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1 那覇市民泊施設実態調査報告書 概要版 目次 1. 民泊を取り巻く状況の整理 1-1. 概況 .............................................................................1-2. 住宅宿泊事業法制定までの経緯 ....................2. 民泊施設実態調査とヒアリングの結果概要 2-1. 調査の前提 ...............................................................2-2. 市内民泊施設の状況............................................2-3.地域別概況...............................................................2-4.関係者の意見 ..........................................................3. 分析及び検討 3-1. 市内宿泊施設の推移予測.................................. 3-2. 民泊の経済効果の分析 ....................................... 3-3. 民泊サービスへの対応方向性 ...................... 10 この調査は、那覇市の観光施策を推進するにあたり、市内における概ねの民泊施 設の実態を調査・把握するとともに、本市の宿泊環境の課題と特徴を分析し、住民 の安全・安心な生活環境の保全と、多様化するツーリズムスタイルに対応した宿泊 環境のあり方について検討することを目的としています。 那覇市 2018年1月

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Page 1: 那覇市民泊施設実態調査報告書 概要版 - Naha · 2 那覇市民泊施設実態調査報告書 概要版 第1章.民泊を取り巻く状況の整理 1-1.概況 2017年6月に住宅宿泊事業法が成立し、今年6月15日の施行が決定したことから、本市を含む都道府県及

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那覇市民泊施設実態調査報告書 概要版

那覇市民泊施設実態調査報告書

概要版

目次

1. 民泊を取り巻く状況の整理

1-1. 概況 ............................................................................. 2

1-2. 住宅宿泊事業法制定までの経緯 .................... 2

2. 民泊施設実態調査とヒアリングの結果概要

2-1. 調査の前提 ............................................................... 3

2-2. 市内民泊施設の状況............................................ 3

2-3.地域別概況 ............................................................... 6

2-4.関係者の意見 .......................................................... 6

3. 分析及び検討

3-1. 市内宿泊施設の推移予測 .................................. 8

3-2. 民泊の経済効果の分析 ....................................... 9

3-3. 民泊サービスへの対応方向性 ...................... 10

この調査は、那覇市の観光施策を推進するにあたり、市内における概ねの民泊施設の実態を調査・把握するとともに、本市の宿泊環境の課題と特徴を分析し、住民の安全・安心な生活環境の保全と、多様化するツーリズムスタイルに対応した宿泊環境のあり方について検討することを目的としています。

目的

那覇市 2018年1月

Page 2: 那覇市民泊施設実態調査報告書 概要版 - Naha · 2 那覇市民泊施設実態調査報告書 概要版 第1章.民泊を取り巻く状況の整理 1-1.概況 2017年6月に住宅宿泊事業法が成立し、今年6月15日の施行が決定したことから、本市を含む都道府県及

