車載用ecuデザイナーが 10 %削減... 1 車載用ecuデザイナーが 消費電力を10...
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車載用ECUデザイナーが 消費電力を10 %削減
はじめに自動車業界では、コネクテッドカー、自動運転(AD)、先進運転支援システム(ADAS)、
次世代の電気自動車といったイノベーションのペースが加速しています。これらのセグ
メントで進むイノベーションが、車載用エレクトロニクスの需要を押し上げています。
車載用電子制御装置(ECU)の数は増え続けています。ECUの制御には高度なプログラミ
ングが不可欠なため、各ECUの性能を向上させ、より多くの電子機能を使い、情報処理
を高速化することが必要となります。こうしたECUをデザインする際の新たな課題とし
て挙げられるのが、増加する消費電力と発熱への対処法です。
消費電力を削減して製品の信頼性を高めることに成功した、ある車載用ECUチップメー
カーを紹介します。デバイス電流波形アナライザの利用により、ECUのデザイン/開発
中に、パワーレールの電圧と電流の正確な測定/解析が可能になったことが、成功をも
たらす要因となりました。
事例企業: • 車載用ECUチップメーカー
主要な課題: • 消費電力とそれに伴う 発熱の削減
• 複雑なADASシステムに おける製品信頼性の確保
ソリューション: • CX3300Aシリーズ デバイス電流波形 アナライザ
結果: • 効果的な熱設計によって 消費電力を10 %削減
• パワーレールの電圧と 電流の正確な測定/解析を 実現
C A S E S T U D Y
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主要な課題:ECUシステムのデザインと開発ECUシステムのデザインエンジニアは、消費電力とそれに伴う発熱の削減に取り組む際、さ
まざまな課題に直面します。
搭載されるECUの数が増加しているため、各ECUの消費電力を抑えることが不可欠です。AD
またはADASデザイン用のECUの消費電力は、特に当てはまります。どちらも大量の画像デー
タを取り扱うからです。熱設計も、付随する発熱の低減に役立つ重要な要素です。さらに、
エンジン停止時であっても動作中のECUの数は増えるため、待機消費電力の評価と削減も必
要となります。
低消費電力と効果的な熱設計を実現するには、平均電流の評価だけでは不十分です。ECUの
消費電力を最適化するには、電源から流れるダイナミック電流とそのピーク電流の、事象ご
との正確な測定と解析が求められます。
そのほかにも、複雑なシステムの製品信頼性を確保するには、問題の定量的な解析とデバッ
グが課題となります。
問題解析では、オシロスコープによる電圧波形の観察が、一般的手法として用いられます。
ただし、電圧波形だけでは問題の特定が難しくなります。そのため問題を特定する別の方法
として、電流の測定と解析が行われます。この処理は、ECUのシステムオンチップ(SoC)と特
定用途向け集積回路(ASIC)のデバッグおよび障害解析で発生します。
ECUには、車両の広い内部空間内の過酷な環境で機能することが求められます。問題が発生
する可能性があるのは、より温度の高い場所やさまざまな条件下にある、クリーンな評価環
境から外れた場所です。
電圧と電流の両方を測定することで、定量的な問題解析とデバッグが不可欠な、複雑なシス
テムの製品信頼性が確保されます。
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ソリューション:詳細な電流プロファイリング電流波形を測定するには、通常、デジタルマルチメータ(DMM)、または電流プローブやシャ
ント抵抗を組み合わせたオシロスコープを使用します。ただし、DMMでは帯域幅とサンプリ
ングレートの制限、オシロスコープでは感度の制限とノイズフロアの増加がネックとなりま
す。これらの測定器は、電流波形から実際の動作を説明するための十分な情報を捕捉できま
せん。情報が限られるため、検証とデバッグに時間がかかります。
温度テストなどの環境テストでは、ECUをチャンバー内に配置するため、プローブ延長が不
可欠です。解析に必要な情報はノイズに隠れています。ケーブルを延長すると、ノイズフロ
アが増加します。このため、定量的な評価/デバッグ処理が困難になります。
Keysight CX3300シリーズ デバイス電流波形アナライザを使用することで、ECUチップメー
