農薬散布に気をつけましょう 主 な 内 容 ·...

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にいがた植防だより 第109号 - 1 - 《主 な 内 容》 平成18年3月31日発行 発行者 社団法人 新潟県植物防疫協会 〒 951 _ 8133 新潟市川岸町三丁目21番地3 025(233)2839 ƒ 025(233)8018 1.農薬散布に気をつけましょう …………… 2.農薬を用いない水稲育苗期病害防除方法 3.園芸作物病害虫の診断法(初級編)……… 4.コシヒカリBL導入初年目の水稲病害の発生状況 … 5.平成17年度水稲共同防除の実施状況……… 6.平成17年度農薬実証ほの概要について…… 7.平成17年度航空防除の実施状況について もっと安全、安心に、これまで以上に 農薬散布に気をつけましょう 食品衛生法の改正により、残留農薬等に係わるポジティ ブリスト制度が平成18年5月29日に施行されます。このポ ジティブリスト制度は全ての農薬に対し作物ごとに残留基 準を定め、その残留基準を超えて農薬が残留する食品の流 通を禁止する制度です。 農薬は食品衛生法で定められている残留基準値を越えな いように農薬の使用基準が決められています。農薬を適用 内容どおりに正しく使えば、その基準値を超えて農薬が検 出されることはありません。しかし、食品衛生法改正(ポ ジティブリスト制度導入)により、今まで残留基準が決め られていない農作物にも基準が設定されることから、農薬 が周辺に栽培されている農作物に飛散し、その農作物に食 品衛生法の基準を超えた農薬が残留していた場合には、流 通は禁止されます。  そのため、散布する農薬が周りの圃場へ飛散し、作物に 残留することのないよう、これまで以上に農薬の散布には 気をつけなければなりません。 ここでは、散布する作物別に飛散防止対策を上げてみま した。 1.水  稲 ⑴ 対象病害虫 水稲についてはコシヒカリBLの全面普及により本 田防除の回数は劇的に減少しました。特にいもち病に ついては多発生地域を除き本田防除はほぼ省略できる と思われます。また、近年増加している紋枯病につい ても育苗箱処理剤および本田粒剤で防除可能と考えま す。 このことは、本田防除の対象が斑点米カメムシ等の 後期害虫に絞られることになります。 ⑵ 防除方法 飛散しやすい剤型としては粉剤>DL粉剤>液剤 (通常ノズル)>液剤(粗大ノズル)>粒剤となり、 粒径の小さいものほど飛散しやすくなります。特にパ イプダスターによる粉剤散布の場合、ドリフト対策は 他の散布に比べて難しく、決め手がないため下記の基 本事項を徹底することが必要です。 ① 少しの風でも飛散するので、風のない時に散布す る。風を利用した流し散布は行わない。 ② 飛散の可能性を少しでも減らすため、朝露のある 時間帯を利用する。 ③ 散布機の操作は圧力が高くなりすぎないように特 に注意する。 また、近接作物が収穫期となる場合は粒剤等の飛 散が少ない剤型の選択がリスク軽減になります。 ⑶ 他作物への影響 水稲の本田防除時期は概ね7月下旬~8月上旬頃と 予想されることからこの時期に収穫期となる作物には 飛散しないよう注意が必要となります。特に露地栽培 している作物の周辺では該当作物の残留基準を確認し 薬剤を選択したり、遮蔽シートやネットの設置も考慮 する必要があります。 2.転作大豆 大豆の防除時期は水稲早生品種の収穫期付近になるこ とがあります。このため、防除は液剤による散布が望ま しいが粉剤での防除の場合は、水稲の登録または 0.01ppmを越える残留基準値のある薬剤を選択し、万が 一飛散した場合でも基準値以上の残留が検出されない対 策をとるべきと考えます。 3.野  菜 野菜の防除方法は主に液剤散布であり、散布は小型噴 霧機、動力噴霧器、およびブームスプレーヤに大別され ます。 小型噴霧機の場合は散布圧が全般的に低いため、基本 的な散布操作で隣接圃場への飛散リスクは低いと考えら れます。また、動力噴霧機およびブームスプレーヤの場 合は圧力が高くなりやすいため、思った以上にドリフト が多くなることがあります。この場合「ドリフト低減ノ ズル」の使用により飛散リスクの低減が図られます。 いずれの場合にも隣接圃場への飛散について緩衝地帯 を設置する、境界域は散布しない、遮蔽ネットを設置す

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にいがた植防だより 第109号

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《主 な 内 容》

平成18年3月31日発行発 行 者社団法人 新潟県植物防疫協会〒 951_8133新潟市川岸町三丁目21番地3 ☎ 025(233)2839ƒ 025(233)8018

1.農薬散布に気をつけましょう …………… 12.農薬を用いない水稲育苗期病害防除方法 … 33.園芸作物病害虫の診断法(初級編) ……… 44.コシヒカリBL導入初年目の水稲病害の発生状況 … 55.平成17年度水稲共同防除の実施状況……… 66.平成17年度農薬実証ほの概要について …… 77.平成17年度航空防除の実施状況について … 8

