超高強度コンクリートの自己収縮に関する研究超高強度コンクリートの自己収縮に関する研究...

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安藤建設技術研究所報 Vol.13 2007 27 1.はじめに コンクリート構造物の高層化に伴い,要求される コンクリートの強度も高くなり,100N/mm 2 を越え るコンクリートが使用されるようになってきた。 しかし,100N/mm 2 を越えるような高強度コンク リートにおいては,セメント量の増大による自己収 縮量が急激に大きくなり,内部ひび割れや,鉄筋へ の悪影響が懸念される。 そこで,材料・調合による収縮量の違いを測定す るとともに,膨張材を使用した際の収縮抑制効果に ついて、室内実験および実大試験体を用いた実験に より検討を行った。 2.室内実験 2.1 実験方法 練り混ぜおよび供試体作成は,20 ℃の恒温室で行 った。コンクリートの練り混ぜは55リットル水平二 軸ミキサーを用い,モルタル先練りとした。 収縮量の測定は,「高流動コンクリートの自己収縮 試験方法」[1] により,100×100×400mmの鋼製型枠 の中央に,低剛性タイプの埋め込み型ひずみ計を埋 め込んで実施した(写真1)。ひずみの測定開始は, 凝結試験の始発時間とし,測定期間は91日間とした。 試験体は各調合2体ずつ作成した。また,フレッシュ 性状,凝結時間,圧縮強度の測定を行った。 キーワード:自己収縮/高強度コンクリート/セメント/膨張材 Experiment of the Autogeneous Shrinkage Characteristic of Ultra-High-Strength Concrete 超高強度コンクリートの自己収縮に関する研究 コンクリートの高強度化に従い,セメント量の増大等により自己収縮量の増加が問題となっ ている。本実験ではプレハブ工場で使用されている材料での,自己収縮量の把握と膨張材を使 用した際の自己収縮抑制効果について検討を行った。その結果,セメントの種類による収縮量 の違い,膨張材を添加した際の性状を把握した。また実大実験においては,膨張材添加による 自己収縮ひび割れの抑制効果が確認できた。 Abstract The increase of the amount of the autogeneous shrinkage becomes a problem along with the making of high strength concrete. In the experiment, the amount of autogeneous shrinkage was measured in terms of the material for precast concrete, while the autogeneous shrinkage controlling effect that used the expansive admixture was examined. Consequently, the properties when the difference in the amount of shrinkage and the expansive admixture by the kind of cement were added were measured. Moreover, control of the autogeneous shrinkage crack via the addition of the expansion material could be confirmed in the real size experiment. 石川 伸介* 立山 創一* 安部 弘康* 各種セメントにおける自己収縮量および膨張材による自己収縮低減効果 by Shinsuke ISHIKAWA, Souichi TATEYAMA and Hiroyasu ABE The amount of autogeneous shrinkage in various cements, and the effect of an expansive admixture of autogeneous shrinkage characteristic decrease * 技術研究所材料施工研究室

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Page 1: 超高強度コンクリートの自己収縮に関する研究超高強度コンクリートの自己収縮に関する研究 29 プロスも大きく,目標のスランプフローを確保する