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那覇市民泊施設実態調査報告書 概要版

第1章.民泊を取り巻く状況の整理

1-1.概況

2017年6月に住宅宿泊事業法が成立し、今年6月15日の施行が決定したことから、本市を含む都道府県及

び保健所設置市では、地域の実態把握や実情をふまえたルール・条例案等の検討が進められています。

民泊仲介最大手のAirbnb(エアビーアンドビー)社によると、2016年度に同社サービスを利用した訪日外国人

は400万人を越え、登録されている全国の施設件数は約52,000件(2017年6月時点)と急激に拡大していま

す。都道府県別の登録件数では東京都、大阪府、京都府に次いで沖縄県が4位※に、さらに「訪日ゲストが滞

在した上位10都市」には、東京、大阪、京都、福岡、札幌といった国内の観光人気都市に次いで那覇市は6位

にランクインしており、本市においても民泊施設の利用と施設数の増加が相当進んでいるとみられます。

民泊サービスの急増にともない、多くのトラブル・迷惑行為(騒音・ゴミ・駐車場等)が報告されるようになって

きました。残念ながらこの多くが違法状態で営業されており、既存宿泊施設との公平性が保たれていないことも

大きな問題です。一方で、これほどの利用拡大が引き起こす

旅行者ニーズの高さ(シェアリングエコノミーの浸透)や、空き

家活用による住宅ストック問題の解消、さらには新たな民泊

ビジネス創出による経済効果といった民泊推進の必要性も

認められます。

現在、多くの自治体において条例などの独自ルールが検

討されています。いずれも、地域社会と宿泊者の安心・安全

を最優先した上で、地域の実情と意志を十分にふまえた適

切な法の運用や観光利益の社会波及が期待されています。

1-2.住宅宿泊事業法制定までの経緯

民泊需要の高まりを受け、国が最初にとった

対策は特区民泊であり、2015年10月に東京都

大田区が全国初の区域計画の認定を受けたこ

とからいわゆる都市型民泊が開始されました。

同年11月には、「民泊サービス」のあり方に関

する検討会が開催され(13回開催)、民泊サー

ビス制度の骨格をはじめ、旅館業法などの関連

法の改正案も実質的に同検討会において検

討・審議されました。以降の民泊新法について

の検討・審議は2016年9月に設置された規制

改革推進会議に所管され、国土交通省(観光

庁)、厚生労働省をはじめとした関係省庁によっ

て同法案が作成され、2017年3月に国会提

出、同年6月に可決・公布されています。具体

的な運用基準が示された施行規則及びガイド

ラインが固まったのは同年12月末です。

表 ⺠泊新法制定・施⾏までの関連する主な検討・法改正等 2013/12/13 国家戦略特区法・公布 「旅館業法の特例」を措置

(特区民泊が可能となる) 2015/6/30 規制改革実施計画が閣議決定 決定を受け「「民泊サ

ービス」のあり方に関する検討会」が設置 2015/10/20 東京都大田区が全国初の特区民泊区域計画認定 2015/11/27 第1回「民泊サービス」のあり方に関する検討会 2016/4/1 旅館業法改正 簡易宿所の客室延床面積条件、玄関

帳場の設置義務が緩和 2016/6/20 第13回「民泊サービス」のあり方に関する検討会 「民

泊の制度設計のあり方について」公表 2016/9〜 規制改革推進会議が設置され、民泊新法に関する検

討・審議が所管される 2016/10/31 国家戦略特区法施行令改正 特区民泊での滞在日

数が緩和(2泊3日以上9泊10日以下に変更)される 2016/10〜 全国民泊実態調査の実施(厚生労働省) 2017/3/10 住宅宿泊事業法案を第193回国会に提出 2017/6/16 住宅宿泊事業法公布 2017/10/27 住宅宿泊事業法の施行期日を定める政令及び住宅

宿泊事業法施行令を公布 2017/12/15 旅館業法の改正 無許可事業者への立入検査権限が

付与され、罰金額が引上げられる 2017/12/26 住宅宿泊事業法施行要領(民泊新法ガイドライン)公

表 2018/3/15 住宅宿泊事業届出の受付開始 2018/6/15 住宅宿泊事業法の施行

安心と安全の確保が最優先

社会全体 地域社会 宿泊者

違法性

是正

公平性

担保

旅行者

ニーズ

住宅

ストック

民泊

ビジネス

無許可営業 取締・合法化

異文化交流 日常体験

経済波及効果

空き家問題 地域活性化

既存施設との イコール

フッティング

※民泊総合ポータルサイト「民泊大学」の調査による(AirbDatabankが公開したデータを民泊大学が集計)

