蓄電システムを用いた太陽光発電システムの 発電量...

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16 蓄電システムを用いた太陽光発電システムの 発電量改善に関する実験検証 石橋 幹弥 芳賀 仁(長岡技術科学大学) 有松 健司(東北電力株式会社) 加藤 康司(サンケン電気株式会社) Experiment verification about generated energy improvement of photovoltaic system using the energy storage system Mikiya Ishibashi , Hitoshi Haga, (Nagaoka university of technology) Kenji Arimatsu,( Tohoku Electric Power Co., Inc) Koji Kato, (Sanken Electric Co., Ltd.) This paper proposes an improvement method of a power generation amount of Photovoltaic (PV) system using energy storage system. Power conditioning systems (PCS) of the PV system stops its operation when the generated power of the solar panel is low as in cloudy weather. Even if the solar radiation recovers, the PCS restarts after an interval time. Therefore, the conventional PV system can’t fully extract the power of photovoltaic power generation. In the proposed structure, the energy storage system is connected between the PV and the PCS. This paper discusses conditions for power generation improvement of the PV system using energy storage system. Experiments using solar radiation data on sunny and cloudy days were carried out. On cloudy days PCS output improved by 6.55%. But on sunny days it decreased by 0.23%. The validity of the improvement condition was confirmed by experimental results. キーワード:太陽光発電,パワーコンディショナ,蓄電システム (Photovoltaic generation, Power conditioner, Energy storage system) 1. はじめに 近年,燃料価格の高騰や化石燃料枯渇の懸念から,太陽 光,風力といった再生可能エネルギーを利用した発電シス テムが注目されている。特に太陽光発電システムは,数 kW クラスの家庭用をはじめ,MW クラスのメガソーラーに至 るまで企業や自治体を中心に,導入が急速に進められてお り,今後も導入量の拡大が見込まれている (1) 太陽光発電システムは太陽電池モジュール(PV)PV 発電電力を電力系統へ出力するパワーコンディショナ (PCS)から構成されている。実際の運用において PCS は, 日射の低下に伴い PV の発電電力が低下した際に運転を停 止する場合がある。その後日射が回復しても,PCS は再起 動まで待機時間を有するため,発電電力を得られない期間 が生じてしまう (2)(3) 。これまで著者らは,蓄電システムから PCS へ電力を供給することにより可能な限り PCS の停止を 回避する,発電電力補償システムについて検討してきた (4)(5) 。蓄電システムは, PV PCS のみの従来構成への後付 けを想定しており,日射が高く,PV の発電電力が十分であ る場合には PV の発電電力の一部を充電する。PV の発電電 力が低下した場合は,放電動作を行い PCS へ電力を供給す ることで停止回避する。PCS は運転継続するため PV の発 電電力を継続して取得することが可能となる。よって PV 電電力量の改善が可能となる。蓄電システムは PV と並列に 接続するため,PCS に対して新たな変更は不要となる。よ って設置済みの太陽光発電システムの発電量の改善が可能 となる。しかし,従来構成に対して蓄電システムを追加し た提案構成は,充放電動作を行うことにより蓄電システム の電力変換器において損失が発生する。PCS の運転継続に よって PV の発電電力量が向上した場合,向上した分を蓄電 システムの充放電動作による損失が上回った場合は PCS ら出力される量は従来構成と比較して減少してしまう可能 性がある。 本稿では,提案構成において,システムの最終的な出力 である PCS の出力電力量の向上に必要な条件について検討 し, 天候により PCS の出力電力量が増加する場合,減少 してしまう場合があることを,実験によって確認したので 報告する。

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蓄電システムを用いた太陽光発電システムの

発電量改善に関する実験検証

石橋 幹弥* 芳賀 仁(長岡技術科学大学)

有松 健司(東北電力株式会社) 加藤 康司(サンケン電気株式会社)

Experiment verification about generated energy improvement of photovoltaic system

using the energy storage system

Mikiya Ishibashi*, Hitoshi Haga, (Nagaoka university of technology)

Kenji Arimatsu,( Tohoku Electric Power Co., Inc) Koji Kato, (Sanken Electric Co., Ltd.)