もっと安全、安心に、これまで以上に

農薬散布に気をつけましょう 食品衛生法の改正により、残留農薬等に係わるポジティブリスト制度が平成18年5月29日に施行されます。このポジティブリスト制度は全ての農薬に対し作物ごとに残留基準を定め、その残留基準を超えて農薬が残留する食品の流通を禁止する制度です。 農薬は食品衛生法で定められている残留基準値を越えないように農薬の使用基準が決められています。農薬を適用内容どおりに正しく使えば、その基準値を超えて農薬が検出されることはありません。しかし、食品衛生法改正(ポジティブリスト制度導入)により、今まで残留基準が決められていない農作物にも基準が設定されることから、農薬が周辺に栽培されている農作物に飛散し、その農作物に食品衛生法の基準を超えた農薬が残留していた場合には、流通は禁止されます。  そのため、散布する農薬が周りの圃場へ飛散し、作物に残留することのないよう、これまで以上に農薬の散布には気をつけなければなりません。 ここでは、散布する作物別に飛散防止対策を上げてみました。1.水  稲 ⑴ 対象病害虫    水稲についてはコシヒカリBLの全面普及により本

田防除の回数は劇的に減少しました。特にいもち病については多発生地域を除き本田防除はほぼ省略できると思われます。また、近年増加している紋枯病についても育苗箱処理剤および本田粒剤で防除可能と考えます。

    このことは、本田防除の対象が斑点米カメムシ等の後期害虫に絞られることになります。

 ⑵ 防除方法    飛散しやすい剤型としては粉剤>DL粉剤>液剤

(通常ノズル)>液剤(粗大ノズル)>粒剤となり、粒径の小さいものほど飛散しやすくなります。特にパイプダスターによる粉剤散布の場合、ドリフト対策は他の散布に比べて難しく、決め手がないため下記の基本事項を徹底することが必要です。

  ①  少しの風でも飛散するので、風のない時に散布する。風を利用した流し散布は行わない。

  ②  飛散の可能性を少しでも減らすため、朝露のある時間帯を利用する。

  ③  散布機の操作は圧力が高くなりすぎないように特に注意する。

     また、近接作物が収穫期となる場合は粒剤等の飛散が少ない剤型の選択がリスク軽減になります。

 ⑶ 他作物への影響    水稲の本田防除時期は概ね7月下旬~8月上旬頃と

予想されることからこの時期に収穫期となる作物には飛散しないよう注意が必要となります。特に露地栽培している作物の周辺では該当作物の残留基準を確認し薬剤を選択したり、遮蔽シートやネットの設置も考慮する必要があります。

2.転作大豆   大豆の防除時期は水稲早生品種の収穫期付近になることがあります。このため、防除は液剤による散布が望ましいが粉剤での防除の場合は、水稲の登録または0.01ppmを越える残留基準値のある薬剤を選択し、万が一飛散した場合でも基準値以上の残留が検出されない対策をとるべきと考えます。3.野  菜   野菜の防除方法は主に液剤散布であり、散布は小型噴霧機、動力噴霧器、およびブームスプレーヤに大別されます。   小型噴霧機の場合は散布圧が全般的に低いため、基本的な散布操作で隣接圃場への飛散リスクは低いと考えられます。また、動力噴霧機およびブームスプレーヤの場合は圧力が高くなりやすいため、思った以上にドリフトが多くなることがあります。この場合「ドリフト低減ノズル」の使用により飛散リスクの低減が図られます。   いずれの場合にも隣接圃場への飛散について緩衝地帯を設置する、境界域は散布しない、遮蔽ネットを設置す

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植防一口メモ

果樹の交信攪乱剤利用についての取り組み 新潟農業振興事務所管内では、果樹産地の害虫防除法として、害虫の交尾を阻害して発生密度を下げる交信攪乱剤を利用しています。交信攪乱剤は、年数回ダラダラと発生を繰り返し、薬剤防除で抑えにくいシンクイムシ類やハマキムシ類、モモハモグリガに対して、長期間の防除効果が期待できます。 日本なし・西洋なし園では「コンフューザーN」を、もも園では「コンフューザーP」を使用していますが、もも園地は平成18年度から、ハマキムシ類に対する効果を強化した「コンフューザーMM」に変更する予定です。 白根地区では以前から、なし・もも全園地に交信攪乱剤を設置していましたが、平成16年度から亀田・横越・新潟および豊栄地区等管内全域で設置し、農薬散布回数削減に取り組むとともに、エコファーマー認定制度の推進を行っています。 今後の課題として、交信攪乱剤を柱とした防除体系によって一層の減化学農薬栽培を実現するとともに、栽培農家と関係機関が一体となった病害虫発生予察の実施や発生状況に応じた地域の防除体制の構築を図って行きたいと考えています。

(新潟農業普及指導センター 簑口 千鶴)

る等の対策が必要となります。4.果  樹   果樹の防除方法は主に液剤散布であるが、作物自体に高さがあることからどうしても飛散が大きくなりがちである。動力噴霧機の場合は野菜と同様に「ドリフト低減ノズル」が有効手段となる。

   スピードスプレーヤ(以下「SS」と略す)の場合、飛散が一番懸念される散布方法であるが、具体的方策を

下記に示します。  ⑴ 総風量は必要な範囲で可能な限り少なくする。  ⑵  ノズルの配列に注意し、散布対象が存在しない方

向のノズルはとめる  ⑶ 旋回時には必ず不要な噴霧を止める  ⑷ 園地の端部での散布操作にはことさら注意する  ⑸ 共通的な基本的散布操作の励行にこころがける   また、混植の場合は、それぞれの果樹に登録のある薬剤を必ず選択し、使用基準を確認し散布計画を立てることが必要です。

