貼り薬 ~経皮吸収型製剤 -...

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「気管支を広げる薬(喘息などの薬)」 「心臓の血管を広げ る薬(狭心症などの薬)」 「禁煙を助ける薬」などがあります。 基本的に薬を貼ったまま入浴できます(毎日の貼り替 えであれば入浴前に剥がし、入浴後新しいものを貼ると よい)。貼りなおしや切って使うなどは、できるものとでき ないものがあります。 2013 February 2 2013 使2 貼り薬 ~経皮吸収型製剤 けいひきゅうしゅうがたせいざい 経皮吸収型製剤には、どのようなものがあるか? 注1) 貼る回数、貼る場所については、患者さんの症状に合わせて医師が決めます。必ず医師の指示を守りましょう。 注2) 医師の指示がない限り、自己判断で切ってはいけません。 注3) 喘息や心臓の発作を予防する薬で、起こっている発作を抑える薬ではありません。 薬の働き 貼りなおし 切って使ってよい? 入 浴 成分名 (主な商品名) 3) 5) 7) 7) 8) 8) 7) 8) 9) 9) 9) 10) 11) 11) 標準的な 貼る回数、場所 注1) 1) 心臓の血管を広げ、 血流を良くする薬 禁煙を助ける薬 気管支を広げて 呼吸を楽にする薬 注3) 注3) 硝酸イソソルビド (フランドルテープ) ニトログリセリン (ニトロダームTTS) (バソレーターテープ) (ミリステープ) ニコチン (ニコチネルTTS) ツロブテロール (ホクナリンテープなど) 24時間又は48時間 ごとに貼りかえ 胸・上腹部 (お腹のへそより上)・ 背中のいずれか 3) 2) 4) 6) × × × 1日1回 胸部・腰部・上腕部 のいずれか 1日2回12時間ごとに 貼り替え 胸部・上腹部・背部・ 上腕部・大腿部 (太もも)のいずれか 1日1回 上腕・腹部・腰背部 のいずれか 1日1回 胸・背中・上腕 (肘から上の腕) のいずれか 薬によって異なる(主な薬について以下に示します) ただし、血圧の低下 による「ふらつき」 に注意。 剥がれた場合は 貼り直さない。 水が入ったり、強く 擦って剥がれない よう注意。 剥がれやすくなる 剥がれやすくなる。 薬の成分が流れ 出てしまう。 薬の吸収速度に 影響が出る。 剥がれやすくなる。 切断面に注意。 粘着力が あれば可能。 粘着力が あれば可能。 有効性を検討 していない。 × × 痛みや炎症を和らげる湿布やテープなど、貼った場所 だけに作用する貼り薬 貼った場所から薬の成分が皮膚を通して血液に吸収され、 全身(貼ったところ以外の部位)に働くよう設計された薬 貼り薬には、大きく分けて2つのタイプがあります。 注2) 今号では、 「経皮吸収型製剤」 と呼ばれる後者の タイプの貼り薬に ついて述べます。

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Page 1: 貼り薬 ~経皮吸収型製剤 - PHARMARISE注1)貼る回数、貼る場所については、患者さんの症状に合わせて医師が決めます。必ず医師の指示を守りましょう。注2)医師の指示がない限り、自己判断で切ってはいけません。

 「気管支を広げる薬(喘息などの薬)」「心臓の血管を広げ

る薬(狭心症などの薬)」「禁煙を助ける薬」などがあります。

 基本的に薬を貼ったまま入浴できます(毎日の貼り替

えであれば入浴前に剥がし、入浴後新しいものを貼ると

よい)。貼りなおしや切って使うなどは、できるものとでき

ないものがあります。

2013 February

22013

薬の使いかた

2貼り薬~経皮吸収型製剤

けいひきゅうしゅうがたせいざい

経皮吸収型製剤には、どのようなものがあるか?

注1)貼る回数、貼る場所については、患者さんの症状に合わせて医師が決めます。必ず医師の指示を守りましょう。注2)医師の指示がない限り、自己判断で切ってはいけません。 注3)喘息や心臓の発作を予防する薬で、起こっている発作を抑える薬ではありません。

薬の働き 貼りなおし 切って使ってよい?入 浴成分名(主な商品名)

3)

5)

7) 7)

8) 8)

7)

8)

9)9)

9)

10) 11) 11)

標準的な貼る回数、場所

注1)1)

心臓の血管を広げ、血流を良くする薬

禁煙を助ける薬

気管支を広げて呼吸を楽にする薬注3)

注3)

硝酸イソソルビド(フランドルテープ)

ニトログリセリン

(ニトロダームTTS)

(バソレーターテープ)

(ミリステープ)

ニコチン(ニコチネルTTS)

