kを満たす1つの解は対称性により、m = 0, n = 0と考えてよく、m,nの少なくとも1つは 0でない。
x = m + n√
3
u = 2 +√
3
とおくと、f (xu) = f (x) f (u) = k × 1 = k
xu = 2m + 3n + (m + 2n)√
3
であるから、(2m + 3n,m + 2n)も解である。この解は元の解と異なってしかも解の成分は増加しているから、この操作を続ければ無数の解が得られる。(2, 0)からはじめると、
k = 4のとき、(4, 2)→ (14, 8)→ (52, 30)
と3組の解を得る。
【演習 16】A =
(2 −3−1 2
)とする。
(1)(
x′
y′
)= A
(xy
)で x2 − 3y2 = 1, x > 0, y = 1ならば、x′2 − 3y′2 = 1, 0 5 y′ < yが成立
することを示せ。
(2) x, yが x2− 3y2 = 1を満たす自然数ならば、ある自然数 nをとると、(
10
)= An
(xy
)と
なることを示せ。
【1988京都大学】
解答は自力作成せよ。
-49-
51
第7章 オイラー関数・約数の個数・完全数
入試問題から自然数 nに対して、実数 f(n)を次の規則で定める。
(A) f(1) = 1
(B) 素数 p,自然数 nに対して、f(pa) = pa
(1− 1
p
)(C) 自然数m,nが互いに素であるとき、f(mn) = f(m)f(n)
(1) 自然数 n(n = 2) を n = pa11 · p
a22 · · · par
r (ar = 1) と素因数分解するとき、f(n)nを
p1, p2, · · · , pr を用いて表せ。
(2) f(n) =13nとなるとき、n = 2a · 3b(a = 1, b = 1)と表されることを示せ。
【1993横浜市立大学】
(1) paii と p
aj
j は互いに素であるから (C)より、f (n) = f (pα1
1 ) · · · f (pαrr )
つづいて、(B)を用いて、
f (n) = pα11
(1− 1
p1
)· · · pαr
r
(1− 1
pr
)= pα1
1 · · · pαrr
(1− 1
p1
)· · ·(
1− 1pr
)= n
(1− 1
p1
)· · ·(
1− 1pr
)∴ f (n)
n=(
1− 1p1
)· · ·(
1− 1pr
)
(2) f (n) =13nとなるのは、(1)より、(
1− 1p1
)· · ·(
1− 1pr
)=
13
⇔ 3 (p1 − 1) · · · (pr − 1) = p1 · · · pr
第 7. オイラー関数・約数の個数・完全数
ここで、一般性を失うことなく、
2 5 p1 < p2 < · · · < pr
とおく。p1 \= 2とすると、左辺は偶数、右辺は奇数だから、矛盾。よって、p1 = 2である。
3 (p2 − 1) · · · (pr − 1) = 2p2 · · · pr
左辺は 2の倍数だから、p2 = 3である。p3 が存在するとすれば、
(p3 − 1) · · · (pr − 1) = p3 · · · pr
となって、矛盾。
∴ n = 2a · 3b
ここで登場した関数 f はオイラー関数と呼ばれる整数論関数のひとつである。これは次のように定義される関数で ϕを用いる。
m > 1のとき、mより小さくてmと互いに素な自然数の個数を ϕ(m)と表す。ただし、ϕ(1) = 1と定める。
言い方を換えると、ϕ(m)は 1m
,2m
, · · · , m− 1m
の中の既約分数の個数でもある。ϕ(m)についての次の定理が成り立つ。
定理1 pが素数のとき、ϕ(pk) = pk − pk−1。とくに、ϕ(p) = p− 1である。
定理2 a, bが互いに素ならば、
ϕ (ab) = ϕ (a) ϕ (b)
定理3 αが α = pa11 · p
a22 · · · · · par
r と素因数分解されるとき、
ϕ (α) = α
(1− 1
p1
)· · ·(
1− 1pr
)以下に証明を揚げる。
定理1の証明 pk 以下で pk と互いに素でない数は、p, 2p, 3p, · · · , pk の pk−1 個あるから、
ϕ(pk) = pk − pk−1
-52-
第 7. オイラー関数・約数の個数・完全数
定理2の証明 1から abまでの数を次のように並べる。1 2 3 · · · a