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那覇市民泊施設実態調査報告書 概要版

第2章.民泊施設実態調査とヒアリングの結果概要

2-1.調査の前提

本調査では、以下の方針に基づき、本市における民泊施設の傾向や課題を整理しました。

1 大手民泊仲介サイ

トのエアビーアンド

ビーの情報が基本

主たる民泊仲介サイトの中でAirbnb社(エアビーアンドビー)の掲載件数が600

件超と圧倒的に多く、同社以外の民泊仲介サイトに掲載されている情報ともか

なり重複していたことから、同社の情報を集中的に調査しました(平成29年7

月1日時点で掲載が認められた全物件※1)。また、同社についてのデータ分

析サービス「BnB Insight」(株式会社ゴーリスト)から情報を入手しました。

一部民泊施設の

位置情報は、ある

程度の誤差を許容

する

民泊仲介サイトは、ホストのプライバシー保護、不正防止等を理由に、民泊施

設の所在地を非公開としています。エアビーアンドビーのサイト上で得られるの

は半径約500mの円で示される地図情報のみですが、ほとんどの物件が

100m未満のズレに収まったため、所在地を特定できなかった施設について

は、画面上に表示された円の中心座標から割り出した住所を採用します。

※1 本調査における「物件」とは、民泊仲介サイト上に掲載されているもの(「リスティング」と呼ばれる)すべてです。これには建物

(1棟)と部屋(1室)が混在しており、物件数=建物数ではないことに留意してください。

2-2.市内民泊施設の状況

①民泊施設の分布及びタイプ

� 市内の⺠泊施設数は622件でした。那覇中央地域に約半数の301件が所在し、次いで多いのが那覇北地域(100件)、那覇⻄地域(92件)であり、宿泊・商業施設が集積するエリアへの集中が⽬⽴っています。このうち本調査で所在地を特定できた⺠泊施設は399件(64%)でした。

� 施設のタイプとしては、集合住宅が472件(76%)で最多で、⼾建て住宅は65件と全体の1割程度です。いずれも⼀棟またはアパート・マンションの⼀⼾をまるごと「貸切」とするタイプが多く、全体の82%が「貸切」です。

平成36年度目標値

表 地域分布及び所在地特定数 地域区分 所在地特定 所在地未特定 合計

那覇新港周辺 14 4 18

那覇北地域 47 53 100

首里北地域 5 1 6

首里地域 1 8 9

真和志地域 23 15 38

那覇中央地域 228 73 301

那覇西地域 62 30 92

小禄地域 18 38 56

那覇空港周辺 1 1 2

合計 399 223 622

構成比 64% 36% 100%

那覇市観光の概況

o 那覇空港や那覇クルーズターミナルを要する本市は、まさに沖縄観光のゲートウェイであり、平成28年(暦年)の⼊込客数は約751万⼈で、沖縄県への観光客の約87%が本市を訪れています。

o 本市への観光客の内訳は、国内客が約577万⼈(77%)で、外国客が約174万⼈(23%)である。このうち、市内のホテル・旅館に宿泊した客数は437万⼈で平均宿泊数は1.46泊、宿泊客⼀⼈あたり消費額は7.3万となっています。

o 「那覇市観光基本計画」において、平成36年度の⽬標値として市内宿泊客数500万⼈※2、平均宿泊数2.6泊、消費額9万円/⼈を⽰しています。

宿泊客数:500万人※2

9万円/人 2.6泊/人

平成28年実績

751万人

437万人

174万人

入込客数

外国客

宿泊客数

※2 旅館・ホテルを対象した推計を元に⽰された「観光振興計画」での⽬標値。本調査では簡易宿所も含めて推計を⾏い、⽬標値を約600万⼈に補正しました。

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� 住居専⽤地域が⼤半を占める真和志地域に⼾建て住宅が占 め る 割 合 ( 14/38 件 37%)が⾼い⼀⽅で、ドミトリーやゲストハウスが多い那覇⻄地域は宿泊関連施設の割合(34/92件 37%)が⾼くなっています。

� ⾸⾥地域(11%)、⼩禄地域(32%)など住居専⽤地域が主の地域での特定率が低く、⺠泊運営が周辺住⺠にもわかりにくい状況ではないかと推測されます。

②民泊施設の所在地における用途地域の適合性

� 旅館業の許可を得るためには、取得可能な⽤途地域内に所在している必要があります。しかし、旅館業の許可を取得できないエリア(第1種・第2種低層住居専⽤地域/中⾼層住居専⽤地域、⼯業地域、⼯業専⽤地域、⽂教地区)に所在している施設が196件(32%)ありました。

� ⼩禄・真和志地区では、旅館業を取得できる⽴地にある物件割合が1割程度であり、不適合状態で運営している物件が多いのが特徴です。

③民泊施設の利用条件

� 宿泊定員を「2⼈まで」とする物件が183件(29%)と最も多く、「4⼈以下」とする物件を合計すると376件で約6割になります。

� また、集合住宅で「6⼈以上」を合計すると135件となり、これは集合住宅全体の約3割に及びます。これらの集合住宅の多くが2LDK程度であり、⼤⼈数の宿泊による騒⾳やゴミの問題が発⽣している可能性が考えられます。