ツロブテロール(ホクナリンテープなど)

24時間又は48時間ごとに貼りかえ胸・上腹部(お腹のへそより上)・背中のいずれか

3)

2)

4)

6)

×

×

×

1日1回胸部・腰部・上腕部のいずれか

1日2回12時間ごとに貼り替え胸部・上腹部・背部・上腕部・大腿部(太もも)のいずれか

1日1回上腕・腹部・腰背部のいずれか

1日1回胸・背中・上腕(肘から上の腕)のいずれか

薬によって異なる(主な薬について以下に示します)

ただし、血圧の低下による「ふらつき」に注意。

剥がれた場合は貼り直さない。

水が入ったり、強く擦って剥がれないよう注意。

剥がれやすくなる

剥がれやすくなる。

薬の成分が流れ出てしまう。

薬の吸収速度に影響が出る。

剥がれやすくなる。切断面に注意。

粘着力があれば可能。

粘着力があれば可能。

有効性を検討していない。

×

×

痛みや炎症を和らげる湿布やテープなど、貼った場所だけに作用する貼り薬

貼った場所から薬の成分が皮膚を通して血液に吸収され、全身(貼ったところ以外の部位)に働くよう設計された薬

貼り薬には、大きく分けて2つのタイプがあります。

注2)

今号では、「経皮吸収型製剤」と呼ばれる後者のタイプの貼り薬について述べます。

Page 2: 貼り薬 ~経皮吸収型製剤 - PHARMARISE注1)貼る回数、貼る場所については、患者さんの症状に合わせて医師が決めます。必ず医師の指示を守りましょう。注2)医師の指示がない限り、自己判断で切ってはいけません。

決められた貼り方(貼る枚数、場所、時間など)を守りましょう。貼る量によって、血液中の薬の濃度が上下するので、自己判断での調節は危険です。肌にピッタリと貼らないと充分な効果が得られないことがあります。皮膚への刺激を避けるため、貼り替える場合は決められた場所の範囲内で少しずつ場所を変えて貼ります。傷口や皮膚病(湿疹など)のあるところ、汗のかきやすい場所、軟膏などを塗ったところ、毛が濃い部分、ベルトライン(衣服との摩擦で剥がれることがある)には貼らない。

注意する点

2013 年 2月号

 経皮吸収型製剤は、製剤にいろいろな工夫がされてい

て、一定の速度、量で、徐々に薬が皮膚から吸収されるよ

うになっています(下図)。薬の成分が皮膚から吸収され

ると、皮膚の下の毛細血管から速やかに吸収され、薬は

全身に運ばれます。そのため、飲み薬と同じように、薬は

貼った場所ではなく、全身に効果が発揮されるのです。

貼る場所を乾いたタオルなどでよく拭いてきれいにします。

決められた場所にテープを貼ります(薬の包装からの出し方や、台紙からの剥がし方など詳しい貼り方は、それぞれの薬の説明書を参照してください)。

貼った後は手のひらでまんべんなく抑えて、肌にピッタリと貼ります。

一般的な使いかた

【引用文献】1)各医薬品の添付文書、 2)ノバルティスファーマ株式会社:皮膚を介する薬剤(貼付剤)の基本と服薬指導、3)トーアエイヨー株式会社:フランドルテープQ&A、 4)同:信頼性保証部、 5)ノバルティスファーマ株式会社:ニトロダームTTS FAQ、 6)同:「ノバルティスダイレクト」、 7)同:ニコチネルTTS Q&A、 8)株式会社三和化学研究所:コンタクトセンター、9)日本化薬株式会社:医薬品情報センター、 10)マルホ株式会社:ホクナリンテープの貼り方、 11)同:製品情報センター

経皮吸収型製剤のイメージ

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2

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製剤の表面 薬の層

薬が皮膚に吸収されていく血管を通して全身へ

皮膚

放出が一定になるよう工夫

自動対外式除細動器(AED)を使用する際は、電極パットを装着する場所に薬を貼っている場合は、剥がす必要があります。ニトロダームTTS、ニコチネルTTSは、金属が含まれているので火傷することがあります。

AEDを貼る場所 薬を貼る場所

なぜ皮膚に貼るだけで効果があるのか?貼るだけでいいので、使用方法が簡単です。皮膚から血管に薬が吸収され、そのまま全身に運ばれるので、飲み薬のように薬が全身に運ばれる前に肝臓等で分解されたりしない。飲み薬に比べて胃腸などへの副作用が少ない。貼っている間中、一定量の成分が常に体内に入るため、安定した効果が期待できます。薬を剥がせば、直ちに使用を中止することができます。

優れている点

製剤の表面 薬の層薬の放出を調節する層

皮膚

AED