小学校英語活動における文字の導入に関する一考察...

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2005年度 学校教育研究科学位論文 小学校英語活動における文字の導入に関する一考察 一フォニックス法の有効な活用について一 兵庫教育大学大学院 学校教育研究科(修士課程) 教科・領域教育専攻 総合学習系コース MO4307A 加納 由美子

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2005年度 学校教育研究科学位論文

小学校英語活動における文字の導入に関する一考察

  一フォニックス法の有効な活用について一

兵庫教育大学大学院 学校教育研究科(修士課程)

  教科・領域教育専攻 総合学習系コース

MO4307A 加納 由美子

目 次

第1章 問題の所在一・……………”…’……………●………………1

第2章 小学校英語活動における文字の導入とフォニックス法……5

 第1節 小学校での文字導入に関する議論………………一・・…・…5

 第2節 フォニックス法について・……………一・……・…………8

 第3節 フォニックスが子どもに及ぼす学習効果…・………一…11

 第4節 小学校規模でのフォニックスの活動に関する研究……・・12

第3章 フォニックスの授業実践に関する調査及び結果………一…13

 第1節 事前調査…一…・………・………・……・…・…一……一13

 第1項 事前調査(pre・test)の方法……一…………・………・・13

 第2項 事前調査の結果0………………一●……●●…………’……14

 第2節 フォニックス授業実践の目的及び方法……………・・…・・16

 第3節 本調査の方法及び結果・………………・・………………一518

 第1項 本調査(post・test1,post・tset2)の方法一……………18

 第2項 本調査の結果(group1) ・・…………・………・…・……・18

 第3項 本調査の結果(group2) …………・……・…・…………21

 第4節 考察………一…・…・…一一………0…●0……………曹1’23

第4章 活動の様子とアンケート調査の結果……………・…・・…一26

 第1節 活動の様子…・・……………・・一……………・……………26

 第2節 活動に関する考察一…………一・・…………・……・……34

 第3節 アンケート調査の結果一…………一・一………・……・35

 第4節 アンケート調査における考察・…………・……・……一…37

第5章 考察及ぴ今後の課題………・…・………………………・……39

 第1節 考察一・……………’……”…………’…0…………’…0。●39

 第2節 今後の課題……一………・・………・……●…’……………43

参考文献・・・・・・・・・・…  9・…  9・・・・…  45

巻末資料・・・…  ●o。。●●。”9。’。●●●●o●●49

謝辞・・・・…  9・・・・・・・・・・・・・・・・・…  58

表の一覧

表3・1

表3・2

表3・3

表3-4

表3-5

表3・6

表3-7

表3・8

表3-9

表3・10

表3・11

3クラスの平均値と標準偏差・・・・・・・・・・・…  14

3クラスにおける分散分析・・・・・・・・・・・・…  14

2クラスの平均値と標準偏差・・・・・・・・・・・…  19

2クラスの平均値と標準偏差・・・・・・・・・・・…  19

group1の3回のテストの平均値と標準偏差・・・・…  20

group1における分散分析・・・・・・・・・・・・…  20

group1における多重比較・・・・・・・・・・・・…  21

group2の3回のテストの平均値と標準偏差・・・・…  21

group2における分散分析・・・・・・・・・・・・…  22

group2における多重比較 ・・・・・・・・・・・…  22

設問ごとの児童のテスト結果の比較・・・・・・・…  24

図の一覧

図3-1

図3-2

図4・1

図4・2

図4・3

3クラスにおける幹葉図・・・・・・・・・・・・・…  15

2クラスの3回のテストの平均値のグラフ・・・・・…  22

フォニックスの活動は楽しかったですか ・・・・…  935

ラップで歌を歌う活動は楽しかったですか・・・・…  36

単語を聞いてアルファベットを選ぶ活動は楽しかったですカ》 ・ ・ 。 ・ ・ 。 ・ ・ 。 …     。 。 ・ ・ ・ ・ ・ ・ …     。 。36

91

。1

第1章 問題の所在

 2002年度からの新学習指導要領の実施において,「総合的な学習

の時問」の枠の中の国際理解に関する学習のひとつとして英語教育

が取り扱われ始めた。小学校での英語教育に関しては,必修化,教

科化の検討もされており,多くの議論がなされている。

 樋口ら(2005)は「現在,世界の国際補助言語として英語の果た

す役割は重要であり,多くのアジアの国々でも学校教育において英

語が指導されており,必修教科としての小学校への英語の導入は,

日本に先駆けて進められている場合が多い」と肯定的に述べている。

しかし一方で,大津(2004)が「小学校での英語教育は,そもそも

その必要性がないだけでなく,その導入を図っても,益するところ

よりも害するところが多いことは明らかです」と述べるように,英

語教育の導入に関して否定的な意見もある。

 そのような賛否両論がある中で,現在の小学校での英語活動の取

り扱いについては,教科としてではなく,子どもの特性を生かした

体験的な学習として位置づけられている。そして,文部科学省の指

針として,英語活動の理論,実践事例などは『小学校英語活動の実

践の手引き』(文部科学省,2001)のみが発行されており,その活

動内容などの詳細については,各学校で自由に執り行うことができ

るようになっている。

 この『小学校英語活動の実践の手引き』(文部科学省,2001)で

は,主なねらいとして,「国際理解に関する学習の一環としての外国

語会話等を行うときには,学校の実態に応じ,児童が外国語に触れ

たり,外国の生活や文化などに慣れ親しんだりするなど小学校段階

にふさわしい体験的な学習が行われるようにすること」(p.2)とし

ている。つまり,それは子どもにとって「身近な英語」を体験的に

把握することであり,言語習得を主な目的とするのではなく,興味・

関心や意欲の育成をねらうものである。また,内容を決める際のポ

イントとしては,

1

 (1)音声を中心とする

 (2)子どもの「言いたいこと」「したいこと」を扱う

 (3)子どもの日常生活に身近なことがらを扱う

    『小学校英語活動の実践の手引き』(文部科学省,2001)