This paper proposes an improvement method of a power generation amount of Photovoltaic (PV) system using

energy storage system. Power conditioning systems (PCS) of the PV system stops its operation when the

generated power of the solar panel is low as in cloudy weather. Even if the solar radiation recovers, the PCS

restarts after an interval time. Therefore, the conventional PV system can’t fully extract the power of

photovoltaic power generation. In the proposed structure, the energy storage system is connected between the

PV and the PCS. This paper discusses conditions for power generation improvement of the PV system using

energy storage system. Experiments using solar radiation data on sunny and cloudy days were carried out. On

cloudy days PCS output improved by 6.55%. But on sunny days it decreased by 0.23%. The validity of the

improvement condition was confirmed by experimental results.

キーワード:太陽光発電,パワーコンディショナ,蓄電システム

(Photovoltaic generation, Power conditioner, Energy storage system)

1. はじめに

近年,燃料価格の高騰や化石燃料枯渇の懸念から,太陽

光,風力といった再生可能エネルギーを利用した発電シス

テムが注目されている。特に太陽光発電システムは,数 kW

クラスの家庭用をはじめ,MW クラスのメガソーラーに至

るまで企業や自治体を中心に,導入が急速に進められてお

り,今後も導入量の拡大が見込まれている(1)。

太陽光発電システムは太陽電池モジュール(PV)と PV の

発電電力を電力系統へ出力するパワーコンディショナ

(PCS)から構成されている。実際の運用において PCS は,

日射の低下に伴い PV の発電電力が低下した際に運転を停

止する場合がある。その後日射が回復しても,PCS は再起

動まで待機時間を有するため,発電電力を得られない期間

が生じてしまう(2)(3)。これまで著者らは,蓄電システムから

PCSへ電力を供給することにより可能な限りPCSの停止を

回避する,発電電力補償システムについて検討してきた

(4)(5)。蓄電システムは,PVと PCSのみの従来構成への後付

けを想定しており,日射が高く,PVの発電電力が十分であ

る場合には PVの発電電力の一部を充電する。PVの発電電

力が低下した場合は,放電動作を行い PCSへ電力を供給す

ることで停止回避する。PCS は運転継続するため PV の発

電電力を継続して取得することが可能となる。よって PV発

電電力量の改善が可能となる。蓄電システムは PVと並列に

接続するため,PCS に対して新たな変更は不要となる。よ

って設置済みの太陽光発電システムの発電量の改善が可能

となる。しかし,従来構成に対して蓄電システムを追加し

た提案構成は,充放電動作を行うことにより蓄電システム

の電力変換器において損失が発生する。PCS の運転継続に

よって PVの発電電力量が向上した場合,向上した分を蓄電

システムの充放電動作による損失が上回った場合は PCSか

ら出力される量は従来構成と比較して減少してしまう可能

性がある。

本稿では,提案構成において,システムの最終的な出力

である PCSの出力電力量の向上に必要な条件について検討

し, 天候により PCS の出力電力量が増加する場合,減少

してしまう場合があることを,実験によって確認したので

報告する。

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2. 提案構成

〈2・1〉システム構成 システム構成を図 1 に示す。図

1(a)に示す従来の太陽光発電システムは PV と PCS により

構成されている。PCS は DC/DC 変換器とインバータによ

って構成される(6)。前段の DC/DC 変換器は,PV を最大電

力で動作できるよう MPPT制御を行う。後段のインバータ

は,直流電力を交流電力に変換し,系統へ電力の出力を行

う。図 1(b)に提案構成を示す。提案構成は PVと並列に蓄電

システムを接続する。蓄電システムを従来構成に接続する

場合,接続箇所として,図 1(a)の PVと PCSの接続部分で

ある点 A と,PCS 内の DC/DC 変換器とインバータの接続

部である点 B が挙げられる。点 B は PCS の内部であるた

