老人の平衡機能の適応能の評価 ·...

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262 - 老人の平衡機能の適応能の評価 学  ’藤 (共同研究者) 同         外  山    寛 同        浅  井    仁 金 沢 経 済 大 学   宮  口  明  義 金 沢 医 科 大 学   山  科  忠  彦 沢一大 学  Evaluation of Adaptability of Equilibrium Function in the 01d by Katsuo Fujiwara , Hiroshi Toyama Hitoshi Asai Kanazawa び夕diversity Akiyoshi Miyaguchi Kana ぶiwa  Economic College Tadahiko Yamashina 瓦α夕lazaw ・i Medical び雨脚rsity Shinichi Demura Kan 心awa Ut 丿versity ABSTRACT The purpose of this study was to investigate the adaptability of equilibrium function in the old . The subjects were 39 university students (young group) from 18 to 21 years 01d and 48 01d age persons   (old group) from 62 to 78 years old . A vibration table with a force plate on which the subjects maintained the standing posture with eyes closed , was vibrated sinusoidaly in anteroposterior direc tion under the condition of 2 .5 cm amplitude and 0 ,5 Hz frequency デサントスポーツ科学Vol. 13

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Page 1: 老人の平衡機能の適応能の評価 · 動する方法を用い,姿勢調節の応答特性や適応能 の研究を行ってきた.それによって,振幅2.5 cm,

262 -

老人の平衡機能の適応能の評価

金 沢 大 学  ’藤 原 勝 夫

(共同研究者) 同         外  山    寛

同        浅  井    仁

金沢 経 済大学  宮  口  明  義

金 沢医科 大学  山  科  忠  彦

金 沢一大 学  出 村 慎 一

Evaluation of Adaptability of Equilibrium Function in the 01d

by

Katsuo Fujiwara , Hiroshi Toyama ,

Hitoshi Asai

Kanazawa び夕diversity

Akiyoshi Miyaguchi

Kana ぶiwa  Economic College

Tadahiko Yamashina

瓦α夕lazaw・i Medical び雨脚rsity

Shinichi Demura

Kan 心awa  Ut丿versity

ABSTRACT

The purpose of this study was to investigate the adaptability of

equilibrium function in the old. The subjects were 39 university

students  (young group ) from 18 to 21 years 01d and 48 01d age

persons  (old group) from 62 to 78 years old. A vibration table with a

force plate on which the subjects maintained the standing posture

with eyes closed, was vibrated sinusoidaly in anteroposterior direc-

tion under the condition of 2.5 cm amplitude and 0,5 Hz frequency。

デサントスポーツ科学Vol. 13

Page 2: 老人の平衡機能の適応能の評価 · 動する方法を用い,姿勢調節の応答特性や適応能 の研究を行ってきた.それによって,振幅2.5 cm,

The trial time on the vibration table was one minute. This trial was

repeated 5 times with inserting a rest sitting on a chair for one

minute . The equilibrium function of standing posture was evaluated

by the mean speed of the fluctuation foot pressure center.

The mean speed was corrected by the height . The results were

follows :

1 )The equilibrium of the old group was significantly inferior to

that of the young group in all trials。

2 ) In all subjects of the young group, the equilibrium function

improved with repeating the trial. In the old group, the subjects of

about 15% didn’t show the improvement of equilibrium function with

repeating the trial, on the other hand, a few subject showed the

improvement similar to the young group . Conceivably , the ad -

aptability of the old group was inferior to that of the young group。

3 )ln the young group , the seχial difference of equilibrium func-

tion wasn ’t recongnized in all trials. In the old group, the equilibrium

function of male was superior to that of female untill the third trial,

and after that trial a significant seχual difference wasn’t shown.It

was conceivable that no sexual difference of the adaptability of

equilibrium function eχist.

要  旨

本研究の目的は,老人の平衡機能の適応能につ

いて検討することにある.被験者は,18 ~21 歳

の大学生39 名と62 ~78 歳の老人48 名からな

る.振動台に固定した床反力計上で閉眼にて立位

姿勢を保持し, 振動台を振幅2 .5 cm, 周波数0.5

Hz で正弦波状に振動した.1 回の試行時間を1

分間とし,座位による1 分間の休憩を挟んで5 試

行を課した.平衡機能は,足圧中心動揺の平均速

度によって評価した.その値は身長補正を施し

た.そして,次のような知見を得た.