などがあげられている。実際に小学校の英語活動では,「リズム感が

あり,子どもが体を動かせるような,しかも歌詞に繰り返しがあり

自然に覚えられるような歌」を取り入れたり,「チャンツを取り入れ

る際に,英語そのもののリズムと合うように,リズムボックスなど

のリズムやスピードを選択」して執り行ったり,ゲームにおいては

「複雑なルールのゲームは避け,子どもの活動時間を多く取る」こ

とや「低学年には勝負がはっきりとでるようなものを避けたりする」

などの配慮をしたりして,子どもたちの興味・関心を引くような活

動が行われている(影浦,2000)。

 文部科学省では,2002年に「英語が使える日本人」を育成する

ための戦略構想を策定している。「経済・社会等のグローバル化が進

展する中,子ども達が21世紀を生き抜くためには,国際的共通語

となっている「英語」のコミュニケーション能力を身に付けること

が必要であり,このことは,子ども達の将来のためにも,我が国の

一層の発展のためにも非常に重要な課題」としている。このことか

ら,小学校での英語がより重要となってくる。そして,実際に,必

修化,教科化もいわれるであろう。その時には,言語技術の習得,

定着が問題とされると考えられる。

 この英語を定着させるという点で,また将来的に,小学校での英

語教育の必修化,教科化の可能性を考えるとその内容において,文

字の導入に関しては議論を呼ぶものと考えられる。現在では文字を

取り扱うことは奨められていないが,小学校英語の研究開発校など

では,実践の中で文字の導入が課題として挙げられている。

 平成8年度における直島町立直島小学校での研究開発実践報告書

では,小学校低学年または中学年においては,歌・ゲームなどが子

どもの興味・関心を引いているという報告があるが,小学校高学年

2

になるにつれて子どもたちは文字などに関しても知的好奇心を抱く

ようになっているという。

 また,平成13年度における大阪府河内長野市立天野小学校での研

究報告では,低学年,中学年の指導としては,歌やチャンツ,ゲー

ムなどを多く取り入れ,また,コミュニケーションの相手を少しず

つ広げる試みとして,テレビ電話交流なども行っている。一方で,

文字に興味を持つことのねらいの一つとして新聞作り,自己紹介カ

ード作り,e・mai1交流を取り上げているのである。

 このように小学校高学年の子どもたちの中で,「読み」「書き」の

活動への意欲が高まりつつあるということや,英語学習の定着を図

るという観点から,文字を小学校の英語活動で取り入れることが必

要ではないだろうか。

 しかし,先にも述べたように,文字導入に関してはいくつかの問

題点が挙げられている。それは,従来の英語教育において,「読み」

「書き」を中心にした活動・指導が行われた結果,英語の文字と発

音のギャップなどから,英語嫌いを生み出していることが考えられ

る。一方で,小学校英語活動において特に重要視されていることの

一つである「音声」と「文字」を結びつけることは高学年の子ども

たちの英語学習の助けとなると考えられる。実際に子どもたちの身

の回りには,外来語を含む多くの英語があふれており,学校におい

て英語活動を行っていることも考え合わせると,子どもたちに文字

を教える意義は十分にあるといえる。もしも子どもたちが身近にあ

る英語を容易に読むことができたら,大きな喜びを感じ,学習意欲

も高めることができるだろう。

 英語を嫌いになるのではないかという懸念についても,歌やゲー

ム,チャンツなど,子どもたちに負担がかからないような方法をと

ることによって,学習者の文字に対する嫌悪感を軽減することがで

きると考えられる。また,文字の指導法がどれだけ子どもたちに分

かり易く構成されているかということも,苦手意識を起こさせない

ことにつながるであろう。そういった初期の文字導入の方法の一つ

3

で,唯一システム化されているものとしてフォニックス法が挙げら

れる。フォニックス法は英語圏で入門期の子どもたちに広く使われ

ている教育法であり,日本でも中学校や英語教室など,さまざまな

場面で採り入れられている。

 そこで,本研究では,小学校での英語活動における,文字を取り

入れた指導法の一つとして,フォニックス法を取り上げ,その応用

の可能性と教材化について検討する。

4

第2章 小学校英語活動における文字の導入とフォニックス法

第1節 小学校での文字導入に関する議論

 第1章でも述べたように,2002年度から小学校の「総合的な学

習の時間」の中で英語活動が取り扱われ,様々な実践が行われて

いる。しかし,文字導入に関することにおいて,中央教育審議会

答申(1997)では,小学校に英語を導入する場合「文字は用いな

い」という方針が明らかにされている。これは,従来の英語教育

において,文字が導入されたことにより,英語嫌いの子どもたち

を作り出していることからではないかと考えられる。また,『小学

校英語活動実践の手引き』(文部科学省,2001)においても,2「英

語活動」のねらいと活動の在り方(3)では,音声を中心とした活

動を行うと記されており,「文字と音声を同時に媒体として意思の

伝達を図ろうとすることは小学校の子どもにとっては,負担が大

き過ぎて,英語嫌いを生み出すことにつながる」という解説がな

されている。また,そのことから,内容を決める際のポイントと

して「小学校段階では,音声と文字とを切り離して,音声を中心

にした指導を心がけることが大切である」と記されており,文字

導入に対する消極的な見解を示している。さらに,今井ら(1999)

は文字導入のマイナス面として,

  (1)知識,試験,競争を生み,言語使用への態度が阻

   害されること

  (2)日本語の発音を英語文字に結びつけることによる

   詑り,聴解能力への悪影響

  (3)机に座った従来式の学習形態によるコミュニケー

   ション活動の阻害

  (4)英語の音声と文字の対応がルーズなことによる学

   習負担の増加

を挙げている。しかし,それと同時にそのプラス面として,

5

  (1)児童の欲求に応える指導

  (2)記憶補助としての機能

  (3)音声一文字の符号化

  (4)読み書きによるコミュニケーションの楽しみ

を挙げており,必ずしも文字の導入が子どもたちの英語学習の妨

げになるとは考えられないことを示している。さらに,今井ら

(1999)はその論文の中で,平成9年度における小学校教師に対

する「文字を指導しないことに対しての意見」を問うアンケート

結果の考察として,「発達段階を考慮した文字指導の必要性を支持

する意見もある。文字を見せるだけでも自然に学ぶという考えも

ある。文字だけを切り離すのではなく,児童の欲求に応じて文字

を提示していく柔軟な取り組みが必要だと思われる」と述べてい

る。筆者が授業観察をした小学校においても,黒板に貼られた絵

と単語がかかれているカードを見ながら,「b(ブッ),b(ブッ),

baseball」などと発音する活動を行い,その後で,ALTとのコミ

ュニケーション活動を行っているところもある。また,荒井ら

(2003)も,音声による言語学習に文字の使用を加える意義とし

て,

  ①子どもの知的欲求に合致している

  ②音声の把握を自覚的,分析的にさせる

  ③記憶内容を定着,蓄積させる

  ④自習を可能にし,学習内容を拡げる

の4項目を述べている。

 実際に,研究開発学校の直島町立直島小学校における,平成8

年度の実践報告書においては「1年生の児童でも,英語ネームを

見て,自分の名前を書きたがった」という報告もあり,児童が英

語を読んだり,書いたりしたいという文字への関心を持っている

ということが考えられる。さらに,同小学校の平成6・7年度卒

業生を対象としたアンケートでの「小学校で英語を勉強したこと

がよかったと思いますか」という問いに,「どちらともいえない」

6

と答えている子どもたちの理由には,「書けないので覚えられな

い」,「書いていなかったので意味がない」ということが挙げられ

ている。また,江本(1980)も「中学生になって最初にぶつかる

困難というのはspellingと発音がくいちがうということ」という

点を挙げている。

 このように,子どもたちが文字に対する関心を小学校段階で持

ち始めているということや,中学校段階で英語の読み書きにつま

ずいてしまうという研究報告から,小学校での英語活動において,

文字の導入を視野に入れて行うことが必要ではないかと考えた。

そこで,注目したのが文字を取り入れた指導法の一つであるフォ

ニックス法である。フォニックス法は音と文字の関係の規則性を

学ばせるものであり,子どもたちに詰め込もうとして負担を与え

てしまうとも考えられる。さらに,今井ら(1999)が述べている

ように,机に座った学習が,コミュニケーション活動の阻害とな

る可能性もある。しかし,それらのマイナス面に対し,導入方法

を工夫することなどで,解決できるのではないかと考えられる。

それに加えて,音声と文字のルールを学習することによって,単

語の約75%が読めるようになるという実態もあり,荒井ら(2003)

が述べているように,音声による言語学習に文字の使用を加える

ことが音声の把握を自覚的,分析的にさせることも明らかにされ

ている。それらのことから,英語活動における文字の導入方法と

して,フォニヅクス法が子どもたちにとって有益であると考えら

れる。

7

第2節 フォニックス法について

 橋本(2001)は,「フォニックスの一般的な定義は「単語の中

の文字と発音の関係を覚えるよう,英語圏の子供たちを助けるた

めに開発された音声学」である」と述べている。また,松香(1981)

は,フォニックスについて「音素(ph・neme)とアルファベット

(alphabets)との結びつきを教えることで,読む能力を高めよう

とする方法」と定義づけている。

 主に,フォニックス法は英語圏の国々で母国語を指導するため

に,幼稚園時もしくは小学1学年時から使用されており,第二言

語習得のために,目本においても,松香フォニックス研究所など

多くの英会語教室で活用されている。フォニックスは「教授上の

工夫のシステムなので,まだ確定したものではなく,ルールのた

て方もいろいろの方式があって,まだ不十分なところも多い」(江

本,1980)と述べられているように,その指導方法は様々である

が,松香ら(2001)は,フォニックスについて下記のような方法

を紹介している。

 フォニックスには65のルールがある。そのうち,ルール1~26

はPhonics Alphabetと呼ばれるものである。これは,例えばA

なら/謝,Bなら/b/,Cなら/k/というように,文字1つがそれぞれ

1っの代表的な音をあてられているものである。これらがアルフ

ァベットの基本的な音となる。

ルール27~31は,SilentEとよばれるものである。これは,

最初の母音字をアルファベットの名前通りに読み(以下名前読み),

2番目の母音宇は読まないグループでeで終わるものである。下

記がその例である。

a-e c+團+k琵

i-e f+田+V+e

→/k團k/

→/⑳/

8

u-e c+圓+b+ e →/kj匡b/

 ルール32~40は,PoliteVowelsとよばれるものである。これ

は,r母音が2つ並んでいて前の母音は名前読み,後ろは読まな

い グループ」である。下記がその例である。

ai r匪n→/r國n/

ea t囹a→/t旦

ui fr聾t→κr團t!

 ルール41~48は,ConsonantDigraphsとよばれるものである。

これは,r2つの子音字が新しい1音をつくるルール」である。下記

はその例である。

sh   β]」ip  →

ph西虹・ne→ck  ba ck  →

/∫lp!

 一

 /旧oun/

/b肥k/

 

