高齢者虐待の防止のための対応について - kobe身体的虐待...
TRANSCRIPT
-
高齢者虐待の防止のための対応について 1.法律の施行について
H18年 4月 1日より「高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律」が施行。 【法律の構成】 ①総則(第 1条~5条) ②養護者による高齢者虐待の防止、養護者に対する支援等(第 6条~19条) ③養介護施設従事者等による高齢者虐待の防止等(第20条~24条)
④雑則 ⑤罰則
2.高齢者虐待の定義 (1)高齢者の定義(第 2条) 「高齢者」とは「65歳以上」の者 (2)「高齢者虐待」とは(第 2 条 3) 養護者による高齢者虐待及び養介護施設従事者等
による高齢者虐待をいう。
(3)養介護施設従事者等による高齢者虐待とは(いずれかの該当行為)
【比較】養護者による高齢者虐待 養護者(高齢者を現に養護する者で、養介護施設従事者等以外の者)による虐
待の場合は、上記の下線部分が⇒養護者以外の同居人による虐待行為の放置な
ど養護を著しく怠ることという記述に変わる。 (4)養介護施設従事者等の範囲 介護保険施設等の入所施設や居宅サービス事業者など、老人福祉法や介護保険法で
規定されている高齢者向け福祉・介護サービスに従事する職員すべてが対象となる。
身体的虐待 高齢者の身体に外傷が生じ又は生じるおそれのある暴力を加えること
介護・世話の
放棄・放任
高齢者を衰弱させるような著しい減食、長時間の放置、その他の高齢者
を養護すべき職務上の義務を著しく怠ること
心理的虐待 高齢者に対する著しい暴言又は著しく拒絶的な対応その他の高齢者に
著しい心理的外傷を与える言動を行うこと
性的虐待 高齢者にわいせつな行為をすること又は高齢者をしてわいせつな行為
をさせること
経済的虐待 高齢者の財産を不当に処分することその他当該高齢者から不当に財産
上の利益を得ること
-
高齢者虐待防止法に規定される『養介護施設従事者等』の範囲(別紙1より抜粋)
養介護施設 養介護事業
老人福祉法に
よる規定
・養護老人ホーム
・軽費老人ホーム
・有料老人ホーム
・老人居宅生活支援事業
介護保険法に
よる規定
・介護老人福祉施設(地域密着型含)
・介護老人保健施設
・介護療養型医療施設
・地域包括支援センター
*(ⅰ)居宅(介護予防)サービス事業
*(ⅱ)地域密着型(介護予防)サービス事業
・居宅介護支援事業
・介護予防支援事業
*(ⅰ)訪問介護・訪問入浴介護・訪問看護、訪問リハビリテーション、通所介護、
通所リハビリテーション、短期入所生活介護、短期入所療養介護、特定施設入
居者生活介護、福祉用具貸与、特定福祉用具販売(予防含む)など
*(ⅱ)夜間対応型訪問介護、認知症対応型通所介護、小規模多機能型居宅介護、認知
症対応型共同生活介護、地域密着型特定施設入居者生活介護(予防含む)など
3.関係機関に対する義務について 関係機関に対する義務(第 5条) ⇒虐待を早期に発見する努力義務
病院・養介護施設・保健所その他高齢者の福祉に業務上関係のある団体、お
よび医師・養介護施設従事者等・保健師・弁護士その他高齢者の福祉に職務
上関係のある者は高齢者虐待を発見しやすい立場にあることを自覚し、高齢
者虐待の早期発見に努めなければならない。
4.養介護施設従事者等による高齢者虐待の防止
高齢者の心身の安全と尊厳を保護し、従事者が非意図的に加害者となる事態を
未然に防ぐため、事業者として適切な予防措置に継続的に取り組み、すべての従
事者が高齢者虐待に関する正確な認識を持つことが求められる。
(1)高齢者虐待防止の為の措置(第 20条)
施設長・管理者等 ①従事者の研修実施(全職員対象)
(養介護施設の設置者 ②苦情処理体制の整備 養介護事業を行う者) ③他、高齢者虐待防止に資する対応
(2)高齢者虐待に係る通報(第 21条)
①従事者(養介護施設従事者等)は、自分が働いている養介護施設又は養介護事
業で、業務に従事する従事者による高齢者虐待を受けたと思われる高齢者を発
見した場合は速やかに市町村に通報しなければならない⇒神戸市への通報義務。
-
②①以外に従事者以外の者は従事者による高齢者虐待を受けたと思われる高齢者