安藤建設技術研究所報 Vol.13 2007

27

1.はじめに コンクリート構造物の高層化に伴い,要求される

コンクリートの強度も高くなり,100N/mm2を越え

るコンクリートが使用されるようになってきた。 しかし,100N/mm2を越えるような高強度コンク

リートにおいては,セメント量の増大による自己収

縮量が急激に大きくなり,内部ひび割れや,鉄筋へ

の悪影響が懸念される。

そこで,材料・調合による収縮量の違いを測定す

るとともに,膨張材を使用した際の収縮抑制効果に

ついて、室内実験および実大試験体を用いた実験に

より検討を行った。

2.室内実験 2.1 実験方法

練り混ぜおよび供試体作成は,20℃の恒温室で行

った。コンクリートの練り混ぜは55リットル水平二

軸ミキサーを用い,モルタル先練りとした。 収縮量の測定は,「高流動コンクリートの自己収縮

試験方法」[1]により,100×100×400mmの鋼製型枠

の中央に,低剛性タイプの埋め込み型ひずみ計を埋

め込んで実施した(写真1)。ひずみの測定開始は,

凝結試験の始発時間とし,測定期間は91日間とした。

試験体は各調合2体ずつ作成した。また,フレッシュ

性状,凝結時間,圧縮強度の測定を行った。

キーワード:自己収縮/高強度コンクリート/セメント/膨張材

Experiment of the Autogeneous Shrinkage Characteristic of Ultra-High-Strength Concrete

超高強度コンクリートの自己収縮に関する研究

要 旨 コンクリートの高強度化に従い,セメント量の増大等により自己収縮量の増加が問題となっ

ている。本実験ではプレハブ工場で使用されている材料での,自己収縮量の把握と膨張材を使

用した際の自己収縮抑制効果について検討を行った。その結果,セメントの種類による収縮量

の違い,膨張材を添加した際の性状を把握した。また実大実験においては,膨張材添加による

自己収縮ひび割れの抑制効果が確認できた。

Abstract The increase of the amount of the autogeneous shrinkage becomes a problem along with the making of

high strength concrete. In the experiment, the amount of autogeneous shrinkage was measured in terms of the material for precast concrete, while the autogeneous shrinkage controlling effect that used the expansive admixture was examined. Consequently, the properties when the difference in the amount of shrinkage and the

expansive admixture by the kind of cement were added were measured. Moreover, control of the autogeneous shrinkage crack via the addition of the expansion material could be confirmed in the real size experiment.

石川 伸介* 立山 創一* 安部 弘康*

各種セメントにおける自己収縮量および膨張材による自己収縮低減効果

by Shinsuke ISHIKAWA, Souichi TATEYAMA and Hiroyasu ABE

The amount of autogeneous shrinkage in various cements, and the effect of an expansive admixture of autogeneous shrinkage characteristic decrease

* 技術研究所材料施工研究室

Page 2: 超高強度コンクリートの自己収縮に関する研究超高強度コンクリートの自己収縮に関する研究 29 プロスも大きく,目標のスランプフローを確保する

安藤建設技術研究所報 Vol.13 2007

28

写真1 埋込型ひずみ計

2.2 使用材料および調合

実験に使用した材料を表1に示す。

使用材料は,佐倉・相模原両プレハブ工場で高強

度コンクリートの製造に使用している材料を基本と

した。また,骨材とセメントは,現在より高強度の

コンクリートを製造することを考慮して,より高強

度に対応できる可能性のある材料についても実験し

た。膨張材は,プレキャスト工場での早期脱型を考

慮し早強性のある膨張材を使用した。 調合及び実験水準は表2に示す。調合は両工場で

100N/mm2級の高強度コンクリートを打設する際に

用いる調合を基に作成した。

膨張材は,セメントの内割り置換とし,セメント

量の2%及び5%使用した。目標スランプは,SFPCのみ65cm±10cm それ以外のセメントの物はは60cm±10cmとした。目標空気量は2%(+1.5%, -1.0%)とし