1 + a 2 + a 3 + a · · · 2a1 + 2a 2 + 2a 3 + 2a · · · 3a· · · · · · · · · · · · · · ·
1 + (b− 1) a 2 + (b− 1) a 3 + (b− 1) a · · · ba
1から aまでに aと互いに素であるものは p = ϕ (a)個ある。これらを
α1, α2, · · · , αp
とする。このとき、αi + akと aは互いに素であるから、1から abまでで aと互いに素であるものは
α1 α2 α3 · · · αp
α1 + a α2 + a α3 + a · · · αp + aα1 + 2a α2 + 2a α3 + 2a · · · αp + 2a· · · · · · · · · · · · · · ·
α1 + (b− 1) a α2 + (b− 1) a α3 + (b− 1) a · · · αp + (b− 1) a
この表を縦にみて、任意の列:
αi αi + a αi + 2a · · · · · · αi + (b− 1) a
の b個の数を bで割った余りは互いに異なる。もし、同じ余りになるものがあるとすると、αi + ma ≡ αi + na (mod b)⇔ (m− n) a ≡ (mod b)
となって、a, bが互いに素であることに矛盾する。よって、この列を bで割った余りは0, 1, 2, · · · , b−1すべてである。この b個の中には bと互いに素であるものは ϕ (b)個あるから、
ϕ (ab) = ϕ (a) ϕ (b)
が成り立つ。
定理3の証明ϕ (α) = ϕ (pa1
1 · pa22 · · · · · par
r )= ϕ (pa1
1 ) ϕ (pa22 ) · · ·ϕ (par
r )
= pa11
(1− 1
p1
)pa22
(1− 1
p2
)· · · par
r
(1− 1
pr
)= α
(1− 1
p1
)(1− 1
p2
)· · ·(
1− 1pr
)
-53-
第 7. オイラー関数・約数の個数・完全数
【演習 17】自然数 nが n = p2q(p, q は素数,p \= q)の形で表されるとき,nの正の約数は 6個あり,それらの和は(
ア + p + p2)(
イ + q)
と表すことができる。このような nで正の約数の和が 2nとなるような数を求める。正の約数の和が 2nであるから,
2p2q =(ア + p + p2
)(イ + q
)が成り立つ。 ア + p + p2は奇数であり,pの倍数ではないから, イ + qは 2p2の倍数となり,
イ + q = 2p2k(k は自然数)
とおける。したがって,
q =(ア + p + p2
)k
となるが,qは素数であるから。k = ウ である。よって
p2 − p− エ = 0
これを解いて,p = オ である。ゆえに n = カ である。【2010早稲田大学】
【解答】ア1
イ1
ウ1
エ2
オ2
カ28
自然数 nが n = p2q(p, q は素数,p \= q)の形で表されるとき,nの正の約数は 6個あり,それらの和は
1 + p + p2 + q + qp + qp2 =(1 + p + p2
)(1 + p)
と表すことができる。このような nで正の約数の和が 2nとなるような数を求める。正の約数の和が 2nであるから,(
1 + p + p2)(1 + p) = 2p2q
が成り立つ。1 + p + p2 = 1 + p(p + 1)は奇数であり,pの倍数ではないから,1 + qは 2p2の倍数となり,
1 + q = 2p2k(k は自然数)
とおける。したがって,q =
(1 + p + p2
)k
-54-
第 7. オイラー関数・約数の個数・完全数
となるが,qは素数であるから。k = 1である。よって
p2 − p− 2 = 0
これを解いて,p = 2である。ゆえに n = 28である。
自然数 nが
n = pα11 · p
α22 · · · · · p
αk
k
と素因数分解されるとき、nの約数はpx1 · p
y2 · · · · · pz
kx = 0, 1, · · · , α1,
y = 0, 1, · · · , α2,
· · · ,z = 0, 1, · · · , αk
と表されるからその個数 d(n)は
