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平成22年度 食中毒予防講習会テキスト 監修 福岡県保健医療介護部保健衛生課 編集 社団法人福岡県食品衛生協会

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平成22年度

食中毒予防講習会テキスト

監修 福岡県保健医療介護部保健衛生課

編集 社団法人福岡県食品衛生協会

目 次

〔A〕食品衛生トピックス ··········································1

〔B〕食中毒

1 食中毒とは················································2

2 食中毒の分類 ·············································2

3 食中毒の発生状況

(1) 全国の食中毒発生状況····································3

(2) 福岡県の食中毒発生状況··································7

4 細菌性食中毒を防ぐには··································11

5 食品・料理別の衛生管理··································14

6 主な食中毒分類表········································17

7 食中毒事件簿············································18

○食中毒の原因となる細菌、ウイルス··························21

?どうして起こった食中毒? ·································30

〔C〕食中毒を起こしたら ········································33

〔A〕 食品衛生トピックス

1 成型肉による腸管出血性大腸菌食中毒事件が発生

平成21年8月中旬以降、複数の都府県において、結着等の加工処理を行った食肉を

原因とする腸管出血性大腸菌O157による食中毒が発生しました。飲食店における加

熱調理が不十分であったことが原因と推定されています。

食肉の処理方法には「刃を用いて筋及び繊維を短く切断する処理」「調味料を機械的

に食肉の内部に注入する処理」「食肉の断片を結着させて成型する処理」「調味料に漬

け込む処理」などがあり、これらの処理を行った食肉は、表面だけでなく、内部に食中

毒細菌が付着している可能性があります。そのため、これらの食肉には、あらかじめ処

理を行っていることがわかるように「筋切り処理をしていますので中心部まで十分に加

熱してください」などの表示が義務づけられています。

食中毒予防のためには、肉の表面だけでなく、中心部が75℃以上の状態で1分以上

加熱することが必要です。飲食店などで、客が自分で肉を加熱調理して食べる場合は、

営業者は客に対して具体的な加熱方法を説明することが必要です。

特に、抵抗力の弱い子どもや高齢者が腸管出血性大腸菌に感染すると、重症化する可

能性がありますので注意が必要です。

2 新型インフルエンザが発生

平成21年4月、メキシコで発生した新型インフルエンザは世界各地で猛威をふるいま

した。強毒性ではなかったものの、感染力が強く、日本でも多数の感染者が発生しました。

この新型インフルエンザウイルスについては、豚への感染が確認されたことから、「豚肉

を食べても大丈夫?」との疑問が、さまざまな機関に寄せられました。

これらの疑問を受け、CDC(米国疾病管理予防センター)や日本の食品安全委員会は

「新型インフルエンザは、豚肉や豚肉製品を食べることによって感染するものではありま

せん」「豚肉に万一、インフルエンザウイルスが付着していたとしても、十分加熱すること

によりウイルスは死滅します」などの情報提供を行いました。

インフルエンザウイルスに限らず、一般的な食中毒予防の観点からも、食肉は十分な加

熱が必要です。

- 1 -

[B] 食中毒 1 食中毒とは

食中毒とは「食中毒細菌やウイルス、有害・有毒な物質等が含まれた食品を食べて

起こる人の健康被害」をいい、一般に、嘔気、嘔吐、腹痛、下痢、発熱、麻痺、発疹等の症状を呈します。

2 食中毒の分類

感染型 ※1

赤痢菌(※4) コレラ菌(※4) チフス菌、パラチフスA菌(※4) 腸管出血性大腸菌 その他の病原大腸菌 カンピロバクター・ジェジュニ/コリ サルモネラ属菌 腸炎ビブリオ ビブリオ・バルニフィカス その他の病原性ビブリオ セレウス菌(下痢型) ウエルシュ菌 エルシニア・エンテロコリティカ リステリア・モノサイトゲネス プレシオモナス・シゲロイデス エロモナス・ヒドロフィラ、エロモナス・ソブリア 等

細菌性食中毒

毒素型 ※2

黄色ブドウ球菌 ボツリヌス菌 セレウス菌 (嘔吐型)

ウイルス性食中毒 ノロウイルス ※3 A型肝炎ウイルス、E型肝炎ウイルス 等

原虫等による食中毒 原虫(クリプトスポリジウム、サイクロスポラ、アニサキス等) 真菌 等

植物性

ばれいしょ芽の毒成分(ソラニン) 生銀杏・生梅の有毒成分(シアン) 毒きのこの毒成分(ムスカリン、アマニチン他) とりかぶとの毒成分(アコニチン) 等

自然毒食中毒

動物性

ふぐ毒(テトロドトキシン) シガテラ毒 麻痺性貝毒 下痢性貝毒 等

化学物質食中毒 薬剤(殺そ剤、農薬等) 有害性金属(ヒ素、鉛等) 等

アレルギー様食中毒 ヒスタミン 等

※1 食品に付着して増えた細菌を、食品と一緒に食べることにより発症するもの。 ※2 食品中で増えた細菌が毒素を作り、この毒素と食品を一緒に食べることにより発症するも

の。(感染型と毒素型の分類については他の分類例がある。さらに中間型を分ける場合もある)

※3 平成15年8月29日の食品衛生法施行規則の改正により、食中毒事件票の病因物質欄の「小型球形ウイルス」が「ノロウイルス」に変更された。

※4 平成11年12月28日の食品衛生法施行規則改正により、これらの感染症原因菌についても、飲食により健康被害を生じた場合は食中毒として取り扱うこととなった。

- 2 -

3 食中毒の発生状況

(1) 全国の食中毒の発生状況(厚生労働省速報値に基づく)

① 年次別発生状況

全国における年次別食中毒発生状況(昭和32年~平成21年)

0

500

1,000

1,500

2,000

2,500

3,000

3,500

昭32 昭36 昭40 昭44 昭48 昭52 昭56 昭60 平1 平5 平9 平13 平17 平21

事件数

0

10,000

20,000

30,000

40,000

50,000

60,000

患者数

事件数

患者数

・ 平成 21 年に発生した食中毒事件は 1,048 件で、患者数は 20,249 人、死者

はいませんでした。

・ 平成 20 年に比べ事件数、患者数とも減少しました。

② 月別発生状況

ⅰ 細菌性食中毒

平成21年全国における月別食中毒発生状況(細菌性食中毒)

0

10

20

30

40

50

60

70

80

1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月

事件数

0

200

400

600

800

1,000

1,200

患者数

事件数

患者数

・ 事件数は、気温・湿度ともに高く、細菌の増殖が活発な夏季を中心に多い傾向

を示しました。

ワンポイント:細菌性食中毒、やっぱり夏場は要注意!

- 3 -

ⅱ ウイルス性食中毒

平成21年全国における月別食中毒発生状況(ウイルス性食中毒)

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月

事件数

0

500

1,000

1,500

2,000

2,500

3,000患者数

事件数

患者数

・ 事件数、患者数ともに冬季に増え、1月、12 月に最大値を示しました。

これは冬季におけるノロウイルス食中毒の増加を示すものです。

ワンポイント:冬でも起こる食中毒!油断禁物!

③ 病因物質別

平成21年全国の食中毒事件の病因物質内訳(事件数)

ウェルシュ菌20

腸管出血性大腸菌 26

動物性自然毒39

ぶどう球菌41

不明100

植物性自然毒53

サルモネラ属菌67

ノロウイルス288

カンピロバクター・ジェジュニ/コリ

345

平成21年全国の食中毒事件の病因物質内訳(患者数)

腸炎ビブリオ280

化学物質552

不明1735

ぶどう球菌690

サルモネラ属菌1518

ウェルシュ菌1566

カンピロバクター・ジェジュニ/コリ

2206

ノロウイルス10874

・ 食中毒の病因物質(健康被害の直接的な原因となる微生物や物質)について、事

件数をみると、カンピロバクター・ジェジュニ/コリによるものが 345 件と最も

多く、ノロウイルス(288 件)、サルモネラ属菌(67 件)、植物性自然毒(53

件)、ぶどう球菌(41 件)がこれに続いています。

・ 患者数をみると、ノロウイルスによるものが 10,874 人ともっとも多く、カンピ

ロバクター・ジェジュニ/コリ(2,206 人)、ウエルシュ菌(1,566 人)、サルモ

ネラ属菌(1,518 人)、ぶどう球菌(690 人)がこれに続いています。

・ 死亡患者はいませんでした。

・ 事件数、患者数ともに、ノロウイルス、カンピロバクター・ジェジュニ/コリ、サ

ルモネラ属菌など、少ない菌数あるいはウイルス数でも発症可能な微生物による

食中毒が上位を占めています。

- 4 -

ワンポイント:主な食中毒菌とそれに関係する食品

カンピロバクター = 食肉(特に鶏肉)、水など

サルモネラ = 卵類、食肉及びその加工品など

腸炎ビブリオ = 魚介類及びその加工品など

ノロウイルス = 二枚貝など。人を介しての汚染もあり

冬場に多く発生

病原大腸菌 = 食肉、水など

参考) 全国の食中毒の主な病因物質別年次別発生状況

・ 近年、病因物質として上位を占めているサルモネラ属菌、腸炎ビブリオ、カンピ

ロバクター・ジェジュニ/コリ、病原大腸菌(腸管出血性大腸菌を含む)、ノロウ

イルスについて、過去10年間の発生状況を比較しました。

全国の食中毒の主な病因物質別食中毒事件数の推移(過去10年)

