低域混成波と速波電流駆動のためのアンテナ・伝送系jasosx.ils.uec.ac.jp/jspf/jspf_text/jspf1992/jspf1992_02/...れた20),この技術はjt-60(4行24列導波管束),tore-supra(4行32列導波管東),jet(8...

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低域混成波と速波電流駆動のためのアンテナ・伝送系 大久保邦三 (核融合科学研究所) (1991年10月28日受理) Tmnsmission and Launching System for Current by Lower Hybrid and Fast Waves Kunizo Ohkubo (Reeeived October28,1991) Abstract Microwave transm塁ssion comIN》nents and launching system fo the lower hybrid resonance are reviewed. The design £or ㎞} mult童junction grill couplers wh責ch launch the slow wave and the d the fast wave are discussed comparat星vely. The methods for components and also techniques for evaluating its performance ar Keywords: slow wave,fast wave,10wer hybrid waves,rf plasma heating,g quasi-optical antenna,microwave measurements,wavegu matrix, 1.はじめに 低域混成波加熱は電子とイオン双方を加熱できる特徴を持った波動としてかなり早い時期から着目されて きた.1970年当初,理論的に予測されていた冷たいプラズマの波動のうち実験室で未確認の縦波である低域 混成波の励起と加熱研究に興味が注がれていた,加熱研究ではフランスのグルノーブル原子力研究所で1.27 GHz,200kW,50μsの低域混成波をストリ’ップラインァンテナを用いて電子密度(1~2)×1015 のレーザプラズマに入射したが,高電子密度プラズマとプラズマ閉じ込め性能が良くないため温度上昇は10 eV程度であった1).一方,プラズマ閉じ込めの良いトカマクを有するソ連ではTM-3で電子密度1014 cm-3のプラズマに対して2GHzの低域混成波を矩形導波管から入射してイオン加熱の実験に成功していた2)・ ハ励10%1動sご吻惚ヵ7盈sズo%S6勿π06,飽goッα・4640ヱ. 108

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鞭低域混成波と速波電流駆動のためのアンテナ・伝送系

           大久保邦三

          (核融合科学研究所)

          (1991年10月28日受理)

Tmnsmission and Launching System for Current Drive

    by Lower Hybrid and Fast Waves

Kunizo Ohkubo

(Reeeived October28,1991)

Abstract

  Microwave transm塁ssion comIN》nents and launching system for slow and fast waves near

the lower hybrid resonance are reviewed. The design £or ㎞}th the conventional and

mult童junction grill couplers wh責ch launch the slow wave and the dψole antenna which excites

the fast wave are discussed comparat星vely.  The methods for designing the transmission

components and also techniques for evaluating its performance are deseribed.

Keywords:

slow wave,fast wave,10wer hybrid waves,rf plasma heating,grill,multijunction gril1,

quasi-optical antenna,microwave measurements,waveguide components,scatteringmatrix,

1.はじめに

 低域混成波加熱は電子とイオン双方を加熱できる特徴を持った波動としてかなり早い時期から着目されて

きた.1970年当初,理論的に予測されていた冷たいプラズマの波動のうち実験室で未確認の縦波である低域

混成波の励起と加熱研究に興味が注がれていた,加熱研究ではフランスのグルノーブル原子力研究所で1.27

GHz,200kW,50μsの低域混成波をストリ’ップラインァンテナを用いて電子密度(1~2)×1015cm-3

のレーザプラズマに入射したが,高電子密度プラズマとプラズマ閉じ込め性能が良くないため温度上昇は10

eV程度であった1).一方,プラズマ閉じ込めの良いトカマクを有するソ連ではTM-3で電子密度1014

cm-3のプラズマに対して2GHzの低域混成波を矩形導波管から入射してイオン加熱の実験に成功していた2)・

ハ励10%1動sご吻惚ヵ7盈sズo%S6勿π06,飽goッα・4640ヱ.

108

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解 説 低域混成波と速波電流駆動のためのアンテナ・伝送系 大久保

基礎実験の観点から低域混成波の励起を研究していたHookeとBemabei314),BriggsとParker5)により

1972年低域混成波の分散式が単一電極アンテナで低域混成波の共鳴錘の観測等に成功した,その後,1974年

にBeI lan6)は多数個のリング電極を用いた平行方向の波数制御により低域混成波の励起・伝播に成功する

に至って,低域混成波の励起は入射波の波数を制御することによりリスクを考えずにトカマクに適用するこ

とが可能であるという自信を研究者に与えた。その後,田中ら7)は多数個のリング電極を用いて直線プラズ

マに対して,進行波,定在波の低域混成波を励起し,その分散式と金属板による波の反射特性を確認してい

る.現在,実用化されているグリル(焼肉用鉄格子からの命名)と呼ばれる低域混成波アンテナが1974年グ

ルノーブル研究所のLallia8)により提案された.1974-1976年にFT-1トカマクでは静電棒アンテナとル

ープァンテナが9),Wegaトカマクではループァンテナが使われた且o)・また,WT-1トカマクでは1対の

リングァンテナが大電力短パルスの低域混成波の放射に使用されたu),1975年には直線プラズマを用いて

2導波管型グリルァンテナによる低域混成波の励起実験が成功し12),この技術が4導波管型グリルァンテナ

として1977年にATCトカマクに適用された13㌧その後,JFT-2トカマクで同型のアンテナが使われた14),

WT-2トカマクでもグリルァンテナを採用して,電流駆動実験に供した15),JIPPT一丑トカマク/ステ

ラレータではヘリカルコイル巻線の存在のためアンテナを取り付けるポートのサイズが小さく通常のグリル

が取り付けられないため,導波管断面がC型である特殊導波管グリルを開発して実験を行った⑥、グリルを

提案した本家のグルノーブル研究所でもかなり遅れてWegaトカマク/ステラレータがトカマク専用に改造

された時点でループァンテナをグリルアンテナに取り代えた・このグリルタイプのアンテナが約7年間低域

混成波励起アンテナとして標準的に利用されてきており,1986年の大型トカマク装置JT-60正7)での2MA

放電,1990年のTRIAM-1Mでの70分の電流駆動実験等のプラズマ電流駆動実験に活用きれた18㌧

 1983/4年にMoreauら19)によリアンテナの工学的な観点としての簡単化,高効率結合性を重視した多分

岐(Multijunction)グリルが提案され,1985年Petula-Bトカマクにて多分岐グリルの有効性が確認さ

れた20),この技術はJT-60(4行24列導波管束),TORE-SUPRA(4行32列導波管東),JET(8

行16列導波管東)の大型トカマクに採用され今日に至っている。現在設計中の原型炉の1段階前のトカマク

であるITERでは多分岐グリルの思想に基づいて5-6GHz帯で運転される多段(日本案では7行16列導波

管束)形がその例であり,導波管要素数のみならず,電力も大規模化してぎた鋤.

 一方,低域混成共鳴周波数帯での速波が理論的に密度限界の存在しない電流駆動のドライバーとして関心

が持たれている.励起アンテナとしてダイポールァンテナ,ループァンテナ,誘電体充填導波管アンテナが

候補と考えられた,1986年J IPPT-BUにてダィポールアンテナ22)がJFT-2Mではループァンテナ23)が

PLTではループァンテナと誘電体充填導波管アンテナ24)が試験された.またVersatorトカマクにて導波管

スロットアンテナが試験された25).これらの結果は励起アンテナとしての結合特性は速波の性質を示している.

 この解説では第2章においてプラズマ中を伝播する冷たい波動の特性を述べ,第3章では現在使用されて

いる遅波(グリル)及び速波アンテナの結合解析と特に電流駆動の検討に重要な平行方向の屈折率の関数と

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核融合研究 第67巻第2号  1992年2月

してパワースペクトルの解析とプラズマ結合実験について述べる,第4章では新しい結合系としての多分岐

グリルの理論と実験及び最近提案された準光学アンテナについて述べる。第5章では大電力伝送に必要な伝

送系の主な要素部品について述べ,その性能評価法について簡単に記述した.

2.波動伝播プラズマ結合

2.1分散式,群速度,電界成分

冷たいプラズマ中の波動の伝播は高周波電磁場E(r),E(r)がexp{i(勘r一碗)}で変化すると

して,マックスウェル方程式と電子・イオンの運動方程式から々y=0とし,静磁場方向の屈折率酬,垂直

方向のMを用いて次式を得る.