め,蓄電システムを接続する場合に回路等の改造が必要と

なる。一方,蓄電システムを点 A に接続する場合は,PCS

の入力端子が利用可能であるため,回路等の改造を必要と

しない。また,蓄電システムを PVパネルと連携して動作さ

せることにより,既存の PCSをそのまま利用可能となる。

よって既存の太陽光発電システムに対して後付けを想定し

た場合,点 A が蓄電システムの接続箇所として適している

といえる。

従来構成と提案構成におけるシステムの動作を図 2 に示

す。図 2(a)の従来構成においては,日射の低下に伴い PVの

発電電力が低下した場合,PCS は停止する。その後日射が

回復しても PCSは再起動まで待機時間を有する。そのため

PVの発電電力が得られない期間が生じてしまう。一方,図

2(b)の提案構成の場合は,PV 発電電力の低下時に蓄電シス

テムが放電動作を行い PCSに電力を供給する。PCS停止回

避により,PVの発電電力を継続して取得することが可能と

なる。また,蓄電システムは PV発電電力が十分であるとき,

放電動作に備え PV 発電電力の一部を蓄電デバイスに充電

する。

〈2・2〉発電量改善条件 提案構成における PCS の出力

電力量が,従来構成と比較して向上するために必要な条件

について検討した。従来構成は PV 発電電力の低下により

PCS が停止した場合,再起動まで PV の発電電力が得られ

ないため,損失が発生する。一方,提案構成は蓄電システ

ムの放電動作によって PCS停止が回避された場合,従来構

成において生じた損失である PCS 待機中の PV発電電力を

取得することが可能となる。PCS 停止回避によって取得し

た電力は PCSによる電力変換を経て系統へ出力される。よ

ってPCSの運転継続によって向上したPV発電電力量の内,

系統側に出力された分だけ従来構成の PCS出力電力量を上

回ることが可能となる。しかし,提案構成は PV発電電力の

一部を蓄電システムにより充放電を行うため,蓄電システ

ムの電力変換器による損失が発生する。蓄電システム充放

電時のエネルギーフローを図 3 に示す。蓄電システムが充

電動作する時のエネルギーフローを図 3(a)に示す。蓄電シ

ステムに入力される電力は,DC/DCコンバータによる電力

変換を経てキャパシタに充電されるため,DC/DCコンバー

タにて損失が発生する。また,蓄電システムが放電動作す

る時のエネルギーフローを図 3(b)に示す。キャパシタから

出力された電力は DC/DC コンバータによる電力変換を経

て蓄電システムから出力されるため,DC/DCコンバータに

て損失が発生する。更に蓄電システムから出力された電力

は,PCSによる電力変換を経て系統へ出力されるため PCS

にて損失が発生する。以上より提案構成において蓄電シス

テムが PV発電電力の一部を充放電した場合,充電動作時は

DC/DC コンバータにて,放電動作時は DC/DC コンバータ

Grid

Photovoltaic

ModuleInverter

PCS

ADC/DC

converter

B

(a)Conventional structure

Capacitor

Grid

Photovoltaic

Module

Energy storage system

DC/DC

converter

DC/DC

converterInverter

PCS

(b)Proposed structure

図 1 システム構成

Fig. 1. Structure of system.

t

on

Solar

radiation

PV generated

power

PCS

off t

t

Stand by

Recovery

Loss

(a)Conventional structure

Solar

radiationt

t

onPCS

off t

t

Energy storage

System output

PV generated

power

Continuous acquisition

Recovery

(b)Proposed structure

図 2 PV電力低下時のシステムの動作

Fig. 2. System operation in PV power drop.

3/6

と PCSにて損失が発生する。以上から提案構成において,

PCS 停止が回避された場合,蓄電システムの充電電力量が

放電動作,PCS による電力変換を経て系統側へ出力される

までに生じた損失よりも,PV 発電電力量の PCS の運転継

続により向上した分の内,系統側に出力された量が上回る

ことで,従来構成と比較して PCSの出力電力量が向上する

こととなる。

Capacitor

Grid

Photovoltaic

Module

Energy storage system

DC/DC

converter

PCS

Loss

(a)Charging operation

Capacitor

Grid

Photovoltaic

Module

Energy storage system

DC/DC

converter

PCS

Loss

Loss

(b)Discharging operation

図 3 蓄電システム充放電時のエネルギーフロー

Fig. 3. Energy flow during charging and discharging of

energy storage system.

