食道静脈瘤硬化療法後の再発と治療 - coreeis終...

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688 Vol. 33(4), Apr. 1991 食道静脈瘤硬化療法後 の再発 と治療 北原 大文 ・酒 井 英訓 ・稲葉 宏 ・早田 謙一 小林 良正 ・長 沢 正通 ・松田 裕子 ・松本 正廣 河崎 恒久 ・金 井 弘一 要 旨:内 視 鏡 的硬 化 療法(EIS)後 の食 道 静脈 瘤 の 再発 に つい て検 討 した.EIS施行101例の再 発 率 は完 全 消 失60 例 で は平 均3年5カ 月 の観 察 期 間 中8.3%と低 率 で あ ったが,静脈 瘤 残 存41例中3カ 月以 上 の経 過 を追 えた27例 で は平均2年5カ 月 の観 察 期 間 中85.2%と 高 率 で あ った.EIS後 の静脈 瘤 再 発様 式 はF因 子 が軽 度 なわ りに発 赤 所 見 が高 度 な独 特 の 所見 を呈 し,小 水 疱様 の発 赤 が び まん性 に出 現 す るい わ ゆ るatypical red colorsign (ARC) を示 す タ イ プ と,telangiectasiaが 著明 に出現す るタイプに分けられた.再発時期 はEIS終了後平均8.4カ月 と比 較 的 早期 で,再 治 療 は再 発 後 平均9.2カ月の 時 期 で行 い,69.2%に 血 管 内外 注 入併 用 法 を,30.8%に 血管外注入 法 を行 った. I緒 食 道 静脈 瘤 の 治療 として のEISは,緊急例 のみ な らず 予防 例1),2)に まで適 応 が拡 大 され る な ど,いまや食 道 静脈 瘤 の代 表 的 な治 療法 の1つ とな った.し か し,本 治療 法 に よ って静 脈 瘤 が 消失 した として も門脈 圧 亢進 状 態 は依 然 として存 在 して お り,そ の結 果 と しての食 道 静 脈瘤 の 再 発 が 最近 大 きな 問題 とな っ てい る. EIS後に再発 した食道 静 脈 瘤 は独 特 な発 赤 所 見 を呈 す るが,そ の記 載 法 は統 一 され て いな い し,ま た治 療 も難 しい とされ て い る3)~5).今 回 われ わ れ は 当院 に お けるEIS 後 の食 道静 脈 瘤 の再 発 につ い て,そ の頻 度,再 発 様式, 治療 法 な どにつ い て検 討 を行 った. II対 象 お よび方 法 浜 松 医科 大 学 第2内 科 に お い て1983年6月 か ら1990 年5月 ま で の7年 間 にEISを 施 行 し た101例 を 対 象 と し た.男 性74例,女 性27例,年 齢 は28歳 か ら73歳(平 均57.8歳)で あ っ た.原 疾 患 は 肝 硬 変 症97例(B型31 例,非A非B型61例,ア ル コ ー ル 性4例,PBC1例), 特 発 性 門脈 圧 亢進 症3例,ト ロ トラス ト症1例 で あ っ た. 肝 癌 の 合併 は27例(26.7%)に見 られ,吐 血歴を有する も の が44例(43.6%)あ っ た. EISの方 法 は 高 瀬 ら のfree-hand法6)に 準 じ,血管 内外 併 用 注 入 法 に てEISを 施 行 し た.EISは 原 則 と し て 静 脈 瘤 の完 全消 失 を治療 目的 とし,ま ず 第1段 階 と して5% エ タ ノ ラ ミンオ レー ト(1回 量 最 大20ml)を用 い て透 視 下 に て 血 管 内 注 入 法 を 週1回 繰 り返 し行 い,EC-junction 直 上 の 細 い 静 脈 瘤 ま で 消 失 さ せ,次 に 第2段 階 と して1 %エ トキ シ ス ク レロー ル(1ヵ 所 注 入 量最 大2m1)をEC -junction直 上の粘膜下に全周性に注入し白色の瘢痕組 織 の 形 成 を も っ て 治 療 終 了 と し た. EIS終了 後食 道 静 脈瘤 が 完 全 に消 失 した もの を完 全 消 失群,残 存 した もの を残存 群 と した.治 療 終 了 後 は1カ 月 目 に内視 鏡 検査 を施 行 して食 道潰 瘍 の 治癒 状 況 を確 認 し,以後3カ 月 ご とに内視 鏡 にて再 発,増 悪 の 有無 を検 討 した.尚 静 脈瘤 の再 発 は食 道 粘膜 に静脈 の拡 張 な い し それ に類 す る変 化 が生 じた時 点 を再 発 と し,一 方静 脈 瘤 の残 存 した症 例 の場 合 に は,静 脈瘤 の 大 きさ,色 調 が 増 悪 す るか新 たな 静脈 瘤 が 出現 した時 点 を増 悪 とした. III成 EIS後の 静 脈 瘤 の 再 発 形 態 は 大 き く2つ の タ イ プ に 分 け ら れ,第1に 小水疱様の発赤がびまん性に密生するいわ ゆ るatypical red color sign (ARC) (Figure1カラ ー 附 図)の 出現で ,主 にEC-junction直 上に見られるこ とが 多 い.第2にtelangiectasia(T)が 著 し く発 達 して く Gastroenterol. Endosc. 33 : 688-692, 1991 Hirofumi KITAHARA Recurrence and Retreatment of Esophageal Varices after Endoscopic Injection Sclerotherapy (EIS). 浜松 医科 大学 第2内科,東 芝 中央病院 Gastroenterological Endoscopy