� 全⺠泊施設の宿泊キャパシティは3,160⼈、平均定員数は5.1⼈です。地域別には真和志地域で7.8⼈と多く、施設タイプ別には⼾建てで8.3⼈と、集合住宅(5.0⼈)の1.7倍(+3.3⼈)のキャパがあります。

� 約7割が「1泊」からの宿泊を可能としており、「2泊以上」は87件(14%)です。本市においては、ゲストの⻑期滞在ニーズがそれほど⾼くはないことがみてとれます。

� 物件の多くは、滞在期間中はゲスト⾃⾝が清掃することを条件としています。

� 最も多い価格帯は5千円〜1万円で229件(37%)です。約8割の物件が1泊1万円未満の料⾦設定であり、リーズナブルな価格帯が多いのが特徴です。3万円以上の物件はわずか20件、4%にとどまっています。

� ほとんどの物件が⺠泊仲介サイトによって半ば⾃動的に料⾦調整されているとみられ、沖縄観光の繁忙期と閑散期

図 地域区分と⺠泊施設の所在件数

※国⼟地理院 電⼦地形図(タイル)を加⼯して作成

図 旅館業法における⽤途地域及び⽂教地区の規制状況

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那覇市民泊施設実態調査報告書 概要版

で価格が⼤きく変動している可能性が⾼いと思われます。

④旅館業法の営業許可の有無

� 調査した622件中、旅館業法の許可を得ている施設は100件(16%)であり、8割以上の物件が無許可営業であることがわかりました。

� 地域別には、⾸⾥北、⾸⾥、真和志の各地域で100%、⼩禄地域で96%の⺠泊施設が無許可営業の状態であり、そもそも旅館業の許可が取得できない住居専⽤地域が⼤半を占める地域での違法状態がみられます。

� 許可施設の内訳は、簡易宿所(45件)よりも旅館(55件)が上回っていますが、旅館の許可を得た新築集合住宅を⼀棟丸ごと登録しているケースの影響が⼤きいと考えられます。

� 2015年以降の旅館、簡易宿所の許可件数が急増しています。「旅館」を取得している施設は⽐較的規模が⼤きいことから、集合住宅型の物件であるとみられます。

� 無許可事業者のなかには実際と異なる若い⼥性の写真素材を⽤いたアカウントを⽤いるところもあり、ゲストに好まれる写真を利⽤してより魅⼒的な物件イメージを演出することで、成約率を⾼めようとする事例がありました。

⑤民泊施設を運営している事業者(民泊ホスト)

� 物件の約半数の312件のホストが那覇市内を所在地としており、沖縄県内とした場合は419件(67%)になります。ただし、⾃⼰申告であり、実際とは異なる可能性も否定できません。

� 複数物件を所有するホストもいるので、物件の運営事業者数は242件となり、那覇市内を所在地としているホストは87件(36%)、沖縄県内は142件(59%)です。

� 管理物件数が1件であるホストが6割(145/242事業者)おり、3件以下では83%(200事業者)に達します。平均物件保持数では、市内居住ホストが3.6件と最も⾼くなりました(全体平均+1.0件)。

� ⼀⽅、10件以上の物件を管理しているホストも⼀定数みられ、その多くが無許可営業と推測されます。

� 沖縄県内に所在するホストが運営している割合は、⼾建て物件(74%)のほうが集合住宅(68%)よりもやや上回っています。

⑥事業形態(家主居住型/家主不在型)

� 旅館業法の許可施設を除いた522件中、家主居住型(ホームステイ型)の物件は40件(8%)と本市では⾮常に少なく、⼤半が家主不在型の物件です。

� 住居専⽤地域が多いエリア(⼩禄、真和志地域)において家主居住率がやや⾼かったですが、那覇北地域(新都⼼など)では家主居住型がわずか2%でした。

図 旅館業法の営業許可件数の推移(2017年12⽉20⽇現在)