3. 制御方法

〈3・1〉充電時の制御方法 蓄電システムの充電動作は

PV の発電電力が十分である場合に行う。しかし,PV の発

電電力が十分である時,PCS は運転中であるため,MPPT

制御の妨げにならない充電方法が要求される。そこで充電

電力を一定に制御する。原理を図 4 に示す。蓄電システム

が一定電力で充電動作を行った場合,PCS には PV の発電

電力から充電電力を差し引いた電力が入力される。この時

PCS の入力電力の最大電力点と PV の最大電力点は一致す

る。PCSは入力電力に対してMPPT制御を行い,最大電力

点へ追従するよう電圧制御を行うが,PVの最大電力点の電

圧と一致しているため PV は最大電力点での動作が可能と

なる。

〈3・2〉放電時の制御方法 PV の発電電力低下時,蓄電

システムは任意の P-V 特性を有する電力を出力する。P-V

特性を有しているため PCS は MPPT 制御により最大電力

となるように動作する。そのため蓄電システムの放電電力

に制限をかけることが可能となる。

Voltage

Pow

er Charging

Power

PCS input

characteristic

PV output

characteristic

Maximum

power point

図 4 充電動作時の電力特性

Fig. 4. Power characteristic in charging operation.

4. 実験構成

図 5に実験システムを示す。PVの出力電力,蓄電システ

ムの出力電力,PCS の出力電力をパワーメータにより測定

する。PV は定格 5kW として Myway 製の APL2 により模

擬した。日射データと表 1に示す PVパラメータを用いた。

日射データは晴れの日と曇りの日について 20分間のものを

使用した。また,PCS は定格 5kW を使用した。PCS は入

力電圧 300V以上を 10秒間継続することで起動してMPPT

制御を開始し,起動後に入力電力が 500W 未満となった場

合は運転を停止する。

蓄電システムは双方向チョッパと直流電源により模擬し

た。直流電源には充電動作時の電力消費用として,並列に

抵抗を接続する。蓄電システムは PVの発電電力を監視し,

適宜充放電動作する。充電動作時,放電動作時の制御ブロ

ックを図 6 に示す。PV発電電力が 1500W 以上となった場

合は図 6(a)に示す制御ブロックにより充電動作する。充電

電力は最大 300W とした。充電電力指令値より電流指令値

を計算し,PI 補償器を用いて電流制御を行うことで充電動

作する。また,PV 発電電力が 500W 以下となる場合は図

6(b)に示す制御ブロックにより放電動作する。PV 電圧から

P-V 特性を格納したルックアップテーブルを参照し,電力

指令値を呼び出す。電力指令値より電流指令値を計算し,

PI 補償器を用いて電流制御を行うことで PCS へ電力供給

する。尚,双方向チョッパは放電動作時,S2_chop を OFF,

S1_chopをスイッチングする昇圧チョッパとして動作する。充

電動作時は,S1_chopを OFF,S2_chopをスイッチングする降圧

チョッパとして動作する。双方向チョッパの電力容量は

PCS の停止を回避できるだけの容量として 500W とした。

また,双方向チョッパの制御用マイコンにて充放電電力を

監視し,SOCの模擬を行った。容量は 10Whとした。

表 1 PVパラメータ

Table 1. PV parameter.

Open circuit voltage 400V

Short circuit current 20A

Maximum power voltage 300V

Maximum power current 16.7A

4/6

2350μF

1.2mH

1mH

20μF

2200μF

850μH

100V17Ω

Energy Storage System

Grid

図 5 実験システム

Fig. 5. Experimental system.

PI +-

Carrier

÷+

10kHz

*

-1

*

(a)Charging operation

PI +-

Look up

table

*+

Carrier

10kHz

*

*

÷

(b)Discharging operation

図 6 蓄電システムの制御ブロック

Fig. 6. Control brock of Energy storage system.

5. 実験結果

〈5・1〉従来構成の実験結果 図 7 に PV と PCS のみの

従来構成における快晴の日,曇りの日の実験結果を示す。

快晴の日において,日没まで PCSは停止しないことが確認

できる。一方,曇りの日においては PV発電電力の低下によ

る PCSの停止が確認できる。PCSの停止後,再起動まで待

機時間があるため,PV発電電力を取得できない期間が生じ

ていることが確認できる。

〈5・2〉提案構成の実験結果 図 8 に PV と PCS の接続

部に蓄電システムを追加した提案構成における快晴の日,

曇りの日の実験結果を示す。図 8(a)の快晴の日において,

PV 発電電力が 1500W 以上となったところから蓄電システ

ムが充電動作を 300Wで行っており,SOCが上昇し始めて

いることが確認できる。やがて SOC が 100%となり充電動

作を停止している。日没時,PV発電電力が低下するため,

蓄電システムが PCSの停止を回避するよう放電動作を行っ

ており,その後は SOC が 0%となるまで放電動作を継続し

ていることが確認できる。図 8(b)の曇りの日においては,

蓄電システムは充電後,PV発電電力低下時の放電動作を行

い PCSへ電力供給を行っている。そのため従来構成におい

て PCSが停止していた期間にて運転継続していることが確

認できる。そのため PVの発電電力を継続して取得できた。

また日没時は,快晴の日と同様に SOC が 0%となるまで放

電動作を継続している。

0.00.20.40.60.81.0

0 200 400 600 800 1000 1200time[s]

