衛星通信を利用した個人用捜索救助システムの 調査...

114
衛星通信を利用した個人用捜索救助システムの 調査検討 報 告 書 平成21年3月 社団法人 電 波 産 業 会

Upload: others

Post on 26-Jul-2020

2 views

Category:

Documents


0 download

TRANSCRIPT

衛星通信を利用した個人用捜索救助システムの

調査検討

報 告 書

平成21年3月

社団法人 電 波 産 業 会

はじめに

本報告書は、「衛星を利用した個人用捜索救助システム」として、我が国に導入するた

めの必須要件を具備した PLB(Personal Locator Beacon)の技術的検討の結果を報告す

るものである。PLB は海上でも山岳でも利用可能なことから、迅速な捜索救助のために早

期の導入が期待されているが、救難信号の信頼性、つまり誤って発信された救難信号いわ

ゆる誤報を排除できることは救助システムを構築・活用する上での基本的要件である。同

様の捜索救助システムとして EPIRB(Emergency Position Indicating Radio Beacon)が

あるが、この EPIRB システムにおいても誤報対策が大きな問題となっている。PLB にお

いては使用台数が極めて多いと予想されるので、誤発信や操作の間違いによる誤報対策が

必須である。もし多くの誤報に対応することになれば、捜索救助のための資源を時間的・

物理的にも無駄に使用することになり、経済的にも大きな損失となる。

誤報対策として、信号の発信源に対して確認を行う機能など何らかの方策を講じること

が必要である。もし誤報として確認されたならば、誤報の発信源となった PLB の発信を

停止させ、混信や不要波を排除することが可能なシステムとすることで有効な運用が可能

になる。そのためには、従来の通信方式である PLB から衛星への単方向通信ではなく、

衛星と個々の PLB との間で双方向通信ができるシステムの開発が必須であると考え、

適なプロトコルや制御信号の基本要件の検討を行なった。また、発信源の位置の高精度化、

安定な送受信のためのアンテナの 適化および PLB 本体の小型化と省電力化に関して調

査検討し、PLBの有効な利用を図るためにPLBの高度化に関する技術的検討を行なった。

検討にあたっては海外の動向調査も実施し、PLB の高度化における双方向通信方式は必須

要件であることが確信された。

本調査検討会は次年度も継続される予定であり、調査検討の中間報告を行うものである。

後にこの調査検討会において鋭意調査検討して戴いた委員、オブザーバ各位、作業部

会委員ならびに事務局に深甚なる謝意を表します。

平成 21 年 3 月

衛星を利用した個人用捜索救助システムに関する調査検討会

座長 東京海洋大学 海洋工学部教授 林 尚吾

目 次 はじめに 第1章 本調査検討の目的...................................................................................................1 第 2 章 衛星通信を利用した個人用捜索救助システムの概要 .............................................3

2.1 衛星通信を利用した個人用捜索救助システムとは .............................................3 2.2 コスパス・サーサット衛星システムの歴史 ........................................................4 2.3 コスパス・サーサット衛星システム...................................................................4 2.3.1 低軌道衛星(LEOSAR)システム ...............................................................5 2.3.2 静止道衛星(GEOSAR)システム ...............................................................6 2.3.3 中軌道衛星(MEOSAR)システム ..............................................................6

2.4 コスパス・サーサットの地上配信システム ........................................................8 第3章 リターンリンク用ビーコン信号の 適プロトコルの選定 .................................... 11 3.1 ARGOS システムリターンリンクプロトコル...................................................12 3.1.1 ARGOS システムについて.....................................................................12 3.1.2 ARGOS システムビーコン.....................................................................14 3.1.3 ARGOS システム信号について .............................................................15 3.1.4 ARGOS リターンリンクについて ..........................................................16

3.2 準天頂衛星システム L1-SAIF プロトコル........................................................18 3.2.1 準天頂衛星(QZSS)システムについて.....................................................18 3.2.2 L1-SAIF 信号について ..........................................................................19 3.2.3 L1-SAIF へのリターン信号の搭載可能性について................................20

3.3 ガリレオ衛星システムリターンリンクプロトコル ...........................................21 3.3.1 ガリレオ衛星システムについて .............................................................21 3.3.3 SAR サービスについて ..........................................................................23 3.3.4 リターンリンクについて........................................................................24

3.4 プロトコルの選択 .............................................................................................27 第4章 新たなコスパス・サーサット・ビーコン制御信号の構成 ....................................29 4.1 リターンリンク新機能案 ..................................................................................30 4.2 リターンリンク受信機よりのリターンリンク送出フォーマット案 ..................32 4.3 リターンリンク応答用フォワードリンクビーコンプロトコル案......................34 4.3.1 リターンリンク試験用フォワードリンクビーコンプロトコル...............34 4.3.2 リターンリンク応答用新フォワードリンクビーコンプロトコルの可能性 ....34

第5章 ビーコン制御信号の性能の確認 ...........................................................................39 5.1 試験用ビーコン構成..........................................................................................39 5.2 リターンリンク制御信号によるビーコン動作の詳細........................................42 5.2.1 リターンリンクに対する動作の詳細 ......................................................44 5.2.2 リターンリンク試験用フォワードリンクプロトコルの詳細 ..................45

5.2.3 リターンリンク試験結果 ...........................................................................46 5.3 コスパス・サーサット規格の性能検査結果 ......................................................53 5.3.1 振動衝撃試験..........................................................................................53 5.3.2 周波数安定度試験 ..................................................................................54

5.4 その他 ...............................................................................................................57 第6章 ビーコン信号を安定送受信のためのアンテナの基本設計 ....................................59

6.1 送受信アンテナの周波数 ..................................................................................59

6.2 アンテナ設計の仕様・測定条件........................................................................59 6.2.1 アンテナの仕様 ......................................................................................59 6.2.2 測定条件.................................................................................................60

6.3 アンテナ方式の検討..........................................................................................62 6.3.1 予備シミュレーション評価......................................................................62 6.3.2 シミュレーション条件の再検討 .............................................................67

6.4 アンテナの諸元.................................................................................................71 第7章 海外動向調査 ........................................................................................................73 7.1 調査概要 ...........................................................................................................73 7.2 フランス国立宇宙研究センター(CNES) ......................................................73 7.2.1 ガリレオ衛星打上計画 ...........................................................................73 7.2.2 リターンリンク機能 ...............................................................................74 7.2.3 フランスにおける PLB 運用実績 ...........................................................75 7.2.4 フランスにおける MEOLUT(MEOSAR 地上局)実験 .......................75

7.3 ビーコンメーカの状況 ......................................................................................76 7.3.1 ACR 社(米国).....................................................................................76 7.3.2 McMurdo 社(英国) ............................................................................77 7.3.3 Kannad 社(フランス) ........................................................................78 7.3.4 Jotron 社(ノルウェー) .......................................................................79 7.3.5 ELTA 社(フランス)............................................................................79

7.4 参考...................................................................................................................80 第8章 まとめ...................................................................................................................81 おわりに 参考資料 付属資料

- 1 -

第1章 本調査検討の目的

遭難緊急時の通報のためのコスパス・サーサット(Cospas-Sarsat)衛星システムの一つと

して、個人用捜索救助システム、すなわちパーソナル・ロケータ・ビーコン(以下「PLB」

という。)があり、PLB は、捜索救助用機能の有効性はもちろんのこと、従来の衛星 EPIRB

などの遭難救助用システムに比べ小型かつ安価であるため、すでに米国、欧州など世界 24

か国で導入されており、我が国でも登山者や小型船舶など多くの国民から要望があるもの

の導入されていない。その要因の一つに、誤発射における技術的対策がなされていないこ

とが挙げられている。誤発射は、捜索救助側に負担をかけるだけでなく、無意味な電波を

発射して、特定の周波数を長時間占有するこことなり、周波数の使用効率を著しく低下さ

せている。

今般、世界的に PLB を双方向化(リターンリンク)するなど高度化することが、コス

パス・サーサット合同委員会等で検討されている。このリターンリンクを利用して周波数

を有効に利用して誤発射を軽減する技術を調査検討することが、わが国への PLB の円滑

な導入に対する一つの手段として期待されている。

このため、本調査検討においては、海外の動向を踏まえつつ、周波数の占有率軽減のた

めのビーコン信号の制御技術を検討し、無駄な電波の発射時間の軽減を図るほか、グラン

ドプレーンにとらわれずビーコン信号を安定して制御するためのアンテナ技術について調

査検討を行い、コスパス・サーサット合同委員会へ本技術を提案して我が国への PLB の

導入への促進に寄与することを目的とする。

本年度は次に示す5つの課題に取り組むこととする。

(1)リターンリンク用ビーコン信号の 適プロトコルの選定

衛星通信のリターンリンクのプロトコルについて、諸外国の状況を調査してコスパ

ス・サーサット 衛星に適応できる 適なプロトコルを選定する。(第3章)

(2)コスパス・サーサット 規格に適合したビーコン制御信号の構成

ビーコンを制御するための信号について、PLB の規格に適合した制御信号の構成を行

う。(第4章)

(3)ビーコン制御信号の性能の確認

選定されたプロトコルにコスパス・サーサット 規格に適合した構成のビーコン制御信

- 2 -

をビーコン試験機器に加え、周波数安定度等を測定してビーコン性能が PLB 規格に適合

していることを確認する。(第5章)

(4)ビーコン信号を安定送受信のためのアンテナの基本設計

筐体の置かれた環境に依存することなく仰角5~60 度において-3dBi~+4dBi の送受

の確保が可能となる 400MHz 帯高性能アンテナの基本設計を行う。(第6章)

(5)海外動向調査

諸外国における PLB の高度化に関する動向を調査する。(第7章)

本調査検討を通じて、周波数の占有率軽減のためのビーコン信号の制御技術及びグラン

ドプレーンにとらわれず安定して送信するためのアンテナ技術の達成を目標として、我が

国への PLB の導入を促進する。

- 3 -

第 2 章 衛星通信を利用した個人用捜索救助システムの概要

2.1 衛星通信を利用した個人用捜索救助システムとは

衛星通信を利用した個人用捜索救助システムとは、第 1 章で述べたようにコスパス・サ

ーサット衛星システムによる、個人向けの捜索救助用ビーコンである PLB(Personal

Locator Beacon)ことである。

コスパス・サーサットのビーコンには、大きくわけて 3 種類あり、船舶用ビーコンを

EPIRB(Emergency Position Indicating Radio Beacon)、航空機用ビーコンを ELT

(Emergency Locator Transmitter)、個人用ビーコンを PLB という(図 2.1-1 参照)。

EPIRB(非常用位置指示無線標識)

(Emergency Position Indicating Radio Beacon)

ELT(航空機用救命無線機)

(Emergency Locator Transmitter)

PLB(救命用携帯無線機)

(Personal Locater Beacon)

船舶用船舶用 航空用航空用 個人用個人用

図 2.1-1 ビーコンの種類

EPIRBは、船舶が沈没した場合には自動的に浮上し、遭難位置や船の ID等を送信する。

ELT は、航空機が墜落した場合に自動的に緊急通報を送信する。PLB は、手動でボタン

が押下された場合のみ緊急通報が送信される。

ビーコンから発射された緊急通報は、コスパス・サーサット衛星で受信された場合、そ

の情報が地球局経由で各遭難救助機関に通知される。

PLB については、国際的な取り決めがないため他のビーコン(EPIRB 及び ELT)とは違

い、その使用の許可は各国の主管庁に任されている。そのため、現時点では、PLB は我が

国では使用できないが、すでに海外では 23 ヵ国で PLB の利用が承認されており、急速に

普及している。

本章ではこれからまずシステムの基本となるコスパス・サーサット衛星システムについ

- 4 -

て説明する。

2.2 コスパス・サーサット衛星システムの歴史

コスパス・サーサット・システムは、38 ヵ国(2008/12 現在)もの国が加盟している政

府間機関「コスパス・サーサット」(本部:カナダ・モントリオール)によって運用されて

いる国際的な捜索救助衛星システムであり、1979 年に米国、ソ連、カナダ及びフランスの

4 カ国の宇宙機関によって締結された覚書(MOU)によって構築されたものである。

4 カ国の宇宙機関の協力と準備によって進められ、1982 年に 初の衛星が打上げられて

以来、数々の遭難者の救助に貢献し、1988 年には、上記の 4 カ国が正式に「国際的なコ

スパス・サーサット計画協定」を締結し、世界唯一の公的な捜索救助衛星システムとして

改めて認知された。

国際海事機関(IMO)や国際民間航空機関(ICAO)では、船舶が沈没した場合や航空

機が墜落した場合に自動的に衛星に向けて救助信号を発射する発信機(ビーコン(詳細後

述))の搭載を国際条約で船舶や航空機に義務付けて、船舶や航空機の捜索救助を促進して

いる。

初期の衛星システムは、地上約 1,000 キロメートルの低軌道で地球を周回する低軌道衛

星(LEOSAR)のみによって構築されていた。当時は GPS が運用になる前であったため、ビ

ーコンから発射された電波(121.5MHz や 406MHz)のドップラ効果を計測し、ビーコン

の位置を計算するものであったが、その後、1990 年代後半から GPS による位置データを

受け取れる静止軌道衛星(GEOSAR)も加えて運用されている。

初期には 121.5MHz と 406MHz の遭難警報を処理するシステムとして開始されたが、

ID 等のデータ送り出せない 121.5MHz のシステムは、多発する誤報(2007 年には 98.7%

の誤報率)への対処が出来ないため、2009 年 2 月 1 日以降は、衛星における信号処理が

停止され、406MHz のみのシステムに移行した。

ただし、121.5MHz は、衛星による捕捉は中止されるが、遭難者の位置を方向探知器に

より 終的に特定するためのホーミング用として、今後とも多くのビーコンに搭載される

と考えられる。

2.3 コスパス・サーサット衛星システム

コスパス・サーサット衛星システムは、低軌道衛星システムと静止衛星システムで運用

- 5 -

が行われている。しかしその両システムとも、短所を持っており、それらを補うことを目

的として、中軌道衛星システム(MEOSAR)が計画されている。

現在の衛星システムについて図 2.3-1 に構成を示す。

(C/S G.007 より)

図 2.3-1 コスパス・サーサット・システム

2.3.1 低軌道衛星(LEOSAR)システム

LEOSAR は、米国・フランス・カナダが共同で打ち上げた「サーサット衛星」とロシア

が打ち上げた「コスパス衛星」により構成されている。

軌道は、両極を通過する高度約 1,000km の極軌道であり、現在 5 機(2008/12 現在)の

衛星が運用されている。

このシステムの特徴は、

【長所】

・ 低軌道なため、低い受信電力でも受信が出来る。

・ 測位データが無くても信号のドップラ効果を計測することにより位置を計測

出来る。

【短所】

・ 衛星で位置を確定するのに衛星 2 回の通過が必要で、 悪2時間程掛かる。

・ ドップラ効果による位置計測を行うため、ビーコンに高精度に周波数安定度が

要求される。

なお、この LEOSAR 衛星は、将来(2017 年以降)、後述の MEOSAR システムが整備

された後、打ち上げが中止される予定となっている。

- 6 -

2.3.2 静止道衛星(GEOSAR)システム

GEOSAR は、米国の「GOES 衛星」、欧州連合(EU)の「MSG 衛星」、インドの「INSAT

衛星」により構成されており、現在 5 機の衛星が運用されている。このシステムの特徴は、

【長所】

・ 常時監視を行っている。

・ GPS 測位データにより受信と同時に位置の特定が出来る。

【短所】

・ GPS が搭載されていないビーコンならびに GPS の計測に失敗した場合、位置

の特定が出来ない。

・ 軌道の高度が約 36,000km であるためビーコンの送信電力が大きくなる。

・ 南極・北極がカバーできない。

船舶用の EPIRB に比較し、PLB は、GPS 付き製品が海外で多数、発売されていること

から、GEOSAR が役に立つ機会が多いと考えられる。

2.3.3 中軌道衛星(MEOSAR)システム

コスパス・サーサット・システムについては必ずしも専用の衛星を打ち上げる必要はな

く、他のシステムの衛星に中継装置を搭載することで機能を果すことができる。そのよう

な衛星として測位システム用(GPS、ガリレオ及びグローナス)の衛星の利用が計画され

ている。

測位システム用の衛星は図 2.3.3-2 にあるような約 20,000km の軌道を回る中軌道

(MEO)衛星であり、これらによるコスパス・サーサット衛星システムは MEOSAR シス

テムと呼ばれる。

現在、コスパス・サーサット用中継装置の搭載を予定している測位システムとしては次

のものが上げられている。

・GPS 衛星(米)【DASS】 24 機

・ガリレオ衛星(EU)【SAR/Galileo】 27 機

・グローナス衛星(ロシア)【SAR/Glonass】 24 機

- 7 -

(AEROSPACE 社 HP より)

図 2.3.3-2 MEOSAR の例:GPS 衛星軌道配置

MEOSAR システムは、従来の LEOSAR ならびに GEOSAR と比べて次のような特徴を

持っている。

【長所】

・ 常時天空に衛星があるので常時監視を行える。

・ 遭難位置検出に 4 機の衛星による信号受信時間差を用いる TDOA(Time

Difference of Arrival)ならびに周波数偏差を用いる FDOA(Frequency

Difference of Arrival)を使用するので、位置データのないビーコン信号でも

LEOSAR より高精度な位置の特定が短時間(十数分)で出来る。

・ 衛星測位受信機搭載ビーコンでは測位データにより受信と同時に位置の特定

が出来る。

・ ガリレオ衛星については地上基地局からビーコンへの通信チャネル(RLM:

