品質重視の日本的経営に関する 歴史的考察と今後の...

24
品質重視の日本的経営に関する 歴史的考察と今後の課題」 ~グローバル時代に向けて鹿子木基員(1958年化学卒) 中小企業診断士、KAIZEN合同会社 代表社員、 東工大バスケット部同窓会会長 三菱化成・樹脂・ダイアホイルで、PET FILM担当(1968-1985) 旧三菱化成(現三菱ケミカル)勤務40年、後、ODA専門家経験16年

Upload: others

Post on 04-Apr-2020

1 views

Category:

Documents


0 download

TRANSCRIPT

「品質重視の日本的経営に関する 歴史的考察と今後の課題」 ~グローバル時代に向けて~

鹿子木基員(1958年化学卒) 中小企業診断士、KAIZEN合同会社 代表社員、

東工大バスケット部同窓会会長 三菱化成・樹脂・ダイアホイルで、PET FILM担当(1968-1985)

旧三菱化成(現三菱ケミカル)勤務40年、後、ODA専門家経験16年

1. 講演の狙い 感謝 感謝 感謝 感謝

• お話をすることで、元気を戴きます

ガンバロウ、蔵前工業会 期待 • 教育改革の推進に貢献しよう

・日科技連、石川 馨、デミング等が活躍して構築した日本的品質管理は、高度経済成長を実現し、世界を驚かせた経験の中には、当面の課題解決に欠かせない教訓が含まれていることに気づきましょう。先人の知恵を現代に生かすのは、我々の権利で役目です

アッピール

日本的品質管理の知恵を活用しよう

言 葉 1: 品質

品質(QUALITY(Excellenceと同義)からの造語)

• 1.数で表せない

• 2.いい、悪い がある

• 3.広い対象に使える

例: クォリティ オブ ライフ

• 4.生産者が提供、顧客が良否を決定

言 葉 2: 日本的 • 日本的は、自然崇拝、宗教性弱い

• 日本的経営の特徴 1.終身雇用制、 2.年功序列制、 3.企業内労働組合 日本的品質管理は全社的品質管理経営 KAIZEN の中心は TQC 米国から導入したのは 統計的品質管理 SQC

• 日本的経営を強化する方向や方法は? • 強みを生かすために、弱みを鍛える! • 頑張る! 意識改革! 先人に学ぶ!

陰影礼賛 文豪 谷崎潤一郎

The QUALITIES 「紙」というものの持つ柔らかみと温かみ

The Praise of Shadows

日本的とは 外人の観方 • グレゴリー・クラーク氏は、日本を蚊帳の外から見て

いた人である。この71歳のオーストラリアの学者は現在、日本国際教養大学の副学長を務めている。クラーク氏は一人の西洋人として独自の見解を持っている。日本は島国で、集落文化を中心に発展してきたため、彼らの価値観は本能的であり、さらに言えば、感情的で現実的であると主張する。一方、中国は大陸文化で、長い間、周りとの衝突や接触を繰り返してきているため、価値観はより理性的だ。これらの観点に基づいて、グレゴリー・クラーク氏は日本人の特徴を13の項目にまとめ、中国網日本語版(チャイナネット)が報じた。

• 2010/07/27(火) 18:46

1.過度な「群れ意識」を持ち、命令に従う習慣がある。その典型的な例が第二次世界大戦のときの外国への侵略である。 2.個人間の関係は驚くほど誠実なものである。ものを拾ったら、一番近くの交番に届けるというのが日本の一般常識であるからだ。 3.日本人は完ぺき主義者であり、極端なほど秩序にこだわる。トイレのきれいさは有無を言わさず完璧である。 「4.手作りが好きである」「5.チームワーク意識が強く、身内だけでやるような家族企業の管理に長けている」「6.外国のものに