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那覇市民泊施設実態調査報告書 概要版

2-3.地域別概況

地域区分 概況

那覇中央地域 市内民泊施設の約半数(301件)が確認されたエリア。

ほぼ全域が旅館業を取得可能な用途地域(文教地区は除く)。旅館業許可を取得している物

件も多く、所在地の特定率も高い(76%)。

マンションやアパートを一棟丸ごと登録している物件も散見され、ビジネス民泊が進んでいる。

那覇西地域 市内では3番目に多い92件の物件が確認されたエリア。

ほぼ全域が旅館業を取得可能な用途地域(文教地区は除く)。旅館業許可を取得している物

件も多く、所在地の特定率も高い(67%)。

那覇北地域 市内では2番目に多い100件の物件が確認されたエリア。

新都心エリアを要し住居専用地域の面積も広いが、同地域に立地する施設は非常に少なく、7

7%が用途地域に適合している(商業地域に集中している)。

高層マンションが多く、眺望をアピールした物件、「新都心」としてアクセスの良さや商業施設等

の利便性をアピールした物件が多い。

真和志地域 住居専用地域が大半を占めながらも、物件数は38件と比較的多い。

戸建て物件の割合が37%と最も高く、比較的築年数の高い物件が多い。

用途地域に適合している割合がわずか11%である。

小禄地域 住居専用地域が大半を占めながらも、物件数は56件と多い。これは那覇空港からの近さやモ

ノレールの利便性による旅行者の宿泊需要の高さを反映したものと推測される。

用途地域に適合している割合がわずか13%である。

家主居住型の割合が17%と最も高い。

集合住宅が8割近いが、高層マンションというよりも比較的低層のアパートが多い。

那覇新港周辺 港湾エリアが大半を占めており、そもそも住居は多くはなく、物件数は18件であった。

首里北地域

首里地域

いずれも住居専用地域が大半を占める地域。首里城公園に近いものの、国際通りなどの繁華

街から遠くなるためか、確認された物件数は合わせても15件であった。

比較的戸建て物件が多い(首里22%、首里北17%)。

用途地域に適合している割合がわずか(首里11%、首里北17%)である。

首里城公園や首里金城石畳道といった歴史文化資源へのアクセスの良さをアピールした物件

が目立った。

2-4.関係者の意見

民泊に関する意見を把握するために、ヒアリング調査を実施しました。対象は、民泊運営事業者、マンション

管理組合等の団体、観光関連団体、宿泊業関連団体、不動産業関連団体などです。

現状の民泊に対する意見

o ⺠泊に対するクレーム(騒⾳・ゴミ・駐⾞等)は約3年前から寄せられるようになった(1〜2件/⽉)。 o 現⾏の市内での⺠泊は地域での⽂化交流もなく、ビジネス型が多い。違法運営も多く看過できるものではない。

農家⺠宿など住⺠と来訪者が交流し、⽂化を伝える仕組みが整っている⺠泊は賛成する。 o 違法⺠泊は監視・取締を徹底すべき。放置しておいては⺠泊そのものが社会の信⽤を得られない。違法と合法

が同じ⼟俵で勝負すること⾃体がおかしい。 o マンションを⼀棟購⼊し、簡易宿所や無許可営業で⺠泊ビジネスを始める事業者も増えている。 o 隠れ⺠泊・違法⺠泊の問題は⾮常に⼤きく、会員からも相談が寄せられている。注意しても「⾃社の社員が宿

泊しているだけ」と偽るケースもある。 o 不動産業や企業ではなく、個⼈が管理する賃貸物件では違法⺠泊が実施されている可能性は否定できない。

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那覇市民泊施設実態調査報告書 概要版

新法施行後の適法化の推進

o ⺠泊というビジネス機会が増えることは賛成できるが、不正が⽣じないような⺠泊事業者の情報管理などフェアなビジネス環境をと整えることが先決だ。⺠泊新法のルール(⽤途地域や上限⽇数など)を守らせる仕組みがない状態ではスタートすべきではない。

o 市内ホテルの室数は増加しており、客室数が少なくなるから⺠泊を進めるという理由は成⽴しない。那覇⼤綱挽やNAHAマラソンなど⼤型イベントの開催時期でも宿泊施設の不⾜は⽣じていない。

o 合法⺠泊は推進すべき。マーケットが望んでおり、沖縄が観光先進地であるためには多様な宿泊サービスを⽣み出すことが必要だ。

o ホテルと⺠泊は共存できる。満室となることが多い週末に⺠泊を利⽤する旅⾏者も出てきている。 o 宿泊施設の少ない地域では⺠泊は振興されるべきである。ただし、⽂教地区においては⺠泊も制限すべき。 o 中北部の空き家・空き室が増えている地域こそ⺠泊を推進すべきではないか。 o 住居専⽤地域では家主居住型のみを認め、家主不在型は制限するなど、最初はある程度制限してスタートす