今後に向けて 農薬の飛散については抜本的な防止対策は今のところないのが現状です。このため、現在行っている栽培日誌記帳運動を確実に取り組むとともに、他作物の隣接圃場では散布した農薬の種類・散布月日および時間・使用量および気象状況等を記録しておくことが必要になります。 また、飛散による何らかの事故が発生した場合は、自分自身が被害者にも加害者にもなりますので、地域の生産者同士の連携、地域の指導者の相談など、こまめに行うことが大切です。安全・安心な農産物の生産していくために、農薬の使用基準を遵守するとともにこれまで以上に飛散防止対策に努めましょう。

(JA全農にいがた 肥料農薬課 大崎 康博)

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にいがた植防だより 第109号

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 近年、水稲の減農薬栽培等で化学合成農薬を使用しない育苗期病害の防除法が注目されており、いくつかの方法が実用化されています。種子消毒における薬剤耐性菌対策や種子消毒剤廃液の適正処理への対応からも期待されていますが、その反面、対象病害が限られているため、完全に種子消毒剤の代替となりうる防除方法ではないのが現状です。そのため、薬剤防除や育苗管理等、他の防除手段との組み合わせが必須となります。以下に、県内でも導入が進みつつある方法について留意点を紹介します。

種子温湯消毒(温湯浸法) 温湯消毒は、主に種子籾の表面に存在する病原菌を熱により死滅させる消毒法で、いもち病、ばか苗病、苗立枯細菌病およびもみ枯細菌病に対する防除効果が報告されています。しかし、病原菌の汚染度の高い種子を使用すると防除効果が期待できない場合があるなど、種子消毒剤と比べると全般に効果が劣り、特に褐条病に対する効果は著しく劣ります。さらに、処理温度や処理時間が正確でないと防除効果不良や発芽障害を起こしやすいなど、いくつかの問題点があります。 したがって、導入する場合にはこのような問題点についても良く理解する必要があります。処理のポイントは、①発芽率を確保するために必ず乾籾を使い、②必ず温湯処理専用機器を用いて所定の処理温度・時間(60℃、10~15分間処理)が確保できるようにし、③処理後は速やかに冷水に漬けます。また、④必ず病原菌汚染度の低い購入種子を用い、予め試し播きで小規模での処理を行い、発芽状況や発病の有無を確認しておく必要があります。

希釈による病原細菌密度低下、酸素供給量減少による病原細菌増殖抑制、等が考えられています。ただし、適切な方法で行わないと効果が発揮されないことがありますので注意が必要です。発病抑制効果を維持するポイントは、①出芽後なるべく早く湛水を開始する、②育苗期間中は覆土面から上1cm以上の湛水を維持する、③換気により30℃以上の高温を避ける、などで処理方法に十分留意する必要があります。また、プール育苗は糸状菌病害や褐条病に対する効果は低いことから、必ず通常の種子消毒を行った上でプール育苗によってもみ枯細菌病および苗立枯細菌病防除効果を補完するという考え方で取り組むことが重要です。

発病苗率(%)対象病害 処理温度および時間

58℃ 60℃ 62℃ 化学a) 無処理10分 15分 20分 5分 10分 15分 10分 薬剤

ばか苗病 0.2 0.0 0.0 0.4 0.1 0.1 0.0 0.0 13.4いもち病 1.3 0.3 0.2 0.9 0.3 0.0 0.2 0.3 4.2苗立枯細菌病 1.0 0.5 0.3 0.7 1.2 0.4 0.6 0.5 14.4a)スポルタックスターナ水和剤200倍液24時間種子浸漬

処理区 調査 発病 発病 同左苗数 苗率 度 防除価

温湯消毒(60℃、15分間) 179.7 46.4 33.0 2.3化学薬剤1) 187.0 0.2 0.0 99.9無処理 186.3 50.7 33.8 -1)テクリードCフロアブル、20倍液、10分間浸漬

表 1 ばか苗病、いもち病、苗立枯細菌病に対する温湯消毒の防除効果  (2000、山形農試)

表 2 温湯消毒の褐条病防除効果(2001、作物研究センター)

発病苗率(%)対象病害 処理温度および時間

58℃ 60℃ 62℃ 化学a) 無処理10分 15分 20分 5分 10分 15分 10分 薬剤

ばか苗病 0.2 0.0 0.0 0.4 0.1 0.1 0.0 0.0 13.4いもち病 1.3 0.3 0.2 0.9 0.3 0.0 0.2 0.3 4.2苗立枯細菌病 1.0 0.5 0.3 0.7 1.2 0.4 0.6 0.5 14.4a)スポルタックスターナ水和剤200倍液24時間種子浸漬

処理区 調査 発病 発病 同左苗数 苗率 度 防除価

温湯消毒(60℃、15分間) 179.7 46.4 33.0 2.3化学薬剤1) 187.0 0.2 0.0 99.9無処理 186.3 50.7 33.8 -1)テクリードCフロアブル、20倍液、10分間浸漬

表 1 ばか苗病、いもち病、苗立枯細菌病に対する温湯消毒の防除効果  (2000、山形農試)

表 2 温湯消毒の褐条病防除効果(2001、作物研究センター)