は、開放的で、広く受け入れるのに対し、外国人に対しては排他的である」3~6の特徴は、日本の工業化が急激に進んだ要因であると考えている。

面白いのは、これらの特徴に対して、中国人は日本人の間逆であると言うことだ。中国人は『知らないふりをしたほうがいいときには、そうしなさい。時には一歩引くことも大事である』との考えや、『その時々に応じて、どちらにも偏りがない考え方をしなさい』との考えを大切にしている。抽象的な信念について論じることが好きで、具体的な行動には移さない。外から来た思想に対しては排他的で、外国人は寛容に受け入れる。 7.イデオロギーが軽薄で頼りない。これは日本の政治の世界で際立って見受けられる。 8.感情的で好戦的である。中国への侵略、どこまでも自制心

が効かず、戦争を拡大させ、南京大虐殺という悲劇をも生んだことがいい証拠である。 9.外交・経済政策において、戦略性に欠ける。クラーク氏は

日本の外交ははっきりと定まった理念がなく、典型的な日和見主義であると主張。また、経済政策においても短絡的で、日本経済の10年にも及ぶ停滞を招いた主な原因もそこにある。

10.合理性に欠ける。例えば、日本には整った義務教育のシス

テムがあるにもかかわらず、大学教育となるとありきたりである。日本に合理主義というものは存在しない。周りの影響を受けずに、真に独立した考えができる知識人がいない。 11.政府の力が弱く、派閥争いが目立つ。日本は中央政府がなくても、地方自治だけで十分賄えるとクラーク氏は言っている。 12.道徳観念は根本的に恥を重視し、罪悪感は重視されない。

日本人は礼儀正しく、よく笑い、規律を守り、人に対して誠実であるにもかかわらず、過去の罪に対しては、目をそむけ真剣に向き合わない。その理由はこの道徳観にある。 13.日本人は法律が嫌いである。これに関しては、不思議がる

人もいるだろう。なぜなら日本はアジアの中だけで考えても、法治国家に属する。レゴリー・クラーク氏は、日本人は西洋人と比べて内々に事を解決することを好み、止む終えない場合だけ裁判を起こすのだと主張した。(編集担当:米原裕子)

資源のない日本の外貨獲得の方法

豊 田 綱 領 トヨタ自動車 75年史 より

上下一致、至誠業務に服し、産業報国の実を拳ぐべし

研究と創造に心を致し、常に時流に先んずべし

華美を戒め、質実剛健たるべし

温情友愛の精神を発揮し、家庭的美風を作興すべし

神仏を尊崇し、報恩感謝の生活を為すべし • 豊田佐吉の考え方を、豊田利三郎、豊田喜一郎が中心となって整理・

成文化。佐吉の5回目の命日にあたる1935年(昭和10年)10月30日に発表された。

• トヨタグループ各社に受け継がれ、全従業員の行動指針としての役割を果たしている。

終戦から日本経済高度成長の時代

1945年

終戦

1948年 QCリサーチグループ活動開始

1949年 全国規模のQCセミナー開始

1950年 月刊誌「品質管理」創刊

1950年 デミング博士「8日間セミナー・経営者のための品質管理講習会」

1951年 第一回 デミング賞

1952年 QC月間制定

1954年 ジュラン博士来日「社長・重役特別講座」、重役の責任について

1960年 日本政府 デミング博士に勲二等

空白 日米貿易摩擦、日本高度経済成長

1979年 「ジャパン・アズ・ナンバーワン」発刊

1980年 米NBCテレビ If Japan can…Why can’t we?

1983年 デミング博士著書出版 @MIT

1986年 今井正明著 KAIZEN 米国で出版

1987年 ISO 9001 品質マネジメント規格初版制定、デミング博士 米国技術賞受賞

1987年 マルコム・ボルドリッジ賞

デミング博士の教え https://ja.wikipedia.org/wiki/W

• 経営者が持つべき総合的知識 – 1. プロセス全体の把握 – 2.統計学を活用してバラつきを扱え – 3.知識を説明する概念と限界(認識論) – 4.心理学に関する知識

今、買ってくれている顧客が買ってくれる理由と買わない顧客の買わない理由を明確にせよ!

