超高齢社会でのケアの質向上に向けたaiへの期待と課題 諏訪...

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- 46 - 31 61 61 42 30 34 18 24 1988年 千葉大学看護学部卒業 1990年 千葉大学大学院看護学研究科修士課程修了 修士(看護学) 1994年 東京大学大学院医学系研究科後期博士課程 保健学専攻修了 博士(保健学) 1994-1995年 東京医科歯科大学医学部保健衛生学科看護 学専攻成人看護学助手 1995-2001年 東京女子医科大学看護学部老年看護学講師 2001-2010年 認知症介護研究・研修東京センター研修部 主任研修主幹 2010年- 千葉大学大学院看護学研究科訪問看護学領域 教授 日本老年看護学会評議員・老年看護学会誌編集委員,日本 認知症ケア学会理事・日本認知症ケア学会誌編集委員長, 日本老年精神医学会評議員,日本在宅ケア学会評議員 6月6日(木) 9:30 ~ 11:30 第2会場/仙台国際センター会議棟 2F「橘」 合同シンポジウム4 AI(人工知能)は超高齢社会の課題を救えるのか 超高齢社会でのケアの質向上に向けたAIへの期待と課題 諏訪 さゆり 千葉大学大学院看護学研究科訪問看護学領域 ケア専門職にとってアセスメントとケアプランは,容易いものではない.さまざまな 情報を収集し,情報間の関連性を演繹法や帰納法の思考を駆使して高齢者本人にとって の意味を解釈することで,意思・意向,個別性を尊重したアセスメントとケアプランが 可能になる.AI(Artificial Intelligence)は,機械学習,ディープラーニングに代表さ れる人の知的作業を模倣する各種ソフトやシステムのことである.高齢者を含めた障が い者のための補助デバイスとソフトウエアを意味するAssistive Technologyでは,非接 触・非侵襲のセンシング技術等によって生体情報や言語情報,画像データを収集するこ とが可能である.摂取した食事量・水分量や栄養素,身体の緊張,姿勢,高齢者と家族, ケア専門職の語りなどがデータ化されるようになることで,AIによるアセスメントとケ アプランが現実のものとなるだろう.AIが,先入観や偏見,思い込みに翻弄されやすい 人間よりも,的確にアセスメントとケアプランを実施できるようになる日がやってくる と期待したい. しかし現在のAIブームを背景としたAIへの高すぎる期待値は,失望ももたらしやす い.AIブームを超えて,真にAIを高齢者ケアに生かせるようになるためには,家庭や地 域での高齢者の日常生活のありようを踏まえて何をデータ化すればよいのか,AIを導入 することで,どのような倫理的課題に直面することになるのか,AIは高齢者と家族,地 域住民との人間関係を阻害することにならないのか,AIの導入によって生み出された時 間をどのように過ごすのかなどについて考える必要がある.開発者,研究者,ユーザー 候補者がそのための膨大な取り組みを,高齢者中心の理念から外れることなく,協働し て継続することが重要になる.AIとともに高齢者ケアや地域包括ケアシステムが進化& 深化できるかどうかは,そのような地道な取り組みにかかっている.

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Page 1: 超高齢社会でのケアの質向上に向けたAIへの期待と課題 諏訪 …域での高齢者の日常生活のありようを踏まえて何をデータ化すればよいのか,aiを導入