0

10

20

30

40

50

60

出芽直後 出芽2日後 出芽4日後 テクリードC塗沫 無処理

発病度

覆土上1cmまで湛水

覆土表面の位置に湛水

図 1 湛水開始時期・方法ともみ枯細菌病発  病抑制効果(1999、作物研究センター)   *32℃ 2日間加温出芽

「農薬を用いない水稲育苗期病害防除方法」

プール育苗 プール育苗を行うことで、もみ枯細菌病および苗立枯細菌病の発病が抑制されます。この理由として、地温の低下、

おわりに 上記の方法を導入する場合には、各々の技術の欠点をよく理解した上で、必ず他の防除手段を併用するとともに、発病を抑制する育苗管理を心がける必要があります。特に細菌病については防除効果の限界から、ある程度発病することを想定した対処が必要です。細菌病は主に催芽時から緑化期の高温管理で発病が助長され、特に褐条病は、循環式催芽機を用いた場合に病原細菌が爆発的に増殖し発病が増えます。催芽時間が必要最小限となる様に浸種を十分に行い、催芽時は必要以上の高温を避けるよう努めてください。また、現行の出芽温度は各細菌病菌の生育適温と一致するため、不必要な加温は慎み、出芽時間についても必要最低限にとどめることが大切です。出芽時だけでなく緑化および硬化期の温度、湿度も発病程度に影響するため、緑化期以降の温度は20~25℃とします。近年の育苗期の高温傾向により、無加温出芽でも出芽時に育苗ハウス内が高温となり病害が多発することが多いため、常に換気に注意し高温とならないよう心がけてください。また、多湿条件は発病に好適で周辺への二次伝染を助長するため、過潅水を避けるなど、適切な育苗管理が重要となります。

(作物研究センター 栽培科 堀  武志)

表1  ばか苗病、いもち病、苗立枯細菌病に対する温湯消毒の防除効果 (2000、山形農試)

表2 温湯消毒の褐条病防除効果 (2001、作物研究センター)

図1 湛水開始時期・方法ともみ枯細菌病発病抑制効果(1999、作物研究センター) *32℃ 2日間加温出芽

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にいがた植防だより 第109号

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1.はじめに 生産現場では、病害虫や生理障害等の様々な問題に直面している。農業者および農業関係者は、これらの問題の解決に日々迫られている。病害虫が原因であれば、病気および害虫の種類によって解決策すなわち防除対策も異なってくる。的確な防除対策をするためには、病名または害虫名を特定することは必須である。病害虫を効率的に診断するには、いくつかのポイントがある。今回は、病害虫の診断法の基本的なポイントを述べるともに、普及指導センター、病害虫防除所等に病害虫の診断依頼する際の約束事を以下に紹介する。2.しっかり観察、しっかり記録 病害虫の診断に当たっては、病害や昆虫等の被害を受けた植物(被害株)の症状および発生状況をしっかり観察し、記録することが最も重要である。調査する際には、以下のステップを踏まえる必要がある。<ステップ1:被害株の調査> 被害株を、肉眼で調査する際には大まかに外部症状を既存の病害や害虫の被害と照らし合わせる。その際、ルーペを用いることにより、確かな情報が得られる。病害の場合、病斑部を拡大してみると、糸状菌病では胞子、殻(子のう殻、柄子殻)が確認できる。昆虫の加害であれば、寄生や加害の痕跡を見つけることができる。ウイルス病では、葉を日光にかざすことによりモザイクを明瞭に観察できる。さらに、媒介虫が被害株に寄生している場合があり、媒介虫の種がウイルス病の特定に役立つ場合がある。この例としては、トマト黄化えそウイルス(TSWV)によるウイルス病害における、ミカンキイロアザミウマがこれにあたる。<ステップ2:ほ場調査> ほ場内における被害株の発生程度および分布を調べる。被害株があまりに多かったり、被害株の分布に方向性があったりすると生理障害や薬害の可能性も考慮する必要がある。複数の品種を栽培している場合、発生に品種の違いによりがあるかどうか調べる。その際には、生産者に必ず、品種、耕種概要を伺うとともに、いつごろから発生したかどういった対応をされたのか確認する。<ステップ3:近隣のほ場および地域の調査> 同様の被害が近隣のほ場にないか調査を実施する。単一のほ場(生産者)でおこった問題なのか、地域全体で発生した問題なのか、防除対策を考える上でも重要なため是非調査をおこなう。購入苗での被害の場合、同一のロットで同様な問題か生じていないか調べる。<ステップ4:まとめ・記録> 以上のことをまとめ、しっかり記録する。その際に、写真などの画像を残すことが重要となる。最近では、デジタルカメラ等の機器の普及に伴い、比較的簡単に画像データを残すことができる。診断には、被害部位を接写したもの、被害株の全体像および圃場の状況があるとよい。

3.診断依頼 上記のような調査を実施し、自分で診断することが重要である。診断の重要なツールとなるのが辞典等の書籍である。辞典では、‘日本植物病理学事典’、‘日本農業害虫大辞典’および新潟県の植物病害虫図鑑等がある。インターネットも重要な情報源である。また、同じ職場の諸先輩に相談する、多くの場合そこで解決されることが多い。それでも、診断が困難な場合、診断依頼する。診断依頼の流れを図に示した。原則として県の窓口は、病害虫防除所または農業指導センターである。このルートに乗ることにより、多少診断に時間が掛かるが関係機関内で情報の共有化ができる利点がある。また、資料を送付する場合には事前に連絡をすることが望ましい。

4.診断株・昆虫の取り方 被害葉一枚で、診断を依頼されることがある。診断可能な場合もあるが、現実的には非常に難しい。果樹などの大きな植物を除き、野菜、花などでは株毎、最低2~3株採取する。さらに、診断の際、被害株と比較対照するため被害の出ていない株(見かけ健全株)も採取する。昆虫の場合、成虫で同定するのが普通で、幼虫や蛹ではわからない場合が多い。さらに、雄・雌どちらでした区別できない場合や複数の種が混発している場合もあるため採集個体は少なくとも10頭以上必要である。成虫は、生かしていると傷んでしまうため殺して乾燥させる。微少昆虫は、70%エタノールの液浸標本とする。5.お力になれれば いろいろ面倒なことを書いたが、このルールに乗っ取ることによりお互い間違いのない効率的な仕事が進められると思われる。ただし、我が国では約6000種の病気と3万種以上の昆虫が報告されているため、実際依頼のあった半分程度しか診断できないのが現状である。そこで、園芸研究センターでは、平成18年度から新規の侵入病害虫に関する研究課題を立ち上げ、病害虫診断に力をいれる予定にしている。