1)老人の平衡機能は,いずれの試行回におい

ても,若年者よりも有意に劣っていた.

2)試行を繰り返すことにょって,若年者はい

デサントスポーツ科学Vol. 13

-263 -

ずれも平衡機能が向上したのに対して,老人にお

いては平衡機能 の向上が認 められない者が約

15%おり,老人の平衡機能の適応能は若年者より

も劣っていた.ただし,老人の中には若年者と同

様に向上する者も若干認められた.

3 )若年者においては,いずれの試行回でも有

意な平衡機能の性差が認められなかった.老人に

おいては,第3 試行までは女子より も男子の平衡

機能の方が有意に優れているが,その後の試行回

では有意な性差は認められなかった.このことな

どから,平衡機能の適応性については,有意な性

差はないものと考えられた.

1 。目   的

今後急速に進む高齢化社会において,老人 がい

Page 3: 老人の平衡機能の適応能の評価 · 動する方法を用い,姿勢調節の応答特性や適応能 の研究を行ってきた.それによって,振幅2.5 cm,

-264 -

かに 健康 で安全 に生活 す るか とい うこ とは重要で

あ る. そ の場 合, 老人 に転 倒 が多 く, 大 きなヶ ガ

に なる ことが しば しばあ り, 若 年者 と異 なり長 期

に渡 る介 護 が必 要 とな るなど, 二次 的に も多 くの

問題 を引 き起 こし てい るのが実 情 であ る. 一方,

若年 労働 人口 の減少 と い う面 か ら, 高年 齢者 の雇

用 が重視 さ れて いる; しか し, 高年 齡労 働者 に転

倒, 転落, 動 態物 と の接 触 など によ る重 大災害 が

多 く, そ の防 止策 と安全 向上策 を 検討 す ることが

強 く望 ま れてい る. 転 倒問題 に関 して は, 平 衡機

能 の低下 の観 点 より分 析が進 め られて い る.

安 静 立 位 姿 勢 の平 衡 機 能 の老 化 に 関 す る研 究

は, Hellebrandt らlo)を は じめと して,著 者 ら4)を

含 め実 に多 くなさ れてき た111 15・ 18. 21・ 气  ま た, そ の

平 衡機 能 の低下 に,関 与 す る生 理学 的な研究 も,

近年多 数 報告 さ れて い る. 例え ば,前 庭 機能1’・31),

視運動 眼振23 ), 起立 性低 血圧12,J6)などに関 す るも

ので あ る. 体力 要因 に関 して は下肢筋 力 などが あ

げ ら れてい る゛し

老 人 の転 倒な どによ る労 働災 害 につい て は, 静

的 な状 態 で の平 衡 機能 の分 析を 畝 ら28)が行 って い

るが, 事故経 験 との間 に明確 な関 係 は認 め られて

いな い. Fernie3 ’ {こよって, 転倒経 験者 の平衡機

能 が劣 るとい う結果 が報 告 されて い るが, そ の差

は わず かで あ るとい う. このよ うな結果 は, 取 り

上 げ た平衡 機能 が転倒 に直接 結 びつ くような動的

な も ので は な い こ とに よ るこ と も十 分 考 え られ

る.

したがって,転倒の原因のひとつと考えられる

外乱刺激に対する,平衡機能の適応性という面か

らの検討を,十分進める必要があると考える.私

どもはこれまでに,外乱刺激として床を水平に振

動する方法を用い,姿勢調節の応答特性や適応能

の研究を行ってきた.それによって,振幅2 .5 cm,

振動周波数0 .5Hzにおいて,平衡機能の差をよ

く検出できること5),この調節には予測的制御過

程が強く関与していること6),および大学生では

比較的少ない(1 分間×3 回)試行で十分適応す

るが7),幼児ではその試行ではほとんど適応しな

いこと8)などの知見を得てきた.

本研究では,老人を対象にして,上述した条件

の水平床振動を繰り返し負荷し,平衡機能の適応

能について検討することとする.これによって,

老人の平衡機能の訓練効果の様相について知り,

訓練の方向性を得ようとするものである.

2.方  法

被験者は62 歳から78 歳の男女各24 名からな

る.また,比較対象の若年者として金沢大学の18

~21 歳の男子学生18 名と女子学生21 名を被験

者とした.被験者の年齢,身長,体重を表1 に示

した.老人の年齢は,女子の方が若干低かった.

身長と体重は,いずれの年齢群も囗本人の標準

値19)に近かった.

