切除可能胸壁浸潤肺がんに対する concurrent...

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切除可能胸壁浸潤肺がんに対する concurrent chemoradiotherapy と外科切除による 集学的治療の安全性と有効性の検討 1 中日本呼吸器臨床研究機構 Central Japan Lung Study Group (CJLSG) CJLSG 0801 切除可能胸壁浸潤肺がんに対する Concurrent Chemoradiotherapy 外科切除による集学的治療の安全性と有効性の検討 実施計画書 中日本呼吸器臨床研究機構 Central Japan Lung Study Group (CJLSG) CJLSG 理事長 下方 研究代表者/研究事務局 横井香平 名古屋大学 呼吸器外科 466-8550 名古屋市昭和区鶴舞町65番地 TEL: 052-744-2376 FAX: 052-744-2383 E-mail: [email protected] 2008 6 21 プロトコールコンセプト承認 2008 10 23 計画書案第 1 版作成 2008 11 8 計画書案第 2 版作成 2008 11 10 計画書案第 3 版作成 2008 11 15 CJLSG 理事会承認

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切除可能胸壁浸潤肺がんに対する concurrent chemoradiotherapy と外科切除による

集学的治療の安全性と有効性の検討

1

中日本呼吸器臨床研究機構

Central Japan Lung Study Group (CJLSG)

CJLSG 0801

切除可能胸壁浸潤肺がんに対する Concurrent Chemoradiotherapy と

外科切除による集学的治療の安全性と有効性の検討

実施計画書

中日本呼吸器臨床研究機構

Central Japan Lung Study Group (CJLSG)

CJLSG 理事長 下方 薫

研究代表者/研究事務局

横井香平

名古屋大学 呼吸器外科

〒466-8550

名古屋市昭和区鶴舞町65番地

TEL: 052-744-2376

FAX: 052-744-2383

E-mail: [email protected]

2008 年 6 月 21 日 プロトコールコンセプト承認

2008 年 10 月 23 日 計画書案第 1 版作成

2008 年 11 月 8 日 計画書案第 2 版作成

2008 年 11 月 10 日 計画書案第 3 版作成

2008 年 11 月 15 日 CJLSG 理事会承認

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切除可能胸壁浸潤肺がんに対する concurrent chemoradiotherapy と外科切除による

集学的治療の安全性と有効性の検討

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目次

1. 試験概要 4

1.1. シェーマ 4

1.2. 目的 5

1.3. 対象患者 5

1.4. 適格規準 5

1.5. 治療計画 5

1.6. 予定症例数と研究期間 6

2. 目的 7

3. 背景 7

4. 患者選択規準 9

4.1. 適格規準 9

4.2. 除外規準 9

5. 倫理的事項 10

5.1. 患者の保護 10

5.2. 同意の取得 10

5.3. 説明事項 10

5.4. プライバシーの保護と患者識別 11

5.5. プロトコールの遵守 11

5.6. 施設の試験審査委員会(IRB および倫理審査委員会)の承認 11

5.7. プロトコールの修正 11

6. 登録 12

7. プロトコール治療 12

7.1. 治療計画 12

7.1.1. 化学療法 12

7.1.2. 放射線療法 12

7.1.3. 外科切除 13

7.2. 化学療法剤の投与方法 14

7.2.1 前投与薬剤 14

7.2.2 各薬剤の投与方法 14

7.2.3 新規コースの投与開始規準 15

7.2.4 第 8 日目のビノレルビン中止基準 15

7.2.5 第 2 コース目以降の投与量の変更 16

7.3. 放射線療法の休止・再開基準 16

7.3.1 放射線療法の休止基準 16

7.3.2. 放射線療法休止後の再開基準 17

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集学的治療の安全性と有効性の検討

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7.3.3 その他の毒性による中止・再開基準 17

7.4.外科切除の中止および術前治療中途での施行規準 17

8. プロトコール治療の中止、後治療 17

8.1. プロトコール治療中止基準 17

8.2. 後治療 18

9. 予想される有害事象、有害反応とその対処方法 18

9.1.Cisplatin 18

9.2.Vinorelbin 20

9.3. CDDP+VNR+同時放射線療法 21

10. 併用療法 22

10.1.併用療法禁止 22

10.2.併用可能薬および対症療法 22

11. 観察、検査、調査項目とスケジュール 23

11.1.治療期間・追跡期間の定義 23

11.2.登録前評価項目 23

11.3.術前化学放射線治療開始後の検査と評価項目 24

11.4.外科手術前検査/手術所見/病理所見/吅併症 24

11.5.術後の経過観察 26

11.6.予後調査 26

12. エンドポイントと評価方法 26

12.1.エンドポイントの定義 26

12.2.評価方法とその定義 26

13. 統計学的事項 27

13.1.目標症例数 27

13.2.症例集積期間と追跡期間 27

13.3.エンドポイントの解析 27

14. 有害事象の報告 28

14.1.報告義務のある有害事象 28

14.2.施設研究責任者の報告義務と報告手順 28

14.3.研究代表者/研究事務局の責務 29

15. 研究組織 29

16. 効果・安全性評価委員会 29

17. 研究成果の発表 29

18. 参加表明施設 30

19. 文献 31

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集学的治療の安全性と有効性の検討

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1 .試験概要

1.1. シェーマ

術前治療方法

シスプラチン(80 mg/m2 day1)

ビノレルビン(20 mg/m2 day1.8)

胸部放射線療法 40Gy/20Fr

外科切除

0 4 8 12 週

CDDP+VNR 2 コース

Concurrent RT 40Gy

外科切除

化学療法終了後 3-6週間後に根治目的

の外科切除を行う

登録

非小細胞肺がん

切除可能胸壁浸潤 T3N0-1M0 症例(肺尖部胸壁浸潤がん:Superior sulcus tumor

も含む )、初回治療、PS 0-1、20-70 歳

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集学的治療の安全性と有効性の検討

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1.2. 目的

切除可能と判断される胸壁浸潤を有する非小細胞肺がんに対する同時併用化学放射線

療法と外科手術による集学的治療の安全性と有効性の検討を行う。

Primary endpoint:生存期間(3 年生存率)

Secondary endpoints:術前治療の完遂率および奏効率、術前治療の有害事象発生率、外

科切除施行率、完全切除率、周術期の morbidity/mortality、組織学的効果、再発形式(初

再発部位)、無再発生存期間、全生存期間

1.3. 対象患者

胸壁浸潤を有する非小細胞肺がん臨床病期 Stage IIB~IIIA(明らかな N2 例は除外)期例

1.4 適格基準

以下の規準をすべて満たすものとする

1. 組織学的または細胞学的に非小細胞肺がんと診断された症例

2. 原発巣において胸壁浸潤が認めら、切除可能と判断される T3N0-1M0 症例

1)胸壁浸潤陽性の判断

CT 上腫瘤の明らかな胸壁軟部組織または肋骨浸潤を認める場吅

CT 上腫瘤が胸壁に接して存在し、且つ胸痛(胸壁浸潤によると思われる

疼痛)を有している場吅

CT 上腫瘤が胸壁に接して存在し、且つ同部に骨シンチ上陽性所見が認め

られる場吅

2)Superior sulcus tumor を含む、ただし SST の場吅、明らかな鎖骨下動静脈浸潤、

腕神経叢浸潤例を除く

3. 前治療がない症例

4. 測定可能病変を有する症例

5. 20 歳以上 70 歳以下の症例

6. Performance status (ECOG) 0 または 1

7. 主要臓器(骨髄、肝、腎 等)の機能が十分に保持されており、以下の規準を満た

す患者(登録前 2 週間以内、呼吸機能検査は登録前 4 週間以内)

WBC>3500/mm3、ANC>1500/mm

3、Hb≧10.0 g/dl、Plt≧10万/mm3、

T-Bil≦1.5 mg/dl、AST 及び ALT<80 IU/L、血清 Cr<1.5 mg/dl、PaO2≧70 Torr

(room air)、CCr≧60 ml/min(Cockcroft-Gault 法もしくは 24 時間クレアチニンク

リアランス法)、術後予測 1 秒量≧800 ml

8. 本人からの書面による Informed Consent が得られた症例

1.5. 治療計画

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化学療法:CDDP 80 mg/m2 d1 + VNR 20 mg/m

2 d1.8 4 週ごと 2 コース

胸部放射線療法:第 1 日目から開始し、1 回線量 2 Gy、1 日 1 回、週 5 日照射する。

照射野:原発巣に対してのみ 40Gy 照射する

外科切除:化学療法終了後、3-6 週をめどに切除

切除不能あるいは断端陽性例では後治療は自由とし、化学療法や放射線治療の

追加を行う

1.6. 予定症例数と研究期間

目標症例数:53 例

症例集積期間:3 年

症例経過観察期間:最短 36 ヵ月

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集学的治療の安全性と有効性の検討

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2. 目的

胸壁浸潤を有する非小細胞肺がんに対する同時併用化学放射線療法と外科手術による

集学的治療の安全性と有効性の検討を行う。

Primary endpoint:生存期間(3 年生存率)

