芸術教育としてのドラマとシアター -...

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VARIOUS ASPECTS OF DRAMA & THE EDUCATION IN JAPAN ― What is the true nature of Drama & Theatre in Education in Japan? Shiro Kobayashi P r o f e s s o r E m e r i t u s o f T o k y o President of Japan College of Music APPEARANCE OF DRAMA/THEATRE IN EDUCATION IN JAPAN -1 Educational Reform For 21st Century 1952年(年年27年)年年 年年年年年年年年年年年年年年年年年年年年年年年年年年年 年年年年年年年年年年年 2、 年年年年年年年年年年年年年年年年年 年年年年年年年年年年年年年年年年年年年年年年年年年年年年年年 、。 1980年年年年年年年年年年年年年年年年年年年年年 年年年年年年年年年年 年年年年年年年年年年年年年年年年年 、、 年年年年年 年年年年年年年年年 年年年年年年年年年年年年年年年年年年年年 年年年年年年年年年年年年年 年年年年年年 。2、、 年年年年年 年年年年年年年年年年年年年年 年年年年年年年年年年年年年 年年年年年年年年年年年年年年年年年年年年年 。、・「」、「」、「」 年年年年年年年年年年1984年(年年59年) 年年年年 年年年年年年年年年年年年年年年年年年年年年年 年年年年年年年年年年年 、体、 年年年 年年年年年年年年年年年年年年 年年年年 、。 1984年年年1987年(年年62年)年年年年年 年年年年年年年 、4 年年年 年年年年年年年年年21年年年年年年 年年年年年年年年年年年年年年年年1 年年年年年年年 2 年年年年 年年年年年 3 年年年 年年年年年年年年年年年年 年年年年年年年年年年 年年年年年 年年年年年年年年年年年年年年年年年年年年 年年年年年年年年年年年年年年年年年 3。一、 年年年年年年年年年年年年年年年年年 1989年(年年年年)年年年年年年年年年年年年年年1997年(年年年年) 16年年年年年年年年 年年年 年年年年年年年年年年年年年年年年年年年年年年年年年 年年年年年 年年年年 年年年年 年年年年年年年年年年年年年年年 。、、、 年年年年年1

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VARIOUS ASPECTS OF DRAMA & THEATRE IN EDUCATION IN JAPAN

― What is the true nature of Drama & Theatre in Education in Japan? ―

Shiro KobayashiProfessor Emeritus of Tokyo Gakugei University, President of Japan College of Music

ⅠAPPEARANCE OF DRAMA/THEATRE IN EDUCATION IN JAPANⅠ-1 Educational Reform For 21st Century

  1952年 ( 昭 和 27 年 ) に 第 2 次 世 界 大 戦 に おけ る 我 が 国 の 敗 戦 と い う 厳 し い 状 況 の 下で 、 我 が 国 の 文 教 に 関 す る 基 本 と な る 重要 施 策 を 調 査 審 議 す る た め 、 文 部 大 臣 の恒 久 的 な 諮 問 機 関 と し て 中 央 教 育 審 議 会が 設 置 さ れ た 。  1980年 代 に な る と 核 家 族 化 や 都 市 化 が 進む に つ れ て 、 社 会 連 帯 意 識 の 喪 失 、 家 庭教 育 力 の 低 下 等 が ク ロ ー ズ ア ッ プ さ れ てき た 。 そ れ に あ わ せ て 第 2 次 ベ ビ ー ブ ーム に よ り 超 大 規 模 校 が 増 加 し 、 受 験 戦 争の 低 学 年 化 が 進 み 、 教 育 環 境 が 悪 化 し 始め た 。 そ の 結 果 青 少 年 非 行 が 増 加 し 、小 ・ 中 学 校 で の 「 い じ め 」 、 「 登 校 拒否 」 、 「 校 内 暴 力 」 な ど が 大 き な 社 会 問題 に 発 展 し た 。  そ こ で 1984年 ( 昭 和 59 年 ) 、 政 府 全 体 の 責任 に お い て 教 育 リ フ ォ ー ム に 取 り 組 む ため 、 内 閣 総 理 大 臣 の 諮 問 機 関 と し て 、 臨時 教 育 審 議 会 が 設 け ら れ た 。 臨 教 審 は 1984年 か ら 1987年 ( 昭 和 62 年 ) ま で 活 躍 し 、 4 本の 答 申 を ま と め た 。  そ の 答 申 に 盛 ら れ た 「 21 世 紀 に 向 けて 」 と い う 教 育 改 革 の 基 本 的 な 考 え 方 は 、

① 個 性 重 視 の 原 則② 生 涯 学 習 体 系 へ の 移 行③ 国 際 化 、 情 報 化 な ど の 変 化 へ の 対 応の 3 点 に 集 約 さ れ ま し た 。 つ ま り 画 一 的な 教 育 や 学 校 中 心 主 義 か ら の 脱 却 で あ り 、

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行 政 が 積 極 的 に か つ 柔 軟 に 教 育 問 題 に 対応 す る こ と を 求 め る 答 申 で あ っ た 。

1989年 ( 平 成 元 年 ) に 中 央 教 育 審 議 会 が 再開 さ れ た 。 1997年 ( 平 成 9 年 ) 、 第 16 期 中 教審 が 発 足 し 、 変 動 す る 社 会 へ の 対 応 と 教育 の あ り 方 が 国 民 の 関 心 事 で あ っ た 。 教育 環 境 、 国 際 化 、 情 報 化 、 環 境 問 題 な ど多 岐 に わ た る 議 論 が 要 求 さ れ た 。議 論 の 中 心 は 21 世 紀 の 教 育 に つ い て で

あ っ た 。 「 中 央 教 育 審 議 会 報 告 」 を 参 照し つ つ 、 議 論 を 整 理 し て み よ う 。 報 告 書は 3 部 構 成 に な っ て い る 。第 1 部 「 今 後 に お け る 教 育 の あ り 方 」 の中 心 と な る 教 育 課 題 は 、 第 4 節 と 5 節 の「 過 度 の 受 験 競 争 の 緩 和 」 と 「 い じ め 登・校 拒 否 の 問 題 」 の 2 点 で あ ろ う 。  次 に 、 私 た ち が 強 い 関 心 を 持 っ た 第 2部 、第 1章 「 こ れ か ら の 学 校 教 育 の あ り 方 」 では 次 の よ う な 内 容 [1] か ら [6] ま で が 議 論 され た 。 し か し 中 央 教 育 審 議 会 の 議 論 と 平行 し て 、 私 た ち 大 学 教 員 と 研 究 者 は 、 国立 大 学 の 法 人 化 へ の 移 行 の 問 題 、 大 学 の教 育 ・ 研 究 の 評 価 の 問 題 、 そ し て 教 員 養成 大 学 の 縮 小 ・ 再 編 の 問 題 を 議 論 し て いた 。 残 念 な が ら 、 ほ と ん ど の 大 学 教 員 と研 究 者 は 大 学 問 題 に エ ネ ル ギ ー を 集 中 し 、片 手 間 に 教 育 リ フ ォ ー ム を 論 じ て い た 。  と も あ れ 教 育 リ フ ォ ー ム の 議 論 は 、 一つ の 明 確 な 方 向 を 打 ち 出 し た 。 そ れ が「 横 断 的 ・ 総 合 的 な 学 習 の 推 進 」 で あ った 。 議 論 の 全 体 は 、

[1] こ れ か ら の 学 校[2] 教 育 内 容 の 厳 選 と 基 礎 基 本 の 徹 底・[3] 一 人 一 人 の 個 性 を 生 か す た め の 教 育の 改 善[4] 豊 か な 人 間 性 と た く ま し い 体 を は ぐく む た め の 教 育 の 改 善[5] 横 断 的 ・ 総 合 的 な 学 習 の 推 進[6] 教 科 の 再 編 ・ 統 合 を 含 め た 将 来 の 教科 等 の 構 成 の あ り 方

で あ る 。 当 然 な が ら 、 議 論 の 中 心 は 「 横

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断 的 総 合 的 な 学 習 」 の 創 出 、 情 報 化 と 教・育 、 環 境 問 題 と 教 育 、 国 際 化 と 教 育 に 集ま っ た 。 「 教 科 の 再 編 統 合 を 含 め た 将 来・の 教 科 等 の 構 成 の あ り 方 」 は 深 い 審 議 に入 る こ と が な か っ た 。

横 断 的 総 合 的 な 学 習 に つ い て は 、 そ の・目 的 ・ 内 容 ・ 方 法 等 に 関 し て 膨 大 な 議 論が 行 わ れ 、 多 量 な 資 料 が 公 開 さ れ た 。「 横 断 的 総 合 的 な 学 習 」 の 理 念 、 目 的 、・内 容 に 関 す る 議 論 は 煮 詰 ま っ た が 、 内 容は 事 例 を 示 す だ け に 止 ま り 、 教 科 書 、 教材 、 授 業 運 営 の あ り 方 な ど の 具 体 的 な 議論 は 時 間 切 れ で 終 わ っ た 。 そ こ で 文 部 科学 省 は 学 校 現 場 の 理 解 を 深 め る た め 、 全国 5 0 カ 所 に 教 育 関 係 者 を 集 め て 説 明 会を 開 催 し た り 、 教 育 委 員 会 、 校 長 会 、 教員 養 成 大 学 協 会 な ど の 会 議 を 使 っ て 浸 透を 図 っ た 。と こ ろ で 演 劇 教 育 に 関 わ っ て き た 学 者 ・教 育 者 ・ 教 師 は 、 教 育 リ フ ォ ー ム が 進 行し 、 ① 総 時 間 枠 を 節 減 す る 一 方 で 、 ② 教科 「 情 報 」 が 誕 生 し 、 さ ら に ③ 「 総 合 的な 学 習 の 時 間 」 が 付 け 加 え ら れ る 21 世 紀の 教 育 の あ り 方 を ど う 見 て い た の だ ろ うか 。 ま た 演 劇 教 育 の 将 来 に 対 し て ど う のよ う な 行 動 を と っ た の だ ろ う か 。

①過 密 な 授 業 が 作 り 出 す 学 校 現 場 の 荒 廃へ の 対 応 と し て 、 授 業 時 間 数 を 減 ら して 子 供 た ち の 負 担 を 軽 く し 「 ゆ と り 」を 作 ろ う と す る 方 針 に 対 し て 反 論 は 少な か っ た 。 し か し 各 教 科 が 既 得 の 時 間数 を 維 持 す る こ と で し の ぎ を 削 っ て いる こ と か ら 、 今 、 演 劇 と い う 科 目 を 新設 す る 意 見 は 理 解 も 賛 成 も 得 ら れ な いと 多 く の 演 劇 教 育 推 進 論 者 は 判 断 し た 。②少 数 だ が 、 大 変 熱 心 に 演 劇 教 育 の 導 入を 唱 え る 教 育 者 も い た 。 い じ め 、 不 登校 な ど 教 育 現 場 の 問 題 や 「 生 き る 力 」の 育 成 を 目 指 す 新 し い 教 育 に も 演 劇 教育 は 寄 与 で き る と 現 実 的 な 観 点 か ら の意 見 を 主 張 し ま し た が 、 演 劇 教 育 に 対す る 国 民 的 な コ ン セ ン サ ス を 獲 得 す る

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こ と は 出 来 な か っ た 。③演 劇 教 育 の 実 践 報 告 、 ワ ー ク ・ シ ョ ップ の 実 践 報 告 ・ 体 験 報 告 、 演 劇 教 育 の目 標 や 方 法 に 関 す る 研 究 は 多 数 発 表 され て き た が 、 多 く の 研 究 者 は 教 科 教 育と し て の 体 系 的 な 研 究 が 不 足 し て い るこ と を 指 摘 し 、 演 劇 教 育 の 新 し い 教 育研 究 を 提 唱 し た 。④初 等 ・ 中 等 教 育 に お け る 他 教 科 と の 相関 性 や カ リ キ ュ ラ ム へ 構 造 へ の 対 応 に関 す る 研 究 が 不 足 し て い る こ と か ら 、日 本 演 劇 学 会 は 「 演 劇 教 育 分 科 会 」 の研 究 ス タ ッ フ に 若 手 の 研 究 者 を 登 用 した 。リ フ ォ ー ム に 消 極 的 な 見 方 が 大 勢 で あ った 中 に 、 か な り 希 望 を 持 っ た 見 方 が あ った 。 そ れ は 「 横 断 的 総 合 的 な 学 習 」 と い・う 時 間 の 新 設 に 演 劇 教 育 が 参 画 で き る 可能 性 を 見 つ け だ そ う と 動 き 出 し た 人 た ちで あ っ た 。こ こ で 「 総 合 的 な 学 習 」 の 誕 生 ま で の 時代 背 景 と 教 育 に 対 す る 評 価 を 概 説 し て おく 必 要 が あ ろ か と 思 う 。

1970年 ( 昭 和 45 年 ) 代 、 科 学 ・ 産 業 ・ 文 化な ど の 進 展 に 対 応 し た 教 育 内 容 の 量 的 な充 実 が 図 ら れ た 。 そ の 結 果 、 学 習 内 容 の量 が 増 大 し 、 か つ 学 習 の 程 度 も 高 く な り過 ぎ た と い う 批 判 が 高 ま り ま っ た 。 こ うし た 指 摘 を 受 け て 、 知 識 の 伝 達 に 偏 り がち な 状 況 を 改 め 、 教 育 内 容 の 精 選 と 授 業時 間 の 削 減 を 行 う こ と に よ り 時 間 的 ・ 精神 的 ゆ と り を 生 み 出 す こ と が リ フ ォ ー ムの テ ー マ に な っ た の で あ る 。

1975年 ( 昭 和 50 年 ) 代 に な り 、 学 習 指 導 要領 を 改 訂 し 、 時 間 的 ・ 精 神 的 ゆ と り の 中で 、 子 供 た ち に 基 礎 ・ 基 本 を 確 実 に 身 につ け さ せ 、 学 ぶ 意 欲 や 思 考 力 、 判 断 力 など を 育 成 す る 教 育 へ と 転 換 を 進 め て き た 。し か し な が ら 1993年 ( 平 成 5 年 ) か ら 1995年

( 平 成 7 年 ) に か け て 実 施 し た 教 育 課 程 実施 状 況 調 査 の 結 果 に よ る と 、 覚 え る こ とや 計 算 の 技 能 、 文 章 の 読 み 取 り の 力 は あ

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る が 、 反 面 、 学 習 が 受 け 身 で 、 自 ら 調 べ 、判 断 し 、 自 分 の 考 え を 持 ち 、 そ れ を 表 現す る 力 が 不 十 分 で あ る と い う 問 題 点 が 指摘 さ れ た 。そ こ で 1998年 ( 平 成 10 年 ) 、 こ れ ま で 論 じて き た 諸 課 題 を 解 決 す る た め 、 教 育 リ フォ ー ム が 実 施 さ れ た の で あ る 。 小 学 校 およ び 中 学 校 の 学 習 指 導 要 領 が 改 訂 さ れ 、こ の 要 領 の 中 で 「 総 合 的 な 学 習 」 の 時 間が 位 置 づ け ら れ た 。  で は 「 総 合 的 な 学 習 」 の 時 間 と は ど うい う 目 的 と 内 容 を ね ら っ て い る の で あ ろう か 。  学 習 指 導 要 領 を う け て 教 師 が ど う 指 導を 展 開 す る か の 指 針 と な る 「 指 導 要 録 」の 立 場 か ら 総 合 的 な 学 習 を 眺 め て み よ う 。例 え ば 布 村 幸 彦 編 『 「 平 成 13 年 度 改 善 指導 要 録 」 の 基 本 的 な 考 え 方 』 を 参 考 に して 、 ど ん な 授 業 が 期 待 さ れ て い る の か 整理 し て み る 。

  学 習 指 導 要 領 に 示 さ れ た こ の 時 間 は 、① 自 ら 課 題 を 発 見 し 、 自 ら 学 び 、 自 ら考 え 、 主 体 的 に 判 断 し 、 問 題 を 解 決 する 資 質 と 能 力 を 育 て る こ と 、 ② 学 び 方や 考 え 方 身 に つ け 、 問 題 の 解 決 や 探 求活 動 に 主 体 的 に 、 か つ 創 造 的 に 取 り 組む 態 度 を 育 て 、 自 己 の 生 き 方 に つ い て考 え る こ と が 出 来 る よ う に な る 教 育 をね ら い と し て い る 。 し た が っ て 指 導 の観 点 は 「 問 題 設 定 の 能 力 」 、 「 問 題 解決 の 能 力 」 、 「 学 び 方 、 も の の 考 え方 」 、 「 学 習 へ の 主 体 的 で 創 造 的 な 態度 」 、 「 自 己 の 生 き 方 」 と 定 め る こ とが 出 来 る 。  ま た 「 総 合 的 な 学 習 の 時 間 」 は 、 各教 科 で 学 ん だ 知 識 や 技 能 を 活 用 し 、 統合 し た り 、 深 め た り し な が ら 着 実 に 習得 す る こ と が も う 一 つ の 目 的 で あ る から 、 授 業 で は 各 教 科 と の 関 連 を 明 確 にし て 、 指 導 で は 「 個 別 か ら 総 合 化 す る学 習 活 動 へ の 関 心 、 意 欲 、 態 度 」 、

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「 総 合 的 な 思 考 、 判 断 」 、 「 知 識 を 応用 し て 総 合 す る 能 力 」 、 「 そ れ ら を 表現 す る 力 」 と い っ た 観 点 が 重 要 で あ る 。さ ら に 、 も っ と 大 き な 学 習 の ね ら い とし て 、 「 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 能 力 」 、「 情 報 処 理 の 能 力 」 な ど が 考 え ら れ て当 然 で あ る 。