d (n) = (1 + α1) (1 + α2) · · · (1 + αk)
また、約数の総和はσ (n) = (1 + p1 + · · ·+ pα1
1 ) (1 + p2 + · · ·+ pα22 ) · · · (1 + pk + · · ·+ pαk
k )
=1− pα1+1
1
1− p1× 1− pα2+1
2
1− p2× · · · ×
1− pαk+1k
1− pk
である。一般に正の整数 nについて、
σ (n) = 2n
となる nを完全数という。σ (6) = (1 + 2) (1 + 3) = 12 = 2 · 6σ (28) = (1 + 2 + 4) (1 + 7) = 56 = 2 · 28
だから、6,28は完全数である。完全数について次の定理が有名である。定理
2n − 1が素数ならば、2n−1(2n − 1)は完全数である。
(証明)
p = 2n − 1, N = 2n−1p
-55-
第 7. オイラー関数・約数の個数・完全数
とおくと、σ (N) =
(1 + 2 + 22 + · · ·+ 2n−1
)(1 + p)
= (2n − 1) (1 + p)= (2n − 1) 2n
= 2N
よって、示せた。これにより、n = 2とおくと, 2n − 1 = 3, N = 6n = 3とおくと, 2n − 1 = 7, N = 28n = 5とおくと, 2n − 1 = 31, N = 496
と順に完全数が得られる。ここで、現れた 2n − 1という形で書ける素数をメルセンヌ数という。
【演習 18】自然数 nに対して,n以下の自然数で nとの最大公約数が 1であるような自然数の個数をf(n)とする。例えば,n = 12に対しては,このような自然数は,1, 5, 7, 11の 4個なので,f(12) = 4である。また,f(1) = 1, 素数 pに対しては f(p) = p− 1である。次の問に答えよ。
(1) f(77)の値を求めよ。
(2) f(pq) = 24となる 2つの素数 p, q(ただし,p < qとする)の組を求めよ。
(3) k, nを自然数とするとき,f(2k3n)の値を kと nの式で表せ。
【2005早稲田大学(社会科学)】
(1) 77 = 7× 11である。[777
]= 11,
[7711
]= 7.
[7777
]= 1
より 1から 77までで 7または 11で割り切れる数は、11 + 7− 1 = 17
個ある。∴ f (77) = 77− 17 = 60
オイラー関数により、
f (77) = 77(
1− 17
)(1− 1
11
)= 60
-56-
第 7. オイラー関数・約数の個数・完全数
(2)
f (pq) = pq − p− q + 1 = (p− 1) (q − 1) = 24
だから、∴ (p− 1, q − 1) = (1, 25) , (2, 12) , (3, 8) , (4, 6) ,
⇔ (p, q) = (2, 26) , (3, 13) , (4, 9) , (5, 7)
このうち適するものは、
(p, q) = (3, 13) , (5, 7)
(3)
f(2k · 3n
)= 2k · 3n −
([2k · 3n
2
]+[2k · 3n
3
]−[2k · 3n
2 · 3
])= 2k · 3n − 2k−1 · 3n − 2k · 3n−1 + 2k−1 · 3n − 1
= 2k · 3n
(1− 1
2
)(1− 1
3
)= 2k · 3n−1
【演習 19】pを素数,nを正の整数とするとき,(pn)!は pで何回割り切れるか。 【2009京都大学】
1, 2, 3, · · · · · · , pn
の中に、pの倍数は[pn
p
]個あり、この中には p2 の倍数が[
pn
p2
]個ある。これを繰り返していくと、(pn)!は pで
n∑k=1
[pn
pk
]=
pn − 1p− 1
回割れる。
-57-
第 7. オイラー関数・約数の個数・完全数
1から nまでの自然数の積 n!を素因数分解すると, 2の指数は、∞∑
k=1
[ n
2k
]である。
3の指数は、∞∑
k=1
[ n
3k
]である。
生徒の質問
Mn = 2n − 1 (n ∈ N)
F (x)は x (x ∈ N)の約数の総和とする。
(1) 「nは素数でない。 ⇒ Mn は素数でない。」· · · · · · 1©「nは素数である。 ⇒ Mn は素数である。」· · · · · · 2©