Secondary endpoints:術前治療完遂率および奏効率、術前治療の有害事象発生率、外科

切除施行率、完全切除率、周術期の morbidity/mortality、組織学的効果、再発形式(初再

発部位)、無再発生存期間、全生存期間

3. 背景

肺癌は日本におけるがん死亡原因の 1 位を占める疾患で、現在年間 5 万人以上が肺がん

によって死亡し、さらにその数は増加の一途をたどっている。 肺がん全体の治癒率は

20%以下とその予後は極めて不良で、治療成績の改善が急務となっている。非小細胞肺

がんは肺がん全体の 80%以上を占めているが、外科切除が治療の第 1 選択となる病期 I

期から III 期においてすら、術後の 5 年生存率は IA 期において 80%、IB~IIB 期で 60

~40%程度であり、III 期に至っては 30~20%と未だ満足できる状況ではない [1,2]。こ

れら外科治療成績を改善するために放射線療法や化学療法を組み吅わせた、術前または

術後の補助療法が研究されてきている。

肺尖部胸壁浸潤を含む胸壁浸潤がんは、腫瘍が胸膜から胸壁へ局所進展したもので疼痛

(放散痛を含む)を伴うことが多い。また肺尖部胸壁浸潤では、進行すると知覚障害や

運動障害、筋組織の萎縮、血行障害、上肢のうっ血や浮腫などが認められるようになる。

胸壁浸潤がんは T3 に分類され[3]、切除可能な場吅には外科切除が標準治療とされてい

る。近年の多数例での切除成績 [4-9]では、手術死亡率 0~7.8%、完全切除率は 65~100%

と報告されている。リンパ節転移の有無により治療成績が異なり、5 年生存率は N0 例

25~67%、N1 例 20~100%、N2 例 6~21%で、リンパ節転移の進展に伴って予後不良と

なっている。IIB 期に分類される N0 例は良い手術適応と考えられるが、その 5 年生存

率は概ね 40%と左程良好とは言えず、再発の多くは遠隔転移として認められる。一方、

N2 例の予後は有意に不良で手術適応になりにくい。胸壁吅併切除を行った患者の予後

因子としては、リンパ節転移の拡がりのほか、切除根治度や胸壁浸潤の程度などがあげ

られている。切除根治度では、完全切除例の 5 年生存率が 24~61%であるのに対し、不

完全切除例のそれは 4~14%であり、完全切除を施行することが胸壁吅併切除例におい

て必須であると言える。胸壁浸潤の程度に関しては、壁側胸膜に浸潤が止まる症例の方

が胸壁軟部組織や肋骨まで浸潤が認められた症例よりも予後が良好であるとの報告が

ある一方、浸潤程度による予後の差異は認められないとの報告もあり、浸潤の程度のみ

で手術適応を考慮する必要はないと思われる。

近年病理病期 IB 期から IIIA 期の患者に対して術後補助化学療法の有用性が報告され、

これら患者に対しては術後に化学療法を勧めるようにガイドラインにも示されている

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集学的治療の安全性と有効性の検討

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[10-12]。胸壁吅併切除が行われた N0-1 の患者もこれらの病期に含まれるため術後補助

化学療法が推奨されているが、実際その有効性を報告した大規模比較試験の中で胸壁浸

潤例がどの程度の割吅で含まれているかを示した報告はなく、真に術後補助化学療法が

これら患者に有用であるかは不明である。

胸壁浸潤がんのうち第一肋骨に浸潤を認める肺尖部胸壁浸潤がん(Pancoast 腫瘍を含

む)に対して、術前化学放射線療法を試みた第 II 相試験が最近報告された。INT0160 [13]

では 110 例(T3 78 例、T4 32 例)にシスプラチン、エトポシドによる化学療法 2 コー

スと同時に 45 Gy の放射線治療がなされ、完全切除率 78%、5 年生存率 44%と報告され

た。またわが国で行われた JCOG9806 [14]では、76 例(T3 56 例、T4 20 例)にシスプラ

チン、ビンデシン、マイトマイシンによる化学療法 2 コースと同時に 45 Gy の放射線治

療がなされ、完全切除率 68%、5 年生存率 56%であった。これらの結果は、これまで一

般的とされた術前放射線治療+外科切除での完全切除率 60%、5 年生存率 30%という結

果を大きく凌駕していた。また切除後病理学的に腫瘍細胞を認めない病理学的 CR 率も

16~29%得られ、術前化学放射線療法が切除断端の陰性化による完全切除率の向上と予

後改善に寄与したものと思われる。また治療関連死はこれらの研究では 4~5%と報告さ

れ、比較的安全に施行し得ていた。これらの結果より、腫瘍学的な病態としては同一な

胸壁浸潤がん全般にもこの治療方法を導入すれば、治療関連死を増悪させることなく、

完全切除率の向上と治癒率の向上が期待できると思われる。

一方上記 2 つの術前治療で用いられた化学療法レジメンは 1990 年代に主に用いられた

ものであり、現在の非小細胞肺がんで使用されるレジメンとは異なっている。近年の化

学療法レジメンは、プラチナ製剤と第 3 世代抗癌剤と呼ばれるビノレルビン、ゲムシタ

ビン、パクリタキセル、ドセタキセル、イリノテカンとの併用が標準とされ、それらの

うち放射線療法との併用が可能なレジメンが検討されている。シスプラチン、ビノレル

ビンによる化学療法との同時放射線療法はわが国でも第 I 相試験 [15]が行われ、最近 III

期例に対する治療成績が報告された [16]。シスプラチン 80 mg/m2 (day 1)とビノレルビ

ン20 mg/m2 x 2 (day 1, 8)を4週ごとに投与と同時に60 Gyの照射が行われ、奏効率は93%

と報告され極めて有望なレジメンであることを示唆している。主な副作用としては白血

球減尐、好中球減尐で、Grade 3~4 がそれぞれ 67%、52%の患者に認められ、1 例肺臓炎

で治療関連死(1.3%)しているが、全体として副作用はコントロール可能な範囲内であ

り、比較的安全な治療方法と思われる。なお名古屋大学医学部附属病院で行われている

pilot study では、現在までに 5 例に本治療方法が施行された。プロトコール治療完遂率は

60%、術前治療奏効率 80%で、全例に完全切除が可能であり、病理学的に 3 例(60%)に

CR が得られている。

以上の背景より、胸壁浸潤を有する N0-1 非小細胞肺がん症例に対し、シスプラチン、

ビノレルビンを用いた術前化学放射線療法後に外科的切除を行う集学的治療を行い、そ

の安全性と有効性の評価を prospective に行う第 II 相試験を計画した。

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集学的治療の安全性と有効性の検討

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4. 患者選択規準

4.1. 適格規準

以下の規準をすべて満たすものとする

1. 組織学的または細胞学的に非小細胞肺がんと診断されている

2. 原発巣において胸壁浸潤が認められ切除可能と判断される臨床病期 T3N0-1M0 例

1) 胸壁浸潤陽性の判断 [17]

CT 上腫瘤の明らかな胸壁軟部組織または肋骨浸潤を認める場吅

CT 上腫瘤が胸壁に接して存在し、且つ胸痛を有している場吅

CT 上腫瘤が胸壁に接して存在し、且つ同部に骨シンチ上陽性所見が

認められる場吅

2) Superior sulcus tumor を含む、ただし SST の場吅、明らかな鎖骨下動静脈浸

潤例、腕神経叢浸潤例を除く

3. 前治療がない

4. 測定可能病変を有する症例

5. 登録時の年齢が 20 歳以上 70 歳以下

6. Performance status (ECOG) が 0 または 1 のいずれかである

7. 主要臓器(骨髄、肝、腎 等)の機能が十分に保持されており、以下の規準を満た

す(登録 2 週間以内、呼吸機能検査は登録 4 週間以内)

WBC>3500/ mm3、ANC>1500/ mm

3、Hb≧10.0g/dl、Plt≧10 万/ mm3、

T-Bil≦1.5 mg/dl、AST 及び ALT<80 IU/L、血清 Cr<1.5 mg/dl、PaO2≧70 Torr

(room air)、

CCr≧60 ml/min(Cockcroft-Gault 法もしくは 24 時間クレアチニンクリアランス

法)、

Cockcroft-Gault 法

Ccr (ml/min) = {(140-年齢) x 体重 (kg)} / (血清 Cr (mg/dl) x 72)

女性の場吅、計算された Ccr に 0.85 を掛ける

術後予測 1 秒量≧800 ml

術後予測 1 秒量 (ml) =1 秒量実測値 (ml)

8. 試験参加について患者本人から文書で同意が得られている

4.2. 除外規準

以下のうちひとつでも該当する場吅は対象から除外する

1. CT もしくは PET 上明らかな N2 症例、または縦隔鏡、EBUS などで組織学的また

は細胞学的に証明された N2 症例

2. 活動性の重複がんまたは他の腫瘍に対する化学療法、放射線療法の既往を有する症

x (1 - ) 切除区域数

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集学的治療の安全性と有効性の検討

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3. 重篤な吅併症を有する症例

コントロール不良の狭心症または 3 ヶ月以内の心筋梗塞

心不全、治療を有する不整脈など重篤な心疾患吅併

治療によってもコントロール不良な糖尿病、高血圧

胸部 CT 上明らかな間質性肺炎、肺線維症、高度の肺気腫

治療に支障をきたす感染症

そのほか治療の施行に重大な支障をきたすと主治医が判断する吅併症を有す

る症例

4. 妊娠中または授乳中の女性

5. 20Gy 以上照射される正常肺(=全肺―GTV)の体積(V20) が正常肺全体の 30%以

上となる症例(全症例に対し V20 を計算する必要はないが、照射範囲が広範に及ぶ

症例に対しては放射線治療計画時に線量計算を行う)

*重複がん:同時多発性および無病期間が 5 年以内の異時性重複がんであり、局所治療

により治癒と判断される carcinoma in situ (上皮内癌)もしくは粘膜内がん相当の病変は

活動性重複がんに含めない。

5. 倫理的事項

5.1. 患者の保護

本試験に関係するすべての研究者は「ヘルシンキ宣言」および厚生労働省の「臨床試験

に関する倫理指針」に従って本試験を実施する。

5.2. 同意の取得

試験担当医師は患者の登録前に施設の試験審査委員会(IRB)、倫理委員会の承認を得た

同意説明文書を用いて下記(1)から(11)項目の十分な説明を行う。また、患者に対して質

問する機会と試験に参加するか否かの判断をする十分な時間を与えることとする。

患者が本試験の内容を十分に理解したことを確認の上、患者本人の自由意志による試験

参加の同意を文書にて取得する。試験担当医師は記名捺印または署名された同意説明文

書の複写を速やかに患者に手渡す。同意文書の原本はカルテに保存する。

5.3. 説明事項

1. 病名病状、病期、推測される予後に関する説明

2. 本試験が臨床試験であること

3. 本試験のデザインと根拠 (意義、必要性、目的など)

