食の扉を開く人 · −テナントの誘致はどのように行うのですか。...

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FCAJジャーナル 2018 APRIL 5 東京都生まれ。2015年に野村不動産株式会社に入社し、商業施設 事業部に配属。http://www.gems-portal.com 食の扉を開く人 HISAKO HASEBE 食を通じた街づくり、 都市型商業施設を創造する 野村不動産株式会社が手がける、飲食店を中心とした都市型商業施設 GEMS(ジェムズ)事業。立地を見極め、テナントに人気店を招致する 長 谷 部尚子さんにお話を聞きました。 −GEMSのコンセプトを教えてください。 G E M Sは、オフィス街でも狭小立地 展開する飲食店をメインテナントとし て、1フロア1店舗を積み重ねた都市型商業施設です。2012年のGEMS渋谷 を皮切りに、現在までに市ヶ谷、大門、神田、恵比寿、茅場町で開業していま す。ネーミングは英語の宝石「G E M(ジェム)」の複数形で、キラキラとした宝 石(店舗)がいくつも集積された都市型商業施設として輝きを放つという思い を込めています。デイリーユースでき、なおかつアッパーな魅力でリピーターを 確保できる施設作りを目指しています。 −テナントの誘致はどのように行うのですか。 どこにでもあるような外食チェーン店ではなく、こだわりのあるオーナーの 方が経営する、個性的で価値のある店を誘致しており、私は用地取得後の事 業推進やテナントリーシングの営業を行っています。具体的にはG E M Sの立 地、ターゲット、コンセプトに即したテナント店探しと交渉です。GEMSは一棟 一棟にコンセプトを打ち出しています。例えばGEMS渋谷は「大人たちが気軽に 普段使いができ、かつ上質な『食』『時間』『空間』をゆっくりと楽しめる施設」。 GEMS市ヶ谷は、「市ヶ谷の多様な飲食ニーズに応え、理想のワーク&ライフス タイルを実現するくつろぎの空間」というように、街ごとの空気感に合わせたコ ンセプトでブランディングしているので、その施設に合うテナント店を発掘するこ とが重要になります。日々の動きとしては、さまざまな情報メディアから気になる 飲食店をピックアップし、実際に足を運んで食事をした上でオーナーの方と商談 交渉をするという地道なプロセスの積み重ねです。 −食べ歩きが仕事と聞くと楽しそうですね。 そう思われる方は多いのですが、実際はGEMS一棟が成功するかどうか、 誘致したお店が繁盛するかという責任がかかっているため、かなりプレッ シャーも感じます。元々人気飲食店が多くある立地の場合は、テナント候補店 を探し出して交渉するのも一苦労です。なので、常に人気飲食店の情報には アンテナを張り、フットワークよく動くようにしています。店舗を決める際は一 棟内に似た業態が重複しないように調整しますが、自分が交渉した店には思 い入れがあるため、他の営業スタッフとぶつかり合いにもなります。また、いざ テナント契約が成立してからも、収支構造の勉強や、スケジュール管理、社内 調整など、開業までにさまざまな対応が発生します。大変と思うこともありま すが、成長していく喜びも感じています。それから、食べ過ぎには気をつけて いますね(笑)。 −開業後のテナントフォローはどのようなことをされているのですか。 交渉の上、賛同していただいてテナントに入ってもらいますので、繁盛する ように運営フォローも大切にしています。ポータルサイトなどのw e b周りの設 営やデジタルサイネージを活用した上層階への集客、来店客へのアンケート などまで、オーナーと共に集客や販促に取り組み、G E M Sを盛り上げるように 努めています。年に2回ほどテーマを設けて、オーナー向けのセミナーも行っ ています。 −今後の展望をお聞かせください。 GEMSは既存の6棟に加え、4月に神宮前、6月に三軒茶屋、8月に新横 浜、9月に新橋、12月に難波(大阪)の6棟が開業予定です。更に2020年度 までに計15棟体制にする方針を発表しています。各地のGEMSが街のラン ドマークになるよう輝きを増していくとともに、これからも街の人々に GEMSが愛されるように、努力していきます。 今年4月に開業予定のGEMS神宮前。「GOODY CULTURE FOOD&FASHION」をコンセプト に地下1〜2階はアパレルブランド、3〜10階 は人気飲食店が並ぶ。 長谷部 尚子 野村不動産株式会社 都市開発事業部 商業施設事業部 GEMS ポータルサイトでは各棟の店舗案内をは じめ、得するクーポン、旬の食情報などが閲覧 できる。