 ルール49~54は,Vowe1Digraphsとよばれるものである。こ

れは,「母音字が2つ並んで新しい音をつくるルール」である。下

記はその例である。

oo room → /ru:m/

ou   h ouse  →  /h田u s/

         上ow towl1 →  /tlauln/

ルール55~59は,ConsonantBlendsとよばれるものである。

これは,「2つまたは3つの音が連続した時に,それぞれがもとの

音を残しながら混ざりあった音となる」ものである。下記はその

例である。

9

b1画ack一/阯k/gr團een一/團・:n/

tr圓ee→/圓・=/

 ルール60~65は,Murmuring Vowelsとよばれ,また,「あい

まいな音になるので「あいまい音」とも言う。」これは,「母音に

lrがっくと,混合された新しい音になる、」ものである。下記はそ

の例である。

or flδF〔k→/fD:(r)k/

earh塵r→/h淫a(r)1/

・er flower→/naUP(r)/

 これら65のルールを習得することにより,子どもたちは未習語

でも読めるようになり,絵本や身の回りの英単語などを読むこと

ができるようになる。

 しかし,子どもたちにフォニックスを教える場合,どんな年齢

から教える場合においても,上記のようなルールを教える前にま

ず多くの英語をきかせる時期をもつことが重要である。そしてま

た,その英語が示す内容を絵やジェスチャーなどで示し,意味を

把握させることが大切である。フォニックスを教える時,その目

的はルールを教えたり,書かせたりすることではなく,ルールを

使ってどれだけ自分で書くこ.とができるかということである。聴

かせることも同時進行で行い,例えば母音のoの発音のときは口

を大きく開け,指が縦3本入るくらいに,などと教師がモデルに

なり教えるのである。ルールを学ばせるといって,必ずしも椅子

に座ってテキストを開いたり,教師の発音を繰り返させたりする

ことが重要ではない。歌やゲームなどの活動を取り入れて,子ど

もたちの興味・関心を高めながら行う方法もある。

10

第3節 フォニックスが子どもに及ぼす学習効果

 松香(1981)は「フォニックスを学ぶことによって,日本人の

子供は英語の発音も学びますし,英語の文字についても学ぴま

す。」と提言している。また,竹林(1988)は「私は、英語の発

音教育に発音記号が全く不要だとはもうしませんが,発音記号を

生徒に教える前にもっともっと教えなければならないことがある

と思うのです。それは,英語学習にフォニヅクスを取り入れるこ

と,つまり英語の基本的な綴りと発音のルールを教えることで,

大半の英語の単語は読めるのです」と述べている。

 実際,発音記号を覚え,それをすべての単語において,見て判

断し,読もうとすることは,とても困難であると考えられる。フ

ォニックスにおいてもルールにおける例外はあるが,その例外を

除いた75%の単語を,見て読めるようになるということは学習者

にとって有益であると考えられる。

 また,今井ら(1999)は,平成9年度における小学校教師に対

するアンケートの「文字を指導しないことに対しての意見」を問

うアンケート結果の結論として「自ら進んで未習語を読もうとす

る態度が養われているのは,文字指導の効果である。特にフォニ

ックスを利用した指導は,文字と音韻を結び付け,読もうとする

意欲を育てている。新出単語を読もうとする意欲は,文字が読め

たとき自信となり学習を促進する。」と提言している。「発音のル

ールを教えること」というと一般的には教え込みになり,子ども

たちに負担を負わせ,英語嫌いを作り出してしまうのではと考え

られがちである。しかし,指導法の工夫次第でそれは解決できる

のではないだろうか。梅本(2000)も,「「読み書き」の指導は,

取り立てて指導するより,あくまで「歌やゲーム」「ミニ劇」や「交

流」の中で,必然的に出てくるような形で行うことが子どもの実

態に応じた取り扱いになるのではないかと推測できる」と述べて

いる。

11

第4節 小学校規模でのフォニックスの活動に関する研究

 名合(1999)は「入門期の英語教育において,読めない,ある

いは,正しく発音できないという問題の1つには,英語の文字と

その文字が出す音が違うと言う特徴があげられる。しかも,文字

とその文字が出す音の関係が不規則であることも困難にしている

原因である。」と提唱しており,フォニックスの指導における効果

を発表している。しかし,荒井ら(2003)も述べているように「児

童の英語教育に文字を用いる効果についてはこれまでも多くの報

告がなされてきたが,それらはすべて1人または少人数の1クラ

スを扱ったものに限られていた」とフォニックスの効果をはかっ

た研究が少人数に限られている実態を明らかにしている。そして,

その論文において,主教材に1年生からフォニックスを応用した

文字指導カリキュラムを加えてきている私立小学校(東京)6年

生3クラス124名,女子のみと3年生のときに26文字の基本の

音を分からせる他は,あえて文字の指導をしない私立小学校(神

奈川県)6年生2クラス68名,男女とを比較した研究を行ってい

る。それは,調査前のプレテストと文字指導実践後行ったポスト

テストとを比較し,その効果をはかったものであり,「単語から文

章のレベルに至るまで意味の理解度に差が認められた」という結

果であった。

 しかし,被験者が文字導入を含めた英語活動を行って約6年目

ということもあり,文字指導の導入期における研究はなされてい

ない。また,どのような活動が子どもたちの興味・関心を引くの

か,また,文字認識がどれくらいかなどの詳細(母音字,子音字

の習得など)については述べられていない。

 そこで,本研究では,小学校において,フォニックス法を用い

たどのような活動が子どもたちの興味・関心を引くものとなるの

か,また文字の認識においてどれだけ効果的であるのかを調査す

ることとした。

12

第3章 フォニックスの授業実践に関する調査及び結果

第1節 事前調査

第1項 事前調査(pre・test)の方法

(1)調査日時

   2005年4月

(2)対象

   兵庫県F小学校児童(第5学年3学級76名)

   (音声言語を中心とした英語活動を始めて4年目の児童)

(3)目的

   フォニックスの事前調査の目的は,3学級において比較

  する対象学級を抽出するためである。また,児童が英語の

  音と文字との結びつきにおいてどれだけ認識しているか

  をはかるためである。

(4)フォニックスの調査テスト

   調査テストには,『フォニックス指導の実際』(ハイルマ

  ン,1981),『英語,好きですか』(松香,1981),『Active

  Phonics』(松香,宮,2001)を参考文献として用いた。

  それらには,子ども向けのフォニックスを習得させるため

  の練習の問題がいくつか記載されており,それらの問題か

  ら1.単語のはじめの音を聞き分けるテスト2.終わりの

  音を聞き取って文字と結び合わせるテスト3.まん中の音

  を聞き分けるテストという3つの観点から,テストを作成

  することとした。

13

第2項 事前調査の結果

 フオニックス授業実践を行う前に,フォニックスに関して

特に差のない2クラスを抽出するため3学級においてpre・

testを行った。その結果,平均点は20満点中,表3-1のように

なった。

表3・13クラスの平均値と標準偏差

group1

nニ26)

group2

n=24)

group3

n=26)

平均値

点)13.27 13.42 13.42

SD 3,853 3,855 3,373

 この結果について,分散分析を行ったところ,結果は3ク

ラスにおいて有意な差は認められず,等質であることが確認

された(表3-2参照)。

表3・2 3クラスにおける分散分析

要因SS Df MS F

間差

級誤

 5.269

1121.415

2   2.634 .171

73  15.362

n.S.

14

この結果を幹葉図に表すと図3・1のようになった。

30

20

10

0

L蜘⑩禰

 一鐸

○ ○ 3

V1

図3・1 3クラスにおける幹葉図

 3クラスの中でもgroup1,group2においては,分布が似ていた

ためgroup1とgroup2を抽出し,フォニックスの授業実践を行い,

その結果を比較することとした。

15

第2節 フォニックス授業実践の目的及ぴ方法

 フォニックス授業実践の目的は,小学校規模で,フォニックス

を用いた活動を行った場合,その効果が表れるかをはかるためで

ある。授業方法については,下記の通りである。

(1)実践日時

   2005年5月,6月,7月(2)対象

   兵庫県F小学校児童(第5学年2学級50名)

(3)授業で用いた教材

   -『えほんでフォニックスPhonicsAlphabet』(松香フォニ

  ックス研究所,2002)ワークブック,CD『みんなでフォニ

  ックス上』(松香フォニックス研究所,2004)DVD『Active

  Phonics』(松香フォニックス研究所,2005)

(4)授業計画

   授業は全4回,1回14~30分の時間で,それぞれの学級

  のHRTとALTとで行い,第1回は,「フォニックスの基本

  的な音を学ぶ」ということを目標とし,第2回では『英語、

  好きですか』(松香,1981)より,「フォニックス10級,最

  初の6つの子音(P,b,t,d,k,9)を学ぶ」(P.43)ことを目

  標とし,第3回では,『英語、好きですか』(松香,1981)

  より,「フォニックス9級,5つの短母音(a,e,i,o,u)を

  学ぶ」(p.57)ことを目標とした。そして,第4回では,最

  終的に第1回から第3回までの学習で学んだことの応用と

  して,「文字を読めるという喜びを与える」ということを目

  標とした。

◇第1回「フォニックスの基本的な音を学ぶ」

   これから学ぶフォニックスがどういうものであるのかを

16

  説明し,アルファベットの基本的な音を聞かせた。特に,本

  研究で目的とする(P,b,t,d,k,9,a,e,i,o,u)については,

  重点的に聞かせた。また,フォニックスを学ぶにあたって必

  要なアルファベットの文字(特に小文字)についてもふれた。

◇第2回「フォニックス10級,最初の6つの子音(p,b,td,k,

 9,)を学ぶ」

   この6つの子音を最初に取り上げた理由は,発音がどれも

  破裂音ではっきりしており,文字と音の関係が一定している

  ので,児童にとって簡単に発音できるものとされているため

  である。活動は主に,聞こえてくる単語一番初めの文字,一

  番最後の文字で,ALTによる聞き取りを重視し,児童の興

  味を引く活動として,ゲームなどを取り入れた。

◇第3回「フォニックス9級,5つの短母音(a,e,i,o,u)を

 学ぶ」

   第2回で学んだ6つの子音と組み合わせることにより,い

  くつかの単語を習得することができるとされるため,第3

  回では,5つの母音(a,e,i,o,u)を取り上げた。活動は主

  に,聞こえてくる単語の一番初めの文字,真ん中の文字で,

  ALTによる聞き取りを重視し,児童の興味を引く活動とし

  て,ゲームなどを取り入れた。

◇第4回「文字を読めるという喜びを与える」

   第1回から第3回までの活動の応用として,聞こえてく

  る単語の音と文字とを結びつけ,単語を作る活動を行った。

  発音はALTによるものとし,児童の興味を引く活動として,

  ゲームなどを取り入れた。

17

第3節 本調査の方法及び結果

第1項 本調査(post-test1,post・tset2)の方法

(1)調査日時

   2005年6月,7月(2)対象

   兵庫県F小学校児童(第5学年3学級76名)