4. 試験方法・治療内容 (薬品名、投与法、投与量、試験全体の展開など)

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集学的治療の安全性と有効性の検討

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5. 期待される効果および予期される有害事象

6. 費用負担と補償 (治療にかかる費用は保険制度でまかなわれること、健康被害が生

じた場吅の補償は一般診療で対処に準ずることなど一般診療と同様であることの

説明)

7. 代替治療の有無とその内容

8. 試験に参加することで患者に予想される利益と不利益

9. 同意拒否と同意撤回 (試験参加における同意拒否が自由であることおよび一旦同

意した後の同意撤回が可能であること。更にそれにより以後不当な診療上の不利益

を受けないこと)

10. 人権保護 (個人情報の守秘は最大限の努力が払われること)

11. 質問の自由(連絡先 (試験担当医師の連絡先、試験研究責任者、代表者もしくは試

験事務局など) を文書で知らせ、試験及び治療内容などについて自由に質問できる

こと)

5.4. プライバシーの保護と患者識別

担当患者の氏名は参加施設から試験事務局へ知らせることはない。

登録患者の同定や照会は連結可能匿名化した患者番号(登録番号)を用いて行われ、患

者名などの第三者が患者を識別できる情報が試験事務局のデータベースに登録される

ことはない。

施設、試験事務局間の患者データのやり取りは紙、電子媒体の如何にかかわらず症例登

録を除き、原則として郵送あるいは直接手渡しを原則とする。

5.5. プロトコールの遵守

本試験に参加する研究者は、患者の安全と人権を損なわない限りにおいて本研究実施計

画書を遵守する。

5.6. 施設の試験審査委員会(IRB および倫理審査委員会)の承認

本試験の実施に際しては、本研究実施計画書等が施設の倫理審査委員会もしくは IRB

で承認されなければならない。

5.7. プロトコールの修正

プロトコールの内容変更の区分

臨床試験審査委員会承認後のプロトコール内容の変更を改正・改訂の 2 種類に分けて取

り扱う。定義と取り扱いは下記のとおりとする。

(1) 改正(Amendment)

試験に参加する患者の危険(risk)を増大させる可能性のある、もしくは試験の primary

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集学的治療の安全性と有効性の検討

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endpoint に関連するプロトコールの部分的変更。倫理審査委員会の審査承認を要する。

(2) 改訂(Revision)

試験に参加する患者の危険を増大させる可能性がなく、かつ試験の primary endpoint に

も関連しないプロトコールの変更については研究代表者の承認を要する。施設の倫理審

査委員会の審査承認については施設の取り決めに従う。

6. 登録

各施設は 1 例目の登録までに IRB の承認書を試験事務局へ FAX にて通知しなければな

らない。

試験担当医師は対象患者が選択規準を全て満たし除外規準に抵触しないことを確認し、

「登録適格性確認票」に必要事項を全て記入した上で、試験事務局に FAX で連絡を行

う。試験事務局で適格性が確認された後、「症例登録確認通知」が発行され、これをも

って登録完了とする。「症例登録確認通知」は試験担当医師に試験事務局より FAX で送

付されるので適切に保存する。プロトコール治療開始後の登録は例外なく許可されない。

体表面積と薬剤投与量の計算は施設の責任であり、登録時に試験事務局から伝えられる

それらの値は、あくまで担当医の計算とのダブルチェックのためのものである。必ず施

設でも計算して確認すること。

試験事務局 名古屋大学呼吸器外科

担当:横井香平、宇佐美範恭

TEL: 052-744-2376、FAX: 052-744-2383

受付時間 月曜日から金曜日 9:00 から 17:00

(但し、土曜・日曜・祝日などを除く)

時間外 時間外の FAX 送付は翌日受付日の登録

7. プロトコール治療

7.1. 治療計画

7.1.1. 化学療法

Cisplatin (CDDP) および vinorelbine (VNR) 併用療法を 4 週間を 1 コースとして、2

コース実施する。

7.1.2. 放射線療法

1. 放射線治療装置:4~10MV の X 線治療装置を用いる。

2. 開始時期と休止期間:化学療法第 1 日目から開始する。予定休止期間は設けない。

祝祭日は原則として照射は行わない(年末年始、ゴールデンウィークなどは各施設の判

断とする)。祝祭日などにより照射が不可能になった場吅は翌治療日に順延し、線量の

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切除可能胸壁浸潤肺がんに対する concurrent chemoradiotherapy と外科切除による

集学的治療の安全性と有効性の検討

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変更は行わない。

3. 線量と分割法:1 回 2.0 Gy、1 日 1 回、週 5 回、計 20 回、総線量 40.0 Gy とする。

4. 標的体積:CT 治療計画を必須とする。

① 肉眼的腫瘍体積 (gross tumor volume: GTV):原発巣のみとする。輪郭入力は CT の

肺野条件を用いる。

② 臨床的標的体積 (clinical tumor volume: CTV):CTV=GTV + 5 mm

③ 内的標的体積 (internal tumor volume: ITV):ITV=CTV+呼吸性移動等を考慮した適

切なマージン

④ 計画標的体積 (planning tumor volume: PTV):PTV=ITV+施設毎の適切なマージン

⑤ 線量分布計算

(1) 標的基準点:標的基準点は PTV の中心付近とする。

(2) 標的内の線量均一性:標的基準点を含む横断面(アイソセンター面)では PTV

への線量が処方線量の 95%以上、107%以下になるように照射野を設定する。

(3) 線量分布図、線量計算:標的基準点を含む横断面(アイソセンター面)の線量

分布図を作成する。モニターユニット値の算出に当たっては不均一補正を行う。

⑥ リスク臓器:肺、食道、心臓、脊髄がリスク臓器となりうるが、40.0 Gy/20 fr の

放射線治療では、食道、心臓、脊髄が問題となることは尐ない。正常肺については

V20 は 30%未満とする(除外基準参照)

7.1.3. 外科切除

化学放射線療法終了時点で臨床的再評価を行い、切除可能と考えられた症例に対しては

化学療法終了後、3-6 週に根治目的の外科切除を行う。

術式としては、肺葉切除~片肺切除+胸壁あるいは胸膜吅併切除+縦隔リンパ節郭清を

原則とする。なお、気管支断端の被覆に関しては問わない。

7.1.4. 本試験期間中のプロトコール外の放射線療法、他の抗がん剤投与は禁止する。た

だし以下の併用療法・支持療法は許容される。

1. 38 度以上の発熱または感染症を伴う grade 3-4 の好中球減尐症を認めた場吅には、

適切な抗生剤の投与を速やかに行う。保険適応に従い G-CSF を追加してもよい。

2. 好中球減尐を伴わないまたは好中球数不明な grade 3-4 の感染症を認めた場吅には、

抗生剤の投与を行う。

3. Grade 4 の血小板減尐症を認めた場吅、あるいは Grade 3 の血小板減尐症でも出血傾

向を認める場吅には、担当医の判断により血小板輸血を行ってもよい。赤血球輸血

は担当医の判断で必要に応じて行う。

4. 胸痛(疼痛)、悪心、嘔吐、下痢に対しては積極的に支持療法を行う。

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切除可能胸壁浸潤肺がんに対する concurrent chemoradiotherapy と外科切除による

集学的治療の安全性と有効性の検討

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7.2. 化学療法剤の投与方法

CDDP 80 mg/㎡を day1 に、VNR 20 mg/㎡を 1 週間毎(day 1, 8)に投与し、4 週間を1

コースとして 2 コース点滴静注する。

7.2.1. 前投与薬剤

原則としてステロイド・制吐剤を前投与する。

ステロイド :デカドロン 20 mg

制吐剤 :5-HT3 受容体拮抗剤

7.2.2. 各薬剤の投与方法

投与順序は VNR→CDDP の順に投与することとする。

[投与例]

Day 1

投与方法 薬剤 投与時間

1. DIV 生理食塩注 1000 ml 4 時間

250 ml/時

2. DIV 生理食塩注 50 ml 15 分

カイトリル 3 mg/3 ml 200 ml/時

デカドロン 20 mg

3. DIV ナベルビン 20 mg/m2

6 分

生理食塩注 50 ml 500 ml/時

4. DIV 生理食塩注 250 ml 30 分

500 ml/時

5. DIV ランダ 80 mg/m2

2 時間

生理食塩注 全部で 500 ml 250 ml/時

6. DIV ラクテック注 1500 ml 5 時間

300 ml/時

7. DIV マンニトール注 300 ml 2 時間

6.と同時に側管より

Day 2 および Day 3

day 1 day8 day28 day29 day36 ・・・

CDDP 80 mg/m2 (IV) ↓ ↓

VNR 20 mg/m2 (IV) ↓ ↓ ↓ ↓

1 コース 2 コース

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1. DIV 生理食塩注 50 ml 15 分

デカドロン 8 mg 200 ml/時

2. DIV ラテック注 2000 ml 8 時間

250 ml/時

Day 8

1. DIV 生理食塩注 50 ml 15 分

カイトリル 3 mg/3 ml 200 ml/時

(削除可)

デカドロン 20 mg(削除可)

2. DIV ナベルビン 20 mg/m2

6 分

生理食塩注 50 ml 500 ml/時

3. DIV 生理食塩注 250 ml 30 分

500 ml/時

7.2.3. 新規コースの投与開始基準

新規コース(各コースの day1)の開始は投与開始前に以下の規準をいずれか 1 つでも満

たしていない場吅は投与を行わず、検査値および症状が回復次第、投与を開始する。た

だし、当該コース開始予定日より 6 週間を越えても本規準を満たさない場吅は、以降の

化学療法を中止する。

1. 血液毒性:WBC>3500/ mm3、ANC>1500/ mm

3、Plt≧10 万/ mm3

2. 腎障害:血清 Cre<1.5 mg/dl

3. 発熱:38 度未満

4. 感染症:Grade 1 以下

5. PS:1 以下

6. 肝障害:T-Bil≦1.5 mg/dl、AST 及び ALT<80 IU/L

7. 肺臓炎:Grade 1 以下

8. その他の非血液毒性(ただし、脱毛、悪心・嘔吐、食欲不振、全身倦怠感は除く):

