小学校道徳部会 道徳の時間の特質 - 徳島県立総合教 …...2...

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1 平成23年8月 平成23年8月 平成23年8月 平成23年8月 小学校道徳部会 徳島県立総合教育センター 教育課程研究 教育課程研究集会資料 集会資料 教育課程研究 教育課程研究集会資料 集会資料 道徳の時間の特質 そもそも道徳の時間は,何をする 時間なの? 道徳の時間においては,以上の道徳教育の目標に基づき,各教 科,外国語活動,総合的な学習の時間及び特別活動における道 徳教育と密接な関連を図りながら,計画的,発展的な指導によっ てこれを補充,深化,統合し,道徳的価値の自覚及び自己の生き 方についての考えを深め,道徳的実践力を育成するものとする。 道徳の時間のねらいは,学習指導要領第3章 道徳に,以下のように示されています! 道徳の時間の特質は, 次のようにまとめることができます。 計画的,発展的に指導する。 道徳的実践力を育成する。 補充,深化,統合する。 道徳的価値の自覚を深める。 道徳の時間の特質

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Page 1: 小学校道徳部会 道徳の時間の特質 - 徳島県立総合教 …...2 学校の教育活動全体で行う道徳教育との関連を明確にし,児 童生徒の発達の段階に即しながら,道徳の内容に示された基

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平成23年8月平成23年8月平成23年8月平成23年8月

小学校道徳部会小学校道徳部会

徳島県立総合教育センター

教育課程研究教育課程研究集会資料集会資料教育課程研究教育課程研究集会資料集会資料

道徳の時間の特質

そもそも道徳の時間は,何をする時間なの?

道徳の時間においては,以上の道徳教育の目標に基づき,各教

科,外国語活動,総合的な学習の時間及び特別活動における道

徳教育と密接な関連を図りながら,計画的,発展的な指導によっ

てこれを補充,深化,統合し,道徳的価値の自覚及び自己の生き

方についての考えを深め,道徳的実践力を育成するものとする。

道徳の時間のねらいは,学習指導要領第3章道徳に,以下のように示されています!

道徳の時間の特質は,次のようにまとめることができます。

■ 計画的,発展的に指導する。

■ 道徳的実践力を育成する。

■ 補充,深化,統合する。

■ 道徳的価値の自覚を深める。

道徳の時間の特質

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■ 学校の教育活動全体で行う道徳教育との関連を明確にし,児

童生徒の発達の段階に即しながら,道徳の内容に示された基

本的な道徳的価値の全体にわたって計画的,発展的に指導する。

■ 地域や学校の実態及び児童の発達の段階や特性を考慮し,教師

の創意工夫を加えて,道徳の内容のすべてを確実に指導すること

ができる見通しのある計画を立てる必要がある。

計画的,発展的な指導は,道徳の時間の大きな特徴です!

学校の教育活動全体で行う道徳教育を補充,深化,統合する

● 子どもは,学校の諸活動の中ですべての道徳的価値について感じたり考えたりする機会があるとは限らない。

● 道徳の時間は,学校の諸活動で考える機会を得られにくい道徳的価値について補充する役割がある。

● 子どもは,体験の中で道徳的価値の意味などについて必ずしもじっくりと考え,深めることができているとは限らない。

● 道徳の時間は,このように道徳的価値の意味やそれと自己とのかかわりについて一層考えを深化させる役割がある。

学校の教育活動全体で行う道徳教育を補充,深化,統合する

● 子どもが,多様な道徳的体験をしていたとしても,それぞれがもつ道徳的価値相互の関連や,自己とのかかわりの全体的なつながりなどを考えないままに過ごしてしまうことがある。

● 道徳の時間は,それらを統合し,子どもに新たな感じ方や考え方を生み出すというような役割もある。

学校の教育活動全体で行う道徳教育を補充,深化,統合する

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次に,道徳的価値の自覚を深めるということはどういうことなのでしょうか?

■ 一つは,道徳的価値についての理解である。道徳的価値が人間らしさを表すものであるため,同時に人間理解や他者理解を深めていくようにする。

■ 二つは,自分とのかかわりで道徳的価値がとらえられることである。そのことにあわせて自己理解を深めていくようにする。

■ 三つは,道徳的価値を自分なりに発展させていくことへの思いや課題が培われることである。その中で自己や社会の未来に夢や希望がもてるようにする。

「小学校学習指導要領解説道徳編」には,次のように示されています。

1 道徳的価値について理解する。

道徳的価値の自覚を深める

価値理解…道徳的価値は大切であること

人間理解…大切ではあるが実現は難しいこと

他者理解…実現に向けては多様な感じ方・考え方があること

2 自分とのかかわりで道徳的価値をとらえられる。

■ 自分とのかかわりで道徳的価値を理解することで、あわせて自己理解が深まる。

■ 道徳的価値についての理解(価値理解、人間理解、他者理解)を

自分とのかかわりで行う。

道徳的価値の自覚を深める

3 道徳的価値にかかわる課題を培い人間としての生き方についての自覚を深める。

■ 道徳的価値にかかわる課題を培うために,現在の自分自身を知る。

道徳的価値の自覚を深める

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1 道徳的価値の理解価値理解 ・・・よさ,大切さ,素晴らしさ など人間理解 ・・・人間の弱さ,もろさ など他者理解 ・・・自分と異なる多様な感じ方,考え方

道徳的価値の自覚を深めるために

2 自分とのかかわりでとらえる道徳的価値を他人事ではなく自分の問題としてとらえる

3 道徳的価値にかかわる課題を培い人間としての生き方についての自覚を深める確かな課題把握のために,自分自身を振り返り理解する

最後に, 道徳的実践力を育てるということはどういうことなのでしょうか?