(3)目的

   フォニックスの調査目的は,フォニックスを導入した

  活動を行った場合,また,行わなかった場合,児童が英

  語の音と文字との結びつきにおいてどれだけ認識してい

  るかをはかるためである。

  また,その認識がどれだけ持続しているかをはかるため

  である。

(4)フォニックスの調査テスト

   調査テストは,第3章 第1節 第1項(4)フォニ

  ックスの調査で述べたとおりである。

第2項 本調査の結果(group1)

 実験群group1のpre・testとpost・test1の間にフォニックス

を導入した授業実践を行い,group1とgroup2でpost-test1

を行った。その結果,平均点は表3・3のようになった。

18

表3・3 2クラスの平均値と標準偏差

group1

nニ26)

group2

nニ24)

平均値

点)15.08 12.75

SD 3,084 3,193

 また,post-test1の一ヵ月後にフォニックスの効果が持続され

ているかをはかるため,post・test2を行った。その結果,平均点

は表3・4のようになった。

表3・4 2クラスの平均値と標準偏差

group1

nニ26)

group2

n=24)

平均値

点)15.88 15.33

SD 3,128 3,293

19

 実験群group1のpre・test,post・test1,post・test2の3回のテスト

結果をまとめて表すと表3・5のようになった。

表3-5 group1の3回のテストの平均値と標準偏差

pre’test post’test1 post’test2

平均値

点)13.27 15.08 15.88

SD 3,853 3,084 3,128

 その後,group1において,3回のテスト結果の分散分析,多重

比較を行った結果,pre-testとpost・test1において有意な差が認め

られた。また,pre・testとpost-test2においても有意な差が認めら

れ,post・test1とpost・test2においては,有意な差は認められなか

った(表3-6,表3-7参照)。

表3-6 group1における分散分析

SS Df MS F

test     93.256

誤差  236.744

2  46.628   9.848

50  4.735

*P≦.05

20

表3・7 group1における多重比較

Scheffe

test test平均値  標準誤

の差   差

pre・test p・st・testい1.81(歯).604

pre・test p・st・test2・2.62(歯).604

post-testl post-test2 ・.81     .604

     *P≦.05

第3項 本調査の結果(group2)

 統制群group2においては,pre・test,post-test1,post・test2

の3回のテスト結果をまとめて表すと表3・8のようになった。

表3・8group2の3回のテストの平均値と標準偏差

preDtest post-test1 post’test2

平均値

点)13.42 12.75 15.33

SD 3,855 3,193 3,293

 その後,group2において,3回のテスト結果の分散分析,多重

比較を行った結果,pre・testとpost-test1では,有意な差が認め

られなかった。post・test1の後,フォニックスを導入した授業実

践を行った結果,post-test2で有意な差が認められた。pre・test

とpost・test2においても有意な差が認められた(表3-9,表3・10

参照)。

21

第4節 考察

 図3・2にもみられるように,テスト結果から平均値を出すとプ

レテストにおいては,20点満点中,group1,13.27点,group2

では13.42点という予想よりも高い結果であった。その要因とし

て,被験者たちが小学4年生時の2学期に,アルファベットの小

文字が絵本の絵の中に分かりやすく組み込まれている『えほんで

フォニックスPhonics Alphabet』(遠藤,2002)を使用しながら

フォニックスの歌を歌っていて,実際に視覚的に文字と音とを結

び付けていたと考えられる。そして,その歌にも含まれる,子ど

もたちが一度は聞いたことのある英単語を取り入れたこと,また,

同時期のローマ字の学習において英語の文字と音とを結びつける

手がかりがあったと考えられる。

 group1ではフォニックスの活動を行い,group2ではフォニッ

クス以外の英語活動を行った後,post・test1を行った結果,テス

ト結果においてgroup1では統計的に有意な差が認められ(p

≦.05),平均値が向上していた。また,group2では統計的に有意

な差が認められず(p≧.05),平均値は下がっていた。このことか

ら,今回のフォニックスの活動は,group1の子どもたちの英語の

音と文字とを結びつける能力を向上させたと考えられる。

post・test1の後,group2においても,フォニックスの活動を導入

した後,post・test2を行った結果,統計的に有意な差が認められ

(p≦.05),平均値が上がっていたことからフォニックスの活動に

より子どもたちの英語の音と文字とを結びつける能力を向上させ

たと考えられる。group1におけるpost-test2(followup-test)にお

いても,統計的に有意な差は認められなかった(p≧.05)が,平

均値が上がっていたため,フォニックスの活動の効果は持続され

ていたと考えられる。

 また,さらにgroup1,group2において,テスト結果の点数の

向上した児童(50名中35名)を対象とし,テストの設問ごとに

23

それぞれ分析していくこととした(表3-11参照)。

表3・11設問ごとの児童のテスト結果の比較

1,聞こえてくる単語の一番初めの

文字を次の4つのアルファベットの

中から選んでOでかこんでください

(子音)

2.聞こえてくる単語の一番初めの

文字を次の5つのアルファベットの

中から選んでOでかこんでください

(母音)

3.聞こえてくる単語の真ん中の文

字を次の3つのアルファベットの中

から選んでOでかこんで下さい

(母音)

4.聞こえてくる単語の一番最後の

文字を次の4つのアルファベットの

中から選んでOでかこんで下さい

(子音)

点数が下が

った児童

(名)

5

変化がなか

った児童

(名)

16

1 12

0 5

7 13

 テスト問題(資料参照)は設問1~4で,それぞれ子どもたちが

一度は聞いたことのある英単語を取り入れた。設問1は,単語の

初めの子音字を聴き取る問題であった。設問2は,単語の初めの

母音字を聴き取る問題であった。設問3は,3つの文字から成る

単語の真ん中の母音字を聴き取る問題であった。設問4は,単語

の最後の子音字を聴き取る問題であった。

24

 それぞれを統計的にみたところ,設問1,設問2,設問3におい

ては,有意な差が認められた(p≦.05)。しかし,設問4において

は,有意な差が認められなかった(p≧.05)。設問1,設問2,設

問3の結果については,設問3の結果がほかの設問に比べ点数が

下がった児童はなく,変化がなかった児童も少なく,点数が向上

した児童は多かった。これらの結果から,今回のフオニックスの

活動は,単語の初めと真ん中の文字の聴き取りが,子どもたちに

とって効果的であったが,とりわけ真ん中の母音字の聴き取りに

おいてより効果があったのではないかと考えられる。それに対し

て,最後の子音字の聴き取りについては,より一層の指導が必要

と思われる。

 このように,単語の初めの文字と,真ん中の母音字,最後の子

音字の聴き取りに関して差があったのはなぜであろうか。そのこ

とについて,活動の様子やアンケート調査などからさらにみてい

くことにする。

25

第4章 活動の様子とアンケート調査の結果

第1節 活動の様子

 週一回45分の授業の中の14~30分を使い,第1回目の目的と

して,「フォニックスの基本的な音を学ぶ」,第2回目は「フォニ

ックス10級,最初の6つの子音(p,b,t,d,k,g)を学ぶ」

第3回目は,「フォニックス9級,5つの短母音(a,e,i,o,u)

を学ぶ」,第4回目は「文字を読めるという喜びを与える」とし,

全4回の授業計画で,学級担任(以下HRT)と外国人語学指導助

手(以下A:LT)によってフオニックスの活動を行った。

「Today,we’regoingtodophonics.」というALTのR先生の言

葉で始まったフォニックスの活動,HRTのU先生は,子どもた

ちに「みんなフォニックスって知ってる?」と問いかける。子ど

もたちは「知らん」,「知らん」と口々に言う。しかし,U先生が

黒板にアルファベットカードbを貼り,「b(ブッ)」と発音すると,

rb(ブッ)」,「book(ブヅク)!」などの子どもたちの反応が返

ってくる。続いてaを貼ると「A(エイ)」と子どもたち。U先生

の「A(エイ)やけど?」の問いに「a(ア)」という反応が返っ

てきた。そして,gのカードを貼った時には,「g(グッ)」という

反応が返ってきた。

U先生:そうやって英語にはローマ字とかね,アルファベットっ

   ていってね,A(エイ),B(ビィ),C(シィ)という読み

   方とブッ ア グッというような2つのいうのがあるん

   やな。それをブッ ア グッ,ブッ ア グツ,ブアツグ、

   ブアッグとつなげて,(黒板の3つのアルファベットカー

   ドを合わせる。〉ひとつの言葉になるんやな。bagって何

   か分かる?

 子ども:バック。

26

 子ども:かばん。

 U先生:うん,こういった,(かばんを持つ動作をして)かばん

    やな。bag。それはこういう3つの文字,ブァッグが重な

    って,ちょっとアなんかがちっちゃくなってbagつてい

    う読み方するんやな。こういうようにひとつひとつの音,

    それを合わせて,ま,読みましょうという,そういう練

    習をフォニックス。たぶん去年みんな,ちょっとはやっ

    てると思うんやな。a(ア),a(ア),a(ア),なんちゃら。

    やってない?