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  • 688 Vol. 33(4), Apr. 1991

    原 著

    食道静脈瘤硬化療法後の再発と治療

    北原 大文 ・酒井 英訓 ・稲葉 宏 ・早田 謙一

    小林 良正 ・長沢 正通 ・松 田 裕子 ・松本 正廣

    河崎 恒久 ・金井 弘一

    要旨:内 視鏡的硬化療法(EIS)後 の食道静脈瘤の再発 について検討 した.EIS施 行101例 の再発率は完全消失60

    例では平均3年5カ 月の観察期間中8.3%と 低率であったが,静脈瘤残存41例 中3カ 月以上の経過を追えた27例

    では平均2年5カ 月の観察期間中85.2%と 高率であった.EIS後 の静脈瘤再発様式 はF因 子が軽度なわ りに発赤

    所見が高度な独特の所見 を呈 し,小 水疱様 の発赤がびまん性 に出現するいわゆるatypical red colorsign (ARC)

    を示すタイプと,telangiectasiaが 著明 に出現す るタイプに分けられた.再発時期 はEIS終 了後平均8.4カ 月 と比

    較的早期で,再 治療は再発後平均9.2カ 月の時期で行い,69.2%に 血管内外注入併用法を,30.8%に 血管外注入

    法 を行った.

    I緒 言

     食道静脈瘤の治療 としてのEISは,緊 急例 のみな らず

    予防例1),2)にまで適応が拡大 されるなど,い まや食道静脈

    瘤 の代表的な治療法の1つ となった.し か し,本 治療法

    によって静脈瘤が消失 した として も門脈圧亢進状態は依

    然 として存在 してお り,そ の結果 としての食道静脈瘤 の

    再発が最近大 きな問題 となっている.

      EIS後 に再発 した食道静脈瘤は独特な発赤所見を呈 す

    るが,そ の記載法は統一 されていないし,ま た治療 も難

    しい とされている3)~5).今回われわれは当院におけるEIS

    後 の食道静脈瘤の再発 について,そ の頻度,再 発様式,

    治療法な どについて検討 を行 った.

    II対 象 および方法

     浜 松 医科 大 学 第2内 科 に お い て1983年6月 か ら1990

    年5月 まで の7年 間 にEISを 施 行 した101例 を対象 と し

    た.男 性74例,女 性27例,年 齢 は28歳 か ら73歳(平

    均57.8歳)で あ った.原 疾 患 は肝硬 変 症97例(B型31

    例,非A非B型61例,ア ル コール 性4例,PBC1例),

    特 発 性 門脈 圧 亢進 症3例,ト ロ トラス ト症1例 で あ った.

    肝 癌 の 合併 は27例(26.7%)に 見 られ,吐 血 歴 を有 す る

    ものが44例(43.6%)あ った.

      EISの 方 法 は高 瀬 らのfree-hand法6)に 準 じ,血 管 内外

    併 用 注 入法 にてEISを 施 行 した.EISは 原則 と して静 脈

    瘤 の完 全消 失 を治療 目的 とし,ま ず第1段 階 と して5%

    エ タ ノ ラ ミンオ レー ト(1回 量 最 大20ml)を 用 い て透 視

    下 に て血 管 内注 入 法 を週1回 繰 り返 し行 い,EC-junction

    直上 の細 い静 脈 瘤 まで消 失 さ せ,次 に第2段 階 と して1

    %エ トキ シ ス ク レロー ル(1ヵ 所 注 入 量最 大2m1)をEC

    -junction直 上 の粘 膜 下 に全 周 性 に 注 入 し白色 の瘢 痕 組

    織 の形 成 を も って 治療 終 了 とした.