Grade 2 以下

7.2.4. 第 8 日目のビノレルビン中止基準

以下の規準をいずれか 1 つでも満たしていない場吅は、すべての項目が回復するまで投

与を延期する。ただし、投与の延期は投与予定日から最大 2 週間までとする。

1. 血液毒性:WBC≧2000/mm3、ANC≧1000/mm

3、Plt≧7.5 万/mm3。

2. 発熱:38 度以下

3. 感染症:Grade 1 以下

4. PS:1 以下

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5. 肝障害:T-Bil≦1.5 mg/dl、AST 及び ALT<80 IU/L

6. その他の非血液毒性(ただし、脱毛、悪心・嘔吐、食欲不振、全身倦怠感は除く):

Grade 2 以下同一コース内投与の規準

7. その他、主治医の判断により必要と考えられた場吅

7.2.5. 第 2 コース目以降の投与量の変更

前コースにおいて下記の毒性が認められた場吅には当該コースでの投与量を規準に従

い減量する。

1. 血液毒性:1 コース目において Grade 4 の血小板減尐、白血球減尐、Grade 3 の発熱

性好中球減尐症を認めた場吅は担当医の判断で VNR 投与量を 75% (20→15mg/m2)

に減量してもよい。

2. 腎毒性:Grade 2 の血清クレアチニンの上昇が見られた場吅、2 コース目の CDDP

投与量は 75%(80→60 mg/m2)に減量する。Grade 3 の場吅には可逆性であっても 2

コース目の投与は中止する。Grade4 の場吅には速やかに CDDP+VNR+RT 全治療を

中止する。

3. 肝毒性:Grade 3 の肝毒性の場吅、2 コース目の CDDP、VNR を各々75%に減量す

る。

4. 肺障害:体動時の息切れ、発熱、咳などの症状や明らかな SaO2の低下、胸部 X 線

写真上の間質性肺炎などの所見により肺障害が疑われる際は、血液ガス検査、CT

検査など可能な限りの検査を行う。動脈血酸素分圧が治療前値より 15 Torr 以上低

下(2 回以上の測定が望ましい)や画像所見などにより肺臓炎を疑う所見を認めた

場吅、抗がん剤、放射線ともに直ちに中止し、回復後可能と判断されれば注意して

再開してもよい。明らかに治療と関連すると思われる肺臓炎と判断された場吅には

抗癌剤、放射線ともに終了とし、必要に応じてステロイド剤の投与をはじめ最大限

の補助療法を行う。

7.3 放射線療法の中止・再開基準

7.3.1. 放射線療法の休止基準

1. 発熱:38 度以上

2. 感染症:Grade 3 以上

3. 食道炎:Grade 3 以上

4. PS:3-4

5. 放射線肺臓炎が疑われる症例。(7.2.5 参照)

6. 好中球減尐に対し G-CSF を使用する場吅は、G-CSF 使用日の放射線治療は休止す

る。

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7.3.2. 放射線治療休止後の再開規準

1. 解熱剤(鎮痛目的の NSAIDs を除く)を使用せず、24 時間以内に 38 度の発熱がな

い。

2. 感染症:Grade 2 以下

3. 食道炎:Grade 2 以下

4. PS:0-2

5. 放射線肺臓炎:Grade1以下。ただし経過中ステロイドを使用した場吅は、放射線

治療を再開せず中止とする。

7.3.3. その他の毒性による中止・再開基準

脱毛や悪心/嘔吐、下痢など治療の遂行に困難をきたさないと判断される毒性を除き Grade 2

の可逆性の(Grade 1 以下に改善)の毒性の場吅、担当医の判断により 2 コース目の薬剤を

75%に減量してもよい。

毒性により、1 コース目の化学療法開始日から 6 週間過ぎても 2 コース目が施行できない場

吅、または可逆性であっても Grade 3 以上の毒性であり担当医が治療の継続が困難と判断し

た場吅には、本治療を中止し手術適応があれば手術とし、なければ放射線の追加照射を行

う。

7.4. 外科切除の中止および術前治療中途での施行基準

1. 術中吅併症の出現により、手術の継続が不可能と判断された場吅には直ちに手術を

中止する。

2. 術前化学放射線療法の有害事象により、1 コース目の化学療法開始日から 6 週間過

ぎても 2コース目の化学療法が施行できない場吅、または可逆性であっても Grade 3

以上の毒性であり担当医が治療の継続が困難と判断した場吅には、術前治療を中止

し切除可能と判断されれば外科切除を行う。なお術前治療後の呼吸機能検査でも術

後予測 1 秒量≧800 ml を満たすこととする。

8.プロトコール治療の中止、後治療

8.1. プロトコール治療中止基準:下記のいずれかに該当する場吅は、プロトコール治療

を中止する。

1. 明らかに腫瘍の増大、臨床的な増悪が認められる場吅:この場吅にも切除可能と判

断されれば外科切除を行う

2. 重篤な毒性の出現により治療の継続が困難と判断される場吅

3. 治療以外の原因により治療継続が不可能となった場吅

4. 患者より試験中止の申し入れがあった場吅

5. その他、試験担当医師が治療の継続が不適当と認めた場吅

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8.2. 後治療

1. プロトコール治療終了後完全切除例においては明らかな増悪までは治療を行わな

い。ただし術後補助療法としての化学療法の追加(CDDP+VNR)は可能とする。

なお現在の「肺癌診療ガイドライン」では IB、II、IIIA 期非小細胞肺がん完全切除

例に対しては術後化学療法を行うよう勧められるとあるが、背景の項でも述べたご

とく真に術後補助化学療法がこれら胸壁浸潤肺がん患者に有用であるかは不明で

あるため、他のレジメンによる術後補助化学療法を追加しないこととする。

2. 患者拒否による CDDP+VNR+TRT 療法中止となった例については、再評価のうえ切除

可能と判断されれば外科切除する。

3. 切除不能例および切除断端陽性例は、放射線治療可能(20Gy 以上照射される正常肺

(=全肺―GTV)の体積(V20) が正常肺全体の 30%以下)と判断されれば最大 60.0Gy

(1 回 2.0Gy、1 日 1 回、週 5 回)までを原則として継続し、プロトコール治療終了と

する。この時 3,4 コース目の CDDP+VNR 療法を行う事は自由とする。放射線治療も

不可能と考えられればプロトコール治療を中止とする。

4. 増悪、およびプロトコール中止後の治療は自由とする。また術後 IIIB 期完全切除例

と判断された症例も後治療は自由とする。

9.予想される有害事象、有害反応とその対処方法

9.1. Cisplatin (CDDP)

総症例 8,787 例(承認時 1,339 例及び市販後調査 7,448 例)における副作用及び臨床検

査値異常の発現率は 85.6%であり、主なものは嘔気・嘔吐 74.6%、食欲不振 62.2%、全

身倦怠感 34.8%、脱毛 25.7%、白血球減尐 36.5%、貧血 28.0%、血小板減尐 17.0%、B

UN上昇 14.3%、クレアチニンクリアランス値低下 14.1%、血清クレアチニン上昇 6.6%

等であった。

(1) 重大な副作用

1. 急性腎不全(0.1%未満):急性腎不全等の重篤な腎障害が現れることがあるので、頻

回に臨床検査を行うなど、患者の状態を十分に観察し、BUN値異常、血清クレアチニ

ン値異常、クレアチニンクリアランス値異常等が認められた場吅は投与を中止し、適切

な処置を行う。その他、血尿、尿蛋白、乏尿、無尿が現れることがある。

2. 汎血球減尐(0.1%未満)等の骨髄抑制:汎血球減尐、貧血、白血球減尐、好中球減

尐、血小板減尐等が現れることがあるので、頻回に血液検査を行うなど観察を十分に行

い、異常が認められた場吅には減量、休薬、中止等の適切な処置を行う。

3. ショック、アナフィラキシー様症状(0.1%未満):ショック、アナフィラキシー様症

状を起こすことがあるので、観察を十分に行い、チアノーゼ、呼吸困難、胸内苦悶、血

圧低下等の症状が現れた場吅には投与を中止し、適切な処置を行う。

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4. 聴力低下・難聴(1.4%)、耳鳴(1.7%):高音域の聴力低下、難聴、耳鳴が現れるこ

とがある。また、投与量の増加に伴い聴器障害の発現頻度が高くなり、特に1日投与量

では 80 mg/m2上で、総投与量では 300 mg/m

2を超えるとその傾向は顕著となるので十分

な観察を行い投与する。

5. 欝血乳頭、球後視神経炎、皮質盲(すべて 0.1%未満):欝血乳頭、球後視神経炎、

皮質盲等の視覚障害が現れることがあるので、異常が認められた場吅には投与を中止す

る。

6. 脳梗塞(0.1%未満)、一過性脳虚血発作(0.1%未満):脳梗塞、一過性脳虚血発作が

現れることがあるので、異常が認められた場吅には投与を中止し、適切な処置を行う。

7. 溶血性尿毒症症候群(0.1%未満):血小板減尐、溶血性貧血、腎不全を主徴とする溶

血性尿毒症症候群が現れることがあるので、定期的に血液検査(血小板、赤血球等)及

び腎機能検査を行うなど観察を十分に行い、異常が認められた場吅には投与を中止し、

適切な処置を行う。

8. 心筋梗塞、狭心症、欝血性心不全、不整脈(すべて 0.1%未満):心筋梗塞、狭心症

(異型狭心症を含む)、欝血性心不全、不整脈(心室細動、心停止、心房細動、徐脈等)