  [o][8];

、〔紺藁瓢〕〔l/一・ ・a1・

ここで,[ぎコは高周波電場のフーリエ成分である,アンテナからの電磁界の放射によるプラズマ中での波動

伝播解析は冷たいプラズマでの誘電テンソル[κ]の近似が可能である26),低域混成共鳴周波数近傍での遅

波,速波はω,i《ω《ω,eの周波数範囲で誘電テンソル成分は

ll羅∵IL〕  ・嬰・と書ける・ここで2V=oκ/ω,1〉il=1Vcosθ,M=!Vsinθ。θはんとz方向の外部磁場のなす角である・

各種波動を外部励起する場合,!〉ilやMを強制的にアンテナにより決めるのが普通であり,分散式det O=0

を.〈石1とM2で書換え表示するのが便利である,det O=0をM2(=1V2一.〈石12)で整理すると分散式は

翫雑譲押畷・〕

となる・この式をM2について解いて

(2.3)

  梅,~一(一β⊥±4三ノ2)/(24)・4=瑳一4孟⊥Cn      (2・4)

を得る,正符号は遅波,負符号は速波とよばれる。群淳度Ogは分散式をF(.酬,ハ在,ω)=0として次

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 解 説       低域混成波と速波電流駆動のためのアンテナ・伝送系       大久保

式から計算できる,

  θ9一’一(・/ω)㌔川∂F/∂ω)・ 、      (2・5)

プラズマ周辺では!κ1日》K上,κ×の近似が一般的に可能である.低域混成共鳴周波数

ωLH=ωpi/(・1十ωpJ/ωc8)1!2から離れた密度領域のところで∠五12の展開から遅波,速波に対し.〈し、,f2

の近似式を得る,

     伍  κll(Nll2一瓦)+K2  Ml盤一一盤一        ,     オ⊥  、  凡                              (2.6)     q   (N”2一凡)2一κノ  Mf2盤一一空一      ,     β上、         漏ll2一κ⊥+κ2/K”

I Kll(瑚12-K上)1》i K釧の近似で遅波,速波にっいては

  M、2盤一(κ”/κL)(瑚12一瓦),             (2・7)

     一(瑚12一瓦)2+鰐  κぞ  M,f2館      鍍   ,          (2・8)      Nll2一κ上    瑚12一κL

となる.(2.8)式の第2の近似式は中電子密度領域[(.〈石12一κL)2《Kぞ]近似をした。遅波の群速度は

  び911s物/茄,09Ls/砂glls一一(璃2一κ⊥)/颯IM盤一温/M,,    (2・9)

となる.これから遅波は磁場方向の群速度と位相速度は同方向である前進波であり,直角方向は逆方向の後

退波であることがわかる。ハ乙1》1の条件で遅波の群速度と位相速度は直角に交わる,一方,速波は

  び9上f_㌦F_M  (瑚12-K上)2    _        __                                                ( 2.10 )

  びg”f ㌔llF 瑚1(瑚12一κL)2+環

となる.この式から速波は遅波と比べて群速度は磁場となす角度は大きい,一方,伝播ベクトルの垂直から

の離れ方も大きく,磁場方向,垂直方向とも前進波であることがわかる、det∠)=0から,硯,傷,段

の相対的大きさは[ρコの行列式の任意の行に対する余因数の比で与えられる、第2行の余因数を計算し遅

波の分散式M=1覧,を代入して

  貿一・,啄/竃引IM/(瑚12-K上)醐/瑚,,      (2.11)

となるため,遅波は鼠または陽電場でプラズマに対して波動が結合可能となる・密度勾配の方向を∬方向

とするとWKB近似で電場は

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核融合研究第67巻第2号 .1992年2月

1象(X)1-1民(砺)1(壽,鴇鵠1))卿4・

1髭(x)卜i々∫(%)/々”目鶴(∬)1,

(2.12)

となる5)、劣。にあるアンテナから入射された波動はプラズマ中心へ伝播するにつれて,直角成分房が増大

する,放射電場は入射電力束の保存により入射高周波電力から計算できる・第3行の余因数を計算し,速波

の分散式M漏Mfを代入して

卑0,竃/琢一一iK、/(瑚12-K上)蟹一iM/瑚1, (2.13)

となるため,速波は竃または竃電場でプラズマに対して波動が結合可能となることが判る,マックスウェ

ル方程式から遅波は駕により,速波は鑑または%により結合が可能である・普通,傷はアンテナでの制御

が難しく,遅波では象(綴)で・速波では塚(瑳)を磁場方向に波数制御して結合するアンテナが設計さ

れている.

2.2 近接性,遮断

冷たいプラズマ近似で遅波と速波の伝播の様子は図2.1に示すごとく瑚1がある値珊accの値より小さい

と遅波で入射された波動はある場所で速波にモー

ド変換して逆戻りする,そして遮断密度を満たす

場所にて再度反射して遅波に結合する過程をとり,

多重反射を繰り返して,波動エネルギーはプラズ

マ中心迄至らないうちに吸収される、しかし,

茄>珊、。cとなるとこのようなモード変換は起こ

らない.このような状況を近接性と呼ぶ・この近

接性は遅波,速波アンテナ設計に際して重要なパ

ラメータである.その条件は分散式(2。4)より

4=0とおいて

▽n

X

np

X     N鯉>Nllαcc

skwwqve,、∫・・ヘー、fqstwαve

く 弊  P       一藤        Nll〉Nllqcc

ωpi/ω一瑚laccツー{1+瑚1ざc♂(y2-1)}1!2

                Z       勿州柵匿    O n(x)

        lquncher図2.1.波動入身寸と近接性.’V“<〈1■accの入射はプラズマ中

  心まで波動は伝播するが,〈ノ“<怖、。cは途中でモー

  ド変換を起こす.

(2.14)

を得る。ここで,y=ω/(ω,eのci)112。.酬、,cが増えて茄a、c2=1/(1一プ)となったとき速波と遅波は

合流する,上式から伝播可能な1Mlはω。=(ω,eω。i)正12として

  璃>葺+[1+詳(1一夢)]112    (215)

112

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解 説 低域混成波と速波電流駆動りためのアンテナ・伝送系

となる・図2.2はω2/ω02をパラメータとして.〈ろ1を

ωpi/のo=ωp,/ω,,に対してプロットしたものであ

る,根号内がゼロの条件が低域混成波共鳴である(図

中の直線L H)。速波についでは伝播領域は直線L H

との関係はないが遅波は直線LHより右には存在しな

い,さらにω/ω・>1の曲線は直線LHと交わらず低

域混成共鳴層に決して到達しないことを示している.

トカマクの磁気軸上の電子密度,トロイダル磁場が与

えられたとき,プラズマ中心まで波が伝播する最小の

4

大久保

Z

3

2

・1

0

C1.2  .1ρ

       l   LH       l一●一●一   +9一一’一・一N鵬mlnS     A ._._.  .1辺’里o〒α曼           }’N罷mlnfB   q6  0

  1      2   ωpeノωce

図2.2.遅波と速波の近接性.

3

瑚Iminはプラズマのエッジに対応するωpe=0と磁気軸中心のパラメータできまる縦の太点線Cとの問の曲

線に注目する,伝播はある曲線の上の領域で,かっプラズマ中のどこでも波が伝播する最小の璃を与えられ

たω2/の。2にて決定できる,もし遅波がプラズマ周辺から入射された場合,近接できる最低限は曲線Aであ

る,これは遅波が低域混成共鳴層より高い電子密度の領域に入れないためである.曲線Aを選んだ場合の璃

鱗minsとする・の/ω・<1の領域で式(2・14)をωP玉/ω・に関してのピーク廊1をとれば

.酬min=(1一ω2/ω。2)一1/2となり各曲線のピーク値が出る.ω=ωlhcとおけば!〉lmins=1十ωpeC2/ωc,c2

となる,ここで添字Cは軸上の値である.

 速波については理論的に低域混成共鳴層を通過して伝播できるため,直線LHの右側へも通過できる.こ

れは任意の低い周波数が設定できることを意味する.曲線Bを選んだとき1Mlmi、f駕1の速波を入射したとき,

プラズマ中心にまで伝播可能である.