一人一人の児童生徒が道徳的価値の自覚及び自己の生き方についての考えを深め,将来出会うであろう様々な場面,状況においても、

道徳的価値を実現するための適切な行為を主体的に選択し,実践することができるような内面的資質

道徳的実践力については, 解説に次のように示されています。

道徳的実践力は,主として,道徳的心情,道徳的判断力,道徳的実践意欲と態度

を包括するもの

道徳的実践力を育成する

道徳的実践力は,徐々に,着実に養われることによって,潜在的に,持続的な作用を行為や人格に及ぼすもの

道徳的実践力を育成する

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本時のねらい(道徳的実践力の育成)の達成に向けて,

1時間の授業で児童生徒がどのような学習を行うことが必要か,どのような姿を

見せればよいか。

1時間の授業の中で期待する児童の姿

道徳的価値についての理解価値理解・他者理解・人間理解

自分とのかかわりでとらえる追体験・自我関与・自己理解

自分自身なりに発展させていくことへの思いや課題が培われる

直接経験・間接経験・自己理解

授業

そのためにはどのような指導を行うことが有効か

指導法の工夫

指導過程 資料活用 発問構成劇的な表現 資料提示 話合い座席配置 人材活用 補助資料ワークシートの活用 など

道徳の時間の授業づくりをどのように行うのか

言語活動の充実に関する事項

表現し考えを深める工夫

道徳の時間における言葉

道徳の時間の学習言葉の能力を総動員させて学習に取り組ませることが重要

■資料の内容や登場人物の気持ちや行為の動機などを考える。

■友達の考えを聞いたり,自分の考えを伝えたり,話し合ったり,書いたりする。

■様々な体験を通して感じ,考えたことを,道徳の時間に言葉を用いて生かし合う。

道徳的価値の自覚及び自己の生き方についての考えを深めることができるようにする

自分の考えを基に表現する機会の充実

■ 児童が問題意識をもち,意欲的に考え,主体的に話し合うことができるようにする・ねらい,児童の実態,資料や学習指導過程などに応じて,

発問,話合い,書く活動,表現活動など指導方法を工夫する。

■ 言葉の能力を総動員させて学習に取り組ませる資料や体験などから感じたこと,考えたことをまとめ,発表

し合う。討論や討議などにより意見の異なる人の考えに接し,協同的

に議論したり,考えをまとめたりする。

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道徳的価値の自覚及び自己の生き方についての考えを深めることができるようにする

自分の考えを基に表現する機会の充実

■ 感動を与える教材の開発・活用人に感動を与える心の美しさや強さを浮き彫りとした教材等

を活用する。

■ 自分自身や集団や社会とのかかわりについての考えを深める公正,社会正義などの道徳的諸価値にかかわる様々な課題に

ついて討論等を行い考察させるような指導を行う。

「書いたり討論したりするなど表現する機会の充実」

「書いたり」「討論したり」という手立て,方法などの活動だけを意図しているのではない。

児童と児童及び自分自身との対話が深まるよう,表現する活動の内容や場面の工夫が一層求められる。

終末段階■書く活動を通して学習を振り返ることが考えられる。

展開段階

■討論などを通して,資料中に描かれている登場人物等の生き方や他の児童の意見を手掛かりに自分自身の考えを練り上げていく,自分自身の考えをつきつめて厳しく吟味していく,ということが考えられる。

■児童が自分の考えをまとめて人に分かりやすいように書いたり発表したりして表現する機会を設けることが,自分自身の考えを確かめたり,自分自身の道徳的成長を実感したりする格好の機会となる可能性がある。

「書いたり,討論したりするなど表現する機会の充実」について,その趣旨を生かして,道徳の時間のねらいに照らした指導の工夫が求められる。

学校の教育活動全体を通じて行う道徳教育

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道徳教育道徳の時間を要として学校の教育活動全体を通じて行う

■ 道徳の時間の道徳教育における中核的な役割や性格を明確化■ 道徳教育は、道徳の時間だけで行うものではないことを確認

■ 学校や学年の段階に応じ,発達的な課題に即した適切な指導を進める必要性を明示

「発達の段階を考慮して」

道徳教育の目標「伝統と文化を尊重し,それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛し」「公共の精神を尊び」「他国を尊重し,国際社会の平和と発展や環境の保全に貢献し」を追加

(改正教育基本法の教育の目標や学校教育法の義務教育の目標)

改訂の要点 -「第1章総則」の第1の2-

道徳教育道徳の時間を「要」として学校の教育活動全体を通じて行う

■ 道徳の時間の道徳教育における中核的な役割や性格を明確化

■ 道徳教育は、道徳の時間だけで行うものではないことを確認

道徳教育の考え方

「第2章各教科」の第1節から第9節、「第4章外国語活動」、「第5章 総合的な学習の時間」、「第6章 特別活動」の「第3 指導計画の作成と内容の取扱い」

第1章総則の第1の2及び第3章道徳の第1に示す道徳教育の目標に基づき,道徳の時間などとの関連を考慮しながら,第3章道徳の第2に示す内容について,○○の特質に応じて適切な指導をすること。

道徳教育の考え方道徳教育の目標 -「第1章総則」の第1の2-① 人間尊重の精神と生命に対する畏敬の念を培う② 豊かな心をはぐくむ③ 伝統と文化を尊重し,それらをはぐくんできた我が

国と郷土を愛し,個性豊かな文化の創造を図る人間を育成する

④ 公共の精神を尊び,民主的な社会及び国家の発展に努める人間を育成する

⑤ 他国を尊重し,国際社会の平和と発展や環境の保全に貢献する人間を育成する

⑥ 未来を拓く主体性のある日本人を育成する⑦ その基盤としての道徳性を養う