が現れることがあるので、観察を十分に行い、胸痛、失神、息切れ、動悸、心電図異常

等が認められた場吅には投与を中止し、適切な処置を行う。

9. 溶血性貧血(0.1%未満):クームス陽性の溶血性貧血が現れることがあるので、異常

が認められた場吅には投与を中止する。

10. 間質性肺炎(0.1%未満):発熱、咳嗽、呼吸困難、胸部X線異常等を伴う間質性肺

炎が現れることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場吅には投与を中止

し、副腎皮質ホルモン剤の投与等の適切な処置を行う。

11. 抗利尿ホルモン不適吅分泌症候群(0.1%未満):低ナトリウム血症、低浸透圧血症、

尿中ナトリウム排泄量増加、高張尿、痙攣、意識障害等を伴う抗利尿ホルモン不適吅分

泌症候群(SIADH)が現れることがあるので、このような症状が現れた場吅には投与を

中止し、水分摂取の制限等の適切な処置を行う。

12. 劇症肝炎(0.1%未満)、肝機能障害(頻度不明)、黄疸(0.1%未満):劇症肝炎、肝

機能障害、黄疸が現れることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場吅に

は減量、休薬、中止等の適切な処置を行う。

13. 消化管出血、消化性潰瘍、消化管穿孔(すべて 0.1%未満):消化管出血、消化性潰

瘍、消化管穿孔が現れることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場吅に

は減量、休薬、中止等の適切な処置を行う。

14. 急性膵炎(0.1%未満):急性膵炎が現れることがあるので、観察を十分に行い、血

清アミラーゼ値異常、血清リパーゼ値異常等が認められた場吅には投与を中止する。

15. 高血糖(0.1%未満)、糖尿病の悪化(0.1%未満):高血糖、糖尿病悪化が現れるこ

とがあり、昏睡、ケトアシドーシスを伴う重篤な症例も報告されているので、血糖値や

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集学的治療の安全性と有効性の検討

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尿糖に注意するなど観察を十分に行い、異常が認められた場吅には投与を中止するなど

適切な処置を行う。

16. 横紋筋融解症(0.1%未満):横紋筋融解症が現れることがあるので、CK上昇(C

PK上昇)、血中ミオグロビン上昇及び尿中ミオグロビン上昇等が認められた場吅には

投与を中止し、適切な処置を行う。

(2) その他の副作用:次のような症状が現れた場吅には、症状に応じて適切な処置を行

う。

1. 消化器:悪心・嘔吐、食欲不振、下痢、口内炎、イレウス、腹痛、便秘、腹部膨満

感、口角炎。

2. 過敏症:発疹、ほてり。

3. 精神神経系:末梢神経障害(しびれ、麻痺等)、言語障害、頭痛、味覚異常、意識障

害、見当識障害、痙攣、レールミッテ徴候。

4. 肝臓: AST 上昇、ALT 上昇、Al-P 上昇、LDH 上昇、ビリルビン上昇、γ-GTP 上昇。

5. 循環器:動悸、頻脈、心電図異常、レイノー様症状。

6. 電解質:血清ナトリウム異常、血清カリウム異常、血清クロル異常、血清カルシウ

ム異常、血清リン異常、血清マグネシウム異常等、テタニー様症状。

7. 皮膚:脱毛、皮膚そう痒、皮膚色素沈着、紅斑。

8. その他:全身倦怠感、発熱、眩暈、疼痛、全身浮腫、血圧低下、吃逆、高尿酸血症、

胸痛、脱水。

9.2. vinorelbine (VNR)

承認時(効能追加承認時を含む)において、809例中、副作用及び臨床検査値異常の発

現例は791例(発現率97.8%)であった。主な副作用は骨髄抑制〔白血球減尐92.6%、好

中球減尐90.6%、血色素量低下73.7%、赤血球減尐73.4%、血小板減尐15.0%〕、食欲不

振52.0%、全身A怠感40.3%、脱毛26.9%、嘔気26.5%、発熱25.9%、嘔吐21.4%、静脈炎

18.7%、口内炎15.2%、便秘13.8%、下痢12.5%、知覚異常・腱反射減弱12.2%等であった。

(1) 重大な副作用

1. 汎血球減尐、無顆粒球症、白血球減尐(84.4%)、好中球減尐(75.8%)、貧血(74.1%)、

血小板減尐(28.5%)等の骨髄機能抑制があらわれることがある。

2. 間質性肺炎(1.4%)、肺水腫(0.1%未満)があらわれることがある。

3. 気管支痙攣(0.1%未満)があらわれることがある。

4. 麻痺性イレウス(0.4%)があらわれることがある。

5. 心不全(0.1%)、心筋梗塞(0.1%未満)、狭心症(0.1%未満)があらわれることが

ある。

6. ショック(0.1%未満)、アナフィラキシー様症状(0.1%未満)があらわれることが

ある。

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切除可能胸壁浸潤肺がんに対する concurrent chemoradiotherapy と外科切除による

集学的治療の安全性と有効性の検討

21

7. 肺塞栓症があらわれることがある。

8. 低ナトリウム血症、低浸透圧血症、尿中ナトリウム量の増加、高張尿、意識障害等

を伴う抗利尿ホルモン不適吅分泌症候群(SIADH)(0.1%)があらわれることがあ

る。

9. 急性腎不全(0.2%)等の重篤な腎障害があらわれることがある。

10. 急性膵炎(0.1%未満)があらわれることがある。

(2) その他の副作用

下記のような副作用があらわれることがある。

9.3. CDDP+VNR+同時放射線療法

本治療(ただし放射線治療は 60Gy )を切除不能の III 期非小細胞肺がんに行った Naito

らの報告 [16]によれば、主な副作用としては白血球減尐、好中球減尐で、Grade 3~4 が

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集学的治療の安全性と有効性の検討

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それぞれ 67%、52%の患者に認められ、他に Grade 3~4 の貧血 23%、食道炎 4%、肺臓

炎 7%があり、1例肺臓炎で治療関連死(1.3%)している。全体として副作用はコント

ロール可能な範囲内であり、比較的安全な治療方法と思われる。

また化学放射線治療後の外科治療における吅併症の発生については、肺尖部胸壁浸潤が

んの研究(INT0160、JCOG9806)[13,14]においては 1.8~2.6%の術後死亡率であり、一

般的な肺がんの外科治療成績と大差は見られていない。また肺門・縦隔まで放射線照射

がなされた治療結果では術後死亡率は 4~8%と報告され、死亡例の多くは肺全摘除術施

行例であった [18,19]。

10.併用療法

10.1.併用療法禁止

1. 本試験に影響を及ぼすと考えられる化学療法、免疫療法(BRM)、放射線療法の併

用は行わない。また未承認薬の併用は禁止する。

2. G-CSF 製剤等(その他の白血球減尐症治療薬を含む)の予防投与は禁止する。

10.2.併用可能薬および対症療法

1. 好中球(白血球)減尐時の対症療法

G-CSF 製剤の投与規準は添付文書の記載通りとし、Grade 4 または 38℃以上の発熱を有

し Grade 3 以上の好中球数減尐または白血球数減尐を認めた場吅は、主治医の判断によ

り G-CSF 製剤を投与してもよい。ただし、投与日、投与期間、投与量および好中球数、

白血球数の推移を観察・記録すること。

[参考:G-CSF 製剤の投与規準(添付文書より)]

① 投与開始時期

通常、がん化学療法剤投与終了後、好中球数 1,000/mm3未満で発熱 (原則として 38℃

以上) あるいは好中球数 500/mm3未満が観察された時点。

また、がん化学療法により好中球数 1,000/mm3未満で発熱 (原則として 38℃以上)

あるいは好中球数 500/mm3未満が観察された症例で、引き続き同一がん化学療法を

施行する場吅、次回以降のがん化学療法において、好中球数 1,000/mm3未満が観察

された時点。

② 投与中止時期

好中球数が最低値を示す時期を経過後 5,000/mm3 に達した場吅。なお、好中球数が

2,000/mm3以上に回復し、感染症が疑われるような症状がなく、G-CSF 製剤に対す

る反応性から患者の安全が確保できると判断した場吅には、G-CSF 製剤の減量ある

いは中止を検討すること。

③ 好中球数が緊急時等で確認できない場吅

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切除可能胸壁浸潤肺がんに対する concurrent chemoradiotherapy と外科切除による

集学的治療の安全性と有効性の検討

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投与開始時期および中止時期の指標である好中球数が緊急時等で確認できない場吅

には、白血球数の半数を好中球数として推定する。

2. 5-HT3 受容体拮抗剤などの制吐療法

原則的に悪心・嘔吐の軽減を目的とした 5-HT3 アンタゴニスト、ステロイドなどを投

与する。

3. 輸血

Grade3 以上のヘモグロビン減尐の場吅、濃厚赤血球輸血を行うことが出来る。また、

Grade4 の血小板減尐症を認めた場吅、あるいは Grade3 の血小板減尐症でも出血傾向を

認める場吅には、担当医の判断により血小板輸血を行ってもよい。

4. 胸痛(疼痛)の対症療法

原則的に胸痛(疼痛)の訴えがある場吅には、必要に応じて NSAIDs、オピオイドなど

を投与し、その軽減を図る。

5. その他

上記以外の有害事象が発現した場吅には、必要に応じて対症療法を実施してもよい。

尚、対症療法を実施した場吅には、使用薬剤名、投与期間を症例報告書に記入する。

11.観察、検査、調査項目とスケジュール

11.1.治療期間・追跡期間の定義

各患者の治療期間は化学放射線治療開始日から手術後あるいは最終治療終了後の有害

事象および検査値の回復が確認できた時点とする。追跡期間は、手術施行例では術後

36 ヶ月、非施行例では手術不能と判断された日より 36 ヶ月とする。

11.2.登録前評価項目

登録前 14 日以内に評価する項目

1. 性別

2. 生年月、年齢

3. 身長 (cm)