 遮断密度の計算は屈折率ベクトルの3っの成分,凡,〈~,瑚1を含める必要がある,2。3で述べる波動方

程式から得られる微分方程式で1〉¢=0とおいて遮断条件が得られる・電子密度で書けば

κ、c一(ω2吻eε。/62)(1一瑚12一曜)/(1一く肖12)・

%fc=ωωce(1一瑚12一罵2)112(1一く肖i2)”2翅eε。/62,) (2.16)

となる。速波については誘導率κよ,KXノを1及び0に近似している,座標%をξ=々o∬と規格化し,アン

テナ前面の密度分布をステップ(%p)十ランプ(▽%,)p型,

%e(ξ)=%P+ξ(▽ξ%e)P (2.17)

と近似する27).プラズマエッジでの遅波遮断領域をさけるために%p>%,,とすることは容易なことである。

例えば周波数0.8GHzではκp>8×109cm-3とすれば少スクレイプオフ層では%>πscが可能マある,

一方,速波については%fl駕(ωc,/ω)鬼,,であるため,トロイダル磁場2。6Tとすれば%f,駕91%,,となる。

アンテナ前面で%p>毎、となるような高い電子密度をもつスクレイプオフ層はっくれない。大きい.酬(>1)

113

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核融合研究 第67巻第2号  1992年2月

は物,を更に増大さす.これは速波のアンテナ前面での遮断層を厚くすることを意味する,1馬=0の近似

でアンテナ(x=0)から遮断(x=x,)までのエバネッセント領域での入射波の減衰により決まる最大

の.酬(=瑚1㎝t)は1々⊥(0)1劣c=1,(2.16)式,%fc(∬c)と(2.17)式の密度分布から次のごと

く計算できる22),

現語1+(藷)2’3+暑ω艶      ce  co                ce  cO

(2.18)

(▽%,)pニL1×10U cm-4とし,上記のプラズマパラメータを代入すれば茄cut=1、5となる,このよう

に速波については1〉ilacc<!Vil<1〉ilcutの如き1〉ilの上限が存在し,入射可能な!MIの窓は狭い・

2.3 プラズマ結合と衰面アドミッタンス

 プラズマ表面での電磁場の解析がアンテナ設計にとって重要である.ここでは外部磁場と密度勾配に平行

な面での波数ベクトルをもつ遅波,速波を考える、座標rを自由空間波数々。(=ω/6)で無次元化し,(ξ,

η,ζ)とする.プラズ領域の電磁場は遠方からの反射がないと仮定して,電磁誘導の式と波動方程式によ

りプラズマ周辺部の電磁界解析をする。ここでK⊥=1と近似する,遅波については前節で述べたごとく

K。=・0の近似が可能であり,フーリエ変換した電磁界が次のごとく求まる28)。ここでプライム(!)はξに

関する偏微分である.ツ。は自由空間での波動アドミタンスである・

亀一一譜1鞠・乳一一謬1鞠・

∂2琢∂ξ2P+[(1一瑚12)Klr曜]観P=0・

駕P一一謬1鞠・%P一一講1留錫一・

(2.19)

速波についてはK、の項は無視できず

髪’苧考織摯鶏一・・

∂争+[笑薯賜一(曜+酷1)悔一・・

錫p一一夕。賜易p,%p一夕。瑚1易p・

絵先’隅等誰#)郵 」

(2.20)

114

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解説   低域混成波と速波電流駆動のためのアンテナ・伝送系   大久保

となる。ここで氏pや錫pの微分方程式でノV,の導入は2.2で述べた遮断密度を高くする.罵≠0のとき速

波の遮断電子密度は.〈㌧▽ξ%e>0で高密度側に,逆の場合は低密度側に移動する29)..この効果は速波の低密

度の場合での波動伝播でκ.2~K、勺Vyとなるとき重要となる.このようにして計算された電磁場からプラズ

マ表面アドミッタンスyplが計算できる。遅波と速波では

  ツp1一一%P- iツ・霧Pノ ,

知、鎗桃曇爆皇i一』レ(一

となる,遅波の氏p,速波の鍔,の微分方程式を解くのにノV,を考慮した解析が可能であるが(速波に?い

ては文献30)),複雑さを避け以下の解析では遅波および速波アンテナともッ方向には無限大の近似(ノVy=0)

をする,この近似は第3章で述べる罵=0の近仰の妥当性の範囲内で有効である,アンテナ前面での電子

密度分布を(2,17)式のごとく近似すれば27),遅波に関してεpの微分方程式はエアリ関数31)を用いて解

ける.

INl目く1に対して

1∴歳満1,〆’〕  ・・羽・

1温1>1に対して

繊諒撫罪満紗〕 ・・器・

・となる・ただしα=(▽%e)p/%c。である.観pの微分方程式の解鼠p=C[Ai(η)十iBi(η)]におい

て関数Ai(η),Bi(η)の値はηが負の値に対して振動的であり,1瑚i l>1の領域で波動として伝播す

る.

 一方,速波についても窃pの微分方程式は放物楕円関数U(召,∂),W(の拶)31)を用いて解ける,

(付録参照)

 密度分布のモデルで密度勾配を無視したステップ型の場合・遅波・速波の霧,・臥Pの微分方程式の解は

簡単な指数関数となり,表面アドミッタンスは1ハ耐>1に対して簡単に次のごとく計算できる,

115

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核融合研究 第67巻第2号  1992年2月

椴隠綜欝二瓦lll,瑠)

この式は後述の小さい密度勾配の場合での結合計算の密度依存性の理解に役立つ.

(2.24)

3.遅波及び速波アンテナ設計

3.1 補対性とアンテナ

 マックスウェル方程式は電界と磁界に関して補対性があるため,電流源と磁流源からの放射特性は補対で

ある,図3.1に示されるスロットァンテナ(導波管開ロアンテナ)は細隙の中央部に電圧がかけられた2方

向に電界がある.ストリップダイポールアンテナはストリップ中央にあるギャヲプに電圧がかけられたスト

リップ上に電流が流れる,スロット開口部での電界は法線ベクトルをπとしてπ×Eの磁流源があることと

等価である・一般に補対関係にある電磁界(凧,H1),(E2,鵜)の間には

E1=干(1/ッ。)E2,

E正=±E2)

なる関係が成り立つ.符号はズ>0,劣<0に対応する、

3.2 結合解析と散乱行列

 図3.2に示すごとく,遅波アンテナとしてグリルァンテナ,

速波アンテナとしてダィポールァンテナを考える.以下の解

析では幅ωのアンテナ素子はッ方向には無限大の近似(死=0)

をする.この近似では導波管やダイポールの高さが有限であ

り,Nは1より充分に小さいため有効な仮定である。座標を  :y

ξ=々晒,η=観y,ζ=々。2と規格化すると海番目のア

ンテナ素子の電磁界は遅波および速波で単位関数%により空

          (3.1)

穿 ・君し、誹

  ▽

  〃

                      

  E         H

▽・繊・

  x           X

図3.1.ダイポールアンテナとスロット

  アンテナの補対性.

間分布翫(ζ)=%(ζ一駄+砺/2)一%(ζ一ζゼ残/2)を考慮して計算できる・ここで,ζたはア

ンテナ素子の置かれた座標,砺=2〃沸。はアンテナ素子の規格化幅である,この電磁界のフーリエ変換は遅

波では,

(鵜IH一㍊)(愛1)卿・ (3.2)

速波では

116

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解説

κ

低域混成波と速波電流駆動のためのアンテナ・伝送系

  γ   w

Z                   Z

           b、   、、

    r  炉

    σ勘

  犠 \ 轟e伽,   い ’ハ♂x,

,玉.∴止図3.2.導波管列による遅波アンテナ,ファラデーシルドで覆われた4

  素子ダイポールアンテナ列による速波アンテナとアンテナ前面  電子密度分布.

dpole

Gnterm,

e1

、 1N 9 、

、、

r%

団αy、

洞e憾 、

z 、

大久保

(魏)一(居)(舞)儀・踊…  a・・

と書ける,上記の遅波と速波の電磁界の関係は(3.1)式の補対性を持っていることは明らかである,ここで

             exp(一i赫ζゐ)sin(現孟為/2)  Gた(珊)=(2/π)112           ・     (3。4)                  瑚12

プラズマとアンテナの電磁界の接続をするために遅波のグリルァンテナでは無限小厚みの真空場の中間媒質

をその間におくのが普通である。速波ではダイポールァンテナとファラデーシルドとの間隔が真空場であり

この厚さをξとする。この層は真空であるためM2=1一瑚12とおくと次式を得る,     P

(致録∫(雪認囎,罵課)1、M)×一・歯・                                     (3.5)

速波の真空中の電磁場は

(段1)一毒∫(歎謡瀦士1訟二:翻,M端)×卿・・温…珊・

                                     (3.6)

更に,プラズマ中の電磁場は遅波では

ll7

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核融合研究 第67巻第2号  1992年2月

(舞11)一濠∫(髪li)卿(・咄踊・(3.7)

速波では

(驚11)一虚∫・(蟹11)卿(・璃η)d茄・(3.8)

となる,ここで積分区間は一・Oから。Oである,

 アンテナ,真空場,プラズマ表面での電磁場の接続を行うことにより,波動結合の正確な計算が可能であ

る.真空場とプラズマ表面場との接続から真空場の複素反射係数ρとッplの関係が遅波と速波に対して計算

できる,

ρ一卿(2i鵬)識1:1・

ρ一卿(2i鵬)lll旱畿・

(3.9)