カーは、電流波形の測定と解析を単一の測定器で正確に実行できるようになりました。この
ソリューションは、最大200 MHzの帯域幅、最大1 GSa/sのサンプリングレート、150 pA~
100 Aの広い電流範囲を備えています。14ビット/16ビットの広いダイナミックレンジと、最
大256 Mポイント/チャネルの大容量メモリ長も備えています。さらに、高速ピーク電流や
その他の過渡現象を含めた、各事象のダイナミック電流の詳細を捕捉することができます。
CX3300に搭載された便利な波形解析機能が、このチップメーカーでのECUの迅速な検証と
デバッグを可能にしました。その際、CX3300によって、電圧波形、デジタル信号、電流波形が、
微妙な変化も含めて同時に捕捉されます。この処理のおかげで、チップメーカーでは時間と
労力の節約が実現され、チップデザインのデバッグ作業が容易になりました。以前、デザイ
ン検証にオシロスコープを使用していたときには、電圧波形だけからは、これらの微妙な逸
脱を表示することができませんでした。
また、チップメーカーでは、Keysight CX1105A 超低雑音差動センサを温度テスト専用の
1 mケーブルと組み合わせて使用しました。CX1105Aは、小型のオンボードシャント抵抗を
使用して差動電圧を測定します。このケーブルを用いることで、温度テストでも、低ノイズ
フロアを維持しながら、正確な電流波形評価を行うことができました(図1を参照)。
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図1. 専用の1 mケーブル付きのCX1105Aにより、全温度範囲で1 mV未満の小さな変動の特性評価を 行うことができます
結果:検証時間の短縮車載用ECUチップメーカーは、CX3300Aを使用して、正確な消費電流と高温での大きなピー
ク電流の発生を評価することに成功しました。異常の原因を特定して解決したことで、同社は、
消費電力を10 %削減しました。
チップメーカーではこれまで、ECUのスリープ電流の評価にはDMMを、アクティブ電流の評
価には、差動プローブを組み合わせたオシロスコープを使用していました。しかし、電流プ
ロファイルを作成するには膨大な量のデータを解析する必要があったため、これはエンジニ
アにとって時間のかかる作業でした。高温で発生する大きなピーク電流の解析でも、さまざ
まな課題を抱えていました。ノイズフロアが大きくなるとピーク電流が表示されず、問題を
定量的に解析することが困難となるためです。問題の原因の特定は、エンジニアにとって容
易な作業ではありませんでした。
スリープからアクティブへ遷移する電流波形を1台の測定器(CX3300A)で捕捉できるように
なり、処理は簡素化されました。チップメーカーは、この測定器の自動電力/電流プロファ
イラーを使用して、電源から電流がどのように流出するかを事象ごとに即座に解析し、この
情報を利用して消費電力を削減することができました(図2を参照)。その結果、より効果的な
熱設計が実現しました。
1 mV/div
測定帯域幅:~20 MHz
C1105-61703温度テスト用ツイストペア・シールド・ケーブル
C1105-61703温度テスト用ツイストペア・シールド・ケーブル
5本書の情報は、予告なしに変更されることがあります。 © Keysight Technologies, 2020, Published in Japan, January 29, 2020, 7120-1018.JA
詳細情報:www.keysight.co.jpキーサイト・テクノロジー株式会社本社〒192-8550 東京都八王子市高倉町9-1
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また、このチップメーカーは、CX3300によって捕捉されたクリーンな電流波形を使用して、
さまざまな温度条件によるピーク電流の違いを定量的に評価できるようになりました。エン
ジニアは、その後、電流波形からSoCの内部状態を類推することができました。その結果、
動作モードの遷移でピーク電流が大きくなる原因がすぐに特定され、問題の迅速な解決によ
り、製品信頼性の向上が実現されました。
図2. 正確なダイナミック電流波形に基づく迅速な電流プロファイル解析により、デバッグ効率が向上します
各セグメントの主なパラメータを自動測定
プロファイルライン
電流プロファイラー
測定帯域幅:~20 MHz
パワーレールの電流
パワーレールの電圧
5 mV/div
2 V/div
1 ms/div