Sola

r

rad

iati

on

[kW

/㎡]

012345

0 200 400 600 800 1000 1200time[s]

PV

ou

tpu

t[k

W]

012345

0 200 400 600 800 1000 1200time[s]

PC

Sou

tpu

t[k

W]

(a)Sunny day

0.00.20.40.60.81.0

0 200 400 600 800 1000 1200time[s]

Sola

r

radia

tion

[kW

/㎡]

012345

0 200 400 600 800 1000 1200time[s]

PV

ou

tpu

t[k

W]

012345

0 200 400 600 800 1000 1200time[s]

PC

Sou

tpu

t[k

W]

(b)Cloudy day

図 7 従来構成の実験結果

Fig. 7. Experimental results of conventional structure.

5/6

0.00.20.40.60.81.0

0 200 400 600 800 1000 1200time[s]

Sola

r

rad

iati

on

[kW

/㎡]

012345

0 200 400 600 800 1000 1200time[s]

PV

ou

tpu

t[k

W]

012345

0 200 400 600 800 1000 1200time[s]

PC

Sou

tpu

t[k

W]

-1000

-500

0

500

1000

0 200 400 600 800 1000 1200time[s]

En

erg

y s

tora

ge

syst

em

ou

tpu

t[W

]

0

50

100

0 200 400 600 800 1000 1200time[s]

SO

C[%

]

(a)Sunny day

表 2 快晴の日の電力量

Table 2. Electric energy in sunny day.

Conventional

structure

Proposed

structure

Improvement

rate

PV

output 885.8Wh 888.1Wh 0.26%

PCS

output 844.0Wh 842.1Wh -0.23%

表 3 曇りの日の電力量

Table 3. Electric energy in cloudy day.

Conventional

structure

Proposed

structure

Improvement

rate

PV

output 271.8Wh 297.6Wh 9.50%

PCS

output 260.3Wh 277.3Wh 6.55%

0.00.20.40.60.81.0

0 200 400 600 800 1000 1200time[s]

Sola

r

radia

tion

[kW

/㎡]

012345

0 200 400 600 800 1000 1200time[s]

PV

ou

tpu

t[k

W]

012345

0 200 400 600 800 1000 1200time[s]

PC

Sou

tpu

t[k

W]

-1000

-500

0

500

1000

0 200 400 600 800 1000 1200time[s]

En

erg

y s

tora

ge

syst

em

ou

tpu

t[W

]

0

50

100

0 200 400 600 800 1000 1200time[s]

SO

C[%

]

(b)Cloudy day

表 4 PV出力向上量と蓄電システム充電電力量

Table 4. PV improvement and charging electric energy.

Sunny

day

Cloudy

day

Improvement amount of the

PV output 2.3Wh 25.8Wh

Output from the PCS of the

improvement amount 2.2Wh 24.7Wh

Charging amount of the energy

storage system 13.1Wh 20.4Wh

Output from the PCS of the

charging amount 7.9Wh 13.1Wh

図 8 提案構成の実験結果

Fig. 8. Experimental results of proposed structure.