表I Number of the subjects in young and old age groups and their

i   physical characteristics

Group NumberAge  (years)

Mean S . D.

Height  (cm)

Mean S . D.

Weight  (kg)

Mean S . D.

Young

male

female

18

21

19.8  0.73

19.5  0.59

172.2  5.36

158.0  5.96

67.0  7.21

54.1  7.40

01d

male

female

24

24

70.7  4.38

67.3  1.99

158.3  4.81

147.8  4.30

56.3  7.97

49.0  8.22

デサント スポーツ科学Vol . 13

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被 験 者 に は , 振 動 台 ( 電 子 制 御 グ ル ー プ , PW

0198 ) に 固 定 き れ て い る 床 反 力 計 弌 パ テ ラ ,S

110 ) 上 で ,∧閉 眼 ・ 閉 足 位 に て 立 位 姿 勢 を 保 持 さ

せ , 水 平 床 振 動 を 負 荷 し た. 振 動 台 の 特 性 は , 別

佞 )の と お り で あ る . 振 動 は 正 弦 波 状 と し , 振 幅

2.5 cm, 周 波 数0 .5 Hz .と し.た ‥ 亅 回 の 試 行 時 間 を

1 分 間 と し , 椅 座 位 に よ る 十 分 間 の 休 憩 を 挟 ん で

5 回 反 復 し た . 被 験 者 の 安 全 を 考 慮 し て ,j被 験 者

の 横 に 補 助 者 を つ け た. 補 助 者 は , 被 験 者 が 転 倒

し そ う に な っ た 場 合 に の み 支 え た . 被 験 者 に は ,

手 を 体 側 に 軽 く 着 け さ せ , 意 図 的 な 膝 や 腰 の 屈 曲

を 避 け さ せ に リ ラ ッ ク ス し た 立 位 姿 勢 を 保 つ よ う

に 指 示 し た . 振 動 台 の 概 略 と 実 験 の 様 子 は , 図1

に 示 し た .  ∧ 卜 ] ………万一 .’= ……… … …… …万 ………

こ れ ら の 試 行 中 に , 直 線 型 鼎 テ ン シ ョ メ 十 夕

( 緑 測 器 けLP 10 卜 に よ っ て 床 振 動 の 変 位 を ,‥

床 反

力 計 に よ っ て 前 後 方 向 の 足 圧 中 心 動 揺 を 検 出 し ,

デ ー タ レ コ ー ダ (共 和 電 業 , RTP -501AL ) に 収

録 し た , そ の 他 に , 補 助 者 が 被 験 者 を 支 え た 時 間

-265 一

帯を,音声でデータレコーダに収録 した.後刻,

足圧 中心 動揺の データを再生 し,A /D 変 換の

後,振動開始10 秒目から50 秒間のデ ータを用い

て,足圧中心動揺の平均速度(MS -CFP )を,マ

イクロコンピュータ(NE(;,PC 980工VX )で数値

計算した.老人では, たびたび補助を必要とした

が,その時間帯のデータは削除して計算した.得

られた値は,次式によって身長補正を施した.こ

の値によって,平衡機能を評価した. :

補正値=実測値×160 /身 長

なお,統計上の有意水準は,5 % として検定し

た. ..・・・・.・.・.・     .・  ・.・

3,結  果

老人の床振動の変位および足圧中心動揺の第1

試行と第5 回試行の代表的記録例を,図2 と図3

に示した。 図2 は5 回の試行でMS -CFP が変化

しなかった例であり,図3 は試行を重ねることに

よって,MS -CFP が有意に減少し,平衡機能が向

ご ご 声

` tab 】e = rl

plummer block

………図1 卜Me 齟uiement method for ・equi!ibrium function (left figure) and schematic

drawjng =of a lfIoorごVibration

二table with a force plate (right figure)

デサントスポペツ科学VoL .13

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Vibration

CFP

Vibration

CFP

2  secFirst trial

I I I I ・ ● 1・ ●

一回

一一一

一 八・トーA・   A ●   亠 ●   -               滷

k  ・  ・

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匹Ix ‾i 匹r 丶

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り …・ い ●j ●・・ F ・1 ●●●●1一一f ・

S I●4 ●●・/‥

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卜 l

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ぶ●●・ ●口 ‥ -・●U -●・・U ・ ・・・ ●χ●/ ●