0

100

200

300

400

500

600

700

平12 平13 平14 平15 平16 平17 平18 平19 平20 平21

事件数 サルモネラ菌属

腸炎ビブリオ

カンピロバクター・ジェジュニ/コリ

病原大腸菌(腸管出血性を含む)

ノロウイルス

・ 平成 21 年は、この 5 種類の細菌・ウイルス(以下、「細菌等」)が、事件数 70.6%、

患者数 74.4%を占めました。

・ サルモネラ属菌と腸炎ビブリオが、長い間上位 2 位を占めていましたが、近年は減少

傾向です。一方、特に平成 14 年以降、カンピロバクター・ジェジュニ/コリとノロウ

イルスによる食中毒が増加しています。これら少量での発生が可能である微生物は、

一般の食中毒菌より対策の徹底が難しいため、今後も注意が必要です。

・ 平成8年に全国的に流行した腸管出血性大腸菌を含む病原大腸菌の発生件数は減少し、

現在は横ばい状態です。

- 5 -

④ 原因食品別

平成21年全国の食中毒事件の病因食品別内訳(事件数)

穀類及びその加工品12その他(食品

特定)16

卵類及びその加工品10

野菜及びその加工品54

複合調理食品59

肉類及びその加工品91

魚介類94

不明243

その他(食事特定)

453

平成21年全国の食中毒事件の病因食品別内訳(患者数)

その他(食品特定)673

魚介類加工品481

卵類及びその加工品

336

魚介類723

野菜及びその加工品

788

肉類及びその加工品

852

複合調理食品1318

不明2416

その他(食事特定)12371

・ 事件数、患者数の両面で、複合調理食品や肉類、魚介類を原因とする事件が多く発生し

ています。調理に手間のかかる食品や生食する食品が原因となることが多いようです。

ワンポイント:生で食べる魚介類、調理に手間のかかる食品は、温度管理と取り扱いに

注意!肉類は中心部まで十分加熱し、生食は避ける!

⑤ 原因施設別

平成21年全国の食中毒事件の病因施設別内訳(事件数)

販売店10

仕出屋25

学校15

その他13

事業場 43

旅館84

家庭95

不明184

飲食店562

平成21年全国の食中毒事件の病因施設別内訳(患者数)

不明390

学校731

その他903 事業場1596

仕出屋1683

旅館3749

飲食店10336

・ 事件数を見ると、飲食店、家庭での事件が多く発生しています。

・ 患者数を見ると、例年同様、飲食店の患者が多く、次いで仕出し屋、旅館と、一度にた

くさんの人に食事を提供する施設から発生しています。

・ このような業種においては、一旦食中毒が発生すると社会的に大きな被害を及ぼすため、

特に注意が必要です。また、学校や病院等、ハイリスク者が利用する施設では衛生対策

の徹底が重要です。

ワンポイント:家庭でも起きる食中毒!

ワンポイント:大きな旅館、仕出し屋、学校、病院には大きなリスク

「大量調理施設衛生管理マニュアル」でチェック!

- 6 -

(2) 福岡県の食中毒発生状況(北九州市、福岡市、久留米市及び大牟田市を含む)

① 年次発生状況

福岡県における食中毒発生状況(過去10年間)

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

平12 平13 平14 平15 平16 平17 平18 平19 平20 平21

事件数

0

200

400

600

800

1,000

1,200

1,400

患者数

事件数

患者数

・ 平成21年に福岡県で発生した食中毒事件は41件で、患者数は1,272人、死者はい

ませんでした。

・ 過去5年、事件数は横ばいですが患者数は増加しました。

・ 平成20年は旅館で発生したノロウイルス食中毒、平成21年は給食施設で発生した

ウェルシュ菌食中毒で、患者数が増加しました。

② 平成21年の月別発生状況

福岡県における月別食中毒発生状況(平成21年)

0

1

2

3

4

5

6

7

8

事件数

0

100

200

300

400

500

600

700

患者数

事件数

患者数

事件数 2 1 2 0 7 3 3 6 4 5 3 5

患者数 108 645 15 0 189 13 10 69 51 78 45 49

1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月

・ 事件数を見ると、5月、8月、10月、12月の発生が多くみられました。

・ 患者数を見ると、2月に最も多い645人の患者の発生がありましたが、これは給食

施設で発生したウェルシュ菌による食中毒です。

・ 例年、12月に増加傾向となるノロウイルス食中毒が、ほとんど発生しませんでし

たが、細菌性食中毒は増加しました。

- 7 -

③ 最近10年間に福岡県で発生した食中毒

過去10年間(平成12年~平成21年)に福岡県で発生した食中毒494件、患者

数8,725人について分析しました。

ⅰ 発生月別

福岡県における月別食中毒発生状況(平成12年~平成21年の合計)

0

20

40

60

80

100

1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月

事件数

0

500

1,000

1,500

2,000

2,500

患者数

事件数

患者数

・ 事件数から見ると、6月から発生件数が増加し、8月をピークに9月頃まで多く発生

しています。この6月~9月を「食中毒多発期」ということができます。

・ 患者数からみると、事件数の多い7,8月に患者数も多くなっているほか、12~2

月にも多くの患者が発生しています。冬場に患者数が多いのは、冬季におけるノロ

ウイルス食中毒の増加傾向を示しています。

ワンポイント:冬は気温が低いから大丈夫?

いえいえ、ノロウイルス食中毒に要注意!

参考)過去10年間に福岡県で起きた患者100人以上の食中毒事件

患者数(人) 原因施設 病因物質 発生年月 発生場所

645 事業所 ウェルシュ菌 H21.2 糟屋郡

644 菓子製造 サルモネラ属菌 H14.8 北九州市

191 飲食店 サルモネラ属菌 H12.6 古賀市

162 事業所 その他の病原性大腸菌 H15.8 糟屋郡

139 菓子製造 サルモネラ属菌 H15.4 北九州市

135 飲食店 ウェルシュ菌 H17.4 福岡市

132 飲食店 ノロウイルス H18.2 田川市

102 仕出し屋 黄色ぶどう球菌 H21.5 大牟田市

100 旅館 ノロウイルス H21.1 北九州市

- 8 -

ⅱ 病因物質別

福岡県における食中毒事件の病因物質別内訳(過去10年間)(事件数)

不明11

その他11

植物性自然毒15

腸管出血性大腸菌20

動物性自然毒21

ブドウ球菌26

腸炎ビブリオ68

サルモネラ属菌78

ノロウイルス93

カンピロバクター・ジュ

ジュニ/コリ109

福岡県における食中毒事件の病因物質別内訳(過去10年間)(患者数)

赤痢菌131 不明110

ブドウ球菌,375

腸管出血性大腸菌186

化学物質,151

病原大腸菌765

腸炎ビブリオ788

ウエルシュ菌905

サルモネラ属菌2044

カンピロバクター・ジュ

ジュニ/コリ1174

ノロウイルス1862

・ 事件数をみると、カンピロバクター・ジェジュニ/コリが109件と最も多く、ノロ

ウイルス(93件)、サルモネラ属菌(78件)、腸炎ビブリオ(68件)、ブドウ

球菌(20件)がこれに続いています。

・ 患者数をみると、サルモネラ属菌が2,044人と最も多く、ノロウイルス(1,862

人)、カンピロバクター・ジェジュニ/コリ(1,174人)、ウエルシュ菌(905人)、

腸炎ビブリオ(788人)、病原大腸菌(765人)がこれに続いています。特にノ

ロウイルスとカンピロバクター・ジェジュニ/コリは近年報告が増えており、今後

注意の必要な食中毒です。

ワンポイント:やっぱり多い細菌性食中毒→夏場に注意

最近増えてるウイルス性食中毒→冬場も注意

でも忘れちゃいけないフグ中毒(動物性自然毒)