を発見し、高齢者の生命又は身体に重大な危険が生じている場合は速やかに市
町村に通報しなければならない⇒神戸市への通報義務。 ③①②以外に従事者以外の者は従事者による高齢者虐待を受けたと思われる高齢
者を発見した場合は、速やかに市町村に通報するよう努めなければならない
⇒神戸市への通報努力義務
(3)通報者保護に関する規定
①刑法の秘密漏示罪の規定その他の守秘義務に関する法律の規定は高齢者虐待に
関する通報(虚偽であるもの及び過失によるものを除く)をすることを妨げる
ものと解釈してはならない。(第21条第6項)
②養介護施設従事者等(従事者)は通報をしたことを理由として、解雇その他不利益な取り扱いを受けない。(第21条第7項、公益通報者保護法)
③市町村の職員は(神戸市の職員)通報又は届出をしたものを特定させるものを漏
らしてはならない。(高齢者虐待防止法第23条)
(4)市内における主な事例
① 事業者側(従事者)に「利用者を励ましたい、頑張ってもらいたいとの思いが強く(乱暴な扱いをしても)虐待ではない」という認識がある。(虐待に該当すると思わない) ② 事業所において虐待に関する職員研修を行っていても、関係者に課せられた義
務を知らない等、職員がどの程度理解しているのかを事業所として把握していな
い。(研修効果が不十分)または一部職員のみ受講し他の職員が基本的な知識を得る機会を設けていない。 ③ 虐待を受けた高齢者や、虐待を受けたと思われる高齢者を発見した家族・介護
従事者等が、事業所への気兼ねから通報を控えがちである。 ④ 虐待が疑われる事例が発生した際、(家族からの根拠のない苦情と捉えたり、風
評被害を恐れ、虐待としての対応(通報、内部調査等)をおこなわない。
従事者 従事者以外の者 通報義務 (神戸市へ)
①従事者から虐待を受けたと思われる
高齢者を発見した場合、速やかに通報 ②従事者による虐待をうけたと思われる
高齢者を発見し、生命又は身体に重大な危
険が生じている場合 通報努力義務
(神戸市へ) ③従事者による虐待を受けたと思われる
高齢者を発見した場合、速やかに通報
-
(5)事業所としての取り組み
①高齢者虐待防止に関する事項の周知徹底 ア 介護従事者・職員全員に対し、高齢者虐待防止に関する事項(虐待の定
義、具体的な行為例、関係者に課せられた義務等)について、早急に所内
研修等の確実な方法により周知徹底すること。 イ 新規採用者への周知方法、年間の研修計画など継続的に周知徹底する方
策を事業所として規定すること。 ②苦情処理体制の整備と周知徹底状況の確認
ア 利用者や家族に対する苦情処理体制の周知徹底状況の確認(重要事項説
明書による説明、事業所内の掲示、利用者や家族の認識の有無)。
③虐待が疑われる事例が発生した場合の対応
ア 被虐待者とされる高齢者の心身状況の確認、保護、記録 ⇒心身の状態の確認(介護記録、医療機関受診結果の記録、可能であれ
ば本人に必要性を説明し同意を得た上で怪我等の状況写真を残す) ⇒重度の認知症であっても、聴き取りを行い詳細を記録 ⇒適切な対応(医療機関受診、虐待者からの保護)
イ 神戸市への報告 発生と同時に速やかに事故報告の様式によって報告を行う
5.神戸市の相談・通報窓口 【養護者による虐待】
各あんしんすこやかセンター 【養介護施設従事者による虐待】 神戸市高齢福祉課調整指導係 直通 TEL.322-6326
FAX.322-6046
-
別紙1
「高齢者虐待防止法」第2条に規定する養介護施設従事者等
(養介護施設及び養介護事業)
「高齢者虐待防止法」は、養護者による虐待に限られたものでなく、養介護施設従
事者等による虐待も含まれています。
(1) 介護保険施設(介護老人福祉施設、介護老人保健施設、介護療養型医療施設)
(2) 養護老人ホーム
(3) 軽費老人ホーム(ケアハウスを含む)
(4) 有料老人ホーム
(5) 居宅介護支援事業者及び介護予防支援事業者
(6) 居宅サービス事業者
① 訪問介護 ⑦ 通所リハビリテーション
② 訪問入浴介護 ⑧ 短期入所生活介護
③ 訪問看護 ⑨ 短期入所療養介護
④ 訪問リハビリテーション ⑩ 特定施設入居者生活介護
⑤ 居宅療養管理指導 ⑪ 福祉用具貸与及び特定福祉用具販売
⑥ 通所介護
(7) 地域密着型サービス事業者
① 夜間対応型訪問介護 ④ 認知症対応型共同生活介護