アンテナと真空場の接続では遅波では導波管の仕切板上に表面電流が存在するし,速波ではダイポールアン

テナ間で変位電流が生じ,その結果高次モードが現れると考えられるが,簡単のため々番目の導波管やダイ

ポール前面の平均磁場が真空中の磁場の平均に等しいと考えて磁場について接続する,電場についてはアン

テナの任意の々番目の要素の前面での接続を行い,々番目要素の前面で空間積分をする.このようにして得

た2つの式から遅波についてはζを速波については駕vを消去することにより遅波と速波アンテナ各要素

の複素反射係数を計算する連立方程式を導ける,

           z

l盤孟蓄糖』〕  一・ここで遅波についてはQiゑ=Eiた,1~〆E,た/Eiた,速波についてはQliた=私た,&=尾為/璃たであり7ρ

については(3.9)式を使う.遅波の場合ステップ十ランプの密度モデルを用いるためξ=0とする結果                                 P(1一ρ)/(1十ρ)=Mッpl砂oとなる。(3。10)の積分は一∞から一1と一1から1と1とか・oに分

けて計算するが,積分変数の変換により瑚1=±1での形式的な特異点が避けられる,

 アンテナの構成各要素とプラズマから形成される分岐面で散乱行列が定義できる.散乱行列は第4章にて

扱う多分岐グリルの解析に重要な概念である,ここでは遅波アンテナを例として扱い,この散乱行列[7’]

118

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解 説 低域混成波と速波電流駆動のためのアンテナ・伝送系 大久保

は上式にてρ番目のみに給電した計算から求ま尉o㌧

           」   ∫(δ妙一丁妙)= Σ (δ魏ρ十丁形ρ)U肋  ,

          勉=1  丁妙=E,た/E∫P・

オ=残として

図3,3に密度勾配2.6×1010cm。噂4の場合での4導波管グリル

で散乱行列[7’]の計算結果の例を示す、散乱行列は4

導波管の左右対称性からT11=T44,T21=T34,

T31=T24,T4正=T14,Z2篇丁43,T22=T33,

T32=T23,T42=7…1等の関係がある.図から入射さ

れる導波管から離れた導波管ほど散乱される振幅が小さ

く位相がずれてくる.入射導波管自身への反射振幅,位

相は導波管前面の電子密度%に依存することが判る,           Pまた近似的ではあるがT2ユ霜712,T3ユ駕丁42の関係が

成り立つ,散乱行列の結果は各導波管に任意の振幅と位

相の高周波が入射されたる標準グリルの場合,それぞれ

の線形結合にて各導波管への反射が求まる.このように

散乱行列はグリルで基本的な解析手法である・

 アンテナとプラズマに対しての結合は簡単なモデルで

その振舞いが計算できる.アンテナ前面の真空層がない

とき(ξp篇0)グローバルな反射係数Rは1茄1>1に

対して第2章で述べた密度勾配を無視したプラズマ表面

Pアドミタンスッplと自由空間波動アドミックタンスy。を

  Oハ留

3ヲ90尋

48?

犀α5

  0  0ハ留呈’go

⑨ 一180

(3.11)

1

   、\タ2    ぺ   4\略●一’一’口。伽・一・\・一σ一。一・_・一・一・一・一・一・一・

  .1   \

スα5f

         タ2,/”

        !’1,3一・≧’7一評,4二=._遠._._

1     ノ託

     3   2

01

   2       鞠5嘲一聞一嶋一一一一一一一・。・一茅==:。…’・:警こ:・r二:畿・t・・_瞥

図3.3.

 2    4  6 810   20    40 6080100

      %海c

4導波管遅波アンテナでの散乱行列.(7ηe)P-a6×1010cm冨4,f-800MHz,w-

3.5cm,仕切り板厚=0,5cm.

Sは本文中の丁に対応する。

用いて1~=(ッ。一㊧1)/(ッ。十ッpl)とかける・遅波と速波では左が最小となるのは27・30)

%S。pt/%c。一瑚12・

%壬。pt/%c。一(ωce/ω)瑚1(茄12-1)1’2・)

(3.12)

である.速波に対してスクレープオフ層でこの条件を満たすことは大変難しく,プラズマからの反射を覚悟

せねばならない。この関係は単一の酬について無反射になる条件であり,実際は.酬に有限の広がりがある

ため遅波では小さくはあるが反射が起こる。ある璃の設定で最適電子密度が決まると更に高い.酬ではグ

リルをプラズマ側に近づける必要がある。複数反射係数1~から最適位置にグリルがある時その前後で反射波

の位相が同相から逆相へ移ることになる。

 図3.4に4導波管グリルにおいて各要素導波管に等しい振幅で位相イφをつけてプラズマに波動を入射し

119

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た場合,∠φをパラメータとして(3.10)式を解いた結果

を示す.4φが増大するにつれて11~引2が最小になる

%p=%、qptは(3・12)式に従って増大する・ここでarg&

がπ変化するのはπ,。p。の前後でyplがy。の値の前後を取る

からである.

3.3 アンテナ電力スペクトル

 プラズマ中に励起される波のパワースペクドラムは電流

駆動実験において共鳴電子の速度との関係から重要である.

遅波アンテナでは々番目の単位高さ当たりのプラズマヘの

電力入射はポインテングベクトルSのx成分をzバ2〃た/2

から編十翫/2まで積分し,更に(3。2)式の逆フーリエ

変換式璃た(0,z)=一y。(EiゼE,為)を代入して

 0曾冒一go

凄180轡

”272

 1.6

内L1,2!母

一〇.8

 α4

  0

図3.4.

Sた=(yoωた/2)Re[(Eiゐ*十Eし,ゐ*)(Ei為一E,為)]

一一哺 一 , 輯r一一 =7二謂 =二 r=一・ 響』■、.

  、  、3TU4、   、   、

イαノ          .逆’2

ムψ富0

ゴbノ、   ハ 昌0

、~藷鴫ロこ一9、

q4q6 1  2  4 6810 20 4060     知!hco4導波管系での位相差7φ=0,90,135,180

度に対して第2導波管での反射波の(a)位相と

(b)電力のエッジ密度依存性.

(7ηe)P-2.6×1010cm-4,f-800MHz,w-

3.5cm,仕切り板厚=0、5cm,ηwgdは本文のηpの対応する34).

(3.13)

と計算される,鍔(1〉il)=ΣE.た(}〆温)と境界条件(3。10)式で求めたEi々一E,ゐより

       ゑ  S(瑚1)=ΣSド(1/2)Re[∫d顯lyp1(瑚1)曜(瑚1)i2]    (3・14)       為=1

となる,すなわちスペクトル密度は反射波を考慮した導波管での全電場のフーリエ変換段(1V”)の2乗

とプラズマ表面アドミタンスの積に比例することになる、グリルの寸法,プラズマメータ,入射波の諸量が

決まるとypl(珊)が計算できる。一方,スペクトル密度を1〉ilの関数として求めるため象が必要である。

(3。10)式の連立方程式の解として求まった&によりE.為=Ei〆1十&)と定まる.

民(.酬)=2E之滝(桑(.酬)よりスペクトル密度が評価できる,同様な計算は速波についても可能である(但

し,ξ=0と仮定して),一例として4導波管グリルの場合の4φ=30度における電力スペクトルを図4.3

  Pの太線に示す, 普通電流駆動に適切な温の領域で電力スペクトルが現の正負で異なるように波に方向性

をつける位相4φが設定される。方向性の定義には色々あるが,ここでは電力スペクトル.赫の正の積分量に

対する全積分量比

  ∫も瑚IS(瑚1)/[∫㎞IS(瑚1)+∫も瑚IS(朋・    (3・15)   1              一。0              1

で表される定義を使う,方向性の一例を4.2の太線に示す,対称性から4φ=0,180度は方向性がない。

120

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3.4 グりル結合実験

 初期の結合実験は密度勾配の値が実測値の約2桁高い値でないと結合結果を説明出来なかったが,最近は

上述の如きステップ十ランプの電子密度分布を仮定して実験値が説明できる・Asdex33)での2行24列導波

管束による各種のフェージングとグリルの位置で結合実験をした結果の各導波管の反射係数の実験値と計算

値を図3。5に示す,この実験では%p,(▽%,)pは測定されていないが良い一致を示している,J IPP-

THUでは4導波管グリルと複探針を使用し,電流駆動実験時に結合特性とスクレイプオフ層の密度が岡時

。,5#29525Ph・se;0π0π…  Ph・se;00ππ…

R np3暑69【m 巳噌rgri“

          R2                     12  Pヨ           .1                0.5・10 〔m

o                   O

 椚2321PhoseOO照    Phαse:O“OK_ゆロち

 醗 =16S,6‘鳳          .〕R g         R           2               臓 一ヨ                   0.5・10 〔m           .1

ゆ                   ゆ

 #29~2ら △Ψ=goo  △Ψ鵯器90・,0・5               .ヨR腱P=169〔m l・ue『9『i亀鑑  R

           .2                     でユ  リヨ           1       05’、o〔m o                   O

   6uide Nr図3.5.Asdex装置での結合実験(左図)と計算(右図)の比較.実験は2

  行24列導波管系で行われた,位相差7φ塗0π0π・・,00ππ・・,  π/2の三つの場合に対する実験結果と(7η.〉p=5×1011cm-4,

  ηp=5×1011cm嘗3での計算結果33).