      EIS終 了後食道静脈瘤が完全に消失 した ものを完全消

    失群,残 存 した ものを残存群 とした.治 療終了後は1カ

    月目に内視鏡検査 を施行 して食道潰瘍の治癒状況を確認

    し,以 後3カ 月 ごとに内視鏡 にて再発,増 悪の有無 を検

    討した.尚 静脈瘤 の再発は食道粘膜 に静脈 の拡張ないし

    それ に類する変化が生 じた時点を再発 とし,一 方静脈瘤

    の残存 した症例の場合には,静 脈瘤の大 きさ,色 調が増

    悪 するか新 たな静脈瘤が出現 した時点 を増悪 とした.

    III成 績

      EIS後 の静 脈 瘤 の再発 形 態 は大 き く2つ の タイプに分 け

    られ,第1に 小 水疱 様 の発 赤 が び まん性 に密 生 す る いわ

    ゆ るatypical red color sign (ARC) (Figure1カ ラ

    ー附 図)の 出 現 で,主 にEC-junction直 上 に見 られ る こ

    とが 多 い.第2にtelangiectasia(T)が 著 し く発 達 して く

    Gastroenterol. Endosc. 33 : 688-692, 1991

    Hirofumi KITAHARA

    Recurrence and Retreatment of Esophageal Varices after

    Endoscopic Injection Sclerotherapy (EIS).

    浜松医科大学 第2内 科,東 芝中央病院

    Gastroenterological Endoscopy

  • Vol. 33(4), Apr. 1991 原著 北原大文 ほか 689

    る タイ プ で,EC-junctionよ り口側 へ向 か い直 線 上(lin-

    ear)に 発 達 す る型(T1)と,網 状(reticular)に 発 達 す

    る型(Tr)に 大 別 され る(Figure2カ ラー 附 図).T型

    は悪 化 す る につ れ本 数 を増 す と と もに食 道 上 部 へ進 展 し

    て くる.

     まずEISに より食道静脈瘤が完全に消失した症例は60

    例あるが,6カ 月から6年10カ 月(平 均3年5カ 月)の

    観察 期間 中にお ける再発率 は8.3%(5例)で あ った

    (Figure3).再 発様式 は5例 中4例 がEIS後 の再発 に独

    特の発赤所見を呈 すもので,ARC単 独1例,ARC+Tlが

    Figure 3 Recurrence and retreatment of esophageal varices after complete eradication by EIS.* Intravariceal and paravariceal injection were per-

    formed to 1 and 2 cases, respectively.

    2例,Trが1例 であった.残 りの1例 はF1の 細 い静脈瘤

    が下部食道 に出現 したのみで,発 赤所見 は伴 っていなか

    った.再 発時期は,初 回EIS終 了後平均8.4カ 月(3カ

    月か ら1年5カ 月)と 比較的早期であった(Table1).

    そのうち3例 に再度EISを 行 ったが,1例 はARC+Tlの

    再発が確認 されていたものの肝予備能が低下 していたた

    め経過を観察 していたが,術後2年11カ 月 目に吐血 した

    ため血管外注入法にてEISを 施行 し,以 後再出血 な く経

    過 している.他 の2例 では,ARC単 独再発例 には血管内

    注入法を,Tr再 発 には血管外注入法を施行 し,再 発静脈

    瘤は完全 に消失 し,以 後各 々2年7カ 月,4年10カ 月の

    観察期間中再発 を認 めていない.再 治療 を行 わなか った

    2例 は肝癌 と肝不全の症例で,EIS後1年 および1年6カ

    月後でそれぞれ死亡 した.

     一 方EIS後 に静脈 瘤 が残存 した症例 は41例 あるが,肝

    不 全 や肝 癌 に よ り早 期 に死 亡 した り,治 療 法 を手 術 に変

    更 した症 例 が あ り,結 局EIS終 了後3カ 月以 上 経 過 を追

    う こ とので きた症 例 は27例 で あ っ た(Figure4).こ の

    27例 のEIS終 了 時 の静 脈 瘤残 存 の状 態 は,全 例FlRC←)

    で あ っ た.3カ 月か ら6年10カ 月(平 均2年5カ 月)の

    観 察期 間 中 の再 発 ・増 悪率 は85.2%(23例)で,2例 に

    出血 を認 めた.悪 化 様 式 はEIS後 再 発 に特 有 の 発 赤所 見

    の 出現 を認 め る もの が17例(73.9%)と 大 多数 を占 め そ

    の 内訳 は,ARC11例,Tl4例,Tr2例 で あ っ た.こ れ

    らの例 で は残存 したF1静 脈 瘤 の 悪化 はほ とん ど見 られ な

    か っ た.残 りの4例(17.4%)で は 静脈 瘤 がF1か らF2に,

    2例(8.7%)で はF1か らF3RC紛 に増 悪 した(Table2).