1©を示せ。また、 2©の反例をあげよ。
(2) x, k, lが正の整数であるとき、x = k · lのとき、F (x) = F (k)× F (l)が成り立つことを示せ。
(3) [N は偶数である。かつF (N) = 2N
]· · · · · · 3©
N =12Mn (Mn + 1)
(nはMnが素数となるような値とする)
· · · · · · 4©
このとき、N が 3©をみたすことと、N が 4©をみたすことは同値であることを示せ。
(4) 3©(もしくは 4©)のとき、N の末尾の数は 6か 8であることを示せ。
(1) 「 1©の証明」
nは素数であるから、2つの 2以上の整数 a, bの積と表される。このとき、Mn = 2ab − 1
= (2a − 1){
(2a)b−1 + (2a)b−2 + · · ·+ 2a + 1}
であり、2a − 1 > 1, (2a)b−1 + (2a)b−2 + · · ·+ 2a + 1 > 0
であるから、Mn は素数ではない。
「 1©の反例」23 − 1 = 7, 25 − 1 = 31, 27 − 1 = 127,
211 − 1 = 2047 = 23× 89
-58-
第 7. オイラー関数・約数の個数・完全数
(2) kの約数を
1, p1, p2, · · · · · · , pn
lの約数を
1, q1, q2, · · · · · · , qm
とすると、x = klの約数は1, p1, p2, · · · · · · , pn
q1, q1p1, q1p2, · · · · · · , q1pn
q2, q2p1, q2p2, · · · · · · , q2pn
· · · · · · · · · · · ·qm, qmp1, qmp2, · · · · · · , qmpn
であるから、F (kl) = 1 + p1 + p2 + · · · · · ·+ pn
+q1 (1 + p1 + p2 + · · · · · ·+ pn)+q2 (1 + p1 + p2 + · · · · · ·+ pn)· · · · · · · · · · · ·+qm (1 + p1 + p2 + · · · · · ·+ pn)= (1 + q1 + q2 + · · · · · ·+ qm) (1 + p1 + p2 + · · · · · ·+ pn)= F (k)F (l)
pが素数のとき、pn の約数は
1, p, p2 · · · , pn
だから、
F (pn) = (1 + p + p2 + · · · pn) =1− pn+1
1− p
xを素因数分解して、
x = p1α1 · p2
α2 · · · · · · · pkαk
と表わせたとすると、
F (x) =1− p1
α1+1
1− p1× 1− p2
α2+1
1− p2× · · · × 1− pk
αk+1
1− pk
となる。
-59-
第 7. オイラー関数・約数の個数・完全数
(3) 「 3©⇒ 4©の証明」
N は偶数であるから、N = 2n ·M (M :奇数)
とおける。{F (N) = F (2n)F (M) =
(2n+1 − 1
)F (M)
F (N) = 2N = 2n+1 ·M
∴ 2n+1 ·M =(2n+1 − 1
)F (M)
この式において、2n+1は偶数、M は奇数、2n+1 − 1は奇数であるから、2n+1 − 1はM の約数である。
M =(2n+1 − 1
)M1
とおくと、2n+1 ·
(2n+1 − 1
)M1 =
(2n+1 − 1
)F (M)
∴ 2n+1 ·M1 = F (M)
F (M) = F((
2n+1 − 1)M1
)= F
(2n+1 − 1
)F (M1)
だから、2n+1 ·M1 = F
(2n+1 − 1
)F (M1) = F
(2n+1 − 1
)M1 · · · · · · 5©
ここで等号が成り立つのは、F (M1) = M1 ⇔M1 = 1
のときであることに注意。従って、2n+1 > F
(2n+1 − 1
)> 2n+1 · · · · · · 6©
∴ F(2n+1 − 1
)= 2n+1
これより、2n+1 − 1は素数であることがわかる。 5©, 6©より、M = 2n+1 − 1であるから、
N = 2n ·(2n+1 − 1
)=
12Mn+1 (Mn+1 + 1)