Return Link Message(双方向通信))を搭載する計画になっており、誤発射

対策に役立つと考えられている。

【短所】

・ 多数の衛星を打ち上げる必要があるため、衛星の打ち上げに費用と時間がかか

る。。

MEOSAR システムは、2005 年から実験を開始し、2015 年頃までに運用を開始する計

- 8 -

画となっている。

2.4 コスパス・サーサットの地上配信システム

ビーコンから発信された救難信号(以下緊急通報という。)は、衛星を経由して、地上受

信局(LUT: Local User Terminal)で受信され、緊急通報配信を行うために業務管理セン

ター(MCC: Mission Control Center)に送られる(図 2.4-1 及び図 2.4-2 参照)。MCC は、

緊急通報を解析した後に海上保安本部や空港事務所などの救助機関(RCC: Rescue

Coordination Center)に送付すると同時に、他国の MCC とも情報交換を行う。

日本では、LUT は群馬(民間委託)に、MCC は霞ヶ関(海上保安庁内)に設置されて

いる。

LUT 外観

MCC 内部

図 2.4-1 LUT 及び MCC

ビーコンから発射された緊急通報(406MHz(デジタル情報を含む。))は、LEOSAR で

受信された場合、衛星での受信時のドップラ周波数を計測し、発信された位置の緯度・経

度が計算される。GEOSAR で受信された場合は、ドップラ効果が計測できないため、ビ

ーコン自体に内蔵されている GPS 受信機が計算した位置情報(以下「エンコード位置」

という。)が衛星を経由して中継される。なお、GPS が内蔵されていないビーコンが多数

使用されているが、このようなビーコンから発射された緊急通報が GEOSAR で中継され

た場合は、エンコード位置情報を除く、その他のデジタル情報のみが地上に伝送される。

- 9 -

図 2.4-2 ビーコンからの緊急通報配信系統図

我が国においては、現時点では EPIRB より発射された船舶遭難の緊急通報は、海上保

安本部に、ELT により発射された航空機の遭難に関する緊急通報は羽田の国土交通省航空

局に通報され、それぞれ適切な救助活動が開始されるようになっている。しかるに PLB

については、緊急通報をどのように扱うかががまだ定まっていない。

PLB の緊急通報を受け、救助活動を行うにはその適用範囲が海上から山岳までと広いた

め、関係する国及び地方、さらには民間団体の間での調整を行う必要がある。我が国で PLB

の使用が許可されるには、技術的問題ばかりではなく配信の問題についても何らかの対応

が必要と考えられる。

- 10 -

- 11 -

第3章 リターンリンク用ビーコン信号の 適プロトコルの選定

本章では、コスパス・サーサット・ビーコンの双方向化を行うことが可能と考えられる

無線システムについて述べる。候補としてはビーコンからの信号が衛星システムによって

受けられることを考慮し、表 3-1 に有るよう ARGOS、準天頂衛星、およびガリレオの 3

種類の衛星システムを検討した。

表 3-1 検討対象リターンリンクプロトコル

衛星システム名 ARGOS 準天頂衛星 GALILEO

リンク名 ARGOS-3 Down Link L1-SAIF SAR Service

周波数帯 466MHz 帯 L1:1.5GHz 帯 E1:1.5GHz 帯

プロトコル仕様 独自 SBAS 準拠 独自 公開仕様書 ARGOS-3 Service and

Message Format IS-QZSS Ver.1.0 OS SIS ICD Draft 1

- 12 -

3.1 ARGOS システムリターンリンクプロトコル

ここでは ARGOS システム用ビーコンの仕様書を参照し、ビーコンへのリターンリンク

プロトコルについて説明する。

参照した仕様書は:

♦ Argos-3 Platform Transmitter Terminal (PTT-A2) Platform Message Transceiver

(PMT-A2) Physical Layer System Requirements Ed. 2/ Rev. 2

♦ Argos-3 Platform Transmitter Terminal (PTT-A3, including PTT-ZE) Platform

Message Transceiver (PMT-A3)

Physical Layer System Requirements Ed. 4/ Rev. 1

♦ Argos-3 SERVICE AND MESSAGE FORMAT

General Specifications Ed. 2 / Rev. 3

♦ Argos-3 Receiver for Argos PMT

Physical Layer System Requirements Ed. 2/ Rev. 1

となっている。

3.1.1 ARGOS システムについて

ARGOS 衛星システムの主目的は科学調査を行うためのもので、海洋観測や野生動物の

生態調査などに使用することを主目的として、1978 年から運用されているシステムである。

運用主体はフランス国立宇宙センター(CNES)の外郭団体である CLS 社、米国の NOAA

ならびに Eumetsat(欧州気象衛星開発機構)となっている。運用主体、技術的内容にお

いてもコスパス・サーサット・システムと酷似しており(図 3.1.1-1 参照)、ビーコン

(Platform)からの 401MHz 帯の信号を用いた低軌道衛星によるドップラ測位と、ビー

コンより送られてきた観測データをユーザに配信する。

- 13 -

(ARGOS-3 カタログより)図 3.1.1-1 ARGOS システム

システムは、ARGOS-1, ARGOS-2 から ARGOS-3 まで、処理容量および通信速度の向

上を行うと共に、ARGOS-3 ではいち早くリターンリンクを導入し双方化が行われている。

ARGOS-3 では標準のフォワードリンク 400bps のものに加えて、4800bps でより長いデ

ータの送れる HD タイプもある。

現在世界には約 50 局の受信局がある。その受信局で受信されたデータはフランスと米

国にある処理センターに送られ、信号のデコード、位置の計算などが行われる。(図 3.1.1-1

参照)リターンリンクのデータにつてもこの 2 つのセンターを経由してリターンリンク管

理センター分配され、マスタプラットフォーム局から衛星に打ち上げられる。衛星はビー

コンからのアドレスに応じてリターンリンクデータを送り出す。センターでの処理は、米

国のビーコンからのデータは米国のセンターで、そのほかの国のビーコンからのデータは

フランスで行われる。

ユーザへのビーコンからのデータの提供ならびにユーザからビーコンへの送信データの

受け渡しはインターネット経由で行われる。

現時点では、約 20,000 台のビーコンが存在し、高度約 850km の局軌道を周回する現用

2 機(予備機合わせて 5 機)の衛星によりサービスが行われている。毎日ほぼ同時刻(赤

道上で日に 4~5 回)に衛星がビーコンの視界に入ってくるようになっている。(図 3.1.1-2

参照)

- 14 -

3.1.2 ARGOS システムビーコン

ARGOS システムのビーコンはプラットフォームと呼ばれ、外観の例としては図 3.1.2-1

にあるようなものである。内部の構成は図 3.1.2-2 にあるようなものであり、送信だけ行

う PTT タイプと送受信機能を持つ PMT の 2 種がある。

((株)キュービックアイ HP より)

図 3.1.2-1 ARGOS-3 ビーコン外観

(ARGOS システムカタログより)

図 3.1.1-2 ARGOS 衛星軌道

- 15 -

(ARGOS-3 送信機仕様書より)図 3.1.2-2 ARGOS-3 ビーコン構造

3.1.3 ARGOS システム信号について

ARGOS-3 システムではビーコンから発射されるフォワードリンクと、衛星からビーコ

ンに向けて送られるリターンリンクがある。フォワードリンクはコスパス・サーサットの

ビーコン信号と同じように短いバースト信号であるが、リターンリンクについては HDLC

ライクなフォーマットとなっており、データのない場合は HDLC のフラグ信号が連送され

ている。

表 3.1.3-1 ARGOS-3 フォワードリンクメッセージ構造

データ プレアンブル: キャリア信号 82ms

同期パターン: 32bits ブロック番号+メッセージ長+ID+データ

+FCS+テールビット

ビーコンからのフォワードリンクのデータフォーマットならびに信号の仕様は表

3.1.3-1 と表 3.1.3-2 にあるようなものとなっている。フォワードリンクに載ってくるのは

計測したデータあるいは位置計測用のダミーデータとなっている。双方向可能なタイプの

ビーコンに関してはそのほかにリターンリンクデータへの ACK や、相互応答型データ収

集を行うための制御信号が送られる。

- 16 -

表 3.1.3-2 ARGOS-3 フォワードリンク仕様

周波数 401.620MHz~401.680MHz (地域により 適周波数を指定) 変調方式 ARGOS-2: BPSK ,ARGOS-3:QPSK*, ARGOS-HD:GMSK ビットレート 400sps (800bps1:2 畳み込み符号を使用) 送信出力 2W 送信周期 60sec (Min) 送信時間 277ms~839.5ms

メッセージ長 4bit : N(3bit)+parity アドレス ID 28bit ユーザデータ (32bit X N)-8bit テールビット 7, 8, 9bit (畳み込み符号器のため)

フレーム長

計 63~288bit *KENWOOD 社製 PMT-RFM には未搭載

衛星からのリターンリンクの信号の仕様は表 3.1.3-3 にあるようなものとなっている。

表 3.1.3-3 ARGOS-3 リターンリンク仕様

周波数 465.9875MHz 変調方式 位相変調 ビットレート 400bps/200bps フレーム形式 HDLC

アドレス ID 28bit 衛星番号 4bit サービス 8bit データフィールド 8×(2~17)bit FCS 16bit

フレーム長

計 72~188bit

3.1.4 ARGOS リターンリンクについて

リターンリンクが設けられた目的としては、より効率的なデータ収集を行うことを目的

としている。

ARGOS システムのリターンリンクに送るメッセージに表 3.1.4-1 にあるように大きく

分けて個別のビーコンに送るものと、全てのビーコンに向けてブロードキャストするもの

がある。さらに個別のビーコンに送るものに対しては

1)個別定義のメッセージ

2)双方向データ収集サービス

3)定型メッセージ

の3種の種別がある。

- 17 -

表 3.1.4-1 リターンリンクメッセージ種別

定型メッセージ ユーザ定義

個別宛メッセージ

双方向データ収集サービス用メッセージ 衛星ステータス 軌道パラメータ

ブロードキャストメッセージ

UTC ブロードキャスト

この中で、今回の個別のビーコン制御に関連のある定型メッセージについてまとめたも

のが表 3.1.4-2 のようなものである。

表 3.1.4-2 ユーザ個別メッセージ種別

データフィールド Message ID Data

構造

Address Identification 28bit

S/C 衛星番号 4bit

Service 8bit (00H or 04H) 8bit: PMT-2/PMT-HD 8~128bit

FCS

No. Msg. ID Message Parameter 0 00/00 ユーザ定義 8~128bit 1 FF/FF PMT リセット 8bit 2 11/11 PMT 位置 16+16bit 3 12/71 キャリアシフト 16bit(Hz) 4 14/72 通常周期 8bit(Sec) 5 17/77 応答周期 8bit(Sec) 6 18/78 送信出力 8bit(0.1W) 7 1B/1B Group ID 追加 28+4bit 8 1D/1D Group ID 削除 28+4bit 9 33/F3 送信 ON 48bit

10 35/F5 送信 OFF 28+4bit 11 36/36 応答モード ON 16(day) 12 39/39 応答モード OFF 16(day) 13 3A/3A 受信周期 48bit 14 3C/F6 PMT ステータス 8bit 15 3F/3F Group ID リスト 8bit

これらのメッセージの目的を見ると、無駄な送信を押さえて周波数の有効利用を図るも

および消費電力を減らす目的のものが多く見受けられる。

(ア) 不要になったビーコンの送信を止めるもの

(イ) しばらく使わないビーコンの送信を一時的に止めるもの

(ウ) ビーコンの送信周期を変更するもの

(エ) ACK 受信によりその後の繰り返し送信を停止するもの

(オ) 周波数をずらし他のビーコンとの混信の防止もの

- 18 -

(カ) 軌道情報により、送信時間を衛星通過時に限るもの

これら、メッセージ内容は、コスパス・サーサットのリターンリンクに盛り込む機能の

参考となると考えられる。

3.2 準天頂衛星システム L1-SAIF プロトコル

ここでは、準天頂衛星の衛星よりの信号に関する資料「準天頂衛星システムユーザイン

タフェース仕様書(IS-QZSS) Ver. 1.0」をもとに、より、L1-SAIF 信号について説明する。

3.2.1 準天頂衛星(QZSS)システムについて

準天頂衛星システムは、日本で常に天頂付近に1機の衛星が見えるように、複数(例え

ば 3)の軌道面にそれぞれ配置された衛星を組合せて利用する衛星システムである。これ

らの軌道の高度は静止軌道衛星と同じであるが、静止衛星のように赤道上に配置されてい

るのではなく、軌道傾斜角(赤道面からの軌道面の傾き)を持って、地球の自転と同じ周

期で地球を周回することにより交代で衛星が常に天頂方向に見えるようなる。山やビルな

どに影響されず高精度の衛星測位サービスの提供が可能となる。

準天頂衛星の打ち上げ計画は政府により 2011 年度に1号機を打ち上げてその評価を行

った後、残りの2号機、3号機を民間により打ち上げる予定になっている。

図 3.2.1-1 準天頂衛星の軌道(SPAC ホームページより)

準天頂衛星は、初期には衛星測位サービス以外にも放送や通信への応用も考えられてい

たが、その後、測位衛星(GPS)システムを補完、あるいは補強する目的の衛星となった。

補完機能としては、準天頂衛星自体が測位衛星の一つとして測位信号を送信することに

より、天頂付近に絶えず衛星がおり測位精度の向上ならびに測位サービス利用の可能性を

- 19 -

増やす。

一方補強機能としては、測位の精度向上、衛星の補足をやりやすくするための情報など

を提供する。この補強のための信号には高精度な測位を可能にする LEX 信号と、高速度

移動体向け補強信号を提供する L1-SAIF 信号がある。今回、ビーコンのリターンリンクと

して利用出来る可能性があるとして注目したのは L1-SAIF 信号の方で、名前が示すように、

GPS の測位信号周波数 L1(1,575.42MHz)を用いてコード多重技術により、測位信号と共

に送り出される(表 3.2.1-1 参照)。

表 3.2.1-1 QZSS 信号の諸元(L1)

信号名称 搬送波識別 中心周波数 占有帯域幅 低信号強度 L1C/A L1C/A 24MHz(±12MHz) -158.5dBW

L1CD -163.0dBW L1C L1CP 24MHz(±12MHz) -158.25dBW -157.0dBW(トータル)

L1-SAIF -

1575.42 MHz

24MHz(±12MHz) -161.0dBW

3.2.2 L1-SAIF 信号について

L1-SAIF メッセージはすでに使用されている SBAS 方式に準じて送られる。

1フレームは 250 ビットから構成され、図 3.2.2-1 のフォーマットを持つ。データ速度

は 250bps であるから、毎秒1個のメッセージが送信される。

図 3.2.2-1 L1-SAIF フレームフォーマット

8 ビットのプリアンブルは 250 ビットメッセージのビット 1( 初に送信されるビッ

ト)から始まり、続いて 6 ビットのメッセージタイプがビット 9 から挿入される。212 ビ

ットのデータ領域はビット 15 から始まり、24 ビットの CRC(Cyclic Redundancy

Check)パリティはビット 227 から始まる。メッセージの送信順序は規定されず、各 1 秒

- 20 -

間にはどのメッセージタイプも送信され得る。

現在メッセージタイプとして決まっているのは表 3.2.2-1 にあるものである。

表 3.2.2-1 メッセージタイプ

タイプ ID メッセージ名称 備考 タイプ ID メッセージ名称 備考

0 試験モード 52 TGP マスク 1 PRN マスク 53 対流圏遅延補正

2~5 高速補正 54~55 (大気遅延補正) TBD6 インテグリティ情報 56 信号バイアス補正情報 7 (高速補正劣化係数) 57 (軌道情報用に予約) TBD

10 劣化係数 58 QZS エフェメリス 暫定

18 IGP マスク 59 アルマナック情報 TBD24 複合高速/長期補正 60 (広域情報・メンテナンス情報) TBD25 長期補正 62 (内部テスト用に予約) 26 電離層伝搬遅延補正 63 ヌルメッセージ 28 クロック-軌道共分散

3.2.3 L1-SAIF へのリターン信号の搭載可能性について

準天頂衛星に現在にところビーコンのリターンリンクを載せる計画はないが、準天頂衛

星関して推進母体である(財)衛星測位利用推進センターが現在実証テーマとして表 3.2.3-2

にあるように“7 つ+1”のテーマを取り上げている。その中で”+1”になっている“緊急通

報他”となっているテーマは自由な形式のデータを送ることが出来、そこにリターンリン

ク信号を載せることも可能である。

ここで“緊急通報”が他のテーマと分けて語られているは、このサービスは衛星の本来

の衛星測位サービスではなく通信あるいは放送サービスとしての性格があるため、省庁と

の調整が必要と考えられるからである。

表 3.2.3-2 (財)衛星測位利用推進センターの実証テーマ

1. 防災関係 5. サービスイノベーション 2. 見守り・バリアフリー 6. 位置情報利用システム 3. 基盤地図関係 7. 交通・ITS 関連 4. IT 自動走行 +1. 緊急通報他

残念ながら現時点では、準天頂衛星にビーコンのリターンリンクを載せる計画はないが、

緊急通報の一部として、あるいは同種のショートメッセージサービスとして載せることは

技術的には可能である。

- 21 -

3.3 ガリレオ衛星システムリターンリンクプロトコル

ここではガリレオ衛星システムが提供するリターンリンクプロトコルについて、ガリレ

オ衛星からの信号についての仕様書「Galileo Open Service Signal In Space Interface

Control Document OS SIS ICD, Draft 1」に従って説明を行う。

3.3.1 ガリレオ衛星システムについて

ガリレオ衛星システムはEUが推進するGPS同様な衛星測位システムであり、図3.3.1-1

のように 27 機の中軌道衛星から構成される。すでに 2 機の試験衛星が打ちあがっており、

実機は 2011 年から順次打ち上げられる予定となっている。

図 3.3.1-1 ガリレオ衛星軌道(Galileo Joint Undetaking ホームページより)