  こ う し て 「 総 合 的 な 学 習 の 時 間 」 を 見る と 、 授 業 の 仕 方 は 無 限 の 可 能 性 を 持 って い る こ と が わ か る 。 し か も 授 業 の 成 績評 価 の 仕 方 は 、 相 対 的 な 成 績 評 価 で は なく 、 記 述 形 式 で よ い こ と に な っ て い る 。教 師 が 自 由 に 腕 を 振 る う こ と が 出 来 る はず だ 。 特 に 演 劇 教 育 を 導 入 し た い と 願 う教 師 に と っ て は す ば ら し い 教 育 機 会 が 与え ら れ た も の と 誰 し も が 考 え た 。 し か しな が ら 演 劇 教 育 に 挑 戦 し 、 そ れ が 成 功 した と い う 報 告 は あ ま り 聞 こ え て こ な い 。  そ こ で 新 聞 等 の 紙 面 に 掲 載 さ れ た 3 つの 記 事 を 紹 介 し 、 そ の 背 景 を 探 っ て み よう 。 最 初 は 、 小 学 校 お よ び 中 学 校 の 校 長を 経 験 さ れ た 長 須 正 文 氏 の 朝 日 新 聞 に 掲載 さ れ た 意 見 で あ る 。

「 総 合 学 習 」 演 劇 を 導 入 し

、 人 格 育 て よ 元 公 立 小 中 学 校 長 長 須 正 文

  い よ い よ 新 学 期 。 こ れ か ら 小 中 学校 で は 新 学 習 指 導 要 領 に よ っ て さ まざ ま な 新 し い 試 み が 実 践 さ れ る 。 なか で も 注 目 さ れ る の は 教 科 の 枠 を 超え た 総 合 学 習 。 こ の 取 り 組 み こ そ 、新 教 育 の 成 果 を 左 右 す る 学 校 独 自 の活 動 と し て 期 待 さ れ る 。そ こ で 、 こ の 総 合 学 習 に 「 演 劇 」 を組 み 入 れ 、 所 期 の 教 育 目 標 を 達 成 され る こ と を 提 案 し た い 。 と い う の も戦 後 教 育 の な か で 、 「 演 劇 」 学 習 はひ と と き 隆 盛 を 極 め 、 大 い に 教 育 現場 で 成 果 を 収 め た 経 験 を 持 つ か ら で

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あ る 。か つ て の 国 語 教 科 書 に は ど の 学 年 に

も 「 劇 教 材 」 と し て の 脚 本 や シ ナ リオ が あ り 、 そ の 発 表 の 機 会 と し て「 学 芸 会 」 や 「 学 習 発 表 会 」 「 文 化祭 」 ( 学 園 祭 ) な ど の 学 校 行 事 が 華 々し く 開 催 さ れ て い た 。 と こ ろ が 、 学力 向 上 や 系 統 学 習 の 世 論 に 押 さ れ 、学 習 指 導 要 領 改 訂 の 度 に 、 こ の 領 域は 影 を ひ そ め 、 最 近 で は ご く 一 部 、特 別 活 動 と し て の 「 演 劇 ク ラ ブ 」 に残 さ れ る だ け に な っ て し ま っ た 。「 演 劇 」 は 総 合 芸 術 で あ る 。 脚 本 の

選 定 や 創 作 を 手 始 め と し て 、 役 割 分担 や 読 み 合 わ せ の 旨 語 活 動 は 、 す ばら し い 生 き た 国 語 教 育 の 実 践 で あ ると り わ け 、 新 要 領 が い う 「 通 じ 合い 」 ( コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン ) に は 必 須の 体 験 だ 。 さ ら に 、 上 演 ( 発 表 ) を 巨指 す 活 動 で は 、 舞 台 装 置 の 工 夫 や 音楽 ・ 音 響 の 効 果 、 役 作 り の た め の 衣装 考 証 、 場 合 に よ っ て は 照 明 効 果 など さ ま ざ ま な 芸 術 的 ・ 創 造 的 表 現 活動 が 重 視 さ れ る 。ド ラ マ 化 の 進 行 と と も に 人 物 の 行 動

( し ぐ さ ) 化 も 必 然 的 に 要 求 さ れ 、 身体 に よ る パ フ ォ ー マ ン ス も 試 さ れ るそ し て 演 出 の 深 化 の 過 程 で は 、 人 物ひ と り ひ と り の 自 主 性 、 主 体 性 、 協力 的 態 度 や 創 意 工 夫 な ど 、 人 格 形 成に 必 要 な 要 素 が 自 然 に 養 わ れ る 。

ひ と つ の 脚 本 を 手 が か り に 、 児 童 生徒 の 一 集 団 が 助 け 合 い 、 協 力 し 合 って 創 造 的 な 表 現 活 動 に 専 念 す る と いう こ と は な ん と す ば ら し い 教 育 活 動で あ ろ う か 。つ く こ う し て 創 り 上 げ ら れ た ド ラ マは 、 空 き 教 室 や 体 育 館 、 講 堂 、 あ るい は 野 外 で 上 演 ( 発 表 ) さ れ る 。 場 合に よ っ て は 、 他 の グ ル ー プ . と の 競 演や 、 父 母 や 地 域 の 方 々 や 施 設 で 暮 らす 人 々 と の 交 流 の 機 会 と す る こ と も

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で き る 。い ま こ そ 、 総 合 学 習 の カ リ キ ュ ラ ムに 「 演 劇 」 を 導 入 し て 、 新 教 育 の 成果 を 上 げ て ほ し い と 願 う ゆ え ん で ある 。

  2 番 目 は 日 本 経 済 新 聞 に 掲 載 さ れ たNPO 「 舞 台 芸 術 環 境 フ ォ ー ラ ム   地 域 演 劇マ ネ ジ メ ン ト セ ン タ ー 」 理 事 の 柴 田 英 杞杞 氏 の 報 告 で あ る 。

「 演 劇 通 じ 子 ど も い き い

き 」  校 内 暴 力 、 い じ め な ど の 「 荒 れ 」や 不 登 校 の 背 景 に は 、 子 ど も 同 士 、子 ど も と 大 人 の コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン不 足 が あ る 。 出 会 い 、 語 り 合 い 、 違い を 理 解 し て 支 え 合 う 。 豊 か な 人 間関 係 作 り の た め の 訓 練 と し て 演 劇 は大 き な 力 を 発 揮 す る 。  共 同 作 業 を 通 し て 作 品 を 創 造 し 、観 客 と 「 対 話 」 を す る 。 イ ン タ ー ネッ ト 全 盛 だ が 、 演 劇 は 生 で 素 朴 な コミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 能 力 を 高 め 、 想 像力 や プ レ ゼ ン テ ー シ ョ ン 能 力 を 育 てる 。 だ が 、 学 校 の 授 業 で は 、 演 劇 は国 語 の 授 業 の 中 に 押 し 込 め ら れ 、 簡単 に 触 れ る 程 度 。 各 地 で 演 劇 ワ ー クシ ョ ッ プ ( 公 演 と 実 演 ) は 急 増 し た が 、子 ど も を 取 り 巻 く 問 題 や 、 そ の 背 景に あ る 地 域 や 家 庭 の 現 状 に 目 を 向 け解 決 し よ う と い う 試 み は ま だ ま だ 少な い 。  舞 台 芸 術 環 境 フ ォ ー ラ ム は 、 企 業メ セ ナ 協 議 会 ( 東 京 ) の 若 手 有 志 の 提案 で 演 劇 人 や 企 業 、 行 政 関 係 者 、 学識 経 験 者 ら で 始 め た 勉 強 会 が 母 胎 だ地 域 社 会 の ニ ー ズ に 沿 っ た 公 共 的 な活 動 を 進 め る 地 域 劇 場 の 実 現 を 目 指し て い る 。 文 化 行 政 の 進 行 、 演 劇 を媒 介 と し た 地 域 起 こ し な ど 活 動 内 容は 幅 広 い が 、 最 近 は 教 育 分 野 に 力 を

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入 れ て い る 。  そ の 一 環 と し て 3 月 に 札 幌 、 金 沢東 京 で 「 子 供 た ち の 明 日 の た め に 20 0 2 」 と 題 す る セ ミ ナ ー と ワ ー クシ ョ ッ プ を 開 き 、 演 劇 が 教 育 や 地 域の 課 題 に 果 た す 役 割 を 議 論 し た 。 イベ ン ト の 最 大 の 目 玉 は 、 英 国 で 先 進的 な 教 育 プ ロ グ ラ ム を 実 践 し て い る地 域 劇 場 の ス タ ッ フ を 招 い た 公 演 と実 演 で 、 反 響 呼 ん だ 。  こ の 劇 場 は 英 国 の リ ー ズ 市 の 「 ウエ ス ト ヨ ー ク シ ャ ー ・ プ レ イ ハ ウス 」 。 問 題 を 織 り 込 ん だ 演 劇 作 品 を制 作 し て 学 校 を 回 っ て 上 演 、 生 徒 を参 加 さ せ る ノ ウ ハ ウ も 豊 富 に 持 っ てい る 。 授 業 な ど に 取 り 入 れ て も ら うた め に 、 台 本 や 指 導 書 、 小 道 具 も 提供 し て い る 。  英 国 で は シ ア タ ー ・ エ デ ュ ケ ー ショ ン ( 芸 術 的 な 教 育 プ ロ グ ラ ム ) が 盛ん だ 。 同 劇 場 の 「 ス ク ー ル ・ ツ ア リン グ ・ カ ン パ ニ ー 」 と 呼 ぶ 方 式 は 、英 国 随 一 と い わ れ る 成 功 を 収 め て いる 。 高 齢 者 や 失 業 者 向 け の プ ロ グ ラム も 展 開 、 本 業 の 演 劇 公 演 も 高 い 評価 を 受 け て い る 。  今 回 の セ ミ ナ ー に は 教 師 の 参 加 が目 立 っ た 。 養 護 教 員 や 保 育 士 、 地 域で 地 道 な 演 劇 活 動 を し て い る 人 た ちも い て 、 「 日 本 で も こ う し た プ ロ グラ ム を 学 び 、 実 践 す べ き だ 」 と い う声 が 多 か っ た 。 関 心 の あ る 人 た ち と連 携 し て 、 日 本 で ど う 具 体 化 す る かを 考 え 、 実 践 し て い く 契 機 に し た いこ の 作 業 と 平 行 し て 、 来 年 1 月 に 英国 地 域 劇 場 ツ ア ー も 企 画 し て い る 。  地 域 社 会 と 劇 場 と が 連 携 し て 演 劇を 教 育 現 場 に 取 り 入 れ る 試 み は 、 日本 で も 始 ま っ て い る 。 金 沢 市 民 芸 術村 ド ラ マ 工 房 で は 、 「 キ ッ ズ ク ルー 」 と い う 子 ど も を 主 役 に し た 演 劇プ ロ グ ラ ム が 高 い 評 価 を 得 て い る 。

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長 崎 市 で も 市 民 グ ル ー プ が 、 LD 児 童や 情 緒 不 安 定 な 子 供 た ち の た め に 演劇 活 動 を し て 、 成 果 を 上 げ た 例 が ある 。

  第 3 は 朝 日 新 聞 に 載 っ た 国 際 人 育

成 に 歌 舞 伎 の 講 座 栃 木 足 利 南 高 等 学 校 」 と い う 記 事 を 紹 介 する 。 

  自 分 の 進 路 や 興 味 に あ っ た 科 目 を選 択 で き る 総 合 学 科 制 の 栃 木 県 立 足利 南 高 校 ( 荒 川 浩 校 長 ) に 4 月 か ら ユニ ー ク な 授 業 が 加 わ る 。 歌 舞 伎 講 座日 本 の 伝 統 や 文 化 を 身 に つ け た 国 際人 を 育 て た い 学 校 側 と 、 若 い 世 代 への 伝 統 芸 能 の 普 及 を 望 む 関 係 者 の 考え が 一 致 し た 形 だ 。 講 師 は そ の 道 の一 流 ど こ ろ が 引 き 受 け た 。 正 規 の 授業 で 、 歌 舞 伎 講 座 が 出 来 る の は 全 国で も 初 め て と い う 。  歌 舞 伎 の 授 業 は 週 1 回 で 、 50 分 授業 を 2 時 限 続 け る 計 100 分 。 3 年 生 が対 象 で 、 現 在 2 年 生 の 7 人 が 受 講 する 。 授 業 は 住 民 に も 開 放 さ れ 公 募 のあ っ た 中 か ら 抽 選 し た 21 人 の 市 民 も生 徒 と 一 緒 に 学 ぶ 。 着 物 の 着 付 け や立 ち 方 座 り 方 等 基 本 的 な 所 作 に 始 まり 、 織 田 信 長 を 討 っ た 明 智 光 秀 を 扱う 「 絵 本 太 閤 記 」 の 尼 崎 の 場 と い う演 目 を 上 演 す る の が 最 終 的 な 目 標 だ 。

Ⅰ-2 Verify Movement Concerning Drama/Theatre Education For Last 100 YearsⅠ-2 . 日 本 演 劇 教 育 史 の 検 証 、

な ぜ こ の よ う な 現 象 が 起 こ

っ た か ?   教 育 は 明 治 時 代 か ら 大 き な 変 革 を 遂 げて き た が 、 演 劇 を 教 育 の 媒 体 と し て み る国 家 的 文 化 は な か っ た 。 明 治 期 は 西 洋 文

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化 と の 遭 遇 の 時 代 で あ り 、 す べ て の 価 値観 が 大 き く 変 動 す る 中 で 、 日 本 固 有 の 芸術 も そ の 価 値 を 問 わ れ て 消 滅 す る も の が少 な く な か っ た 。 あ え て 日 本 芸 術 の 社 会的 ア イ デ ン テ ィ テ ィ を 求 め る と 、 12 世 紀に 上 演 形 式 を 完 成 さ せ た 「 能 」 、 「 狂言 」 、 ま た 17 世 紀 に 庶 民 的 な 上 演 芸 術 とし て 誕 生 し た 「 歌 舞 伎 」 や 「 文 楽 」 も 、ま ず 成 人 の 文 化 で あ っ た 。 し か も 日 本 の上 演 芸 術 は 宗 教 の 教 義 や 儀 式 の よ う に 、そ の 理 念 や 手 法 が 継 承 さ れ 、 ひ た す ら 積み 上 げ ら れ る 点 に 特 徴 が あ っ た 。 理 念 や手 法 の 純 粋 性 と 正 当 性 を 守 る た め に 血 縁同 士 が 結 束 し 、 社 会 か ら の 切 り 崩 し を 防御 し て き た 。 こ の よ う な 性 格 を 持 っ て いた か ら 、 普 遍 性 や 真 理 を 科 学 的 に 分 析 し 、系 統 化 し 、 上 級 者 が 下 級 者 に 伝 承 し よ うと す る 教 育 と は 上 演 劇 術 の 精 神 は な じ まな か っ た と 言 え よ う 。

も う 一 つ の 特 徴 は 、 日 本 の 表 現 芸 術 は 複合 芸 術 で あ る こ と だ 。 能 、 狂 言 、 歌 舞 伎 、文 楽 は お お む ね 詩 、 音 楽 、 所 作 の 要 素 が密 接 な 関 係 で 結 合 し て い る 。 そ れ ぞ れ の要 素 が 独 自 の 理 念 と 手 法 を 構 築 し 、 部 外者 に は 明 か さ な い 。 今 日 で い え ば 、 知的 ・ 技 術 的 所 有 権 を 主 張 し て 表 現 芸 術 の水 準 と 自 立 性 を 伝 承 し て き た 。 表 現 芸 術が 成 熟 す る と 、 3 つ の 要 素 が 科 白 、 音 楽 、踊 り と し て 独 立 し て 活 躍 す る よ う に な った 。 そ れ が 詩 ま た は 科 白 で は 「 謡 曲 」 、「 義 太 夫 」 で あ り 、 音 楽 で は 「 長 唄 」 、「 常 磐 津 」 、 「 清 元 」 、 「 新 内 」 で あ り 、踊 り は 「 日 本 舞 踊 」 と 呼 ば れ る 「 歌 舞 伎舞 踊 」 で あ っ た 。 こ れ ら 単 独 の 芸 術 が 、江 戸 後 期 か ら 文 化 と し て 定 着 し 、 大 人 の学 習 の 対 象 と な っ た 。 い わ ゆ る 「 町 の お師 匠 さ ん 」 た ち が 今 日 の カ ル チ ャ ー ・ スク ー ル に 似 た 教 室 を 開 設 し 、 文 化 的 教 養を 求 め る 大 人 た ち に 指 導 す る よ う に な った 。 同 時 に や さ し い 作 品 や 子 ど も で も 理解 で き る 作 品 は 子 ど も の 教 養 教 育 の「 塾 」 art studio for childrenと し て 普 及 す る よ う

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に な っ た 。 し か し 明 治 期 の 後 半 に な っ て 、西 洋 の 文 化 と の 遭 遇 に よ っ て 、 日 本 古 来の 音 楽 、 踊 り な ど の 芸 術 教 育 は 、 理 念 や目 的 を 明 確 に し た 西 洋 の 音 楽 や 踊 り に 押さ れ て 減 退 し 、 今 日 で は む し ろ 特 殊 な 教養 と し て 位 置 づ け ら れ る ま で に な っ た 。

日 本 の 表 現 芸 術 の こ の よ う な 特 徴 と 異 文化 と の 出 会 い が 大 き な 要 因 と な っ て 、 演劇 と 教 育 を 連 携 さ せ る 機 運 は な か な か 生ま れ な か っ た も の と 私 は 考 え る 。よ う や く 20 世 紀 に な り 、 1900- 1910年 代 と