ⅲ 原因食品別

福岡県における食中毒事件の

病因食品別内訳(過去10年間)(患者数)

肉類及びその加工品206

魚介類総数 558

卵類及びその加工品201

穀類及びその加工品115

野菜及びその加工品総数

133

菓子類806

複合調理食品805

不明1338

その他総数4458

福岡県における食中毒事件の病因食品別内訳(過去10年間)(事件数)

肉類及びその加工品27

魚介類総数 48

野菜及びその加工品総数

15

複合調理食品26

不明167

その他総数184

- 9 -

・ 事件数からみると、魚介類が48件と最も多く、生食されることの多いものが原因

食品となることが推察されます。

・ また、複合調理食品(25件)のように、摂食までの時間が長いものや調理工程が

複雑なものも原因食品となる可能性が高いです。

・ 患者数からみると、菓子類806人、複合調理食品806人が多く、魚介類558人が

これに続いています。

ⅳ 原因施設別

福岡県における食中毒事件の

病因施設別内訳(過去10年間)(事件数)

製造所7

その他8

販売店10

病院7

旅館13

仕出し屋11

事業場19

家庭44 飲食店220

- 10 -

福岡県における食中毒事件の病因施設別内訳(過去10年間)(患者数)

家庭128 販売店106

病院160

旅館391

仕出し屋547

事業場834

製造所814

飲食店3,965

・ 事件数をみると、飲食店が220件と最も多く、家庭(44件)、事業場(19件)が

これに続いています。

・ 患者数をみると、飲食店が3,965人と最も多く、事業所(834人)、製造所(81

4人)がこれに続いています。

4 細菌性食中毒を防ぐには

★食中毒細菌はこうして増殖する

水 分

栄養分

適度な温度

10~46℃ +

時 間

食 品 は

栄養満点 常温で容易に

増 殖 時間の経過と

ともに増殖

★食中毒はこうして起こる

材料に食中毒細菌が

付いている

食中毒細菌が食品に付く

食中毒細菌が

増える

食べる

食中毒発生

菌を除く

菌を付けない

菌が増える時間を与えない

菌を増やさない

(通常20分で分裂・増殖)

菌を殺す

清潔

迅 速 冷却または加熱

食中毒予防の三原則

- 11 -

食中毒は三原則をすべて守ることによって防ぐことができます

清 潔

清潔は衛生的であることの前提条件《清潔≠衛生的》

1 原材料の清潔 ―ほとんどの原材料は微生物による一次汚染があることに注意―

原材料の吟味

原材料の保管(運搬容器から出して保管)

2 施設の清潔

天井・壁・床の清潔

食品保管庫・調理場の整理、整頓、清掃

防虫、防そ設備及び定期的駆除

エサを与えない(食べ物、残飯の始末)

侵入防止の三原則 巣を作る場所を与えない(整理・整頓)

進入路を防ぐ(防除設備)

手洗設備:消毒設備を設けること。

汚染区域と非汚染区域との使い分け

食中毒細菌は、自然界には普通に存在しています。原材料に付着していることもあ

るので、調理場内を原材料を扱う汚染区域と製品を扱う非汚染区域とに明確に区分し

て使用し、飛沫等による製品への汚染を防ぐことが必要です。

3 器具、食器の清潔

使用器具、食器は使用のつど十分に洗浄、殺菌

器具は用途、原材料によって使い分け《二次汚染の防止》:特に包丁、まな板等

衛生的保管

4 食品取扱者の清潔 ―清潔で衛生的な習慣―

手指の洗浄消毒《手洗いは食品衛生の基本》

身体・着衣はいつも清潔に

健康管理(健康診断、検便等)

健康保菌者対策

迅 速

1 食材や調理済みの食品を室温で長時間放置しない

室温放置は細菌増殖の温床

2 仕入れた原材料は、速やかに調理・加工する

3 摂食時間を考えて、調理、加工を計画的に行う

無理な受注は事故のもと

4 弁当・そうざいは調理後2時間以内に摂食することが望ましい

消費期限の表示(必要に応じて時間まで記載)

- 12 -

冷却又は加熱

1 適切な冷却

冷却は10℃以下で行う(5℃以下が望ましい)

冷蔵庫に温度計(隔測温度計)を備えること

冷蔵庫の温度を5℃以下に保つには

◎扉の開閉はすばやく必要最小限に

調理場

(室温30℃)

冷蔵庫

庫内温度 6℃

↓ 15秒間開放 10分 ↓ 庫内温度18℃

- 13 -

◎食品を詰めすぎない 冷気の流れを妨げない 庫内容量の70%以下を目安に

◎調理食品は放冷してから保存

◎冷凍庫内の霜取りを定期的に実施する

◎ 低温菌《先入れ先出しの原則》・・・(例)エルシニア・エンテロコリティカ

2 十分な加熱

加熱は食品の中心温度が75℃以上になること

◎耐熱菌:芽胞(セレウス菌、ウエルシュ菌) 《再加熱、つぎたし禁止の原則》

◎耐熱性毒素(ブドウ球菌産生毒素等)

3 その他の温度管理

食品の適切な解凍方法

冷蔵庫内解凍、やむを得ず急ぐ場合は流水解凍《室温放置の解凍は厳禁!》

4 検食の保存

検食は、万一、食中毒等の事故が発生したとき、その原因を明らかにするとともに再

発防止など適切な対応を講じるために重要な意味を持ちます。

食中毒菌の多くは、潜伏期間がおよそ48時間以内ですが、カンピロバクターや腸管

出血性大腸菌O157では、1週間以上の例もあります。したがって、検食は2週間以

上保管することが望まれます。

検食の保存方法

①検食は、-20℃以下で2週間以上保存します。

②原材料及び調理済食品のメニューごとに、50g程度ずつ保管し、密閉します。

③専用の冷凍保管庫に保存します。

④日時等を記入し、適正に管理します。

5 食品・料理別の衛生管理 基 本 的 な 注 意 点 仕 入 れ ・ 保 存 上 の 注 意 調 理 上 の 注 意 特に注意を要す

る食中毒菌

仕入れは計画的に 生肉の細菌が他の食品を二次汚染しないように 生肉はサルモネラ属菌、カンピロバ クター、病原大腸菌等の食中毒菌に すでに汚染されていると考える ○必要な量だけを仕入れ、なるべく1回で使いきる包装単位

のものを選ぶ

保存中は他の食品を汚染しないように包装や区分に注意

○専用の調理器具を用意する ○内臓肉(きも、もつ)料理のときは、内臓肉を流水で充分洗浄し てから使用する 排水は汚染されているので、シンクから他の食 品や食器を汚染しないよう注意

下処理中も低温に保ち、細菌の増殖を防ぐ

○漬け込みのときは必ず冷蔵庫に保管 ○解凍は時間の余裕をもって始め、冷蔵庫の中で解凍 室温放置や 日の当たる場所での解凍は禁物

中心まで充分加熱

○冷蔵保存の場合は、肉汁などが漏れないようにフタがしっ

かり閉まる容器やポリ袋に入れて、5℃以下で保存 ○冷凍品は、ラップあるいはポリ袋で密閉して、-18℃以 下で保存 ※発泡スチロール製の箱に入れたままだと、冷凍庫や冷蔵 庫に入れても断熱効果でかえって冷却されない 必ず別 の容器に入れ換えること

解凍は必要な量だけ 再凍結は禁物

肉 料 理 例: 焼鳥 焼肉 野菜炒め トンカツ ハンバーグ もつ煮 等

○まな板、包丁、バット、ボウル等は生

肉専用を使用 ○生肉を扱った手は、次の調理に取りか かる前に必ず石けんで洗い、消毒

○解凍は冷蔵庫内で行い、ドリップが他の食品を汚染しない

ように包装や容器に注意 余った分の再凍結は、味も品質も低下する

○野菜など他の材料と炒める場合は、まず肉に火を通してから野菜 類を加える 途中で生肉を足すことは禁物 ○冷凍品は表面が解凍していても中がまだ凍っていることがあるの で要注意 中まで火が通っていることを必ず確認する ○調味液(たれ)をつけて加熱するときは、加熱前や加熱中につけ るたれと、加熱済のものにつけるたれと、加熱済のものにつける たれを区別する ○加熱のばらつきを防ぐため、材料の大きさは一定に