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●・‥F /・j-

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l i

Fifth trial

5 ㎝

ト ー

心-

-A - ・AA A  〃    亠    二  ・

ヘー 癶-- ←

癶二 ・A--y ・「   r - ‾ 「l ●

・   J 丶i l

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一一一一-

f  I・ 4   1

¶   j

ヤ回l ● j ●

4…・j・1   1

キり ・・χ‥ ●‥..1.... l   j l

●・4・… 1・キ・・j l f  1 f 1

1 ● Sj r   ^ 1 1 l l

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之 二二厚● j l i

ご4 =弌屮 - -V- 々 - -¥一 -V - -V 一 づ --V --V - -V - → 一 々 -V - -り - ゝ こ弓一 丶

図2 Example that the mean speed of center of foot pressure (MS -CFP)

did not change by five trials

Vibration

CFP

Vibration

CFP

First trial 2sec

癶 ’,■■ ■■ 甼

a

……/・丶… ●・,1l   j l   j 丶… … / Λ・‥・・-

‥丶… … ・い …丶   ・

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Fifth trial

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5㎝

』       

1  1

5an

図3 Example that MS -CFP decreased by five trials

デサントスポーツ科学Vol . 13

Page 6: 老人の平衡機能の適応能の評価 · 動する方法を用い,姿勢調節の応答特性や適応能 の研究を行ってきた.それによって,振幅2.5 cm,

0  0  0  0  0  0  0

0  5  0  5  0  5

3  9

`  

りム  1  1

(QQ迴

’霾

)tlaxlQ7

●MaleO  Female

OO

First trial

O°1

°O‘   ;

h 四 +7

・●

9 0

300

0  0  0  0  0

冖りり  O  

冖ひ  0  

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り&  1  1

(QQ

戔E

)paads

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0

・  MaleO  Female

Fifth trial

1 ●

60    65    70   。・75    80       60    65    70    75

Age(years )                Age (years )

図4 MS -CFP of each subject in the first trial (left figure) and the fifth trial

(right figure) in old age group

上した例である.このように,老人の平衡機能の

適応能に,著しい個人差が認められた.

図4 に老人の第1 試行および第5 試行におけ

る, 年齢とMS -CFP の相関関係を示した. その

いずれの試行でも, 年齢とMS -CFP の間に有意

な相関が認められず, 加齢によるMS -CFP の顕

著な増加が認められなかった.      卜

試行によるMS -CFP の変化を,図5 に示した.

若年者の値は,いずれの試行でも有意な性差を示

さず,男女とも第3 試行までに急速に減少した.

隣接する試行で,有意差を示したのは,第3 試行

までであった.それ以後は有意差が認められな

-267

80

かった.老人の値は,いずれの試行回でも若年者

に比べて有意に大きかった.また男子よりも女子

の方が大きい値を示す傾向があり,有意な性差は

第3 試行まで認められた.試行による値の変化に

も性差が認められ,男子は第2 試行で有意に減少

し,その後隣接する試行間で有意差が認められな

かった.それに対して女子では,第4 試行まで隣

接間で有意差を示し減少した.  十

全被験者の第1 試行と第5 試行のMS -CFP の

0 0 0 0 0 0 0 0 0 0

0 8 6 4 2 0 8 6 4 

?″

9Q 1 1 1 1 1

(aasynnu) paads ireaj^

250

0   0   0

0   5   0

n乙   1   1

(QS

ぺ昌

)1

と1

Tria】number

図5 Mean and standard deviation of MS -CFP

in each trial for young and old age groups

゛0   50   100   150   200   250

First  trial (mm /sec)

図6 Correlation of MS -CFP between the

first trial and the fifth trial

デサント スポーツ科学Vol . 13

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-268 -

相関 関 係を図6 に示し た. その中 に若年 者 と老人

の男 女別 の回帰 直線を示 し た. 相関 係数 は, 若年

者男 子0 .920, 女子0 .686, 老人男 子0 .798, 女子

0.679であ り,いず れ も有意 な相 関で あ った.回帰

式 は次 の よ うに な った,こ         ・.