1920- 1930年 代 に 児 童 の た め の 演 劇 、 い いか え れ ば 児 童 が 鑑 賞 す る た め の 演 劇 を 演劇 人 が 発 表 す る よ う に な っ た 。 日 本 のEducation through Theatre は 演 劇 人 に よ っ て 開 拓さ れ 、 そ の 演 劇 人 が 教 育 と の 連 携 を 真 剣に 考 え る よ う に な っ た の は 20 世 紀 後 半 から で あ ろ う 。  日 本 の 児 童 演 劇 の ス タ ー ト は 1903年 に 、東 京 の 本 郷 座 で 川 上 音 二 郎 一 座 が お 伽 芝居 『 狐 の 裁 判 』 、 『 浮 か れ 胡 弓 』 を 上 演し た こ と に 始 ま る 。 川 上 音 二 郎 は 、 日 本最 初 の 「 男 女 合 同 改 良 演 劇 」 ( 明 治 24 年 )な ど 新 し い 興 行 形 態 や 上 演 形 態 を 打 ち 出す だ け で な く 、 ヨ ー ロ ッ パ に 出 か け て 演劇 研 究 を し 、 シ ェ イ ク ス ピ ア Shakespeare の『 オ セ ロ 』 Othello、 『 ベ ニ ス の 商 人 』 The Merchant of Venice 、 『 ハ ム レ ッ ト 』 Hamlet な どを 翻 案 し て 上 演 し た 。 川 上 音 二 郎 一 座 はさ ら に メ ー テ ル リ ン ク や サ ル ド ゥ ー な どの 作 品 を 児 童 向 け に 翻 案 し 、 全 国 に 旅 公演 を 重 ね 、 児 童 演 劇 の 流 行 を 作 り 出 し た 。こ れ を 契 機 と し て 、 多 く の 劇 団 が お 伽 芝居 を 制 作 し 、 児 童 演 劇 は 明 治 末 に 一 つ のブ ー ム に ま で 高 ま っ た 。 こ の 芝 居 の 製 作意 図 は 子 供 に も わ か る 物 語 、 子 供 が 楽 しめ る 芝 居 、 そ し て 教 育 的 配 慮 ( 子 供 に 人 格形 成 や 成 長 段 階 に 応 じ た 作 品 で あ る こ とな ど ) を 掲 げ て い た が 、 次 第 に 子 供 に 対 する 教 育 的 な 配 慮 よ り も 商 業 的 な 傾 向 を 強く も つ よ う に な っ た 。 そ れ は ち ょ う ど 今日 の テ レ ビ の 子 供 番 組 と 同 じ よ う な 制 作

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態 度 や 内 容 を 持 つ よ う に な っ た と 考 え られ る 。  こ の 傾 向 に 歯 止 め を か け 、 児 童 演 劇 の改 良 に 乗 り 出 し た の が 坪 内 逍 遥 で あ っ た 。彼 は 1859年 に 生 ま れ 、 1935年 に 亡 く な っ たが 、 ち ょ う ど 世 界 の 演 劇 が 大 き く 変 貌 しつ つ あ る 時 代 で あ っ た 。 Reference Material 1 ( 註1 )  逍 遥 は 演 劇 学 者 と し て 、 外 国 の 演 劇 の進 展 を 克 明 に 調 査 し た 。 シ ェ イ ク ス ピ アShakespeare 、 ゴ ー リ キ ー Gorky 、 バ ー ナ ード ・ シ ョ ウ Bernard Show、 イ プ セ ン Ibsenな ど を積 極 的 に 紹 介 し た 。 そ の 中 で 彼 は ア メ リカ の 演 劇 教 育 に 大 き な 関 心 を 抱 き 児 童 演劇 の 改 良 に 着 手 し た 。 彼 に 大 き な 刺 激 を与 え た の は A.M. Hart が 書 い た The Children’s Educational Theatre 『 教 育 児 童 演 劇 』 と い う 一冊 の 本 で あ っ た 。 逍 遥 は 大 正 期 の 芸 術 教育 運 動 の 中 で 、 児 童 劇 の 脚 本 を 書 き 、 児童 劇 論 に 精 力 的 に 取 り 組 み 、 自 ら 児 童 演劇 の 上 演 を も 行 っ た 。 逍 遥 の 仕 事 は 、 明治 時 代 よ り 引 き 継 が れ て き た 子 供 芝 居 的発 想 を 教 育 的 見 地 か ら 批 判 し 、 児 童 劇 の理 論 を 提 言 す る だ け で な く 実 践 活 動 を も行 っ た 。  逍 遥 は 、 社 会 の 改 良 は 子 供 を 芸 術 に よっ て 改 造 す る こ と か ら 始 め な け れ ば な らな い と 考 え た 。 1924年 に 書 か れ た 『 児 童 教育 と 演 劇 』 ( 大 正 12 年 ) は 、 彼 の 児 童 劇 論を ま と め た も の で 、 そ の 後 の わ が 国 の 児童 劇 、 学 校 劇 に 論 理 的 根 拠 を 与 え た 。 逍遙 は 、 童 話 劇 お よ び お 伽 芝 居 は 子 ど も 本位 で な く 、 営 利 目 的 あ る い は 成 人 の 考 えが 加 わ り す ぎ て い る と 批 判 す る 。 そ し て児 童 心 理 学 の 基 礎 の も と に 、 子 ど も の 生活 や 感 情 を 大 切 に し て 、 彼 ら の 創 造 本 能や 芸 術 的 衝 動 を 育 成 す る よ う な 、 子 ど もの た め の 子 ど も に よ る 児 童 劇 を 作 る こ とを 提 唱 す る 。 そ れ ま で の 児 童 劇 は 大 人 の立 場 か ら 、 子 ど も に 見 せ る た め の 演 劇 運動 が 主 流 を な し て い た 。 ( 作 家 ・ 巌 谷 小 波ら に よ っ て 唱 道 さ れ た お 伽 芝 居 、 1915年 、

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大 正 3 年 に ス タ ー ト し た 宝 塚 少 女 歌 劇 、新 劇 関 係 者 に よ っ て 始 め ら れ た 童 話 劇 を指 す 。 )  坪 内 逍 遙 は 執 筆 活 動 を 行 う と と も に 、積 極 的 に 演 劇 教 育 の 実 践 運 動 に 乗 り 出 した 。 1924年 ( 大 正 12 年 ) か ら 1925年 (13年 ) に かけ て 、 帝 劇 の 付 属 技 芸 学 校 第 7 期 生 に よる 児 童 劇 を 、 東 京 の 帝 劇 、 有 楽 座 な ど で上 演 し た 。 一 行 は 関 西 の 四 大 都 市 、 大 阪 、京 都 、 神 戸 、 名 古 屋 で も 公 演 を 行 い 、 さら に 1925年 (13年 ) の 春 に は 「 坪 内 博 士 直 接指 導 児 童 劇 団 」 と い う 名 称 で 、 中 国 、 九州 の 各 地 を 巡 演 し た 。 こ れ は 児 童 劇 の 単な る 発 展 を 促 す 以 上 に 、 学 校 劇 の 改 善 に大 き な 影 響 を 与 え た 。 大 正 時 代 の 後 半 は「 大 正 デ モ ク ラ シ ー 」 と 呼 ば れ 、 文 芸 や芸 術 に お い て も 自 由 で 創 造 性 を 重 ん ず る芸 術 風 潮 が 主 流 と な っ て い た 。 そ う い った 精 神 は 教 育 に も 反 映 さ れ 、 教 育 の 斬 新な 試 み が 展 開 さ れ た 。 こ れ を 大 正 期 の「 新 教 育 運 動 」 と 称 す る 。さ て 学 校 教 育 の 教 育 課 程 の 中 で 「 子 ど もた ち が 演 じ る 演 劇 」 に つ い て 概 説 す る 必要 が あ ろ う 。 こ の 学 校 劇 の 源 流 は 二 つ ある と 言 わ れ る 。 一 つ は 、 キ リ ス ト 教 会 が併 設 し た 日 曜 学 校 が 発 端 と な っ た と 考 えら れ て い る 。 1872年 ( 明 治 5 年 ) 、 最 初 の 教会 が 横 浜 の 山 下 町 に 開 設 さ れ 、 そ の 後 各地 に 教 会 が 設 け ら れ る と と も に 日 曜 学 校は 急 速 に 日 本 各 地 に 開 設 さ れ た 。 そ こ では ク リ ス マ ス の 集 い な ど に 、 子 ど も た ちの 手 に な る 宗 教 物 語 劇 Mystery play が 上 演 され る こ と が 多 く 、 信 者 以 外 の 子 ど も た ちも 観 客 と し て 参 加 し て か な り の 隆 盛 を 極め た 。

他 の も う 一 つ は 、 明 治 の は じ め に 創 設 され た 私 立 学 校 な ど で 「 演 説 会 」 や 「 文 学会 」 な ど の 催 し に 行 わ れ た 劇 的 活 動 で ある 。 そ こ で は 朗 読 や 対 話 な ど の 劇 活 動 が行 わ れ た 。 ( 慶 應 義 塾 の 「 三 田 演 説 会 」 や弘 前 の 東 奥 義 塾 の 「 文 学 社 会 」 、 札 幌 農学 校 の 「 文 学 会 」 な ど が あ げ ら れ る )

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小 学 校 の 劇 活 動 と し て 特 筆 す べ き 学 芸 会は 、 1887年 代 、 明 治 20 年 代 の 父 兄 懇 談 会 や学 術 談 話 会 な ど に そ の 成 立 の 基 が 見 ら れる 。 こ れ ら の 行 事 が 1897年 頃 か ら ( 明 治 30年 代 に 入 っ て ) 、 教 科 練 習 会 や 学 業 練 習 会な ど と い う 名 称 の も と で 独 自 の 展 開 を し 、学 芸 会 へ と 発 展 す る 。 学 芸 会 と い う 名 称が 使 わ れ る よ う に な っ た の も 1905年 前 後( 明 治 30 年 代 ) か ら 1910年 代 ( 明 治 40 年 代 ) にか け て で あ る 。学 芸 会 に 演 劇 的 な 演 目 が 加 え ら れ る 過 程で 、 そ の 端 緒 と な っ た の は 日 曜 学 校 で の宗 教 物 語 劇 の 上 演 の 影 響 が 特 に 大 き か った と 言 わ れ て い る 。 学 芸 会 が 定 着 し た 1910年 代 、 明 治 40 年 代 に な る と 、 小 学 校 の 学芸 会 演 目 の 中 に 劇 活 動 に ご く 近 い 表 現 形式 と し て 「 対 話 」 が 登 場 し 、 こ れ が そ の後 の 学 校 劇 の 原 型 と な っ た と 考 え ら れ る 。「 対 話 」 は 、 教 科 「 国 語 」 の 中 に あ る 科目 「 表 現 」 の 学 習 の 一 つ と し て 位 置 づ けら れ る が 、 演 劇 的 な 活 動 と し て 大 き く 貢献 し た 。 「 対 話 」 と い う 発 表 形 式 は 、 読本 ( 教 科 書 、 テ キ ス ト ) の 一 章 を 児 童 た ちが 、 対 話 と な っ て い る 部 分 と 地 の 文 章 の部 分 と を い っ さ い 含 め 分 担 し て 立 体 的 に朗 読 す る も の で あ っ た 。

1920年 代 、 す な わ ち 、 大 正 デ モ ク ラ シ ーの 時 代 、 世 界 的 規 模 で の 新 教 育 運 動 の 影響 も あ っ て 、 教 育 界 は 挙 げ て 児 童 中 心 が叫 ば れ 、 「 前 近 代 的 な 画 一 主 義 の 注 入 教育 、 取 り 締 ま り 主 義 的 訓 練 等 に 対 す る 批判 を 媒 介 と し 、 近 代 的 教 育 方 法 の 自 覚 と自 立 を 目 指 す 特 徴 」 を も つ よ う に な っ た 。「 新 教 育 運 動 」 期 の 学 校 に お け る 演 劇 教育 も 斬 新 で 、 実 験 的 で 、 高 く 評 価 さ れ るべ き 改 革 が 進 め ら れ た 。 そ の 代 表 者 と して 小 原 國 芳 を あ げ る こ と が で き る 。 小 原は 私 立 成 城 小 学 校 の 指 導 主 事 ( 都 道 府 県 およ び 市 町 村 の 教 育 委 員 会 に 置 か れ た 専 門職 員 ) で あ り 、 後 に 玉 川 学 園 を 創 設 し た 人物 で あ る 。 彼 は 、 芸 術 的 な 完 成 度 を も 評価 の 側 面 に お い た 学 芸 会 を 積 極 的 に 教 育

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と し て 活 用 す る べ き だ と 考 え 、 こ れ を「 学 校 劇 」 と 呼 ん だ 。 彼 の 考 え 方 や 活 動は 多 く の 学 校 教 師 に 影 響 を 与 え た 。 彼 の考 え 方 は 坪 内 逍 遙 と 同 じ く 、 子 ど も た ちに 芸 術 的 素 養 を 意 欲 的 に 育 て る 必 要 が あり 、 そ れ は 演 劇 上 演 活 動 を 通 し て 達 成 され る べ き だ と 説 い た 。 ま た 小 原 は 『 学 校劇 論 』 と い う 書 物 を 著 し 、 上 記 の 考 え 方を 論 理 的 に 展 開 し た 。 小 原 の 学 校 劇 の 理論 に た い し て 多 く の 人 た ち が 賛 同 し 、 日本 各 地 の 学 校 で 演 劇 上 演 学 習 が 活 発 に 行わ れ る よ う に な っ た 。し か し あ ま り に 急 速 に 演 劇 上 学 習 が 普 及し た た め 、 そ の 活 動 の 質 は 珠 玉 混 交 で あっ た 。 総 じ て 教 育 理 念 が 欠 如 し た も の や指 導 法 な ど の 研 究 が な い ま ま ス タ ー ト した も の が 多 く 、 「 な ぜ 子 ど も た ち に 学 芸会 が 必 要 な の か 」 と い う 単 純 で 本 質 的 な問 い に 答 え ら れ な か っ た 。 ま た 中 に は 文部 省 か ら 反 感 を 買 う よ う な 活 動 も 見 ら れた 。 ( 例 え ば エ ン タ ー テ イ メ ン ト の 域 を 出な い も の や 、 若 衆 歌 舞 伎 の よ う に 、 子 ども が 演 じ 、 大 人 が そ れ を 観 て 楽 し む 劇 活動 も あ っ た )こ の よ う な 行 き 過 ぎ を 背 景 に 、 1925年 、

演 劇 上 演 学 習 禁 止 令 が 出 さ れ た 。 逍 遙 や小 原 の 運 動 が 展 開 さ れ て か ら 5年 も 経 た ない 時 で あ っ た 。 演 劇 や 文 学 な ど の 芸 術 文化 の 急 速 な 隆 盛 を 危 ぶ む 社 会 批 判 や 思 想な ど を 無 視 で き な か っ た と 思 わ れ る 。そ の 後 に 起 こ っ た 経 済 恐 慌 の 中 で 、 教 育を 取 り 巻 く 状 況 は 良 心 的 な 教 師 の 活 動 をだ ん だ ん と 抑 圧 す る 傾 向 を 強 め た 。 政 府と 軍 部 は 国 民 の 目 を 海 外 に 向 け さ せ 、 1931年 9月 中 国 へ の 侵 略 に 踏 み 出 し た 。戦 争 の 影 響 に よ る 学 校 教 育 の 変 化 は 満 州事 変 以 降 か ら 次 第 に 顕 著 に な り 、 日 中 戦争 の 勃 発 を 契 機 に 戦 時 教 育 色 が 鮮 明 と なっ た 。 1941年 ( 昭 和 16 年 ) 太 平 洋 戦 争 の 開 戦で そ れ が 一 気 に 拡 大 さ れ 、 日 本 の 学 校 教育 は 全 く 停 滞 せ ざ る を 得 な か っ た 。

1945年 、 日 本 が ポ ツ ダ ム 宣 言 を 受 諾 し 、

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敗 戦 す る 。1947年 、 敗 戦 後 最 初 の 学 習 指 導 要 領 が 発行 さ れ る 。教 科 課 程 に お け る 表 現 的 活 動 芸 術 的・ ・ ・ ・教 科 と し て の 音 楽 、 美 術 が 脚 光 を 浴・ ・ ・ ・び る よ う に な っ た 。 こ の よ う な 教 育 方 針を 受 け て 学 校 劇 も は な ば な し く 復 活 し た 。連 合 軍 の 駐 留 の も と で 着 手 さ れ た 教 育 改革 の 顕 著 な 現 象 は 教 科 書 の 改 革 に 表 れ た 。国 語 科 の 教 科 書 で は 「 人 形 芝 居 」 ・ 「 呼び か け 」 ・ 「 シ ナ リ オ 」 ・ 「 生 活 劇 」 など 多 彩 な 作 品 が 取 り 上 げ ら れ た 。 Reference Material 2 ( 註 2 )

そ し て 1951年 ( 昭 和 26 年 ) 、 こ の 学 習 指 導が 改 定 さ れ る 。 「 小 学 校 に お け る 国 語 科学 習 指 導 の 目 標 」 の 「 話 す こ と 」 の 項 目の 中 に 、 「 や さ し い 文 学 作 品 の 発 表 や 、劇 を す る こ と が で き る 」 こ と が あ げ ら れて い る 。 そ し て 次 の よ う な 意 味 付 け が なさ れ て い る 。

劇 表 現 へ の 意 欲 は 人 間 に と っ て は 本 能的 な も の と い わ れ て い る 。 低 学 年 児 童の 「 ご っ こ 遊 び 」 も 、 素 朴 な 劇 表 現 の一 つ で あ る 。 自 分 た ち で 仕 組 ん だ 劇 をす る 、 読 ん だ 物 語 を 簡 単 な 劇 に す る 、学 習 内 容 を 劇 化 す る 。 幻 灯 ・ 紙 芝 居 ・人 形 劇 ・ 児 童 劇 な ど は 現 代 生 活 で 大 きな 位 置 を し め て い る 映 画 や 演 劇 の 鑑 賞や 批 判 の 力 を 増 す ば か り で な く 、 児 童の 言 語 経 験 に 、 大 き な 役 割 を も つ も ので あ る こ と は い う ま で も な い 。

  こ の よ う な 劇 表 現 を 教 育 の 手 段 と し て活 用 し よ う と す る 指 針 は 多 く の 教 科 で も採 択 さ れ て い た の は 言 う ま で も な い 。 この よ う な 学 習 指 導 要 領 の 方 針 は 多 く の 劇研 究 活 動 を 誕 生 さ せ た 。 東 京 都 中 等 学 校演 劇 コ ン ク ー ル 、 和 歌 山 県 や 福 島 県 の小 ・ 中 学 校 共 同 学 校 劇 コ ン ク ー ル 、 日 本児 童 文 化 協 議 会 主 宰 学 校 劇 コ ン ク ー ル 、