ガリレオ衛星システムは初期には民間によるプロジェクトとしてスタートしたが、必要

な資金が集まらず、2007 年に EU のプロジェクトとして EU が資金を提供することにな

った。

GPS が軍事用のシステムであるのに比較し、ガリレオ衛星システムは民間のシステムと

してスタートしたため、表 3.3.1-1 にあるように標準的な無償のサービスとは別に特定の

ユーザ向けの有償のサービスも提供されるのが特徴である。

- 22 -

表 3.3.1-1 ガリレオ衛星システム提供予定サービス

サービス名 サービス内容 Open Service (OS) 無償で提供される測位及び時刻サービス Safety - of - Life Service (SoL) 信号の完全性の保証をしたサービス Commercial Service (CS) 暗号化された有償のサービスで OS より高い精度を

要求するユーザに提供する。 Public Regulated Service (PRS) 政府機関に暗号化された連続可用性を保証したサー

ビス提供する。 Search and Rescue Service (SAR) コスパス・サーサットと協調したサービスを提供す

る。遭難ビーコン信号の受信とビーコンへのリター

ンリンクの提供を行う。

測位信号については初期においては独自色が強かったが、GPS との協調を計り、同様な

信号を送信することにより GPS + ガリレオ衛星による衛星数の増加による測位可能性の

増大と共に精度の向上も図れるようにした。

一方で、独自のサービスの一つとして捜索救助活動に向けた SAR サービスが計画され

ており、その一環としてコスパス・サーサットのビーコンに対するリターンリンクである

RLM(Return Link Message)が計画されている。

ガリレオ衛星システムが提供するサービスは、図 3.3.1-2 にあるように GPS と区別し

て”E”をつけた周波数帯で表される。SAR サービスは GPS の L1 と同じ中心周波数の E1

と呼ばれる周波数帯で提供される。

(GalileoOSSISICDDraft1)図 3.3.1-2 Galileo Frequency Plan

- 23 -

3.3.3 SAR サービスについて

ガリレオ衛星システムの SAR サービスは、まだ全体が明らかになっているわけではな

いが、コスパス・サーサットとの連携だけではなく、捜索救助を目的とした広い内容のサ

ービスを提供することを目指しているようである。

(ア) コスパス・サーサット・ビーコンの遭難信号の受信と測位

(イ) リターンリンク対応型コスパス・サーサット・ビーコンに情報提供ならび

に制御

(ウ) 専用受信機に対しての情報提供

(エ) SAR 活動を援助するための情報の伝送(大容量データ)

ビーコン遭難信号の受信と測位については、時間の掛かる低軌道衛星による遭難警報受

信と、位置情報がないと位置が特定出来ない静止軌道衛星による遭難警報受信を改善し、

将来は中心的役割を果たすものと言われている。この機能については、GPS ならびに

GLONAS にも同機能が搭載されるよう計画されており、遭難警報の迅速な対応を可能と

するものと考えられる。

リターンリンクは現時点では単向通信となっているコスパス・サーサット・ビーコンか

らの緊急通報に対して、低機能ではあるがリターンリンクを設けることにより機能向上お

よび誤警報に対応することを目的としたものとなっている。一方、SAR サービス全体とし

ては遭難救助活動の円滑化を図ることを目的としているため、数々の情報提供が計画され

ているが、それには専用受信機が必要となると考えられる。一例としては、遭難船の近傍

を航行する船舶に対して呼び出しを行い、救助活動を促すような応用が考えられている。

ガリレオ衛星システムが完成したときの遭難警報およびリターンリンクの全体の流れは

図 3.3.3-1 のとおりである。

- 24 -

(コスパス・サーサット委員会資料より)

図 3.3.3-1 ガリレオ SAR サービスの信号の流れ

3.3.4 リターンリンクについて

コスパス・サーサットでは、ビーコンからの緊急通報が単向通信であることが不便な点

としてあげられている。特に高い誤報率の対策として何らかの形での双方向化が必要との

ことで検討されている。

現在のところ、コスパス・サーサットに双方向通信を搭載することを提案しているのは

ガリレオ衛星システムの SAR サービスのリターンリンクのみである。しかしながら、ガ

リレオ衛星の打ち上げは、予定より大幅に遅延しており、実現するまでしばらくの時間を

要する。

今回、すでにリターンリンクについて一部の仕様が公開されているのでそれを基本に検

討を行った。

E1 信号には E1-B と E1-C の信号が多重されている。そのうち E1-B には航法関係の情

報(I/NAV)が載せられその中にリターンリンクが含まれる。(表 3.3.4-1 参照)

- 25 -

表 3.3.4-1 E1 信号仕様

キャリア周波数 1575.420 MHz 帯域 24.552 MHz 偏波 RHCP 変調方式 CBOC フレーム構造 I/NAV エラー訂正 FEC 受信信号レベル -157 dBW

データは Odd(偶数ページ)と Even(奇数ページ)に分けられ順番に送られてくる。

I/NAV のメッセージ構造は表 3.3.4-2 のようになっている。

表 3.3.4-2 I/NAV メッセージ構造

フレーム 720sec= 24 サブフレーム

サブフレーム 30sec = 15 ページ (GST の 30 秒に同期)

ページ 2sec(通常ページ:Even Page + Odd Page)

I/NAV のフレーム構造は表 3.3.4-3 のようになっている。

表 3.3.4-3 I/NAB フレーム構造

Sync(同期) “0101100000”

I/NAV Page (Even or Odd):ページデータ 240 Symbol(2 Symbol = 1bit)

計: 250 Symbol

I/NAV Page (Even or Odd) 114 bit Tail = 6bit(フィル) 計:120 bit Even Page

Page Type = 0 : Normal

Odd Page

Page Type = “0” : Normal

- 26 -

ページデータについては、上記のフォーマットは通常時(Page Type = “0”)のものであっ

て、警報時(Alert)(Page Type = “1”)には別のフォーマットのページ(情報提供用)が送ら

れる。SAR データ以外にこの E1-B 信号に載って送られるデータでは衛星軌道データ

(Almanac データ)が送られてくる。

SAR データの構造は下記の表 3.3.4-4 のようなものとなっているが、一つの意味のある

SAR データとするには短い Short フォーマットで 4 ページ 8 秒(図 3.3.4-1)、の長い Long

フォーマットで 8 ページ 16 秒(図 3.3.4-2)掛かって SAR データが送られてくる。

表 3.3.4-4 SAR データの構造

Start Bit (スタートビット)

Short/Long RLM Identifier(Short/Long 区別)

SAR RLM Data (データ)

1 bit 1 bit 20 bit 計:22bit

図 3.3.4-1 SAR Short メッセージフォーマットデータページ構造

図 3.3.4-2 SAR Long メッセージフォーマットデータページ構造

Short フォーマットと、Long フォーマットをまとめて一つのコマンドに書き直すと、下

記の表 3.3.4-5 のようになる。ここでビーコンに関係があるのは短い Short フォーマット

の方で、Long フォーマットは特定の専用受信機への情報提供目的と言われている。

このメッセージを受けた際のビーコンの振る舞いについては、4ビットのコマンドとパ

ラメータにより決められる。

- 27 -

表 3.3.4-5 Short 及び Long メッセージフォーマット

Short Message ビーコンアドレス コマンド パラメータ 20bitX3 4bit 15bit+parity

Long Message ビーコンアドレス コマンド パラメータ 20bitX3 4bit 16bit 20bit 20bit 20bit 19bit+parity

3.4 プロトコルの選択

ここでリターンリンクの 適のプロトコルの選択を行うとなるといくつかの基準を当て

はめて考えなくてはいけない。

(ア) グローバルサービスか

(イ) リターンリンクが計画されているか

(ウ) 実現性は

(エ) 国際規格へとの整合性

これらの点を考慮に入れ手評価を行うと表 3.4-1 のようになる。

表 3.4-1 各衛星システムの比較

システム グローバルサービス 計画 実現性 国際規格との整合性

ARGOS ○ ○ ○ ○ QZSS × △ 2011 以降 △

ガリレオ ○ ○ 2013 以降 ○

この結果から次のような結論が出る。

• コスパス・サーサットとして認められつつあるガリレオ衛星システムのリターンリ

ンクを基本として考えるのが一番妥当と考えられる。

• ARGOS システムはそれ自体完結した別システムであるのでリターンリンクだけ

を使用することは出来ないが、基本的な考え方が同一なのでリターンリンクの機能

を考えるときの参考となる。また、このシステムを実験用通信手段として使用する

可能性は残る。

• QZSS も基本的な考え方はガリレオと同じコード拡散方式で送られるセンテンス

番号に空きがあり、技術的には可能と考えられるが、残念ながら現時点では、ここ

で考えている SAR サービスような機能の提供は検討されていない。

- 28 -

- 29 -

第4章 新たなコスパス・サーサット・ビーコン制御信号の構成

ここでは第3章の結論を受け、将来コスパス・サーサットの会合に貢献することを目標

にして、周波数の有効利用を図るためのビーコン制御信号が提供すべき新機能案について

検討し、提案をまとめる。

ここで取り上げる各種信号の関係について図 4.1-1 に示す。

図 4.1-1 第 4 章で取り上げる信号

COSPAS-SARSATビーコン部

Galileo 受信部

フォワードリンク 周波数:406MHz 帯

内容:遭難警報 仕様:C/S T.001

リターンリンク 周波数:1.5GHz 帯 E1 信号:リターンリンク L1 信号:位置データ 仕様:OS SIS ICD

Galileo 衛星

リターンリンク機能付きビーコン

リターンリンクデータ

+ 位置データ

仕様:IEC61162-1

- 30 -

4.1 リターンリンク新機能案

第3章の検討結果から、ガリレオリターンリンクで提案されている Short フォーマット

案に従ったビーコンの制御信号について検討し、周波数有効利用にために必要な新機能を

実現するコマンド案を取りまとめる。

ガリレオリターンリンクについては、第7章にある海外動向調査にあるようにまだ細か

な点については詰められていない。そこで、第3章での検討結果をもとに、ARGOS シス

テムの例を参考として日本の関係機関のご意見も取り入れてコマンド案を作成した。

今回まとめた制御コマンド案は以下のとおりである。

(1) 406MHz の送信停止/送信開始

救助活動後、不要になったビーコンが回収出来ずそのまま電池が消耗するま

で送信を続けるのを停止する。あるいは、明らかに誤報であることがわかっ

た場合に、強制的に送信を停止する。一方、送信を遠隔で開始させるのは特

殊な場合に限られると考えられる。受信部を絶えず活かしておく必要がある

ため、外部電源のある車両などのに取り付けられたビーコンなどに限られる。

連絡を絶った車両の位置の特定などトラッキング的な応用が考えられるが、

今回の個人目的には不要な機能と考えられる。

(2) 121.5MHz ビーコン信号の送信停止/送信開始

121.5MHz のビーコン信号は送信出力も小さく到達距離が短いため、捜索隊

が近くまで接近しないと有効ではなく、遭難通報時から送信し続けるのは電

力消費上得策ではない。このため、遠隔で 121.5MHz 信号の On/Off を行い

電力消費を押さえると共に、無駄な 121.5MHz の送信を押さえ周波数の有効

利用にもなる。

(3) 406MHz の送信時間間隔の変更

406MHz の遭難信号を1度受信すれば、その後は受信時間間隔が開いても捜

索位置の特定は可能なので、電池の消耗を減らすため、送信時間間隔を遠隔

で増減する。

(4) 遭難通報に対する確認

この機能には 2 つの機能が想定されている。

・緊急通報を陸の RCC が受信した時点で送信されるリターンリンクであり、

緊急通報の受信(ACK)の役目をする。

- 31 -

・遭難の事実の確認あるいは安否の確認を行う。リターンリンクの受信を警

報音やランプの点灯等で確実にビーコン所有者に知らせ、ビーコン側にて応

答手段(既存の押しボタンの操作、あるいは新たなボタン)を要求する。

(5) 位置情報精度切り替え

現在のビーコンプロトコルによる GPS データの扱い方では、入力可能なビッ

ト数に限度があるため通常位置精度4秒(約 120m)の精度までしか入力で

きない。しかしながら、リターンリンクによって一度4秒精度の位置を受信

した後、更なる高精度の位置情報の送信の要求ができれば、下位ビットをシ

フトさせることなどにより、更なる高精度な位置を得ることが可能になる。

(6) 定型メッセージの表示

ビーコンに小型のディスプレイをつけて、予め用意した定型のメッセージを

選択して表示させることなどが可能と考えられる。

(7) 送信周波数の変更

コスパス・サーサットに許可されている周波数帯の中で、送信周波数チャネ

ルをリターンリンクからのコマンドにより変更する。ビーコンが接近してい

るような場合に信号を分離する目的で使用するものと考えられる。現時点で

は規則上の問題があると考えられる。

以上のことを考慮し、ガリレオ リターンリンク未定義の部分を補足すると表 4.1-1 の

ようになる。

- 32 -

表 4.1-1 Short Message 提案

No.(HEX) Command Parameter(15bit) 備考

0(0000) ACK without Parameter None 規定済み 1(0001) ACK with Parameter (必須) 規定済み 2(0010) 406MHz TX Control Start /Stop 3(0011) Change Interval 406MHz TX Long / Normal 4(0100) 121.5MHz TX Control Start / Stop 5(0101) Shift location Data High Res./ Normal 6(0110) Confirm Alert 7(0111) Show Fixed Message on Display Message Pattern No. 8(1000) Simple Question on Display Question Pattern No. 9(1001) Change Frequency CH CH assignment in Hex A(1010) Reserved for Future Use B(1011) Reserved for Future Use C(1100) Reserved for Future Use D(1101) Reserved for Future Use E(1110) Reserved for Future Use F(1111) Reserved for Future Use

4.2 リターンリンク受信機よりのリターンリンク送出フォーマット案

空間をリターンリンクが伝搬してくる際のフォーマットなどについては規定されている

が、 終的にメッセージをリターンリンク受信機からビーコンの制御部に渡すときどのよ

うな形態で渡されるかが一番問題となる。可能ならば統一を取っておく必要があると考え

られる。

今回ガリレオ衛星システムの E1 信号について考えると

• E1 周波数は測位データが送られてくる L1 と周波数は同じであり、測位データと

拡散コードが異なるだけなため、測位データと受信機は共有可能と考えられる。

• 現 在 の GPS (GNSS) 受 信 用 IC か ら の 測 位 デ ー タ は 標 準 的 に は

IEC61162-1(NMEA0183 相当)で出力されている。

これらのことから、リターンリンクも IEC61162-1 のフォーマットで測位データと共に

出力されることを想定することが適当と考えられる。

IEC61162-1 の規定に沿ってデータセンテンスを作ると表 4.2-1 のようなものとなる。そ

のセンテンスがシリアルラインで 8bit Non-parity の 4800bps(標準)で送り出される。通信

は単向通信でそれを受信側で受け取るのみの簡単なプロトコルとなっている。

同一ラインに位置情報を示す既存のデータも載るものと考えられ、ヘッダによりデータ

の内容の区別をつけることになる。

表 4.2-1 IEC61162-1(NMEA0183)相当センテンス例

ヘッダ 機 器 コード

データ 種 別 ビーコン ID コマ

ンド パラメ

ータ 受信時間 受信 状態

受 信 モード チェックサム 終了符号 総バイト数

(Max.82) Galileo TBD HEX 15 桁 HEX

1桁HEX:4 桁 UTC A/V 機器コード~*

前までの EOR 48

$ GA BCS ,hhhhhhhhhhhhhhh ,h ,hhhh ,hhmmss.ss ,A ,a *hh <CR><LF>

・ “$”はユニークコードで ASCII コード型センテンスの始まりを表す。

・ “GA”はガリレオ受信機からのデータであることを示す(既規定ずみ)

・ データ種別”BCS”は今回の新提案”Beacon Control Sentence”であり、NMEA 又は IEC での承認が必要

・ ビーコン ID は HEX(16 進数:1~F)で4bit のデータを表し、15 個で 60bit のビーコンアドレスを表す。

・ コマンドおよびパラメータはバイナリデータとして扱い、4bit ずつ切り HEX データで表す。

・ 受信時間~受信モードまではデータの信頼性を示すためのもので、GNSS 受信機からのデータには必ずつける。

・ チェックサムはデータのエラーチェックのため

・ <CR><LF>はセンテンスのデリミタ

・ 一般的に GNSS 受信機からは GGA, GGL, GSA, GSV, RMC, VTG, ZDA などのセンテンスが出力される。

― 33

- 34 -

4.3 リターンリンク応答用フォワードリンクビーコンプロトコル案

4.3.1 リターンリンク試験用フォワードリンクビーコンプロトコル

コスパス・サーサットではビーコンから衛星に向けて、緊急通報を送るためのフォワー

ドリンクのデータフォーマットならびにそれに関わる規定をビーコンプロトコルと呼び、

ビーコンの種別、使用 ID、位置データの有無などにより決められている。

まだ、リターンリンク自体が実験段階のものであることから、リターンリンクを考慮し

た、正規のビーコンプロトコルは規定するに至っていない。その代わりに当面、機能試験

を行うため試験用プロトコルの使用を推奨し、その中のビット配列について必要な機能を

割り当て図 4.3.1-1 のように規定している。

図 4.3.1-1 リターンリンク用テストプロトコルフォーマット

本年度の実証試験では、この試験用プロトコルを使用して行うことにしたが、さらに実

証実験をすすめるには、位置情報の扱える正式なリターンリンク用プロトコルが規定され、

それを使用することが望ましい。しかしそれがかなわない場合は、現行のプリトコルから

代用出来るものを用いて実証をすすめる必要が出ると考えられる。

4.3.2 リターンリンク応答用新フォワードリンクビーコンプロトコルの可能性

リターンリンクの正式に運用時に使用するプロトコルについて、ガリレオサイドからコ

スパス・サーサットに対して、2008 年 3 月の EWG-1(Expert Working Group:技術専門

家会合)で提案が行われた。基本的に現在の National Location Protocol を使用することを

提案している。(図 4.3.1-2 参照)