若年 者男 子 :y:三0 .50 X十 11.473   卜

若 年者 女子 :y = 0.40 x+ 20.346      /

老 人 男 子 :y = 0.62 x+ 22.946

老・人 女 子 :y = 0.50 x+ 37.096

老 人を含 め いず れの群で も第5 試行 まで に平衡

機能 が向上 す るこ とが明 らかに なら だ. また, 第

1 試 行で大 きな値を示 し た ものほど, 第5 試行 に

大 きく減少 す る傾向 があ った. ただ し, 多 く の老

人が若 年 者 の分 布 より も上 方に 位置 して いた. ま

た若年 者 で は, 第5 試行 に全員 の値 が減少 して い

るのに対 し て, 老人 で は4 名 の者が 第5 試 行で第

1 試 行 より も増 加 し, ま た ほとんど変化 ない者 も

数名認 め られた.そ れらの割 合 は,約15 % であ っ

た.   つ  ●●●・●●        ●●●●●●●●.

年 齢 と 第1 試行 に対 す る第5 試 行 のMS -CFP

の割合 の相関関 係 を, 図 了に示 し たご 男子 は有意

な相関 を示 さず年齢 に よる値 の変 化 が認 め られな

か った. そ れに対 して女子 は有 意な相 関 を示し,

加 齢 に よ っ て 値 が 増 加 し た. 若年 者 のそ の割 合

は, 男子0 .648土0 .1046, 女子0 .689±0 .1497で

あ り,老人 の その割合 は,男 子0 .827土0 .1717,女

1.6

1.4

1.2

J 

。8

1 0

況1

}{

0.6

0.4

0.2

●male

O  female

60

㎜㎜  -J・  ご O・

●  ()厂  厂9’・ 0.   ●●毒 裄 回 ヤ

8  °゜ .I

.  ……=\・

65 70

Age  (years )

75 80

艸 

」二

図7 MS -CFP ratio of the fifth trial to

the first trial   ‥レ ー

子0 .753±0.1208であり,老人の方が高い値を示

す傾向が認められ,その差は男子で有意であっ

た.

4 。 考  ・・察っ     -

4 .1  平衡 機能 の性差

安静 立位 姿勢 の身 体動 揺 の大 き さ によって, 安

定性 の性差 が検討 さ れてい る.3 歳 ~10 歳で は,

女子 の方 の安定 性が高 いと, 報告 さ れてい る11・13).

人 におい て は,女 子 の方 が安 定性 が高 いとい う報

告 と, 性差 は みら れない とい う報告 とがあ る. そ

れ らの報 告は,身 体動揺 の大 きさを 示 す値 (動 揺

面 積, 動 揺軌跡長 お よび平均 振幅) を,身 長あ る

い は計測点 の高 さで規 準化 してい る報告 と, そう

で ない報 告に大別 で き, そ れによ って 性差 につ い

て の結果 に違 いが認 められ る. 規 準化 してい ない

報 告10,18,21,24)で は, いず れ も女 子 の方 が安定 性 が高

い 傾向が ある と報告 してい る. 他方 , 規準化 して

い る報告15122・30’で は,有 意な性 差 は認 められ ない.

身 体動 揺 は, 一 般的 には足関 節を基 軸 とす る回 転

運動 として捕 らえ られる. 回 転 の大 きさで安定 性

を評 価す るの が妥 当であ る とす れば,足圧 中心動

揺 は, 重心 高あ るい は身 長で, ま た,身 体各部位

の動 揺 はそ の計測点 の高さで, そ の大 きさを規 準

化 する必 要があ る. そのよ うな補正 を 行った場合

に は, 成人 で は認 め られない か, あ るい は縮小 す

る ものと 考え られる.

本研 究 のよ うな動的 な平衡 機能 につい ては, 性

差 はほ とんど検討 さ れて いな い. 本 研究で は, 先

行 研 究5)を 参 考 に し てMS -CFP に 身 長 補正 を 施

し,若 年 者に はいず れの試行回 で も性差 が認 め ら

れなか った. それに対 して,老 人で は第3 試行 ま

で は, 女子 より も男 子 の方が 低い値 を示 し, 平衡

機能 が優 れてい た. それ以 上 の試行 回で は, 有意

な性 差は認 め られなか った. また, 第1 試 行と第

5 試 行 のMS -CFP は, 男女 と もほぼ同一 回帰直

線上 に分布 してお り, 平 衡機 能の適 応能 には性差

デサントスポーツ科学Vol . 13

Page 8: 老人の平衡機能の適応能の評価 · 動する方法を用い,姿勢調節の応答特性や適応能 の研究を行ってきた.それによって,振幅2.5 cm,

がないものと考えられる. 第1 試行で性差が認め

られたことに関して は,それまでに経験した動的

平衡機能の差,あるいは運動経験の差などが,関

係したものであるのかもしれない.今後の検討課

題としたい.