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関 東 高 校 演 劇 コ ン ク ー ル 等 が 挙 げ ら れ る 。  確 か に こ の よ う な 教 育 改 革 は 狭 義 の 学校 劇 の 活 動 を 活 性 化 し 、 上 演 水 準 を 高 めた で あ ろ う が 、 そ れ は 日 本 全 体 の 教 育 のご く 限 ら れ た 部 分 に お い て あ る 。 し か も演 劇 に 意 欲 的 で あ っ た 一 部 の 教 師 が 、 演劇 教 育 の 目 標 や 手 法 、 さ ら に は 教 材 等 の知 識 や 教 育 経 験 が な い ま ま に 、 演 劇 が 好き で あ る と い う 情 念 で 担 当 し た 。 結 果 は 、教 育 活 動 の 成 果 を 競 い 合 う コ ン ク ー ル 形式 に 突 き 進 み 、 劇 教 育 の 成 果 や 評 価 を 問う と こ ろ ま で 成 長 し な い ま ま に 保 護 者 や社 会 か ら 逆 に 評 価 を 問 わ れ る よ う に な った 。  劇 教 育 、 ま た は 表 現 教 育 が 大 き く 盛 り込 ま れ た 学 習 指 導 要 領 に 対 す る 批 判 が 父母 の 間 か ら 高 ま り 、 戦 後 の 教 育 で は 「 漢字 が よ く 書 け な い 」 、 「 計 算 力 が つ い てい な い 」 、 「 県 庁 所 在 地 を 知 ら な い 」 、「 歴 史 上 の 重 要 人 物 を 知 ら な い 」 な ど の指 摘 が 行 わ れ 、 全 般 に 学 力 の 低 下 を も たら し て い る の で は な い か と い う 率 直 な 疑問 で あ っ た 。 こ れ に た い し て 、 新 教 育 を推 奨 す る 人 た ち は 「 学 力 と は 知 識 の 量 によ っ て は か れ る も の で は な く 、 自 主 的 に判 断 し 行 動 で き る 能 力 で あ る 」 と 主 張 し 、学 力 観 を 問 い 直 す べ き だ と 主 張 し た 。し か し 大 き な 疑 問 ・ 反 対 の 声 の 高 ま り がつ よ い こ と か ら 、 い ろ い ろ な 機 関 が 学 力を 調 査 し た 結 果 、 国 語 の 理 解 力 や 計 算 力の 低 下 が 明 確 に な っ た た め に 、 こ の 問 題へ の 対 応 が 急 務 と な っ た 。 こ こ で 日 本 の教 育 は 学 習 指 導 要 領 、 教 科 書 、 教 育 方 法の 再 検 討 を 余 儀 な く さ れ た 。  1958年 ( 昭 和 34 年 ) に 出 さ れ た 学 習 指 導 要領 で は 、 劇 的 な 教 育 は 極 端 に 後 退 し 、 劇活 動 は 「 望 ま し い 」 と 記 述 さ れ る に 過 ぎな く な っ た 。 1968年 ( 昭 和 43 年 ) の 学 習 指 導要 領 で は 、 通 称 四 六 答 申 (Report of 46) 、 教 科書 か ら は 劇 教 材 が 削 除 さ れ た 。 今 振 り 返っ て み る と 、 当 時 の 演 劇 教 育 は 学 習 指 導要 領 が 先 行 し 、 目 標 や 方 法 や 教 材 の 研 究

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が 追 い つ か な か っ た 。 そ の 結 果 、 上 演 中心 の 演 劇 教 育 活 動 の み が 目 立 つ よ う に なり 、 格 好 の 攻 撃 対 象 と な っ た 。 教 師 の 演劇 教 育 に 対 す る 資 質 能 力 が 授 業 を 支 え る・段 階 ま で 開 発 さ れ て い な か っ た た め に 起こ っ た 教 育 リ フ ォ ー ム で あ っ た と い え よう 。①. 劇 教 育 は 見 せ る 劇 活 動 へ と 傾 い た 。②. 劇 教 育 に 熱 心 な 教 師 は 芸 術 志 向 に 進 ん

だ 。③. 一 部 の 教 師 の み が 熱 心 で あ り 、 他 の 教

師 は 授 業 を 運 営 で き な か っ た 。④. 教 育 界 が 劇 教 育 の 急 激 な 発 展 を 警 戒 した 。 劇 教 育 の 教 育 的 成 果 が 示 さ れ な かっ た 。

⑤. 教 育 界 全 体 が 学 力 中 心 の 教 育 に 傾 い た 。⑥. 受 験 競 争 が 激 化 始 め た 。⑦. そ う い う 教 育 環 境 の 変 化 の な か で 、 劇の 稽 古 に 当 て る 時 間 が 見 出 せ な く な った 。

⑧. 戦 後 し ば ら く は 、 演 劇 は 生 活 の 中 で 芸術 ・ 教 養 ・ 娯 楽 ・ 文 化 と し て か な り の比 重 を 占 め て い た が 、 価 値 観 の 多 様 化が 進 む に つ れ 演 劇 へ の 関 心 は 低 下 し てい た 。

⑨. 教 員 養 成 大 学 、 演 劇 学 会 、 演 劇 関 係 者が 学 校 教 育 に お け る 劇 教 育 に 無 関 心 であ っ た 。

⑩. 教 師 の 閉 鎖 的 環 境.⑪ 教 育 評 価 の 欠 落.⑫ 教 育 方 法 教 材 研 究 の 欠 落・⑨に 関 し て 軽 く 触 れ て お く 。 教 員 養 成 大学 が 教 育 現 場 の 諸 問 題 に 踏 み 込 ん で 指 導的 な 役 割 を 果 た す こ と が 少 な か っ た 。 いい 意 味 で は 教 育 現 場 の 自 主 性 を 尊 重 し た結 果 で あ る と 言 え よ う が 、 大 学 側 の 消 極的 な 姿 勢 を 生 み 出 し た 原 因 は そ の 研 究 内容 や 学 問 的 風 土 に あ る よ う に 思 わ れ る 。教 員 養 成 大 学 に お け る 教 師 養 成 は 諸 科 学の 教 育 の 複 合 的 な 基 盤 の 上 に 立 脚 し て いる こ と か ら 、 教 員 も 諸 科 学 の 専 門 家 や 研

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究 者 に よ っ て 構 成 さ れ て い る 。 し か し なが ら 教 員 を 養 成 す る と い う 目 的 が 特 定 され た 大 学 に お い て は す べ て の 教 員 は 教 科と 専 門 科 学 の 関 連 を 探 求 し 、 研 究 成 果 を社 会 に 還 元 す る こ と を 求 め ら れ て 当 然 であ ろ う 。 残 念 な が ら は 教 員 養 成 大 学 で の研 究 が 教 育 現 場 で の 問 題 解 決 に 関 わ る 実践 的 研 究 が 少 な く 、 純 粋 に ア カ デ ミ ッ クな 対 象 を 研 究 テ ー マ と し て 取 り 組 む 傾 向が 強 か っ た こ と に あ る 。 つ い 最 近 ま で 、教 育 そ の も の を 研 究 す る 学 問 、 な か ん ずく 教 育 手 法 を 研 究 す る 学 問 は ア カ デ ミ ズム の 世 界 で は 驚 く ほ ど 低 く 評 価 さ れ て いた 。

演 劇 が 教 育 か ら 急 速 に 削 除 さ れ る の を 知り な が ら も 、 演 劇 研 究 者 や 演 劇 関 係 者 は学 校 教 育 と し て の 演 劇 の 重 要 性 を 今 日 ほど 認 識 し て い な か っ た よ う だ 。 お そ ら く彼 ら の 大 多 数 は 、 学 校 現 場 で の 「 教 育 とし て の 演 劇 」 は 彼 ら が 従 事 す る 「 芸 術 とし て の 演 劇 」 と は 無 関 係 で あ り 、 ま た 教育 に 対 し て 支 援 す る 積 極 的 意 義 が 発 見 でき な か っ た 。 学 校 サ イ ド も 、 職 業 演 劇 人に 教 育 現 場 で 指 導 し て も ら う 目 的 や 教 育計 画 を 見 つ け だ そ う と す る 姿 勢 は な か った と い え よ う 。 心 の 底 に 教 育 は 神 聖 で あり 、 班 体 制 的 ・ 反 社 会 的 な 芸 術 家 が 学 校の な か に 足 を 踏 み 入 れ 、 教 育 に 混 乱 を 引き 起 こ す こ と を 懸 念 し て い た 。

1950年 当 時 の 演 劇 人 は ま さ に Dionysus 神 の攻 撃 性 、 好 色 amorous、 解 放 性 emancipation from morals、 破 壊 へ の 激 情 の シ ン ボ ル 的 存 在 であ り 、 演 劇 の 魔 力 に 魅 せ ら れ る も の の 、多 く の 教 育 者 は 演 劇 人 に 距 離 を お い て いた 。 そ の こ ろ の 演 劇 人 は 高 校 を 卒 業 後 、俳 優 養 成 所 を 終 了 し た 者 が 中 心 で あ っ たか ら 、 教 師 と 俳 優 が 問 題 を 語 り 合 う 共 通の 素 地 が な か っ た と も 言 え る 。こ の よ う な 状 況 の な か で 、 演 劇 教 育 を 底辺 で 支 え る い ろ い ろ な 活 動 が 展 開 さ れ てい た 。 教 師 の 作 家 兼 演 出 家 兼 研 究 者 集 団を 作 り だ し た 。 そ し て 教 師 が 書 い た 作 品

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を 教 師 が 演 出 し て 上 演 し た が 、 こ の 集 団の 俳 優 は い つ も 生 徒 た ち で あ っ た 。

1980年 ご ろ か ら 、 欧 米 の 演 劇 教 育 が 紹 介さ れ る よ う に な っ た 。 そ れ ま で 外 国 か らの 芸 術 教 育 の 紹 介 は 、 音 楽 や 美 術 そ し てダ ン ス 関 係 の 教 科 に 関 わ る 分 野 だ け で あっ た 。 Peter Slade, Brian Way, Drothey Heathcote, Viola Spolinが 紹 介 さ れ る よ う に な っ た 。 ま た 私 の 大学 で は 、 Gavin Bolton や Beth Parsons そ し て John Somers な ど の 論 文 や 指 導 書 が テ キ ス ト と して 使 用 さ れ た 。 こ う い う 演 劇 教 育 の 文 献の 影 響 で 、 少 し ず つ 演 劇 教 育 の 内 容 は 変化 を 続 け て き た 。し か し 今 日 で も 、 日 本 の 演 劇 教 育 は 大 変活 発 で あ り 、 独 得 の 形 態 と 機 能 を 持 っ てい る の は 事 実 で あ る 。 そ の 一 端 を に な って き た の が 学 校 演 劇 や 児 童 演 劇 を 上 演 する 職 業 劇 団 と そ れ を 支 援 す る 団 体 の 活 動で あ る 。 劇 団 は 学 校 の 中 へ も 、 学 校 に 近い ホ ー ル や 文 化 セ ン タ ー へ も 演 劇 を 配 達す る 。 1998年 の 調 べ で 、 そ の 年 間 上 演 回 数は 23,500回 で 児 童 の 動 員 数 は 11,000,000 人 に 及ぶ 。 そ の 功 罪 は さ て お い て 、 こ れ ら の 団体 の 貢 献 を 抜 き に し て は 今 日 の 日 本 の 演劇 教 育 を 語 る こ と は 出 来 な い 。 Reference Material 3 ( 註 3 )

Ⅱ INSIDE AND OUTSIDE OF NATIONAL CURRICULUMⅡ-1 New Governmental Curriculum Guidances and Possibility of Drama/theatre Activity in School平 成 14 年 度 か ら 全 面 実 施 と な る 完 全 学 校週 5 日 制 の も と で 行 わ れ る 教 育 内 容 の 骨 格を 示 す 幼 稚 園 、 小 学 校 、 中 学 校 の 新 学 習指 導 要 領 が 平 成 11 年 末 に 文 部 科 学 省 か ら示 さ れ た 。 そ の 一 つ の ね ら い は 教 育 内 容の 厳 選 に よ る 「 ゆ と り 」 あ る 教 育 と 「 生き る 力 」 を 育 む 「 相 互 的 な 学 習 の 時 間 」を 新 設 す る こ と に あ っ た 。 小 学 校 の 教 科等 の 構 成 及 び 授 業 時 数 に つ い て は 註 4 を参 照 し て い た だ き た い 。 Reference Material 4 ( 註4 )

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文 部 省 の 資 料 に よ る と 、 次 の よ う に 説 明さ れ て い る 。  こ れ ら の 時 間 は 以 下 の よ う な 原 則 に 基

づ い て 算 出 さ れ た 。1. 小 学 校 、 中 学 校 の 各 教 科 等 充 て る 総

授 業 時 数 は 、 完 全 学 校 週 5 日 制 に 伴 い 、全 体 と し て 週 当 た り 2単 位 時 間 ( 年 間 70単 位 時 間 ) 削 減 す る 。 ま た 、 こ の 総 授業 時 数 の な か で 「 総 合 的 な 学 習 の 時間 」 を 創 設 す る 。

2. 小 学 校 及 び 中 学 校 の 各 教 科 等 ご と の授 業 時 数 に つ い て は 、 お お む ね 次 の よう な 基 本 的 考 え 方 に 立 っ て 配 当 す る 。

① 小 学 校 、 中 学 校 を 通 じ 、 国 語 の 力 、計 算 や 数 学 的 処 理 能 力 、 社 会 や 自然 の 理 解 、 豊 か な 情 操 や 人 間 性 、健 康 な 心 身 を 調 和 的 に 育 成 す る よう 時 間 を 配 当 す る 。

② 小 学 校 段 階 で は 、 読 ・ 書 ・ 算 の 基礎 的 能 力 、 豊 か な 情 操 や 人 間 性 、健 康 な 心 身 を 育 て る 教 科 等 の 時 間数 の 確 保 を 重 視 す る 。

③ 中 学 校 段 階 で は 、 小 学 校 教 育 の 基礎 の 上 に 立 っ て 、 必 修 強 化 等 に おい て 公 民 的 資 質 や 科 学 的 素 養 、 豊か な 人 間 性 、 健 康 な 心 身 、 外 国 語の コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 能 力 を 育 てる 教 科 等 の 時 間 数 を 確 保 す る 。 また 、 生 徒 の 興 味 関 心 等 に 応 じ た 学・習 が 一 層 行 え る よ う に す る こ と を重 視 し 、 選 択 履 修 の 幅 を 拡 大 す る観 点 か ら 、 開 設 で き る 選 択 教 科 の種 類 を 拡 大 す る と と も に 、 選 択 教科 の 時 間 数 を 確 保 す る 。

3. 高 等 学 校 の 教 科 科 目 に つ い て は 、 現 在・必 修 が 課 さ れ て い る 教 科 に つ い て 、 国の 基 準 上 履 修 す べ き 単 位 数 が 縮 減 で きる よ う 、 数 学 、 理 科 を は じ め 、 各 教 科に お い て 可 能 な 限 り 小 さ い 単 位 の 科 目を 設 け る こ と と す る 。

(1) 必 修 教 科 科 目 の 設 定 に あ た っ て は 、 高・22

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等 学 校 の 多 様 化 や 生 徒 の 選 択 に よ る 学習 を 一 層 推 進 す る た め 、 選 択 必 修 を 基本 的 な 方 向 と し て さ ら に 具 体 的 に 検 討す る 。

こ う し て 創 出 さ れ た ゆ と り の な か で 「 特色 あ る 教 育 」 を 展 開 し 、 幼 児 児 童 生 徒・ ・に ① 豊 か な 人 間 性 や 社 会 性 、 国 際 社 会 に生 き る 日 本 人 と し て の 自 覚 を 育 成 す る こと 、 ② 自 ら 学 び 、 自 ら 考 え る 力 を 育 成 する こ と 、 ③ ゆ と り の あ る 教 育 活 動 を 展 開す る な か で 、 基 礎 基 本 の 確 実 な 定 着 を 図・り 、 個 性 を 生 か す 教 育 を 充 実 す る こ と 、④ 各 学 校 が 創 意 工 夫 し て 特 色 あ る 教 育 、特 色 あ る 学 校 作 り を 進 め る こ と 、 の 4点 の改 善 を 提 唱 し て い る 。今 回 の 改 定 の 目 玉 で あ る 「 総 合 的 な 学 習の 時 間 」 で は 、 (1) 自 ら 課 題 を 見 つ け 、 自ら 学 び 、 自 ら 考 え 、 主 体 的 に 判 断 し 、 より よ く 問 題 を 解 決 す る 資 質 や 能 力 を 育 てる こ と 、 (2) 学 び 方 や も の の 考 え 方 を 身 につ け 、 問 題 の 解 決 や 探 求 活 動 に 主 体 的 、創 造 的 に 取 り 組 む こ と な ど を 指 導 の ね らい に し て い る 。こ の 「 総 合 的 な 学 習 の 時 間 」 を 設 定 し た趣 旨 を 「 各 学 校 は 、 地 域 や 学 校 、 児 童 の実 態 等 に 応 じ て 、 横 断 的 総 合 的 な 学 習 や・児 童 の 興 味 関 心 等 に も と づ く 学 習 な ど 創・意 工 夫 を 生 か し た 教 育 活 動 を 行 う も の とす る 」 こ と と し 、 地 域 や 学 校 の 特 色 に 応じ た 課 題 な ど に つ い て 学 校 の 実 態 に 応 じて 学 習 活 動 を 行 う も の と す る と 記 述 す るに と ど め 、 同 時 間 の 活 用 を 現 場 に 委 ね てい る の が 大 き な 特 色 で も あ る 。文 部 省 の 指 導 は 、 「 総 合 的 な 学 習 の 時

間 」 の 活 用 を 教 育 現 場 に 任 せ た が 、 そ れで も 国 際 化 の 時 代 で あ る か ら 、 こ の 時 間を 活 用 し て 外 国 語 に 触 れ 、 外 国 の 生 活 や文 化 に 慣 れ 親 し む な ど の 体 験 的 な 学 習 を推 奨 し て い る 。 他 方 、 小 学 校 に お い て「 総 合 的 な 学 習 の 時 間 」 を 使 っ て コ ン ピュ ー タ な ど の 情 報 手 段 を 活 用 し た 学 習 活

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動 に 取 り 組 む の が よ い と 指 摘 し て い る 。同 じ よ う な 示 唆 は 、 小 学 校 に お け る 環 境教 育 に つ い て も 行 わ れ て い る 。 こ の よ うに 「 総 合 的 な 学 習 の 時 間 」 は 横 断 的 総 合・的 な 学 習 を 推 奨 し な が ら 、 英 語 教 育 、 情報 教 育 、 環 境 教 育 が よ い と か な り 恣 意 的に 述 べ て い る 。