た。

2.3 室内試験結果

a.練り混ぜ及びフレッシュ性状

練り混ぜ及びフレッシュ性状については,セメン

トの種類により大きな差が見られた。 VKC,SFPCでは,膨張材を添加した際,混和剤

使用量,フレッシュ性状に大きな変化は見られなか

った。SFCでは,混和剤使用料がやや増加し,

SFCSでは,今回使用した膨張材との組み合わせで

は,混和剤の使用量が著しく多くなり,またスラン

水結合 膨張材

材比 使用量 水 セメント 膨張材 細骨材 粗骨材 混和剤

(%) C×% W C EX S G C×% 28日 91日1 21 0 714 0 679 1.50 61.0× 61.0 134 1462 0 833 0 1.60 69.0× 67.0 143 1473 2 816 17 1.65 69.0× 69.0 143 1504 5 791 42 1.55 68.0× 68.0 137 1465 15 0 1000 0 432 1.85 62.0× 61.0 144 1546 21 0 714 0 702 2.00 49.0× 47.0 121 1357 0 833 0 2.10 63.0× 61.0 134 1488 2 816 17 2.10 52.0× 49.0 134 1479 5 791 42 2.70 65.0× 65.0 132 14610 15 0 1000 0 459 2.60 65.0× 64.0 146 15311 0 1250 0 2.00 61.0× 59.0 147 16912 2 1225 25 3.00 40.0× 35.0 - -13 15 0 1000 0 437 1.40 61.0× 60.0 148 18114 0 1250 0 2.00 61.0× 60.0 160 19415 2 1225 25 2.50 44.0× 44.0 - -16 20 0 775 0 645 0.85 66.0× 66.0 136 16217 15 0 1033 0 429 1.05 77.0× 75.0 157 18318 0 1292 0 211 1.90 75.0× 74.0 165 19419 2 1266 26 211 1.90 72.0× 72.0 164 18220 5 1227 62 213 1.90 73.0× 71.0 163 178

(N/mm2)繊維(外割)

3

単位量(kg/m3)スランプフロー

(cm)

圧縮強度

575

603150

875

881

155 861

212

221

875

No セメント種別

骨材産地

VKC 岩瀬 18

SFC 城山 18

SFPC 岩瀬12

SFCS

甲州 12

岩瀬12

表 2 調合および、フレッシュ性状及び圧縮強度結果

表1 使用材料

材料 種類・規格等

シリカフューム混入セメント U社製 (SFC)

シリカフューム混入セメント高強度型U社製 (SFCS)

シリカフューム混入セメント T社製 (SFPC)

シリカフューム混合3成分セメントD社製(VKC)

膨張材(EX) 早強性膨張材 T社製

砕砂 茨城県岩瀬産   表乾密度 2.60

   神奈川県城山産  表乾密度 2.62

   山梨県甲州産   表乾密度 2.62

砕石 茨城県岩瀬産   表乾密度 2.65

   神奈川県城山産  表乾密度 2.67

   山梨県甲州産   表乾密度 2.62

混和剤(Ad) 高強度コンクリート用高性能減水剤(Ad1) N社製

高強度コンクリート用高性能減水剤改良型(Ad2)N社

混和材 爆裂防止用繊維 ポリプロピレン 長さ2mm

練り混ぜ水 上水道水

セメント

(C)

細骨材(S)

粗骨材(G)