 子ども:やった。

 子ども:やった。

 この子どもたちは,4学年時に,『えほんでフォニックス』(遠

藤,2002)を使って,「Asaysa,a,a,apple.Bsaysb,b,b,bear,

bear...」と歌っていたのである。今回はその復習も兼ねて,R先

生と一緒にその絵本から作成したピクチャーカードを見ながらa

からzまで歌っていったのである。特に今回は,発音がどれも破

裂音ではっきりしており,簡単にできて,しかも文字と音の関係

が一致しているP,b,t,d,k,9とその6つの子音と結びつけ

ることによって単語を読めるようにするa,e,i,o,uを重点的

に歌っていった。

 次の活動は,指文字作りである。この活動の目的は,まだ,小

文字の形をきちんと認識できていない子どもたちがいると考えら

れたため,導入した。U先生が指文字の見本となるカードを前で

見せると,子どもたちは,さっそく各自で指文字を作り始めた。

子どもたちは,「a(ア),こうやで。できた」,「むず」,「うお一」,

rこれ,簡単や」などワイワイ言いながらR先生と一緒に歌いな

がらaからzまで,指文字を作った。

 この活動では,実際に口を動かすだけでなく,身体を使って行

うので,子どもたちの興味を引いたようである。

 第1回目の最後の活動は,DVD(松香フォニックス研究所,

27

2005)を使って,ラップで歌を歌う活動である。ノリのいいラッ

プのリズムに合わせて,「Asaysa,a,apple.Bsays,b,b,bear_」

と身体を動かしながら子どもたちはR先生と一緒に歌った。初め

はついていけなくて小さい声だった子どもたちも2回目になると

大きな声で歌っていた。

 第2回目の活動は,始めに第1回目で歌ったDVDの歌を歌っ

た。子どもたちは,3回目ということもあり,だんだんと慣れて

きたようである。子どもたちは大きな声で歌っていた。

 次はワークブック『みんなでフォニックス上』(松香,2004)

を使った活動である。2人もしくは3人にワークブックが手渡さ

れ,子どもたちは興味深く見始める。ある子どもは「みんなでフ

ォニックス」と本のタイトルを読む。R先生の指示で,子どもた

ちは本を開き,「First,veryeasy,easy。lwillsaytheword,and

you point.For example,if I say‘apple’,you point‘apple’.You

pointthis.」というR先生の説明に,子どもたちは「簡単や」,「あ

あ」と理解したようであった。「Let’strysome,nextone,dog.a,

d,d,dog.No.2,pig,pig.」と続き,それに対して子どもたちは,

「うん?,もう一回言って」と真剣に聞こうとする様子がみられ

た。続いて「No.3,goat.」の時には,子どもたちは,「g(グッ),

g(グッ)」と言いながらワークブックのGの絵のところを指し

ていた。

 この時,子どもたちの中では,聞いた最初の文字を認識し,ア

ルファベットと結びつけることができていたようである。中には

一緒にやっているもう一人の子どもの手を見て,指し示す様子が

みられ,U先生は「人の指見て動くんやなくて,きいてすぐ反応

できるかやで」と注意する。その後,練習を続けて行った。今度

は終わりの音と絵がかかれたワークシートを使っての活動である。

R先生の「1’mgoingtosaytheword,you’regoingtopointthe

letter.Youknow?Youpointthelastletter.」の指示に,初めは,

子どもたちはワークシートに描かれた絵を参考に指し示していた

28

ようで,ワークシートに描かれていない「rabbbit」とR先生が言

った時,「t(トゥ),t(トゥ),これや」と言う子どももいたが,

「最後の音指すんか」と戸惑いながら指し示している子どもの様

子もみられた。続いて,アルファベットがAからZまでかかれて

いるワークシートを使っての活動でも,聞こえてくる単語の最後

の文字を指し示すのであるが,「え一?最後の音指せばいいの?」

と少し戸惑う様子があった。R先生の「book.」に,Cを指してい

る子どももいて,「Yeah,yeah,yeah,‘c’isclose.」とR先生が言

い,答えのkの文字を表示した。その後いくつか練習をした。

 続いての活動はカルタ形式のゲームである。今度はR先生の発

音する単語の①最初の文字②最後の文字を選ぴ,タッチしたカー

ドが正解していたら,1ポイントずつもらえ,最終的にポイント

の一番多い子どもがチャンピョンとなる活動である。机を4~5

人の班にし,P,b,t,d,k,9のアルファベットカードを広げる。

それぞれ,アルファベットカードは3枚ずつ用意し,できる子ど

もだけがカードを独占してしまわないようにした。まず,聞こえ

てくる単語の最初の文字をタッチする場面では,「最初?最後?わ

からへん」という発言もあったが,例題があり,いざゲームが始

まると,子どもたちは真っ先にカードを取ろうとR先生の言う言

葉に集中し,「イェーイ!」,「おれ,1ポイント!」など白熱して

いる様子がみられた。続いて,R先生の「Nextone,nextone,rll

saytheword,thenyoutouchthelastletter.」という言葉には,

子どもたちはすぐ反応し,「ああ,最後!」,「最後や」とR先生

の指示を理解し,R先生の発音する単語の最後の文字をタッチし

ていた。このゲームの時,R先生は,最初の音や最後の音を少し

誇張して発音しており,子どもたちにも分かりやすかったようで

ある。

 第3回目の活動は,始めに第1回目で歌ったDVDの歌を歌っ

た。子どもたちは回を重ねるたび,リズムも分かってきたようで,

aからzまで大きな声で歌った。

29

 第3回では,a,e,i,o,uの5つの母音の音を学ぶことを目

的としており,第2回目で行ったワークブヅク『みんなでフォニ

ヅクス上』(松香,2004),ワークシートを使っての活動と同様の

ものであった。まず始めは,ワークブックを使用して,R先生の

発音する単語の最初の音を指す活動である。前回の活動で,子ど

もたちは,R先生の言葉をほぼ理解していたようで,あたってい

た時など,活動の合闇に,「あった,あった」,「イェーイ!」など

歓声が起こった。続いて,「Nextone,1’11saytheword,youpoint

themiddleletter.」というR先生の指示に,U先生は,「O.:K?」

と子どもたちの理解の様子を確認する。一人の子どもが「真ん中

か!」と気付いたようで,その発言に「ああ」という他の子ども

の理解した様子がみられた。それでもまだ理解できていない子ど

もたちもいたようで,「For example,for example,‘bat.’」という

R先生の言葉に「aじゃない?」と一人の子どもが言い,R先生

は「baseballbat.」と繰り返す。再び子どもの「ああ,真ん中の

文字か」,「ああ。0.K!」という言葉とR先生が「b,a,t」とそれ

ぞれの音を発音し,「Soyoushouldpoint‘a’.」という言葉に全員

の子どもたちが理解できたようであった。続けて,「No.1,bed.」

に子どもたちはeを指した。R先生の,「Nextone,bag.」には,

「バッグ?」「バッグ?」と少し指さすのに迷った様子もみられた

が,R先生は,「Bagis‘a’.」と答えを示し,「b,a,g,‘a’」と確認

した。その後,いくつかの単語を取り上げ,子どもが分からなさ

そうにしている時には,それぞれ確認し,子どもたちも理解でき

たようである。続いて,絵とそれぞれの単語の真ん中の文字が書

かれたワークシートを使った活動においては,子どもたちは,今

度はすぐR先生の指示を理解したようであった。

 しかし,母音の音の区別は難しく,特に真ん中の文字を指さす

のに子どもたちは困惑しているようであったので,R先生は,答

えを示すごとに単語を一つ一つのアルファベットに分け,発音し

て,確認した。

30

 第3回目の活動の最後は,フルーツバスケットと同じゲーム内

容のアルファベットバスケットである。R先生の「Next,we’re

goingtoPlayagame.」の言葉に「That’sagoodidea.」と子ども

たちは反応する。子どもたちはそれぞれa,e,i,o,uのいずれ

かのアルファベットカードを持ち,R先生の発音する単語の①最

初の文字②真ん中の文字を持っている子どもたちが席を移動する

活動である。R先生の「Firstoneisox.」の言葉に子どもたちは

「え,分からん」と戸惑った様子である。

 子ども:a(エイ)ちゃう?

 子ども:a(エイ)やで。

 R先生:Not‘a’.

 子ども:u(ユゥ)。

 R先生:Not‘u’.

多くの子どもたちが席を移動したが,「ちゃうちゃう,oやで」,「o

やで」と最終的には理解したようであった。続く「edge.」には,

iを持った子どもも席を移動しており,iとeの音の違いに戸惑っ

ていた。いくつか最初の音を練習し,続いて,R先生の「lfshesay

thewordisthemidaleletter,middleletter,O.K?」の問いに,「真

ん中や!」,「真ん中ときたか!」とすぐ理解して反応し,その後,

いくつかの単語で練習したが,だんだんと母音の音にも反応でき

るようになり,間違える子どもが少なくなった。すぐに反応して

席を移動しないと最終的に真ん中に取り残されてしまうというこ

ともあり,子どもたちはR先生の言葉に集中して耳を傾け,とて

も白熱していた。

 最終回,第4回では,最初に第1回目で歌ったDVDを歌った。

このラップも5回目ということもあり,DVDがテレビの画面に写

った時点で,「ラップ?」,「ラップ?」という声があった。歌詞や

リズムにも慣れ,子どもたちは大きな声でラップのリズムに合わ

せて歌った。

 第4回での目的は,「子どもたちに単語を読めるという喜びを与

31

える」ということであった。そして考えられたゲームが,4~5人

の班対抗で,それまでに学んだP,b,t,d,k,9の6つの子音

と5つの母音a,e,i,o,uを組み合わせてできる2つまたは3

つの単語を作る活動である。問題はR先生の発音によるものとす

る。そして,ただ単語を作るだけでなく,そのできた単語を読み,

R先生が確認をする。それらができた班が1ポイントずつもらえ

るという活動である。最終的に一番多くポイントを獲得した班が

チャンピョンである。ゲームの前には,p,,b,t,α,k,g,a,e,

i,0,Uの発音の確認を行った。それぞれの班ごとにアルファベ

ットカードを配り,R先生が「Y6ucanspread.」と言うと,「も

う作っていい?」といった単語作りに対する意欲的な様子がみら

れた。

 R先生:First,we’regoingtomakeexample,firstoneis‘bat’.