べき。⺠泊事業者あたりの届出物件数の上限を設定することも要検討。 o 会員から上限⽇数(180⽇)緩和等を求める声は上がってきていない。 o 通常の分譲マンションで⺠泊を⾏うには管理規約を改正する必要があるため難しいだろう。賃貸物件での空き室

対策としての⺠泊も、他の⼊居者の合意を得られないので容易ではない。

今後の民泊の課題や懸念

o 県や市の上位の観光⽬標等に沿った⽅向で⺠泊が展開されるのかが問題。施策への適合や⺠泊営業の透明化が実現されるのであれば、ホテル組合としても⼗分に協⼒はできる。

o 家賃相場が⾼騰するという懸念については、南部エリアでは築10年物件でも家賃が上がることがあり、⺠泊が要因でさらに上がるとは考えがたい。

o 上限⽇数、情報管理、納税義務など懸念が多い。犯罪者が潜伏するかもというリスクもある。⼤きな被害が出た場合に、地域住⺠の観光への理解が得られなくなるのではないか。

o 中⼩のホテルは⺠泊との価格競争で、かなり厳しい状況になってきている。旅館業法に準拠するための投資コストや固定資産税など、⺠泊に⽐べホテルにハンディがあり、フェアな競争環境ではない。

o ⼀番の懸念は防⽕設備が不⼗分であること。消防に関しては旅館業法に準拠すべき。 o マンションの標準管理規約12条では⺠泊を阻⽌できないことが浸透していない。規約改正には区分所有者の

3/4以上の賛成が必要であり、改正できる組合は多くない(細則は1/2以上の賛成)。仮に⺠泊事業者が複数の区分を所有した場合、多数決で許可する内容で改正がなされるかもしれない。

o 空室が多い物件では、賃料を⾒直す時期に⺠泊を希望するオーナーが出てくる可能性はある。

その他の意見や要望

o ⺠泊は市のまちづくりに関わる重要な問題であり、暮らしのエリアと分ける、許可する施設タイプを定めるなど、地域ごとの実情に合ったルールを決めるべき。

o 市が⽬指す⺠泊のデザインを明確にすること。商業地域では既存ホテルと競争させつつ、住居専⽤地区ではホームステイ型を推奨するなどが考えられる。

o 市は⺠泊専⾨部署を設置し数⼗名体制で問題対応・サポートを徹底すべき。 o 市⺠やマンションの住⺠が⺠泊についてどこに相談したらよいかがわかるようにしてほしい。市で⼀元化された相談

窓⼝を準備し、即座に動ける体制、⼈員を整えてほしい。 o ⺠泊を始める事業者に対し、ツーリズム事業の⼼得を説く普及啓発機会も必要。 o 市の宿泊需要とキャパシティの推計等により⺠泊施策を決めるべきで、宿泊業は適切な競争による部屋のグレー

ドアップ、サービスの向上を狙うべき。 o 適切な⺠泊を推進するためには、不動産業者にも説明会等の普及啓発の機会を設けてほしい。

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那覇市民泊施設実態調査報告書 概要版

第3章.分析及び検討

3-1.市内宿泊施設の推移予測

住宅宿泊事業法では民泊推進の根拠のひとつとして「宿泊キャパシティ不足への対応」があげられています。

宿泊キャパの推移予測は、本調査で民泊サービスの方向性を検討する上で重要な視点となります。

直近2年のデータ(平成27・28年の12月

31日「沖縄県宿泊施設実態調査」沖縄県)