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超高強度コンクリートの自己収縮に関する研究

29

プロスも大きく,目標のスランプフローを確保する

ことができなかった。このため,SFCSについては、

膨張材使用時の圧縮強度及び自己収縮量の計測は中

止した。

b.凝結時間

図1に各調合の凝結時間を示す。膨張材を用いな

い調合での凝結時間は,普通セメントを基材とする

VKCが早く,他の3種類は比較的遅かった。 膨張材を添加した調合では,膨張材の添加量に応

じて凝結時間が早くなった。この傾向はSFPCで特

に大きかった。

c.圧縮強度

図2に示すように,膨張材を加えた際の圧縮強度は,

水結合材比(W/B)=18%実験したVKC,SFCでは強度低

下はほとんど見られなかった。しかしW/B=12%で実

験したSFPCにおいては膨張材をC×5%用いた調合で

8%程度の圧縮強度の低下が見られた。

d.収縮量

図3に水結合材比15%における各材料の材齢7日およ

び91日の自己収縮ひずみを示す。 材齢7日までの初期の収縮量はセメント種類により

異なりSFCSが小さくVKCが大きかった。材齢91日で

は,同じ骨材で実験したVKCと比べSFPCでは約25%収縮ひずみが小さかった。また,SFCSでは,材齢7日以降の収縮が比較的大きかった。

0:00 2:00 4:00 6:00 8:00 10:00 12:00 14:00 16:00 18:00 20:00 22:00 0:00

20-SFPC-12-5

19-SFPC-12-2

18-SFPC-12-0

17-SFPC-15-0

16-SFPC-20-0

14-SFCS岩瀬-12-0

13-SFCS岩瀬-15-0

11-SFCS甲州-12-0

10-SFC-15-0

9-SFC-18-5

8-SFC-18-2

7-SFC-18-0

6-SFC-21-0

5-VKC-15-0

4-VKC-18-5

3-VKC-18-2

2-VKC-18-0

1-VKC-21-0

時 間

24:00

図 1 凝結時間

図 2 膨張材の使用量と圧縮強度

図 3 使用材料の違いと自己収縮量

(W/B=15%)

0

50

100

150

200

250

EX0% EX2% EX5% EX0% EX2% EX5% EX0% EX2% EX5%

圧縮

強度

(N/m

m2)

材齢7日

材齢91日

VKCW/B=18%

SFCW/B=18%

SFPCW/B=12%

-800

-700

-600

-500

-400

-300

-200

-100

0

VKC 岩瀬 SFC 城山 SFCS 岩瀬 SFPC 岩瀬

自己

収縮

ひず

み(μ

材齢7日

材齢91日

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安藤建設技術研究所報 Vol.13 2007

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図4に骨材の違いによる収縮の違いを示す。甲州産

骨材を使用した調合では,初期の収縮が大きく岩瀬

産骨材を用いた調合では,長期の収縮が大きかった。

図5に膨張材を使用したときの,自己収縮ひずみ

について示す。 SFPCはW/B=12%,それ以外は

W/B=18%の結果である。いずれも膨張材を使用す

ることで収縮量を低減している。収縮低減の割合は,

材齢91日で膨張材2%では,20%前後であったが,

5%加えた調合では,75%~100%以上と極めて大き

な効果を示した。

図6にSFPCの自己収縮ひずみの経時変化を示す。

膨張材を5%用いた調合では,当初膨張した後,収

縮に転じるが材齢56日以降で再び膨張を示している。

3実大実験 3.1 実験方法

室内実験に引き続き,実大実験を行った。 実験は,佐倉プレハブ工場で行った。

材料を表3に示す。室内実験で比較的収縮量が少

なかったSFPCセメントを使用し他の材料は,室内

実験と同様とした。練り混ぜ水は温水とし,目標練

りあがり温度を20℃とした。

練り混ぜは,1.5m3強制二軸式ミキサーで行った。

調合は,表4に示す。水結合材比12%,15%,およ

び水結合材比12%で膨張材を2%セメントと内割り

置換した調合とした。 試験体は5体作成し,実験水準は表5の通りである。

単位量(Kg/m3) 試験体No.

W/B (%) W C EX S G

① 15 155 1033 0 438 838 ②③⑤ 12 155 1292 0 217 838

④ 12 155 1266 26 217 838

試験体は,高層集合住宅の柱の一部を想定し1m角-高さ1mとし,上下に200mmの発泡スチロール

を断熱材として配置した。型枠は鋼製型枠とし,脱

型は1週間後とした。

No. W/B 膨張材 鉄筋 芯鉄筋 1 15% × ○ × 2 12% × ○ × 3 12% × ○ ○ 4 12% ○ ○ × 5 12% × × ×

表3 材料

材料 種類・規格等

セメント

(C)シリカフューム混入セメントT社製(SFPC)

膨張材(EX) 早強性膨張材 T社製

細骨材(S) 砕砂 茨城県岩瀬産   表乾密度 2.60

粗骨材(G) 砕石 茨城県岩瀬産   表乾密度 2.65

混和剤(Ad)高強度コンクリート用高性能減水剤(Ad) B社製

混和材 爆裂防止用繊維 ポリプロピレン 長さ2mm

練り混ぜ水 工場内地下水

-800

-700-600

-500-400

-300-200

-1000

100

0 240 480 720 960 1200 1440 1680 1920 2160

経過時間(時)