② 認知症対応型通所介護 ⑤ 地域密着型特定施設入居者生活介護
③ 小規模多機能型居宅介護 ⑥ 地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護
(8) 介護予防サービス事業者
① 介護予防訪問介護 ⑦ 介護予防通所リハビリテーション
② 介護予防訪問入浴介護 ⑧ 介護予防短期入所生活介護
③ 介護予防訪問看護 ⑨ 介護予防短期入所療養介護
④ 介護予防訪問リハビリテーション ⑩ 介護予防特定施設入居者生活介護
⑤ 介護予防居宅療養管理指導 ⑪ 介護予防福祉用具貸与及び特定介護予防
⑥ 介護予防通所介護 福祉用具販売
(9)地域密着型介護予防サービス事業者
① 介護予防認知症対応型通所介護
② 介護予防小規模多機能型居宅介護
③ 介護予防認知症対応型共同生活介護
(10)地域包括支援センター及び老人介護支援センター
(11)老人福祉センター
-
高齢者虐待防止法について定義(法第2条)
<高齢者とは><高齢者とは>65歳以上の人
<< 誰誰 がが >>①養護者 = 高齢者を養護(介護・世話)している家族、親族、同居人等②要介護施設従事者等 = 老人福祉法及び介護保険法で規定された
施設・事業所の業務に従事する人
本人との間で合意が形成されていない、あらゆる形態の性的な行為またはその強要。
【具体的な例】
・排泄の失敗に対して懲罰的に下半身を裸にして放置する
・キス、性器への接触、セックスを強要する/等
性的虐待性的虐待
意図的であるか、結果的であるかを問わず、介護や生活の世話を行っている家族が、その提供を放棄または放任し、高齢者の生活環境や、高齢者自身の身体・精神的状態を悪化させていること。
【具体的な例】
・入浴しておらず異臭がする、髪が伸び放題だったり、皮膚が汚れている
・水分や食事を十分に与えられていないことで、空腹状態が長時間にわたって続いたり、脱水症状や栄養失調の状態にある
・室内にごみを放置するなど、劣悪な住環境の中で生活させる
・高齢者本人が必要とする介護・医療サービスを、相応の理由なく制限したり使わせない
・同居人による高齢者虐待と同様の行為を放置すること/等
介護・世話の介護・世話の放棄・放任放棄・放任
(ネグレクト)(ネグレクト)
本人の合意なしに財産や金銭を使用し、本人の希望する金銭の使用を理由無く制限すること。
【具体的な例】
・日常生活に必要な金銭を渡さない/使わせない
・本人の自宅等を本人に無断で売却する
・年金や預貯金を本人の意思・利益に反して使用する/等
経済的虐待経済的虐待
脅しや侮辱などの言語や威圧的な態度、無視、嫌がらせ等によって精神的、情緒的苦痛を与えること。
【具体的な例】
・排泄の失敗を嘲笑したり、それを人前で話すなどにより高齢者に恥をかかせる
・怒鳴る、ののしる、悪口を言う
・侮辱を込めて、子供のように扱う
・高齢者が話しかけているのを意図的に無視する/等
心理的虐待心理的虐待
暴力的行為などで、身体にあざ、痛みを与える行為や、外部との接触を意図的、継続的に遮断する行為。
【具体的な例】
・平手打ちをする、つねる、殴る、蹴る、無理矢理食事を口に入れる、やけど・打撲させる
・ベッドに縛り付けたり、意図的に薬を過剰に服用させたりして、身体拘束、抑制をする/等
身体的虐待身体的虐待
内容と具体例区分
高齢者虐待の例
26
-
身体拘束廃止について
1.身体拘束がもたらす弊害
(1)身体的弊害
①関節の拘縮、筋力の低下、身体機能の低下や圧迫部位の褥創の発生
②食欲の低下、心肺機能、感染症への抵抗力の低下
③抑制具による窒息等の事故等
(2)精神的弊害
①意思に反して行動を抑制されることによる屈辱、あきらめ、怒り等
→せん妄等認知症症状の悪化、精神的苦痛、尊厳の侵害
② 家族への精神的ダメージ→入所させたことに対する罪悪感、怒り、後悔
③ 安易な拘束が常態化することによる介護従事者の士気・対応スキルの低下
→介護の質低下
(3)社会的弊害
①介護保険事業所、施設等に対する社会的な不信、偏見
2.身体拘束とされる行為とは
身体拘束にあたる具体的な行為【例】
(平成13年3月厚生労働省「身体拘束ゼロへの手引き」より)
① 徘徊しないように、車椅子や、いす、ベッドに体幹や四肢をひも等で縛る。