4.2  老人の平衡機能の適応能および訓練

老人の床振動時の平衡機能は,いずれの試行回

でも若年者よりも有意に低いことが明らかになっ

た.また,一部の者(約15 %)は,5 回の試行で

ほとんど平衡機能が向上しなかった.加えて,第

1 試行と第5 試行のMS -CFP の相関図 は若年者

に比 べて上方に位置しており,適応能は低いと判

断される.しかし,老人の多くの者(約85 %)に

は,平衡機能の適応能 がある程度存在することが

明らかになった.また,適応能の個人差 も大 きく,

若年者と同程度の者 も認められた.

平衡機能の訓練効果について は,福田9油 先駆

的な研究がある. そのひとつに,床振動に近い刺

激の加わるブランコで,鶏を訓練することがなさ

れている. その結果などから, passive な運動刺

激に対しても, activeな運動姿勢をとることが,

運動の習熟に大切なことであり, めまいや酔いを

防ぐことにもなるとしている. また,訓練によっ

て,新たな平 衡反射が形成され,平衡反射が錐体

路系の積極的な統御下のもと前景へと喚起され,

随意的に使いこなされるようになると解釈されて

いる.こうした訓練の概念 は,運動調節の自動化,

運動プログラムの形成,反応性の制御から予測性

の制御への変化と,共通するものであると考えら

れる1气

ここで注目されるのは,平衡機能の訓練が,随

意的な運動 に付随してなされるということであ

る.随意運動時に平衡維持のための自動的な姿勢

調節 が付随 することについて はSherrington255

が,言及している.最近では上肢などに焦点を当

てた運動時の姿勢調節の研究が数多く報告されて

いる2气 しかし,高齢者を対象 とした訓練効果に

デサントスポーツ科学Vol . 13

一 謡 -

つ いては, 明確にされていない. Sakamotc 戸 や

小林14)は,老人の日常生活における身 体活動量が,

静的な平衡機能に対 してではあるが関係している

ことを報告している. これは,運動に ともな って

平衡機能が向上することを示唆してい るように思

わ れる.

老人の平衡機能の訓練については, 本研究の適

応能に関する結果が参考 になろう.老人の平衡機

能の適応能は,若年者ほどで はないが 存在するこ

とが明らかになった.床振動 は,日常 それほど経

験しているものではなく, このような刺激に対し

て適応できるということは,平衡機能 の訓練効果

はある程度期待できる ものと考え ら れる. ただ

し, 適応能がほとんど認めら れなか った者 もお

り,平衡機能 の訓練効果がでない者 がいること

も,十分予想される. これに関しては,各種の随

意運動を含め,長期に渡 る平衡機能の訓練を実際

に施し検討することが必要と考えられ る.

結  論

老人(48名)と若年者(39名)を対象に,1 分

間の床振動を5 回反復負荷し,足圧中心動揺の平

均速度の変化より,平衡機能の適応性について検

討し,次のような知見を得た.

1)老人の平衡機能は√いずれの試行回におい

ても若年者より有意に劣っていた.

2)5 回の試行を繰り返した場合,若年者の平

衡機能は全員が向上したのに対して,老人におい

ては,平衡機能に向上が認められない者が約1b%

おり,若年者に比べ平衡機能の適応能 は低いもの

であった.しかし中には,若年者と同程度に向上

する者も認められ,きわめて大きい適応能の個人

差が存在した.

3)若年者については,いずれの試行回でも有

意な平衡機能の性差が認められなかった.老人に

おいては,第3 試行までは女子よりも男子の方が

有意に平衡機能が優れているが,女子の方が試行

Page 9: 老人の平衡機能の適応能の評価 · 動する方法を用い,姿勢調節の応答特性や適応能 の研究を行ってきた.それによって,振幅2.5 cm,

-270-

を重ねることによる向上の度合が大きく,それ以

後の試行回では有意な平衡機能の性差が認められ

なかった/第1 試行で平衡機能が劣っていた者ほ

ど試行を重ねることによる平衡機能の向上が著し

い傾向は,男女に共通して認められたレ したがっ

て,平衡機能の適応性については,有意な性差は

ないものと考えられた/・  … … …

4 )以上の結果は,老人の平衡機能の訓練効果

の特徴を示唆するものであると考えられたj  /

謝 辞 ト      ト

本研究は石川県松任市の山島地区老人会の協力

を得て行なわれた.深謝いたします二

文   献  ………  = =

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