6/6

〈5・3〉電力量の比較 表 2,表 3に従来構成と提案構成

における PV出力電力量と PCS の出力電力量を示した。ま

た,表 4 に提案構成において,PCS 運転継続によって PV

の出力が向上した量の内,最終的に PCSから出力された量

と,蓄電システムの充電電力量の内,最終的に PCSから出

力された量を示した。提案構成において,快晴の日の PV出

力電力量は従来構成と比較して 0.26%向上し,PCS 出力電

力量は 0.23%減少した。一方,曇りの日の PV出力電力量は

従来構成と比較して 9.50%向上し,PCS の出力電力量は

6.55%向上した。快晴の日の結果について,PV 出力電力量

は提案構成において向上したが,PCS 出力電力量は減少し

ていることが確認できる。これは提案構成が,PV発電電力

の一部を蓄電システムによって充放電を行っているため,

PCSの停止回避によって向上した電力量の内PCSから出力

された量が,蓄電システムの充電電力量が最終的に PCSか

ら出力されるまでに発生した損失を上回ることができない

場合は,PCS 出力電力量が従来構成を上回ることができな

いからである。表 4より,快晴の日において PVの出力向上

量の内,PCSから出力された量は 2.2Whである。一方蓄電

システムの充電電力量がPCSから出力されるまでに5.2Wh

の損失が発生している。よって充放電による損失の方が上

回るため,提案構成において快晴の日は,PV出力電力量は

向上したが,PCS 出力電力量は減少してしまった。一方,

曇りの日の結果については PV の出力向上量の内,PCS か

ら出力された量は 24.7Wh である。また蓄電システムの充

電電力量が PCS から出力されるまでに発生した損失は

7.3Wh であるため,充放電による損失の方が少ない。よっ

て,提案構成において曇りの日は PV 出力電力量,PCS 出

力電力量の両方が従来構成と比較して向上した。

〈5・4〉充放電効率に関する検討 図 9に提案構成におい

て PCS出力電力量の向上に求められる充放電効率を示す。

ここで充放電効率とは,蓄電システムの充電電力量が放電

動作を経て PCS から出力されるまでの効率として定義す

る。図 9より,充電電力量が PV発電電力量の向上した分の

内 PCSから出力された量よりも小さい場合は,充放電効率

が 0であっても PCSの出力電力量は従来構成と比較して減

少はしない。充電電力量が PV発電電力量の向上した分の内

PCS から出力された量よりも大きい場合は,示した効率を

満たせない場合は PCSの出力電力量は従来構成と比較して

減少する。晴れの日において,実験結果より充電電力量が

13.1Wh,PV発電電力量の向上した分の内 PCSから出力さ

れた量が 2.2Whであったため点Aの充放電効率を満たす必

要がある。しかし,実験結果より充放電効率は 58.97%であ

った。そのため PCSの出力電力量は減少した。一方,曇り

の日において充電電力量が 20.4Wh,PV発電電力量の向上

した分の内 PCS から出力された量が 24.7Wh であったた

め,点B以上の効率であればPCSの出力電力量は向上する。

実験結果より充放電効率は 64.22%であった。そのため PCS

の出力電力量が向上した。

020406080

100

0 5 10

Charging amount[p.u.]ch

arg

ean

d d

isch

arg

e

eff

icie

ncy[%

]

1 p.u.=

Output from the PCS of the improvement amount

A 83.19%

B

図 9 PCS出力電力量向上に求められる充放電効率

Fig. 9. Charge and discharge efficiency for improvement.

6. おわりに

本稿では,蓄電システムを用いた太陽光発電システムの

発電量改善に関する実験検証を行った。PV と PCS のみの

従来構成と比較し,PVと並列に蓄電システムを接続した提

案構成における PCSの出力電力量が向上するために求めら

れる条件を検討し,曇りの日と快晴の日の日射データを使

用した実験を行った。実験の結果,曇りの日は PVの出力電

力量が 9.50%増加し,PCS の出力電力量は 6.55%増加した

ことを確認した。また,快晴の日は PV の出力電力量は

0.26%増加したが,PCS の出力電力量は 0.23%減少したこ

とを確認した。この理由について,提案構成は,PV発電電

力の一部を蓄電システムによって充放電を行っているた

め,PV 出力向上量の内 PCS から出力された量が,蓄電シ

ステムの充電電力量の内最終的に PCSから出力されるまで

に発生した損失を上回ることが出来ない場合は,PCS の出

力電力量が従来構成を上回ることができないからであるこ

とを,PV の発電電力量の向上した分の内 PCS から出力さ

れた電力量と,充放電動作によって発生した損失の比較か

ら示した。

文 献

(1) NEDO「再生可能エネルギー技術白書」(2014)

(2) S.Machida and T.Tani:“Effect of the Organization of Solar Cell

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町田 定之,谷 辰夫:「太陽電池アレイ構成とインバータ方式がシ

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(3) T.Yamada, D.Tokushima, H.Ishikawa, D.Wang and H. Naitoh: “A

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山田 隆志,徳島 大己,石川 裕記,王 道洪,内藤 治夫:「複

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