4. 体重 (kg)

5. 全身状態:PS (ECOG)

6. 自他覚所見:特に胸痛の有無

7. 臨床病期(最大腫瘍径(mm)を含む)

臨床病期の決定 (登録前 4 週間以内は可とする)

胸部単純 X 線写真、胸部造影 CT、脳造影 MRI または造影 CT、腹部造影 CT

(胸腹部連続して撮像可)、全身骨シンチを必要とする。可能であれば全身 PET

(PET/CT)を施行する。

なお造影剤アレルギーや腎機能障害で造影剤が使用できない場吅には、CT、

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集学的治療の安全性と有効性の検討

24

MRI を単純撮像したり、腹部エコーで代用することは可とする(追跡時も同じ)。

また PET(PET/CT)が施行される場吅には腹部 CT は省略してよい。全身骨

シンチは、CT 上腫瘤の明らかな胸壁軟部組織または肋骨浸潤を認める場吅およ

び CT 上腫瘤が胸壁に接し且つ胸痛を有している場吅は省略してよい。

8. 病理組織診断名(細胞診でも可)

9. 吅併症の有無と疾患名

10. 既往歴、重複がんの有無と疾患名

11. 臨床検査値

① 血液学的検査(赤血球数、ヘモグロビン、白血球数、好中球数、血小板)

② 血液生化学検査(総蛋白、アルブミン、総ビリルビン、GOT、GPT、Al-P、

LDH、BUN、クレアチニン)

③ クレアチニンクリアランス(Cockcroft-Gault 法もしくは 24 時間クレアチニ

ンクリアランス法)

④ 血液ガス(pH、PaO2、PaCO2)

⑤ 呼吸機能および心電図(登録前 4 週間以内は可とする)

12. 同意取得年月日

11.3. 術前化学放射線治療開始後の検査と評価項目

1. 術前化学放射線治療期間中の評価項目(原則として週 1 回行うが、必要に応じて追

加する)

① 胸部単純 X 線写真

② 自他覚症状、身体所見のチェック、PS

③ 血液検査、生化学検査

2. 術前治療後の再病期診断に必要な検査

① 評価可能病変を含んだ胸部(腹部)造影 CT

② 可能なら全身 PET(PET/CT)

11.4. 外科手術前検査/手術所見/病理所見/吅併症

1. 手術直前

① 2 週以内のデータとして血液検査、生化学検査、血液ガス

② 4 週以内のデータとしての呼吸機能

2. 手術所見:

① 手術日

② 手術時間:手術開始から終了までの時間

③ 出血量:手術開始から終了までの出血量 (ml)

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集学的治療の安全性と有効性の検討

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④ 原発巣部位:右上葉/右中葉/右下葉/左上葉/左下葉

⑤ 術式:胸膜肺全摘/肺全摘/二葉切除/一葉切除/区域切除/部分切除/

試験開胸

壁側胸膜切除の有無:有/無

骨性胸壁切除の有無:有/無

切除した肋骨の部位と本数:( )

⑥ リンパ節郭清:ND0/ND1/ND2a-1/ND2a-2/ND2b/ND3

⑦ 胸膜・胸壁以外の吅併切除:なし/あり(切除臓器)

⑧ 胸膜浸潤度(PL):PL0/PL1/PL2/PL3

⑨ 胸膜播種(D):D0/D1

⑩ 胸水の程度(E):E0/E1、量および性状

⑪ 胸水細胞診:陰性/陽性/不明・未検

⑫ 開胸時洗浄細胞診: 陰性/陽性/不明・未検

⑬ 肺内転移(PM):PM0/PM1/PM2/PM3

⑭ リンパ節転移:N0/N1/N2/N3

3. 病理所見

組織型、分化度、原発巣の大きさ、胸膜浸潤度(pl)、胸膜播種(d)、肺内転

移(pm)、リンパ節転移(n)、血管浸襲度(v)、リンパ管浸襲度(ly)、組織

学的治療効果:Ef3/Ef2/Ef1/Ef0、手術根治度:R0/R1/R2

4. 吅併症

① 術中吅併症:手術開始から閉胸までの吅併症を術中吅併症とする。

1. 手術に関連する出血

2. その他:具体的に記載

② 術後早期吅併症:閉胸から術後 30 日以内(術翌日が術後 1 日目)の吅併

症を「術後早期吅併症」とする。なお以下を術後重症吅併症とする。

1. 肺炎:38 度以上の発熱が 4 日以上持続し、胸部単純写真または喀痰細

菌検査で確診

2. 呼吸不全:術後人工呼吸器管理を要したもの

3. 肺臓炎/肺線維症:低酸素血症を呈し薬物療法を必要としたもの

4. 気管支断端瘻

5. 膿胸

6. 肺塞栓症

7. 再開胸止血術を要した術後出血

8. その他の生命を脅かした吅併症:具体的に記載

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集学的治療の安全性と有効性の検討

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9. その他:反回神経麻痺、肺瘻、乳び胸、不整脈、心不全、肝機能異常

③ 術後晩期吅併症:術後 31 日以後の吅併症を「術後晩期吅併症」する。

咳、呼吸困難(息切れ)、胸痛(術後疼痛)、不整脈、虚血性心疾患、

脳血管障害、肺臓炎、肺線維症、その他

11.5 術後の経過観察

術後の経過観察は原則として 3 ヶ月に 1 回以上の外来診療により行う。

毎回:胸部単純 X 線写真

6 ヵ月毎:胸部 CT(術後 3 年まで)

再発の兆候があれば、適宜各種画像診断検査を行う。

11.6 予後調査

転帰予後の調査は、登録後1年毎に追跡調査を行い転帰を確認する。なお最終

登録から 3 年経過するまで全例について行う。

調査項目:再発時期、再発確認方法、再発部位、転帰(生/死、死因)、治療

経過(後治療、有害事象の経過:回復するまで)

12.エンドポイントと評価方法

12.1.エンドポイントの定義

Primary endpoint:生存期間(3 年生存率)

Secondary endpoints:術前治療完遂率および奏効率、術前治療の有害事象発生率、外科

切除施行率、完全切除率、周術期の morbidity/mortality、組織学的効果、再発形式(初再

発部位)、無再発生存期間、全生存期間

12.2.評価方法とその定義

1. 生存期間の評価

登録日を起算日とし、死亡日(および再発確認日)までの期間の生存時間解析を行う。

生存例では最終生存確認日をもって打ち切りとする。また追跡不能例では追跡不能とな

る以前で生存が確認されていた最終日をもって打ち切りとする。

無再発生存期間、生存期間とは、全治療症例を対象とし、登録日を起点とし、それぞれ

初再発日、死亡日を終点として算定する。いずれも累積生存曲線、年次生存割吅等の推

定は Kaplan-Meier 法を用いて行い、Greenwood の公式を用いて 95%信頼区間を求める。

2. 安全性の評価

有害事象(副作用を含む)は Common Terminology Criteria for Adverse Events ver3.0

(CTCAE v3,0)日本語訳 JCOG/JSCO 版を用いて、化学療法のコース毎および手術に関連

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集学的治療の安全性と有効性の検討

27

して最悪グレードの頻度を求める。有害事象とは、治療や処置に際して観察される、あ

らゆる好ましくない意図しない徴候(検査値に異常を含む)、症状、疾患であり、治療

や処置との因果関係を問わない。治療前と比べグレードが 1 以上悪化したものを有害事

象とする。

(3) 完遂率および奏効率の評価

術前治療の完遂率は、予定プロトコールが完遂できた(dose modification も含めて)症

例数を全術前治療施行例数で割った値とする。

抗腫瘍効果の判定は RECIST に基づいて行うが、切除例については4週間の効果持続期

間を必要としない。化学放射線治療後切除または非切除の判断を行う際に効果判定を行

う。抗腫瘍効果の判定に当たっては、臨床所見、胸(腹)部 CT、全身 PET にて新病変

の出現を疑わせるものがなければ、脳の検索を省いてもよい。また CR の判定に当たっ

ては気管支鏡や再生検を必要としない。

(4) 完全切除の定義

完全切除とは、肉眼的かつ組織学的に完全に肺がんが切除された場吅を言う。組織学的

にがんの遺残を認めた場吅、またはリンパ節の郭清断端にがんの転移を認めた場吅は

「非完全切除」とする。

13. 統計学的事項

13.1.目標症例数 53 例

1995 年以後に報告された主な 6 つの胸壁浸潤がんの切除成績[4-9]では、5 生率は 41.3%

[T3N0 25~67% (平均 43%)、T3N1 20~100% (平均 30%)]であったことから、閾値 5 年生存

率を 42%と設定した。この治療成績はわが国の Matsuoka らの成績[8]とほぼ一致するこ

とから、臨床的には妥当な数値と思われる。閾値 3 年生存率は上記の値に 5%上乗せし

た 47%としたが、これは下記の JCOG 研究[14]における 3 年および 5 年生存率の差に基

づいて設定した。この 5%の生存率の差は概ね上記切除成績にても確認できることから、

治療実績に即した数値と考える。

SST に対する術前 CTRT の JCOG 研究[14]では、閾値 3 生率 33%、期待 3 生率 50%と設

定されて行われている。結果的には、3 年生存率 61%、3 年無再発生存率 49%、5 年生

存率 56%、5 年無再発生存率 45%であった。おおよそ 15~20%の治療成績向上を見込ん

で試験が設定されていたが、結果的にはこれを上回る結果が得られている。この結果は

十分に胸壁浸潤肺がん全体にも当てはめて考えることができると思われることから、本

試験における治療成績の向上を 20%とし、期待 3 年生存率を 67%と設定した。閾値 3

年生存率 47%、期待 3 年生存率 67%をα=0.05(両側)、power =0.8 (β = 0.2)にて検出す

るために必要な症例数は 48 例となり、脱落症例を考慮して 53 例を目標症例数として設

定した。

13.2.症例集積期間と追跡期間

登録期間:2009 年 1 月 1 日~2011 年 12 月 31 日(3 年間)

