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慈恵医大ICU勉強会

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Page 1: ICU遷延性意識障害の区別 Editorialより •Coma –意識がないだけでなく覚醒もしていない状態 •Vegetative state –覚醒はしている (目覚めているので,目を開

慈恵医大ICU勉強会

Page 2: ICU遷延性意識障害の区別 Editorialより •Coma –意識がないだけでなく覚醒もしていない状態 •Vegetative state –覚醒はしている (目覚めているので,目を開

Introduction

植物状態 Vegetative sate

植物状態 Vegetative state

熟練したチームで評価すると43%が minimally conscious state (最小意識状態)

と再評価

しかしこの評価でも認知しきれない 患者群が存在する

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遷延性意識障害の区別 Editorialより

• Coma –意識がないだけでなく覚醒もしていない状態

• Vegetative state –覚醒はしている (目覚めているので,目を開けていることもあるという意味) が,「意識 (外部の環境や自分自身のことを意識するという意味)」のない状態

• Minimally conscious state –最小意識状態

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補足

• 最小意識状態 (minimally conscious state;MCS) – 2002年Giacinoらにより提唱

– 1) 単純な命令に従う

– 2) 正誤に関わらず,身振りや言語でイエス・ノーが表示できる

– 3) 理解可能な発語

– 4) 合目的的な行動

–以上のうち1項目以上が存在するもの

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植物状態であると診断された患者40名のうち 17名 (43%) がmisdiagnoseされていた

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Functional MRI (fMRI)

植物状態と診断されていた 24名中4名 (17%) が 「意識あり」と判定された

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その4名中1名は Yes/No questionに 答えることができた

Yes 運動のイメージ (テニス)

No 空間のイメージ (道案内)

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Introduction

• fMRIで評価する問題点

–コスト

–設備

–移送の負担

–静止できない患者でアーチファクト

–金属インプラントが存在すると使用できない (外傷患者ではcommon)

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運動想起による脳波の変化

• 正常な意識を持つ人が手やつま先を動かしているイメージを浮かべると (運動想起),脳波の特定周波数帯出力が変化する現象 (出力低下をERD,出力上昇をERSという) がμ波とβ波の領域で見られることが知られている –手の運動想起

皮質外側前運動野 lateral premotor cortex

–足のつま先の運動想起 皮質内側前運動野 medial premotor cortex

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Methods

• 患者 – 2010年7月~2011年6月 – ヨーロッパの2施設

(イギリスAddenbrooke‘s病院、ベルギーLiege大学病院)

– Coma Recovery Scale-Revised(CRS-R)で植物状態と判定された外傷性および非外傷性の脳損傷患者を登録

• コントロール – カナダWestern Ontario大学から健常対照者を登録

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CRS-R

• 植物状態の患者と 微弱ながら意識のある患者を 鑑別するのに用いられる

• 6つのsubscale – 聴覚 auditory

– 視覚 visual

– 運動 motor

– 口腔運動 oromotor

– コミュニケーションCommunication

– 覚醒 Arousal

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Methods

• 患者 – 脳波測定中に,指示に基づいて右手と足指を動かすイメージを浮かべる課題を4回以上課すに課す

• コントロール – それぞれ6回以上実施

• 具体的指示 – 「ブザーが鳴ったら右手を握って開く動作をイメージしてください」 「ブザーが鳴ったら両方の足指を動かし、その後リラックスする動作をイ メージしてください」

– どちらの課題においても筋肉の動きを意識するよう求めた

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Methods

• 多チャンネルの脳波測定用ヘッドキャップの129電極のうち, 運動野をカバーする25電極からの情報を得た

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Results

• 植物状態の16患者を評価 • 非外傷性脳損傷患者は,外傷性脳損傷患者よりも有意に高齢 (p=0.02)

• 外傷性脳損傷患者の年齢の中央値は29歳 (14-45歳) • 非外傷性脳損傷患者の年齢の中央値は44歳 (30-63歳)

• コントロールの年齢の中央値は25歳 (21-31歳) で, English speakerであり,神経疾患はない

• 傷害を発症してからの時間 (p=0.13) と CRS-Rスコア (p=0.20) は 外傷・非外傷間で有意な差は見られない

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16症例中3名 (19%) が, 脳波で検出可能なレベルで指示に従っていることを確認 脳波との確度は61-78% (平均70%)

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Results

• ロジスティック回帰分析では,

–脳損傷発生時の年齢

–発生からの時間

–脳損傷の原因

– CRS-Rスコア

• といった要因と,意識の存在を示す脳波の変化の間に有意な関係は確認されなかった

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運動想起に関連して 健常人と同じ部位に活動を認める

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Discussion

• fMRI –植物状態と診断されていた17% (4/24) の 患者が「意識あり」と判定

• EEG – 19% (3/16) の患者が「意識あり」と判定

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Disucussion

• 厳格な臨床評価が行われていたにもかかわらず,植物状態と診断されていた患者の一部は,健常人と同様に指示通りに運動想起することが可能だった

• 脳波を指標とする方法は – 安価

– 持ち運びできる

– fMRIより動作によるアーチファクトの影響が少ない

– 金属インプラントが留置されていても可能

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Discussion

• 脳波はコミュニケーションツールとしても有用と期待される

–右手を握る動作を想像すればYes

–足の指を動かす動作を想像すればNo

–といったルールを設けて患者と対話することが可能になるかもしれない

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補足

• 我が国における遷延性意識障害 (俗称:植物状態) の定義 – 日本脳神経外科学会による定義 (1976年) が代表的 – 1) 自力移動不可能 – 2) 自力摂食不可能 – 3) 屎尿 (しにょう) 失禁状態にある – 4)たとえ声は出しても意味のある発語は不可能 – 5) 「眼を開け」「手を握れ」などの簡単な命令にはかろうじて応ずることもあるが,それ以上の意思疎通が不可能

– 6) 眼はかろうじて物を追っても認識はできない – 以上6項目が,治療にもかかわらず3カ月以上続いた場合を「植物状態」とみなす

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感想

• ややbasic science的な研究

• 我が国における「植物状態」は1976年の定義が代表的であり,Minimally conscious state (最小意識状態) の概念は一般的でない?

• いずれにしても発症からある程度の時期が経過してからであるので,我々のICUで直接脳波を適用することはないだろう

• End of life careには影響する可能性