計量経済学講義 - u-toyama.ac.jp · #6 10月20日金 休講 #21 12月12日火...
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計量経済学 講義第 1 回 ガイダンス&イントロダクション
2017 年 10 月 3 日(火)3 限担当教員: 唐渡 広志(からと・こうじ)
研究室: 経済学研究棟4階432号室
email: [email protected]: http://www3.u-toyama.ac.jp/kkarato/
1
授業の進め方
講義とパソコン実習を組み合わせておこな
う。
講義内容確認のための「演習問題」を出
す。
演習問題は回収して添削後に返却する。
演習問題の提出期限は 1 週間。
2
教科書・参考書唐渡広志 (2013)『44の例題で学ぶ計量経済学』オーム社 ISBN: 978-4-274-06931-4
電子版 https://estore.ohmsha.co.jp/titles/978427406931P
3
その他の参考書
白砂堤津耶 (2015)『[例題で学ぶ]初歩からの統計学第2版』日本評論社
浅野 (2017) 『挫折しない統計学入門 数学苦手意識を克服する』オーム社
白砂 (2007)『 [例題で学ぶ]初歩からの計量経済学』日本評論社
山本・竹内 (2013) 『入門 計量経済学 –Excel による実証分析へのガイド –』新世社
山本 (2015) 『実証分析のための計量経済学』中央経済社
本橋 (2015) 『Rで学ぶ統計データ分析』オーム社
星野・田中 (2016) 『Rによる実証分析―回帰分析から因果分析へ―』オーム社
受講上の注意 [1]受講日
火曜 3 限 13:00-14:30 + 金曜 1 限 8:45-10:15
受講場所(次回以降)
経済学部4階端末室(試験もここ)
オフィス・アワー
火曜4限
用意するもの
例題や練習問題を授業や宿題で扱うので必ず教科書を用意(試験持込可)
総合情報基盤センターの ID や pass の確認
4
受講上の注意 [2]統計学,経済学入門の単位を取得済みであることが望ましい。
統計学を履修していない人は,今期に同時並行で履修すること。
統計学開講日:火1 + 水2 または 金6 + 金7
ミクロ経済学I,マクロ経済学Iの知識があるとなお望ましい(計量経済学は統計学と経済学の知識が両方必要)。
履修制限
PC台数 50人程度
演習問題を毎回実施する。
提出期限に注意(1週間以内)
スライドの資料を配布するが,すべての情報が書かれているわけではないので,必ずノートをとる。また自分で計算してみる(手動またはパソコンで)。
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成績評価方法
評価対象a. 演習問題提出 20%b. 宿題提出 10%c. 中間試験 20%d. 期末試験 50%
評価基準評価対象のウェイト a: 20%, b: 10%, c: 20%, d: 50%
総合得点:評価対象にウェイトをつけて100点に換算
評価• S(秀) 総合得点≧ 90点 (2年生)
• A(優) 総合得点≧ 80点 (3年生以上)
• B(良) 総合得点≧ 70点
• C(可) 総合得点≧ 60点
• D(不可) 総合得点 < 60点
6
(参考)過去の期末試験の得点分布
2014年度 2013年度0以上10点未満 3 0
10 – 20 1 020 – 30 1 030 – 40 0 140 – 50 1 050 – 60 3 760 – 70 0 370 – 80 2 980 – 90 8 7
90 – 100 17 21
7
計量経済学(Econometrics)の目的計量経済学
経済データを用いて経済理論を数量化し統計学的に検証する方法論を研究する分野
統計学で学ぶ「回帰分析」を利用する
経済学 + 統計学 + データ解析
一方が原因となって,他方が結果として決まる関係をデータから捉えて検証する
原油価格が上昇すると,東海北陸自動車道の交通量は何台減るか?
タバコの値段が上がると,政府の税収はどのように変化するか?
ある産業の規制改革によって消費者余剰(利用者メリット)はどれぐらい増えるか?
既婚女性の子供の数が増えると,女性の就業確率はどのように変化するか?