デミングの品質・生産性マネジメント 14のポイント

1. 改善の方向を定める

2. 新しい時代を認識し変化に挑戦する哲学を共有する

3. 全品検査依存を止める、検査の必要をなくすことを目指す、統計的手法を活用する

4. 価格だけに基づいて業者を選定することを止める。価格と品質によって選定する

5. 問題を見逃さない、全工程で継続的に向上させるのがマネジメントの役割である

6. OJTを制度化する

7. 職場のリーダー問題解決だけでなく、人材の育成に努めよ

8. 社員の不安を取り除き、全員が会社のために効果的に作業できるようにする

9. 部門間の障壁を取り除く

10. システムの能力を超えたスローガンの提示をやめる

11. ノルマ割り当てや数値的な目標管理をやめる

12. 時間給作業員から技量のプライドを奪わない

13. 強健な教育プログラムを実施する。

14. 最高経営陣で、上記のポイントをすべて徹底させる構造を構築する。

デミングの躾

• 努力しましたはダメ、だれもがやっている、必要なのは整合性ある努力

• 短期間の損益は、能力の目安にならない

• 曖昧な目的意識

• 気休め、一時的な処置

• 言い訳、言い逃れ、押しつけ

• 問題隠ぺい

日本的(全社的)品質管理は経営の思想 石川 馨

• セクショナリズムをぶち破れ

• TQCは事実(勘・度胸・経験でなく)による管理である

• 全員参加で人間尊重の経営ができる

• 理論と実践の学問である • 各階層の特性に合った情報発信とコミュニケーション・システムを

提供

• QCサークルの指針:全員参加で、個々に役割を決めて、発表し、悪さ加減を共有する

• 魚の骨図(石川ダイアグラム)

プレゼンター
プレゼンテーションのノート
石川さんは、日本的品質管理普及の象徴的人物です。父上は、東大教授、日産化学社長、初代の経団連会長、一番下の弟さんは、私より4年上の三菱化成社員で、テレフタル酸技術の開発では、石川さんが開発部の研究者、私が生産部側の技術受け取り側でした。 石川馨さんも、応用化学の東大教授、武蔵工大(今は東京都市大学)学長ですが、技術者の立場で、異なる分野や異なる階層とのコミュニケーションに配慮して、経験・勘・度胸に頼るコミュニケーションを改善することにおいて、大きな成果を上げられたと思います。読む価値がある著書だと思います。

1. 生い立ち:東大教授・日産化学社長・戦後初代経団連会長を務めた石川一郎の長男、1939年東大工学部応用化学卒、石炭液化企業や海軍技術科士官に勤務、1947年から東大助教授、この間の実社会経験が品質管理(QC)をやるのに非常に役立った。 2. QCとの出会い:ばらつくデータの取り扱いのために1948年、研究室で統計の学習を始める。1949年に統計の文献調査のために日科技連を訪問した際に、小柳賢一専務理事から強引にQCリサーチグループに入って指導講師をすることを条件に、文献の提供を受けた。 3. QCに惹きこまれた理由: • (1)統計は、データから諸判断を下す際に必須科目と判断した。 • (2)資源のない我が国の輸出振興のためにQCは必須である。 • (3)大学卒業の実社会体験から、社会の意思決定機構の不合

理を実感していたので、QCを正しく適用することによって、日本のきぎょう、社会のおかしな点を直していくことができると思った。企業の体質改善、経営の思想革命ができるのではないかと思った。

石川馨著「TQCとは何か-日本的品質管理」(増補版)日科技連 2ページより

石川 馨が何故品質管理を始めたか

プレゼンター
プレゼンテーションのノート
石川さんは、日本的品質管理普及の象徴的人物です。父上は、東大教授、日産化学社長、初代の経団連会長、一番下の弟さんは、私より4年上の三菱化成社員で、テレフタル酸技術の開発では、石川さんが開発部の研究者、私が生産部側の技術受け取り側でした。 石川馨さんも、応用化学の東大教授、武蔵工大(今は東京都市大学)学長ですが、技術者の立場で、異なる分野や異なる階層とのコミュニケーションに配慮して、経験・勘・度胸に頼るコミュニケーションを改善することにおいて、大きな成果を上げられたと思います。読む価値がある著書だと思います。