ガリレオサイドからの提案の趣旨は、

• ガリレオのリターンリンクを用いるビーコンは、必ず衛星測位(GNSS)受信機を搭

載しているので、その位置データを載せられるプロトコルになる。、

• National Location Protocol 内にある 127~132bit をリターンリンクへの応答など

として使用することを提案している。それは、ビーコンが、リターンリンク機能を

- 35 -

搭載していることを示す RBF(Return Link Beacon Flag)として、127bit をあて、

それを“1”とすることにより残りの 5bit がリターンリンクの関連で使用されるこ

とを示すことを提案した。

図 4.3.1-2 National Location Protocol データフレーム構造

この提案に対して、

• 問題の 6bit の使用方法については各国の主管庁が決めるところであり、すでにそ

こを割り付けている国がある可能性があるので、それに新たな機能を割り付けるの

は問題ではないか。

従って新たな専用プロトコルが必要なのではないかとの意見となった。

ガリレオサイドからリターンリンク機能のあるビーコン用プロトコルとして、National

Location Protocol を提案したのは、位置データを送るためのプロトコル中もっとも高い位

置精度(4 秒=約 120m)が送れ、かつ自由に使えるビットがあることから、妥当なもの

で有ると考えられる。しかし一方では問題の127~132bitを位置データに割り付け、約30m

(1 秒)の精度まで送れるようにしている例もある。

コスパス・サーサットでは 2008 年に EWG-1 の開催の後、JC-22(Joint Committee:

合同委員会)が 6 月に開催された。その会合で、米国から GPS 測位データの扱い方、なら

びに測位データを送るプロトコルについての改訂が提案(JC-22/5/17)された。その一部は

2008 年の規格改定の際、反映された。

米国の提案内容は:

• Standard Location Protocol/National Location Protocol において、ビーコンの種

別ならびに ID の種別を表すための 4bit コード(37~40bit)の割付に予備の“1101”

以外に衛星軌道計算(orbitography)用に割り付けている”0000”と”0001”は使用さ

れていない。それらを予備として使用出来るのではないか。

• GPS 測位データの更新周期を 20 分としているのは、静止衛星で受け取ったデータ

を積分し、エラーを除くためであったが、 近の衛星は性能が上がり、4 バースト

- 36 -

有ればほぼ受信出来るので、周期を短くすべきだ。(5 分に短縮される。)

• 位置情報の前半分 PDF1 についてなるべく変わらないよう PDF1 の値を、PDF2

で微調整するデータ表現が使われている(表 4.3.2-1 参照)。これは低軌道衛星で

位置を測定する際、信号を一定にさせるための処置だとの説明がされている。これ

も現在の衛星ではそこまで行う必要が無くなっている。そこで、PDF1 で表す値を

実測値に近づけ、差分の範囲を狭めた結果、”114~115bit”と”121~122”bit”は不要

になる。(提案は採用される)

表 4.3.2-1 National Location Protocol での位置データの配置

位置データ bit 位置 bit 数 内 容 備 考 59 1 北緯/南緯(N = 0, S = 1)

60~66 7 1 度単位で 0~90° 緯 度 67~71 5 2 分単位で 0~58 分

72 1 西経/統計(E = 0, W = 1) 73~80 8 1 度単位で 0~180°

PDF1

経 度 81~85 5 2 分単位で 0~58 分

113 1 差分(“- “= 0, ”+” = 1) 114~115 2 1 分単位で 0~3 分 新規格では”0” 緯度差分 116~119 4 4秒単位で 0~56 秒

120 1 差分(“- “= 0, ”+” = 1) 121~122 2 1 分単位で 0~3 分 新規格では”0”

PDF2

経度差分 123~126 4 4秒単位で 0~56 秒

これらの内容を検討すると次のようなことが可能なことがわかる。:

• National Location Protocol で”37~40bit”に、例えば“1101”をリターンリンク機能

付きビーコンとの割付を行う。

• リターンリンク機能付きビーコンの際は、PDF2 のデータは 1 秒単位で 6bit で表

現するよう解釈する。

• リターンリンク機能付きビーコンの際は、各国の裁量となっている”127~132bit”

に決まった役割を割り付ける。

そのようにすれば、現在の枠組みの中でリターンリンク用のプロトコルが出来ると考え

られる。その例を図 4.3.2-1 に示す。

図 4.3.2-1 EXAMPLE OF RTM CAPABLT BEACON PROTOCOL

PDF1 PDF2 Bits 25 26 27 - 36 37-40 41-58 59-85 86-106 107-112 113-126 127-132 133-144

F P Country Code

Prot. Code ID Position. Data BCH1 Supplementary Data Position. Data RLM Data BCH2

“1” “1” “1101”(Exp.)

LAT : 13bit 2min Res.

RON : 14bit 2min Res.

“1” 107=”1” 108=”1” 109=”0” 110=”1” 111= Position Data SourceI/E 112= 121.5MHz Homing Y/N

LAT : 7bit 1sec Res.

RON: 7bit 1sec Res.

127=ARF 128=MDF 129-132 =RPM

ARF (Acknowledgment / Confirmation-of-reception Flag):1度でもリターンリンクを受信したら”0” MDF (Manual-deactivation flag):通常は”0”、手動で送信が停止された場合”1”とし 1 回送信し停止する。

RRM (return-link-message-reply):ルックアップテーブル使用 (リターンリンク専用のフォーマットなので RBF フラグは不要)

― 37

- 38 -

- 39 -

第5章 ビーコン制御信号の性能の確認

ガリレオ衛星システムリターンリンクについては、まだ国際的にも検討が進められてい

ない過程のものである。従って、そのような機能を持ったビーコンに関する調査検討は国

際的にも端緒に至ったところである。ここではコスパス・サーサットの合同委員会ならび

に技術委員会に提出されたリターンリンクに関する資料を基に試験機を構成し、本調査検

討で目指すリターンリンクに対する機能を実装しその確認を行った。

5.1 試験用ビーコン構成

リターンリンク応答機能を備えた試験用ビーコンとして、従来のビーコンに試験上必要

な機能を追加したものを調達し、試験を行った。試験ビーコンの内部の構成は図 5.1-1 の

系統図にあるようなものとなっている。外観は図 5.1-2 のようなものである。リターンリ

ンクをビーコンに送る手段としての衛星リンクについては、将来専用受信機用 IC(Galileo

Chip)が開発されることを想定し、受信機そのものは今回の調査検討の対象外としたが、

代わりに衛星測位受信用 IC のための場所を確保した。

図 5.1-1 試験ビーコン系統図

- 40 -

図 5.1-2 試験用ビーコン外観

これらを実現するため、試験用ビーコン構成は、「制御基板」、「送信基板」、および「電

源基板」の 3 種の基板と「電池」、「アンテナ端子」、「操作スイッチ」および「リターンリ

ンク端子」で構成されている。

(1) 制御基板

制御基板は図5.1-3にあるように、ビーコンの制御を行うためのCPUが搭載されている。

また今後、衛星測位データを送信するための準備として衛星測位(GPS)受信用 IC と、

機能強化のための小型ディスプレイを搭載出来るよう考慮されている。

図 5.1-3 制御基板

- 41 -

(2) 送信基板

ビーコンの心臓部とも言えるところがこの送信基板となっている。ここには 406MHz

の信号を送り出すための電力増幅部と、今回の一つの目玉である高安定度の 406MHz の信

号を作り出す発信器が搭載されている。

消費電流

OCXO DTCXO

-20℃ 46.50 mA 2.00 mA

+25℃ 25.90 mA 2.00 mA

+55℃ 12.20 mA 2.00 mA

起動時 102.00 mA 2.00 mA

図 5.1-4 OCXO と DTCXO 外観との消費電流差

ビーコンの 406MHz 帯の遭難信号は衛星によるドップラーシフトにて遭難位置を測位

するために、15 分間と短い時間であるが±1×10-9と非常に高い周波数安定度が要求され

る。従来のビーコンは OCXO(Oven Controlled X’tal Oscillator:恒温槽付水晶発振器)

が広く採用されていたが、近年、MCXO(Micro-computer Controlled X’tal Oscillator:

マイコン制御水晶発振器、製品名 DTCXO)と呼ばれているものが注目されるようになっ

てきた。今回は、消費電力の低減と小型化のためこれを採用した。(図 5.1-4 参照)

(3) 電源基板

「電源基板」は電池よりの電力を各部分で必要な電圧に変換して供給する。406MHz の

バースト信号の出力が 5W と大きいため、それを賄う工夫が必要となっている。将来携帯

型の機器とすることを考えると、電池を含め検討を行う必要があると考えられる。

使用する電池に関しては、安全面、入手性ならびに価格などを考慮し一般に市販されて

いるリチューム電池をパックにして使用することを想定して、表 5.1-1 にあるようなもの

を用意した。

- 42 -

表 5.1-1 電池一覧

型 名 U10017 CR17450 CR17355 CR123 本 数 3 本(3 直) 6 本(3 直 2 並) 6 本(3 直 2 並) 6 本(3 直 2 並) 電 圧 9V 9V 9V 9V パック 電池容量 4.8Ah 5.2Ah 3.5Ah 2.8Ah

サイズ φ25.8×50mm φ17×45mm φ17×35.5mm φ17×34.5mm 備 考 電池セル U10017

は米国で軍用に

用いられる単2サ

イズの電池であ

る 。 EPIRB や

PLB などでも使

用実績があり、低

温でも安定した

大電力を発生す

る電池であるが、

高額(他の市販電

池のほぼ 3 倍)で

あることとサイ

ズが大きいのが

難点である。

CR17355 同様に

ガスメータや警

報器用である。

CR17355 に比べ

て長さが 10mmほど大きく容量

も大きい。

ガスメータや警

報器用に使用さ

れる電池であり、

低温特性や微少

電流を長時間流

す特性は優れて

いるが大電流を

流すのに難があ

る。CR123 とほ

ぼ同サイズであ

る。

コンパクトカメ

ラや小型ストロ

ボ用に使用され

る電池である。低

温特性や瞬間的

に大電流を流す

特性に優れ、海外

製 PLB での採用

が見受けられる。

5.2 リターンリンク制御信号によるビーコン動作の詳細

リターンリンクについては、コスパス・サーサットの誤報対策として注目されているが、

ガリレオ衛星により提供されるサービスであるため、欧州を中心に検討が進められている。

システムの全体像は決まりつつあるが、細目についてはまだ詰めが行われていない。その

中のコスパス・サーサットに関わる内容については、コスパス・サーサットの会合に提案

が行われ検討がすすめられているため、参加国はそこに意見ならびに提案を行うことが出

来る。

リターンリンク対応制御付き試験用ビーコンの実証実験の環境としては、図 5.2-1 にあ

るようなものとなるが、本年度は、そのうち点線で囲まれた部分を行った。

本年度の試験は、試験用ビーコンに受信機に見立てた外部パソコンからリターンリンク

相当のコマンドを与え、試験用ビーコンに所要の動作を行わせる。結果を擬似地球局に見

立てた符号解析器にて読み取るものである。その際の構成例は図 5.2-2 に示す。

- 43 -

図 5.2-1 リターンリンク実証実験構成

図 5.2-2 本年度実証実験構成図

今回の測定にあたっては、ビーコンプロトコルなど全て新しいものであるため、従来の

ものが使用出来ず、専用の測定用の機器を用意して行うこととなった。

擬似地球局

リターンリンク

擬似受信機

GNSS

受信機

リターンリンク

送信機

位置データ

リターンリンクコマンド(空中)

RF バースト信号

試験ビーコン

リターンリンクコマンド

点線内本年度実施範

光信号

符号解析器

試験ビーコン

符号書込機

初期設定用

RLM コマンド発生用 PC

IEC61163 相当

406MHz バースト信号

- 44 -

5.2.1 リターンリンクに対する動作の詳細

4.1 にて提案したリターンリンク機能案に対する動作の詳細を、表 5.2-1 のとおりとした。 表 5.2-1 リターンリンク受信後のビーコン動作

№ メッセージ名称 パラメータ値 PLB 処理 bit51~54 の応答

- - - - 初期値

1111 0 ACK without Parameter なし (H20 年度は)bit51~54 の変更以外の処理

はなし 0000

1 ACK with Parameter あり (H20 年度は)bit51~54 の変更以外の処理

はなし 0001

1 停止していた 406MHz帯の送信を再開する。 2 Stop 406MHz TX 0 406MHz 帯の送信を停止する。

0010

1 406MHz 帯の送信間隔を 150 秒にする。 3 Change Interval 406MHz TX 0 406MHz 帯の送信間隔を通常の 50 秒にす

る。

0011

1 停止していた 121.5MHz の送信を再開する。 4 121.5MHz TX Control 0 121.5MHz の送信を停止する。

0100

1 通常精度位置データ 5 Shift Location data 0 通常位置データの下位データ

H20 年度は位置情報を付加しないため、

bit51~54 変更以外の操作は行なわない。

0101

6 Confirm alert なし フラッシュ LED を早い間隔(0.25 秒基準)

で閃光させ、ブザーで警報音を鳴らし、LCD表示器に表示することにより緊急通報の真

偽をただす。(H20 年度は LCD 表示器を実

装しないため LCD 表示は行なわない。)

0110

7 Notify alert reception なし 約5秒間、フラッシュ LED を早い間隔(0.25秒基準)で閃光させ、ブザーで警報音を鳴ら

し LCD 表示器に表示することにより緊急通

報の受理を通知する。(H20 年度は LCD 表

示器を実装しないため LCD 表示は行なわな

い。)

0111

8 Show fixed message あり パラメータ値に定義されたメッセージを

LCD 表示器に表示する。 H20 年度は LCD 表示器を実装しないため

bit51~54 変更以外の操作は行なわない。

1000

9 Simple question あり パラメータ値に定義された質問をLCD 表示

器に表示する。 回答は YES ボタン/NO ボタンで行なう。 H20 年度は LCD 表示器およびを YES・NOボタンを実装しないためbit51~54変更以外

の操作は行なわない。

1001

10 Change frequency あり コスパス・サーサット が決めている 3kHz 間隔 19CH のどれかを指定して周波数を変

える。パラメータ値に HEX2 桁でチャネル

を指示 H20 年度は周波数変更機能を実装しないた

め、bit51~54 変更以外の操作は行なわない。

1010

なお、これらのリターンリンクよりのコマンド以外にコスパス・サーサットではリター

ンリンクの要求に従い人の手によりビーコンの送信が停止されたものかどうかの確認のた

- 45 -

め MDF(Manual Deactivation Flag)の応答を要求しているため試験内容は 12 項目となる。

5.2.2 リターンリンク試験用フォワードリンクプロトコルの詳細

リターンリンク試験用フォワードリンクプロトコルについては、4.3.1 にて紹介したが、

テストユーザープロトコルを図 5.2 のように使用して、実験を行った。このプロトコルを

使用した理由としては、

・ コスパス・サーサットでリターンリンクの試験に使用するビーコンフォワードリ

ンクプロトコルとして指定されている。(C/S R.012)

・ 万一外部に信号が漏れたとしても、受信局で試験用送信として破棄されるのでコ

スパス・サーサットの運用に影響を与えない。

① ビット 1~24 同期信号 ② ビット 25 フォーマットフラグ

“0”= ショートメッセージ(H20 年度はこちらを使用する) “1”= ロングメッセージ

③ ビット 26 プロトコルフラグ “0”= 標準もしくは国別位置プロトコル “1”= 利用者プロトコル(H20 年度はこちらを使用する)

④ ビット 27~36 MID(国識別)コード 日本は 431→0110101111

⑤ ビット 37~39 ユーザープロトコルタイプ “111”= 試験プロトコルを H20 年度は固定して使用する。

⑥ ビット 40~47 試験ビーコンの ID 0~255 までの ID

⑦ ビット 48 ARF (Acknowledgement/Confirmation-of-Reception Flag : 応答フラグ) “0”= PLB は起動後にリターンリンクを受信した。 “1”= PLB は起動後リターンリンクを受信していない。(初期値)

⑧ ビット 49 RBF (RLM-Beacon Flag :リターンリンク・ビーコン・フラグ) “0”= リターンリンクビーコンでない。 “1”= リターンリンクビーコンである。

⑨ ビット 50 MDF (Manual-Deactivation Flag : 手動停止フラグ) “0”= 通常動作(初期値) “1”= 停止操作した場合、“1”にした 406MHz 送信を次の1回(1バースト)行ない、停止す

る。 ⑩ ビット 51~54 RRM (Return-Link-Message-Reply :リターンリンクメッセージ応答)

リターンリンクの番号を応答する。 ⑪ ビット 55~85 TEST Beacon Data (TBD:未決定)

現状では全て“0”にする。

図 5.2 リターンリンク試験用フォワードリンクプロトコルに含まれるデータ

- 46 -

5.2.3 リターンリンク試験結果

試験条件は表 5.2.3-1 のように設定した。

表 5.2.3-1 試験条件

項 目 設 定 内 容 送信周波数 406.037MHz 温度 常温 ビーコンプロトコル初期値:

プロトコル長 ショ-トメッセージ:Bit25=”0” プロトコルフラグ 利用者プロトコル:BIT26=”1”

MID(国識別)コード 日本(431):Bit27~32=”0110101111” ユーザープロトコルタイプ 試験用利用者プロトコル:Bit37~39=”111”

ビーコン ID(仮) ”200” :Bit40~47=”11001000” ARF(リターンリンク受信フラグ) リターンリンク未受信:Bit48=”1”

RBF(リターンリンク機能付き) 機能付き:Bit49=”1” MDF(手動停止フラグ) 未停止:Bit50=”0”

RRM(リターンリンク応答) リターンリンク未受信:Bit51~54=”1111”

406MHz のバースト信号の内容については、符号解析器によりのプリント・アウト(付

属資料 2 参照)により確認を行った。

プリント・アウトの例と行った 12 項目の試験の結果のビット列について表 5.2.3-2 に示

す。

表 5.2.3-2 プリント・アウト例と結果のビット配列 符号解析器出力例 * * * *

406 Beacon test

Fo - 406036.16 KHz

POWER - 37.0 dBm

Ce - 440.2 ms

Cpp - 160.1 ms

Tr - 48.0 sec

Bitrate - 399.9 b/s

** Message **

FFH FEH 2FH 5AH FFH

91H FCH 00H 00H 00H

07H 82H 07H C0H

** BCH Correct **

** BEACON ID. **

B5FF23F80000000

** Data **

Short message

Country code 431

Protocol Flag 1

Protocol Code Bin.111

Homing dev 0 0

Homing

Fo. - 121497.67 kHz

POWER - 17.2 dBm

MOD. - 93. %

ビット配列

BIT -24 -32 -40 -47 48 49 50 -54 -56 57-88 89-112 内容 No.