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FCAJジャーナル 2018 APRIL5

東京都生まれ。2015年に野村不動産株式会社に入社し、商業施設事業部に配属。http://www.gems-portal.com

食 の 扉 を 開 く 人

HISAKO HASEBE

食を通じた街づくり、都市型商業施設を創造する

野村不動産株式会社が手がける、飲食店を中心とした都市型商業施設GEMS(ジェムズ)事業。立地を見極め、テナントに人気店を招致する長谷部尚子さんにお話を聞きました。�−GEMSのコンセプトを教えてください。 GEMSは、オフィス街でも狭小立地展開する飲食店をメインテナントとして、1フロア1店舗を積み重ねた都市型商業施設です。2012年のGEMS渋谷を皮切りに、現在までに市ヶ谷、大門、神田、恵比寿、茅場町で開業しています。ネーミングは英語の宝石「GEM(ジェム)」の複数形で、キラキラとした宝石(店舗)がいくつも集積された都市型商業施設として輝きを放つという思いを込めています。デイリーユースでき、なおかつアッパーな魅力でリピーターを確保できる施設作りを目指しています。−テナントの誘致はどのように行うのですか。 どこにでもあるような外食チェーン店ではなく、こだわりのあるオーナーの方が経営する、個性的で価値のある店を誘致しており、私は用地取得後の事業推進やテナントリーシングの営業を行っています。具体的にはGEMSの立地、ターゲット、コンセプトに即したテナント店探しと交渉です。GEMSは一棟一棟にコンセプトを打ち出しています。例えばGEMS渋谷は「大人たちが気軽に普段使いができ、かつ上質な『食』『時間』『空間』をゆっくりと楽しめる施設」。GEMS市ヶ谷は、「市ヶ谷の多様な飲食ニーズに応え、理想のワーク&ライフスタイルを実現するくつろぎの空間」というように、街ごとの空気感に合わせたコンセプトでブランディングしているので、その施設に合うテナント店を発掘することが重要になります。日々の動きとしては、さまざまな情報メディアから気になる飲食店をピックアップし、実際に足を運んで食事をした上でオーナーの方と商談交渉をするという地道なプロセスの積み重ねです。−食べ歩きが仕事と聞くと楽しそうですね。 そう思われる方は多いのですが、実際はGEMS一棟が成功するかどうか、誘致したお店が繁盛するかという責任がかかっているため、かなりプレッシャーも感じます。元 人々気飲食店が多くある立地の場合は、テナント候補店を探し出して交渉するのも一苦労です。なので、常に人気飲食店の情報にはアンテナを張り、フットワークよく動くようにしています。店舗を決める際は一棟内に似た業態が重複しないように調整しますが、自分が交渉した店には思い入れがあるため、他の営業スタッフとぶつかり合いにもなります。また、いざテナント契約が成立してからも、収支構造の勉強や、スケジュール管理、社内調整など、開業までにさまざまな対応が発生します。大変と思うこともありますが、成長していく喜びも感じています。それから、食べ過ぎには気をつけていますね(笑)。−開業後のテナントフォローはどのようなことをされているのですか。 交渉の上、賛同していただいてテナントに入ってもらいますので、繁盛するように運営フォローも大切にしています。ポータルサイトなどのweb周りの設営やデジタルサイネージを活用した上層階への集客、来店客へのアンケートなどまで、オーナーと共に集客や販促に取り組み、GEMSを盛り上げるように努めています。年に2回ほどテーマを設けて、オーナー向けのセミナーも行っています。−今後の展望をお聞かせください。 GEMSは既存の6棟に加え、4月に神宮前、6月に三軒茶屋、8月に新横浜、9月に新橋、12月に難波(大阪)の6棟が開業予定です。更に2020年度までに計15棟体制にする方針を発表しています。各地のGEMSが街のランドマークになるよう輝きを増していくとともに、これからも街の人々にGEMSが愛されるように、努力していきます。

今年4月に開業予定のGEMS神宮前。「GOODY CULTURE FOOD&FASHION」をコンセプトに地下1〜2階はアパレルブランド、3〜10階は人気飲食店が並ぶ。

長谷部 尚子野村不動産株式会社 都市開発事業部 商業施設事業部

GEMS ポータルサイトでは各棟の店舗案内をはじめ、得するクーポン、旬の食情報などが閲覧できる。