Ⅱ -2 Outside of Curriculum2-1. 全 国 高 等 学 校 演 劇 協 議 会

の 活 躍 日 本 の 演 劇 教 育 は 大 変 盛 ん だ 。 教 育 課 程の な か に 演 劇 、 ド ラ マ 、 シ ア タ ー と い う教 科 が な い 、 科 目 が な い と い う 現 実 は 一見 、 演 劇 と 教 育 が 断 絶 し て い る よ う に 思わ れ が ち で あ る 。 し か し 先 に 述 べ た よ うに 、 National Curriculum の 弾 力 的 運 用 の 枠 を 使っ た 演 劇 教 育 は 着 実 に 活 動 を 続 け て い る 。一 つ は 教 育 課 程 の な か に あ る 特 別 活 動 とい う 時 間 を 活 用 し た 中 高 校 生 演 劇 部 の 上演 活 動 で あ り 、 も う 一 つ は 150 以 上 の 劇 団に よ っ て 提 供 さ れ る 多 様 な 鑑 賞 教 育 で ある 。ま ず 「 特 別 活 動 」 の 時 間 枠 を 使 っ た 高 校生 た ち の 演 劇 上 演 活 動 は 長 い 歴 史 と 伝 統を も っ て い る 。 上 演 活 動 は 、 高 文 連 ( 高 等学 校 文 化 活 動 連 盟 ) に 所 属 す る 演 劇 部 会 全国 組 織 に よ っ て 運 営 さ れ て き た 。 正 式 名称 は 全 国 高 等 学 校 演 劇 協 議 会 と い う 。 全国 か ら 約 2600校 の 高 等 学 校 が 参 加 し 、 今 年で 46 回 目 を 迎 え る 。 1955年 に ス タ ー ト し 、教 師 と 学 生 が 運 営 の 仕 事 を 見 事 に 住 み 分け し つ つ 発 展 し て き た 。 高 等 学 校 に 演 劇科 、 な い し は 演 劇 コ ー ス を 設 置 し た 学 校は 3校 し か 存 在 し な い か ら 、 ほ と ん ど の 参加 校 は 特 別 活 動 の 時 間 を 使 っ て 活 躍 す る演 劇 サ ー ク ル が 中 心 で あ る 。 つ ま り 有 志の 学 生 が 課 外 活 動 と し て 演 劇 ク ラ ブ を 結成 し 、 日 常 で の 活 動 を 通 し て 演 劇 を 学 び 、上 演 活 動 へ と 発 展 さ せ る 。 こ れ は 高 校 生の 野 球 の 全 国 大 会 「 夏 の 甲 子 園 」 と 比 肩

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さ れ る 一 大 行 事 に ま で 成 長 し た 。 2000年 の参 加 校 数 は 2550校 で 、 毎 年 確 実 に 参 加 校 数が 増 加 し て い る 。大 会 は 都 道 府 県 の 予 選 を 経 て 、 8 つ の ブロ ッ ク ご と に 地 区 予 選 を 行 い 、 地 区 の 優秀 校 1校 が 全 国 大 会 に 出 場 し 、 全 国 一 を 競う こ と に な る 。 こ の コ ン テ ス ト 形 式 に 、非 教 育 的 体 質 を 感 じ 、 運 営 携 帯 ・ 組 織 の硬 直 化 を 改 革 し よ う と 批 判 的 な 教 師 も 少な く な い 。 こ こ ま で 巨 大 化 し た 組 織 は 自ら の 点 検 評 価 と 改 革 に 取 り 組 ん で い る が 、こ の 大 会 に 寄 せ る 高 校 生 の ニ ー ズ は い ぜん 衰 え を 見 せ な い 。全 国 高 等 学 校 演 劇 協 議 会 の 目 的 は 、 「 高等 学 校 及 び そ れ に 準 ず る 学 校 に お け る 演劇 の 研 究 ・ 育 成 ・ 指 導 に つ と め 、 そ の 向上 を 図 り 、 学 校 教 育 に 寄 与 す る こ と を 目的 と し て い る 。こ の 目 的 を 達 成 す る た め に ① 全 国 大 会 の開 催 、 あ わ せ て 指 導 者 講 習 会 の 開 催 、 ②相 互 の 情 報 交 換 や 連 携 、 ③ 共 通 問 題 へ の取 り 組 み 、 ④ 演 劇 教 育 に 関 す る 資 料 収 集と 調 査 研 究 、 ⑤ 講 習 会 や コ ン ク ー ル の 講師 、 審 査 員 の 紹 介 、 ⑥ 請 う 高 演 劇 関 係 図書 の 出 版 と 優 良 図 書 の 紹 介 、 ⑦ 機 関 紙「 演 劇 創 造 」 の 発 行 な ど を 掲 げ て い る 。

日 本 に お け る 作 文 教 育 が そ う で あ る よ うに 、 表 現 教 育 は お お む ね 内 容 中 心 で あ った と 言 わ れ る 。 ど う 表 現 す る か よ り も 、何 を 表 現 す る か と い う こ と に 比 重 を 置 くこ と が よ り 教 育 的 で あ る と 考 え て き た 歴史 が あ る 。そ の 結 果 、 幼 稚 園 や 小 学 校 の 児 童 の た めの 上 演 用 の テ キ ス ト が 、 玉 川 大 学 、 成 城大 学 な ど の 大 学 出 版 物 の 大 切 な 地 位 を 占め て き た し 、 教 育 関 係 出 版 社 も 脚 本 シ リー ズ を 精 力 的 に 出 版 し て き た 。 高 等 学 校の 脚 本 集 も 同 じ よ う に 演 劇 専 門 の 出 版 社か ら シ リ ー ズ と し て 特 別 の 地 位 を 獲 得 して き た 。

高 校 演 劇 の 初 期 は 、 職 業 劇 作 家 の 一 幕 物が 半 数 、 高 校 の 教 師 が 書 い た テ キ ス ト が

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半 数 ぐ ら い で あ っ た が 、 中 期 に 入 る と 高校 の 教 師 が 書 い た 作 品 が 主 流 と な り 、 教師 の 中 に 戯 曲 創 作 熱 が 異 常 に 高 ま っ た 。高 校 生 の 生 活 や 考 え 方 を 理 解 し て い る 彼ら が 、 独 特 の 主 張 を 展 開 し 、 高 校 生 た ちの 演 劇 熱 を 高 め る に 高 い 貢 献 を 果 た し たと 評 価 で き よ う 。 か つ て 多 か っ た 演 劇 ディ レ ッ タ ン ト の 教 師 、 劇 作 家 ぶ る 高 校 教師 は 幸 せ な こ と に 少 な く な っ た 。 最 近 は高 校 生 た ち が 書 い た 作 品 が 主 流 と な っ てい る 。 彼 ら の 「 何 を 表 現 す る か 」 と い う追 及 は 、 時 代 の 特 徴 を 反 映 し て 、 高 校 生た ち の 主 張 を 劇 作 品 と い う 形 式 で 同 世 代た ち に 訴 え か け て い る 。 し か も 既 成 の ドラ マ ツ ル ギ ー に と ら わ れ ず 、 新 し い 人 物像 や 作 劇 術 が 開 発 さ れ る こ と が 多 く 見 られ る よ う に な っ た 。 高 校 演 劇 大 会 で 活 躍し た 若 者 た ち が 、 卒 業 後 に 劇 団 を 結 成 し 、プ ロ 劇 団 と し て デ ビ ュ ー し た り 、 劇 作 家と し て 活 躍 し て い る 例 も 少 な く な い 。中 学 校 に も 同 じ よ う な 組 織 が あ る 。 全 国中 文 連 ( 全 国 中 学 文 化 連 盟 ) の 一 分 野 と して 演 劇 発 表 会 が 開 催 さ れ て き た 。 こ の 方の 歴 史 は 浅 く 、 10 年 ほ ど 前 か ら 自 主 的 に地 区 別 の 劇 発 表 会 が 行 わ れ て い た 。 た だし 、 全 国 大 会 へ の 参 加 は 他 府 県 へ の 宿 泊が 必 要 と な る こ と か ら や や 大 会 参 加 が 制約 さ れ 、 高 等 学 校 の よ う な 活 動 規 模 に 至る ま で に は ま だ 時 間 が か か る も の と 思 われ る 。 こ ち ら の 組 織 は 1989年 ( 平 成 元 年 ) から 準 備 を す す め 、 2000年 7 月 に ス タ ー ト した 。 現 在 の 参 加 は 7 都 道 府 県 ( 全 国 は 47 地区 に 行 政 区 分 さ れ て い る ) の み で こ れ か らの 発 展 が 期 待 さ れ て い る 。こ れ ら の 演 劇 教 育 活 動 は い ず れ も 上 演 を

最 終 目 的 と す る 演 劇 学 習 で あ る 。 し か も教 育 課 程 の 中 の 特 別 活 動 と い う 形 式 で 運営 さ れ て お り 、 他 教 科 と の 関 連 性 、 カ リキ ュ ラ ム 全 体 に お け る 教 育 目 標 や 達 成 され る べ き 成 果 と 評 価 な ど に 制 約 さ れ な い 。ま さ に 教 科 の 縛 り を は ず れ た 、 人 間 形 成の た め の 特 別 活 動 で あ る 。 し た が っ て 教

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育 方 法 や 教 材 開 発 な ど は 一 人 の 教 師 の 努力 や 資 質 に 大 き く 左 右 さ れ る 。 演 劇 が 好き な 児 童 生 徒 が 参 加 し て 行 わ れ る 授 業 であ る か ら 、 教 師 の 指 導 も 自 然 に 力 が 入 り 、演 劇 上 演 学 習 の 成 果 は か な り の 効 果 を あげ つ つ あ る 。 し か し な が ら 私 が も っ と も避 け て ほ し い 形 態 で の 演 劇 教 育 が 時 々 散見 さ れ る 。 そ れ は 指 導 者 で あ り 、 演 出 家で あ る 教 師 が 絶 対 権 力 者 と な っ て 君 臨 する 演 劇 が コ ン テ ス ト の 上 位 に ラ ン ク さ れる 現 実 で あ る 。 教 師 が 独 自 の 演 劇 観 に もと づ い て 、 演 出 論 、 演 技 論 を 展 開 し 、 まだ 人 生 経 験 の 浅 い 彼 ら に 人 間 理 解 を 強 制す る 無 謀 さ で あ る 。 女 子 高 校 生 が 泣 き なが ら 、 し か も 叱 ら れ て 嬉 し 涙 を 流 し な がら 稽 古 を 繰 り 返 す 現 場 を 目 撃 し て 、 「 人生 ご っ こ 」 を 見 て い る よ う な 怖 さ を 味 わう こ と が あ る 。

2-2. 学 校 教 育 の 外 か ら 支 援 す

る 演 劇 教 育日 本 の 政 府 が 児 童 の 健 全 育 成 や 芸 術 鑑 賞と い う テ ー マ で 、 教 育 課 程 の 枠 外 で 少 なく と も 1980年 代 か ら 演 劇 を 支 援 し て き た 。こ こ 数 年 間 は そ の 活 動 が 国 か ら 地 方 行 政に ま で 拡 大 さ れ 、 大 き な 教 育 課 程 外 の 芸術 教 育 と し て 膨 大 な 予 算 を 使 っ て い る 。国 や 地 方 行 政 、 さ ら に 企 業 が 支 援 す る 活動 が 生 涯 学 習 の 運 動 と 連 携 し て 、 演 劇 的な workshop が 盛 ん に な り 、 そ の 数 を つ か むこ と は 出 来 な い 。 教 育 課 程 外 の プ ロ グ ラム を 検 証 し て み よ う 。

1. 文 部 省 が 主 催 し て 行 っ て い る も の2. 協 会 ・ 団 体 な ど が 国 や 企 業 か ら 基 金を も ら っ て や っ て い る も の

3. 厚 生 労 働 省 が 主 催 し て 行 っ て い る もの

4. 地 方 行 政 が 行 っ て い る も の5. 企 業 と し て の 児 童 劇 団 が 行 っ て い る

も のに 大 別 で き る 。

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2-2-1文 部 科 学 省 ( 文 化 庁 ) が 主 催 す る も の「 舞 台 芸 術 ふ れ あ い 教 室 」文 化 庁 文 化 部 芸 術 文 化 課 が 行 っ て い る 。こ れ は 学 校 の 文 化 部 の 活 動 や 総 合 的 学 習の 時 間 な ど を 活 用 し て 、 児 童 生 徒 に 芸 術・を 愛 す る 心 を 育 て 、 豊 か な 心 が 育 ま れ るよ う に 、 芸 術 団 体 に よ る 公 演 及 び 文 化 活動 の 指 導 を 学 校 の 現 場 に お も む い て 上 演し 、 芸 術 文 化 ・ 伝 統 文 化 に 関 す る 体 験 や・ふ れ あ う 機 会 を 提 供 し 、 児 童 生 徒 た ち の芸 術 や 文 化 に 対 す る 理 解 を 深 め る こ と を目 的 と し て 行 わ れ る 。 こ の 「 舞 台 芸 術 ふれ あ い 教 室 」 は 全 国 規 模 の 一 大 プ ロ ジ ェク ト で あ り 、 下 記 の 各 ジ ャ ン ル か ら 最 低一 つ の チ ー ム が 全 国 に 派 遣 さ れ 、 全 国 で総 計 約 400 回 上 演 さ れ る 。

① 対 象 は 小 学 生 、 中 学 生 、 高 校 生 であ る 。

② 会 場 と し て 劇 場 や 文 化 会 館 ・ 文 化ホ ー ル な ど を 使 用 す る の で は な く 、各 学 校 の 講 堂 や 体 育 館 を 使 用 す る 。す な わ ち 学 校 の 中 ま で 進 出 し て 、授 業 時 間 の な か で 鑑 賞 で き る よ うに 配 慮 さ れ た 企 画 で あ る 。 そ の ため 、 必 然 的 に 舞 台 装 置 、 照 明 、 音響 効 果 、 衣 装 、 小 道 具 な ど の 専 門ス タ ッ フ が チ ー ム に 加 わ り 舞 台 づく り な ど 準 備 し 、 上 演 に 必 要 な 最低 限 の 空 間 を 構 築 す る 。 特 に 古 典芸 術 を 上 演 す る 際 は 舞 台 設 備 や 舞台 床 、 伝 統 音 楽 の 演 奏 者 な ど 出 費が か か る こ と が 多 い 。 こ れ ま で 地方 の 児 童 生 徒 は こ の よ う な 芸 能 芸・術 を 鑑 賞 す る 機 会 が ほ と ん ど な かっ た こ と か ら 高 い 評 価 を 受 け て いる 。

③ 演 目 は 合 唱 、 オ ー ケ ス ト ラ 、 邦 楽 、音 楽 劇 、 演 劇 、 舞 踊 、 文 楽 の 7つ のジ ャ ン ル か ら 成 り 立 っ て お り 、 各県 、 市 町 村 の 教 育 委 員 会 と 学 校 が協 議 し て 招 聘 す る ジ ャ ン ル や 作 品を 決 め て い る 。

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④ 「 舞 台 芸 術 ふ れ あ い 教 室 」 で は 、学 校 の 中 ま で 上 演 団 体 が 出 向 く ので あ る か ら 、 学 校 教 育 活 動 の 一 環と し て 行 わ れ る も の で あ り 、 芸 術団 体 に よ る 上 演 前 や 後 の 実 演 指導 ・ 鑑 賞 指 導 が 行 わ れ る 。 ま た 芸術 団 体 と 児 童 生 徒 と の 競 演 な ど も・試 み ら れ る 。

2-2-2協 会 ・ 団 体 な ど が 国 や 企

業 か ら 基 金 を も ら っ て や っ て い る も の 「 子 ど も と 舞 台 芸 術 ― 出 会 い の フ ォー ラ ム 2000」日 本 芸 能 実 演 家 団 体 協 議 会 ( い わ ゆ る 芸

団 協 ) が 全 国 公 立 文 化 施 設 協 会 ・ 文 化 庁 ・東 京 都 な ど の 支 援 を 受 け て 夏 休 み 期 間 に開 催 す る 行 事 で あ る 。 そ の キ ャ ッ チ コ ピー は 「 子 ど も と 舞 台 芸 術 の 幸 福 な 出 会 いの た め に 、 子 ど も と 舞 台 芸 術 に 関 わ る さま ざ ま な 人 々 が 出 会 い 、 パ ー ト ナ ー シ ッ・プ を 育 む 交 流 を ! 」 と う た っ て い る 。こ の 催 し の テ ー マ は 、 子 ど も も 大 人 も

一 緒 に な っ て 舞 台 芸 術 を 楽 し む こ と が でき る よ う に 特 別 な プ ロ グ ラ ム を 編 成 し てい る 点 に あ ろ う 。 「 参 加 体 験 型 プ ロ グ ラ・ム 」 で は 伝 統 芸 、 音 楽 、 演 劇 、 人 形 劇 など の さ ま ざ ま な ジ ャ ン ル の ワ ー ク シ ョ ップ は 子 ど も た ち が 実 際 に 触 れ た り 、 感 じた り す る こ と の で き る チ ャ ン ス を 設 け てい る 。 ワ ー ク シ ョ ッ プ の 内 容 簡 単 に 紹 介す る と「 リ ー ダ ー ズ ・ シ ア タ ー 」「 音 の ス ケ ッ チ ブ ッ ク 」「 子 ど も が 作 る 表 現 活 動 ・ 総 合 的 な 時

間 と 学 芸 会 へ の 対 応 」「 人 形 劇 ワ ー ク シ ョ ッ プ 、 変 身 『 モ ノ・

か ら 人 形 へ 』 」「 へ ぇ 、 三 味 線 っ て 面 白 い ん だ ね ! 」

な ど で あ る 。ま た シ ョ ウ ・ ケ ー ス や 企 画 紹 介 で は た

く さ ん の 作 品 を 見 る こ と が で き る 。 子 ど

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も た ち に ど う い う 作 品 を 見 せ た ら よ い かと 悩 む 大 人 の 人 に も 役 立 つ よ う に 準 備 され て い る 。