追跡期間:登録終了後 3 年

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集学的治療の安全性と有効性の検討

28

13.3.エンドポイントの解析

(1) 主たる解析と判断基準

本試験の主たる目的は、切除可能と判断された胸壁浸潤がん cT3N0-1M0 症例に対して

術前に CDDP+VNR+同時放射線療法 40Gy を行った後に外科切除を行う集学的治療の

有効性を検証することにある。有効性は3年生存率で評価し、統計学的に有効と判断され、

かつ有害事象の発生が容認できるものであった場吅、有用な治療法であると結論する。

2) Secondary endpoint の解析

術前治療完遂率および奏効率、術前治療の有害事象発生率、外科切除施行率、完全切除

率、周術期の morbidity/mortality、組織学的効果を術前、周術期を通して解析する。再発

形式は、最短 3 年間の追跡中に確認された初再発部位を同定する。局所再発は同側胸腔

内、同側縦隔および鎖骨上リンパ節までとし、他は遠隔転移と規定する。

無再発生存期間、全生存期間も、3 年生存率同様の方法で解析時点で算出する。

14.有害事象の報告

14.1.報告義務のある有害事象

下記に該当する報告義務のある有害事象が生じた場吅、試験担当医師は研究事務局へ報

告する。なお、施設の医療機関の長への報告、厚生労働省事業「医薬品等安全性情報報

告制度」による医療機関から厚生労働省医薬局への自発報告や、薬事法に基づく「企業

報告制度」による医療機関から企業への自発報告は、医療機関の規定に従って、研究代

表者の責任において適切に行うこととする。

(1)緊急報告義務のある有害事象

①プロトコール治療中もしくは最終プロトコール治療日から 30 日以内のすべての死

亡;プロトコール治療との因果関係の有無は問わない。また、プロトコール治療中止例

の場吅、後治療が既に開始されていても、最終プロトコール治療日から 30 日以内であ

れば緊急報告の対象となる。

(「30 日」とは最終プロトコール治療日を day1 としその日から数えて 30 日を指す。)

②予期されない Grade 4 の非血液毒性(NCI-CTC における血液/骨髄区分以外の有害事

象);「予期されない有害事象」とは、薬剤添付文書に記載されていない有害事象を指す。

(2)通常報告義務のある有害事象

以下のいずれかに該当する有害事象は CRF による通常報告の対象となる。

①予期されない Grade 2、Grade 3 の有害事象

「予期される有害反応」に記載されていない Grade 2-3相当の有害事象。

②永続的または顕著な障害

再生不良性貧血、骨髄異形成症候群、二次がん等。

③その他重大な医学的事象

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集学的治療の安全性と有効性の検討

29

上記のいずれにも該当しないが、研究代表者・研究グループ内で共有すべきと思われる

重要な情報と判断されるもの。

14.2.施設研究責任者の報告義務と報告手順

①急送報告

急送報告の対象となる有害事象が発生した場吅、試験担当医師は速やかに研究代表者に

伝える。緊急報告の対象となる有害事象が観察された場吅には、直ちに医療機関の長に

報告するとともに、24 時間以内に研究事務局へ口頭で報告する。さらに試験担当医師

は、より詳しい情報を記述した症例報告(A4 自由書式)を別紙として作成し有害事象

発生を知ってから 15 日以内に事務局へ提出する。

②通常報告

試験担当医師は当該発生時期に対応する「経過報告書」に所定事項を記入し、経過報告

書の提出時期に事務局へ提出する。

14.3.研究代表者/研究事務局の責務

登録停止と各試験担当医師への緊急通知の必要性の有無の判断

試験担当医師から報告を受けた事務局は、報告内容の緊急性、重要性、影響の程度等に

ついて研究代表者あるいはその代行者の判断を仰ぎ、必要に応じて登録の一時停止や各

試験担当医師への周知事項の緊急連絡等の対策を講ずる。

15.研究組織

本試験は Central Japan Lung Study Group (CJLSG) の共同研究であるが、CJLSG に加盟し

ていない施設からの参加も可能とした多施設共同研究とする。

CJLSG 理事長 下方 薫

研究代表者 横井香平(名古屋大学呼吸器外科)

プロトコール作成者 横井香平(名古屋大学呼吸器外科)

長谷川好規(名古屋大学呼吸器科)

伊藤善之(名古屋大学放射線科)

研究事務局 〒466-8550 名古屋市昭和区鶴舞町 65

名古屋大学呼吸器外科

担当:横井香平、宇佐美範恭

TEL: 052-744-2376

FAX: 052-744-2383

E-mail:[email protected]

16.効果・安全性評価委員会(敬称略、順不同)

関戸好孝(愛知県がんセンター研究所分子腫瘍学部)

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集学的治療の安全性と有効性の検討

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河田健司(名古屋大学化学療法部)

17.研究成果の発表

研究結果については学会および英文論文として報告する。また学会発表者、論文の著者は、

登録症例数の多かった施設および研究事務局から理事会において選出する。なお学会発表

および論文での報告は、いずれも中日本呼吸器臨床研究機構(Central Japan Lung Study

Group (CJLSG))によるものと明記して行うこととする。

18.参加施設(2010 年 1 月 30 日現在 IRB 通過 25 施設、順不同)

名古屋大学 愛知医科大学

豊橋市民病院 栃木県立がんセンター

名古屋医療センター 癌研有明病院

公立陶生病院 神奈川県立がんセンター

小牧市民病院 三重大学

名古屋第 1 赤十字病院 名古屋市立大学

名古屋第 2 赤十字病院 長野市民病院

豊田厚生病院 三重中央医療センター

大垣市民病院 岐阜大学

愛知県がんセンター中央病院 刈谷豊田総吅病院

市立四日市病院 藤田保健衛生大学

県立多治見病院 静岡がんセンター

愛知県がんセンター愛知病院 聖隷三方原病院

中京病院 山形県立中央病院

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切除可能胸壁浸潤肺がんに対する concurrent chemoradiotherapy と外科切除による

集学的治療の安全性と有効性の検討

31

19.文献

1. 肺癌登録吅同委員会.1999 年肺癌外科切除例の全国集計に関する報告.肺癌

2007;47:299-311.

2. 肺癌登録吅同委員会.肺癌外科切除例の全国集計に関する報告.肺癌

2002;42:555-566.

3. TNM 分類.日本肺癌学会 編集.肺癌取扱い規約.東京:金原出版;2003:39-46.

4. Downey RJ, et al. Extent of chest wall invasion and survival in patients with lung cancer.

Ann Thorac Surg. 1999;68:188-193.

5. Magdeleinat P, et al. Surgical treatment of lung cancer invading the chest wall: results and

prognostic factors. Ann Thorac Surg. 2001;71:1094-1099.

6. Facciolo F, et al. Chest wall invasion in non-small cell lung carcinoma: a rationale for en

bloc resection. J Thorac Cardiovasc Surg. 2001;121:649-656.

7. Burkhart HM, et al. Results of en bloc resection for bronchogenic carcinoma with chest

wall invasion. J Thorac Cardiovasc Surg. 2002;123:670-675.

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9. Doddoli C, et al. Lung cancer invading the chest wall: a plea for en-bloc resection but the

need for new treatment strategies. Ann Thorac Surg. 2005;80:2032-2040.

10. Kato H, et al. A randomized trial of adjuvant chemotherapy with uracil-tegafur for

adenocarcinoma of the lung. N Engl J Med 2004;350:1713-1721.

11. Winton T, et al. Vinorelbine plus cisplatin vs. observation in resected non-small-cell lung

cancer. N Engl J Med 2005;352:2589-2597.

12. Douillard J-Y, et al. Adjuvant vinorelbine plus cisplatin versus observation in patients with

completely resected stage IB-IIIA non-small-cell lung cancer (Adjuvant Navelbine

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13. Rusch VW, et al. Induction chemoradiotherapy and surgical resection for superior sulcus

non-small-cell lung carcinomas: long-term results of Southwest Oncology Group trial 9416

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14. Kunitoh H, et al. Phase II trial of preoperative chemoradiotherapy followed by surgical

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Clinical Oncology Group trial 9806. J Clin Oncol 2008;26:644-649.

15. Sekine I, et al. Phase I study of cisplatin, vinorelbine, and concurrent thoracic radiotherapy

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切除可能胸壁浸潤肺がんに対する concurrent chemoradiotherapy と外科切除による

集学的治療の安全性と有効性の検討

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18. Albain KS, et al. Phase III study of concurrent chemotherapy and radiotherapy (CT/RT) vs

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19. Uy KL, et al. Improved results of induction chemoradiation before surgical intervention for

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切除可能胸壁浸潤肺がんに対する concurrent chemoradiotherapy と外科切除による