とかけて、ここに、2n+1 − 1は素数である。 �
「 4©⇒ 3©の証明」N = 2n−1 (2n − 1)
で 2n − 1が素数のとき、F (N) = F
(2n−1
)F (2n − 1)
= (2n − 1) 2n = 2N
�
-60-
第 7. オイラー関数・約数の個数・完全数
(4)
an+4 = 2n+4(2n+5 − 1
)− 2n
(2n+1 − 1
)= 2n
(2n+9 − 16− 2n+1 + 1
)= 2n
{2n+1 · 255− 15
}= 10の倍数
であるから、an の1位の数は周期4で繰り返される。
a1 = 2 · 3 = 6a2 = 4 · 7 = 28a3 = 8 · 15 = 120 (15は素数ではない)a4 = 16 · 31 = 496
ここに、n = 4m + 3のとき、
2n+1 − 1 = 24(m+1) − 1
=(2m+1 − 1
) (2m+1 + 1
) (22m+2 + 1
)は素数にならない。よって、N の1位の数は6か8である。
-61-
63
第8章 連分数と不定方程式
入試問題から
a, bを互いに素な自然数とし、a
bはある自然数 a1, a2, a3 によって、
a
b= a1 +
1
a2 +1a3
と表されている。p1
q1,p2
q2は既約分数とし、p1
q1= a1,
p2
q2= a1 +
1a2であるとする。xy − zw
を∣∣∣∣∣ x z
w y
∣∣∣∣∣と書くとき、(1)
∣∣∣∣∣ p2 p1
q2 q1
∣∣∣∣∣の値を求めよ。(2)
∣∣∣∣∣ a3p2 + p1 p2
a3q2 + q1 q2
∣∣∣∣∣の値を求めよ。(3) a = a3p2 + p1, b = a3q2 + q1 であることを示せ。
【1983早稲田大学】
(1) ∣∣∣∣ p2 p1
q2 q1
∣∣∣∣ = ∣∣∣∣ a1a2 + 1 a1
a2 1
∣∣∣∣= (a1a2 + 1)− a1a2 = 1
(2) ∣∣∣∣ a3p2 + p1 p2
a3q2 + q1 q2
∣∣∣∣ = ∣∣∣∣ a3p2 + a1 a1a2 + 1a3q2 + 1 a2
∣∣∣∣= (a3p2 + a1) a2 − (a1a2 + 1) (a3q2 + 1)= a3p2a2 + a1a2 − a1a2a3q2 − a1a2 − a3q2 − 1= a2a3 (a1a2 + 1)− a1a2a3a2 − a3a2 − 1= −1
第 8. 連分数と不定方程式
(3)
a
b= a1 +
a3
a3a2 + 1=
a1a3a2 + a1 + a3
a3a2 + 1
ここで、a3a2 + 1, a3 は互いに素であり、a1a3a2 + a1 + a3, a3a2 + 1は互いに素だから、
a = a1a3a2 + a1 + a3 = a3 (a1a2 + 1) + a1
= a3p2 + p1
b = a3a2 + 1 = a3q2 + q
有理数をこのように表すことを連分数展開と呼ぶ。これは Euclidの互除法 (No2。pdf1次不定方程式を見よ)をもちいて表すことができる。aを bで割ったときの商を a1、余りをa3 とすると、
a = a1b + a3 ⇔a
b= a1 +
a3
b
つぎに、bを a3 で割った商を a2 としたとき、余りが 1になったとすると、
b = a3a2 + 1⇔b
a3= a2 +
1a3
この互除法より、a, bが互いに素であることがわかる。これらから、連分数展開ができる。
a
b= a1 +
a3
b= a1 +
1b
a3
=1
a2 +1a3
a, bが互いに素であるとき、1次不定方程式 ax + by = 1は整数解をもつ。このことを互除法で示そう。a = a1, b = a2 とし、互除法を繰り返すと、
a1 = a2q1 + a3 (0 < a3 < a2)a2 = a3q2 + a4 (0 < a4 < a3)a3 = a4q3 + a5 (0 < a5 < a4)· · · · · · · · · · · ·an−1 = anqn−1 + an+1 (0 < an+1 < an)
ここで {an}は単調減少の自然数の数列であるから、有限回の操作で余りが1になるはずである。
-64-
第 8. 連分数と不定方程式
そこで、an+1 = 1とおくと、上の除法を分数形で表すと、
a1
a2= q1 +
a3
a2= q1 +
1a2
a3
a2
a3= q2 +