に測られた.図3.6に示すごとく遅波グリルの場所の関数として反射係数と位相が測定され計算値と比較さ

れた34).最適位置の前後で反射波の位相が理論で期待できるごとく180度近く変化する・Alcator-Cで

の炭酸ガスレーザ散乱によるグリルからの電力放射スペクトルの計測結果を図3.7に示すが,計算されたス

ペクトルと満足な一致を見ている35).大電力でのプラズマ結合実験で基礎実験で確認されたような非線形性

の動重力効果を示唆すると考えられる結果が最近Asdex36)で得られたと述べていて確認追試実験が待たれる。

4.新しい結合系

4.1 多分岐グリル結合解析

 多分岐グリル・9)は一次導波管が電界面で多分岐され,分岐した二次導波管での移相量が内臓の移相器

により設定される,多分岐グリルは分岐面とプラズマの間で多重反射をすることにより・一次導波管側への

反射を減らす自動整合性の機能を持っている.この多分岐グリルは酬のピーク値温Oを広範囲に変えること

は難しく,また璃スペクトル上で主ピーク茄。の他に寄生ピークが発生するのが欠点である・この寄生ピー

クは一般的に電流駆動効率を下げる要因になると考えられるが,未だ実験的には明らかでない・Moreau,Nラ

guyen19)により多分岐グリル設計法が開発された、彼らは図4.1に示す多分岐グリルにおいて分岐面での散

121

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核融合研究 第67巻第2号  玉992年2月

CALCUし岨ON一

 q4触♂一Q2

’o

go

8筋

8》・go

ぎ一180

一270

κ=2

3

EXPE則MENT

!.o

 oみ}一〇2

98

 o

窪密三一go

尋9180

図3.6,

噂27Q

た冒2

3

た=2  3

26 28 30    26 28 30POSITION!醒(cm)          POSIT10N r(cm)

JIPPT-IIU装置で位相差7φ躍90度に設定された電・流駆動実験での内側導波管の電力反射係数と位相のグリル位置依存性34).

b.5

^   o

zα  1。o

,)

3 ●0 8 ●  ●

 ● ● ●  ●

●●●

(a}

1  2   3  4   5  6  7

o.5

Prim呵wq〉egukゴe

!ノ

!ノ1

Seoon醐Wα》egudes

α

ゴ賭難

Jurdbn

図4.1.多分岐グリル概念図:一(二)次導波管幅a,

  bは本文中のW,wに対応する.

(b)

      0       1   2   3   4   5   6   7・

           N,艶   図3。7,x/α=0.7でレーザ散乱法により測定された低

     域混成波のパワースペクトル.(a)7φ=180     度,(b)7φ=90度,電子密度1.5×1014cmF4      (重水素プラズマ),トロイダル磁場8T35).

乱行列とプラズマ境界での反射率が各導波管で同一であ

る導波管数の充分多い場合の値を用いて結合解析を行っ

た.各導波管での散乱行列が同一と近似できない有限導

波管の場合への一般化が最近なされている32・37・40)・これ

は分岐面とプラズマ境界面,途中の移相器の各散乱行列

を計算することにより結合特性が解析できる方法である・

解析結果は結合特性が二次導波管の直線部の電気長に強

く依存することが明らかとなっている.以下にこの方法

による解析法を述べる,

 一次導波管と二次導波管の境界面(分岐面)での散乱

行列を[S],分岐面でσ回目の散乱に際して分岐面へ

の入射波および散乱波の電場をεiた(9),ε,た(9)と書く.

これらを縦に一列に並べた行列を[ei(c)],⊂e,(α)]と

する,また二次導波管とプラズマの境界面での散乱行列を[T],プラズマ面における9回目の散乱に際し

てプラズマ面への入射波および散乱波の電場をEi評》,E,た(φと書く,これらを縦に一列に並べた行列を

[ε@],[ε⑥コとする,々番目の二次導波管での位相変化量φ競は設置された移相器での移相量 ま      ア

(々一1)4φと直線部の位相角φLの和となり,φ擁=δ擁exp(iφ娩)(ρ,々=1~」)と書ける,二

次導波管系の移相器の散乱行列は対角行列により[φコと書ける.行列に現れる添え字の0は一次導波管,1

122

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解 説 低域混成波と速波電流駆動のためのアンテナ・伝送系 大久保

から」までは二次導波管の番号である,定義から

[ε1α)]=[φ][θ,(9)コ,

[θ1σ)]=[の][εr(σ『1)],

[εr(α)]=[7][∠ri(c)]

[θr(σ)]=[s][θi(9)] ) (4.1)

となる・一次導波管,々番目の二次導波管での電圧反射係数はgについて和をとり得られる

駁蜘蹟嘉),) (4.2)

散乱行列[S]の要素は19)

  S。。=一(∫一」)/(ノ十」),

  Sた。=2∫且ノ2/(∫+1),

                                     (4.3)  S如=レ2/(∫+」)・(々=ρ)

      一2/(∫+」),(海≠ρ),

と表される,但し,曜,卿を一次,二次導波管短辺長とし,∫=四/卿,この(4.3)式は最近実験的にも確

認されている樹,

 プラズマ面での散乱行列E7’]は第3章で述べた(3.11)式にてρ番目だけに給電した場合の結果で計算

できる.図4.2に4導波管多分岐グリルでの二次導波管電気長φLに対する一次導波管の電圧反射係数およ

ぴプラズマヘ放射される高周波電力の方向性4φに関する依存性をそれぞれ示す32).太線は標準グリルの場

合の計算結果である.多分岐グリルの採用は放射電力の増大をもたらすが,方向性はφLにより改善と改悪

両方の効果を生むから設計に注意がいる.図4.3は4φ=30度での対応する放射パワースペクトルである』

比較のため標準グリルのスペクトルを太線にて示す32〉,大型装置ではパートサイズが広いためトロイダル

およびパロイダル方向に導波管数を増し,適当な個数をモジュールとして多分岐グリルを形成し,このモジ

ュールの積み上げにより結合系を組み立てている。可変できる移相量はモジュール間の位相差∠φ鴛であり,

内臓位相器の固定移相量∠φとの関連で,”と∠φの最適値を設計している38㌧

4.2 多分岐グリル結合実験

 多分岐グリルの有効性は1985年Petula-Bトカマクにて標準グリルと比較しながらイオン加熱実験が行

われた。図4.4に示されたごとく入射電力に対して多分岐グリルによるイォン加熱効率は標準グリルとほぼ

同じであるという実験結果を得た,結合実験はこの時点ではグリル位置の調整が充分でなく有利な結果が示

されていなかった:,しかし,その後,1986年にPetula-Bトカマクにて周波数を3.7GHzに上げ,3モジ

ュール導波管により要素導波管9列2段の結合系による結合実験が行われた39),1モジュールでは∠φ=120

123

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核融合研究 第67巻第2号  1992年2月

1カ

ρ!5

1%

3,58蓄o・

惨・’寧、

寡’慢

 31蜜・ゆ.

  、、

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      φ声:       3げ:r一一一一7』一一・O・          6げ:一一一一・一・?9、、          . 9げ:一・一一・一・一’心、                   12げ:一一一一q静一一騨一e

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嚇’~ミ・・、鴨_一撃甲瞬卦・・、、

7ん,覧だ婁艶‘妬蒲盆一一 殉陶、

ノ            ・瀬.ヘニ

0    60   12Q   180        Phα5ing(deg)

図4,2.4分岐グリルでの一次導波管反射係数と方向

  性.パラメータは二次導波管電気長太線は標  準グリルでの結果.計算条件は膨=15.5cm,   w-3.5cm,8-2、64τ,(7ηe)P-1011cm-4,

  ηP/ηc。一10,f-800MHz32).

~ミ

一10   -5・  一101  5   10          1V“図4.3.4分岐グリルの2次導波管電気長をパラメータと

   した放射パワースペクトル.17φ=30度,その他   の計算条件は図4.2と同じ.太線は標準グリルに対  応32).