年齢,性別,所得の違いは人々の幸せにどのような影響を与えているだろうか
8
講義の概要と最終目標
経済データの理解と整理
統計的指標の理解(データの特徴をつかむ 平均,分散,相関係数,・・・)
データ間の関係性の検証
回帰分析(基本と応用)
統計的解釈
パソコンで計算させた分析結果の意味を理解できるようになる
パソコンで計算させた分析結果の意味を他人に説明できるようになる
分析道具としての計量経済学を駆使して,卒業論文やインゼミなどに活かす
9
講義予定表
#1 10月3日火 イントロダクション #16 11月24日金 ダミー変数1#2 10月6日金 経済データ1 #17 11月28日火 ダミー変数2#3 10月10日火 経済データ2 #18 12月1日金 ダミー変数3#4 10月13日金 母集団と標本1 #19 12月5日火 Rによる計量経済分析1#5 10月17日火 母集団と標本2 #20 12月8日金 Rによる計量経済分析2#6 10月20日金 休講 #21 12月12日火 Rによる計量経済分析3#7 10月24日火 母集団と標本3 #22 12月15日金 確率分布1#8 10月27日金 回帰分析1 #23 12月19日火 確率分布2#9 10月31日火 回帰分析2 #24 12月22日金 確率分布3#10 11月1日水 回帰分析3 #25 1月5日金 最小2乗推定量1#11 11月7日火 回帰分析4 #26 1月16日火 最小2乗推定量2#12 11月10日金 仮説検定1 #27 1月19日金 最小2乗推定量3#13 11月14日火 仮説検定2 #28 1月23日火 回帰モデルの診断と選択1#14 11月17日金 仮説検定3 #29 1月26日金 回帰モデルの診断と選択2#15 11月21日火 中間試験と解説 #30 1月30日火 回帰モデルの診断と選択3
10
統計学の復習
散布図
11
19601970
1980
1990
2000
2010
0
20
40
60
80
100
0 20 40 60 80 100
Y: 婚
姻率
(%)
X: 労働力率(%)
散布図
X Y年次 労働力率% 婚姻率%1960 50.1 76.41970 44.9 80.31980 49.4 74.51990 61.2 57.82000 69.6 43.52010 72.4 37.1
25-29歳の女性:1960-2010
データ出所:総務省「国勢調査」
労働力率 = 労働力人口 / 人口婚姻率 = 有配偶人口 / 人口
19601970
19801990
2000
2010
0
20
40
60
80
100
0 20 40 60 80 100
Y: 婚
姻率
(%)
X: 労働力率(%)
回帰分析
12
XY 6.16.153
回帰分析:データ間の関係性を直線で表現する方法
【式の意味】:女性の労働力率が 1 %増えると,婚姻率は 1.6% 低下する。
【何を学ぶのか】• 153.6(切片), –1.6 (傾き)という数値はどのようにして求められたものか?• この数値は信用できるものか?(統計的有意性があるか)→仮説検定• 婚姻率低下の原因を労働力率の上昇だけに限定することは正しいか?• 結婚するかしないか,働くか働かないか,どちらの選択が先か?それとも同時か?
を求めることXY
回帰分析の例1
13
50
60
70
80
90
0 1 2 3 4 5
Y : 平
均寿
命
X : 一人当たりGDP [百万円]
XY 1.41.65
日本の一人あたりGDPと平均寿命1955-2011年
0100200300400500600700800900
0 20000 40000 60000
Y: 年
収(
万円
)
X: 従業員一人当たり売上高(万円)
非鉄金属メーカー30社の従業員一人当たり売上高と年収
2012年
XY 006.0488
回帰分析の例2
14
9.4
9.6
9.8
10.0
10.2
10.4
10.6
10.8
1900 1920 1940 1960 1980 2000 2020男
子10
0m世
界記
録(秒
)新記録達成の年次
男子100m走の新記録達成年次と世界記録
XY 008.08.25
y = -7.9662x + 310.06
0
50
100
150
200
250
300
350
0 10 20 30
カゼ
薬の
支出
額(
月額
[円
],
世帯
)
月間平均気温(℃)
月間平均気温とカゼ薬の支出額1月-12月
XY 8310
回帰分析の例3
15
0
20
40
60
80
100
120
0 2 4 6 8
販売
価格
(万
円)
走行距離(万km)
中古車(トヨタ,ヴィッツ,26台)の走行距離と販売価格
XY 6.50.97
0.0
0.5
1.0
1.5
2.0
2.5
3.0
3.5
0 10 20 30 40家
賃(
万円
/月)
面積(m2)
富山市五福・寺町のアパートの面積と家賃(21件)
XY 07.010.1
経済理論と計量経済学需要関数
「価格」と「所得」が需要量を決定する
二つの原因(価格と所得) 一つの結果(需要量)
16
→ b や c の符号をデータから検証する
所得価格数量需要関数 cba:
価格
数量
所得 = Aの需要曲線
所得 = Bの需要曲線
A < B
原因は一つだけではないかもしれない
ウォーミングアップ(統計学)
17
直線の形は何によって決まっているか
18
0 20 40 60 80 100
010
2030
4050
x1
y1
0 20 40 60 80 100
010
2030
4050
x2
y2
A B
横軸の値 (x1, x2): どちらも平均は50ぐらい。x1は「30から70の間」に,x2 は「10から90の間」ぐらいに散らばっている
縦軸の値 (y1, y2) :どちらも平均は25ぐらい。y1 と y2 はどちらも「10から40の間」ぐらいに散らばっている
x1, y1 x2, y2
平均の性質 (1) 各データの平均値からの距離
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所得[万円]
所得-所得の平均
A 31 31 – 33 = – 2 B 36 36 – 33 = + 3C 25 25 – 33 = – 8D 40 40 – 33 = + 7合計 132 0平均 33
A,B,C,D 4人の1ヶ月あたり所得
平均 33万円
「平均」は左右のバランスがとれる位置にある(バランスがとれるような値のことを平均とよんでいる)
8
20 25 30 35 40 45 50
25 31 36 40
C A B D
平均の性質:各データから平均値を引いて,すべて
合計すると,その値は必ずゼロになる
言い換えると:各データからの距離を合計してちょう
どゼロになるような値が「平均」である
+ 3
平均の性質 (2) :各データの平均値からの距離
20
グループ1 グループ2所得 所得-所得の平均 所得 所得-所得の平均
A 27 27 – 36 = – 9 18 18 – 36 = – 18B 44 44 – 36 = + 8 24 24 – 36 = – 12C 38 38 – 36 = + 2 14 14 – 36 = – 22D 35 35 – 36 = – 1 88 88 – 36 = + 52合計 144 0 144 0平均 36 36
4: DCBAM所得の平均
04
:
MDCBAMDMCMBMA
所得の平均」の和「所得
どんなデータでも必ず成り立つ
平均の性質 (3)
21
20 40 60 80
20 40 60 80
グループ1 の所得分布
グループ2 の所得分布
平均の値が同じでも,中身(データの散らばり方)が全く違っている.