    悪化 時 期 は平均8.4カ 月(3カ 月か ら4年)と や は り早

    期 で あ った.こ の うちARC9例,Tr1例 計10例 に再 度

    EISを 行 っ た.再 治療 の方 法 はARCの2例 に血 管外 注 入

    法 を行 った 以外 は,全 例 血 管 内注 入 法 を行 った.再 治 療

    Table 1 Endoscopic findings and the time of recurrence in completely

    eradicated esophageal varices after EIS.

    Gastroenterological Endoscopy

  • 690 原著 北原大文 ほか Vol.33(4),Apr.1991

    例の うち7例(70.0%)で 静脈瘤が完全消失 し,以 後5

    カ月から5年(平 均2年1カ 月)の 観察期間中再発 を認

    めていない.再 治療後 も静脈瘤 が残存 した3例 のうち,

    1例 は3年 後肝不全で死亡 し,1例 はT1が 残存 したが大

    酒家のため経過観察中であ り,1例 は直達手術 となった.

    Figure 4 Recurrence and retreatment of esophageal varices after incomplete eradication by EIS.* Intravariceal and paravariceal injection were per

    formed to 8 and 2 cases, respectively.

    また静脈瘤 の悪化がみられたが,再 治療 を行わなか った

    13例 の うちわけは,進 行肝癌 の合併9例,肝 予備能不良

    1例,静 脈瘤 の悪化の程度が軽度 なもの3例 であった.

    IV考 按

     食道静脈瘤 に対す るEISの 有用性 は近年 高 く評 価 さ

    れ7)~10),緊急例 はもちろん予防例1)・2)に対 してもさかんに

    行われるようになった.しかし10年 近 く経過 した現在EIS

    後 の静脈瘤再発 の問題が クローズア ップされて きてい

    る3)~5).その理由 としては,EIS後 の再発静脈瘤は独特の

    形態 をとり,治療が難 しい という問題があるか らである.

    元来,EISは 門脈圧亢進状態 を改善する治療法ではな く,

    したが ってEIS後 にもしわずかな静脈瘤 でも残存 してい

    れば,再 発 は必至 と考 えられる.わ れわれは従来静脈瘤

    の完全消失 を目標 にEISを 行 ってきたが,治 療の結果完

    全消失 に至 った60例 の再発率 は8.3%と 低率 であり,再

    出血 は1例 にす ぎなか った.そ れ に比べ,治 療後 にわず

    かでも静脈瘤が残存 した場合 は,27例 中23例(85.2%)

    と高率 に悪化 を示 したことか ら,再 発,悪 化の予防には

    静脈瘤の完全 な廃絶が重要であると考えられた.

      EIS後 の再発様式は独特であ り,静脈瘤 としての隆起の

    ない粘膜面に小水疱様 のRCが 密在するARCや,細 かい

    血管が異常に発達するtelangiectasiaな どの発赤所見が

    出現する.こ のような再発様式 を示す理由 としてEISに

    より粘膜下層の血管が廃絶 し粘膜 も充分に線維化 した場

    合 には,静 脈瘤のrecanalizationは 起 こりにくいため,

    線維化 の少ない粘膜固有層の血管が側副血行路 とな り,

    発達,重層化するためにARCやtelangiectasiaを 生 じる

    と考えられる.EIS後 の再発静脈瘤か らの出血をみた症例

    は3例 あるが全例ARCか らの出血で,ARCは 出血の危

    Table 2 Endoscopic finding and the time of deterioration in incomplete

    ly eradicated esophageal varices after EIS.

    Gastroenterological Endoscopy

  • Vol. 33(4, Apr. 1991 原著 北原大文 ほか 691

    険性 の 高 いsignで あ る と思 われ る.

      EIS後 の食道静脈瘤の再発 時期は,完全消失群でも残存

    群 でも差はな く平均8.4カ 月 と早期であることか ら,わ

    れわれはEIS終 了後 は1カ 月 目と,以 後3カ 月毎 に内視

    鏡をお こない再発の早期発見 に努めている.再 発例の中

    でもARCの 出現が早い ものは特に厳重な観察が必要 とな

    り,ARCの 程度が高度 なものや悪化速度が早 いものは再

    治療の適応 と考 え,再 度完全消失 を目標 にEISを 行って

    いる.