△φ=3げ、 φLごげ:~・  ■  3σ:.一一一一一一_  6σ:一一・ い_・

9げ:一一・r._.12げ{一一一__

 ll l

聞  .亀i  、岡・亀  暫.

l v撃o

・亀  馳

置 鳴 娘

        巳      o 、∴撫 渉噛,

                       度で,モジュール間位相差∠φmが可変であり,

                  。。  ∠φm=一90,0,90度での実験結果は反射係数                  oo  . 0 200            。・  ・  が3%以下になる,JT-60トカマクではこの優れ                0            巳                   ハ                                     ロ

憲            。。..0 、臓 ●●    た性能を取入れ,既存の標準グリルを多分岐グリル

冒1・・ a・3・。’   型1こ改造し,同様の自動整合性に関する優れ雌能

       呂2。                       を確認し,大電流駆動実験に供した38)・最近,

  0  100P(kW)200 300」IPPT豆一Uトカマクで4導波管多分岐グ“リルに

図4,4,Petula-Bでの多分岐グリルによるイオン加熱実験.■ おいて図4.5に示すごとく二次導波管電気長を変え

   ●は中性粒子束エネルギー測定,□○は中性子測定に   よるイオン温度.四角印は標準グリル,丸印は多分岐  たときの一次導波管への反射と二次導波管での多重   グリル’p=140kA,ηe=(5.5-5.8)×馨013cm-3.

                       反射の影響が調べられ,理論計算と比較されている40).

一次導波管への反射は適当な二次導波管電気長を選ぶことにより激減されること,また二次導波管内で強い

定在波が立つことが実験で定量的に明らかにされた・

4・.3 準光学グリルアンテナ

 最近,ソ連にて準光学的な方法で低域混成波を励起する方法鋤が提案された,図4。6に示すごとくこの

方法はプラズマ表面近くに金属棒を等間隔4で数多く平行に並べ,そこへ電磁波を斜め方向に入射し,プラ

ズマ中に波を励起させることに基づいている.結合条件は々i..一々lh.=㌔(=2π/4)である。ここ・で

々圭、、は入射波数のZ成分,々1h.は低域混成波のz成分である・金属棒群で作られる空間波数観~々in2+嬬g,

124

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解 説 低域混成波と速波電流駆動のためのアンテナ・伝送系 大久保

EXPERIMENマ

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図4.5.二次導波管の電気長を変化させたときの一次への反射

  振幅,二次導波管のプラズマ面での入射と反射振幅.

  これらの諸量は分岐面への入射電界1与1で規格化し  た.t馬・1刈E担は分岐面での一次導波管への反射  振幅,1ερim l/l E/i!とI Eρr所!/I Eli lは二次導

  波管のプラズマ面での規格化入射,反射電界.前者の  値が0、5が標準遅波グリルに対応するがこの値を越す場

  合と低い場合があり遵波管により入射波のアンバラン

  スが生じる.記号●,○,*,△は第1,2,3,4  導波管での値。計算条件はηp/η、。=31。6,であり,他  は図4.2と同じ40).

X

q

y

lki

lHi

Ei

         D一一一一_一 一一一泣z

 d『

ぺ,

図4.6.準光学アンテナ原理図.プラズマ前面に金属

  棒列があり平面波を入射することにより低域  混成波と結合さす41).

(%は整数)において亀..=ゐ。sinα(ゐ。は自由

空間波数,αは入射角)である。遅波励起は

降..1>々。の条件がいる,このような状況で入射

波は低域混成波に有効に結合すると提案した,この

方法のプラズマでの実験が今後の課題である.

色々な工夫がなされた。誘電体充填導波管やリッジ導波管がその解決法の一つである,

イダル方向に取り付けることは一般に可能である。この特徴を活かしてTE、。モードを導波管に励起し,ア

ンテナ開口近傍にTE1。モードの電界と斜交した金属板が偏光器としておき,元の電界と直交する電界成分

を発生させ放射させる方法である鋤.元のTE、。成分の放射はアンテナ開口部にファラデー遮蔽格子をおく

ことにより抑えることができる.この考え方は最近ICRFの速波アンテナを導波管にする方法として偏光器

を導波管電界と斜交するように,金属線を設置した偏光格子の適用が考えられている,しかし,この方式偏

光格子の適用はプラズマ表面アドミッタンスを計算に繰り込んで結合が検討されたが放射効準が良くない43㌧

4.4 速波放射用偏光器内臓導波管アンテナ

 トカマクなどの装置で導波管型のアンテナを用い

て速波を励起するためには,プラズマパラメータで

きまる波の周波数が低いため普通の導波管を速波励

起に適合するように装置に取り付けることが難しく

             導波管の短辺をトロ

125

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核融合研究 第67巻第2号  1992年2月

5.伝送系要素部品と性能評価法

5.1 伝送線路

 MW級の大電力を長距離にわたって伝送する伝送線路を考えるとき減衰量,耐電圧,温度上昇,敷設の容

易さを検討する必要がある.低域混成波の周波数帯域では代表的な伝送線路として矩形導波管,同軸管,楕

円導波管が考えられる。矩形導波管はサーキュレータ,マジックT,方向性結合器などのマイクロ波伝送系

要素部品の設計と製作が容易であることやプラズマに入射するアンテナが矩形導波管からなるグリル結合器

であるため,接続が容易であることや曲率の小さい曲げに対しては曲げ導波管や可とう導波管を使用できる

ことの優れた特徴を生かして多くの低域混成波加熱装置に使われた.

 電圧電流から定義した矩形導波管での基本モードに対するインピーダンスは

    ウE       み    1Z〉1=  y =60π2一   (2/π)σ尾   4[レ(λ/λc)]互12

(5。1)

となる・4とウはそれぞれ導波管断面の長辺と短辺でズ軸,y軸は各々の ゐに沿っている・またλ,は遮

断波長で2αで与えられる.ッ方向の電界はTE、。モードのため一様電界であり,Ey=7/δと書けるので

最大電界をEm、.とした場合の伝送可能な電力は管内波長をλg(=λ/[1一(λ/λ,)]112)として

  ㌔/盟一8・44×10頓4σδλ/λg,    一    (5・2)

となる.単位はmks単位系である.導波管材料の導電率をσとした場合の伝送損失率α(dB/m)は次式で

与えられる。

   1,59  (α/2わ)+(λ/λc)2α==

  (σλ)1!2σ [レ(λ/λc)]1’2

一例としてEIA規格WR510(129mm×65mm,

EIAJ規格WRJ-1.7,肉厚2.0㎜)の導波

管に対してσ(Cu)=5.65×107Ω一1m,1,

σ(A1)=5.65×107Ωd m一粟を用いて計算し

た結果を表5.1に示す・EやHベンド,フラン

ジ接続などで伝送可能最大電力は次のごとく低

下する。

     FFF職F=Sf(t論12)2㌔・

              (5.4)

表5.1.WR510導波管の諸特性.

(5.3)

銅 アルミ

比重 8.93 2.70

導波管1m当たりの重量     kg 6.9 2.1

減衰率(2GHz)        dB/m 7.霊×10-3 8.9×10-3

1MW入力での導波管1mでの吸収kW 1.6 2.1

1m当たりの導波管表面積    m2 0.31

ξmax=30kV/cmの最大伝送電力  MW 51

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解説 低域混成波と速波電流駆動のためのアンテナ・伝送系 大久保

Ftは伝送線路の電力補正温度因子で0.8~0。9.殊は電力補正形状因子ある.Hベンドの場合理論的には

るの0。98程度であり実験値は0.83である。Eベンドは対して内外壁の曲率に応じて殊は0。4から1程度

変化する・容量性アィリスに対して短辺6!/6が0・4まで絞られたときるは0・1にまで下がる・誘導性アィ

リスの場合は長辺〆/σが0。5まで絞られたとき殊は0.3にまで下がる,更に導波管の接続ではαのミスア

ライメントが2%,δでは1%ある時,殊は0.9程度になる屡2)。これらの各種の形状効果を代表的に

馬=0.5とおく,4はベンド制作上の半径の精度の荒さの因子で0.6程度と経験的に言われている44),

Sfは安全係数・ρpは電力反射係数である.完全反射のρp=1とSf=2として上述のへ蹴=51MWから

段F=1.5MWとなる・

 導波管の温度上昇∠Tは∠Tr4/MCと書ける・、4は単位長当りのエネルギー吸収量(J),114は単位長

当りの質量(kg),一Cは比熱(J K-1㎏輔)である.例えばマィクロ波入力1MW通電時間10秒とすると,

導波管単位当りの吸収ワット数は既に求めているから,エネルギーとしては銅,アルミ導波管に対してそれ

ぞれ16,21kJとなる,上式を用いて∠Tを計算するとそれぞれ6℃,11℃である,繰り返し運転がなさ

れる場合,繰り返し時間を云,冷却過程は熱輸送係数h=6Wm』2KdとしてFexp(一≠/τ),τ=MC/hS

とかけ繰り返し毎の温度上昇の値の等比級数となって定常値

                           表5.2.WR510導波管の諸特性.<∠T>は<∠T>=(1十7十72十73十  )∠T=∠T/(1-7)