サルモネラ属菌 カンピロバクター 病原大腸菌

仕入れは計画的に 魚介類の細菌が他の食品を二次汚染しないように 海産魚介類は腸炎ビブリオ、生ウナ

ギはサルモネラ属菌等の食中毒菌に 汚染 されていると考える

○必要な量だけを仕入れ、なるべく1回で使いきる包装単位

のものを選ぶ

丸の魚はワタ、エラ、ウロコを取り除いてから保存

○下処理して使いやすい形にしてから保存

保存中は他の食品を汚染しないように包装や区分に注意

○専用の調理器具を使用 特にまな板、包丁は下処理用と刺身用を 厳密に区別する ○調理前に流水で充分洗浄 未処理の魚 → 体表面、エラの中、ヒレの溝 貝類 → 殻の表面の溝 エビ・カニ類 → 体表面、足の細部 排水は汚染されているので、シンクから他の食品や食器を汚染し ないよう注意

調理中も温度管理に注意し、細菌の増殖を防ぐ

○手早い処理をいつも心掛ける ○漬けこみや解凍は必ず冷蔵庫で行う

中心まで充分加熱

○冷蔵保存の場合は、5℃以下で、汁が漏れないようにフタ

がしっかり閉まる容器やポリ袋に入れて保存 ○冷凍品はダンボール箱から出して-18℃以下で保存 ※発泡スチロール製の箱に入れたままだと、冷凍庫や冷蔵 庫に入れても断熱効果でかえって冷却されない 必ず別 の容器に入れ換えること

解凍は必要な量だけ 再凍結は禁物

魚介類料理 例: 刺身 マリネ 焼き魚 照り焼き ウナギ蒲焼 フライ 天ぷら 等

○海産魚介類は必ず水道水(真水)で洗

浄 ○魚介類の下処理用の調理器具と刺身用 の調理器具は分けて使用 ○生魚介類を扱った手は、次の調理にと りかかる前に必ず石けんで洗浄、消毒 ※寄生虫にも留意し、見つけたら取り 除く

○解凍は冷蔵庫内で行い、ドリップが他の食品を汚染しない

ように包装や容器に注意 余った分の再凍結は、味も品質も低下する

○ボイルエビ、タコ等の加熱済の冷凍品を使用する場合でも再加熱 する ○蒲焼、照り焼き等調味液(たれ)をつけて加熱調理するときは、 加熱前や加熱中につけるたれと、加熱済のものにつけるたれを区 別する

腸炎ビブリオ サルモネラ属菌

生卵は必ず冷蔵 室温放置は厳禁 殻つき卵は鮮度や卵殻表面の細菌に要注意 生卵は卵内及び卵殻表面がサルモネ

ラ属菌に汚染されているものがある ○卵を割るときは、小さい容器に1個ずつ割り入れて、鮮度と卵殻 の混入のないことを確認する

○仕入れたらまずヒビ、破卵をチェック ○卵殻表面の水滴は細菌の温床になるので、使用直前に必要 量だけ冷蔵庫から出す

温度管理に注意し、細菌の増殖を防ぐ 加熱済の仕入れ品は必ず冷蔵、使用前に再加熱する

○生卵に触った後は、他の食品に触れる

前に必ず手指を洗浄、消毒 ○冷蔵庫から出す量は必要最小限に 室温放置は厳禁

厚焼き卵等調理品は二次汚染に注意 ○加熱済の仕入れ品でも運搬中の温度管理によっては細菌が

増殖するので、再加熱できるものは再加熱する

液卵は容量の単位の小さい、殺菌済の製品を使用する

○あらかじめ卵を溶いておく場合は、必要最小限にして、当日使い きる ○自家製マヨネーズや生菓子等加熱工程のないものは、必ず冷蔵し てその日のうちに使いきる ○切り分ける際は、調理加工済食品専用

の器具を使用 充分加熱。加熱後二次汚染に注意

液卵は殺菌済の製品を使用する

卵 料 理 例: 生卵 卵入とろろ スクランブルエッグ 厚焼き卵 目玉焼 オムレツ 錦糸卵 茶碗蒸し 自家製マヨネーズ 自家製生菓子 等

○液卵は栄養的に細菌の増殖に最適な状態 開封後は一度で

使いきる ○やむをえず保存する時は二次汚染のないよう密閉して冷蔵 保存、短期間で使いきる

○加熱は中心部まで75℃以上で1分間以上が目安 ○加熱調理は当日使用する分だけ行い、調理後は速やかに放冷して 冷蔵庫保管する ○切り分けるときのまな板や包丁は調理済食品専用を使用する

サルモネラ属菌

調 理 ・ 保 存 上 の 注 意 煮込み料理は保管中にウエルシュ菌

が爆発的に増えることがある土や泥を調理場内に持ち込まないように注意する

○野菜は調理場の外でよく水洗いをして、泥を落とす

料理は当日分だけを調理し、調理後は速やかに冷却する

○一度に大量の調理を行わず、できるだけ少ない量に分けて調理する ○大きな鍋で調理加熱後は鍋のまま室温に放置せず、小分けして速やかに放冷・冷却する

やむをえず作り置きする料理は、必ず冷蔵保存し、加熱してから使用する

煮込み料理 例: カレー シチュー ミートソース スープ類 めんつゆ 等

○当日使う分だけを調理し、作り置きは

やめる ○調理施設内に土壌やほこりを持ち込ま ないよう注意する ○「前日調理した食品でも、翌日再加熱 すれば大丈夫」というのは間違い

○前日調理した料理を鍋のまま一晩放冷し、翌日使用することは絶対やめる ○作り置きしたソース類などはときどき中心まで充分に加熱し、速やかに放冷して冷蔵保存する。使用する直前は必ず中心部まで 充分加熱する

ウエルシュ菌

セレウス菌を調理場内に持ち込まないように注意する 穀類や豆類はセレウス菌に汚染され

ていることが多いので作り置きしな い ○野菜は調理場の外でよく水洗いをして、泥を落とす

米や小麦を原料とする食品は、翌日まで作り置きしない

炒めご飯 パスタ類 例: チャーハン ピラフ チキンライス オムライス スパゲティ 等

○米飯やパスタ、めん類は当日使用する

分だけ調理し、作り置きはやめる ○調理場内に土壌やほこりを持ち込まな いよう注意する ○「前日調理した食品でも、翌日再加熱 すれば大丈夫」というのは間違い

○一度に大量の調理を行わず、できるだけ少ない量に分けて調理する ○米飯やめんは当日使いきる分だけ調理する ○調理後は小分けするなどして速やかに放冷・冷却します

セレウス菌

具を盛りつけるときに手指などから黄色ブドウ球菌で汚染させないよう注意 盛りつけの際に手指等から黄色ブド

ウ球菌に汚染されている場合がある 盛りつけ料理

○盛りつける前に、手指は充分洗浄・消毒し、清潔な器具や使い捨て手袋を使用する

黄色ブドウ球菌

○盛りつけ中は、不用意に他のものに触ったり、髪の毛や鼻などに触れないように注意する ○使い捨て手袋の破れなどに注意し、手袋を過信しない

盛りつけは充分放冷してから行う

○具は必ず当日調理し、充分に放冷してから使用する ○丼物などは米飯が温かいと細菌の温床となってしまうので、充分冷ましてから具を盛りつける

配送のときは、車内の温度管理を徹底する

例: 三色そぼろごはん ちらし寿司 まぜごはん 等

○盛りつけは、マスクや帽子を着用し、 手指を充分洗浄・消毒してから始める ○爪は短く切り、手荒れや傷がないこと を確認する ○盛りつける際は使い捨ての手袋や清潔 な器具を使用する ○盛りつける具を切ったり、混ぜたりす るときは、調理加熱済食品専用のまな 板や器具を使用する

○冷却装置のない車内では、細菌が繁殖するのに最適な温度になっている(配達・配送は迅速に)

黄色ブドウ球菌

サラダの原料となる野菜類は、包装、区分に注意する 調理器具や手指を介した二次汚染に注意する 最終的に加熱されない食品は、原料

の汚染をもちこんだり、他の食品や 原材料から二次汚染を受けやすい ○調理にかかる前や調理中は手指をよく洗浄・殺菌する

○手に傷のある場合は、調理を行わないか、手袋をする等の対策を 講じる ○調理器具は専用のものを用意して、使用前・使用後はよく洗浄・ 殺菌する

使用する原材料は洗浄や温度管理に留意し、原材料からの汚染 を防止する

○野菜は充分な量の流水で洗浄し、清潔なざるでよく水をきる ○シーフードサラダなど魚介類を使用する料理は、なるべく熱を通 したものを使うメニューにする ○浅漬け等の漬物は、腸炎ビブリオの増殖に適した塩分濃度になっ ている(魚介類からの汚染に特に注意) ○冷凍半製品のマッシュポテトなどを使用する場合は、解凍・開封 後は当日に使いきる