② 転落しないように、ベッドに体幹や四肢をひも等で縛る。
③ 自分で降りられないように、ベッドを柵(サイドレール)で囲む。
④ 点滴・経管栄養等のチューブを抜かないように、四肢をひも等で縛る。
⑤ 点滴・経管栄養等のチューブを抜かないように、又は皮膚をかきむしらないよう
に、手指の機能を制限するミトン型の手袋等をつける。
⑥ 車椅子やいすからずり落ちたり、立ちあがったりしないように、Y字型抑制帯や
腰ベルト、車椅子テーブルをつける。
⑦ 立ち上がる能力のある人の立ち上がりを妨げるようないすを使用する。
⑧ 脱衣やおむつはずしを制限するために、介護衣(つなぎ服)を着せる。
⑨ 他人への迷惑行為を防ぐ為に、ベッドなどに体幹や四肢をひも等で縛る。
⑩ 行動を落ち着かせるために、向精神薬を過剰に服用させる。
⑪ 自分の意思で開けることのできない居室などに隔離する。
3.介護保険法上の規定
(1)身体拘束禁止規定(運営基準)
「サービスの提供に当たっては、当該入所者(利用者)又は他の入所者(利用者)
等の生命又は身体を保護するため緊急やむを得ない場合を除き、身体的拘束その他
入所者(利用者)の行動を制限する行為を行ってはならない」
対象事業
・ (介護予防)短期入所生活介護、(介護予防)短期入所療養介護
・ (介護予防)特定施設入居者生活介護・地域密着型特定施設入居者生活介護
-
・ 介護保険施設(介護老人福祉施設・介護療養型医療施設、老人保健施設)
・ (介護予防)小規模多機能型居宅介護
・ (介護予防)認知症対応型共同生活介護
・ 地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護
(2)身体拘束廃止未実施減算
施設において身体拘束等を行う場合の記録(その態様および時間、その際の入所
者の心身の状況並びに緊急やむをえない理由の記録)を行っていない場合に、入所
者全員について所定単位数から1日につき5単位を減算する。
対象事業
・ 介護保険施設(介護老人福祉施設・介護療養型医療施設、老人保健施設)
・ 地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護
4.身体拘束廃止に向けた取り組み
(1)身体拘束の理由としてあげられるもの・・・「家族の意向」「事故予防」「人員不足」
(2)身体拘束廃止を推進するための提言
(「介護保険施設における身体拘束廃止の啓発・推進事業報告書」より抜粋)
①「身体拘束を一切行わない」方針を明確にする
②「緊急やむを得ない」場合について厳密に検討する(3要件)
③利用者の状態を把握し、身体拘束の危険性を検討するための仕組みをつくる
④身体拘束にかかわる手続きを定め、実行する
⑤認知症のケアに習熟する
⑥施設内外で学習活動を行い、施設全体に浸透させる
⑦家族の理解に努める
⑧廃止のための取り組みを継続する
事業所としての取組み
(1)事業所としての身体拘束廃止の基本方針を策定する
①従事者全員への周知徹底
②契約関係書類への明示
(2)認知症高齢者へのケアと事故予防への積極的な取組み(リスクマネジメント)
①その人がなぜ転倒するのか、なぜ徘徊するのか等、行動障害や事故の誘発要因
(生活パターン、心身状態、環境、ケア方法等)を継続的に探り、予測的に対
応する
②代替手段の先駆事例の収集とケアへの活用
③事故報告およびヒヤリハットの記録整備(原因分析と再発防止策の検討)と再
発防止への活用
④これら取組みについて全従業者への周知方法を確立する
(3)家族の理解
①身体拘束廃止の基本方針を説明
②本人にとっての身体拘束の弊害と、具体的な代替手段の提示
③すぐに理解が得られない場合、納得を得るための説明内容の検証と継続的なか
-
かわりに努める
5.緊急やむを得ず身体拘束を行う場合の対応
(1)「緊急やむを得ない」3要件を満たしているか、事業所全体で厳密に検討する。
①切迫性:利用者本人または他の利用者等の生命または身体が危険にさらされる可
能性が著しく高いこと
②非代替性:身体拘束その他の行動制限を行う以外に代替する介護方法がないこと
③一時性:身体拘束その他の行動制限が一時的なものであること
(2)実施に当たっての留意点
①本人、家族への説明と同意
心身の状況ならびに緊急やむをえない理由、身体拘束の内容、目的、拘束の時間