となり,表5.2のごとく定常温度が推定できる,

 大電力マィクロ波の伝送には楕円導波管が用いられること

がある.これはレーダのアンテナと送信器を結ぶ給電線路と

してアルミ楕円導波管やコルゲート楕円導波管の2GHz以上での使用実績に基づいている.楕円導波管の

特徴は長尺であるため,一般の導波管に比べて接続ヵ所が少なくてすみ敷設工事が簡単で安価であることや

可とう性に富むため屈曲,捻りができて矩形導波管の場合に必要であったベンドッイスト等の部品が不用に

なる.また,敷設経路を一般ケーブルのごとく考えてできるため,設計が容易であることや短尺の導波管を

接続した場合に生じる多重反射がないことや保守が簡単であり接続点でのブレイクダウンがなく,耐圧向上

のための封入ガスの漏れの心配がない特徴も備えている.楕円断面の長軸,短軸の全長を2σ,2戻m)

とすると減衰の近似式はアルミ製の場合

銅 アルミ

386 61138 25 8861179535

  1.34×10-4α=         F(dB/m) ,   λ1/22α

(5.5)

となる.Cを楕円短軸長軸比ひ/αとするとFはcとλc/λの関数である.6=0.67でλ,/λがL2から22

まで変わる間にFが約6から2.5位変わる,伝送主モードeH1の遮断波長の近似式は

  乍舞(1欝i箒y豫     (丘・)

127

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核融合研究 第67巻第2号  1992年2月

である。6=0.67のときλ,=1.69×2αとなる、λ,/λ=1。4とすると2GHzに対して2σ=12。4cmと

なり,WR-510とほぼ同じ寸法となる,減衰は1.1×10-2dB/mであり,伝送可能電力もWR-510とほぼ

同じである、

5.2 真空窓

 真空窓の種類にっいては,a,厚みの薄い窓,b。半波長の厚さの窓,c.アイリスで調整した共鳴窓が

考えられる。マィクロ波窓の秘質としてはガラス,アルミナ,サファィア,酸化ベリリウムなどがある.ア

ルミナは電気的,物理的性質の良さから他の材料の基準として考えられている,材料の性質としては引っ張

り強さが強く,熱伝導度が高く,熱膨張係数が小さいものが望まれる。酸化ベリリウムと酸化アルミニウム

(アルミナ)とを比較すれば,前者が性能的に優れているが,価格面,制作面,安全面からは劣る.現在低

域混成波のための電力入射真空窓はアルミナが主流であるが,発振源であるクライストロンにはベリリウム

も使用されている.a。b,型の窓は矩形導波管に誘電率ε,をもつ厚さLの誘電体が挿入され,出力導波

管が整合されている場合,反射電場Eは入射電場をE・として                r                1

E=E r   i

ρ [ 1 - exp ( 一 2γ1 ) ]

1 一ρ2exp ( 一2γ」 )(5.7)

となる・誘電体の中での電場Edは

Ed一尾(1鵠箔弄」))×[即{γ(」一2)}一{一γ(」一z)}]・(a8)

となる,誘電体での電力損失Pdは入射電力をPiとして

Pd

P圭

( 1一ρ2)[ 1-exp (一2α」 ) ][ 1十ρ2 exp (一2α」 )コ

1+ρ4exp(一4α」)一2ρ2exp(一2α1)cos(2餓。」)(5.9)

と計算できる.ここで

  γ=i/V規十α,(α:減衰係数),

  ノV=[ε,一(λ/2σ)2]112, (λ(々。):自由空聞波長(波数)),

  瓦。=[1一(λ/2α)2]112, ρ=(N。一ノ〉)/(瑞+N),

Edは1=λg/2にて最小値をとる。Pd/Piは材質によるが」≦λgにて一25dB以下である,薄い窓は

々。ε,112」《1,半波長窓はγ1=iπに対応する,機械的性能,冷却性能から図5,1に示すようなピルボッ

クス型の薄い真空窓も実用化されている。ピルボックス窓は5-10mm程度のアルミナかベリリヤ製の円盤を

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解 説

(α)

ミ避

低域混成波と速波電流駆動のためのアンテナ・伝送系 大久保

 1(b)

     ト・馨’,     ・く駄…鶏

ミ 隔一’

  図5.1.(a)ピルボックス型真空窓,  5.3 ベンド,コーナー

     (b〉λg/2厚真空窓                伝送方向をかえるために導波管の一部を円弧状に曲げた導波管

(ベンド)やかど導波管(マィターベンド,コーナ)がある。管内電界Eと平行にまげたEベンドやEと平

行にまげたHベンドがある.ベンドは通常,導波管断面の中央部分に沿って湾曲部分の長さをλ’/2の整数                                     9倍にとることにより,両側の接続部分からベンド部分をみたインピーダンスを等しくさせることによって,

曲がり部分の前後での特性インピーダンスの不連続が原因となる反射を打ち消す.図5.2のごとき構造上簡

単なマイターベンドもよく利用される.最適設計の4/4。                         1          1

円形導波管にろうづけしたものである、外側のジャッケットが誘電

体の冷却を可能にする。整合は円形から矩形導波管に変換するため

の距離で調節している.これはクライストロンの真空窓に使われて

いるものであり,性能的には十分良好である.しかし,グリルァン

テナに対してピルボックス型真空窓を装着するには,隣接する導波

管でのある程度の間隔がいるため,グリル開口面からかなり離れな

ければならない。この場合はグリル開口部と真空窓が離れるため,

この間作動排気が必要となる.

の最適寸法を角度θの関数として示したものであり・実

験的に求められたものである⑥,かなり広い周波数範囲

でVSWRが1.05以下にすることが可能であり実用的で

ある.

5.4 インピーダンス変換器

 矩形導波管の6を変えるためにテーバ導波管やステッ

プ変換器が用いられている,.ここでは図5.3に示す1/4

波長ステップ変換器について述べる46).これは標準導

波管からグリル要素導波管に寸法変換する場合に必要と

なる,

ぎα8

0.6

、《A)

ク1翻訟

ミα8

()

α1購・、

融喚

図5.2.

       Q,6  L⊥」」0  40- 80   0  40  80  {}《●》       {}(。》

E,Hマイターベンド設計グラフ45)(A)Eマ イターベンド,(B)Hマイターベンド.

   一般には2段型が周波数特性とステップ部での電界強度を減らすため使われる。これは受端インピー

ダンスZ,に1/4波長の特性インピーダンスZ。を有する伝送線路を接続すると・入力端インピーダンスZi、

はZi.=Z。2/Z,と書ける・段数が増すと変換器の長さが増えるが周波数帯域は増大する・ 矩形導波管の

高さδを変える変換器は特性インピーダンスが6に比例していることを利用する・Maximumally-Flat型

の設計が簡単でありよく利用される。この場合ぎ番目とづ十1番目の特性インピーダンスの比は

129

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核融合研究 第67巻第2号  1992年2月

Zh

(α)

6博

冨4

b

㈲」襲ねZin Z1

Zr

図5.36λg/4長導波管連結型段階イン

  ピーダンス変換器.

 Z州   πq    Z,Io9一=一r=r万一109一  ,  Zf   2   Zin

(5.10)

である45).ここで各段の位相長は中心周波数でπ/2である.矩形導

波管の高さδを変える変換器は特性インピーダンスがδに比例し

ているので入力端,出力端の高さをみ,ゲとすればステップ部分

の高さが決まる。J IPPT-HUで使用された例では周波数800

MHzで導波管WR-975(α=24.7cm,α=12.3cm)から

ガ=3.54cmの3段型変換器であり,1/4波長の14.3cmの長さ

で高さがそれぞれ9.1cmと4.8cmの導波管を中間に接続している.