同期信号(固定) ID 等(固定) ARF RBF MDF Code TEST DATA “0”(固定) BCH+予備ビット

FF FE 2F 5A FF 91H FCH 00 00 00 07 82 07 C01 Hex 1 1 1 1111 00 Hex Hex FF FE 2F 5A FF 90H 80H 00 00 00 02 86 D6 002 Hex 0 1 0 0000 00 Hex Hex FF FE 2F 5A FF 90H 84H 00 00 00 01 CB 87 403 0 1 0 0001 00 Hex Hex FF FE 2F 5A FF 90H 88H 00 00 00 04 1C 74 804 Hex 0 1 0 0010 00 Hex Hex FF FE 2F 5A FF 90H 8CH 00 00 00 07 51 25 C05A Hex 0 1 0 0011 00 Hex Hex FF FE 2F 5A FF 90H 8CH 00 00 00 07 51 25 C05B 0 1 0 0011 00 Hex Hex FF FE 2F 5A FF 90H 90H 00 00 00 06 05 EB C06A Hex 0 1 0 0100 00 Hex Hex FF FE 2F 5A FF 90H 90H 00 00 00 06 05 EB C06B Hex 0 1 0 0100 00 Hex Hex FF FE 2F 5A FF 90H 94H 00 00 00 05 48 BA 807 Hex 0 1 0 0101 00 Hex Hex FF FE 2F 5A FF 90H 98H 00 0 00 00 9F 49 408 Hex 0 1 0 0110 00 Hex Hex FF FE 2F 5A FF 90H 9CH 00 00 00 03 D2 18 009 Hex 0 1 0 0111 00 Hex Hex FF FE 2F 5A FF 90H A0H 00 00 00 03 D2 18 0010 Hex 0 1 0 1000 00 Hex Hex FF FE 2F 5A FF 90H A4H 00 00 00 01 7B 84 0011 Hex 0 1 0 1001 00 Hex Hex FF FE 2F 5A FF 90H A8H 00 00 00 04 AC 77 C012 Hex 0 1 0 1010 00 Hex Hex

― 47

- 48 -

(1) 手動 OFF 時の動作確認

手動で PLB の電源を OFF にした時の動作を確認する。

想定動作

PLB を手動 OFF すると bit50 が 1 になり、1 バースト発信後停止する。

確認結果

表5.2.3-2のNo.1にあるように想定どおり手動OFFすると1バースト発信後停止した。

また符号、ビーコン ID も bit50 が 1 になっていることを示している。

(2) リターンリンクテスト コマンド=0:ACK without Parameter

想定動作

Bit51-54 が 0000 になり、自動応答(パラメータ無し)が行なわれる。

確認結果

表 5.2.3-2 の No.2 にあるように符号、ビーコン ID は、bit48 がリターンリンク受信を

示す 0 であることと、bit51-54 が”0000”になっている事を示している。

(3) リターンリンクテスト コマンド=1:ACK with Parameter

想定動作

Bit51-54 が 0001 になり、自動応答(パラメータ付き)が行なわれる。

確認結果

表 5.2.3-2 の No.3 にあるように符号、ビーコン ID は、bit48 がリターンリンク受信を

示す 0 であることと、bit51-54 が”0001”になっている事を示している。

(4) リターンリンクテスト コマンド=2:406MHz TX Control

想定動作

Bit51-54 が”0010”になり、406MHz ビーコン信号をパラメータ値”1”の時 ON、”0”の時

OFF にする。

確認結果

表 5.2.3-2 の No.4 にあるように符号、ビーコン ID は、bit48 がリターンリンク受信を

示す 0 であることと、bit51-54 が”0010”になっている事を示している。動作確認について

はパラメータを1にして通常通り動作すること、パラメータを0にして 100 秒程待ち、送

信しないことを確認した。

- 49 -

(5) リターンリンクテスト コマンド=3:Change Interval 406MHz TX

想定動作

Bit51-54 が”0011”になり、406MHz ビーコン信号の送信間隔をパラメータ値”1”の時は

150±2.5 秒、”0”の時には通常動作の 50±2.5 秒にする。

確認結果

表 5.2.3-2 の No.5 にあるように符号、ビーコン ID は、bit48 がリターンリンク受信を

示す 0 であることと、bit51-54 が”0011”になっている事を示している。動作確認について

はパラメータを1にして約 150 秒間隔になること、パラメータを”0”にして通常間隔になる

ことを目視及び符号解析器(PLB)によって確認した。

コマンド受信後の試験ビーコンの送信間隔の変化を図 5.2.3-1 および図 5.2.3-2 に示す。

(6) リターンリンクテスト コマンド=4:121.5MHz TX Control

想定動作

Bit51-54 が”0100”になり、121.5MHz ホーミング信号をパラメータ値1の時 ON、0の

時 OFF にする。

確認結果

表 5.2.3-2 の No.6 にあるように符号、ビーコン ID は、bit48 がリターンリンク受信を

示す 0 であることと、bit51-54 が”0100”になっている事を示している。動作確認について

はパラメータを1にして通常通り動作すること、パラメータを0にしてからの1バースト

後、121.5MHz ホーミング信号が送信しないことを確認した。

(7) リターンリンクテスト コマンド=5:Shift Location Data

想定動作

Bit51-54 が”0101”になり、位置信号の制度をパラメータ値0の時は通常制度位置データ、

0の時は通常位置データの下位データにする。

尚、H20 年度は位置情報を付加しない為、bit51-54 の変更の確認のみを行なった。

確認結果

表5.2.3-2のNo.7にあるように符号、ビーコンIDから、bit48がリターンリンク受信を示す

0であることと、bit51-54が”0101”になることを確認できたが、上記の通りに位置情報につ

いては今回は搭載していないので追って検討となる

- 50 -

図 5.2.3-1 コマンド受信後の送信インターバルの変化

図 5.2.3-2 コマンド受信後の送信インターバル計測結果

- 51 -

(8) リターンリンクテスト コマンド=6:Confirm Alert

想定動作

Bit51-54 が”0110”になり、回答あるまでフラッシュ LED を短い間隔で点滅とブザーに

よる警報音を鳴らす。そして表示器に誤報なら OFF を押すよう促す表示をする。回答は

ON,OFF ボタンで行い、ON が押された場合そのまま通常動作に移行、OFF が押された場

合は手動 OFF 時同様 1 バースト送信後電源を落とす。

尚、表示器と回答ボタン H20 年度は実装しない。そこで、LED とブザーはコマンド送

信後 5 秒間動作するようにした。

確認結果

表5.2.3-2のNo.8にあるように符号、ビーコンIDは、bit48がリターンリンク受信を示す”0”

であることと、bit51-54が”0110”になっている事を示している。フラッシュLEDの点滅(図

5.3.2-3参照)とブザーについて設定通り5秒間動作した。

表示器に関しては、追って検討となる。

図 5.3.2-3 フラシュ LED 点滅

(9) リターンリンクテスト コマンド=7 Notify Alert Reception

想定動作

Bit51-54 が 0110 になり、5 秒間 Confirm Alert の時のような LED による短い間隔の

点滅と、ブザーによる警報音に加え、表示器に緊急通報受理を通知する。

尚、H20 年度は表示器を実装しないため、緊急通報受理の通知の確認は行なわなかった。

確認結果

表 5.2.3-2 の No.9 にあるように符号、ビーコン ID は、bit48 がリターンリンク受信を

示す 0 であることと、bit51-54 が 0111 になっている事を示している。フラッシュ LED の

- 52 -

点滅とブザーについて設定通りコマンド送信後 5 秒間動作した。表示器については追って

検討を行う。

(10) リターンリンクテスト コマンド=8:Show Fixed Message

想定動作

Bit51-54 が”1000”になり、パラメータ値に設定されたメッセージを表示器に表示する。

尚、H20 年度は表示器を実装しない為、bit51-54 の変更の確認のみを行なった。

確認結果

表5.2.3-2のNo.10にあるように符号、ビーコンIDから、bit48がリターンリンク受信を示

す0であることと、bit51-54が”1000”になることを確認できたが、表示器については追って

検討を行う。

(11) リターンリンクテスト コマンド=9:Simple Question

想定動作

Bit51-54 が”1001”になり、パラメータ値に定義された質問を LCD 表示器に表示する。

回答は YES,NO ボタンで行う。

尚、H20 年度は表示器及び YES,NO ボタンを実装しない為、bit51-54 の変更の確認の

みを行なった。

確認結果

表5.2.3-2のNo.11にあるように符号、ビーコンIDから、bit48がリターンリンク受信を示

す0であることと、bit51-54が”1001”になることを確認できたが、上記の通り表示器、

YES,NOボタンに関しては、追って検討を行う。

(12) リターンリンクテスト コマンド=10:Change Frequency CH

想定動作

Bit51-54 が”1010”になり、コスパス・サーサットが決めている 3KHz 間隔 19CH のど

れかを指定して周波数を変える。パラメータ値に HEX2 桁でチャネルを指示。

尚、H20 年度は周波数変更機能を実装しない為、bit51-54 の変更の確認のみを行なった。

確認結果

表 5.2.3-2 の No.12 にあるように符号、ビーコン ID から、bit48 がリターンリンク受信

を示す 0 であることと、bit51-54 が”1010”になることを確認できた。周波数変更機能につ

いては追って検討を行う。

- 53 -

5.3 コスパス・サーサット規格の性能検査結果

リターンリンクの機能を搭載した試験用ビーコンがコスパス・サーサットが規定する規

格を満足しているか次の 2 点の検査を行った、

・振動・衝撃試験:衝撃がの加わった後でも周波数安定度が保たれるかを試験する。

・周波数安定度試験:動作温度範囲内で周波数安定度が保たれるか試験する。 5.3.1 振動衝撃試験

新たに採用した DTCXO が振動・衝撃を加えて性能に影響が無いかを確認するために振

動・衝撃試験から実施した。図 5.3.1-1 に振動・衝撃試験の状況を示す。

図 5.3.1-1 振動・衝撃試験の写真 試験方法は振動・衝撃試験の後に常温で周波数安定度に関するデータを取得し、規格値

を満足していることを確認する。406MHz のバースト波の周波数安定度を高精度で測定す

るために、図 5.3.1-2 に示すシグナル・アナライザを用いる測定系を PC のソフトウェアを

含めて構築し測定した。

図 5.3.1-2 周波数安定度測定系統図

- 54 -

測定したデータは表 5.3.1-1 のようになりコスパス・サーサットの基準値を満足してい

ることが確認出来た。

表 5.3.1-1 常温での主要データ 項番 試 験 項 目 規 格 試験結果

1 平均周波数 406.037MHz±1kHz 以内 406.036878MHz 2 短期周波数安定度 2×10-9/100ms 以下 0.10×10-9/100ms

3.1 平均傾斜 ±1×10-9/min の範囲内 0.05×10-9/min 3.2

中期間の周

波数安定度 ばらつき 3×10-9以内 0.43×10-9

5 電力 5W±2dB(3.16~7.93W) 以内 4.8W

6 電力の立ち上がり時間 5ms 以下 0.090ms +1.08 ラジアン

7 変調度 ±1.1±0.1 ラジアン以内 -1.11 ラジアン

8 立ち上がり時間 立ち下がり時間 50μs 以上 250μs 以下 125μs

185μs 9 対称度 0.05 以下 0.032

10.1 大 52.5s 以下 52.28s 10.2 小 47.5s 以上 47.64s 10.3 大 少の差 4.0s 以上 4.64s 10.4

繰返周期

標準偏差 0.5 以上 2.0 以下 1.44 11 無変調搬送波送信時間 158.4ms 以上 161.6ms 以下 160.0ms 12 ビットレート 396bps 以上 404bps 以下 400.0bps

5.3.2 周波数安定度試験

周波数安定度試験はビーコンの低温(-20℃)および高温(+55℃)においての周波数安定度

を調べるものと、一定の温度変化の中で周波数安定度が保たれることを試験するものに分

かれる。

低温ならびに高温での試験結果を表 5.3.2-1 および表 5.3.2-2 に示す。これらからコスパ

ス・サーサットの基準値を満足していることが、確認出来る。

- 55 -

表 5.3.2-2 低温(-20℃)での主要データ 項番 試 験 項 目 規 格 試験結果

1 平均周波数 406.037MHz±1kHz 以内 406.036966MHz 2 短期周波数安定度 2×10-9/100ms 以下 0.25×10-9/100ms

3.1 平均傾斜 ±1×10-9/min の範囲内 0.11×10-9/min 3.2

中期間の周

波数安定度 ばらつき 3×10-9以内 0.43×10-9

5 電力 5W±2dB(3.16~7.93W) 以内 4.2W

6 電力の立ち上がり時間 5ms 以下 0.098ms +1.08 ラジアン

7 変調度 ±1.1±0.1 ラジアン以内 -1.01 ラジアン

8 立ち上がり時間 立ち下がり時間 50μs 以上 250μs 以下 130μs

150μs 9 対称度 0.05 以下 0.012

10.1 大 52.5s 以下 52.29s 10.2 小 47.5s 以上 47.66s 10.3 大 少の差 4.0s 以上 4.64s 10.4

繰返周期

標準偏差 0.5 以上 2.0 以下 1.44 11 無変調搬送波送信時間 158.4ms 以上 161.6ms 以下 160.0ms 12 ビットレート 396bps 以上 404bps 以下 400.0bps

表 5.3.2-3 高温(+55℃)での主要データ 項番 試 験 項 目 規 格 試験結果

1 平均周波数 406.037MHz±1kHz 以内 406.036893MHz 2 短期周波数安定度 2×10-9/100ms 以下 0.33×10-9/100ms

3.1 平均傾斜 ±1×10-9/min の範囲内 0.08×10-9/min 3.2

中期間の周

波数安定度 ばらつき 3×10-9以内 0.42×10-9

5 電力 5W±2dB(3.16~7.93W) 以内 5.6W

6 電力の立ち上がり時間 5ms 以下 0.098ms +1.11 ラジアン

7 変調度 ±1.1±0.1 ラジアン以内 -1.16 ラジアン

8 立ち上がり時間 立ち下がり時間 50μs 以上 250μs 以下 125μs

185μs 9 対称度 0.05 以下 0.036

10.1 大 52.5s 以下 52.29s 10.2 小 47.5s 以上 47.68s 10.3 大 少の差 4.0s 以上 4.64s 10.4

繰返周期

標準偏差 0.5 以上 2.0 以下 1.61 11 無変調搬送波送信時間 158.4ms 以上 161.6ms 以下 160.0ms 12 ビットレート 396bps 以上 404bps 以下 400.0bps

国際規格において規定されている1時間に5℃の温度変化を加える温度傾斜試験、およ

- 56 -

び使用温度範囲内で 30℃の急激な温度変化を加える温度衝撃試験を実施した。

温度傾斜試験の周波数安定度測定結果を図 5.3.2-1 に、温度衝撃試験の結果を図 5.3.2-2

に示す。

短期周波数安定度

中期周波数安定度の平均傾斜

中期周波数安定度のばらつき

温度

℃-20

+ ℃ 55

℃-20 2時間 15時間 2時間 15時間

+ ℃ 5 /h - ℃ 5 /h

図 5.3.2-1 温度傾斜試験の周波数安定度測定結果(グラフ)

図付4-2 -10℃→+20℃(常温)温度衝撃試験の周波数安定度測定結果

- 57 -

これらの結果、評価に使用した PLB はリターンリンク機能を有しながら国際規格を満

足していることが確認できた。

5.4 その他

今回の調査検討の主目的ではないが、個人携帯型の機器である PLB を目標としている

限りにおいて、電力を供給する電池ならび電源については重要な構成要素となる。

PLBは規準では電池の容量が極端に減る-20℃において24時間以上継続して動作するこ

とが要求されている。しかし今回の試験では一番大きな U10017 だけが(図 5.4-1 参照)