a4
a3= q2 +
1a3
a4
a3
a4= q3 +
a5
a4= q3 +
1a4
a5
· · · · · · · · · · · ·an−1
an= qn−1 +
an+1
an= qn−1 +
1an
となる。これを順に代入していくと、a1
a2= q1 +
1
q2 +1a2
a3
= q1 +1
q2 +1a3
a4
= q1 +1
q2 +1
q3 +1a4
a5
= · · · · · · = q1 +1
q2 +1
q3 +1
. . . + qn−1 +1an
-65-
第 8. 連分数と不定方程式
【演習 20】(1) α, β を互いに素な正の整数とする。
[ 1 ] αx− βy = 0の整数解をすべて求めよ。
[ 2 ]
α
β= a1 +
1
a2 +1
a3 +1a4
(a1, a2, a3, a4は正の整数)
とかけるとする。
a1 +1
a2 +1a3
を通分して得られる分子 a1a2a3 + a1 + a3 を p, 分母 a2a3 + 1 を q とするとき、αq − βpの値を求めよ。
(2) 157x− 68y = 3の整数解をすべて求めよ。
【1993早稲田大学】
(1) [ 1 ]
αβm = −βy
∴ y = −αm
αx− βy = 0⇔ αx = −βy
αxは β の倍数であるが、α, β を互いに素であるから、xが β の倍数である。
x = βm (m ∈ Z)
とおけて、αβm = βy
∴ y = αm
[ 2 ]
α
β= a1 +
1
a2 +1
a3 +1a4
(a1, a2, a3, a4は正の整数)
-66-
第 8. 連分数と不定方程式
と書けることから、
α > β
であり、このとき、αを β で割って、
α = βa1 + r
⇔ α
β= a1 +
r
β= a1 +
1βr
となる。与えられた式と比べて、β
r= a2 +
1a3 + 1
a4
そこで、β を rで割って、
β = rQ + r1
⇔ β
r= Q +
r1
r= Q +
1r
r1
∴ a2 = Q, a3 +1a4
=r
r1
rを r1 で割って、
r = Q′r1 + r2
⇔ r
r1= Q′ +
r2
r1
∴ Q′ = a3,r2
r1=
1a4
以上から、
α = βa1 + r · · · · · · 1©β = ra2 + r1 · · · · · · 2©r = r1a3 + r2 · · · · · · 3©r2
r1=
1a4· · · · · · 4©
Euclidの互除法によれば、a, bの最大公約数を (a, b)と表せば、 1©~ 3©より
(α, β) = (β, r) = (r, r1) = (r1, r2)
α, β は互いに素であったから、r1, r2 も互いに素である。 4©より、
a4r2 = r1
であるが、(1)の結果を用いると、
a4 = mr1, 1 = mr2
-67-
第 8. 連分数と不定方程式
となる正の整数が存在する。∴ m = 1, r2 = 1, a4 = r1
この結果を 3©に代入して、r = a4a3 + 1
2©を用いて、a4 = r1 を消去する。1 = r − a4a3
= r − (β − ra2) a3
= r (1 + a2a3)− βa3
2©を用いて、rを消去する。1 = r − a4a3
= r − (β − ra2) a3
= r (1 + a2a3)− βa3
= (α− βa1) (1 + a2a3)− βa3
= α (1 + a2a3)− β (a1a2a3 + a1 + a3)= αq − βp
(2)15768
= 2 +2168
= 2 +16821
= 2 +1
3 +521
= 2 +1
3 +1215
= 2 +1
3 +1
4 +15
1 + 3 · 4 = 13, 2 · 3 · 4 + 2 + 4 = 30
より、157 · 13− 68 · 30 = 1157 · 39− 68 · 90 = 3
これより、157x− 68y = 3
は157 (x− 39)− 68 (y − 90) = 0
とかけて、157と 68は互いに素であるから、x− 39 = 68n, y − 90 = 157n (n ∈ N)∴ x = 39n + 68n, y = 90 + 157n
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