5シ5 定在波比の測定と整合調整

 プラズマの電子密度や外部磁場,電子密度勾配等によリプラズマの表面インピーダンスがかなり広範囲に

わたって変化する,このためプラズマに対する整合については,スミスチャートの全域にわたって変化でき

る整合器が必要となる,導波管型についてはEH整合器,(λg/4)一3スタブ整合器などが代表的である,

特に大電力マイクロ波伝送の場合は高周波電圧破壊を避ける耐電圧性能の高いものが要求される,低域混成

波入射装置では,プラズマからの各導波管への反射を整合さす整合器は普通使われない.これは整合器の挿

入によりアンテナ電力スペクトルを変化させてしまうためであり,3。4で述べたごとくアンテナの位置の調

整によるのが普通である.ここでは実験室程度で製作器可能な大電力にある程度耐える比較的VSWRが高

くない導波管や窓等の伝送部品の整合について単r周波数のみのアイリスによる整合法について言及する,

整合は耐電圧の高い誘導性窓による方法である,誘導性窓の窓の間隔4が小さくなるほどサセプタンスは大

きくなる.この誘導性窓により任意の負荷インピーダンスが整合できる,基本的には定在波測定器によりρ

を測定し,スミスチャートで整合に必要なサセプタンスの見当をっけ,まず予測される場所に誘導性窓を仮

置きして定在波測定をする.次に誘導性窓を適宜移動して調整に当たってVSWRが最小となる位置を見っ

ける。引続きこの位置の近辺で誘導性の窓の間隔4を変化して線路が整合状態になるよう調整を続ける、

 VSWRの測定法は定在波測定器と無反射終端を用いた方法が一般的である,しかし,無反射終端の用意

が難しいとき,またはフランジがないグリルのごとき導波管には可動反射端による定在波測定が実用的であ

る.この方法は上記の無反射端による定在波の山谷の比から直接求める方法と異なり,可動反射端の移動と

定在波の谷の位置の移動の関係を測定する方法である,しかし検出器の精度が特に要求されないこと,およ

びグリルのごとく先端部に接続フランジがないばあいでも,完全反射端と近似できる可動反射端が利用でき

る利点がある・この方法はS曲線法と呼ばれグリルに取り付けたλ9/2アルミナ真空窓の性能測定と伝送系

要素部品の整合調整のため利用されている,図5.4のごとくに測定すべき導波管(DUT)の入力側と出力側

130

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解 説 低域混成波と速波電流駆動のためのアンテナ・伝送系 大久保

 ゆ D   l   尋  /      ¥¥       ¥\

        ヤD’一一一一一一一一 一〇          ¥

に任意の端子丁1,T2を決める。出力側にT2からS離れた位置に

可動短絡板を挿入して入力側から電力を入射レ・T、から電圧最小

の位置までの距離Z)を求める,Sを変化させてSとZ)の関係を測定

する。この関係は

tan2π(Z)!一Z)。ノ)=μtan2π(SノーS。ノ) (5.11)

             S,0.、1   s6                ¢でP!=0%・P・!=P・/λ9・・Sノ=S/λ92・S♂=S・/λg2

                である.P。7S。はTL,T2より求める基準面までの距離.λg三,

 lnput     .output                λg2は入力,出力導波管の管内波長,5とρの関係はSノとP!の関

                係に変換できて,一般に図5.4のごとくDノ,S!の1/2を周期と

 D Doη    1乏So S    する一1の傾斜の直線に対してS字曲線となる.上式の微分から曲 図5.4.反射端を用いたVSWR測定法46).

                線はZ)ノニZ)。ノ±%/2,S1=S。ノ±吻/2(%,吻は整数)にて最大

の傾斜μ,これから1/4離れた点で最小の勾配1/μとなる,一1の傾斜の直線に対する幅を2〆とすると次

の関係がある46㌧このμからVSWRが求まる,

       一グ㎡2π(巻号の,      (包12)

君DUT

5.6 方向性結合器

 低域混成波帯の周波数での方向性結合器は抵抗性ループ結合器がおもに使われている.グリル結合器のよ

うに導波管束で位相制御を必要とするが,結合器の設置場所は抵抗性ループの場合導波管の広い面に置く必

要がある,これはグリルでは不可能でグリルから遠方に離れたところでの単一導波管に用いなければならな

い。1乳を検出するように結合度が同じ2つのループを導波管の狭い面にλg/4離れてとりつけ,各々の出

力を安価な3dBハイブリッド結合器につないだ方向性結合器が開発された47).これにより方向性20dB程

度の方向性結合器が簡単に作れる、これを利用すると真空中でも方向性結合器の設置が可能で,グリルマウ

スでの各導波管の位相と振幅を簡単に測れる。また,特殊形状の断面を持つ導波管に対してもこの方法は有

効である.図5.5がその原理図である切.

5.7 散乱行列測定

 一般に散乱行列の要素Sガの測定には,入力端のブ番目ポートに信号源をつなぎ出力端づ番目ポートに検

出器をつなぐ・その他のポートは無反射端をすべて接続し,入力と出力の振幅の比と位相差を測定して結果

が得られる、この方法は多分岐グリルのごとき沢山の導波管が分岐面につながれている場合,多くの無反射

端を必要とし,かつ接続フランジがいる.分岐面として多分岐グリルの開口部でも同様な問題が生じる,こ

のような欠点を克服するため,無反射端を必要としない波束入射法による散乱行列の測定法が最近開発され

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核融合研究 第67巻第2号  1992年2月

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図5.5.グリル用方向性結合器概念図47)、

擦粛

浮  11me’(2rβ1div)        Time}(2nsldl〉〉

図5.6。波束伝播法による散乱行列測定48).(a)一次導波管での入射(Ao)

  反射(Soo)波束と二次導波管での散乱(Slo,S20,S30,S40)波束.

   (b)二次導波管内側の一つからの入射(A2)と反射(S22)波束,

  及び散乱(S12,S32,S43,So2)波束.ここでA,とS,∫におけ   る添字0は〒次導波管,添字1,2,3,4は二次導波管を表す.

た48).

 その原理は多数個の分岐をもつマイクロ波の分岐点のブ番目の伝送路での反射波と入射波の振幅をgア

窮とする時,散乱行列要素S万は佑=ΣゴS万鳶と書ける,入射された波束が分岐点で多くの出力端につ

ながった伝送路の端から反射した波東が再度分岐点に到達する前に出力端への入射波束を測定すれば散乱行列

要素が直接求まる,この測定では波束測定のため5.6で述べた特殊方向性結合器を導波管上に取り付けるこ

とにより実験がなされた48).図5.6に示すごとく一次導波管から入射した波東の二次導波管への分岐の状

況と二次導波管の一つからの入射による他導波管への分岐の様子を示す.実験では波東が位相ロックされた

繰り返しのバーストが使用され,測定にはサンプリングスコープが利用されている、更にこの方法をプラズ

マに対して適用され,多分岐グリルのプラズマ結合が実験と計算とが比較されている(図4.5参照)40㌧

6.おわりに

 プラズマ加熱での高周波技術の開発と発展は常に核融合実験装置の大型化・定常化の進展に付随して進ん

で来た。現在計画されているITER等の計画の進展が高周波加熱技術の今後の大型化・定常化開発計画に強

く影響することは明らかである、低域混成電流駆動の発振源であるクライストロンは,トカマクの定常化を

目指すとき現在利用できるクライストロンのなかで大電力・定常と限定すると2.4GHzと3.7GHz帯のも

のであろう.現存のMW出力のクライストロンは熱的平衡にまで達するような設計ではなく,定常化を目指

すとなると更にR&Dが要求される,ITERでは5-6GHzで45MWという大電力を入射し,電流たち上

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解説 低域混成波と速波電流駆動のためのアンテナ・伝送系 大久保

げ駆動と周辺プラズマの電流分布制御をする手段として計画されている。この計画の実行には多くの工学的,

理学的なR&Dの関門を乗り越えて行かねばならず,絶え間ない努力が必要となる.この解説で述べた多分

岐グリルによる電力放射系は電流駆動の高効率化のため鋭い巫スペクトルを持つ要請がある。このためグ

リル開口部の導波管要素の構造の断面は5mm×50mm程度のものが500個位束になった構造になってしまう.

特に先端部の構造,定常化に伴う熱応力,電磁力等の機械的性質,除熱方法,放射化が問題となるが,これ

らに関するデータベースは少ない,アンテナ伝送系のR&Dはこれまでの経験に立脚して進められるが,大

規模化に伴う単純化,低価格化が要請される.アンテナ技術開発はもとより,今後の核融合開発はシステム

工学的色彩が強くなることは必然的で超工学的な新技術の開発に期待し,努力する必要がある.

謝辞

 本解説の執筆をお勧めいただき,原稿内容に関して議論して下さいました京都大学理学部田中茂利先生に

感謝いたします.また本解説をまとめるに当たり,富山県立大学松本和憲氏との共同研究に負うところが大

きいことを感謝します.

付録

β=(▽ξ%,)pω/(%c。の、,)とおくと速波のプラズマ表面アドミッタンスが次のごとく書ける.

1ハ石I l<1に対して

邦1(璃)一1警鍔≠警舞・

   (1一瑚12)312σ=一     2β

 _  %P(2β)1/2∂

P (Vξ%e)P(1一甜)1/4

(A.1)

1踊1>1に対して

        一iツ。(2β)1/2 Wノ(α・%)一i hWノ(σ・一%)  yp1(茄)=        (瑚12-1)1’4 W(α・砂P)十ihW(α・一〇P)

    (瑚12-1)312   _  %P(2β)1/2  α==          ,   θ      2β    P (▽ξ%e)P(瑚12-1)1!4

  h=(1+exp(2πσ))1!2-exp(πσ),

ここでのプライム記号はびに関する微分である,apの微分方程式の解は

(A.2)

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