各材料はよく放冷してから混合し、温度管理に注意する

サ ラ ダ 和えもの 例: グリーンサラダ ポテトサラダ おひたし ごま和え 酢味噌和え 浅漬け等の漬物 等

○野菜類は充分な流水で洗浄する ○和えものは、調理器具や容器、手指か らの二次汚染に特に注意

○生肉、鮮魚介類など食中毒菌に汚染されている可能性のあ

る食品原材料と接触しないよう、冷蔵庫内を区分して保存 する ○冷凍半製品のマッシュポテトなどを使用する場合は、1回 で使いきる包装単位の製品を仕入れるようにし、使いかけ を保存することはやめる

○和えものは冷却してから調味料等と和える ○魚介類を使用したものは特に温度管理に留意する ○当日使いきる分だけ調理し、調製後は必ず冷蔵する

病原大腸菌 黄色ブドウ球菌 腸炎ビブリオ

6 主な食中毒分類表

分 類 病 因 物 質 分 布 感 染 経 路 主な原因食品 潜 伏 期 間 ()内平均 (時 間)

主 症 状 防 止 参 考

腸炎ビブリオ 海水、海泥 海水中で魚介類汚染 魚介類及びその加工 品、二次的に汚染さ れた食品

10~24時間 下痢(水様性) 腹痛(上腹部) 嘔吐、発熱

・加熱処理 ・魚介類を生食しない ・魚介類低温保持 ・調理器具を区別する

腸炎ビブリオは海水 温20℃以上になると 急に増殖

サルモネラ属菌 自然界 家畜、ペット ネズミ等

サルモネラ罹患動物 の肉、卵 ネズミ、ハエ等による食品汚染

食肉、卵類及びその 加工品 複合調理食品等

平均12時間

(5~72時間)

腹痛、下痢 発熱(38~40℃) 悪心、悪寒

病原大腸菌 (下記 以外) 腸管出血性大腸菌

自然界 人、動物の腸管

保菌者、動物の糞便 による食品、水の汚染

水、すべての食品 12~72時間 ( 1~5日) 平均3~5日

下痢(粘液血水様性) 発熱、腹痛

・十分な加熱処理 ・食肉を生食しない ・調理場に動物をいれ ない ・ハエ、ゴキブリ、ネ ズミ等の駆除

カンピロバクター ジェジュニ/コリ

家畜、ニワトリ ペット

家畜、ニワトリの 解体時の肉汚染

食肉(さしみ、たた き、焼き肉)、 水、サラダ

2~7日 下痢(水様性) 腹痛、発熱、嘔吐

・十分な加熱処理 ・食肉を生食しない

エルシニア・ エンテロコリチカ

自然界 動物の腸管

動物の糞便による食

品、水の汚染 食肉(特に豚肉) 水

5~7日 腹痛、下痢 発熱、発疹

・調理場に動物をいれ ない ・冷凍庫に保存 (長期保存する時)

0~4℃でも発育できる 低温細菌

感 染 型

ウエルシュ菌 自然界 人、動物の腸管

食品取扱者による食 品汚染

大量に加熱調理され た食品

6~18時間 (1~48時間)

下痢、裏急後重 腹痛

・加熱調理したものを なるべく早く食べる・加熱後すばやく冷却

食品加熱後のの 温度が50~55℃以下に なると急激に増殖

黄色ブドウ球菌 自然界 人、動物の化膿 巣

食品取扱者による食 品汚染

おにぎり、生菓子 そうざい等

平均 3時間 (1~5時間)

悪心 嘔吐(激しい) 腹痛、下痢

・化膿巣のある者の調 理従事禁止

耐熱性毒素による

セレウス菌 (嘔吐型)

自然界 (芽胞)

食品中の嘔吐毒セレ ウリド(耐熱性)の摂取

米飯、焼きめし等穀 類の調理品

0.5~5時間 悪心 嘔吐 まれに腹痛、下痢

・加熱調理したものを なるべく早く食べる・加熱後すばやく冷却

耐熱性毒素による

細 菌

毒 素 型 ボツリヌス菌 土壌、海湖泥

(芽胞)

ボツリヌス毒素を含 有する食物の摂食

びん詰め、かん詰め 真空包装食品 いずし

8~36時間 視力低下、咽喉麻痺

呼吸筋麻痺 死亡率高い

・原材料の十分な洗浄 加熱殺菌

酸素の少ない所で増殖 し、毒素を産生する

ウ イ ル ス

ノロウイルス 人の腸管

生カキ、ハマグ リ等の貝類の中 腸腺 水

汚染された貝類の生

食、ウイルス保有者 による食品汚染、加 熱不十分

貝類 使用する水 加工調理食品全般

24~48時間

嘔気、嘔吐、腹痛、下痢

発熱は比較的少ない。 2~3日で回復し、予後 は比較的良好。

・生食用と加熱用カキ

の使い分け ・十分な加熱処理 ・手指消毒の徹底

・食品取扱者の手洗い ・清潔保持 ・食品の低温保持 (5℃以下) ・食器、調理器具の 清潔保持 (洗浄、殺菌、乾燥)

感染症の発症もみられ る

植 物 性

キノコ (ムスカリン等)

有毒茸類の摂食による てんぐたけ、どくつるたけ、つきよたけ、いっぽんしめじ など

6~12時間 (ドクツルタケ の場合)

胃腸型-下痢、嘔吐など 脳症型-瞳孔散大 呼吸麻痺など

・秋に多いので注意する ・流行はない ・種類不明のものは調理しない ・きのこ類に対する正しい知識

植物性自然毒他に、毒 草(どくぜり等)、麦 角、じゃがいも芽

自 然 毒 動

物 性

フグ (テトロドトキシ ン)

ふぐの有毒部位(肝、卵巣など)の摂食による (ふぐは、種類、部位により毒性が違う) 0.5~2.5

時間

口唇、舌のしびれ 嘔吐、下痢、言語障害 視力障害

・フグ処理師以外はフグの処理をしない (素人料理は行わない)