 子ども:b(ビィ),b(ビィ),b(ビィ),(言いながらカードを

    探す)。

 子ども:b(ブァ),b(ブァ),b(ブァ),(言いながらカードを

    探す)。

 子ども:おれbag(ブァッグ)ってきこえた。

 子ども:bat(バット)やろ。

 R先生:Batshouldbe,‘b’‘a7‘t’‘げ‘a’‘fbat.

 子ども:イェーイ!bat(バット)。

 R先生:Thisisjustexample.No.1ispeg.

     Let’s check th,e answer.How about you,0.K?Let’s

     hold up your card.0.K?Ready?

一班がpagと答えたのを除いて他の全班が正解し,自信なさげで

はあったが,それぞれできた単語を発音することができた。R先

生は,「0.K.Answeris‘P’‘e’‘9’.」と答えを示し,正解した班は「イ

ェーイ」などと歓声をあげ,拍手して喜ぶ様子がみられた。また,

正解できなかった班は,残念そうな様子であった。間違えた班に

対して,R先生は,「a,apple,a,a,a.」と発音し,子どもたちに

32

音の違いを示した。続いてNo.3の問題に関しては,R先生は何度

も発音したが,子どもたちは「わからん」,「え一,わからん」な

どと言っており,単語を作るのに困難な様子であった。No.3の答

えはpotであったが,全班がpatと単語を作っており,aとoの

違いの難しさが感じられた。その場面でもR先生は「o,o,o,

octopus.Patisa,a,a,pat.」と発音の確認をした。最終的に6問

中5問の正解率で,6班中,3班が優勝という結果であった。

33

第2節 活動に関する考察

 フオニックスの指導というと,一般的には,ルールを教えると

いうことから教え込みになりがちであり,子どもたちに退屈と感

じさせてしまう傾向があるが,今回の活動では歌やラップ,ゲー

ムなどを取り入れることによって工夫した。そのことによって,

子どもたちは楽しく音や文字に触れ,学ぶことができたのではな

いだろうか。

 例えば歌の活動では,4学年時に使用したものと同じ教材を使

用し,視覚的にも慣れ親しんだものを使用することとした。その

時の子どもたちのピクチャーカードを見て真剣に歌う様子から,

それは子どもたちの興味を引く活動となったのではないかと考え

られる。

 一方,今回新たに導入したラップで歌を歌う活動は,新しいリ

ズムが子どもたちにとって心地よく,DVDの映像も新鮮で楽しい

ものであったのではないだろうか。アルファベットの小文字が画

面に出てきて,その後にすぐ歌詞の絵が出てくる映像に子どもた

ちは見入っていた様子が印象的であった。

 ゲームにおいては,歌やラップの時以上に,子どもたちのテン

ションが高く,教師,また子どもたちにとっても全身体を見なが

ら活動することができたので,音を聞いて正解しようという意欲

が十分見られ,音の習得にも十分対応できていたのではないかと

考えられる。

 また,単語を聞いてアルファベットを選ぶ活動においても,一

人で行うのとは違っており,競争または協力する相手がいたので,

真剣にじっと耳を傾けてきくことができたのではないかと考えら

れる。

34

第3節 アンケート調査の結果

 テスト結果は第3章で述べたとおりであるが,今回のフォニ

ックスの活動に関して,子どもたちがどのように感じていたかを

さらに調査するため,アンケート調査を行った。結果は以下のと

おりである。

 「フォニックスの活動は楽しかったですか」という問いに対し,

81%の児童が「楽しかった」と答えている。また,「楽しくなかっ

た」と答えている児童が7%,「どちらでもない」と答えている児

童が12%であった(図4.1参照)。

どちらでも

 ない

 /楽しく

なかっ

 7%しかった

81%

図4・1 フォニックスの活動は楽しかったですか

 rラップで歌を歌う活動は楽しかったですか」という問いに対

しては,「楽しかった」78%,「楽しくなかった」8%,「どちらで

もない」14%という回答が得られた(図4.2参照)。

35

楽しく

なかっオ

 8%

どちらでも

 ない

              78%

図4・2 ラップで歌を歌う活動は楽しかったですか

 また,「単語を聞いてアルファベットを選ぶ活動は楽しかったで

すか」という問いに対しては,「楽しかった」71%,「楽しくなか

った」11%,「どちらでもない」18%という結果であった(図4.3

参照)。

楽しく

なかった

 11%

’しかった

71%

図4・3 単語を聞いてアルファベヅトを選ぶ活動は楽しかったで

   すか

36

第4節 アンケート調査における考察

 「フォニックスの活動は楽しかったですか」の問いに対する理

由において,「楽しくなかった」,「どちらでもない」と答えている

子どもたちの理由に注目してみると,「同じことのくりかえしだっ

たのでたのしくなかった」という記述があった。これは第2回,

第3回のワークシートで単語を選ぶ活動が同様のものであったか

らではないかと考えられる。また,「かんたんすぎてたのしくなか

った」と記述をしている子どもは,プレテストで17点(20点満

点中),ポストテスト2では20点(20点満点中)であり,活動内

容にもの足りなさを感じていたようである。「あまり英語で会話で

きないから」という記述においては,活動内容に会話をする活動

が含まれていなかったことに対する不満が感じられる。

 しかし,一方81%を占める「楽しかった」と答えている子ども

たちの理由には,「ラップなどたのしいことで英語を学べたから」,

「歌の合わせてやるのが楽しかった」,「ノリノリの音楽がたのし

かった」,「ラップのリズムがよかったから」,「リズムがつかみや

すいし,ついていこうとするからおもしろい」など歌,ラップに

関する記述が最も多く,歌やラップのリズムにのって単語を学習

することに,興味を抱き,意欲的に取り組んでいたことが分かっ

た。

 (ワークブックを使って)単語を選ぶ活動においては,ALTの

R先生が発音する単語の①最初の文字②最後の文字③真ん中の文

字を指し示すという単純な活動ではあるが,「まちがったり,せい

かいしたりのかいかんがおもしろいから」,「アルファベットをあ

てるのが,あっているのかドキドキしてたのしかったです」,「指

でさすのがたのしかった。きいたりするのもたのしかった」,「と

くに本をつかってするのがすごいたのしかった」などクラスメイ

トと協力しながら,または競争しながら,英語をきいてすぐ反応

し,答えがあっているのかを確認するということが子どもたちの

37

意欲を高めたようである。また,本を使ってのそれまでなかった

活動が子どもたちの興味を引いたようである。

 また,今回のフォニックスの活動において,「そのおかげでえい

ごがちよっととくいになった」,「フォニックスの学習で単語が読

めるようになった」,「単語が少しよめるようになった」という,

できるようになったことや「英語の発音の仕方が分かった」,「英

語が一つ一つ読むことができるということがわかった」,「どうい

う文字で,どういう単語が作れるかわかった」などという記述も

あり,それらは,今回のフォニックスの活動での「単語を読める

という喜びを与える」という目的をはたすものであったと考えら

れる。

 これらの結果から大半の子どもたちが,今回のフォニックスの

活動において楽しかったと感じていたことが分かるが,一方で「楽

しくなかった」,「どちらでもない」と答えている19%の子どもた

ちの中には,「英語はよくわからないから」という記述にもみられ

るように英語に対する苦手意識をすでに持っているということも

感じられる。そのような子どもたちには個別指導を意識的に持つ

ことや繰り返すことで分かる喜びを味わわせる必要があると考え

られる。また,活動に対するもの足りなさなどの不満を感じてい

る子どもに関しては,活動内容をさらに見直し,自己表現ができ

るように改善することで,対応していくべきであると考えられる。

38

第5章 考察及び今後の課題

第1節 考察

 小学校英語活動において,年齢が低いほど音声を聴き取り,認

識する能力が養われるという点などから文部科学省が音声を中心

とした活動を重要視して述べていることはもっともである。

 しかし,実際の小学校の現場においては,子どもたちの様子か

ら,音声言語を中心とした活動だけでなく,英語の文字に対して

の関心が高まりつつあるという実態が明らかにされている(直島

町立直島小学校,1996,大阪府立河内長野市立天野小学校,2001)。

また,小学校で,英語活動を行っているにもかかわらず,中学校

段階で,英語の文字と発音のギャップなどから,英語の「読み」

「書き」につまずいてしまい,英語嫌いを作り出しているという

点が問題視されている(江本,1980)。

 本研究では,それらの現状をふまえ,英語学習において,子ど

もたちが中学校の英語学習へと円滑に進めるようにという思いか

ら始まったものである。特に「読み」「書き」につまずいてしまう

という点から,今回は文字に注目し,研究することとした。

 第3章で述べたように,本研究において研究対象とした兵庫県

F小学校の第5学年の児童たちは,英語活動を始めて4年目とい

うこともあり,pre・testの平均値は,予想よりも高い点数であっ