(園芸研究センター 環境科 棚橋  恵)

園芸作物病害虫の診断法(初級編)

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にいがた植防だより 第109号

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1  いもち病:コシヒカリBL効果で、極めて少ない発生(平年比少発生)

 県の発生調査では、今年の葉いもちの発病度は0.01(平年値3.58)、穂いもち0.02(平年値3.42)と、まさに桁違いに少なく「平年比少発生」の結果となりました。

発生しました。コシヒカリは出穂期以降に上位節間の伸長や葉色が高まるなどの旺盛な生育があり、後期発生を助長したと考えられます。 また、コシヒカリBL導入に関連して、紋枯病剤の使用が減ったことも要因と考えられます。

葉いもち「わたぼうし」

コシヒカリBL導入初年目の水稲病害の発生状況

 今年のいもち病の発生が少ないのは、6月の降雨が少なく、いもち病の発生を抑制したこともありますが、「従来コシヒカリ」や「わたぼうし」等では多発生ほ場が確認されており、コシヒカリBLの一斉導入による効果が大きいと考えられます。 また、いもち病薬剤の使用(JA全農にいがた扱い)は、面積換算で前年比の40%となり、大きく削減された結果となっています。農業共済組合のコシヒカリBLに対する評価も、薬剤の削減やコスト低減効果及びカメムシの適期防除等があげられ、高い評価を得ています。 次年度も継続していもち病の発生を抑えるため、コシヒカリBLの栽培と併せ、①発生源となる稲ワラ、籾ガラを育苗ハウス内へ敷かない・持ち込まない。②補植苗を早期に撤去する。③種子更新を100%実施する。等総合的な防除対応を行ってください。

図1 葉いもち・穂いもち発生状況の推移

0123456789

H7 H8 H9 H10 H11 H12 H13 H14 H15 H16 H17

葉いもち穂いもち

(発病度)

【コシヒカリBLの導入効果について(各NOSAI回答)】NOSAIセンター名 内   容

岩船 予察調査では、葉いもちは皆無に等しい。

新潟中央防除回数減(2回から1回)により防除コストの低減が図られた。併せて防除作業員の確保が容易になった。

佐渡 予察調査では、コシヒカリBLのいもち病の発生確認はなかった。

中越いもち病の発生はなかった。基幹防除においていもち病剤を削減(2回から1回及び無散布)したため、防除経費の軽減が図られた。

魚沼 防除回数の削減。カメムシ防除の適期散布が行えた。

上越 いもち病防除が軽減され、コスト低減につながった。

※水稲病害虫防除事業検討会資料(H17.12.20)より抜粋

2  紋枯病:8月中旬から急激に上位進展(平年比やや多発生)

 8月上旬の連続した高温と8月中旬からの継続的な降雨が発生を急激に助長し、早生だけでなくコシヒカリでも多

図2 紋枯病地域別発病度(H17)

012345678

6月後半 7月前半 7月後半 8月前半 8月後半 9月前半

下 越新 潟中 越魚 沼上 越佐 渡県平均

紋枯病

 しかし、実被害のあったほ場は少ないので、広域な共同一斉防除は安易に行なわず、今年多発したほ場では、ほ場ごとに防除(箱施用剤含む)対応を検討してください。また、多肥をさけ、中干し等で過繁茂を抑えるなど耕種的防除を実施してください。

ごま葉枯病

たことも発生助長要因となったと考えられます。 しかし、直ちに水田における薬剤防除を考えるような状況にはないので、当面は種子消毒の徹底や耕種的な対応をはかる一方で、発生動向を注視していく必要があります。ごま葉枯病は泥炭土壌、老朽化土壌や砂質土壌など、「秋落ち水田」で多発生するため、土壌改良(ケイ酸カリの施用等)と施肥改善を積極的に進め、特に登熟期間の栄養を確保しましょう。また、イネ体を消耗させるような極端な水管理を避け発生を抑えましょう。4 その他の病害と防除の考え方 その他の病害では、墨黒穂病、黒しゅ病、稲こうじ病が目につきました。また、6月27、28日の豪雨で冠水した一部地域で白葉枯病(佐渡市)、黄化萎縮病(佐渡市・上越市)が発生しました。 病害虫を見たら、すぐ薬剤を散布する時代は終わりました。これからの病害虫防除は、総合的病害虫・雑草管理(IPM)を念頭に置き、薬剤防除は予察調査に基づいた必要最小限の使用となります。つまり、適正な肥培管理で健全なイネを栽培し、耕種的防除(抵抗性品種の導入・土壌改良・補植苗の撤去、冠水地域の基盤整備等)や生物的防除(天敵等)などを総合して行う、環境保全型農業の実践がますます重要となります。

(病害虫防除所 藤本 繁俊)

 ※写真は、H17年防除所職員の撮影

稲こうじ病 白葉枯病墨黒穂病 黒しゅ病 黄化萎縮病による奇形穂(貫生現象)

3  ごま葉枯病:天候と殺菌剤の使用削減で目立ち始めた ごま葉枯病は、今年気象的に発生に好適(出穂期以降から登熟期の高温多湿条件で発生を助長)であったことから、各地で発生が見られました。また、コシヒカリBLの普及により、併殺効果の期待できるいもち病剤の散布が減っ