化 学

有害金属等 メチルアルコール 等

飲食用器具、容器から食品に溶出 使用の誤認、誤用による

物質によりさまざまな 障害

・不良食品の使用禁止、 ・消毒剤、殺菌剤等の保管や使用に注意

そ の 他

ヒスタミン 赤身の魚の筋肉中のヒスチジンによる サンマ、サバ イワシ特にサンマの 桜干し

5~60分 顔面紅潮、じんま疹、 頭痛

抗ヒスタミン剤の投与 により軽快、治癒

7 食中毒事件簿

近年、福岡県で起きた食中毒事件を紹介します。

(1)腸管出血性大腸菌O157食中毒事件

9月×日~△日の約20日間にわたり、A市内の飲食店を利用した客10グループ

31名のうち9名が下痢、腹痛、血便等の食中毒症状を呈し、医療機関を受診しまし

た。

≪病因物質≫ 腸管出血性大腸菌O157

≪原因食品≫ 飲食店での提供食品

≪調理状況≫

飲食店の調理場は衛生的に管理されておらず、清掃が不十分で床の一部がべたついて

いる状況でした。調理器具は用途、食材ごとに使い分けされていましたが、それぞれ洗

浄消毒が不十分な状態で、棚に保管されていました。冷蔵庫内部は、食材ごとの区画が

不明確で、相互汚染の危険性がありました。手洗い設備は設置されていましたが、あま

り使用されておらず、また、食品の盛り付けは素手で行うこともあったようです。

≪事件発生のポイント≫

① 調理従事者の衛生意識

この飲食店では、従事者にパートもしくはアルバイトが多かったにもかかわらず、十

分な衛生教育等を実施しておらず、従事者は衛生意識を身につける機会に恵まれなかっ

たと考えられました。

② 調理従事者の健康状態

この飲食店では、調理従事者の定期的検便を実施していませんでした。本事件発生後、

検便を実施したところ、調理従事者から腸管出血性大腸菌O157が検出されました。

感染した従事者が継続して食品を提供したため、被害の発生が長期間に渡った可能性も

あります。責任者は、調理従事者に定期的に検便を受けさせ、毎日従事前に全員の健康

をチェックし管理することが重要です。

≪主な改善指示事項≫

・施設及び器具、機材の清掃・消毒を徹底すること

・手洗いを励行すること

・盛り付けの際に素手で食材にふれないこと

・定期的な検便を実施し、従事者の健康チェックを徹底すること

・冷凍冷蔵庫を食材ごとに区画すること

★病原性大腸菌食中毒の予防のポイント

「中心部までの十分な加熱」と「二次汚染防止対策」

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(2)カンピロバクター食中毒事件

12月×日及び△日、B市内及びC市内の飲食店で、会食した計5グループ65名

のうち37名が、下痢、腹痛、発熱等の食中毒症状を呈しました。

≪病因物質≫ カンピロバクター・ジェジュニ

≪原因食品≫ 鶏刺し

≪調理状況≫

この飲食店の調理施設は衛生的に管理され、包丁、まな板等は食材ごとにきちんと使

い分けがなされていました。しかし、加熱用として仕入れた鶏肉を「新鮮なものは生食

しても安全」と判断して調理し、鶏刺しとして生で提供していました。

≪事件発生のポイント≫

この店舗は、調理施設の衛生管理を徹底していたにもかかわらず、食中毒が発生しま

した。鶏肉の仕入れ先の食鳥処理施設では、加熱用として販売していましたが、仕入れ

た店舗は鶏刺しとして提供していました。営業者は「新鮮な鶏肉は生食しても安全」と

いう誤った認識をしていました。カンピロバクターは少量の菌でも症状が出ることが多

く、温度管理を徹底して菌の増殖を防いでも、食中毒が発生する場合があります。鶏肉

に限らず、食肉を提供する際は、中心部まで十分に加熱することが必要です。

≪主な改善指示事項≫

・食肉の十分な加熱調理

★カンピロバクター食中毒予防のポイント

「中心部までの十分な加熱」と「二次汚染防止対策」

「少ない菌でも食中毒になる!」という意識を持つこと

- 19 -

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(3)ヒスタミン食中毒事件

5月××日、D郡内の2ヶ所の保育所で、給食を食べた園児や職員ら計324名の

うち、44名がアレルギー様の食中毒症状を呈しました。

≪病因物質≫ ヒスタミン

≪原因食品≫ カジキマグロのみそカツ

≪調理状況≫

どちらの保育所も、同じ魚介類販売業者からカジキマグロを仕入れていました。この

カジキマグロは、魚市場が仕入れて冷凍保存後、2日にわけてブロックにしたものを魚

介類販売業者へ販売し、魚介類販売業者の施設内で切り身にして、当日の朝、両保育所

へ納品されたものでした。魚市場での保管温度に問題はなく、他からの苦情もありませ

んでした。両保育所内での保管時間、調理時間も短く、衛生管理に問題はありませんで

した。しかし、魚介類販売業者の施設内では再冷凍したり、室温で作業したり、冷蔵庫

の温度も 10℃以上であったりと、十分な温度管理がなされていない状況でした。

≪事件発生のポイント≫

① 温度管理の不備

一度解凍した魚介類を再凍結することは、風味を損なうだけでなく、ヒスタミンの産

生、食中毒細菌の増殖を招きます。また、カットなどの作業を行うために、長時間室温

で作業することも、同じ理由で望ましくありません。冷蔵庫内の温度は4℃以下が望ま

しいとされています。流通、保管を通じて適切な温度管理を行うことが必要です。

② 先入れ先出しの未実施

魚介類販売業者の施設内では、異なった日に仕入れた食材が区別されずに保管され、

保育所に納品された食材の仕入れ日がはっきりわからない状況でした。先に仕入れた食

材から先に使用すること(先入れ先出し)が食中毒予防の原則です。

≪主な改善指示事項≫

・施設の整理整頓、清掃消毒

・冷蔵庫の適切な温度管理

・計画的な仕入れによる商品の先入れ先出し

★ヒスタミン食中毒予防のポイント

「適切な温度管理」と「先入れ先出し」

「室温解凍、一度解凍した魚介類の再凍結は厳禁!」

カンピロバクター・ジェジュニ/コリ

○カンピロバクターの特徴

・少ない菌量(100個前後)で感染する。

・10℃以下の低温でも長期間生存する。

・家畜、鶏、ペット、野生動物など、あらゆる動物に分布。

・特に、鶏肉での汚染率が高い。

・熱に弱い。乾燥に弱い。

○主な原因食品

・生または加熱不十分な食肉、内臓(さしみ、たたき、焼肉等)。

※特に、鶏肉類が原因となることが多い。

・野鳥等で汚染された水

・食肉からサラダ等への二次汚染を受けた食品 等

○症状

発熱(38℃以下)、水様性下痢(まれに粘液便、血便)、嘔気、腹痛、筋肉痛

○潜伏時間

2~7日間 (平均2~3日)

- 21 -

①食肉、食鳥処理場では衛生的な解体処理を行い、食肉への汚染を防ぐ

②食品を十分に加熱する

中心温度 75℃以上、1分間以上

③食肉を生食しない。

生食できるのは、「生食用食肉の衛生基準」*に沿って処理された食肉のみです。

* 平成 10 年9月 11 日厚生省生活衛生局長通知「生食用食肉等の安全性確保について」に基づく。

生食用食肉とは、「牛又は馬の肝臓又は肉であって、生食用食肉として販売するもの」をいう。

④特に、鶏肉類の生食は避ける。

⑤二次汚染対策を徹底する

・冷蔵庫や冷凍庫内で、生肉から他の食品を汚染しないように

保管する。

・生肉を取り扱った調理器具類は、洗浄、消毒を十分に行う。

カンピロバクターによる食中毒防止のポイント

サルモネラ属菌

○サルモネラの特徴

・家畜、鶏、ペット(カメ、イヌ、ネコ等)、ネズミ等の腸管内に常在する。

・土壌、河川水など自然環境にも存在する。

・熱に弱い。

・乾燥に強い。

○主な原因食品

・食肉、卵類およびその加工品(自家製マヨネーズ、洋風生菓子等)

・複合調理食品

・ネズミ等の動物により汚染された食品 等

○症状

腹痛、下痢、発熱(38~40℃)、悪心、悪寒

・主として急性胃腸炎症状。

・小児、老齢者では重症で、稀に死亡例あり。

○潜伏時間

5~72時間 (平均 12 時間)

○保菌していても発症しないことがある(健康保菌者)。

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①食品の十分な加熱

中心温度 75℃以上、1分間以上

②食肉を生食しない

生食できるのは、「生食用食肉の衛生基準」*に沿って処理された食肉のみです。

* 平成 10 年9月 11 日厚生省生活衛生局長通知「生食用食肉等の安全性確保について」に基づく。

生食用食肉とは、「牛又は馬の肝臓又は肉であって、生食用食肉として販売するもの」をいう。

③調理場、保管場所等、食品を取り扱う場所には動物を出入りさせないこと。

④ハエ、ゴキブリ、ねずみ等の駆除を定期的に行う。

⑤食品従事者は定期的に検便を受け、サルモネラ陰性であることを確認すること。

サルモネラ属菌による食中毒防止のポイント

病原大腸菌

大腸菌は、家畜や人の腸内にも存在します。ほとんどのものは無害ですが、このうち

いくつかのものは人に下痢等の消化器症状や合併症を起こすことがあり、病原大腸菌と

呼ばれています。

○病原大腸菌の種類と特徴

1 腸管病原性大腸菌 (EPEC) ・小腸に感染して腸炎等を起こす。

・潜伏時間:12~72 時間

2 腸管組織侵入性大腸菌 (EIEC)

・大腸(結腸)粘膜上皮細胞に侵入・増殖し、粘膜固有層にびらんと潰瘍を形成し、

赤痢様の激しい症状を引き起こす。

・潜伏時間:1~5日(3日以内がほとんど)

3 腸管毒素原性大腸菌 (ETEC)

・小腸上部に感染し、コレラ様のエンテロトキシンを産生する結果、腹痛と水様性

の下痢を引き起こす。

・潜伏時間:12~72 時間

4 腸管出血性大腸菌(ベロ毒素産生性大腸菌、志賀毒素産生性大腸菌)(EHEC)