た。それは,これまで学習してきた活動においての成果であると

いえる。同小学校では,それまで,音声言語を中心とした活動で

はあるが,全く文字を見せないというのではなく,ピクチャーカ

ードの中などで文字を用い,自然な形で文字に触れるような活動

を行っていた。また,第4学年時にローマ字を学習していたこと

も子どもたちの文字の認識に影響を及ぼしていたのではないかと

考えられる。

 しかし,フォニックスの授業実践後のpost-test1において,実

39

験群group1は,有意な差が認められたため,今回行ったフォニ

ックスの活動が子どもたちの音と文字とを結ぴつける能力を向上

させたという結果が得られた。特に,3語の文字から成る英単語

の真ん中の母音字を聴き取る問題においては,フォニックスの成

果が一番良く表れていた。5つの母音a,e,i,o,uを聴き取る

ことは,それぞれの音が区別し難いため,日本人にとって非常に

難しいと思われるが,今回の全4回(1回14~30分)という少な

い時間の活動の中においてでも,効果が表されたということは,

年齢の低い子どもたちの聴力が非常に柔軟なためではないかと考

えられる。

 しかし一方で,単語の一番最後の子文字を聴き取るテストにお

いては点数が向上している児童は少なく,単語の最後の音の聴き

取りの難しさが感じられた。授業実践第2回目において行われた,

ALTの発音する単語の一番最後の子音字を聴き取り,そのアルフ

ァベットを指さす活動では,多くの児童がその音を聴き取って指

さすことができていたのであるが,その活動では,ALTによって

単語の最後の音が少し誇張して発音されていたこともあり,聴き

取りができたのではないかと考えられる。

 今回の活動は,初期の文字導入の方法として唯一システム化さ

れているフォニックス法に注目して授業実践を行った。しかし,

ルールを教えるという点で,教え込む形式になり,これにより,

子どもたちに負担を与えるという問題点があることから,その活

動内容を考える際には,十分考慮する必要があった。子どもたち

にとって楽しく学べることとして,ラップなどの歌やゲームを取

り入れ,授業実践を行った。そして,アンケートを行った結果,

「今後,フオニックスで学びたいこと」の問いに対して「こんど

はもっとむずかしい単語がしたい」,「単語を読み書きしたい」,「も

うちょっと長い文章をよみたい」などの記述が得られた。このこ

とから,今回の活動が,子どもたちに十分受け入れられ,文字に

対する学習意欲をさらに高めたことが分かる。また「フォニック

40

スの活動は楽しかったですか」という問いに対しての「文字で単

語を作るゲームで,「aとu」,「aとo」のちがいがむずかしかっ

たけどたのしかった」という記述から分かるように,子どもたち

の文字に対しての関心が高いことや,「単語が少し読めるようにな

った」,「フォニックスの活動で単語が読めるようになった」など

の記述からも,今回の授業の目的である「文字を読めるという喜

びを与える」ことが達成されたということが考えられる。

 子どもたちの活動の様子をみると,今回の活動を行う際,初め

に導入したフォニックスの説明の場面では,HRTの説明に真剣に

聞き入っている様子であった。それは,新たな活動に対しての期

待感を持っているようでもあった。指文字作りにおいては,指で

子文字を表した見本のカードを提示するたび,喚声が上がった。

そして文字を作ると同時にその文字の音を口に出す子どもたちの

様子もみられ,アルファベヅトの基本の音と文字の認識ができて

いる様子がみられた。歌においては,第4学年時において同様の

活動を行っていたこともあり,その活動に親しみをもって,取り

組んでいるようであった。また,ラップの活動の場面では,テレ

ビの画面に集中してそのリズムに必死でついていこうとする子ど

もたちの様子が印象的であった。クラスによっては,子どもたち

が身体全体を使ってリズムにのっている様子があったが,口を動

かすだけのクラスもあり,それぞれのクラスの特徴がよく表れて

いた。また,単語を聞いてアルファペットを選ぶ活動では,すべ

てがALTの英語の説明であったため,それぞれの単語の最初の文

字か最後の文字か真ん中の文字を聴き取るのかについて迷ってい

るようであったが,HRTの補助や理解できた子どもの発言によっ

て,子どもたちのほとんどがアルファベットを指し示すことがで

きていた。ゲームに関しては,非常に白熱していた子どもたちの

様子から,遊びを通して学ぶことの大切さも感じられた。

 これらのことから,今回のフォニックスの活動を通して,子ど

もたちは「単語を読めるという喜び」,「文字には一つ一つ音があ

41

るという発見」,「英語の音と文字のギャップがあるという気付き」

などを得ることができたのではないかと考えられる。そして,そ

れと同時に,ラップなどの歌やゲームによって,必然的に取り入

れられた文字に対する関心がより高まったのではないかと考えら

れる。

 特にアンケート結果でも,多くの子どもたちが「ラップが楽し

かった」などの記述をしていたことから,今回使用したDVD

『ActivePhonics』(松香フォニックス研究所,2005)におけるラ

ップのリズムが子どもたちにとって楽しいと感じられたことや視

覚からも文字と絵によって子どもたちに印象づけるものであった。

これらのことが,子どもたちの学習意欲を高め,文字習得におい

ても効果的であったのではないかと考えられる。

 このように,フォニックスを小学校の英語活動において取り入

れる場合には,子どもたちの興味・関心を損なわないために,歌

やチャンツ,ゲームなどを用いて行うことが必要であると考えら

れる。そして,活動において,文字だけを用いるのではなく,DVD

やビデオ,ピクチャーカードなどの中で絵を視覚的に子どもたち

に提示することが重要である。また,今回特に配慮した点として

は,机の上でのみの学習にならないということであった。その点

においては,カルタ取り形式のゲームやバスケットのゲーム,ま

た,指文字作りなど身体全体を使って行う活動を取り入れること

とした。高学年においては,低学年に比べ,身体全体を使っての

活動には少し抵抗感があると感じられるため,ALTやHRTが率

先して行い,子どもたちの活動に対する抵抗感をなくす必要もあ

ると考えられる。

42

第2節 今後の課題

 現在では,総合的な学習の時問の中で,英語が小学校から取り

扱われることになり,その内容は,音声言語を中心とした活動と

なっている。その理由の一つとして,聴力において非常に柔軟な

時期であるという研究仮説が考えられる。しかし,子どもたちが

高学年になるにつれて,文字に対する興味を持つようになるとい

うことも明らかにされている(直島町立直島小学校,19961大阪

府立河内長野市立天野小学校,2001)。また,近い将来,小学校

において英語が必修化,教科化されるという議論もなされている。

このような流れから,小学校の段階で文字を導入して行うことの

必要性と重要性が考えられる。そこで,高学年の英語学習では,

特にフォニックスの指導が,音と文字を結ぴつける学習に適して

いるのではないかと考えられる。中学校に入る前のフォニックス

の習得においての利点を『ActivePhonics』(松香・宮,2001)を

参考にしてまとめると以下のようである。

 ①英語の音の聞き分けを助ける

 ②正しい発音を身につける

 ③カタカナをふらないで自分の力で読める

 ④英語の単語を丸暗記せずに書ける

 これらは,英語学習における「読む」「書く」「聞く」「話す」の

4技能において,必要かつ重要な事柄であろう。そして,これら

の利点は,子どもたちの英語学習の助けとなることや学習意欲の

向上においても効果的ではないかと考えられる。

 本研究では,1回14~30分,全4回という短い時問で行われた

実践結果であり,全部のルールを覚えることにより75%の英単語

が読めるようになるというフォニックスの最終目的を達成できる

ものではなかった。しかし,子どもたちの文字学習に対する意欲

が高まったことや英語の音と文字とを結ぴつける能力が向上した

という実態からフォニックスの活動を継続して行っていった場合,

43

さらにどのような効果が表れるのかということは非常に興味深い

ことである。特に今回の活動では,2つもしくは3つの文字でで

きる単語を読めるという目的で行った実践であったため,子ども

たちのアンケートの記述でもあったように「こんどはもっとむず

かしい単語がしたい」,「もうちょっと長い文章をよみたい」とい

う欲求には応えることができなかった。フォニックスのルールを

すべて習得できれば,その子どもたちはそれらを達成することが

できるだろう。フォニックスのルール全部を覚えるということは

容易ではないが,活動内容を考慮し,少しずつ指導することでそ

れは解決できるものと考えられる。今後は,そのような子どもた

ちの欲求を満たし,意欲・関心を高めて,英語学習を向上させ,

また,英語嫌いの子どもたちを作り出さないために,できるだけ

子どもたちの負担とならないような楽しく,興味深い活動内容に

ついて,研究を続けていきたい。

44

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48

●聞こえてくる単請の一番初めの文字を次の4つのアルファペットの中から避んで0でか

こんで下さい.