ス ペ シ ャ ル コ ン サ ー ト 「 オ ー ケ ス ト ラ・の 動 物 園 」 は フ ル オ ー ケ ス ト ラ に よ る 演・奏 で 、 家 族 ぐ る み で 干 渉 で き る 番 組 と なっ て い る 。「 シ ン ポ ジ ウ ム ・ セ ミ ナ ー 番 組 」 は 、

実 演 家 、 教 育 現 場 、 公 立 文 化 施 設 な ど 第一 線 で 活 躍 し て い る シ ン ポ ジ ス ト が 多 様な 切 り 口 か ら 芸 術 の 魅 力 を 語 り 、 子 ど もと 舞 台 芸 術 の 出 会 い を 推 進 す る た め 質 問な ど に で き る 限 り 答 え よ う と し て い る 。シ ン ポ ジ ウ ム は 基 調 シ ン ポ ジ ウ ム 「 子 ども ま ち づ く り 舞 台 芸 術 」 の あ と 、 以 下・ ・の 5 つ の シ ン ポ ジ ウ ム が 開 催 さ れ た 。

「 子 ど も に と っ て 『 鑑 賞 』 と 『 表 現 』と は 」「 公 立 の 文 化 施 設 が 学 校 地 域 と ど う・

か か わ る か 」「 総 合 的 な 学 習 の 時 間 を 考 え る ― 表

現 活 動 に 取 り 組 ん で い る 学 校 か ら の 報告 」「 21 世 紀 を 迎 え る 今 、 青 少 年 に お く る

舞 台 作 品 ! 」「 子 ど も の 表 現 力 を 引 き 出 す 」こ の 企 画 は 従 来 ば ら ば ら で あ っ た 諸 団

体 が 協 力 し 、 21 世 紀 の 芸 術 教 育 の あ り 方に 正 面 か ら 取 り 組 ん だ 姿 勢 を わ れ わ れ に見 せ た も の と し て 評 価 で き る 。

日 本 劇 団 協 議 会日 本 児 童 青 少 年 演 劇 劇 団 協 議 会日 本 児 童 演 劇 協 会日 本 青 少 年 音 楽 芸 能 協 会子 ど も 劇 場全 国 専 門 人 形 劇 団 協 議 会日 本 芸 能 実 演 家 団 体 協 議 会

な ど の 諸 団 体 が こ こ ま で よ く ま と ま っ たも の と 驚 き を 禁 じ え な い 。

2-2-3厚 生 労 働 省 が 行 っ て い る

も の 30

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次 に 厚 生 労 働 省 the Ministry of Welfare and Labor 関係 を 見 る と 、 財 団 Foundation の 子 ど も 教 育 支援 活 動 が 目 立 っ て い る 。 演 劇 関 係 の 代 表的 な も の を あ げ る と 、 財 団 法 人 「 キ リ ン福 祉 財 団 」 ( 設 立 1981年 ・ 昭 和 5 6 年 ) が ある 。設 立 趣 旨 と 目 的 は 「 障 害 者 お よ び 高 齢 者の 福 祉 な ら び に 青 少 年 の 健 全 育 成 」 に 関す る 諸 活 動 の 中 で 、 福 祉 行 政 の 手 の 届 きに く い 分 野 へ の 援 助 を 行 い 、 民 間 財 団 とし て わ が 国 の 社 会 福 祉 の 発 展 に 寄 与 す るこ と を 目 的 と し て い ま す 。 」 と う た っ てい る 。事 業 内 容 は 多 様 で あ る が 、「 キ リ ン カ ッ プ 少 年 サ ッ カ ー 」「 キ リ ン 賞 吹 奏 楽 コ ン テ ス ト の 開 催 」「 キ リ ン フ ァ ミ リ ー オ ペ レ ッ タ ( 子 ど もた ち に よ る 小 歌 劇 の 公 演 ) の 開 催 」「 キ リ ン 表 現 活 動 フ ェ ス テ ィ バ ル の 開

催 」な ど が 行 わ れ て い る 。  「 キ リ ン 表 現 活 動 フ ェ ス テ ィ バ ル 」 はド ラ マ 教 育 を 厚 生 労 働 省 の 管 轄 下 の 児 童館 の 中 に 持 ち 込 ん だ 画 期 的 な 事 業 で あ ると 評 価 で き る 。 フ ェ ス テ ィ バ ル に 参 加 した の は 、 教 員 養 成 大 学 の 教 員 と 学 生 で あり 、 い ろ い ろ な 演 劇 教 育 の 手 法 を 試 み た 。ド ラ マ ・ ゲ ー ム 、 基 礎 演 技 遊 び 、 参 加 劇 、リ ー デ ィ ン グ ・ シ ア タ ー 、 討 論 劇 、 総 合表 現 作 品 な ど 多 様 な presentationが 展 開 さ れ た 。児 童 館 に 集 ま る 子 ど も は 幼 児 か ら 中 学 生低 学 年 ま で 幅 が 広 い た め 、 よ り 多 く の 子ど も の ニ ー ズ に 合 わ せ ら れ る よ う 各 大 学は 工 夫 を 重 ね た 。 ま た 1990年 代 に 参 加 す るよ う に な っ た コ ミ ュ ニ テ ィ ・ シ ア タ ー や児 童 劇 団 も 大 学 が 開 発 し た ド ラ マ ・ イン ・ エ デ ュ ケ ー シ ョ ン の 手 法 等 に 啓 発 され て 従 来 の 上 演 主 義 か ら 新 し い 路 線 を 開拓 す る よ う に な っ た 。 今 日 、 か な り の 数の 児 童 劇 団 が シ ア タ ー ・ イ ン ・ エ デ ュ ケー シ ョ ン と し て の プ ロ グ ラ ム を 開 発 し 、教 育 に 密 着 し た 活 動 を 行 う よ う に な っ た

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キ ッ カ ケ は こ の フ ェ ス テ ィ バ ル に あ っ たと 思 わ れ る 。

2-2-4地 方 の 行 政 が 単 独 で 行 っ

て い る も の   東 京 都 の 行 政 大 綱 「 文 化 創 造 発 展 の 環境 を つ く る 」 を 引 用 し て 紹 介 し よ う 。 東京 都 の 文 化 芸 術 に 関 す る 行 政 は 、 学 校 教育 よ り 生 涯 教 育 的 な 色 彩 が 強 い 。 し た がっ て 教 員 の 参 加 が 多 く 、 彼 ら は 資 質 能 力の 向 上 の た め の 研 修 と し て 活 用 し て い ると 聞 く 。 プ ロ グ ラ ム は 多 様 で あ り 、 ほ とん ど の ニ ー ズ に 対 応 し て い る 。 目 標 3 の取 組 10 は 地 道 な 成 果 を 上 げ つ つ あ る 。 美術 館 、 博 物 館 、 コ ン サ ー ト ・ ホ ー ル 、 自然 公 園 、 交 通 博 物 館 な ど で も 積 極 的 に 子ど も と の 関 わ り 方 を 研 究 し 、 展 示 か ら ドラ マ 教 育 に 似 た 手 法 ま で を 駆 使 し て 教 育と の 連 携 を 目 指 し て い る 。【 目 標 1 】 芸 術 創 造 に か か わ る 人 材 を 育む〔 取 組 1〕 〕 芸 術 が 育 ま れ 、 発 信 で き る 環境 を つ く る

○  コ ン ク ー ル の 開 催 に 奨 学 金 の 給 付 、発 表 作 品 の 買 い 上 げ 、 セ ミ ナ ー 研 修な ど 多 様 な メ ニ ュ ー を 組 合 わ せ 、 コン ク ー ル を 魅 力 的 で 評 価 の 高 い も のに す る 。

○  公 共 未 利 用 地 等 の 暫 定 使 用 と し て 、一 定 の 土 地 を 期 間 を 限 っ て 、 芸 術 家や 芸 術 団 体 に 芸 術 創 造 の た め の 実 験ス ペ ー ス と し て 有 償 で 提 供 す る 。

○  芸 術 家 や 文 化 団 体 な ど の 公 益 活 動 によ る 収 益 に 対 す る 税 の 優 遇 措 置 の 拡 充 を促 す 。

〔 取 組 2〕 〕 芸 術 と 市 民 を つ な ぐ 人 材 を 育成 し 、 そ の 活 動 の 場 を 広 げ る

○  展 示 ・ 教 育 普 及 活 動 ・ 研 究 分 野 等 にお い て 実 績 を あ げ た 学 芸 員 に 対 し 、上 級 学 芸 員 の 資 格 を 付 与 す る 資 格 制度 を 検 討 す る 。

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○  高 等 教 育 機 関 や 社 会 教 育 機 関 等 の アー ツ ア ド ミ ニ ス ト レ ー タ ー 養 成 講 座を 充 実 し 、 文 化 施 設 等 は 実 地 訓 練 の場 を 提 供 す る 。

【 目 標 2 】 伝 統 文 化 を 継 承 し 、 次 代 に 向け て 発 展 さ せ る〔 取 組 3〕 〕 文 化 財 を 保 存 し 、 公 開 す る

○  保 存 と 活 用 と の 調 和 を 図 り な が ら 、「 東 京 文 化 財 ウ ィ ー ク 」 の 拡 充 な ど実 物 の 公 開 を 進 め る と と も に 、 文 化財 の 情 報 提 供 サ ー ビ ス 等 を 充 実 す る 。

〔 取 組 4〕 〕 歴 史 的 な 建 造 物 を 保 存 し 活 用す る

○  歴 史 的 建 造 物 の 現 地 保 存 の た め 、 専門 的 技 術 を 持 っ た ボ ラ ン テ ィ ア に よる 補 修 、 都 市 計 画 的 手 法 に よ る 支 援体 制 を 検 討 す る

〔 取 組 5〕 〕 伝 統 芸 能 を 継 承 し 、 発 展 さ せて い く

○  海 外 の フ ェ ス テ ィ バ ル へ の 参 加 や 、海 外 諸 都 市 へ の 巡 回 公 演 へ の 助 成 など 、 幅 広 い 分 野 の 伝 統 芸 能 を 積 極 的に 海 外 に 紹 介 す る 。

〔 取 組 6〕 〕 民 俗 芸 能 を 掘 り 起 こ し 、 継 承 、発 展 さ せ て い く

○  地 域 の 民 俗 芸 能 や 行 事 の 「 掘 り お こし 」 を 進 め 、 青 少 年 を は じ め 地 域 住民 が 民 俗 行 事 を 理 解 し 、 参 加 で き る活 動 を 進 め て い く 。

〔 取 組 7〕 〕 伝 統 工 芸 技 術 を 継 承 し 、 発 展さ せ る

○  江 戸 象 牙 や 東 京 三 味 線 な ど 希 少 な 伝統 工 芸 材 料 の 入 手 に 伴 う 制 約 を 克 服す る た め の 対 策 を 進 め る 。

【 目 標 3 】 都 民 の 文 化 創 造 と 芸 術 文 化 に親 し む 機 会 の 拡 充 を 図 る〔 取 組 8〕 〕 都 民 の 創 造 活 動 を 支 援 す る

○  広 範 な 関 係 者 の 連 携 の 下 に 低 廉 な 指導 料 で 指 導 を 引 き 受 け る 芸 術 家 を 登録 し 、 指 導 者 と し て ア マ チ ュ ア の 文

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化 団 体 に 派 遣 す る 体 制 を 整 え る 。○  区 市 町 村 の 文 化 施 設 、 低 廉 な 民 間 施設 等 の 練 習 施 設 や 発 表 す る 場 所 に 関す る ネ ッ ト ワ ー ク を つ く り 、 幅 広 い相 互 利 用 を 進 め る 。

○  文 化 施 設 と ボ ラ ン テ ィ ア が 協 力 し て施 設 を 運 営 す る 体 制 を つ く る ほ か 、ボ ラ ン テ ィ ア の 活 動 を 広 げ る た め に必 要 な 研 修 等 を 充 実 す る 。

○  自 主 的 な 公 演 を 行 う ボ ラ ン テ ィ ア 団体 に 発 表 の 機 会 を 提 供 し 、 ボ ラ ン ティ ア 受 入 施 設 と の 仲 介 機 能 を 果 た すボ ラ ン テ ィ ア バ ン ク を つ く る 。

〔 取 組 9〕 〕 都 民 や 訪 都 者 が 芸 術 文 化 鑑 賞を 楽 し む 機 会 を 拡 充 す る

○  学 生 、 高 齢 者 、 家 族 な ど を 対 象 と した 各 種 割 引 制 度 や 施 設 共 同 割 引 利 用券 等 の 制 度 を 整 え る と と も に 、 立 見席 な ど の 低 廉 な 席 を 増 や す 。

○  解 説 付 き 公 演 、 ワ ー ク シ ョ ッ プ 、 出張 公 演 、 広 場 な ど で の プ レ 公 演 な ど新 し い 観 客 層 に 働 き か け 、 ひ き つ ける プ ロ グ ラ ム を 増 や す 。

○  フ ァ ッ ク ス 、 パ ソ コ ン 、 イ ン タ ー ネッ ト 等 、 様 々 な メ デ ィ ア を 活 用 し 、都 民 が 身 近 に 利 用 で き る 文 化 情 報 を整 備 す る 。

〔 取 組 10 〕 〕 鑑 賞 眼 を 持 っ た 鑑 賞 者 を 増や す

○  文 化 施 設 と 芸 術 家 、 芸 術 文 化 団 体 が連 携 し て リ ハ ー サ ル や 制 作 過 程 の 公開 な ど の 機 会 を 増 や し 、 芸 術 家 と 鑑賞 者 の 接 点 を 広 げ る 。

○ 美 術 館 、 博 物 館 で は 、 楽 し みな が ら 学 ぶ こ と が で き る 「 子ど も 専 用 室 」 を 設 け 、 子 ど もた ち の 好 奇 心 に 応 え る 専 門 の指 導 員 を 置 く 。

2-2-5. 企 業 と し て の 児 童 劇 団

が 行 っ て い る も の   既 に 述 べ た よ う に 、 日 本 の 児 童 演 劇 は

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長 い 歴 史 を 持 ち 、 多 彩 な 活 動 を 続 け て いる 。 児 童 演 劇 団 が 全 国 組 織 を 作 っ て か ら今 年 で 42 年 に な る 。 組 織 は 関 東 地 区 の「 日 本 児 童 演 劇 劇 団 協 議 会 」 と 関 西 の「 全 国 児 童 ・ 青 少 年 演 劇 協 議 会 」 の 二 つに 分 か れ て い る 。 前 者 の 組 織 に は 66 劇 団が 所 属 し 、 後 者 の 組 織 に は 52 劇 団 が 所 属し て い る 。 両 方 の 組 織 に ま た が っ て 所 属し て い る 劇 団 が あ る の で 、 2000年 現 在 の 統計 で は 93 劇 団 が 存 在 す る 。  ち な み に 2002年 、 日 本 演 劇 教 育 連 盟 発 行の 「 演 劇 と 教 育 」 の 5 月 号 に よ れ ば 、 同紙 の ア ン ケ ー ト に 答 え て 104 の 児 童 劇 団 と46 の 人 形 劇 ・ 影 絵 劇 団 が 約 600 の 上 演 作 品を 準 備 し 、 全 国 公 演 を 行 っ て い る と い う 。も ち ろ ん こ う い う 組 織 に 所 属 す る の を 嫌っ て 独 自 に 活 動 を 続 け て い る 劇 団 が 多 数あ る の で 、 お そ ら く 少 な く と も 200 近 い 劇団 が 全 国 の 学 校 、 児 童 館 、 文 化 セ ン タ ー 、劇 場 な ど を 一 年 中 巡 回 公 演 し て い る こ とに な ろ う 。  日 本 児 童 演 劇 協 会 の 集 計 に よ る と 1995年の 所 属 児 童 劇 団 は 90 強 、 全 劇 団 の 上 演 会場 16,600 、 上 演 回 数 23,500 、 動 員 観 客 数10,933,000 人 と な っ て い る 。 1980年 代 初 頭 には 、 多 く の 劇 団 が 学 校 や ホ ー ル で 児 童 向け の 演 劇 を 上 演 す る に 過 ぎ な か っ た 。 もち ろ ん 上 演 後 の 児 童 と の 対 話 や 演 技 指 導な ど を 行 っ て い た が 、 80 年 代 後 半 か ら 教育 現 場 で の 諸 課 題 「 い じ め 」 、 「 不 登校 」 、 「 環 境 問 題 」 、 「 性 」 、 「 国 際化 」 な ど を テ ー マ と し た ド ラ マ を 上 演 する 風 潮 が 生 ま れ た 。 教 員 と の 事 前 の 連 携を 深 め る だ け で な く 、 上 演 中 に 俳 優 と 子ど も が デ ィ ス カ ッ シ ョ ン し た り 、 児 童 が役 を 与 え ら れ て シ ー ン に 参 加 し た り 、 終演 後 演 出 家 や 俳 優 と 子 ど も が デ ィ ス カ ッシ ョ ン し た り な ど TIE の 活 動 に 近 い 形 態 を導 入 す る 劇 団 が 増 加 し た 。 も ち ろ ん 鑑 賞を 中 心 と す る 劇 団 も 健 在 で あ り 、 芸 術 とし て の 演 劇 を 上 演 す る 劇 団 と の 実 力 の 差は ほ と ん ど な く な っ た と 言 え よ う 。

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特 筆 す べ き は 、 1996 年 か ら 文 化 庁 の10,000,000 円 の 助 成 金 を 獲 得 し 、 日 本 の 離 島を 巡 回 公 演 す る 事 業 を 開 始 し た 。 2001年 は離 島 の 60 の 学 校 を 巡 回 し 、 5003人 の 児 童 や保 護 者 が 鑑 賞 し た 。 こ の 事 業 は 年 々 拡 大し 、 今 年 は 100 校 以 上 を 巡 回 す る 予 定 だ とい わ れ て い る 。