・赤痢菌が産生する志賀毒素類似のベロ毒素を産生し、激しい腹痛、水様性の下痢、

血便を特徴とする。特に小児や老人では、溶血性尿毒症や脳症(けいれんや意識障害

等)を引き起こしやすい。

・少ない菌数(50 個程度)で発症すると考えられている。

・潜伏時間:3~8日 *近年、食中毒の原因となっているものは、O157がほとんどだが、腸管出血性大腸菌には この他にO26、O111等がある。

○原因食品 : ふん便等で二次汚染された食品、飲料水

*国内のO157感染事例において原因食品等と特定または推定されたもの

→肉類(牛肉、牛レバ刺し、ハンバーグ、牛角切りステーキ、牛タタキ、シカ肉)、サラダ、井戸水 等

①食品の十分な加熱 ・ 中心温度 75℃以上、1分間以上

②食肉を生食しない

生食できるのは「生食用食肉の衛生基準*」に沿って処理された食肉のみです。

*平成 10 年9月 11 日厚生省生活衛生局長通知「生食用食肉等の安全性確保について」に基づく。

生食用食肉とは、「牛又は馬の肝臓又は肉であって、生食用食肉として販売するもの」をいう。

③特に、二次汚染対策を徹底する

・冷蔵・冷凍庫内で、生肉から他の食品を汚染しないように保管する

・生肉を取り扱った調理器具類は、洗浄、消毒を十分に行う

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病原大腸菌による食中毒防止のポイント

ノロウイルス

○ノロウイルスの特徴

◇感染力が強く、少ないウイルス量(10~100個)で感染

◇汚染された二枚貝では、中腸腺にノロウイルスが蓄積する。

◇ノロウイルスは、食品の中では増えないが、人の腸内で増える。

◇直径25~35nm(1nm(ナノメートル)=1mm の 100 万分の 1)で、電子

顕微鏡でしか見えない、とても小さい球形をしたウイルス。

○主な感染源

・ノロウイルスに汚染された二枚貝

・非加熱食品 (ウイルスに汚染された水、調理器具を介して汚染された食品)

・ノロウイルス感染者の便、吐物

・ノロウイルス感染者の便、吐物を処理した人の手指

○主な症状

吐き気、嘔吐、下痢、腹痛、軽度の発熱

※感染していても症状を示さないことがある(不顕性感染)

○潜伏時間 24~48時間

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①手洗いの励行・・・流水と石けんで汚れを落とす

・ トイレの後や調理の前

・ 汚染された二枚貝を調理した後

・ 患者の便や吐物に触った後 など

②食品を充分に加熱する

・ 中心温度85℃以上、1分間以上。※特に、二枚貝の生食は避ける

③調理器具類の洗浄、消毒を徹底

・ 洗剤などで洗い、次亜塩素酸ナトリウム(約 200ppm)で浸すようにふく。

・ まな板、食器、ふきん等は熱湯(85℃以上)で 1 分以上の加熱が有効。

④下痢や嘔吐等の症状があるときは、直接食品に触れる作業をしない。

※ウイルス感染による下痢等の症状がなくなった場合でも、1週間程度、長いとき

には1ヶ月程度ウイルスの排泄が続くことがあるので、しばらくは直接食品に触

れる作業をしないようにしましょう。

ノロウイルスによる食中毒防止のポイント

○感染経路

①汚染された貝類を、生あるいは十分に調理しないで食べた場合。

②調理従事者が感染しており、その者を介して汚染された食品を食べた場合。

③感染者の便や吐物から二次感染した場合。

※このほか、家庭や共同生活施設(例:集団入所施設、学校、宿泊施設等)など、

人どうしが接触する機会が多いところで人から人へ直接感染するケースもある。

ふん便

(ノロウイルスも同時に排泄)

処理水が海に

放出される 下水処理場

○ 調理後、器具類の

洗浄、消毒不十分

○ 調理者の手指洗浄

不足

など

○ 調理後、器具類の

洗浄、消毒不十分

○ 調理者の手指洗浄

不足

など

○ ノロウイルスが

二枚貝以外の食

品にも付着する

→「二次感染」

ノロウイルスが

二枚貝の体内に

蓄積する

人に感染!!

○ 吐物、便を介して人に感染

○ 人→人へ感染

※処理水にノロウイルスが含まれる

※海水ノロウイルスが含まれる

生で食べる

加熱不十分

食べる 調理する 調理する

感染経路イメージ

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ウエルシュ菌

○ウエルシュ菌の特徴

・毒素を産生し、これを摂取することによって食中毒がおこる。

・易熱性の芽胞を形成する(100℃、数分の加熱で死滅する)。

・一部の芽胞は耐熱性であり、通常の調理方法では死滅せずに生存する。

(100℃、1~6時間の加熱でも生存)

・ヒトや家畜、鶏、動物の腸管内、土壌、下水など自然界に広く分布する。

○主な原因食品

・肉、魚介類、野菜類およびこれらを使用した煮物

・弁当、仕出し関連食品

・複合調理食品 等

①ウエルシュ菌の耐熱性芽胞は、通常の調理方法では死滅せずに生存する。

②芽胞は、調理によって加熱処理を受けると発芽しやすくなる。

特に、耐熱性芽胞の発芽率は、熱処理によって著しく上昇する。

③調理による加熱によって、食品内に含まれる酸素が追い出される(嫌気状態)。

これは、ウエルシュ菌が発育するのに好適な条件。

④ウエルシュ菌の発育至適温度は43~45℃。50℃でも発育できる。

加熱調理食品が冷却される過程で、すでに増殖が始まっている可能性がある。

⑤菌が増殖した食品を食べると、腸管内で芽胞に変わり、このとき毒素を産生し、食中

毒を起こす。

○主な症状

腹痛、下痢

・嘔吐、発熱はほとんど見られない。

・重症の場合は粘液血液の混じる水様便を呈することもある。

○潜伏時間

8~20時間 (平均約12時間)

①食肉、食鳥処理場では、衛生的な解体処理を行い、食肉への汚染を防ぐ。

②加熱調理したものを、なるべく早く食べる。

③加熱調理した食品を冷却する場合は、小分けし、すみやかに20℃以下にする。

④保存する場合は、10℃以下または55℃以上に保つ。

ウエルシュ菌による食中毒防止のポイント

**食品がウエルシュ菌食中毒の原因食になる過程**

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黄色ブドウ球菌

○黄色ブドウ球菌の特徴

・毒素(エンテロトキシン)を産生し、これを摂取することによって食中毒がおこ

る。

・エンテロトキシンは、100℃で30分間の加熱でも破壊されない。

・菌は熱処理(60℃、30分間)や、消毒などによって容易に殺菌される。

・5℃以下ではほとんど増殖しない。

・健常者の鼻、咽頭、毛髪、腸管などに常在する。

(健常者の本菌保有率は 20~30%と考えられている)

・自然界に広く分布する。

○主な原因食品

食品取扱者の手指を介して汚染を受けたもの

おにぎり、すし、そうざい、弁当

生菓子(シュークリーム) 等

○主な症状

悪心、嘔気、嘔吐(特に激しい)、腹痛、下痢

○潜伏時間

1~5時間 (平均約3時間)

①加熱調理後の食品に、素手で触れない。

やむを得ず触れなければならない時は

清潔な使い捨て手袋等を着用する。

②マスクや帽子を着用する。

咳やくしゃみ等からの汚染を防止する。

③手指や皮膚に化膿病巣のある人は、調理に従事しない。

④加熱、冷却を適切に行い、食品中での菌の増殖を防ぐ。

⑤供給能力以上の受注をしない。

調理開始から摂食までの時間が長くなることがある。

黄色ブドウ球菌による食中毒防止のポイント

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腸炎ビブリオ

○腸炎ビブリオの特徴

・他の細菌よりも、増殖速度が速い。(一般の細菌の3~5倍の速さ)

・海水域に分布する。

・真水に弱い。

・加熱に弱い。

・海水と同じ塩分濃度でよく発育、増殖する。

・海水温が 20℃を超えると急速に増殖する。

○主な原因食品

・海産魚介類

・海産魚介類からまな板、ふきん、手指などを介して二次汚染を受けた食品

○主な症状

下痢(水様性、粘血便)、発熱、腹痛(上腹部)、嘔吐

○潜伏時間

4~28時間

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①魚介類の低温保存を徹底する

仕入れから調理直前まで。

10℃以下で保存(4℃以下が望ましい)

②魚介類は、調理前に真水の流水でよく洗う。

③二次汚染対策を徹底する

魚介類専用の調理器具を使う。

使用後の調理器具は、よく洗浄殺菌する。

④十分に加熱する

中心温度 75℃以上、1分間以上

⑤調理後、できるだけ速やかに食べる(増やさない)

腸炎ビブリオによる食中毒防止のポイント

セレウス菌

○セレウス菌の特徴

・セレウス菌による食中毒には、「下痢型」と「嘔吐型」とがある。

・100℃で30分の加熱にも耐える、耐熱性の芽胞を形成する。

・タンパク質などの分解性が高く、食品の腐敗や変敗などをおこす。

・自然環境中(土壌、塵埃、河川水、植物等)に、芽胞として生存する。

○嘔吐型食中毒の特徴

原因食品:穀類の調理品(米飯、焼きめし、焼きそば、スパゲッティ等)

※食品中でセレウス菌が増殖し、 嘔吐毒(セレウリド)が産生される。

これを摂取することで発症する。

潜伏時間:1~5時間

主な症状 :悪心、嘔吐 (まれに腹痛、下痢)