自己

収縮

ひず

み(μ

甲州産骨材

岩瀬産骨材

図4 骨材の違いによる収縮量違い

-800

-700

-600

-500

-400

-300

-200

-100

0

100

200

300

EX0% EX2% EX5% EX0% EX2% EX5% EX0% EX2% EX5%

自己

収縮

ひず

み(μ

材齢7日

材齢91日

VKCW/B=18%

SFCW/B=18%

SFPCW/B=12%

図5 膨張材使用量と自己収縮ひずみ

-800

-700

-600

-500

-400

-300

-200

-100

0

100

200

300

0 240 480 720 960 1200 1440 1680 1920 2160

経過時間(時)

自己

収縮

ひず

み(μ

W/C=20%

W/C=15%

W/C=12%

W/C=12% Ex2%

W/C=12% Ex5%

図6 SFPCの自己収縮ひずみ

表4 調合

表5 実験水準

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超高強度コンクリートの自己収縮に関する研究

31

鉄筋は,主筋D41を24本,フープはD13を100mmピ

ッチで配筋した。また,芯筋8本を加えた試験体及

び無筋の試験体についても比較のため実験を行った。

垂直切断面

ひずみ計

3.2 測定項目

a.フレッシュ性状及び圧縮強度

スランプフロー,空気量,およびコンクリート温

度を測定した。また,膨張材を使用した調合では,

30分の経時変化の確認を行った。圧縮強度は材齢

28,56,91日について測定を行った。

b.ひずみ

中心部と外周部において水平・垂直の2方向につ

いて埋め込み型ひずみ計によりコンクリートひずみ

の測定を行った(図7)。 また,鉄筋を配置した物においては,ひずみゲー

ジにより鉄筋のひずみについても測定を行った。 ひずみは,コンクリート打設時点を基準とし,温

度によるひずみを除いた値を示す。

c.断面観察

試験体は材齢28日まで養生した後,ワイヤーソー

により中央付近で水平・垂直の2面で切断し,切断

面のひび割れを観察した。

3.3 実大実験結果

a.フレッシュ性状

フレッシュ性状を表6に示す。 いずれも目標値内に収まっており,ワーカビリチー

も良好であった。また膨張材を使用した調合では,

30分の経時試験を行ったがスランプロスは5cmと良

好であった。

試験体番号

W/B空気量(%)

温度(℃)

① 15% 68.5 ×67.0 1.6 14.0② 12% 74.0 ×75.0 2.0 17.0③ 12% 69.5 ×71.5 1.9 19.0⑤ 12% 73.5 ×72.5 2.2 19.0④ 75.0 ×71.5 2.4 19.0

④30分後 69.5 ×67.0 1.9 20.5

スランプフロー(cm)

12%膨張材使用

b.圧縮強度

表7に圧縮強度測定結果を示す。膨張材を使用し

た調合での強度低下は,材齢91日で約2%であった。

28日 56日 91日① 15% 156.4 166.8 167.7② 12% 155.4 166.5 177.1③ 12% 158.3 - 173.2⑤ 12% 161.4 - 172.2④ 12%(膨張材使用) 156.3 156.9 170.3