葉いもち 「わたぼうし」

図1 葉いもち・穂いもち発生状況の推移

【コシヒカリBLの導入効果について(各NOSAI回答)】

図2 紋枯病地域別発病度(H17)

紋枯病

ごま葉枯病

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にいがた植防だより 第109号

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 平成17年度NOSAI団体が実施した病害虫防除の実績についてその概要をお知らせします。

 防除方式及び防除面積 水稲作付面積12万1,000haに対する防除方式割合(図1)は、地上防除6.3%、航空防除16.3%、無人ヘリ防除27.4%、一斉共同防除2.0%で、請負・共同防除の割合は52.0%になっています。 航空防除は、防除方式の見直しにより毎年割合が下がってきています。 延防除面積は8万7,110haで昨年比3万7,396haと大きく減少しました。防除方式延面積(図2)は、地上防除8,392ha、航空防除3万1,146ha、無人ヘリ防除4万3,282ha、一斉共同防除が4,290haでした。 共同防除面積の主な減少理由は、コシヒカリBLの県下一斉導入に伴ういもち病防除面積の減少と航空防除方式から個人による育苗箱施用剤散布・本田粒剤散布に移行したことによるものです。

 平成元年度からの延防除面積の推移(図3)を見ると、平成17年度は平成元年度対比で35%程の面積になっています。これは、コシヒカリBLの導入による効果や発生予察調査に基づく必要最小限の防除に努めた結果であり、防除コストの削減、環境保全型農業の推進に大きく貢献しているところであります。

図3 年次別防除面積の推移

 対象病害虫 対象病害虫別(航空防除を除く。)の実施状況は、コシヒカリBLの導入に伴ういもち病防除の減少により、害虫の単独防除が前年の7.8%から45.6%になり、半分近くを占めています。以下、いもち病・害虫の同時防除が31.8%、

いもち病・紋枯病・害虫の同時防除が21.7%の順になっています。

 防除回数 地上防除は実施66地区中、1回防除が35地区、2回防除が31地区で、基幹防除はすべての実施地域で2回以内となりました。 平均防除回数(図4)は、コシヒカリBLの導入による防除体系の変更及び予察調査に基づく必要最小減の防除により、地上防除は1.3回となり前年に比べ0.5回減少しました。 航空防除は、前年同様1.6回で、地上防除と航空防除の平均防除回数は1.4回(前年1.7回)となっています。

図4 年次別防除回数の推移

 危被害防止対策 危被害防止対策として①転作作物、有機栽培ほ場、他作物栽培ほ場への農薬飛散防止対策 ②農薬使用基準の遵守 ③作業員の安全確保等が図られたことから大きなトラブルもなく、事業を終えることができました。改めて関係各位の御指導に対しお礼申し上げます。

 18年度に向けて 次年度の課題としては、コシヒカリBLの導入に伴い、いもち病防除が減少するなかで、①紋枯病及び斑点米カメムシ類等の防除を考慮した防除体系の再検討 ②早生品種の防除対策 ③共同防除の減少に伴う緊急防除体制等の構築などがあげられます。これらの課題については、各々の地域で検討し、対処をお願いします。 また、食品衛生法での食品に残留する農薬の規制方法が、本年5月29日からボジティブリスト制度に変わりますので、これまで以上に農薬飛散防止対策を徹底する必要があります。

 終わりに 今後とも地域住民等の理解と協力を得るとともに、周辺環境等に一層配慮し、病害虫発生予察調査に基づいた的確な防除な実施を実施していく所存であります。 最後に、関係各位の御指導・御協力に深く感謝申し上げます。

(NOSAI新潟 農産園芸課 吉田 昭博)

図2 防除方式割合(延防除面積)

図1 作付面積に対する防除方式割合(実防除面積)

平成17年度 水稲共同防除の実施状況

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にいがた植防だより 第109号

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 平成17年度は、殺菌・殺虫剤40剤、除草剤17剤、展着剤1剤の合計53剤(作物、対象病害虫で58組み合わせ)を延べ108か所で実証し、普及性を評価した。1 評価の概要 実証の結果、普及性が高い、または、普及性があると評価された薬剤・処理法は、以下の表のとおりである。

2 担当専門技術指導担当のコメント⑴ 普通作殺菌殺虫剤   いもち病の育苗箱施用剤は、効果を安定させるため均一施用が必要となるが、本年度は専用施用機による播種時処理が6か所で実証され、施用の均一性と作業性の良さが確認された。斑点米カメムシに対しては、新規薬剤の高い効果が確認され、また、急速に普及し始めた予防粒剤の使用上の留意点が明確になるなど数々の知見が得られた。

⑵ 普通作除草剤   水稲では、これまで直播栽培におけるSU抵抗性雑草対策に問題があったが、今回の実証で防除対応が可能となる。大豆では、生育期の広葉雑草対策として期待されていた大豆バサグラン液剤の効果が確認されるとともに品種の違いやエチルチオメトン粒剤施用による薬害発生に関する知見が得られ、普及指導上、貴重な実証となった。

⑶ 野菜   ねぎのネギアザミウマは、葉にかすり条の食痕を生じ、商品性を損ねる重要害虫である。これまで登録薬剤の系統数が限られ抵抗性の発達が懸念されていたが、今回、