データのばらつき
平均からの距離( = 偏差)が遠いほど,データの「ばらつき」大きい.
22
0 20 40 60 80 100
0 20 40 60 80 100
グループ1の所得分布(200人),平均=36万円
グループ2の所得分布(200人),平均=36万円
格差の小さい社会
格差の大きい社会
「格差」を具体的に数値で表現するには?
平均からの距離の2乗の和(偏差2乗和)
【偏差】 【偏差の2乗】所得 所得-M (所得-M)2
A A – M (A – M)2
B B – M (B – M)2
C C – M (C – M)2
D D – M (D – M)2
合計 A+B+C+D 0 偏差2乗和
平均 M
23
偏差を合計すると必ず0になるので,2乗してから合計している。(2乗すると符号は必ず正になる)
偏差2乗和はデータの「ばらつき」を示している。
4DCBAM
所得の平均
偏差2乗和
24
所得 所得-所得の平均 (所得-所得の平均)2
A 27 -9 81B 44 8 64C 38 2 4D 35 -1 1
合計 144 0 150平均 36
E 18 -18 324F 24 -12 144G 14 -22 484H 88 52 2704
合計 144 0 3656平均 36
20 40 60 80
20 40 60 80
グループ1 の偏差2乗和 = 150
グループ2 の偏差2乗和 = 3656
データの「ばらつき」の指標は偏差(平均からの距離)の2乗の合計値で示すことができる。
関係性を見る
25
40
50
60
70
80
90
40 50 60 70 80
婚姻
率[%
]
X : 労働力率[%]
労働力率と婚姻率25-29歳の女性(1960-2010)
60
70
80
90
0 1 2 3 4 5
平均
寿命
一人あたりGDP [100万円]
一人あたりGDPと平均寿命(1955-2011)
Y
の平均X
の平均Y
X が増えると Y が減る関係データは II と IV の領域にある
III
III IV
III
III IV
X が増えると Y が増える関係データは I と III の領域にある
の偏差Y
の偏差X
X と Y の関係性を見る場合も「偏差」が重要な役割を果たす
偏差の積和
26
30
40
50
60
70
80
90
40 50 60 70 80
Y 婚
姻率
[%]
X 労働力率[%]
III
III IV
領域 I: Xの偏差×Y の偏差 > 0
領域 II: Xの偏差×Y の偏差 < 0
領域 III: Xの偏差×Y の偏差 > 0
領域 IV:Xの偏差×Y の偏差 < 0
X Y年次 労働力率% Xの偏差 婚姻率% Yの偏差 Xの偏差×Yの偏差1960 50.1 -7.8 76.4 14.8 -115.9 1970 44.9 -13.0 80.3 18.7 -243.7 1980 49.4 -8.5 74.5 12.9 -110.1 1990 61.2 3.3 57.8 -3.8 -12.4 2000 69.6 11.7 43.5 -18.1 -211.2 2010 72.4 14.5 37.1 -24.5 -354.4 合計 347.6 0 369.6 0 -1047.8平均 57.9 0 61.6 0 -174.6
偏差の積和
データ理解の基本
データの「平均」だけが重要ではない。「ばらつき」も重要。
「ばらつき」の大きさは「偏差」が関係している。
データの関係性を見る場合も「偏差」が重要な意味を持っている。
直線の傾きは「Xの偏差2乗和」と「XとYの偏差の積和」が大きく関係していそうだ。
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次回講義の場所
次回 10月6日(金)1 限は
経済学部4階端末室
で行う。
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