が要求を満たした。今後リターンリンク受信機など消費電力が加わることを考えると、全

体的な省電力化が重要と考えられる。

図 5.4-1 PLB 用電池

- 58 -

- 59 -

第6章 ビーコン信号を安定送受信のためのアンテナの基本設計

6.1 送受信アンテナの周波数

本年度の調査検討では、400MHz 帯のグランドプレーンの影響を受けずに、コスパス・

サーサットの基準を満たす送受信機アンテナの基本設計を行った。なお、ガリレオ衛星か

らのリターンリンクは、1.5GHz帯で配信される予定であることが判明したので、来年度

以降に 1.5GHz 帯の受信専用アンテナについても検討することとした。

6.2 アンテナ設計の仕様・測定条件

6.2.1 アンテナの仕様

この調査検討の目的が、個人が携帯して使用する機器であるため、出来るだけアンテナ

を短くするとともに次のような電気的性能を満足するアンテナを開発する必要がある。

コスパス・サーサット規格 T.001 には仰角 5°を越え 60°未満の範囲内の 90%以上にお

いて-3 dBi から+4 dBi のゲインであることと規定されている。また水平面には偏差 3dB

以内の無指向性であることが要求されている。

コスパス・サーサット規格C/S T.007の測定方法によればアンテナ測定時の仰角は 10°,

20°,30°,40°および 50°の 5 角度で、方位角は 0°,30°,60°,90°,120°,

150°,180°,210°,240°,270°,300°および 330°の 12 角度である。これらの

組み合わせで合計 60 点での測定を実施して、その 90%以上の 54 点以上で規格に合致する

ことが要求されている。

また、ビーコンから送信された遭難信号を測定することによりアンテナゲインを算出す

ることから、送信電力の偏差±2dB がアンテナゲインの偏差に加算され、 終的なゲイ

ンの規定値は-5dBi から+6dBi の許容範囲内となる。

これらの仕様を表 6.2.1-1 にまとめる。

- 60 -

表 6.2.1-1 PLB アンテナの要求仕様

項目 仕様

空中線形式 単一型

放射パターン 半球

送受信周波数 400MHz帯

偏波 垂直直線偏波

交差偏波特性 10dB 以上(水平面との差)

利得 全ての方位角と仰角 5°を越え 60°未満の範囲の 90%で、アンテ

ナ利得が-4dBi~2dB の範囲であること。

利得偏差 仰角 5°以上 60°未満の範囲の同一仰角においての利得の偏差は

3dB 以内であること。 グランドプレーン 有無にかかわらず利得および利得偏差の条件を満足すること。

VSWR 1.5 以下

インピーダンス 50Ω

その他 PLB への実装・収納を考慮し携帯に適すること

6.2.2 測定条件

(1) グランドプレーン

測定する環境は、コスパス・サーサット規格 C/S T.007 により、図 6.2.2-1 に示す擬似

大地面1の上 0.75m の高さにφ2.5m のグランドプレーンを設置しその面上中央に PLB を

置く環境(以下、グランドプレーン有り環境と称する)と、図 6.2.2-2 に示す擬似大地面

の上 0.45mの高さにグランドプレーン無しに PLB を置き、PLB と測定用アンテナ間の擬

似大地面上には電波吸収帯を敷く環境(以下、グランドプレーン無し環境と称する)の 2

種類であり、これら両方の環境で規格を満足するアンテナの基本設計を行なうことを目標

とする。

1 擬似大地面は広い面積を規定しているものであり、コスパス・サーサット規格 T.007 ではグランドプレーン A と称

しているが、本文中ではグランドプレーンとの混同を避けるため、あえて異なる表現である擬似大地面とした。

- 61 -

図 6.2.2-1 PLB のアンテナ測定環境:グランドプレーン有り環境

擬似大地面 図 6.2.2-2 PLB のアンテナ測定環境:グランドプレーン無し環境

(2) アンテナ測定用筐体

通常、PLB はアンテナと一体になっており、コスパス・サーサット規格により測定を行

なう場合、筐体の影響を確認するためにも何らかの筐体が必要になる。そこで、サイズを

幅 55mm 高さ 148mm 奥行 35mm と考えたアンテナ測定用 PLB擬似筐体を図 6.2.2-3 に

示す通りアルミニウムで製作しシミュレーションや測定に利用した。

- 62 -

55m

m

図 6.2.2-3 PLB 擬似筐体

6.3 アンテナ方式の検討

6.3.1 予備シミュレーション評価

我が国では、コスパス・サーサットのビーコンについては、海面において浮揚状態で使

用するため、測定時にもグランドプレーンを用いる EPIRB 用アンテナの実績はあるが、

陸上でも海でも使用が想定され、グランドプレーン有/無の両方の環境での測定が要求さ

れる PLB 用アンテナに対する実績がない。そのため、まず、グランドプレーンの影響を

出来るだけ受けないことを目的とした、λ/2 スリーブアンテナにλ/4 逆スリーブを付けた

図 6.3.1-1 に示すアンテナでシミュレーションにより評価を試みた。なおその際に筐体は

一般的なハンドヘルド無線機で想定される図 6.3.1-2 のような縦方向で使用するものと想

定して行った。シミュレーションした 406MHz における利得の結果は図 6.3.1-3 および

6.3.1-4 に示すとおり、グランドプレーンの有/無のどちらでも、規格を満足する結果とな

った。

図 6.3.1-1λ/2 スリーブアンテナ(λ/4 逆スリーブ付)外観イメ-ジ図

- 63 -

図 6.3.1-2 予備シミュレーション時の筐体の想定配置

図 6.3.1-3

λ/2 スリーブアンテナ・シミュレーション

グランドプレーン無し環境

図 6.3.1-4 λ/2 スリーブアンテナ・シミュレーション

グランドプレーン有り環境

しかしながら、λ/2 スレーブアンテナ(λ/4 逆スリーブ付)は、アンテナ長が約 730mm

と長く、曲げることが困難であるため、携帯するには不向きである。また、形状上の理由

から国際的に運用されている 121.5MHz ホーミング周波数への対応も難しい。よって、実

用化も考慮した別なアンテナ方式を検討した。表 6.3.1-1 に示すとおり、水平面に無指向

性が要求されていることから、線状アンテナを検討した。

- 64 -

表 6.3.1-1 他のアンテナ方式の検討

ホイップ ダイポール スリーブ

接地方式 接地方式 非接地方式 非接地方式

給電位置 片側 ○ 中央 × 片側 ○

大きさ ○ ○ △

指向性 ○ ○ ○

PLB での実績 有 無 無

マルチ周波数化 ○ △ △

総 合 ◎ × ○

上記 3 種類のアンテナのうちホイップアンテナが適していると判断した。

(1) λ/4 のホイップアンテナ

λ/4 に近い長さの線状アンテナの指向性をシミュレーションした。図 6.3.1-5 に示すと

おりグランドプレーン無し環境では良い特性が得られた。

図 6.3.1-5 λ/4 のアンテナ・シミュレーション

(406MHz) グランドプレーン無し環境

図 6.3.1-6 λ/4 のアンテナ・シミュレーション

(406MHz) グランドプレーン有り環境

しかし、グランドプレーン有り環境ではグランドプレーンから受ける影響が大きく、図

6.3.1-6 に示すとおり指向性の要求仕様から外れてしまう。

- 65 -

(2) λ/2 のホイップアンテナ

アンテナとしてはバネ弾性の金属導体で構成されたものを PLB 筐体の周囲に収納する

ことが構造上望ましく、その様な収納を考えた場合アンテナの全長は 300mm 程度になる。

アンテナの全長から 適なアンテナを考えた場合、λ/2 のホイップアンテナが考えられ

るが、シミュレーションの結果は図 6.3.1-7 および図 6.3.1-8 に示すとおりグランドプレー

ンが無い場合は良いが、グランドプレーンが有る場合に僅かだが規格から外れた。

最大利得 4.50 [dBi]

X-Z面

Y-Z面

最大利得 4.55 [dBi] 図 6.3.1-7

λ/2 のアンテナ・シミュレーション (406MHz)

グランドプレーン無し環境

図 6.3.1-8 λ/2 のアンテナ・シミュレーション

(406MHz) グランドプレーン有り環境

(3) 3λ/4 のホイップアンテナ

全長を 3λ/4 程度の線状アンテナにすると、図 6.3.1.-9 および図 6.3.1-10 に示すとおり

グランドプレーンの有無による影響は小さく、コスパス・サーサット要求仕様の指向性特

性が得られる。

- 66 -

最大利得 4.41 [dBi]

X-Z面

Y-Z面

最大利得 4.32 [dBi] 図 6.3.1.-9

3λ/4 のアンテナ・シミュレーション (406MHz)

グランドプレーン無し環境

図 6.3.1-10 3λ/4 のアンテナ・シミュレーション

(406MHz) グランドプレーン有り環境

しかし、3λ/4 の素子長では実用化が困難と判断したλ/2 スリーブアンテナ(λ/4 逆ス

リーブ)と、ほぼ同じ長さになり PLB 用として適さない。

さらに、図 6.3.1-11 および図 6.3.1-12 に示すとおり、400MHz 帯受信周波数でのシミュ

レーションを行なった結果、僅かであるが要求仕様を満たさなかった。

X-Z面

最大利得 -0.79 [dBi]

Y-Z面

最大利得 -1.15 [dBi]

X-Z面

最大利得 -1.02 [dBi]

Y-Z面

最大利得 -1.30 [dBi] 図 6.3.1.-11

3λ/4 のアンテナ・シミュレーション (466MHz)

グランドプレーン無し環境

図 6.3.1-12 3λ/4 のアンテナ・シミュレーション

(466MHz) グランドプレーン有り環境

- 67 -

6.3.2 シミュレーション条件の再検討

予備シミュレーションの結果を受け、実際のアンテナが使用される状態を含めて見直し

を行った。再検討を行ったのはアンテナ長と筐体とアンテナの関係についてとなった。

(1) アンテナ長

予備シミュレーションでアンテナ長をλ/4、λ/2、および 3λ/4 に対して行った結果よ

り、アンテナ長が長い方がグランドプレーンの有無による影響を受けないことが判明した。

一方実際の機器の大きさを考えると、長いアンテナを収納するのが難しいことから、

アンテナ長として約 300 ㎜程度となるλ/2 のもので検討した。

(2) PLB の姿勢の再検討

PLB のアンテナ評価時の姿勢は、図 6.3.2-1 に示すとおりグランドプレーンに垂直に立

つ姿勢でシミュレーションを行なった。

図 6.3.2-1 PLB アンテナ評価時の姿勢

一方、既に海外で販売されている PLB を調査したところ、図 6.3.2-2 のとおり、筐体に

対して約 90°アンテナを起こす機種や、本体表面底部に GPS アンテナがある機種がある

ことが判明した。このことは PLB は筐体を地面に垂直に立てて使用するのではなく、地

面と水平にして使用されることを想定している機種が多いことを意味している。

- 68 -

図 6.3.2-2 海外 PLB アンテナ角度と GPS アンテナ位置

よって同様に PLB 擬似筐体を地面と水平に使用することを想定し図 6.3.2-3 に示すよう

に PLB 擬似筐体はグランドプレーンに水平に、アンテナはグランドプレーンに垂直にな

る測定法を検討した。

図 6.3.2-3 PLB 水平設置のアンテナ測定姿勢

この姿勢ならば、アンテナ基部がグランドプレーンに近くλ/2 のホイップアンテナでも

受ける影響を小さくできる。よって、この姿勢でλ/2 のホイップアンテナのシミュレーシ

ョンを実施した。

ここで判明したのは筐体を導電性であるアルミニウムで製作しており、この筐体の長さ

が 148mm とλ/4(185mm)に近い値であることから、筐体の影響が出ていると思われ図

6.3.2.2-4 のようにアンテナ放射が傾く結果となった。

- 69 -

図 6.3.2-4 傾いたアンテナ・シミュレーション

実際の PLB は絶縁物であるプラスティックで製作されることが予想されるため筐体の

影響は内部の基板および電池から受ける程度で小さくなることが予想される。よって、今

回は図 6.3.2-5 の通り、筐体の影響を小さくするために側面中央からアンテナを出す構成

とした。。

図 6.3.2-5 再検討後の筐体とアンテナの関係

受信を考慮し、送信と両方の周波数の指向性を考慮しながらシミュレーションを行なっ

た結果、図 6.3.2-6、6.3.2-7、6.3.2-8 および 6.3.2-9 に示すとおりグランドプレーンの有/

無両方の環境で要求される規格を満足する結果となった。

- 70 -

X-Z面

Y-Z面

最大利得 2.13 [dBi]

最大利得 2.18 [dBi]

最大利得 2.63 [dBi]

最大利得 2.65 [dBi]

X-Z面

Y-Z面

図 6.3.2-6

λ/2 のアンテナ・シミュレーション 406MHz グランドプレーン無し環境

図 6.3.2-7 λ/2 のアンテナ・シミュレーション 406MHz グランドプレーン有り環境

最大利得 4.76 [dBi]

2最大利得 4.7 [dBi]

X-Z面

Y-Z面

図 6.3.2-8

λ/2 のアンテナ・シミュレーション MHz グランドプレーン無し環境

図 6.3.2-9 λ/2 のアンテナ・シミュレーション

MHz グランドプレーン有り環境

- 71 -

6.4 アンテナの諸元

本調査検討の目標として、送受信周波数が 400MHz で一定の性能のあるアンテナの基本

設計を行なうことであり、送受信シミュレーションの結果λ/2 ホイップアンテナがアンテ

ナ長も含め PLB に対して 適であると考える。さらに約 300mm の長さがあることから、

国際的にホーミングとして用いられている 121.5MHz に対しても、ある程度のゲインが確

保できるアンテナ長であることも長所である。

アンテナの諸元については表 6.4-1のようなものとなった。

表 6.4-1 PLB アンテナ 仕様諸元

項目 仕 様 形式 λ/2 ホイップアンテナ

空中線形式 単一型

放射パターン 半球

送受信周波数 400MHz帯

偏波 垂直直線偏波

交差偏波特性 10dB 以上(水平面との差)

利得 全ての方位角と仰角 5°を越え 60°未満の範囲の 90%で、アンテ

ナ利得が-4dBi~+3dB の範囲であること。

利得偏差 仰角 5°以上 60°未満の範囲の同一仰角においての利得の偏差は

3dB 以内であること。

VSWR 1.5 以下

本体との接続方法 同軸 SMA コネクタ

インピーダンス 50Ω

全長 345mm

本年度の調査で、ガリレオ衛星からのリターンリンクは、1.5GHz帯で配信される予定

であることが判明したので、来年度以降に 1.5GHz 帯の受信専用アンテナについても検討

することとした。

- 72 -

- 73 -

第7章 海外動向調査

7.1 調査概要

平成 20 年 9 月 22 日から 10 月 4 日(表 7.1-1 参照)までの間、ドイツ及びフランスを

訪問し、ハンブルクにて開催された国際海事展“SMM Hamburg”にて複数のコスパス・

サーサット・ビーコンメーカとの会談、フランス宇宙局(CNES)への訪問調査、及びフ

ランス国内に本社を置くビーコンメーカへの訪問調査を行った。

表 7.1-1 海外動向調査旅程表

曜 日 9/22(月) 9/23(火) 9/24(水) 9/25(木) 9/26(金)

出国 ハンブルグ SMM 展示会 訪問先

ACR 社 JOTRON 社 McMurdo 社

曜 日 9/29(月) 9/30(火) 10/1(水) 10/2(木) 10/3(金)

パリ トゥールーズ トゥールーズ ガイデル 帰国(10/4) 訪問先

CNES CNES ELTA 社 KANNAD 社

7.2 フランス国立宇宙研究センター(CNES)

CNES パリ本部及びツールーズ宇宙センターを訪問し、ガリレオのリターンリンク機能

の仕組み、開発状況、打上計画及びフランス国内における PLB の活用状況等について調

査した。

7.2.1 ガリレオ衛星打上計画

ガリレオ衛星は、当初、2007 年頃から順次打上が計画されていたところであるが、予算

等の諸事情により、大幅に遅れており、現時点での 新の打上計画(図 7.2.1-1 参照)で

は、2010 年頃より順次打上を開始し、2015 年頃までに完了するということになっている。

しかしながら、打上ロケットの都合、その他の事情等により、更なる遅延が発生する可能

性も否定できないとのことであり、今後も慎重に注視する必要がある。

- 74 -

図 7.2.1-1 ガリレオ衛星打ち上げ計画

7.2.2 リターンリンク機能

ガリレオ衛星に搭載されるリターンリンク機能の仕組みは、図 7.2.2-1(フランスにおけ

る実験時)のとおりである。陸側からビーコンに対してメッセージを送信する機関をリタ

ーンリンクサービスプロバイダー(RLSP)と呼び、RLSP は、世界に点在するフランス

領などに設置される予定のガリレオミッションセグメント(GMS)から衛星に対してメッ

セージが打ち上げられ、衛星からのリターンリンクメッセージは、L1 周波数によってビー

コンに対して送信される。ビーコン内では、図 7.2.2-2 のとおり、ガリレオ受信チップか

らソフトウェアに対してメッセージが渡されることになる。

図 7.2.2-1 ガリレオリターンリンク試験のコンセプト

- 75 -

図 7.2.2-2 ビーコン内におけるリターンリンクメッセージ処理

7.2.3 フランスにおける PLB 運用実績

フランスでの PLB 利用の歴史は古く、パリダカラリーなどに 1990 年代から利用されて

いた。初期の頃はレンタルのみだったが、2003 年頃、突然、注目を浴び、販売されるよう

になった。この一つの理由には、小型航空機用の ELT の代替物として PLB が着目された

ことがあげられる。現在、フランス MCC が運用しているデータベースには、約 1,000 台

の PLB が登録されているが、 近、急速に増加しており、ひと月に 100 台近く登録され

ることもある。PLB の誤発射率は、約 75%であり、決して低いとは言えないが、EPIRB

が約 95%であることに比べると、かなり低い。これには様々な理由が考えられるが、ひと

つには EPIRB のような自動発射機能がなく、保護シール等を意図的に破らなければ発射

できないことがあげられる。

7.2.4 フランスにおける MEOLUT(MEOSAR 地上局)実験

フランスでは、ガリレオが打ち上げられ次第、リターンリンク機能の試験を含む軌道実

験を図 7.2.1-1 のとおり、実施する予定であるが、当面の間は、すでに打ち上げられてい

る9機の DASS(GPS)衛星によって実験を実施している。MEOSAR 衛星用の地上受信

局としては、DASS 衛星に向けた2台のアンテナとともに、カナダの EMS 社製の

MEOLUT によって、実験を実施しているが、近々、4台のアンテナを備えたフランス独

自開発の MEOLUT も運用を開始し、ガリレオの打上に備える。現在の DASS 衛星から

MEOLUT へのダウンリンクは S バンドであるが、 終的には L バンドに移行するため、

アプリケーション

ソフトウェア

ガリレオ

受信チップ インターフェース

リターンリンクメッセージ

(L1周波数 )