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第31回

日本老年学会総会第61回

日本老年医学会学術集会第61回

日本老年社会科学会大会第42回

日本基礎老化学会大会第30回

日本老年歯科医学会学術大会

第34回

日本老年精神医学会第18回

日本ケアマネジメント学会研究大会

第24回

日本老年看護学会学術集会

1988年 千葉大学看護学部卒業1990年 千葉大学大学院看護学研究科修士課程修了

修士(看護学)1994年 東京大学大学院医学系研究科後期博士課程

保健学専攻修了 博士(保健学)1994-1995年 東京医科歯科大学医学部保健衛生学科看護

学専攻成人看護学助手1995-2001年 東京女子医科大学看護学部老年看護学講師

2001-2010年 認知症介護研究・研修東京センター研修部主任研修主幹

2010年- 千葉大学大学院看護学研究科訪問看護学領域 教授

日本老年看護学会評議員・老年看護学会誌編集委員,日本認知症ケア学会理事・日本認知症ケア学会誌編集委員長,日本老年精神医学会評議員,日本在宅ケア学会評議員

6月6日(木) 9:30 ~ 11:30 第2会場/仙台国際センター会議棟 2F「橘」合同シンポジウム4 AI(人工知能)は超高齢社会の課題を救えるのか

超高齢社会でのケアの質向上に向けたAIへの期待と課題

諏訪 さゆり千葉大学大学院看護学研究科訪問看護学領域

 ケア専門職にとってアセスメントとケアプランは,容易いものではない.さまざまな情報を収集し,情報間の関連性を演繹法や帰納法の思考を駆使して高齢者本人にとっての意味を解釈することで,意思・意向,個別性を尊重したアセスメントとケアプランが可能になる.AI(Artificial Intelligence)は,機械学習,ディープラーニングに代表される人の知的作業を模倣する各種ソフトやシステムのことである.高齢者を含めた障がい者のための補助デバイスとソフトウエアを意味するAssistive Technologyでは,非接触・非侵襲のセンシング技術等によって生体情報や言語情報,画像データを収集することが可能である.摂取した食事量・水分量や栄養素,身体の緊張,姿勢,高齢者と家族,ケア専門職の語りなどがデータ化されるようになることで,AIによるアセスメントとケアプランが現実のものとなるだろう.AIが,先入観や偏見,思い込みに翻弄されやすい人間よりも,的確にアセスメントとケアプランを実施できるようになる日がやってくると期待したい. しかし現在のAIブームを背景としたAIへの高すぎる期待値は,失望ももたらしやすい.AIブームを超えて,真にAIを高齢者ケアに生かせるようになるためには,家庭や地域での高齢者の日常生活のありようを踏まえて何をデータ化すればよいのか,AIを導入することで,どのような倫理的課題に直面することになるのか,AIは高齢者と家族,地域住民との人間関係を阻害することにならないのか,AIの導入によって生み出された時間をどのように過ごすのかなどについて考える必要がある.開発者,研究者,ユーザー候補者がそのための膨大な取り組みを,高齢者中心の理念から外れることなく,協働して継続することが重要になる.AIとともに高齢者ケアや地域包括ケアシステムが進化&深化できるかどうかは,そのような地道な取り組みにかかっている.

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第31回

日本老年学会総会第61回

日本老年医学会学術集会第61回

日本老年社会科学会大会第42回

日本基礎老化学会大会第30回

日本老年歯科医学会学術大会

第34回

日本老年精神医学会第18回

日本ケアマネジメント学会研究大会

第24回

日本老年看護学会学術集会

大阪府豊中市出身.東京にて人事領域のITコンサルタントとして勤務後一部上場企業人事部へ.8か月間にわたり,仙台から東京・福岡まで,計400法人を超える介護事業所にてボランティアやインタビューを実施し,現場の働きがいに課題を感じ2013年,ウェルモを創業.経済産業省主催ジャパン・ヘルスケアビジネスコンテスト2019にて最多受賞.Forbes JAPAN 2018NEW INNOVATOR 日本の担い手99選出.

【講師歴】経済産業省 オープンデータラウンドテーブル / つながるデータで築く未来,総務省 データアカデミー / 地域ICT利活用普及促進セミナー,西南学院大学 人間科学部社会福祉学科 福祉情報演習II(産学官連携講義),文部科学省補助事業「成長分野を支える情報技術人材の育成拠点の形成(enPiT)※」介護産業IoT事例講義※平成30年度より「Society 5.0に対応した高度技術人材育成事業」に改称

6月6日(木) 9:30 ~ 11:30 第2会場/仙台国際センター会議棟 2F「橘」合同シンポジウム4 AI(人工知能)は超高齢社会の課題を救えるのか

AI(人工知能)によるケアマネジャーへの情報・知識支援システムの研究開発状況―ケアマネジャー 50.4%の不安を解決するために

鹿野 佑介株式会社ウェルモ‌代表取締役CEO

 現状のケアマネジメントは,ケアマネジャー個々のスキルレベルにその質が影響される.平成28年厚生労働省居宅介護支援事業所及び介護支援専門員の業務等の実態に関する調査研究では,ケアマネジャーの約50.4%が「自分の能力や資質に不安がある」と回答.原因は,ケアマネジャーの基礎資格が介護福祉士や看護師など多様であり,作成するケアプランの水準にばらつきがあること,さらにはケアマネジメントが体系的な学問になっていないこともその要因である.介護事業者の選定においても,ケアマネジャーや利用者が求める情報が存在せず,ケアマネジャー個人の知る範囲での選択に委ねられているという課題もある. そこで,当社ではAI(人工知能)によるケアマネジャーへの情報・知識支援システム