帯、期間等を文書で説明し、同意を得る。 ②記録 利用者の心身の状況、3要件への該当状況、身体拘束の内容、時間等を詳細に記
録。記録は5年間保存。 ③最小限の実施、早期の解除に努める 身体拘束を実施している間、3要件に該当するかどうか常にモニタリングをおこない、再検討し、要件に該当しなくなった場合には直ちに解除する。 モニタリングでは実際に身体拘束を一時的に解除して状態を観察するなどの対
応が必要。
-
身体拘束廃止未実施減算
施設において身体拘束等を行う場合の記録(その態様および時間、その際の入所
者の心身の状況並びに緊急やむをえない理由の記録)を行っていない場合に、入所
者全員について所定単位数から1日につき5単位を減算する。
(対象事業)
・ 介護保険施設(介護老人福祉施設・介護療養型医療施設、老人保健施設)
・ 地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護
【解釈通知】
身体拘束廃止未実施減算については、施設において身体拘束等が行われていた場合
ではなく、身体拘束等を行う場合の記録(その態様および時間、その際の入所者の心
身の状況並びに緊急やむをえない理由の記録)を行っていない場合に、入所者全員に
ついて所定単位数から減算することとなる。具体的には、記録を行っていない事実が
生じた場合、速やかに改善計画を市町村長に提出した後、事実が生じた月から 3月後
に改善計画に基づく改善状況を市町村長に報告することとし、事実が生じた月の翌月
から改善が認められた月までの間について、入所者全員について所定単位数から減算
することとする。
【留意点】
(1) 身体拘束の記録を行っていなかった場合、改善計画提出後最低3ヶ月間は減算
対象となり、それ以降も改善が認められない場合は減算期間を延長する。
(2) 『身体拘束を行う場合の記録』の徹底
① 「態様」=具体的な身体拘束を行う場所、方法、身体部位等
② 「時間」=身体拘束の解除日、身体拘束を行う時間帯及び時間
③ 「その際の入所者の心身の状況」
身体拘束による危険回避のみではなく、入所者の心身に対する弊害の有
無・程度を観察し明確に記載すること。
具体的には、身体拘束が要因となって不穏・食欲低下・気力減退・認知
症やADLの悪化・拘束部位の皮膚剥離の有無等が生じていないかを記録。
事前に、詳細な観察項目を拘束方法に応じて決めておくなど、漏れなく
観察が行われるようマニュアル化しておく。
④「緊急やむをえない理由」
緊急やむをえない理由(入所者の心身の状況)、3要件について、「身体拘
束廃止委員会」等、施設全体で厳密に検討した結果をカンファレンス記
録等で記録。
利用者、家族への説明(参考様式:「緊急やむを得ない身体拘束に関する
説明書」)を行い、同意を得る。
※重要※
解除予定日を設定するとともに、身体拘束による弊害が生じた場合や 3要件
を満たさなくなった時に速やかに解除できるよう、短期目標を設定し、定期的
に上記項目の観察・評価・検討を行う。
これらの対応が適切に行われていない場合、減算対象として取り扱う場合が
ある。
-
(身体拘束に関する説明書・経過観察記録より(参考例)) (『身体拘束ゼロへの手引き』厚生労働省、2001年)
【記録1】 緊急やむを得ない身体拘束に関する説明書
○ ○ ○ ○ 様 1 あなたの状態が下記の ABCをすべて満たしている為、緊急やむを得ず、下記の方法と 時間等において最小限度の拘束を行います。 2 ただし、解除することを目標に鋭意検討を行うことを約束いたします。
記 A入所者(利用者)本人又は他の入所者(利用者)等の生命又は身体が危険にさらされる可能性が著しく高い
B身体拘束その他の行動制限を行う以外に代替する看護・介護方法がない C身体拘束その他の行動制限が一時的である。 個別の状況による 拘束の必要な理由 身体拘束の方法 拘束の時間帯及び時間 特記すべき心身の状況 拘束開始及び解除の 月 日 時から 予定 月 日 時まで 上記のとおり実施いたします。 平成 年 月 日
施設名 代表者 印 記録者 印 (利用者・家族の記入欄) 上記の件について説明を受け、確認いたしました。 平成 年 月 日 (本人)氏名 印 (本人との続柄 )氏名 印