- 76 -

S バンドと L バンドの両方に対応した MEOLUT を開発した。

単一の MEOLUT では、図 7.2.4-1 のように、地球の 6 分の 1 をカバーできるため、理

論上は、地球上に 6 箇所 MEOLUT があれば、全地球をカバーできることになるが、LUT

の設置の意思決定は各国政府次第であるため、政治的な理由等により、MEOLUT が数十

箇所に設置される事態になることも予想される。このため、衛星システム及び地上システ

ムは、このような事態にも柔軟に対応できるよう設計している。

図 7.2.4-1 単一の MEOLUT による地上カバーエリア

7.3 ビーコンメーカの状況

7.3.1 ACR 社(米国)

(1)PLB の販売状況

PLB の使用が許可されている国では全て販売している。欧州ではまだ PLB が許可され

ていないドイツ以外は、ロシアを含めてほとんどの国で販売しており、その他、米国、カ

ナダ、豪州、ニュージーランド、南アフリカ等を含めると、20 カ国以上で販売しているこ

とになる。

昨年だけで、数千台は販売した。米国などでは、町中のアウトドアショップで店頭販売

されており、毎年、20%~30%は成長している主力商品である。

- 77 -

(2) 新モデル

新の PLB モデルは、MicroFix406GPS PLB(図

7.3.1-1)であり、GPS 内蔵が標準であり、GPS 非内

蔵のモデルは販売していない。古いモデル(Aqua Fix

406 GPS PLB)には、GPS 非内蔵のものや外付け GPS

とのインターフェースによるものなどもあったが、今

後のモデルは全て GPS 内蔵になる。現在、市場に出

回っているものでは、およそ 70%位が GPS 内蔵であ

り、値段的にも GPS の有無は 100 米ドル程度しか差

がないため、多くのユーザが GPS 内蔵型を求めている。このため、ACR 社は、GPS 非内

蔵型の PLB は製造しないこととした。上記 MicroFix の市場価格は、700~800 米ドル程

度であると思われる。GPS を内蔵すると確かにバッテリーを消費するが、ACR では、特

別なバッテリーを使用しているわけではなく、9V のリチウムバッテリーを2つ使用して

いるのみである。GPS 位置は、国際規則に従って 20 分に一度アップデートしている。バ

ッテリー継続時間は、24 時間であり、耐寒温度は、マイナス 20 度である。121.5MHz ホ

ーミング信号内蔵している。

上記 MicroFix では、海上用・陸上用としてボディーを便宜上色分けして販売している

が、機能や性能に違いはない。

(3)リターンリンクへの対応

ガリレオのリターンリンク機能についても、EU や RTCM より情報を入手しているが、

現時点ではこれに対応したビーコンの開発は行っていない。しかしながら、衛星が打ち上

げられれば、当然、これに対応したビーコンも開発・販売していく予定である。

7.3.2 McMurdo 社(英国)

(1)PLB の販売状況

PLB の使用が許可されている国では全て販売している。欧州ではまだ PLB が許可され

ていないドイツ以外は、ロシアを含めてほとんどの国で販売しており、その他、米国、カ

ナダ、豪州、ニュージーランド、南アフリカ等を含めると、20 カ国以上で販売しているこ

とになる。

図 7.3.1-1 MicroFix406GPS

- 78 -

これまでに、10,000 台以上販売した。毎年、25%程度成長している商品である。 近で

は、豪州陸軍に 720 台納品、スウェーデンのプライベートパイロットに 800 台納品、ギリ

シャに 60 台納品、その他香港にも納品した。

(2) 新モデル

新モデルは、Fastfind Max というものであり、GPS

内蔵のものと非内蔵のものがある。内蔵のものは、

Fastfind MaxG(図 7.3.2-1)という。これまでに市場に

出回っているものをみると、GPS 内蔵と非内蔵の比は、

8:2 くらいだと思われるが、McMurdo では、ユーザの好

みに対応できるよう内蔵型・非内蔵型の両方を提供して

いる。GPS 内蔵型の精度は、±62m 程度である。

Fastfind Max シリーズは、バッテリーの継続時間が、

48 時間であるが、一世代前の Fastfind シリーズには、

バッテリーの継続時間を 24 時間としたモデルや、寒冷

地仕様(耐寒温度-40 度)のモデルもあり、これらも、継続して販売している。

バッテリーには、特別仕様のリチウムバッテリーを使用している。121.5MHz ホーミン

グ信号内蔵している。

メーカ希望標準価格は、表 7.3.2-1 のとおりである。

表 7.3.2-1 Mcmurdo 社 PLB 価格表

名 称 標準価格(ポンド)

Fastfind Max PLB(-20℃, 48hours) £250

Fastfind MaxG GPS PLB(-20℃, 48hours) £340

Fastfind PLB(-40℃, 24hours) £300

Fastfind Plus GPS PLB(-40℃, 24hours) £440

7.3.3 Kannad 社(フランス)

(1)販売状況

PLB が許可されている国では全て販売しており、およそ 20 カ国位になる。昨年一年間

で、数千台は販売した。PLB は、毎年、約 25%成長している有力なマーケットである。

図 7.3.2-1 Fastfind MaxG

- 79 -

(2) 新モデル

新の PLB は、406XS-3 GPS(図 7.3.3-1)という

モデルであるが、GPS 内蔵が標準であり、GPS 非内

蔵のモデルは販売していない。古いモデルには、GPS

非内蔵のものもあったが、現在、PLB 市場に出回って

いるビーコンの約 90%位が GPS 内蔵であるため、今

後のモデルは全て GPS 内蔵とすることにした。

バッテリーは、普通のリチウムバッテリーを使用し

ており、GPS 位置は、国際規則に従って 20 分に一度

更新される。この 20 分という間隔を5分に改正する

見直しが行われているため、正式に決定すれば、5 分

間隔に修正する。

バッテリー継続時間は、24 時間であり、耐寒温度は、-20 度である。121.5MHz ホーミ

ング信号内蔵している。

(3)リターンリンクへの対応

Kannand 社では、スイスの大学とともに、9 年間にもわたって、ガリレオに搭載予定の

リターンリンク機能に関する研究開発を進めてきた。まだビーコンの試作品までは完成し

ていないが、大型の装置によって次の実験を行った。

送信周波数を遠隔で変更する実験

ショートメッセージを液晶表示器に表示する実験

遠隔で送信を OFF にする実験

7.3.4 Jotron 社(ノルウェー)

Jotron 社は、現在 PLB を開発中であり、2009 年には販売を開始する。日本では船舶機

器メーカを通じて販売を希望していた。2009 年早々には、具体的なサンプルも完成する予

定である。

7.3.5 ELTA 社(フランス)

ELT を販売しており、JAL などを大口の顧客としてビジネスを展開しているが、PLB

の開発にも興味を持っている。ただ、現時点では、具体的な計画はない。しかし ELTA 社

図 7.3.3-1 406XS-3 GPS

- 80 -

は ARGOS システム用ビーコンメーカでもあり、ここで ARGOS システムについての情報

を得たことがその後の調査検討に役立った。

7.4 参考

コスパス・サーサット事務局によると、PLB は、現在のところ世界 24 カ国にて導入さ

れており、昨年の伸び率は 128%であった。図 7.4-1 のとおり、PLB は、EPIRB・ELT

よりも高い成長率を示しており、2017 年には、80 万台に迫ると予測されている。

図 7.4-1 コスパス・サーサット・ビーコン台数予測(COMSAR12/5 より)

- 81 -

第8章 まとめ

本年度は、ビーコンプロトコルに関する調査・確認、試験用ビーコンの試作・動作確認、

アンテナの基本設計、海外調査などを実施し、概ね、計画どおりの成果を得た。

また、海外調査の結果、現在市販されている PLB の多くが GPS 内蔵であることなども

判明した。

次世代コスパス・サーサット衛星のひとつである SAR/ガリレオに搭載される予定のリ

ターンリンク機能の活用は、これまでの単方向通信機能しか有していなかったコスパス・

サーサット用ビーコンの性能を大幅に拡大し、多発する誤発射への有効な対処手段を提供

するとともに、希少資源である周波数の有効利用に貢献する。

引き続き来年度は、

・制御コマンドのうち、平成 20 年度で実施しなかったコマンド(位置信号補正制御、

ショートメッセージの表示等)の動作確認

・擬似地上局(仮想地球局)の基本設計及び試作を行い、電気性能の確認や、擬似地上

局と擬似受信装置との間での通信性能及び環境性能の確認を実施

・将来、正確な位置情報も提供するガリレオ用受信チップを搭載することを想定し、同

等性能を有する GPS 受信チップの搭載

・上記ガリレオ用受信チップ(又は GPS 受信チップ)用 1.5GHz 帯受信専用アンテナの

ビーコン本体への搭載

・必要なコンポーネントを搭載した上で、実用上支障ない範囲までの小型化

・本調査検討成果のコスパス・サーサット合同委員会への報告及び新機能案に関する提

案等を実施し、コスパス・サーサット機構と調整をしつつ、引き続き高機能な PLB の

開発を推進

なお、調査検討は、我が国に PLB を導入することを視野に入れて進められているが、

PLB を我が国に導入するためには、PLB 遭難警報の配信システムなどもあわせて制度化

しなければならない。この面では、関係政府機関側にて連絡会が開催され、検討が進めら

れているので、この動向に注意しつつ、調査検討を進める必要がある。

リターンリンク機能自体は、PLB に限らず、EPIRB 及び ELT の高度化にも寄与するも

のである。今後、本調査検討結果の PLB 以外のコスパス・サーサット・ビーコンに対す

る適用にも期待したいところである。

- 82 -

おわりに

林座長が巻頭で述べられたとおり、パーソナルロケータビーコン(PLB)が導入される

ことによる恩恵は著しく大きいものと期待されている。例えば、我が国の年度別山岳遭難

件数は年々増加し、平成 20 年度の事故件数は 2 月段階ですでに過去 高となっており、

海難事故は相変わらず多発しているのが現状である。。この PLB が導入されその運用の実

をあげるためには、コスパス・サーサット衛星システム全般が抱える「誤報」問題に対し

て有効な機能を有するシステムを用意する必要性が指摘されてきた。

本検討会では、この要請にこたえる技術を備えた PLB のコンセプトが深く検討された。

そして、試作器によるシミュレーション実験によってそのようなコンセプトの装置が実現

可能であることが実証されたものと考えらる。その詳細は本文に記載されている通り、救

難信号発信の真偽を確認する機能や 新のエレクトロデバイスの採用やソフトウェア管理

による省電力化など PLB に求められる国際標準ともいうべき規格を満たすものである

本研究会でまとめた PLB システムの内容は、今後発展が期待されるガリレオ衛星など

多数の中軌道衛星との双方向通信を用いるものであり、遭難者発見の迅速化、位置計測精

度の高度化や複合的な位置計測法の付加などを実するものである。これらの機能により極

地方なども含め全地球的な視野で遭難者の救助を支援することができる点においても画期

的であり、使い勝手のよい PLB の実現を示している。

パリ・ダカール・ラリー(パリダカ)などで先駆的に導入され、国際的に発展してきた

パーソナル・ロケータ・ビーコンが山岳列島であり海洋国でもある我が国において一日も

早く稼働することを切に望むものである。

衛星通信を利用した個人用捜索救助システムに関する調査研究会

副座長 富山県立大学工学部 情報システム工学科 教授 岡田敏美

参考文献リスト

♦ 準天頂衛星システムユーザインタフェース仕様書(IS-QZSS) Ver. 1.0

♦ Galileo Open Service Signal In Space Interface Control Document OS SIS ICD,

Draft 1

♦ Argos-3 Platform Transmitter Terminal (PTT-A2) Platform Message Transceiver

(PMT-A2) Physical Layer System Requirements Ed. 2/ Rev. 2

♦ Argos-3 Platform Transmitter Terminal (PTT-A3, including PTT-ZE) Platform

Message Transceiver (PMT-A3) Physical Layer System Requirements Ed. 4/ Rev. 1

♦ Argos-3 SERVICE AND MESSAGE FORMAT General Specifications Ed. 2 / Rev. 3

♦ Argos-3 Receiver for Argos PMT Physical Layer System Requirements Ed. 2/ Rev. 1

♦ REPORT OF THE EXPERTS’ WORKING GROUP MEETING ON THE

COSPAS-SARSAT STRATEGIC PLAN EWG-2/2008

♦ COSPAS-SARSAT JOINT COMMITTEE TWENTY-SECOND MEETING

JC-22/Report

♦ COSPAS-SARSAT 406 MHz MEOSAR IMPLEMENTATION PLAN C/S R.012

Issue 1 – Revision 4

♦ SPECIFICATION FOR COSPAS-SARSAT 406 MHz DISTRESS BEACONS C/S

T.001 Issue 3 – Revision 9

♦ COSPAS-SARSAT 406 MHz DISTRESS BEACON TYPE APPROVAL STANDARD

C/S T.007 Issue 4 – Revision 3

♦ 「衛星による緊急通報システムの高度化に関する調査研究会」報告書

平成 20 年 3 月 (社)電波産業会

付属資料

付属資料1:設置要綱(構成員名簿および検討スケジュール)

付属資料2:リターンリンク試験結果

付属資料3:海外動向調査資料(CNES 関連)

付属資料4:海外動向調査資料(プレゼン資料)

付1-1

付属資料 1:設置要綱

衛星通信を利用した個人用捜索救助システムの調査検討会

設 置 要 綱

平成 20 年7月 28 日

社団法人電波産業会

1 名 称

本会は、衛星通信を利用した個人用捜索救助システムの調査検討会(以下「調査検討

会」という。)と称する。

2 目 的

遭難緊急時の通報のためのコスパス・サーサット(Cospas-Sarsat)システムの一つ

として、緊急通報用ビーコンを使用したパーソナル・ロケータ・ビーコン(PLB: Personal

Locator Beacon、以下「PLB」という。)がある。PLB は、小型かつ低価格であるため、

既に多くの国で導入されており、我が国においても登山者や小型船舶から PLB の利用

に対する要望がある。しかし、現在のシステムは通信方式が単向通信で、誤発射の制御

が出来ないため救助機関の負担が大きく我が国では導入されていない。

今般、PLB の高度化の検討が求められており、世界的に通信方式を単向通信から双方

向通信に変更する等の技術的検討が予定されている。この検討の中でビーコン信号の制

御技術や送受信安定させるアンテナ技術が確立されれば、誤発射されたビーコン信号の

停止が可能となり、不必要なビーコン信号が排除されるため周波数の占有率を軽減する

ことができる。

このため、本調査検討において海外の動向調査を踏まえつつ、周波数の有効利用率を

改善する技術及び送受信を安定させるためのアンテナ技術の調査検討を行い PLB の高

度化の検討に資するための技術的条件の検討を行うことを目的とする。

3 調査検討項目

次に掲げる項目について調査検討を行い、その結果を取りまとめる。

(1)リターンリンク用ビーコン信号の 適プロトコルの選定

衛星通信のリターンリンクのプロトコルについて、諸外国の状況を調査して

Cospas-Sarsat 衛星に適応できる 適なプロトコルを選定する。

(2)Cospas-Sarsat 規格に適合したビーコン制御信号の構成

付1-2

ビーコンを制御するための信号について、PLB の規格に適合した制御信号の構成

を行う。

(3)ビーコン制御信号の性能の確認

(1)で選定されたプロトコルに(2)で構成したビーコン制御信号をビーコン試

験機器に加え、周波数安定度等を測定してビーコン性能が PLB 規格に適合してい

ることを確認する。

(4)ビーコン信号を安定送受信のためのアンテナの基本設計

筐体の置かれた環境に依存することなく仰角 5~60 度において-3dBi~+4dBi

の送受の確保が可能となる 400MHz 帯高性能アンテナの基本設計を行う。

(5)海外動向調査

諸外国における PLB の高度化に関する動向を調査する。

4 構 成

(1)調査検討会は、座長、副座長、委員及びオブザーバで構成し、その構成員は別紙

のとおりとする。

(2)調査検討会は必要に応じて作業部会を置くことができ、その構成員は検討会において

定める。

(3)作業部会には主査を置き、座長が指名する。

5 運 営

(1)調査検討会は、座長が招集し主宰し、座長の不在の時は、副座長が代行する。

(2)その他調査検討会の運営に関する事項は、調査検討会において定める。

6 設置期間等

(1)調査検討会は、社団法人電波産業会に設置する。

(2)調査検討会は、設置の日から調査検討会で定める日までの間(平成 21 年 3 月 25

日を限度とする。)設置する。

7 事 務 局

調査検討会の事務局は、社団法人電波産業会が行う。

8 そ の 他

(1)調査検討会における調査検討事項に関する成果を公表する場合には、原則として

社団法人電波産業会及び総務省の承認を得るものとする。

(2)調査検討会の報告書に関する全ての著作権は、総務省に帰属する。

付1-3

衛星通信を利用した個人用捜索救助システムの調査検討会 構成員名簿(平成20年度)