      EIS後 の再発 は先に述べたようにF2やF3の ような大 き

    な静脈瘤 を呈する ことは少ないため,初 回治療 に比 して

    血管内注入が難 しい場合が多いが,血 管内注入 によって

    門脈か らの供血路 を根本的に遮断することは,治 療効果

    が大 きいばか りでな く,再 発防止にもつなが る.従 って

    手技的には困難であって も可能なかぎり血管内注入 を試

    みる事 が重要でありわれわれは13例 の再発例に対 し9例

    (69.2%)に 血管 内注入法を施行することがで きた.

     しか し,完 全消失群の再発率が明 らかに低 く,ま た再

    発例の治療が難 しいことからも,初 回治療時 に静脈瘤 を

    完全に消失 させてお くことが再発 を含めた予後に とって

    最 も重要なのはいうまで もない.

    V結 論

     1)EISに より食道静脈瘤が完全 に消失 した60例 では

    再発率 は8.3%の みであったのに対 し,残存 した27例 で

    は85.2%に 静脈瘤の悪化がみ られた.

     2)完 全消失群で も残存群で も静脈瘤の再発 ・増悪は

    平均8.4カ 月と早期であり,EIS後 は3カ 月ごとに内視鏡

    を行 う必要があると考えられた.

     3)EIS後 の再発様式 は独特であり,静脈瘤 として隆起

    がほ とん どみられないにもかかわらず,発 赤所見が高度

    で,小水疱様 の発赤が密在するARCとtelangiectasiaが

    主体 に出現するタイプ とがある.

     4)再 発後再EISを 行った ものは計13例 あ り,その う

    ち3例 が出血例ですべてARCか らの出血 であったが,全

    例止血 された.ま た9例 で静脈瘤が完全消失に至 った.

    再EISの 方法 は69.2%が 血管内注入法 を主体 に行 った.

    文 献

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     3.幕 内博康,町 村貴朗,田 中 豊,杉 原 隆,島 田英雄,

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    論 文受付 平成2年10月18日

    同 受理 平成2年11月30日

    Gastroenterological Endoscopy

  • 692 原著 北原大文 ほか Vol. 33(4), Apr. 1991

    RECURRENCE AND RETREATMENT OF ESOPHAGEAL VARICES

    AFTER ENDOSCOPIC INJECTION SCLEROTHERAPY (EIS)

    Hirofumi KITAHARA, Hidenori SAKAI, Hiroshi INABA,

    Yoshimasa KOBAYASHI, Kenichi SOUDA, Masamichi NAGASAWA,

    Hiroko MATSUDA, Masahiro MATSUMOTO, Tsunehisa KAWASAKI

    AND Kouichi KANAI

    The Second Department of Internal Medicine, Hamamatsu University School of Medicine.

    Tohsiba General Hospital.

    Recurrence of esophageal varices after endoscopic injection sclerotherapy was

    evaluated in 101 cases. Recurrence rate of varices in 60 cases with completely eradicated

    esophageal varices after EIS was only 8.3% duringa mean observation period of 3 years

    and 5 months. In contrast, among 27 cases with incomplete eradication of varices, recurrence was seen in 23 (85.2%) during a mean observation period of 2 years and 5

    months. Endoscopically, recurrent varices after EIS presented with characterisitic fea-

    tures. There were two types of redness, one was so-called atypical red-color sign (ARC) which presented as diffuse small bubble like redness, and other was marked telangiectasia . The mean interval between EIS and retreatment were 9.2 months. 69.2% of recurrent

    varices were treated by intravariceal injection and the rest were treated by para-variceal

    injection.

    《カラー図説》

    Figure 1 Endoscopic finding of ARC.

    Figure 2-a Endoscopic finding of Tl.

    Figure 2-b Endoscopic finding of Tr.

    (カ ラー 掲 載 頁:p.693)

    Gastroenterological Endoscopy

  • 《Hirofumi Kitaharaほ か 論 文 附 図 本 文 掲 載 頁:p.688~692》

    Figure-1 Figure-2-a Figure-2-b

    《Tsutomu Takeuchiほ か 論 文 附 図 本 文 掲 載 頁:p.695~704》

    aFigure-1b aFigure-2b

    Figure-10

    aFigure-11b

    aFigure-12b

    Figure-13