○下痢型食中毒の特徴

原因食品:食肉製品、スープ、プリン、ソース、弁当 等

※食品中に混在するセレウス菌が腸管内で増殖し、下痢性毒素(エンテ

ロトキシン)を産生して、発症させる。

潜伏時間:8~16時間

主な症状:腹痛、下痢 (偶発的に悪心、嘔吐、発熱)

~①食品中のセレウス菌の増殖を防ぐ ②芽胞の発芽を抑制する ~

・一度に大量の炊飯をしない。

・焼きめしなどの調理から喫食までの時間を短くする。

・セレウス菌が増殖する10~45℃に、調理済みの食品を保存しない。

・米飯、焼きめし類は、常温に2時間以上放置しない。

*調理後すみやかに冷蔵庫に入れる

*米飯類は小分けし、急速冷却

・焼きめしに使用する卵やその他の食材は、新鮮なものを使用する。

セレウス菌による食中毒防止のポイント

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?どうして起こった食中毒? ~その1~

居酒屋の食事による食中毒事件

ある居酒屋で食事をした複数のグループが、下痢、発熱、嘔吐等の症状を訴え、医療機

関を受診した。

どのグループも同じコース料理を注文しており、メニューは鶏たたき、サラダ、焼き鳥、

焼きめし等であった。患者便を検査したところ、カンピロバクター・ジェジュニが検出さ

れた。

この居酒屋では大型冷蔵庫を設置し、庫内温度は常に4℃以下に保たれていた。鶏肉は

毎日、食鳥処理施設で当日処理された新鮮なものを仕入れ、冷蔵庫の上段に保管していた。

サラダ用の野菜は洗浄、カットした後、ザルに入れ、冷蔵庫の下段に保管していた。

まな板と包丁は、「生もの用」と「加熱もの用」を区別して使用しており、サラダと鶏

たたきは生ものなので同じまな板、包丁を使用していた。

調理や盛り付けは手早く行い、食材を室温に放置するようなことは行っていない。店内

はきちんと整理整頓され、清掃も行き届いていて、メニューの盛り付けは使い捨て手袋を

使用していた。

なぜ、食中毒が起こったのでしょうか?

解答例

1 原材料の汚染

カンピロバクターは動物の腸管内に存在し、特に鶏の保菌率が高いと言われています。

原材料(鶏肉)は新鮮なものであっても、処理の段階から菌が付着していた可能性は高

いと思われます。

《こうすればよかった!》

肉類は汚染があるとの認識を持ち、生での提供は控える。

2 二次汚染

冷蔵庫内で肉より下段に野菜を保存すると、肉のドリップが野菜に付着する可能性が

あります。また、サラダと鶏たたきのまな板、包丁を兼用すると、鶏肉に付着していた

菌が、まな板、包丁を介してサラダに付着する可能性があります。

《こうすればよかった!》

肉は密閉容器に入れ、ドリップが漏れ出ないようにして野菜より下段に保管する。カ

ット後の野菜は、袋やラップなどで外部からの汚染を遮断し、上段に保管する。肉用と

野菜用のまな板、包丁は区別する。

3 温度管理の油断

カンピロバクターは少量の菌でも食中毒をおこします。新鮮な原材料を仕入れて温度

管理を徹底し、菌が増える時間を与えなくても、殺菌する工程がなければ食中毒を防ぐ

ことは難しいと考えられます。

《こうすればよかった!》

温度管理を徹底した上で、肉の中心部までしっかりと加熱したメニューを提供する。

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?どうして起こった食中毒? ~その2~

親子丼よる食中毒事件

ある定食屋で食事をした複数のグループが、腹痛、下痢、発熱等の症状を訴え、医療機

関を受診し、患者便からサルモネラ属菌が検出された。患者は全員、親子丼(漬物付き)

を注文していた。

親子丼に使用する鶏肉は、新鮮なものを仕入れ、店内の冷蔵庫に保管し、調理時には肉

の中心部までしっかりと加熱していた。

卵も新鮮なものを仕入れ、あらかじめ割卵してボールに入れたものを調理場内に置いて

使用し、親子丼の注文数に応じて、同じボールに追加で割卵していた。使用している卵は

生食用なので、調理時には半熟状態で提供していた。

また、従業員は、生食用の卵をさわった後の手洗いは不要と考え、そのままの手で漬物

を切って盛りつけていた。漬物は、ある程度まとめて切りわけたものを、1 人分ずつ皿に

盛り付け、調理場内に置いていた。

なぜ、食中毒が起こったのでしょうか?

解答例

1 原材料の汚染

卵の内部にはサルモネラがいることがあります。サルモネラは、割卵後、増殖し始め

ます。割卵後の卵そのものは、すぐに使用していても、同じ容器に追加して割卵を続け

ると、容器内でサルモネラが増殖します。

《こうすればよかった!》

卵は使用する直前に割卵する。同じ容器に追加して割卵しない。

2 二次汚染

卵の殻にはサルモネラ以外にも菌が付着している可能性があります。生食用の卵であ

っても、さわった後は手洗いが必要です。

《こうすればよかった!》

卵を調理した従業員は、手をしっかり洗浄、消毒してから他の作業を行う。

3 温度管理の不備

食材に付着したサルモネラは室温に放置されることで増殖します。気温の高い夏場は

もちろん、冬場であっても調理場内は温度、湿度が高くなることが多いため、温度管理

の不備がサルモネラの増殖を招きます。

《こうすればよかった!》

卵は使用する直前まで冷蔵庫内で保管する。切り分けた漬物は、ラップ等で外部から

の汚染を遮断し、冷蔵庫内に保管する。

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?どうして起こった食中毒? ~その3~

レストランの食事よる食中毒事件

あるレストランで食事をした多数の客が、嘔吐、下痢等の症状を訴え、医療機関を受診

し、患者便及び調理従事者便からノロウイルスが検出された。

このレストランでは、従業員用トイレと客用トイレが区別されておらず、共通のトイレ

を使用していた。事件の2日前に、客の 1 人がトイレで嘔吐したため、従業員があわてて

トイレの清掃を行った。清掃を行う際は、通常の調理作業と同じ服を着用し、手袋やマス

クは使用しなかった。

食中毒がおきた当日は、清掃を行った従業員は朝から体調不良で下痢をおこしていたが、

予約客が多数入っていたため、無理をして出勤し、盛り付け作業等に従事した。

レストランの厨房は最新の調理機器を導入していたが、手洗設備は小さくて使いづらく、

消毒液は入っていなかった。

なぜ、食中毒が起こったのでしょうか?

解答例

1 従業員の健康管理

体調不良の従業員はノロウイルス感染による下痢を発症していたにもかかわらず、そ

のまま調理作業に従事し、手指を介して汚染を拡大させました。

《こうすればよかった!》

嘔吐、下痢等の症状がある場合は、調理作業に従事しない。営業者は毎日従事前に、

従業員の健康チェックを行う。

2 手洗いの徹底

手洗設備は使いづらく、消毒液も切れており、効果的な手洗いが行われていませんで

した。

《こうすればよかった!》

作業動線を考慮して、使いやすい場所に手洗設備を設置する。営業者は従業員に対す

る衛生教育を行い、効果的な手洗いを実施し、手指による汚染拡大を防止する。

3 感染予防

嘔吐物や便中にはノロウイルスが含まれている可能性があり、無防備な状態で処理を

行うと、処理した人が感染する場合があります。汚物の処理を行う際は、自分が感染し

ないよう防御することが必要です。

《こうすればよかった!》

嘔吐物、便を処理する際は、使い捨てエプロン、手袋、マスクを着用する。使用後は

それらを調理場内に持ち込まず、廃棄処分する。汚物を処理した場所は、十分に清掃下

後、必ず次亜塩素酸ナトリウムで消毒も行う。

[C]食中毒を起こしたら ひとたび食中毒を起こしたら、相当の損害を賠償しなければなりません。さらに店の信用をおと

し、営業不振を招きます。

営業者に課せられた責任とは・・・・・・

法 的 責 任

責 任

行政上の責任: 食品衛生法による営業の禁停止処分

刑事上の責任: 刑法による刑事処分

民事上の責任: 民法、製造物責任法(PL法)

損害賠償、慰謝料など

社会的道義的責任 被害者救済の責任、同業者への影響

食品衛生協会会員の経営安定と消費者保護のために

食品営業賠償共済のすすめ

万一、こんなときあなたはどうされますか・・・?

賠償共済 ◎ お客様が食中毒にかかり、「治療費を払え」 →→

といってきたら!!

休業保障 ◎ 食品事故が起こったため、やむなく一時休業し →→

たとき!!

※ 詳しくは、食品衛生協会の窓口へお尋ね下さい。

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