(会社/機関名五十音順、敬称略) 氏 名 所 属 ・ 役 職

座 長 林 尚吾 東京海洋大学 海洋工学部 海事システム工学科 教授

副 座 長 岡田 敏美 富山県立大学 工学部 情報システム工学科 教授

委 員 前 田 久 昭 株式会社 光電製作所 マリン事業本部 設計部 1グループ 主任

委 員 岩崎 久雄 芝浦工業大学 システム工学部 電子情報システム学科 教授

委 員 中村 勝英 水洋会 事務局長

委 員 市村 隆之 太洋無線株式会社 技術部 海洋システム課 主幹

委 員 池 田 保 東京計器株式会社 電子事業部 海上交通部 顧問

委 員 小 池 貞 利 有識者

委 員 小 野 一 彦 株式会社ケンウッド 第一技術部 第三技術グループ 主査

オブザーバ 大久保 朋美 海上保安庁 総務部 情報通信課 専門官

オブザーバ 八 田 真 治 海上保安庁 警備救難部 管理課 情報通信係長

オブザーバ 谷 清 仁 海上保安庁 警備救難部 救難課 業務係長

オブザーバ 小 林 一 警察庁 生活安全局 地域課 課長補佐

オブザーバ 藤 井 啓 造 警察庁 情報通信局 通信施設課 課長補佐

オブザーバ 成 瀬 芳 之 総務省 総合通信基盤局 衛星移動通信課 課長補佐

オブザーバ 松 井 明 総務省 総合通信基盤局 衛星移動通信課 海上係長

オブザーバ 町 田 昭 総務省 総合通信基盤局 衛星移動通信課 海上係

事 務 局 五十嵐 喜良 社団法人電波産業会 研究開発本部 開発センター長

事 務 局 狩俣 恭太郎 社団法人電波産業会 研究開発本部 次長

事 務 局 城 戸 賛 社団法人電波産業会 研究開発本部 航空海上通信グループ 担当部長

事 務 局 有 竹 信 夫 社団法人電波産業会 研究開発本部 航空海上通信グループ 主任研究員

別紙

付1-4

衛星通信を利用した個人用捜索救助システムの調査検討会 作業部会構成員名簿(平成20年度)

(会社/機関名五十音順、敬称略)

氏 名 所 属 ・ 役 職

主 査 小 池 貞 利 有識者

委 員 前 田 久 昭 株式会社 光電製作所 マリン事業本部 設計部 1G 主任

委 員 市村 隆之 太洋無線(株) 技術第一部 海洋システム課 主幹

委 員 高野 雅生 太洋無線(株) 技術第一部 船舶事業企画課 担当部長

オブザーバ 成 瀬 芳 之 総務省 総合通信基盤局 衛星移動通信課 課長補佐

オブザーバ 松 井 明 総務省 総合通信基盤局 衛星移動通信課 海上係長

オブザーバ 町 田 昭 総務省 総合通信基盤局 衛星移動通信課 海上係

事 務 局 五十嵐 喜良 社団法人電波産業会 研究開発本部 開発センター長

事 務 局 狩俣 恭太郎 社団法人電波産業会 研究開発本部 次長

事 務 局 城 戸 賛 社団法人電波産業会 研究開発本部 航空海上通信グループ 担当部長

事 務 局 有 竹 信 夫 社団法人電波産業会 研究開発本部 航空海上通信グループ 主任研究員

付1-5

衛星通信を利用した個人用捜索救助システムの調査検討会

年度開催スケジュール

(平成20年度)

調 査

検討会

作 業

部 会 検 討 内 容 備 考

7月 第1回

7/29

○キックオフ

○本年度の調査検討の方針

○作業分担

8月

第1回

(9/17)

○検討課題進捗状況

○海外動向調査準備

9月

海外動向調査(仏トゥールーズ等)

9/22~10/4

10月 第2回

(10/17)

○検討課題進捗状況

○海外動向調査結果報告

11月 第2回

(11/26)

○検討課題進捗状況中間報告

○海外動向調査報告

○報告書章立て検討ならびに執筆担当

12月 第3回

(12/18) ○検討課題進捗状況

1月

2月 第4回

(2/18) ○報告書素案審議

3月 第3回

(3/2)

○最終報告

○最終報告書(案)審議

付1-6

付2-1

付属資料2:リターンリンク試験結果

ここではリターンリンク試験時の試験結果の確認に使用した符号解析器のプリント・ア

ウトの結果を示す。

(1) 手動 OFF 時の動作確認 (2) リターンリンクテスト

コマンド=”0” ACK without Parameter

(3) リターンリンクテスト コマンド=”1”

ACK with Parameter * * * *

406 Beacon test

Fo - 406036.16 KHz

POWER - 37.0 dBm

Ce - 440.2 ms

Cpp - 160.1 ms

Tr - 48.0 sec

Bitrate - 399.9 b/s

** Message **

FFH FEH 2FH 5AH FFH

91H FCH 00H 00H 00H

07H 82H 07H C0H

** BCH Correct **

** BEACON ID. **

B5FF23F80000000

** Data **

Short message

Country code 431

Protocol Flag 1

Protocol Code Bin.111

Homing dev 0 0

Homing

Fo. - 121497.67 kHz

POWER - 17.2 dBm

MOD. - 93. %

* * * *

406 Beacon test

Fo - 406036.17 KHz

POWER - 37.3 dBm

Ce - 440.2 ms

Cpp - 160.1 ms

Tr - 49.2 sec

Bitrate - 399.9 b/s

** Message **

FFH FEH 2FH 5AH FFH

90H 80H 00H 00H 00H

02H 86H D6H 00H

** BCH Correct **

** BEACON ID. **

B5FF21000000000

** Data **

Short message

Country code 431

Protocol Flag 1

Protocol Code Bin.111

Homing dev 0 0

Homing

Fo. - 121497.67 kHz

POWER - 17.2 dBm

MOD. - 93. %

* * * *

406 Beacon test

Fo - 406036.17 KHz

POWER - 37.0 dBm

Ce - 440.2 ms

Cpp - 160.1 ms

Tr - 47.7 sec

Bitrate - 399.9 b/s

** Message **

FFH FEH 2FH 5AH FFH

90H 84H 00H 00H 00H

01H CBH 87H 40H

** BCH Correct **

** BEACON ID. **

B5FF21080000000

** Data **

Short message

Country code 431

Protocol Flag 1

Protocol Code Bin.111

Homing dev 0 0

Homing

Fo. - 121497.67 kHz

POWER - 17.2 dBm

MOD. - 93. %

付2-2

(5) リターンリンクテスト コマンド=”3” Change Interval 406MHz TX

(4) リターンリンクテスト コマンド=”2”

406MHz TX Control パラメータ値 “1” パラメータ値 “0” * * * *

406 Beacon test

Fo - 406036.17 KHz

POWER - 37.3 dBm

Ce - 440.2 ms

Cpp - 160.1 ms

Tr - 47.7 sec

Bitrate - 399.9 b/s

** Message **

FFH FEH 2FH 5AH FFH

90H 88H 00H 00H 00H

04H 1CH 74H 80H

** BCH Correct **

** BEACON ID. **

B5FF21100000000

** Data **

Short message

Country code 431

Protocol Flag 1

Protocol Code Bin.111

Homing dev 0 0

Homing

Fo. - 121497.67 kHz

POWER - 17.2 dBm

MOD. - 93. %

* * * *

406 Beacon test

Fo - 406036.17 KHz

POWER - 37.0 dBm

Ce - 440.2 ms

Cpp - 160.0 ms

Tr - 148.2 sec

Bitrate - 399.8 b/s

** Message **

FFH FEH 2FH 5AH FFH

90H 8CH 00H 00H 00H

07H 51H 25H C0H

** BCH Correct **

** BEACON ID. **

B5FF21180000000

** Data **

Short message

Country code 431

Protocol Flag 1

Protocol Code Bin.111

Homing dev 0 0

Homing

Fo. - 121497.67 kHz

POWER - 17.2 dBm

MOD. - 93. %

* * * *

406 Beacon test

Fo - 406036.17 KHz

POWER - 37.0 dBm

Ce - 440.2 ms

Cpp - 160.1 ms

Tr - 52.0 sec

Bitrate - 399.9 b/s

** Message **

FFH FEH 2FH 5AH FFH

90H 8CH 00H 00H 00H

07H 51H 25H C0H

** BCH Correct **

** BEACON ID. **

B5FF21180000000

** Data **

Short message

Country code 431

Protocol Flag 1

Protocol Code Bin.111

Homing dev 0 0

Homing

Fo. - 121497.67 kHz

POWER - 17.2 dBm

MOD. - 93. %

付2-3

(6) リターンリンクテスト コマンド=”4 “ 121.5MHz TX Control

パラメータ値:”1” パラメータ値:”0”

(7) リターンリンクテスト コマンド=”5”

Shift Location Data * * * *

406 Beacon test

Fo - 406036.16 KHz

POWER - 37.3 dBm

Ce - 440.2 ms

Cpp - 160.1 ms

Tr - 49.1 sec

Bitrate - 399.9 b/s

** Message **

FFH FEH 2FH 5AH FFH

90H 90H 00H 00H 00H

06H 05H EBH C0H

** BCH Correct **

** BEACON ID. **

B5FF21200000000

** Data **

Short message

Country code 431

Protocol Flag 1

Protocol Code Bin.111

Homing dev 0 0

Homing

Fo. - 121497.70 kHz

POWER - 17.2 dBm

MOD. - 93. %

* * * *

406 Beacon test

Fo - 406036.18 KHz

POWER - 37.0 dBm

Ce - 440.2 ms

Cpp - 160.1 ms

Tr - 48.5 sec

Bitrate - 399.9 b/s

** Message **

FFH FEH 2FH 5AH FFH

90H 90H 00H 00H 00H

06H 05H EBH C0H

** BCH Correct **

** BEACON ID. **

B5FF21200000000

** Data **

Short message

Country code 431

Protocol Flag 1

Protocol Code Bin.111

Homing dev 0 0

Homing

Fo. - 121197.96 kHz

POWER - 0.0 dBm

MOD. - 9. %

* * * *

406 Beacon test

Fo - 406036.16 KHz

POWER - 37.0 dBm

Ce - 440.2 ms

Cpp - 160.1 ms

Tr - 52.0 sec

Bitrate - 399.9 b/s

** Message **

FFH FEH 2FH 5AH FFH

90H 94H 00H 00H 00H

05H 48H BAH 80H

** BCH Correct **

** BEACON ID. **

B5FF21280000000

** Data **

Short message

Country code 431

Protocol Flag 1

Protocol Code Bin.111

Homing dev 0 0

Homing

Fo. - 121497.67 kHz

POWER - 17.2 dBm

MOD. - 93. %

付2-4

(8) リターンリンクテスト コマンド=”6” Confirm Alert

(9) リターンリンクテスト コマンド=”7”

Notify Alert Reception

(10) リターンリンクテスト

コマンド=”8” Show Fixed Message

* * * * 406 Beacon test

Fo - 406036.17 KHz

POWER - 37.5 dBm

Ce - 440.2 ms

Cpp - 160.1 ms

Tr - 51.7 sec

Bitrate - 399.9 b/s

** Message **

FFH FEH 2FH 5AH FFH

90H 98H 00H 00H 00H

00H 9FH 49H 40H

** BCH Correct **

** BEACON ID. **

B5FF21300000000

** Data **

Short message

Country code 431

Protocol Flag 1

Protocol Code Bin.111

Homing dev 0 0

Homing

Fo. - 121497.67 kHz

POWER - 17.2 dBm

MOD. - 93. %

* * * *

406 Beacon test

Fo - 406036.17 KHz

POWER - 37.0 dBm

Ce - 440.2 ms

Cpp - 160.0 ms

Tr - 51.1 sec

Bitrate - 399.8 b/s

** Message **

FFH FEH 2FH 5AH FFH

90H 9CH 00H 00H 00H

03H D2H 18H 00H

** BCH Correct **

** BEACON ID. **

B5FF21380000000

** Data **

Short message

Country code 431

Protocol Flag 1

Protocol Code Bin.111

Homing dev 0 0

Homing

Fo. - 121497.67 kHz

POWER - 17.2 dBm

MOD. - 93. %

* * * * 406 Beacon test

Fo - 406036.16 KHz

POWER - 37.3 dBm

Ce - 440.2 ms

Cpp - 160.1 ms

Tr - 49.2 sec

Bitrate - 399.9 b/s

** Message **

FFH FEH 2FH 5AH FFH

90H A0H 00H 00H 00H

02H 36H D5H 40H

** BCH Correct **

** BEACON ID. **

B5FF21400000000

** Data **

Short message

Country code 431

Protocol Flag 1

Protocol Code Bin.111

Homing dev 0 0

Homing

Fo. - 121497.67 kHz

POWER - 17.2 dBm

MOD. - 93. %

付2-5

(11) リターンリンクテスト コマンド=”9”

Simple Question

(12) リターンリンクテスト

コマンド=”10” Change Frequency CH

* * * * 406 Beacon test

Fo - 406036.16 KHz

POWER - 37.0 dBm

Ce - 440.2 ms

Cpp - 160.1 ms

Tr - 47.7 sec

Bitrate - 399.9 b/s

** Message **

FFH FEH 2FH 5AH FFH

90H A4H 00H 00H 00H

01H 7BH 84H 00H

** BCH Correct **

** BEACON ID. **

B5FF21480000000

** Data **

Short message

Country code 431

Protocol Flag 1

Protocol Code Bin.111

Homing dev 0 0

Homing

Fo. - 121497.67 kHz

POWER - 17.2 dBm

MOD. - 93. %

* * * *

406 Beacon test

Fo - 406036.17 KHz

POWER - 37.3 dBm

Ce - 440.2 ms

Cpp - 160.0 ms

Tr - 52.3 sec

Bitrate - 399.8 b/s

** Message **

FFH FEH 2FH 5AH FFH

90H A8H 00H 00H 00H

04H ACH 77H C0H

** BCH Correct **

** BEACON ID. **

B5FF21500000000

** Data **

Short message

Country code 431

Protocol Flag 1

Protocol Code Bin.111

Homing dev 0 0

Homing

Fo. - 121497.67 kHz

POWER - 17.2 dBm

MOD. - 93. %

付2-6

付3-1

付属資料3:海外動向調査資料(CNES 関連)

海外動向調査時に CNES(フランス国立宇宙センター)訪問時の写真(図付 3-1~図付

3-2)と打ち合わせ資料を添付する。なお、この CNES の資料はもとのサイズで添付

CD-ROM に収録してある。

図付 3-1CNES パリ事務所

図付 3-2フランス MCC 内部(トゥールーズ)

付3-2

付3-3

付3-4

付3-5

付3-6

付4-1

付属資料4:海外動向調査資料(プレゼン資料)

日本から打ち合わせのため持参したプレゼンテーション資料である。

PLB & Return Link development in Japan

Sadatoshi Koike

ARIB Consultant

Current Situation

PLB cannot be used in Japan.

Increasing demand of PLB from mountain climbing and small boat societies.

Working Group has been established in ARIB to discuss the issues related to PLB since 2007.

Working Group Members

Government– Japan Coast Guard

– Police Department

– Fire Department

– Marine Department

– Telecommunication Authority

Non-Governmental Organization– ARIB (Association of Radio Industries and Business)

– Potential User Groups (Mountain Climbing, Small Boats, Broadcastcompanies, etc.)

– Consultants

Manufactures– Taiyo Musen

– JRC

– Furuno

Process to Adopt PLB

National Regulations need to be amended.

National Technical Standards for PLB need to be prepared.– Technical Standards = International Standards + Domestic

Requirements

– What kinds of domestic requirements should be added?

– There has been many arguments since establishment of the Working Group. (Particularly GPS Mandatory ?)

Issues raised in WG

Alerts Distribution– Who should be responsible for PLB alerts? – Coast Guard cannot be responsible for PLB.– Police? Fire Department? Still big arguments among the government

bodies.

False Alerts Management– Governments say “unless false alerts are managed somehow, PLB

should not be allowed in Japan”.– Return Link function should be considered as soon as Galileo satellites

have been launched.

National PLB Database– Who should maintain the database?

Coast Guard? Police? Fire? Telecom? Manufacturer? IBRD?

– How the accuracy of the database should be ensured?

Locating of the persons in distress– Police says “accurate location is needed to find the person on

mountain.”– Doppler position is not enough on mountain. Local Police does not have

121.5 MHz homing system.– GPS should be mandatory in the beacon standard.

Recognition of Return Link in WG

It will be useful to identify false alerts.

It may be possible to remotely control transmissions of beacons.

Short message may be exchanged.

It will be useful not only for PLB, but also for EPIRB and ELT.

付4-2

Some Ideas on Return Link Commands

Stop transmission when the alert is identified as a false alert;

Stop transmission when the person in distress has been rescued;

Change transmission interval once distress position has been fixed to save the battery;

Inform persons in distress that rescue operation has been commenced;

Confirm that transmission is real or false, Asking “Are you really in distress?”;

Switch on or off the 121.5 MHz homing signal in order to save the battery;

Change the beacon coding format so that the lower bits of GPS position can be transmitted in order to obtain accurate position;

Development of Beacons with Return Link

Strong requests to manage false alerts utilizing RLM.

Telecom Authority requests ARIB to research and develop new beacons in cooperation with manufactures.

Expected time schedule for PLB & Return Link

2007 ---

– An Informal Working Group on PLB has been established in ARIB.

2008 ---

– Telecom Authority officially authorized the WG and request ARIB to research Return Link so that it can be provided in the future PLB.

– Coast Guard, Police, Fire Department and Telecom Authority formed a committee to discuss PLB alerts distribution process.

2009 ---

– Telecom Authority will prepare a national technical standards and draft amendments to the national radio regulations.

– Continues new beacon development to introduce Return Link.

2010 ---

– National regulations will enter into force.

– PLB will be officially allowed in Japan.

– Beacons with Return Link may be introduced.

Needs to Know

Current Status of Galileo Launch ?

Current Status of Return Link Beacons Development ?

Current Status of MEOSAR and MEOLUT development ?

Current Status of PLB in France ?– When 406 PLB has been authorized in France?

– How many PLBs have been used in France?

– How PLBs have been utilized in France?