Ⅲ WHO AND HOW SUPPORT DRAMA/THEATRE IN EDUCATIONⅢ-1 Endowments For Drama/Theatre in Education Teacher  こ れ ま で 日 本 の 演 劇 教 育 を 開 拓 し て きた リ ー ダ ー た ち は 大 き く 3 つ の 出 自 が 鮮明 に な る 。①プ ロ フ ェ ッ シ ョ ナ ル ・ シ ア タ ー か ら 演 劇教 育 を 指 向 し た 人 た ち    小 山 内 薫②学 校 劇 ・ 児 童 劇 ・ 青 少 年 演 劇 か ら 演 劇 教育 を 指 向 し た 人 た ち

    玉 川 大 学 、 成 城 大 学 、 児 童 演 劇 関 係者③教 育 か ら 演 劇 教 育 を 指 向 し た 人 た ち    岡 田   陽    日 本 演 劇 教 育 連 盟 関 係 者    カ ナ ダ ・ ト ロ ン ト 大 学 大 学 院 生   宮本 健 太 郎 の 例  第 1 の グ ル ー プ は 、 演 劇 学 者 、 演 出 家が 多 か っ た 。 演 劇 学 者 と い っ て も 演 劇 史 、演 劇 美 学 や 戯 曲 論 ・ ド ラ マ ツ ル ギ ー を 研究 し て い る 学 者 で な く 、 日 頃 演 出 や 俳 優養 成 に も 積 極 的 に 参 加 し て い る 学 者 た ちで あ る 。 演 劇 教 育 の 研 究 に 献 身 す る よ うに な っ た 動 機 は 、 教 師 た ち の 演 劇 指 導 を頼 ま れ 、 教 師 が 演 劇 に 対 す る 理 解 と 指 導力 が い か に 貧 弱 で あ る か 知 っ た か ら で あろ う 。 ま た そ う い う 教 師 た ち が 指 導 す る子 ど も の 劇 を 見 て 、 学 校 で 行 わ れ る 演 劇を 改 良 し た い と 考 え た か ら に 違 い な い 。  日 本 の 教 員 養 成 大 学 に は 演 劇 教 育 の 学科 は な い 。 一 般 教 育 で 演 劇 概 論 、 戯 曲 論 、演 劇 史 を 教 え る ス タ ッ フ が 少 数 い る 。 国

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語 教 育 を 教 え る ス タ ッ フ や 外 国 語 を 教 える ス タ ッ フ の 中 に は 戯 曲 論 、 作 家 論 を 研究 し て い る ス タ ッ フ が 多 く 、 彼 ら は 教 養と し て の 演 劇 に つ い て 概 説 し 、 時 に は 大変 高 度 な 作 家 論 や ド ラ マ ツ ル ギ ー を 講 じて い る 。 し か し 演 劇 教 育 を 教 え る こ と がで き る ス タ ッ フ は ほ と ん ど い な い 。 し たが っ て 小 学 校 、 中 学 校 、 高 等 学 校 で 課 外活 動 と し て 演 劇 を 担 当 し て い る 教 員 は 、学 生 時 代 に 演 劇 部 で 演 劇 上 演 を 体 験 し た学 生 、 そ し て 講 義 の 中 で 高 度 な 作 家 論 や戯 曲 論 を 受 講 し た 人 た ち が 多 い 。 彼 ら の頭 の 中 に あ る の は 、 高 度 に 完 成 さ れ た 芸術 作 品 の イ メ ー ジ で あ り 、 そ れ を 劇 上 演活 動 で 実 現 し た い と 考 え て い る 。  俳 優 養 成 を し た 人 、 俳 優 養 成 の プ ロ グラ ム を 受 け 、 俳 優 と し て 経 験 を つ ん だ 人は 以 下 の こ と を 理 解 し て い る だ ろ う 。1. 感 性 の 使 い 方 ( 集 中 の 作 り 方 、 シ ン ボ ルの 作 り 方 と 使 い 方 、 ifの 重 要 性 、 信 頼 を 構築 す る 方 法 、 想 像 力 の 使 い 方 )2. 身 体 の 使 い 方 ま た は コ ン ト ロ ー ル す る方 法 ( 無 対 象 行 動 、 筋 肉 の 緊 張 を 解 放 す る仕 方 、 仕 事 の 重 要 性 )3. 声 の 使 い 方 ( 発 音 、 声 の 機 能 、 呼 吸 の 仕方 、 声 の 出 し 方 )  ま た 演 出 を 学 び 、 演 出 家 と し て 経 験 をつ ん だ 人 は 次 の こ と を 理 解 し て い る だ ろう 。1. 焦 点 の 作 り 方2. 参 加 者 全 体 の 集 中 の 作 り 方3. 人 物 の 分 析 の 仕 方 、 劇 的 状 況 の 構 築 法4. ど ん な 資 料 、 材 料 が 不 足 し て い る か5. 基 本 的 な シ ア タ ー ・ ス キ ル6. 基 本 的 な 演 技 ト レ ー ニ ン グ 法7. 小 道 具 、 衣 装 、 舞 台 装 置 の 使 い 方  し か し 職 業 俳 優 ・ 演 出 家 ・ 俳 優 養 成 にた ず さ わ る 人 が ド ラ マ 教 師 と し て の 資 質を 持 っ て い る と は 限 ら な い 。彼 ら が 確 固 た る 教 育 哲 学 を 持 っ て い る か 、

子 ど も の 発 達 段 階 を 知 っ て い る か 、 教 育課 程 の 意 義 を 理 解 し て い る か 、 独 立 し た

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教 科 の 教 育 目 標 を 把 握 し て い る か 、 ド ラマ が 誕 生 し た 社 会 的 ・ 教 育 的 背 景 を 理 解し て い る か 、 ド ラ マ 教 育 の 意 義 と そ の 重要 性 を 理 解 し て い る か 、 基 本 的 な 教 科 指導 法 を 知 っ て い る か 、 ド ラ マ の 教 育 機 能と 教 材 開 発 や カ リ キ ュ ラ ム 開 発 の 知 的 スキ ル が あ る か 、 教 育 に 対 す る 情 熱 が あ るか 、 子 ど も と 対 話 し 新 し い 発 見 が 出 来 るよ う に 指 導 で き る か 、 公 平 に 子 ど も と 接す る こ と が 出 来 る か 、 教 師 と し て 自 己 開発 す る 情 熱 が あ る か 、 目 標 の 設 定 ・ 学 習計 画 の ス ケ ジ ュ ー ル を 立 案 し 授 業 時 間 ( 年間 33 週 ) を 有 効 に 使 え る か 、 授 業 評 価 の 方法 を も っ て い る か 、 教 員 組 織 の 中 で 積 極的 に 発 言 し 自 分 の 仕 事 を 遂 行 す る 能 力 があ る か な ど が 求 め ら れ る 。  こ う 考 え る と 、 普 通 の 俳 優 や 演 出 家 では ド ラ マ 教 育 を 担 当 出 来 な い こ と は 明 らか で あ る 。 普 通 の 俳 優 や 演 出 家 を 教 員 養成 の 課 程 に 入 学 さ せ て ト レ ー ニ ン グ す るこ と は ま ず 不 可 能 で あ ろ う 。そ れ と 同 じ よ う に 、 普 通 の 教 員 を ド ラ マの 教 師 に 改 造 す る こ と は 不 可 能 な の で ある 。 両 者 が 互 い に 指 導 上 の 知 識 ・ 技 能 に不 足 す る 部 分 が あ る な ら 、 補 完 し あ う こと が 最 善 で あ る 。 そ の た め の シ ス テ ム をだ れ が 、 ど の よ う に 作 る か が 問 わ れ て いる の で あ る 。 イ ン タ ー ン シ ッ プ と い う 言葉 が 日 本 で は 流 行 し て い る 。 イ ン タ ー ンシ ッ プ と し て 進 め れ ば 経 済 的 な 問 題 や 教育 上 の 保 証 は 得 ら れ る で あ ろ う が 、 評 価を 厳 格 に し な け れ ば な る ま い 。

児 童 劇 青 少 年 演 劇 か ら 演 劇

教 育 を 指 向 し た 人 た ち   こ の ジ ャ ン ル の 人 は 両 方 の 資 質 能 力 を部 分 的 に 持 っ て い る 場 合 が 多 い 。 し か しそ の 資 質 能 力 は 両 方 の 分 野 で 必 ず し も 完全 で な い か ら 、 Ⅰ の 場 合 と 同 じ よ う に かな り の ト レ ー ニ ン グ が 必 要 と な ろ う 。 各人 は そ れ ぞ れ 固 有 の 演 劇 的 経 験 と 演 劇 観を 持 ち 、 子 ど も 観 を も っ て い る 。 な ぜ な

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ら 日 本 に お い て は 、 前 に 述 べ た よ う に 児童 劇 ・ 青 少 年 劇 団 は 年 間 膨 大 な 上 演 活 動を し て い る こ と か ら 、 特 定 の 演 劇 創 造 方法 、 演 技 ア ン サ ン ブ ル 、 演 出 理 論 に も とづ い て 活 動 し て い る 傾 向 が 強 い 。 同 様 に劇 場 や 上 演 会 場 へ 集 ま っ た 子 ど も の 姿 は知 っ て い る が 、 彼 ら の 日 常 に 接 し た 経 験は 少 な い 。

教 育 か ら 演 劇 教 育 を 指 向 し

た 人 た ち   ド ラ マ 教 育 に お い て は 最 も 重 要 な 人 材で あ る 。 な ぜ な ら 彼 ら は 教 育 と は 何 で あり 、 カ リ キ ュ ラ ム を 理 解 し 、 子 ど も の 学習 段 階 を 知 っ て い る は ず だ か ら で あ る 。い や 知 っ て い な け れ ば な ら な い 人 だ か らで あ る 。 私 は 彼 ら を 私 の 教 師 に 選 び 、 彼ら の 評 価 や 指 導 を 仰 ぐ こ と に し て い る 。し か し 私 が あ っ た 日 本 の 教 師 は 、 既 定 の教 育 観 や 枠 組 み に と ら わ れ て い る 場 合 が多 い 。 非 常 に 教 条 的 で あ り 、 柔 軟 性 に 欠け て い る 。 忙 し が り 過 ぎ る 。 社 会 観 が 狭く 、 自 分 の 世 界 か ら の み 判 断 し て い る こと に 気 づ か な い 。 そ れ に も ま し て 頑 迷 であ り 、 自 己 開 発 力 に 欠 け て い る 。  教 師 の 中 に は 頻 繁 に ワ ー ク シ ョ ッ プ に参 加 す る 人 が い る 。 資 質 向 上 の た め に は大 変 有 益 な こ と で あ る 。 し か し 何 を 学 んで い る の か 、 経 験 し て い る の か 確 認 す る必 要 が あ る 。 ワ ー ク シ ョ ッ プ は 学 校 教 育の カ リ キ ュ ラ ム ほ ど 相 対 的 な 計 画 を 持 って い な い 。 ま た 達 成 目 標 を 設 定 し て い るわ け で は な い 。 ワ ー ク シ ョ ッ プ の テ ー マが 受 講 者 の 関 心 を 引 い た と し て も 、 必 ずし も 受 講 者 が 求 め て い る も の を 提 供 し てい る と は 限 ら な い 。 例 え ば 「 呼 吸 法 」 、「 筋 肉 の 解 放 」 、 「 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョン ・ ス キ ル 」 な ど と い う テ ー マ は 一 日 のワ ー ク シ ョ ッ プ で 獲 得 で き る 技 術 や 知 識で は な い 。 例 え ば 「 呼 吸 法 」 は ト レ ー ナー に よ っ て そ の 技 術 が 違 う 。 何 よ り も 診断 的 な ト レ ー ニ ン グ な の か 、 技 術 を 体 得

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さ せ る た め の ト レ ー ニ ン グ な の か 、 た った 一 日 で 呼 吸 法 が 会 得 で き る と 考 え て 参加 し て い る の か な ど 多 く の 疑 問 が 残 る 。私 は ワ ー ク シ ョ ッ プ を 否 定 す る も の で はな い 。 ワ ー ク シ ョ ッ プ を 選 択 す る 側 が 自己 教 育 と し て の プ ロ グ ラ ム を き ち ん と もっ て 参 加 す る こ と の 必 要 性 と 学 ん だ 知 識や 技 術 の レ ベ ル を 冷 静 に 判 断 す る 必 要 性を 説 い て い る に 過 ぎ な い 。  学 校 教 育 は 、 教 育 計 画 が き ち ん と 立 てら れ 、 教 育 目 標 が 設 定 さ れ て い る 、 そ して 達 成 度 の 評 価 が 与 え て く れ る 。 多 く のワ ー ク シ ョ ッ プ は 単 発 的 で あ り 、 限 定 され た テ ー マ で 行 わ れ る 。 そ の テ ー マ に 関す る 専 門 家 が 行 う の で あ る か ら 、 理 論 と理 論 を 駆 使 し て 行 う 活 動 の 結 果 、 理 論 を実 感 で き る 。 だ か ら と い っ て そ の ス キ ルを マ ス タ ー し た こ と に な ら な い 。 学 校 教育 の 中 の 授 業 は 応 用 が で き る と こ ろ ま で学 ぶ こ と を 理 想 と し て い る 。 教 科 指 導 法な ど は ま さ に そ の 典 型 的 な 授 業 で あ る 。

Ⅲ-2 What We Can Do For Teacher-Training  台 湾 の 大 学 設 置 基 準 法 で は 卒 業 基 準 単位 を * * * 単 位 と 定 め て い る と 聞 く 。 教員 養 成 大 学 で 幼 少 の 教 員 免 許 を 取 得 す るの に 必 要 な 単 位 数 は * * * 単 位 で あ る 。こ の 単 位 の 数 を 変 更 し た り 、 授 業 科 目 を変 更 す る の は 手 続 き や 承 認 を 得 な け れ ばな ら な い か ら 用 意 で は な い 。 し か し あ る授 業 科 目 を 集 中 講 義 の 形 式 に 変 更 し た り 、イ ン タ ー ン シ ッ プ の 形 式 の 授 業 に 変 更 する の は そ う 難 し い こ と で は な い 。  こ の よ う な 観 点 に 立 っ て 次 の こ と を 提案 し た い 。

① 1 年 生 は 子 供 た ち に 見 せ る 劇 を 作 成す る 。 劇 の 長 さ は 30 分 以 内 と し 、 子 供た ち が か か え て い る 今 日 的 な 問 題 を テー マ に し た 劇 と す る 。 も ち ろ ん 上 演 形態 は 演 劇 、 人 形 劇 、 影 絵 劇 、 リ ー デ ィン グ ・ シ ア タ ー 、 ミ ュ ー ジ カ ル な ど いろ い ろ な 上 演 形 式 が あ っ て 良 い 。 上 演

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は 上 級 生 が 教 育 実 習 に 出 か け て い る 期間 と し 、 国 内 の 学 校 ま た は 児 童 館 を 訪問 し 、 最 低 5 会 場 以 上 を 巡 回 す る も のと す る 。 こ の 劇 は ド ラ マ の 基 本 的 な 指導 を 実 践 す る の で は な く 、 自 ら の 表 現力 を 高 め る こ と と 、 子 供 た ち と の 交 流を 通 し て 劇 の 魅 力 を 体 験 す る こ と に ある 。

② 2 年 生 と 3 年 生 は ド ラ マ の 授 業 の 指導 案 を 作 り 、 グ ル ー プ で 学 校 を 訪 問 し 、ド ラ マ の 授 業 を 体 験 す る 。 春 か ら 訪 問校 と 交 渉 し 、 先 方 の 授 業 計 画 や 内 容 を吟 味 し 、 事 前 の 打 ち 合 わ せ を 十 分 に した 上 で 訪 問 す る 。 少 な く と も 3 回 の 授業 を 体 験 し た い 。 数 人 の 学 生 が チ ー ムテ ィ ー チ ン グ で 一 つ の 授 業 を 作 り 上 げて み る 。 大 学 の 夏 休 み 期 間 が い い だ ろう 。

③ 4 年 生 は コ ミ ュ ニ テ ィ ・ シ ア タ ー また は 児 童 劇 団 の メ ン バ ー と し て 劇 団 活動 に 参 加 し て み る 。 こ れ は ボ ラ ン テ ィア 活 動 と し て も 、 あ る 授 業 の イ ン タ ーン シ ッ プ の 一 形 態 と し て 運 用 さ れ て もよ い だ ろ う 。

  こ の よ う な 授 業 形 式 は 決 し て 不 可 能 では な い 。 私 の 学 生 時 代 、 演 劇 ク ラ ブ は 毎年 夏 休 み に 全 国 の 幼 稚 園 や 小 学 校 を 巡 回す る こ と が 恒 例 に な っ て い た 。 最 低 、 15校 を 訪 問 し 、 影 絵 、 ワ ー ク シ ョ ッ プ 、 演劇 の 上 演 を ワ ン セ ッ ト で 行 っ て い た 。 これ は 授 業 で は な く 、 サ ー ク ル の ボ ラ ン ティ ア 活 動 で あ っ た が 、 子 ど も た ち と 接 する 素 晴 ら し い 機 会 で あ っ た 。 全 員 が 作 業を 担 当 す る こ と か ら シ ア タ ー ・ ス キ ル に強 く な り 、 ま た 教 員 と の 交 流 で 多 く の こと を 教 え ら れ た 。 宿 泊 は 寺 、 学 校 内 の 空き 室 、 公 民 館 、 民 家 な ど で 決 し て 快 適 な旅 行 で は な い が 、 充 実 し た 2 週 間 で あ った 。  こ の よ う な 体 験 か ら 、 大 学 の 授 業 と して 運 営 さ れ れ ば も っ と 効 率 的 に な る と 確

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信 し て い る 。

Ⅲ-3 Traditional Culture and Identity of Drama /Theatre in Education: Teachers  次 の よ う な 研 修 を 考 え る こ と は 可 能 であ ろ う 。

① 教 員 の 劇 団 を 作 り 、 上 演 活 動 を 行 う 。② コ ミ ュ ニ テ ィ ・ シ ア タ ー へ 参 加 す る 。③ 大 学 ま た は 学 会 が 独 自 の プ ロ グ ラ ムを 作 成 し 、 修 了 証 書 を だ す 。

④ 教 員 の 朗 読 の 会 を 作 る 。⑤ ド ラ マ 教 育 を 担 当 す る 教 員 の 連 絡 会を 作 る 。 機 関 誌 を 発 行 す る 。 教 材 研 究 、指 導 法 の 開 発 、 教 材 研 究 な ど を 掲 載 し 、知 識 ・ 経 験 ・ 研 究 を 共 有 す る 。