平成17年度農薬実証ほの概要について新規系統薬剤の効果が確認され、薬剤ローテーションの選択幅が広がった。えだまめのネキリムシ類については、生育期の防除薬剤がなかったが、ネキリトンKは子葉展開期まで使用でき発生後の防除剤として期待される。

⑷ 果樹   ここ数年、農薬実証ほで取り上げられる果樹殺虫剤はネオニコチノイド系の薬剤が多くなっており、最近ではマクロライド系薬剤や生物農薬も実証している。これらは、従来の合成ピレスロイド系やカーバメート系の薬剤に比べ、一般に選択性が高く、天敵に対する影響が小さいとされる。県内の多くのなしやもも産地で複合交信かく乱剤の導入が進められている中、これらの剤を選択使用していくことは、天敵の保護利用や化学農薬の削減等、IPM理念に基づいた防除体系の確立に不可欠で、今後の農薬実証ほの展開方向として、さらに検討を進めたい。⑸ 花き  花きに適用のある薬剤少ない中で、花き類全般に適用のある農薬は生産場面において非常に重要であるが、各作目に対する防除効果、薬害や茎葉の汚れの発生についての情報は少ない。今回の実証によって、花き類に適用のある殺虫剤2剤が本県の主要品目であるチューリップ、ユリ等で普及性が認められたことは、安定的な生産の振興を図る上で非常に有益である。

 (経営普及課 原澤 良栄)

表1 普通作殺菌殺虫剤薬  剤  名 作物 病害虫(処理法)

Dr.オリゼプリンス粒剤6H 水稲 いもち病・初期害虫(専用施用機)デラウススタークル箱粒剤 〃 いもち病・初期害虫(専用施用機)グランドオリゼメートオンコル粒剤 〃 いもち病・初期害虫キ ラ ッ プ 粉 剤 〃 カメムシ類キ ラ ッ プ フ ロ ア ブ ル 〃 カメムシ類ス タ ー ク ル 粒 剤 〃 カメムシ類ス タ ー ク ル1キ ロ H 粒 剤 〃 カメムシ類(無人ヘリ)アドマイヤー 顆 粒 水 和 剤 〃 ウンカ・ヨコバイ類(箱潅注処理)ア ド マ イ ヤ ー 水 和 剤 〃 ウンカ・ヨコバイ類(直播・湿粉衣)エ コ ホ ー プ ド ラ イ 〃 種子消毒ネ キ リ ト ン K 大豆 ネキリムシ類ダ イ シ ス ト ン 粒 剤 〃 フタスジヒメハムシチ ル ト 乳 剤 大麦 赤かび病

表2 普通作除草剤薬 剤 名 作物 処理方法等

キ ク ベ ジ ャ ン ボ 水稲 初期一発剤イノーバDX1キロジャンボ 〃 初期一発剤イ ネ エ ー ス1キ ロ 粒 剤 〃 初期一発剤ホームランキングLフロアブル 〃 初中期一発剤アピロファインDジャンボ 〃 初中期一発剤イ ッ テ ツ 1 キ ロ 粒 剤 〃 初中期一発剤トップガンLフロアブル 〃 初中期一発剤、直播ラクダープロLフロアブ ル 〃 初中期一発剤、直播ス ピ ン フ ロ ア ブ ル 〃 初期剤サ タ ー ン バ ア ロ 粒 剤 〃 初期剤、直播ノ ミ ニ ー 液 剤 〃 クサネム、茎葉処理エ コ ト ッ プ 粒 剤 大豆 播種後出芽前全面土壌処理バ ス タ 液 剤 〃 生育期処理ハ ー ビ ー 液 剤 〃 生育期処理大 豆 バ サ グ ラ ン 液 剤 〃 生育期処理

表3 野菜薬 剤 名 作物 病 害 虫/草 種

インプレッション水和剤 トマト 灰色かび病ド ーシャスフロアブ ル きゅうり うどんこ病・褐斑病ド ーシャスフロアブ ル すいか つる枯病・炭疽病カンタスドライフロアブル きゅうり 灰色かび病カンタスドライフロアブル いちご 灰色かび病パンチョTF顆粒水和剤 メロン うどんこ病フォリオブラボ顆粒水和剤 きゅうり うどんこ病・褐斑病プ レ オ フ ロ ア ブ ル ねぎ ネギアザミウマ・シロイチモジヨトウプ レ オ フ ロ ア ブ ル キャベツ コナガ・オオタバコガ・ハスモンヨトウプ レ オ フ ロ ア ブ ル なす オオタバコガプ レ オ フ ロ ア ブ ル いちご ハスモンヨトウネ キ リ ト ン K えだまめ ネキリムシ類ア クタラ 顆 粒 水 溶 剤 えだまめ アブラムシ類ス タ ー ク ル 粒 剤 のざわな アブラムシ類・キスジノミハムシク ロ ピ ク フ ロ ー メロン 黒根腐病ク レ マ ー ト U くわい 水田一年生雑草ま く ぴ か 展着剤 -

表4 果樹薬 剤 名 作物 病 害 虫/草 種

イ ン ダ ー フ ロ ア ブ ル なし 黒星病ビ オ ネ ク ト かき うどんこ病・落葉病アミスター10フロアブル いちじく そうか病ア グ レ プ ト 液 剤 ぶどう 無種子化ハ チ ハ チ フ ロ ア ブ ル もも モモサビダニスタークル 顆 粒 水 溶 剤 おうとう オウトウショウジョウバエスピノーエース顆粒水和剤 いちじく アザミウマ類バリアード 顆 粒 水 和 剤 ぶどう チャノキイロアザミウマ・コナカイガラムシ類サ ン ダ ー ボ ル ト007 ぶどう 一年生・多年生雑草