圧縮強度(N/mm2)試験体番号

W/B

c.ひずみ計測結果

各試験体のひずみ測定結果を,図8から図12に示

す。鉄筋を入れていない試験体⑤では,各方向とも

800μ程度のひずみが見られた。同一の配筋を行っ

た試験体①②④では,中央部の垂直方向で,W/B=15%の①が800μ程度であるのに対して,W/B=

12%の②は1000μ近いひずみが測定された。W/B=12%膨張材使用の⑤は600μ程度のひずみであり,

かなりの改善が見られる。

水平方向および外周部においては,近傍の鉄筋の

拘束により収縮ひずみ量は小さくなっている。 芯筋を配筋した試験体④においては,芯筋の拘束

図7 試験体断面図

表7 圧縮強度

写真2 ワイヤーソーによる試験体切断

表6 実大実験フレッシュ性状

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安藤建設技術研究所報 Vol.13 2007

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により収縮量は小さくなっているが,ひずみ計の位

置に水平にひび割れが生じたため,以後の計測が不

能となった。

d.コンクリート切断面観察結果

コンクリート切断面を写真3に示す。無筋の⑤は

ひび割れの入る可能性が低いので切断は行わなかっ

た。 試験体①②③では,水平垂直にひび割れが生じて

おり、特に試験体③では複雑に入っている。膨張材

を使用した試験体④では,垂直方向にのみひび割れ

が生じている。

今回の実験では,切断時の吊り上げ用金物を鋼製

型枠に固定していたため,横方向の拘束が生じた可

能性が高い。金具を入れた方向に平行にひび割れが

生じているが,直行方向にはひび割れが見られない。

打設後速やかに金具の固定を緩めていれば,垂直に

生じたひび割れは,防げた可能性がある。

4.まとめ 以上,実験の結果をまとめる。 1) 自己収縮ひずみは,セメント,骨材の種類によ

り異なり,SFPCではVKCに比べ約25%小さかっ

た。

2) 膨張材による自己収縮低減効果は,使用するセ

メントの種類により異なった。 3) 膨張材の量が多くなると,長期材齢になってか

らの膨張が見られる場合がある。長期の性状を

確認して膨張材の使用量および種類を選択する

必要がある。

4) 実大実験においては,SFPCを用いた水セメント

比15%,12%いずれの調合でも,自己収縮によ

ると見られるひび割れが観察された。特に芯筋

を配したものではひび割れが多く見られた。 5) 膨張材を用いた水セメント比12%調合では,ひ

び割れは大幅に改善されており,打設時の型枠

等の工夫によりひび割れを防ぐことができると

考えられる。

-1000

-800

-600

-400

-200

0

200

400

0 10 20 30

材齢(日)

コン

クリ

ート

ひず

み(μ

) 中央水平

中央垂直

外周水平

外周垂直

-1000

-800

-600

-400

-200

0

200

400

0 10 20 30

材齢(日)

コン

クリ

ート

ひず

み(μ

) 中央水平

中央垂直

外周水平

外周垂直

-1000

-800

-600

-400

-200

0

200

400

0 10 20 30

材齢(日)

コン

クリ

ート

ひず

み(μ

) 中央水平

中央垂直

外周水平

外周垂直

-1000

-800

-600

-400

-200

0

200

400

0 10 20 30

材齢(日)

コン

クリ

ート

ひず

み(μ

) 中央水平

中央垂直

外周水平

外周垂直

図8 ひずみ測定結果 試験体①

図9 ひずみ測定結果 試験体②

図10 ひずみ測定結果 試験体③

図11 ひずみ測定結果 試験体④

-1000

-800

-600

-400

-200

0

200

400

0 10 20 30

材齢(日)

コン

クリ

ート

ひず

み(μ

) 中央水平

中央垂直

外周水平

外周垂直

図12 ひずみ測定結果 試験体⑤

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超高強度コンクリートの自己収縮に関する研究

33

参考文献

[1] 日本コンクリート工学協会:超流動コンクリート

研究委員会報告書、1994

①W/B=15% 垂直断面 ①W/B=15% 水平断面

②W/B=12% 垂直断面 ②W/B=12% 水平断面

③W/B=12%芯筋あり垂直断面 ③W/B=12%芯筋あり水平断面

④W/B=12%膨張材入り垂直断面 ④W/B=12%膨張材入り水平断面

写真 3 試験体切断面

Page 8: 超高強度コンクリートの自己収縮に関する研究超高強度コンクリートの自己収縮に関する研究 29 プロスも大きく,目標のスランプフローを確保する

安藤建設技術研究所報 Vol.13 2007

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