「ケアプランアシスタント(CPA)」を研究開発している.CPAの利活用によってケアマネジメントの質を向上し,利用者本位の介護サービス提供の実現を目指している. CPAでは,ケアマネジャーが要介護者の状態をパソコン上で入力すると,AIが課題候補と,それに応じたケアプラン第二表の文章案を提示.アセスメントのエビデンスや根拠と合わせて,最適な介護サービスも提案する.ケアマネジャーにとっては,作成の根拠となる知見を把握するとともに,根拠に基づいた精度の高いケアプラン作成が可能となる.CPAが提供する情報・知識は,ケアマネジャー本人の能力向上をも後押しする. 一方,CPAでは,実際の介護提供現場で質の高いサービスを提供できる確証が持てない.当社の「ミルモ」は,実際の介護事業者のサービス情報を蓄積,検索,活用,分析できる網羅性の高い介護サービス情報サイトである.ケアマネジャーは,CPAに基づく適切なケアプラン,ミルモが提供する情報を活用し,机上の空論ではない,地域に根差した質の高いケアマネジメントを実現できる.当社では,課題分析,ケアプランの策定,実際の介護事業者の手配までを一貫し,質を担保した形で提供することの実現を目指している.

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第31回

日本老年学会総会第61回

日本老年医学会学術集会第61回

日本老年社会科学会大会第42回

日本基礎老化学会大会第30回

日本老年歯科医学会学術大会

第34回

日本老年精神医学会第18回

日本ケアマネジメント学会研究大会

第24回

日本老年看護学会学術集会

1977年3月 東京女子大学文理学部心理学科卒業1977年4月 社団法人輿論科学協会(社会調査研究員)1981年5月 センチュリリサーチセンタ㈱(シンクタン

ク研究員・CRC総合研究所と社名変更)1994年3月 日本社会事業大学大学院社会福祉学研究科

修士課程修了1998年4月 岩手県立大学社会福祉学部福祉経営学科

講師

2002年9月 淑徳大学大学院社会学研究科博士後期課程満期退学

2006年7月 博士(心理学)取得(白百合女子大学)2008年4月 岩手県立大学社会福祉学部福祉経営学科

教授 現在に至る

6月6日(木) 9:30 ~ 11:30 第2会場/仙台国際センター会議棟 2F「橘」合同シンポジウム4 AI(人工知能)は超高齢社会の課題を救えるのか

介護・福祉分野でのAI活用への期待と課題―ICTを活用した生活支援型コミュニティづくりに取り組んできた立場から

小川 晃子岩手県立大学社会福祉学部社会福祉学科

 介護・福祉分野でどのようにAI活用が見込まれるかについては,厚生労働省の保健医療分野AI開発加速コンソーシアムでの検討が2017年7月から重ねられている.これを参考にすると,介護・福祉分野でのAI活用は主として①支援計画(ケアプラン)策定,②介助,③見守り,④コミュニケーション支援,それに加えて⑤(②から④を)統合する技術分野への期待が大きく,すでに実用化に向けての各種の取り組みが開始されている. AIを活用したケアプラン策定やケアの改善は,科学的裏付けに基づく介護や,介護の標準化に貢献することが期待できる.しかし,「AIが判断したから」という根拠が「おみくじ」のように無批判に導入されることは,科学的裏付けに基づく介護に逆行することにもなりかねず,個別性を尊重するパーソン・センタード・ケアに反する危険性もある.この課題を解決するためには,データ解析技術やAIへの知識をもつ介護・福祉人材を育てることが有効であろう. また,センサーやコミュニケーションロボット等のIoTをAIと併せて活用することは,高齢者の自立支援を促進する可能性を持っている.例えば,夜間排泄に関して離床を促し,ロボットの誘導でトイレへ行きベッドまで戻るという一連の排泄支援も描かれている.しかし,睡眠を中断し離床させることが,排尿による転倒転落事故を逆に増加させる可能性もあるかもしれないと考えると,排尿をトイレで行うという行動支援にとどまらず,転倒事故が起きたことを適切な機関や支援者にしらせ,支援を受けられる地域居住の体制整備が必要になってくる. さらに大きな課題は,在宅高齢者へのAI活用には住居の情報環境整備が前提となり,そこには地域格差が存在することである. このように課題を並べてみると,これまで筆者がICTの見守りと人的見守りを重層化する社会技術の開発に取り組んできたように,AI活用と地域包括ケアを重層化した取り組みを進めるための社会技術開発が社会的課題といえよう.