表5 花き薬 剤 名 作 物 病害虫

ア ク タ ラ 粒 剤 5 キク(花き類) アブラムシ類ア ク タ ラ 粒 剤 5 ユリ(花き類) アブラムシ類スタークル 顆 粒 水 溶 剤 チューリップ(花き類) アブラムシ類スタークル 顆 粒 水 溶 剤 パンジー(花き類) アブラムシ類

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1 作物別実施状況 平成17年度の航空防除は、水稲病害虫及び松くい虫防除が実施されました。実施面積は表1のとおり延べ32,240haで、20市町村において実施されました。

水  稲 松くい虫 その他(牧野施肥) 合  計

実施面積

実施面積

実施面積

実施面積

平成17年度(実施) 12

ha31,146 11

ha1,094 0

ha0  20

ha32,240

前年比 △21 △19,141 △3 △23 0 0 △10 △19,164

市町村数

実施延面積

 左の時期別(%)  剤型(%) 散布除外地区(実面積)7/前半 7/後半 8/前半 液剤 液少

平成17年度(実施) 12

ha31,146 0 40.4 59.6 33.7 66.3

ha1,975

前 年 33 50,287 6.0 31.7 60.3 41.5 58.4 3,0412 水稲の航空防除実施状況 ⑴  水稲の航空防除は12市町村において延べ31,146haが

実施され、前年対比19,141haの減少となりました。全体比38%と大幅な減少となりました。航空防除面積は近年減少傾向にはありますが、5年前の平成12年度実績に比べ、60,729ha減と、約1/3まで減少しています。これらの背景には、コシヒカリBLの全面切替えによる防除の減少、無人ヘリなど代替え防除手段への切り替えや発生予察に基づく効率的防除の実施、他作物の実態にあわせた散布区域の見直しなどによるものと考えられます。また、実施市町村数は合併などの関係もあり12で昨年対比21市町村の減、関係農家数は1万8千戸余りになります。

 ⑵  防除は7月20日与板、出雲崎地区におけるいもち病、

表1 平成17年度航空防除作物別実施状況(面積:延、ha)

 表2 平成17年航空防除(水稲)実施状況

 平成18年5月29日から施行される残留農薬のポジティブリスト制をめぐり、様々な議論と憶測が乱れ飛んでいます。0.01ppm以下という実質無散布に近い極微量な数値に関係者は翻弄されているように感じます。 聞くところでは、流通食品の残留チェックに係る厚生労働省の平成18年度の新たな予算は用意されていないそうです。安心は禁物ですが、過剰な不安も不要。現場対応の基本は農薬取締法遵守、その線上で散布時のドリフト防止の徹底、そして地域における情報交換と記録、信頼関係の構築が今求められます。

編 集 後 記

み ち く さ 12月10日、十日町クロス10において、『雪から学ぶ楽

がく

雪せつ

フォーラム2005』が十日町地域振興局の主催で開催されました。今年は、サブタイトルに「北海道と十日町地域の高校生による楽雪に関する実践交流会」と、北海道の岩見沢農業高校と沼田高校の生徒を招いての実践活動の発表がありました。 岩見沢農業高校の発表内容は、大きな雪山を作って夏まで保存し、その雪の冷熱を利用するものです。鶏舎の冷房や花の雪冷房抑制栽培、雪解け水を利用したホウレンソウの栽培など、当センターの研究員がビックリするような内容の授業が行われていました。 十日町地域では、北海道より多くの降雪量があり、豊富な冷熱資源があります。しかし、県内の高校では、雪の利用を授業に取り入れた学校はなく、松代高等学校が名乗りを上げたばかりです。当センターでも雪を利活用した研究を行っていますが、研究の成果が県内の多くの学校教育に、また、多くの農家の方々に利用されるよう研究を進めたいと思っています。 (高冷地農業技術センター 長井  隆)

平成17年度航空防除の実施状況について

紋枯病、ウンカ、カメムシ等の防除に始まり、8月13日の佐渡市両津、相川地区の防除を最後に全防除計画を無事終了しています。時期別割合は表2のとおりであり、8月前半のカメムシ、いもち病等防除が全体の60%を占めています。なお防除回数は全実施主体をとおし平均1.5回(前年1.7回)でした。

 ⑶  散布薬剤は普通物のみで劇物使用はありません。また剤型別では液剤散布が33.7%、液剤少量散布が58.4%でした。

 ⑷  航空防除を実施するにあたっての安全対策は、県航空防除安全対策実施要領を遵守し、次の通り実施されました。

  ア 、散布除外区域は434カ所(1市町村平均36カ所)、3,368ha(延面積)が実施され、学校、幼稚園、病院など周辺を除外する措置がとられています。またプールなどへの飛散防止対策も110カ所で実施されました。

 イ 、広報活動は全市町村において実施され、広報紙、チラシ、をはじめ広報車、立看板なども利用して徹底が図られています。

 ウ 、学童などの通学・通勤に併せた散布中断時間帯が全市町村において実施され、また交通整理員が通勤通学道、一般道を合わせて854カ所に配置されました。

 なおこれらの対策がなされた結果、航空防除による人身事故、飛散事故は前年に引き続き全く発生しませんでしたが、気象急変による再散布事故が5件(基地)ありました。エ、航空防除にともなう大気中の農薬濃度分析について、本年度は和島村で8月4日に実施しました。対象薬剤はブラシン(フラサイド)でしたが、基準値である200μg/m3の1/200という極めて低い値でした。

(植物防疫協会 事務局)