を用い、平成36年までの増加を予測しまし

た。結果として、平成36年には客室数が

22,569室、収容人数が48,737人となり、平

成28年に比べて6,712室、16,704人分のキ

ャパシティが増加する可能性があります。

一方、将来における必要客室数について

は、「那覇市観光基本計画」に平成36年度

における市内宿泊者数の目標値として年間

500万人と示されていますが、同計画では根

拠となる「宿泊施設」をホテル・旅館のみを

対象としており、本調査ではこれに簡易宿所

も含めて再計算し、平成36年度における目

標値も約600万人に補正しました。平成36

年度にこの目標値が達成され、かつ諸条件

が右表で示した値まで上昇した場合、将来

的には約2,200室が実質的に不足する可能

性があります。

15,857室

32,033人

平成28年

22,569室

48,737人

平成36年

+6,712室

+16,704人

客室数

収容人数

8年間での変化

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推計値

実績値

出典︓「観光要覧」 沖縄県(平成19〜28年)

平成36年度における諸条件 市内平均宿泊数 2.6泊

1室あたりの平均宿泊者数 2.0人

平均客室稼働率 85.0%

15,857室

平成28年

12,856室

平成36年

19,184室

21,370室

8年間での変化

必要になる

客室数

稼働する

実客室数 稼働した 1日あたりの 平均客室数

全客室数 22,569室 客室が6,712室増加

平均客室稼働率が85%に

上昇(85%が上限)

客室稼働率81.1%

年間宿泊客数600万人・2.6泊

⇒1日の平均宿泊者数42,740人

整備される 全客室数

稼働率85%を上限とした

場合約2,200室が不足する

客室稼働率85%

稼働率85%を上限としても

約620室の余裕がある

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那覇市民泊施設実態調査報告書 概要版

3-2.民泊の経済効果の分析

①個人の観光消費額の予測

平成28年度における民泊宿泊者数は概ね年間10万人程度※1であり、宿泊客一人あたりの市内消費額を

73,003円※2とした場合、民泊宿泊者による観光収入は約73億円と推計されます。一方、平成36年度におけ

る民泊宿泊者数は、仮に前項シミュレーションにおいて不足する2,200室分の全ての宿泊者(4,400人/日)の

受け皿として機能した場合、約62万人が民泊を利用することになります(平均宿泊数2.6泊※3の場合)。平成

36年度の市内消費額の目標値は90,000円であり、民泊宿泊者も同等の消費が見込めた場合、観光収入は

市全体(5,400億円)の10.3%にあたる558億円となることが予測されます。

②経済波及効果の分析

「平成28年度版 那覇市の観光統計」に示された各市内消費額をもとに那覇市版産業連関表(試作版)を

用いて経済波及効果を推計したところ、平成28年度の観光収入3,260億円に対し経済波及効果は5,220億円、

民泊宿泊者分は観光収入73億円に対し経済波及効果は119億円と、観光収入に対していずれも約1.6倍の

経済波及効果があると推計されました。

3,260億円 73億円

宿泊客1人あたりの

市内消費額

73,003円 10万人 平成28年度

62万人 90,000円 平成36年度

民泊宿泊者数

× =

民泊宿泊者による

観光収入

5,400億円

市全体の

観光収入

2.2%

558億円 10.3%

※1 エアビーアンドビー社より提供されたデータをもとに推計 ※2、3 「平成28年度版 那覇市の観光統計」(那覇市)