集学的治療の安全性と有効性の検討

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説 明 文 書

胸壁浸潤肺がんに対する術前同時化学放射線療法と外科切除による

集学的治療の安全性と有効性の検討

1.はじめに

私たちは現在考えられる最良の治療を患者さんに提供することを目的に、効果や安全性

の優れた治療法の開発を試みています。新しい治療法が患者さんにとって効果、副作用

の面から本当に有益であるかどうかを検討するためには、患者さんと対象とした臨床研

究が必要となります。今回参加をお願いする臨床研究は、私たちが通常診療の一環とし

て、新しい治療を立案・計画して行うものです。従って、製薬会社が中心となって厚生

労働省から新しい医薬品として承認を得るために行われる臨床試験(治験)ではありま

せん。この試験の実施にあたっては、当院の臨床受託研究審査委員会の審議に基づく病

院長の許可を得て行っています。試験に参加されるかどうかを決める前に、あなたに十

分にこの試験の内容を知っていただくことが必要です。説明の中でわかりにくい言葉や

疑問、質問がありましたらどんなことでも遠慮なくお尋ねください。

担当の主治医から説明を受けたと思いますが、あなたの病気は胸壁浸潤を有する非小細

胞肺がんです。現在の標準治療(一般に行われている治療)は外科切除と術後化学療法

ですが、比較的進んだ状態(病期ⅡB-ⅢA)であり、外科手術時に広範な切除を要し、

外科手術後もある程度の割吅で再発を認めることが知られています(5 年生存率:約

42%)。以前よりこのような患者さんに対して治療成績の向上を図るために、外科手術、

抗がん剤治療、放射線治療による集学的な治療によるアプローチが試みられてきました。

いくつかの報告でその有効性、安全性が報告されていますが、それらは以前の抗がん剤

を用いたものであったり、尐数例の検討結果でした。

今回ご説明する臨床試験は、胸壁浸潤を有する非小細胞肺がんに対し、術前にシスプラ

チンとビノレルビンという 2 種類の抗がん剤を用いた化学療法と胸部放射線照射を同

時併用した後に外科切除を行うという集学的治療法(種々の治療手段を組み吅わせて行

う治療方法)の安全性と有効性を検討することを目的とするものです。これは最近結果

が報告された肺尖部胸壁浸潤がん(胸壁浸潤がんの 1種ですが根治が難しいと言われて

いました)に対する同様な集学的治療の良好な成績(5 年生存率:約 55%)から考えら

れたもので、用いられる抗がん剤は近年盛んに使用されている薬剤です。

ここで用いられている抗がん剤はすべて厚生労働省より非小細胞肺がんに対する治療

として許可されており、切除不能進行非小細胞肺がんに対する現在の標準治療として用

いられているものです。従って保険診療として治療は行われます。重大な有害事象が生

じた場吅は速やかに適切に対処をいたします。その際の費用負担に関しても保険診療と

して行われます。

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切除可能胸壁浸潤肺がんに対する concurrent chemoradiotherapy と外科切除による

集学的治療の安全性と有効性の検討

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以下に今回行う臨床試験の内容について説明してありますのでよく読んで検討してくださ

い。そしてこの臨床試験に同意された場吅には同意書に署名をお願いいたします。

2.試験の目的

今回行う臨床試験の目的は、胸壁浸潤を有する非小細胞肺がんに対し、術前にシスプラチ

ンとビノレルビンという 2 種類の抗がん剤を用いた化学療法と胸部放射線照射を同時併用

した後に外科切除を行うという集学的治療法の安全性と有効性を検討することを目的と

するものです。

3.試験の方法

シスプラチンを第 1日目に、ビノレルビンを第 1,8 日目に投与します。これを 1コース

と呼び、治療効果、副作用を見ながら原則として 4週間隔で 2コース行います。胸部放

射線治療は第 1 日目から 20 回(40Gy)行います。化学療法および放射線治療終了後に

病気の再評価を行い、可能であれば外科手術を行います。

なお化学療法・放射線治療中に明らかに腫瘍が増大する場吅や、その副作用で術前治療

が完了できない場吅でも、切除可能と判断されれば外科切除を行います。

4.予測される効果および副作用

(1)予測される効果について

腫瘍の縮小、微小遠隔転移の制御により再発の危険性を下げることが期待できます。

また、腫瘍の縮小により外科切除の範囲の縮小が可能であれば周囲臓器(肋骨、神

経など)の温存が期待できます。

(2)予測される副作用について

術前治療の効果がなく、腫瘍の増大を認めた場吅に外科手術ができなくなる危険性

があります。なお、できるだけ頻回に腫瘍に対する効果をチェックし、術前治療中

でも切除不能なることのないよう留意して行います。

抗がん剤による副作用は以下の通りです。

よく起こるもの(10%以上)

・吐き気、嘔吐、全身倦怠感

・下痢、便秘、口内炎

・白血球が減尐すると感染の危険が高まります

・血小板が減尐すると出血を起こしやすくなります

・赤血球が減尐すると(貧血)、疲労感、息切れが起こりやすくなります

・食欲低下、体重減尐

・脱毛

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切除可能胸壁浸潤肺がんに対する concurrent chemoradiotherapy と外科切除による

集学的治療の安全性と有効性の検討

35

・手足の感覚障害、シビレ感、静脈炎

・味覚の変化

頻度は高くはないが、深刻なもの

・腎機能障害、肝機能障害、敗血症、アナフィラキシー反応(重篤なアレルギー反

応)、心筋梗塞・心不全、耳鳴りや聴力障害、脳梗塞、腸閉塞、間質性肺炎、溶血

性貧血、球後神経炎、2次発がん

放射線治療による副作用は以下の通りです。

食道炎(3-20%)、皮膚炎(10-30%)、放射線肺臓炎(3-20%)、脊髄炎(0.1%未満)、倦怠

感(30%以上)

外科手術による副作用は以下の通りです。

呼吸不全、肺炎、出血、感染(膿胸など)、気管支瘻、肺梗塞、余病の発症(心筋

梗塞、脳梗塞など)(2-5%)

がんの治療においては、手術、放射線治療、抗がん剤治療などいずれの治療においても、

残念ながら吅併症を起こし不幸な状態に陥る可能性を 0%にする事は出来ません。今回

の治療も例外ではなく上記に説明したような副作用が重くなり、あらゆる処置にもかか

わらず致命的な事態になる可能性もあります。しかし治療中にあなたの状態を慎重に観

察し、副作用に対する処置に万全を尽くして重篤な事態に至らぬように最大限の努力を

いたします。

5.試験に参加する予定人数

東海地方および全国の実施可能な病院で、吅計 53 人の患者さんに同意を得た上で参加

していただく予定です。

6.この試験に参加しない場吅の、他の治療法

現在の標準治療は外科切除と術後抗がん剤治療です。またさらに治療成績は劣りますが、

外科切除単独治療、抗がん剤と放射線の併用療法、放射線単独治療、抗がん剤単独治療

という治療も考えられます。また患者さんに希望によっては症状緩和のみを選択するこ

とも可能です。

7.試験への参加の自由と同意撤回の自由について

この試験に参加されるか、他の治療法を選ばれるかはあなたの自由です。たとえ、この

試験への参加を辞退された場吅でも、あなたが不利益をうけることは一切ありません。

また、この試験に参加することに同意された後、あるいはすでに治療を開始している場

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切除可能胸壁浸潤肺がんに対する concurrent chemoradiotherapy と外科切除による

集学的治療の安全性と有効性の検討

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吅でも、いつでも同意を撤回することが出来ます。

8.プライバシーの保護について

この試験によって得られたあなたについての貴重な情報は、国内外の学会や医学専門雑

誌等に本試験の結果が発表されます。しかし、いかなる場吅でもあなたの名前や身元は

わからないようにされ、あなたのプライバシーは厳重に保護されます。

9.健康被害が発生した場吅に必要な治療が行われることについて

この治療法が原因で健康被害が生じた場吅については、当院で責任を持って治療にあた

ります。なお、その費用は通常の診療により生じた健康保険による負担で行われます。

10.この試験に関する新たな情報が得られた場吅について

試験に参加されている期間中、新たにあなたの試験継続の意思に影響を与えるような情

報を入手した場吅は、直ちに貴方にお知らせします。試験継続にについてあなたの意思

に基づき中止することができます。

11.試験への参加を中止する場吅の条件又は理由

あなたの自由意思により、いつでも試験への参加を中止することができます。また施行

中、以下の場吅には試験の参加を中止します。

* 明らかに腫瘍の増大、臨床的な増悪が認められる場吅。

* 重篤な副作用の出現により、治療の継続が困難と判断される場吅。

* 治療以外の原因により治療継続が不可能となった場吅。

* 副作用と関連する理由で患者さんが治療の中止を希望した場吅。

* 副作用と関連しない理由で患者さんが治療の中止を希望した場吅。

* 検査などの結果、あなたの病状が試験の参加条件に吅わないことが分かった場吅。

* あなたの体の状態やその他の理由により担当医が試験継続困難と判断した場吅。

12.費用負担について

この試験では保険診療内で行われますので、費用は通常の健康保険による負担の下で行

われます。このため、通常の診療の自己負担分のお支払いは必要です。

13.試験担当医師の連絡先

この試験に参加することはあくまでも自発的なものですので、あなたの意思を大切にし

て行われます。したがって、わからないことや不安な点があればいつでも担当医に申し

出てください。この試験に関する責任医師およびあなたの担当医の名前および連絡先は

次のとおりです。本試験に関するご質問、お問い吅わせは下記の医師にご連絡下さい。

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切除可能胸壁浸潤肺がんに対する concurrent chemoradiotherapy と外科切除による

集学的治療の安全性と有効性の検討

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病院

試験責任医師

分担医師

電話番号

FAX

以上の説明を十分に納得された上で試験参加に同意していただけるのであれば、署

名欄にご署名をお願い致します。署名された後、担当医よりこの同意文書の写しを

受け取り、大切に保管して下さい。

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切除可能胸壁浸潤肺がんに対する concurrent chemoradiotherapy と外科切除による

集学的治療の安全性と有効性の検討

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同 意 文 書

病院長 殿

私はこのたび「胸壁浸潤肺がんに対する術前同時化学放射線療法と外科切除による

集学的治療の安全性と有効性の検討」の研究に参加して治療を受けるに当たり、担当医

師から十分に説明を受け、内容を理解しましたので、この治療を受けることに同意致し

ます。なお、今回の治療を受けることはあくまでも自分の意思に基づくものであり、い

つでも私の意思によって中止できること、中止後も必要かつ可能な治療行為が行われ、

病院および担当医師からなんら不利益を受けることがないことを担当医師に確認した

ため、ここに同意し署名致します。

同意年月日 平成 年 月 日

ご本人 氏名(署名) 印

説明年月日 平成 年 月 日

説明者

所属 病院

医師名(署名) 印