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第31回

日本老年学会総会第61回

日本老年医学会学術集会第61回

日本老年社会科学会大会第42回

日本基礎老化学会大会第30回

日本老年歯科医学会学術大会

第34回

日本老年精神医学会第18回

日本ケアマネジメント学会研究大会

第24回

日本老年看護学会学術集会

2002年 東京医科歯科大学歯学部卒業2006年 同大学大学院医歯学総合研究科修了 同大学歯学部附属病院義歯外来医員2008年 同大学全部床義歯補綴学分野助教 現在に至る2013年 - 2014年 マギル大学 Visiting professor

日本老年歯科医学会学術委員会日本補綴歯科学会補綴誌編集委員会日本咀嚼学会編集委員会日本磁気歯科学会臨床評価委員会日本口腔インプラント学会International Association for Dental ResearchInternational College of Prosthodontists

6月6日(木) 9:30 ~ 11:30 第2会場/仙台国際センター会議棟 2F「橘」合同シンポジウム4 AI(人工知能)は超高齢社会の課題を救えるのか

AIを用いた歯科診断システムの開発

金澤 学東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科高齢者歯科学分野

 現在,ウェアラブル端末やモバイル用アプリなどのデジタル技術の開発をはじめとした医療のデジタル化が進んでいるが,歯科医療の分野においても,デジタル化が進みつつある.特に,補綴歯科治療においては,現在では固定性歯冠補綴物の半分以上がデジタル技術を利用して作成されている.そして,このデジタル医療・歯科医療の進展とともに,ここ数年間でディープラーニングの発展によって大きく進化したAI(人工知能)技術の医療分野への活用が実現している.医科においては,遺伝子変異の検出を行い,治療薬を提示するAIや,がんの早期発見を行い,治療法を提案するAIなどが開発され,すでに臨床現場における利用が開始されている.一方,歯科の分野は,医科よりもAIの開発は少ない状況である.X線写真からう蝕や歯周病などを診断するAIが,主に海外でいくつか開発されているのが現在の状況であるが,今後一層,歯科のAIの開発・臨床現場での活用は進展すると思われる.日本における歯科のAIは,研究機関と企業の共同研究での開発を主体として進められ,昨年の大阪大学とNEC,今年の東北大学とdocomoによるプレスリリースは記憶に新しいと思われる. 海外の高齢社会におけるAIについて,中国のIT企業のAI医療分野への参入や,シンガポールのAIを活用した医療システム改革などが報道されている.日本は2010年に超高齢者社会を迎え,すでに9年が経過しようとしているが,超高齢社会の持つ諸問題への対策の一つとして,高齢者やその家族,そして歯科医師の支援となるAIの開発は急務であると思われる.本シンポジウムでは,海外・日本における歯科のAIの現状や超高齢社会の日本における歯科のAIの将来展望について話しながら,本学が現在取り組んでいる歯科のAIについても触れたいと思う.

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第31回

日本老年学会総会第61回

日本老年医学会学術集会第61回

日本老年社会科学会大会第42回

日本基礎老化学会大会第30回

日本老年歯科医学会学術大会

第34回

日本老年精神医学会第18回

日本ケアマネジメント学会研究大会

第24回

日本老年看護学会学術集会

2005年3月 奈良先端科学技術大学院大学博士(工学)2005年4月 奈良先端科学技術大学院大学研究員2005年10月 奈良先端科学技術大学院大学特任助教2007年10月 東京都老人総合研究所(現・東京都健康長寿医療センター研究所)研究員 現在に至る

6月6日(木) 9:30 ~ 11:30 第2会場/仙台国際センター会議棟 2F「橘」合同シンポジウム4 AI(人工知能)は超高齢社会の課題を救えるのか

脳FDG-PETを用いた認知症診断における機械学習の利用

坂田 宗之東京都健康長寿医療センター研究所神経画像研究チーム

 PET(ポジトロン断層撮像)はCTやMRIなど形態を主に計測するモダリティと異なり,体内に投与した放射性トレーサーの分布を計測することで生体機能の画像化が可能なモダリティである.異なる放射性トレーサーを使用することでそれぞれに異なる機能を計測可能であり,現在がん検診などで最も多く用いられている放射性トレーサーであるグルコースの類似化合物[18F]FDGは,脳を対象とした検査では糖代謝低下を放射能集積の低下として画像化するため,認知症診断においても大きな注目を集めている.また,脳FDG-PET画像では,アルツハイマー病や前頭側頭型認知症,レビー小体病など原因疾患によって脳局所の放射能集積低下パターンが異なるため,症状の進行度を評価するだけでなく,原因疾患の鑑別診断にも応用できる. これまでも,各種画像解析や正常例との統計的な比較などの手法を用いてソフトウェアによる工学的診断支援が行われてきたが,近年の多層ニューラルネットワークをはじめとする機械学習の技術的発展に伴い,PETにおいても人工知能による自動診断や診断支援に対する期待が高まっている.一方で,他のモダリティに比べて学習のための多数のデータサンプルを集めることが困難であり,メーカーや機器の世代毎,そして施設毎に計測されるデータの質が変化するなどPET特有の問題点も存在する. 本発表では,脳PETにおいてこれまで行われてきたソフトウェアによる診断支援について概観すると共に,現在取り組んでいる脳FDG-PET画像の機械学習を用いた認知症鑑別診断支援の試みについて紹介する.