本市の宿泊施設はシミュレーションの結果、平成36年度に2,200室ほど不足する可

能性があることが示されました。ただし、この予測推移は宿泊施設数が一定の割合で

増加することや、市内に宿泊する旅行者の平均宿泊数が2.6泊まで上昇すること(本

市の観光目標値)など、いくつかの条件を設定した上での暫定値になります。

要約

那覇市内における民泊宿泊者数は概ね年間10万人程度で、民泊宿泊者による観光

収入は市全体の2.2%にあたる約73億円と推計されました。また、平成36年度に

2,200室不足した客室を全て民泊で対応した場合、民泊宿泊者は年間62万人とな

り、その観光収入は市全体の10.3%にあたる約558億円と予測されます。

要約

注意事項

見込まれる観光収入や経済波及効果は、様々な前提条件(仮定や目標)をもとに試算しており、あく

までも「民泊が本市にどのくらいお金を落としているのか」を知るための参考値(目安)として捉えてくだ

さい。とくに「経済波及効果」は、観光による収入が、ホテルやレストラン、タクシー、土産品店といった

観光に直接関わる業種に限らず、これらの業種で売り上げが上昇することで、他の業種にも経済効果

が波及していくことを知るための指標であり、観光が本市の経済にどのくらい貢献しているかを知ること

ができます。

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那覇市民泊施設実態調査報告書 概要版

3-3.民泊サービスへの対応方向性

以下の素案をもとに、住宅宿泊事業法にプラスする市独自の対応や、法施行後の段階的見直しについて、

さらなる検討(委員会での合意形成等を含む)を進めていきます。

民泊サービスへの対応にあたっての基本的な考え方

§ 民泊サービスを含めた宿泊環境の整備にあたっては、市民の安全を確保し、安心して暮らせる住み良い生活環境を守ることが優先される。

§ 遊休資産を活用するシェアリングエコノミーの推進は、世界的な潮流にあることを理解した上で、本市の観光目標の達成に向け、適切な民泊サービスの展開を目指す。

§ 民泊サービスは本市の宿泊施設の不足を補うことを第一義とするのではなく、多様なツーリズムニーズに応えるものととらえ、本市における既存宿泊業の存在感を重視したうえで、宿泊環境全体が高まるような民泊コントロール施策を誘導することをめざす。

§ 違法民泊の取締りを適切に実施するとともに、住宅宿泊事業法及び旅館業法にもとづく適正な営業形態への誘導、支援を検討する。

§ 家主居住型の民泊は単なる宿泊施設ではなく、本市での暮らしや文化を宿泊しながら体験する観光交流コンテンツであると認識し、この推進に向けた支援を検討する。

§ 独自ルールの検討にあたっては、国が示した住宅宿泊事業法の主旨に十分配慮した制度設計を検討する。

住宅宿泊事業法及び国のガイドラインに加えて那覇市で規制・推奨すべき方向性

住居専用地域など一

定の地域における営

業規制

住居専用地域及び文教地区(学校等施設から半径100mの範囲)における家主不在型民泊の営業に一定の制限を設ける。ただし、法施行直後の混乱が懸念されることから、沖縄県との協議を前提に、一定期間は沖縄県とルールを統一することを検討する。

共同住宅における

営業の「見える」化

共同住宅(賃貸アパート・分譲マンションのいずれにおいても)で民泊営業を行う場合は、共同住宅の他の居住者に対し、民泊営業することを事前に通知するなどの情報提供を求める。

事業計画の事前説明 近隣住民等に迷惑をかけないように、予め近隣の自治会などへ民泊を行うことの説明義務を定める。

宿泊事業者の要件 近隣住民等に迷惑をかけないように、民泊を営業していることを示す標識の適切な表示方法を定める。

宿泊事業者・管理事

業者の駆けつけ 家主不在型民泊に対し、住宅宿泊管理業者(もしくは事業者)が、宿泊者、近隣住民、警察等と確実に連絡できる通信手段の携帯及び迅速な駆けつけ方法を定める。

対面による本人確認 住宅宿泊管理業者(もしくは事業者、鍵の受け渡しの代行者等)が対面での本人確認及び必要事項の説明を行うことを努力義務とするよう定める。

安全・衛生の確保、

適正な廃棄物処理 近隣住民等に迷惑をかけないように、適切な廃棄物処理とその確認方法を定める。ただし、家主居住型民泊については軽減措置の必要性を検討する。

無許可営業物件及び

新築家屋の取扱い 違法民泊や定められた条件を履行しない民泊には厳しく対処する。入居者募集や居住履歴の確認については、届出時のチェックや宅建業と連携する方法を検討する。

利用者に対する啓発 近隣住民等に迷惑をかけないように、迷惑行為を抑止する宿泊者のマナーを設定し、適切な掲示・情報発信方法を定める。

優良民泊の表彰・認

定 民泊のノウハウとホスピタリティを兼ね備え、高い顧客満足度を得ている住宅宿泊事業者を表彰または認定する制度の創出、ホスト人材の育成方法について検討する。

対応

住宅宿泊事業法やガイドラインが示す内容に加えて、独自ルールの制定や実施制限の条例

化にあたっては有識者等による十分な検討や合意形成が求められます。2018年6月の法施

行が迫る中においては、本調査結果を念頭に置きつつ、沖縄県条例(案)をベースに置いた調

整・協議を優先し、法施行後の社会的影響に注視しながら、必要に応じて本市の地域性を鑑みた

仕組みの構築ならびに関連施策の展開に取り組みます。