1。                2,                 3,

4,                 5.                  6.

  k  8     k  p    p  k

    t  d     t  g    d  b

     5年(1・2。3)組勾両(                       )

   k  区    t  8    P k

   ①  p    k p   t  b

●闘こえてくる単語の一番初めの文字を次の5っのアルファベットの中から遷んでOでか

こんで下さい.

1.               2。

  @   i   a      e

   O     U      O

4,                5.

        ロ  a     l       a

     e

  O     U                 O

          3.

    i     a

 e            e

    U      O

           6.

    i     a

e               e

    U       O

01

u

o雪4

u

49

e~i : ~t~C < ~ l~a~;e)X/・~ a)5c:~~:~~e) 3 r)(D7/v7 7 -< y h a)4,h・e,~/U1:*Ol~h, ~

/・1~T ~: v ~.

1.

4,

u bi @

g

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5.

b

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g

3.

6.

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er, :: ~LC < ~l~a~e)-tt~:e) ~t~F~:~cc) 4 ・e)7/v7 7 ~ y h e)~h*~)ill,~O~h* C 1'1'? ~ v '.

l'

t g

d

3.

p

t g

d

b

4.

t

p

k

d

5. d

g

k

b

6.

d

g

p

t

50

活動内容 第一回

【目標】フォニヅクスの基本的な音を学ぶ

学級担任 ALT 児童

1.  皆さんの知って

いるアルファベット

AやBやCには,名

前と音とがありま

す。例えばAなら

Bならbといったよ

うに。この読み方を

組み合わせると,つ

まり音の足し算をす

るとb,a,g,(ブ

ウアグ,ブゥァグ,

ブゥアッグ)‘bagヲ

のように単語が読め 2 . Lefs say the

るようになります。 phonics      jingle 2.

それでは音の練習を together.

して規則を学んでい Asaysa,a,apple,A

きましよう。 says a, a, apple, B A says a,a,apple,A

says,b,b,bear_(b, s&ys a, a, apple, B

〔1,9,k,P,t,a,e,i,0, s段ys,b,b,bear_

Asays a,a,apPle,A u×2)

says a, a, apPle, B 3 . Let’s say  the

says,b,b,bear_ phonics  jingle  an(1

make  the  small 3.指文字を作りながら

1etters  with  your フォニックスジングル

fingers. を言う。

3.(指文字カードの提 指文字を作りながらフ Asaysa,a.apPle,B

51

示) オニヅクスジングルを .says,b,b,bear。..

Asays a,a,apPle,B二  》

つo

says,b,b,bear.., (b,(1,g,k,p,t,a,e, 4、

i,o,uの11文字を限

定して) Asaysa,a,apple,B

4.(DVDの操作) says,b,b,bear_

4 . Lefs say the (余裕があれば,指文

Asays a,a,apPle,B phonics       jingle 字と合わせて)

says,b,b,bear.。. together,

(余裕があれば,指文字 Asaysa,a,apPle,B

と合わせて) says,b,b,bear...

(余裕があれば,指文

字と合わせて)

52

活動内容 第二回

【目標】フォニヅクス10級,最初の6つの子音(P,b,t,d,k,9)を学ぶ

学級担任 ALT 児童

1.(DVDの操作) 1. Let’s say the phonics 1.(6班に分かれ

Asaysa,a,apPle,A jingletogetheL ておく)

says a, a, apple, B Asaysa,a,apPle,Asays Asaysa,a,&PPle,

says,b,b,bear.,. a,a,apple,B says,b,b, As段ysa,a,apPle,

bear.., B  says,  b,  b,

bear.,,

2.(ワークブツク,ワ 2.0,K.Let’smakepairs. 2.(ワークブヅク

一クシートを2人で一 Open your workbook to p.6・7を開き,アル

つ,または3人で一つに page 6 and 7.1フll say the ファベットを指差

なるように配る) wor(1.You point to the しながら)

letter,(例)apple 1 . {1 2 . p  3 . g

1 . (lo9 2 . pig  3 . go&t 4. k  5 . b  6 . t

4.king 5.bear 6 .tiger

Then,Hl say the wor(1,

You  point  to  the  last 1。(1  2.t  3.1)  4,k

letter. ({列) pig1.yar(12, 5。t  6.b  7.g  8.t

hat3。lamp4,ink5.rabbit 9,(1

6。cab 7.〔lo9 8,goat9,bed Ld 2.9 3.P

(絵つき)1.sad2。big3.pop 4,k 5,b

4.book5.cob (文字のみ)

3.(アルファベットカ (アルファベットカードで

一ドを各班に配る) 答えを示す)

(ゲームの内容を児童 3 . Then, let’s play a

が理解していないと思 game! 3.(カルタ取りゲ

われる場合には,日本語 ①If I’ll say the word, 一ムをする)

で補足説明) you get the alphabet car(1

53

54

活動内容 第三回

【目標】フォニヅクス9級,5っの短母音(a,e,i,o,u)を学ぶ

学級担任 ALT 児童

1.(DVDの操作) 1. Let夕s say the phonics 1.

A says a,a,apPle,A jingletogether。 Asaysa,a,apple,

saysa,a,apPle,Bsays, Asaysa,a,apPle,Asaysa, Asaysa,a,apPle,

b,b,bear_ a, apple, B says, b, b, Bsays,b,b,bear_

bear。.. 2.(ワークブック

2.(ワークブック,ワー 2.0.K.Let’s make pairs. p.6・7を開き,アル

クシートを2人で一つ, Open your workbook page ファベットを指差

または3人で一つになる 6to7,rll sεしy the word. しながら)

ように配る) You point to the letter, 1 .e 2 .i3 .a 4.

(例)bear u,5.o

1 . egg 2 . ink  3 . apple

4.umbrella 5.octopus

Then,1’ll say the word,You 1.e  2,a  3.i  4.u

point to the mid〔lle letter. 5.o

(例)bat1.bed2.bag3.tip 1.i  2.e   3.a   4.o

4.sun5.dog(絵つき)1,sit 5.u  6.&  7。0  8.u

2,peg3.man4.not5。cup

6,mat7,hot8.bug (文字の

3.(ゲームの内容を児童 み)(アルファベットカード 3.(アルファベッ

が理解していないと思わ で答えを示す) トバスケットをす

れる場合には,日本語で 3  .  Then,  lefs  play る)

補足説明) Alphabetbasket! (児童に (一人一枚アルフ

カードを渡す。)Takeone アベヅトカードを

and pass them on,①1’ll 持つ)

say the word and if you

have  the  alphabet  car(1

55

56

活動内容 第四回

【目標】文字を読めるという喜びを与える

学級担任 ALT 児童

1.(DVDの操作) 1 . Lefs say the 1.(6班に分かれてお

Asaysa,a,apPle,A phonics       jingle く)

says a, a, apple, B together.

says,b,b,bear..。 Asaysa,&,apple,A Asaysa,a,apple,A

says a, a, apple, B says a, a, aPPle, B

says,b,b,be&r... says,b,b,bear,。.

2.(b,(1,g,k,p,t,a,e, 2.O.K.Let’s pl段y a

i,0,Uのカードを班ごと game・

に配る) (b,d,g,k,p,t,a,e,

i,0,Uのカードを班

ごとに配る)

一つの班を見本に単語

(ゲームの内容を児童 を言い,11つのカー

が理解していないと思 ドの中から単語を作

われる場合には,日本語 り,単語ができ,正解

で補足説明する) した班は1ポイントも

らえることを説明。

(できても,他の班には (例)bat1.peg2.pot できた単語を班ごとに

まだ見せないことを説 3.(lo94.up 5.be(16.big 発表。

明) 答えの確認。

(アルファベットカー (ポイントを黒板に書

ドを黒板に提示) く)

(答えの確認)

57

謝 辞

 本研究を進めるにあたり,様々な場面でご指導,ご助言頂きました

総合学習系講座の先生方,またそれ以外の講座の先生方に心から感謝

を申し上げます。

 指導教官であります鈴木政敏助教授には,研究学校の紹介をして頂

き,未熟な私に経験と学びの場を与えて下さいました。また,研究の

基礎となることから論文の執筆まで,大変丁寧なご指導を頂きました

ことを深く感謝申し上げます。

 そして,ご多忙の中,小学校の諸先生方,小学生の皆さんには,長

期の研究にわたり,親切丁寧にご協力くださいましたことを深くお礼

申し上げます。

 また,松香フォニックス研究所の松香洋子先生はじめ,多くの研究

会員の皆様にはご多忙の中,参考文献の紹介や的確なアドバイスをし

て頂き,本当に感謝しております。

 2年間,鈴木研究室の2回生の和泉屋喜子さん,松岡杏里さんほか

総合学習系コースの皆様とは,研究に関する内容を問わず様々なこと

に関して語り合い,共に過ごす中で,大学院生活の楽しさを経験させ

て頂きました。また,1回生の皆様にも様々な場面でお世話になりま

したことを深く感謝申し上げます。

 本当にたくさんの皆様の支えとお祈りのおかげで2年間の研究生活

を送ることができ,論文を完成させることができました。本当に有難

うございました。

 最後に,2年間実家を離れ研究生活を送る私に,いつも温かい言葉

とアドバイスを送り続けてくれた母,そして,声援を送り続けてくれ

た父,体調などに気を配ってくれた祖父,祖母,姉に感謝の気持ちを

送りたいと思います。本当に有難うございました。

2005年12月20日    加納由美子

58