講演者からのメッセージ

• イノベーションは、オリジナルな問題発見、課題設定から始まる

• 先人の事例から必須処置、有効な手法を学び、当面する課題解決の戦略をたてて、イノベーションに挑戦する

• 既存の標準の妥当性は、自分の立場で評価し、必要があれば、改訂する戦略を立てる

18 KAIZEN LLC

活動を続ける改善の匠の秘伝

• 細井 貢さんは、1968年の高校を卒業して、工場の運転員として入社、問題の多い現場で、問題発見・解決の力量を発揮して、大きな貢献をしました。現場で働きながら、16件の特許を出願しました。その力量は、現在も、余人をもって代えがたく、同氏は、70歳の今も、部長代理の名刺をもって、世界中の、問題解決現場に貢献しています。その細井さんが、イノベーションの核となる観察力について、秘伝を公開してくれました。

問題発見能力、考察力(思考力と判断力)、観察力

【私の教訓】

① ある程度装置を覚えたり、操作方法を知ると人は必ず、自分のレベルで物事を

判断したがる。「知っているつもり、知ったかぶり」

② 現地、現物、現象を見ないで問題点を解決しようとする。実際には全く違った

現象が現れている事があり解決に時間が必要となるケースが多い。

(卵の形状では、正面では円に見えるが実際は楕円形で両方では大きさが違う)

③ 実際自分の目で見ていなければ、上司への報告もいい加減な報告となり、

対策の方向づけに間違いが生じる。

④ 自分に技量が無い場合、「見た事だけ」正確に報告する。その基本姿勢を守ると

問題が見えてくる。(誰しも全部知っている訳ではない事を知る。)

⑤ 問題が発生した場合、その装置や条件が同じ様に運転されていても、(数値上)

必ず間違いや原因があると疑ってかかる。その強い気持ちが無ければ問題箇所

を発見できない。

⑥ 改善力、もっと良い製品を、もっと楽できる方法はないか、この方法が最良の

方法ではないと考える気持ちを持つ。

⑦ 技術伝承は机上教育で教える事も大切であるが、その人の行動や考え方を「盗む」事に ある。(直接指導や教育を受けても身に付く量は少ない。)

⑧ 仕事の取進めでは「段取り魔」になる。人に指示されなくても率先して次の作業

の段取りを出来る人になる。(何時までに、何と何を準備してと気を配る)

⑨ 失敗をしないで成功はない。何事も失敗して反省して次に繋がる。

⑩ 新しい技術の発掘では、何事にも興味をもって取り組む。

⑪ 物を観察する場合、時間軸が必要で、例えばゲージ圧確認では10秒は必要と

教育している。10秒と言う時間は短い様で長く、正確に判断できる時間

⑫ 物を観察する場合、3か所以上の角度から観察する。角度を変えると物が違って

見える。

⑬ 見えない物が見えてくるのは、その見方の工夫にある。角度や速度など、

(微細キズや異物でも工夫すれば見える事を知る。)

モノづくり技術者、技能者への新たな人材育成法

2015.03.28

先人の経験から得られる知恵の例

項目 日本的の弱み グローバル 先人の知恵

志向思考 環境順応型 自律性、論理

性弱い

闘争的 論理的

品質をキーワードに全員参加経営の実現

(経験多様)

知識 内外事情疎い 広い 導入と導出を経験 学習方法

行動 成り行き次第 論理優先 現場確認、論 ・情理裏付け

コミュニケーション

曖昧な会話 以心伝心

自己紹介できない

論理的会話 現実的会話

(表情。動作) 5W1Hの文法

大部屋、5W1H Repeat Why?

QC活動、方針管理

表情 無表情、作り笑い

重要コミュニーションツール

QC大会

会話 ナルホド What? Or Why? QC活動

リーダーシップ Emotional 勘・度胸・経

験・好悪

Reasonable +Emotional

品質重視でReasonable +Emotional

終戦

改革(戦後70年)

将来の夢

・活動する、教養豊かな人材育成 ・グローバル時代の教養教育ニーズにチャレンジ ・知識が習慣づけられて教養となる