⑥ 授 業 の 公 開 性 を 高 め 、 保 護 者 、 地 域の 人 た ち 、 教 育 関 係 者 、 教 員 に 積 極 的に 公 開 す る 。

⑦ 演 劇 教 育 学 会 を 創 設 す る 。

  教 員 養 成 と 教 員 研 修 の 中 で 忘 れ て は なら な い テ ー マ が 一 つ あ る と 思 う 。 そ れ はそ の 国 固 有 の 文 化 と 芸 術 で あ ろ う 。 世 界が グ ロ ー バ ル 化 し 、 す べ て の 文 化 が 発 信さ れ 、 受 信 さ れ る 時 代 に な っ て き て い るが 教 育 や 舞 台 芸 術 は 人 間 同 士 の 交 流 が なけ れ ば 理 解 で き な い 側 面 を も っ て い る 。サ テ ラ イ ト を 使 っ た 授 業 を 経 験 し た が 、知 識 や も の の 考 え 方 を 伝 え る こ と は 出 来た が 、 教 員 、 つ ま り 私 の 感 性 や 研 究 の 美学 は 伝 え る こ と は 不 可 能 で あ る よ う に 思わ れ る 。 教 育 や 舞 台 芸 術 に は そ の よ う な側 面 が 重 要 で あ る こ と は 多 く の 人 が 理 解し て い る 。 教 員 の 感 性 や 学 び の 美 学 は どこ に あ る の だ ろ う か 。 お そ ら く 彼 、 ま たは 彼 女 の 育 っ て き た 文 化 の 中 に あ る に 違い な い 。  私 は 学 生 の 頃 か ら 、 欧 米 の 演 劇 に あ こが れ て き た 。 ギ リ シ ャ 悲 劇 は 最 高 に 難 解で あ っ た 。 し か し 先 輩 の 研 究 者 た ち は 絶賛 し た 。 こ の 意 味 を 解 明 す る た め に 、 演出 家 と し て 4 本 の ギ リ シ ャ 悲 劇 を 上 演 し

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た 。 確 か に 上 演 は 戯 曲 を 読 む よ り 説 得 力を 持 っ て い た と 評 価 さ れ た 。 し か し 依 然と し て な ぜ 紀 元 前 7 世 紀 の ギ リ シ ャ 人 があ の よ う な 詩 を 上 演 し 続 け た の か 、 彼 らの 心 や 彼 ら の 感 性 が 理 解 で き な か っ た 。そ れ か ら ギ リ シ ャ の 旅 が は じ ま っ た 。  学 生 時 代 の 僕 に と っ て Shakespeare は 退 屈な 劇 で あ っ た 。 青 年 の 僕 に と っ て は 日 常性 に 欠 け 、 し た が っ て リ ア リ テ ィ に 欠 けた 演 劇 で あ り 、 あ ま り に 饒 舌 で あ っ た 。 T. S. Eliot の 作 品 は は 知 的 な 遊 戯 で あ り 、 J. Osborne の 作 品 は ヒ ス テ リ ー を こ と ば で 正 当化 し て い る よ う に 見 え て な ら な か っ た 。シ ラ ー は 叙 事 詩 作 家 に 過 ぎ な か っ た 。 しか し こ れ ら の 作 家 に あ こ が れ た 。 私 に ない 何 か が あ る と 感 じ た か ら で あ る 。 そ して 日 本 人 に 分 か る 演 劇 と し て 上 演 し た かっ た か ら で あ る 。  無 人 の デ ィ オ ニ ソ ス 劇 場 や Epidauros 劇 場や Delfi の 劇 場 の 椅 子 に 終 日 座 っ て ア イ ス キュ ロ ス 、 ソ フ ォ ク レ ス 、 エ ウ リ ピ デ ス の詩 を 繰 り 返 し 思 い 起 こ し て み る 。 私 の 幻想 は 紀 元 前 7 世 紀 に 飛 ぼ う と す る が い つも 力 つ き て し ま う 。 あ る 年 、 あ る 日 、 つい に 詩 人 が 語 り か け て き た 。 ギ リ シ ャ の演 劇 は 、 復 讐 の 演 劇 で あ る と 。 プ ロ メ テウ ス を 吊 し た 神 々 の 怒 り の 感 情 、 ク リ ュウ タ イ メ ー ス ト ラ の 夫 殺 し と 死 の 世 界 から の 復 讐 は 古 代 ギ リ シ ャ の 人 々 に と っ てリ ア リ テ ィ が あ っ た に 違 い な い 。 今 日 、世 界 は 復 讐 を も と め る 情 念 の 凄 さ を 私 たち は 身 を も っ て 体 験 し て い る 。  他 方 、 忘 れ ら れ て し ま っ た 偉 業 が あ る 。ド イ ツ の 小 さ な マ イ ニ ン ゲ ン 市 ( 人 口 50,000人 ) の 劇 団 の 演 劇 改 革 で あ る 。 今 か ら 1 00 年 前 、 Georg Ⅱ 世 は Meiningen Theatre を 創 立 し 、自 ら 演 出 を し た 。 約 20 年 に わ た っ て ヨ ーロ ッ パ を 巡 回 し 、 近 代 演 出 の 確 立 に 大 きな 影 響 を 及 ぼ し た 。 彼 の 演 出 の 証 と し て残 さ れ た 舞 台 装 置 図 、 バ ッ ク ド ロ ッ プ 、小 道 具 、 衣 装 な ど は マ イ ニ ン ゲ ン 市 の 演劇 博 物 館 に 所 蔵 さ れ て い る 。 し か し 街 の

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人 た ち は 、 公 国 の 君 主 と し て の GeorgⅡは 知っ て い て も 、 演 出 家 と し て の 彼 を 知 ら ない 。 彼 が 建 築 し た 劇 場 は 1905年 の 大 火 で 消失 し た が 、 同 じ 場 所 に 同 じ サ イ ズ で 再 建さ れ て い る 。 Meiningen Theatre も 健 在 で あ り 、ロ ン ド ン や ニ ュ ー ヨ ー ク で 有 名 に な っ た作 品 を 上 演 す る こ と も あ る が 、 シ ラ ー やド イ ツ 近 代 劇 を も 上 演 す る 。 何 よ り も オペ ラ が 好 き で 、 夏 に は ワ ー グ ナ ー の 作 品を 連 続 上 演 し て い る 。 近 隣 の 街 か ら 観 客が 集 ま り 、 成 功 し て い る と 聞 く 。  稽 古 が 面 白 い 。 彼 ら に と っ て ワ ー グ ナー は 生 活 に 根 ざ し て い る 。 歴 史 が あ る から だ ろ う 、 稽 古 が 楽 し そ う で あ る 。 今 まで の 上 演 手 法 を 踏 襲 し た り 、 新 機 軸 を 採用 し た り し て 議 論 し つ つ 稽 古 を す る 。 しか し 休 憩 中 の 食 堂 や 、 ス タ ッ フ ・ ル ー ムで は 演 出 家 の 評 価 は 厳 し い 。 今 夏 の 演 出は ワ ー グ ナ ー を 分 か っ て い な い 、 注 文 をつ け す ぎ る 、 観 客 が 喜 び そ う も な い 解 釈を 持 ち 込 み す ぎ る な ど 悪 口 が 絶 え な い 。し か し 稽 古 が 再 開 さ れ る と 、 ま た 稽 古 を楽 し ん で い る 。  以 上 二 つ の エ ピ ソ ー ド で 示 そ う と 試 みた の は 、 芸 術 と 文 化 の 緊 密 な 関 係 に つ いて で あ る 。 異 な る 文 化 の 世 界 で 生 き て きた 人 間 に は 他 の 文 化 に 魅 せ ら れ て も な かな か 理 解 で き な い 闇 が あ る 。 教 育 の 大 切な 使 命 は 、 私 た ち が も っ て い る 文 化 や 科学 を 次 世 代 に 受 け 継 ぐ こ と で あ ろ う 。 それ を 効 率 的 行 う た め に 、 学 校 教 育 と い う制 度 を 設 け 、 発 達 段 階 に 応 じ て 初 等 、 中等 、 高 等 教 育 と い う 便 宜 的 な 段 階 や シ ステ ム を 採 用 し て い る に 過 ぎ な い 。  教 育 が そ の 国 の 財 産 を 継 承 す る た め の制 度 で あ る な ら 、 私 た ち が ど ん な に グ ロー バ ル 化 さ れ た と し て も 、 民 族 固 有 の 文化 は そ の 民 族 が 継 承 せ ざ る を 得 な い し 、そ の 義 務 が あ る と 思 う 。 固 有 の 文 化 が あっ て は じ め て グ ロ ー バ ル 化 の 重 要 性 が 認識 さ れ る は ず で あ る 。 そ こ で 芸 術 教 育 にお い て 、 ま た 人 間 形 成 の 教 育 に お い て も

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民 族 が も っ て い る 固 有 の 文 化 を 尊 重 し た教 育 を な い が し ろ に し て は な ら な い と 思う 。 古 い 文 化 や 芸 術 に 対 す る 懐 古 趣 味 を強 調 し て い る の で は な い 。 世 界 の 人 た ちが フ レ ン ド リ ー で あ る こ と は 、 共 通 の 文化 を 持 つ こ と が 最 終 的 な 回 答 で あ る と 考え 、 言 語 も す べ て の 文 化 も 、 そ し て 宗 教も 統 合 し よ う と は 誰 し も 望 み は し な い だろ う 。 私 た ち は 互 い に あ な た の 言 語 、 宗教 、 道 徳 、 文 化 を 尊 重 し 、 そ れ か ら 学 ぼう と し て い る 。  こ ど も た ち の ド ラ マ 教 育 に お い て 、 伝統 的 な 教 材 を 使 用 し よ う と 主 張 し て い るわ け で は な い 。 た と え 、 「 い じ め 」 、「 不 登 校 」 、 「 民 族 摩 擦 」 の テ ー マ を もっ た ド ラ マ を や っ て も 、 そ の 民 族 固 有 の判 断 や 行 動 様 式 に も と づ い て 子 ど も た ちは 問 題 を 発 見 し 、 解 決 し よ う と す る 。 大切 な こ と は 教 師 が こ の 点 を 理 解 し 、 国 際化 が 進 む 文 化 と 固 有 の 文 化 と の 融 合 や 差違 の 本 質 を 語 る 力 が な け れ ば な ら な い 。し た が っ て 教 師 が 自 国 や 自 民 族 の 優 れ た文 化 を ど れ だ け 自 分 の も の と し て い る かが 教 育 の 質 を 決 定 す る の で は な か ろ う か 。判 断 力 が ま だ 成 熟 し て い な い 子 ど も た ちに こ う い う 理 論 を 語 っ て も 無 意 味 で あ ろう 。 私 た ち 教 員 が 細 心 の 注 意 を 払 っ て 、優 れ た 文 化 や 芸 術 を ど の よ う に し て 最 高の 手 法 で 与 え る か が 課 せ ら れ た 仕 事 で ある 。 教 員 が ド ラ マ 教 育 の 研 修 を 続 け る とき 、 是 非 自 国 の 伝 統 芸 術 の す ば ら し さ を再 発 見 ・ 再 学 習 す る プ ロ グ ラ ム を 忘 れ ずに 取 り 入 れ な け れ ば な ら な い と 固 く 信 じて い る 。 

Reference Material 1 ( 註 1 )1866年 、 マ イ ニ ン ゲ ン 公 国 の ゲ オ ル グ 二世 the Duke of Saxe-Meiningen が 劇 団 を 結 成 し 、 演出 家 と し て 活 躍 し 、 1874年 か ら ヨ ー ロ ッ パ

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各 地 を 巡 演 し 、 テ キ ス ト を 尊 重 す る 演 出 、ス タ ー を 廃 す る ア ン サ ン ブ ル 演 劇 、 舞 台装 置 ・ 衣 装 ・ 小 道 具 な ど を 忠 実 に 再 現 する 演 出 を 唱 え た 。 彼 の 演 出 は フ ラ ン ス の自 由 劇 場 Teatre-Lible の ア ン ト ワ ー ヌ Antoine やモ ス ク ワ 芸 術 座 Moscow Art Theatre の ス タ ニ スラ フ ス キ ー Stanislavskyに 大 き な 影 響 を 与 え た 。

1887年 、 ア ン ト ワ ー ヌ Antoine が 自 由 劇 場Theatre-Libre を 設 立 し た 。 1897年 、 ス タ ニ ス ラフ ス キ ー Stanislavskyと ダ ン チ ェ ン コ Danchenkoが モ ス ク ワ 芸 術 劇 場 Moscow Art Theatre を 設 立し た 。 1899年 、 イ ェ ー ツ Yeatsと グ レ ゴ リ ー夫 人 Lady Gregory が ア イ ル ラ ン ド 演 劇 協 会Arish Literary Theatre を 設 立 し た 。  一 方 、 イ プ セ ン Ibsen は 1881 年 『 幽霊 』 Ghosts、 1883年 『 野 鴨 』 The Wild Duck 、 1889年 『 人 形 の 家 』 A Doll’s House、 1890年 『 ヘ ッダ ・ ガ ブ ラ ー 』 Hedda Gabler を 書 い た 。 ス トリ ン ド ベ ル グ Strindbergは 1888年 『 ミ ス ・ ジ ュリ ー 』 Miss Julie を 、 ト ル ス ト イ Tolstoyは 同 じ年 に 『 闇 の 力 』 The Power of Darkness を 書 い た 。チ ェ ー ホ フ Chekhovは 1896年 に 『 か も め 』 The Seagull を 、 1899 年 『 ワ ー ニ ャ 叔 父 さん 』 Uncle Vanya 、 1901 年 『 三 人 姉 妹 』 Three Sisters を 書 い た 。 イ ギ リ ス で は バ ー ナ ード ・ シ ョ ウ Showが 『 未 亡 人 の 家 』 Widowers’ Houses 、 『 ウ ォ ー レ ン 婦 人 の 職 業 』 Mrs Warren’s Profession、 『 武 器 と 人 間 』 Arms and the Man を 執 筆 し て 活 躍 し 、 ア イ ル ラ ン ド で はシ ン グ Synge 、 イ エ ー ツ Yeatsな ど が 活 躍 し た 。  ア メ リ カ で は 1915年 に 、 プ ロ ビ ン ス ・ タウ ン 劇 団 Provincetown Playersが 結 成 さ れ 、 1918年 、ユ ー ジ ン ・ オ ニ ー ル O’Neill の 海 洋 劇 一 幕 物One-Act Plays of the Sea が 上 演 さ れ た 。

Reference Material 2 ( 註 2 )国 語 科 の 学 習 指 導 要 領 で は 、 劇 の 教 育 的役 割 を 強 く 期 待 し て い る 。 例 え ば 国 語 科の 教 育 計 画 を 立 て る 際 の 演 劇 に 関 係 す る内 容 記 述 は 次 の よ う に 指 摘 さ れ て い る 。

1年 前 期 ま ま ご と あ そ び 、 店 や ご っ こ 、 集 団 的

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な 遊 び の 間 に 話 し 合 い を さ せ る 。紙 し ば い や 、 人 形 し ば い な ど 、 簡 単 な劇 の な か に 実 際 の 生 活 活 動 を お り こ んで 、 と と の っ た 会 話 の か た ち を 実 演 する 。

1 年 後 期 か ら 3 年 ま で の 教 育

計 画 の な か で こ と ば に 伴 う 表 情 や 身 ぶ り 、 ま た 休 止な ど に つ い て 覚 え る 。文 や こ と が ら を 脚 色 し て 、 朗 読 し た り 、話 し 合 っ た り す る 。

小 学 校 4, 5, 6年「 話 し 方 学 習 の 場 所 と よ い 機 会 」 で は「 演 劇 会 」 が 挙 げ ら れ て い る 。 そ の 具 体的 な 内 容 を 引 用 す る 。1. 子 ど も し ば い や 人 形 し ば い 、 か げ 絵な ど の 演 出 も す る 。

2. 台 本 を 読 ん だ り 、 そ れ に つ い て 話 し合 っ た り す る 。

3. 脚 本 を よ く 理 解 し て 、 そ の せ り ふ の言 い 方 を 工 夫 す る 。

4. し ぐ さ や 表 情 な ど を 考 え て 、 み ん なで 話 し 合 っ て な お し て い く 。

5. 観 劇 後 、 そ の 演 出 や 素 材 な ど に つ いて 話 し 合 う 。

Reference Material 3 ( 註 3 )日 本 児 童 演 劇 協 会 (ASITEJ)日 本 児 童 演 劇 劇 団 協 議 会 ( 児 童 演 劇 を 上演 す る 職 業 劇 団 の 団 体 、 61 劇 団 )全 国 児 童 青 少 年 演 劇 協 議 会 ( 関 西 地 区 )全 国 子 ど も 劇 場 お や こ 劇 場 連 絡 会 ( 演 劇鑑 賞 団 体 )日 本 演 劇 教 育 連 盟 ( 教 員 の 研 究 団 体 、 月刊 機 関 誌 「 演 劇 と 教 育 」 1969年 発 行 、 通巻 545 号 )全 国 高 等 学 校 演 劇 協 議 会 ( 高 校 の ス ポ ーツ ・ 文 化 活 動 を 支 え る 全 国 組 織 の 演 劇分 野 、 参 加 校 )全 国 中 学 校 演 劇 教 育 研 究 会

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東 京 都 小 学 校 児 童 文 化 研 究 会私 学 学 校 劇 研 究 会全 日 本 ア マ チ ュ ア 演 劇 協 議 会日 本 人 形 劇 人 協 会国 際 人 形 劇 連 盟 日 本 セ ン タ ー

Reference Material 4 ( 註 4 )1 2 3 4 5 6

国 語社 会

算 数理

科生 活音 楽

図 画工 作家 庭体 育道 徳

特 別活 動総 合的 学習

合 計

272―

114―

1026868―903434―

782

280―

155―

1057070―903535―

840

23570

15070―6060―903535

105

910

23570

15070―6060―903535

105

910

18090

15095―505060903535

110

945

175100150

95―505055903535

110

945

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