音響信号によるヘルスモニタリング装置 (病変,欠陥,故障診断 … ·...

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1 音響信号によるヘルスモニタリング装置 (病変,欠陥,故障診断支援システム) 山梨大学 総合分析実験センター ○助教 鈴木 工学部 准教授 阪田 准教授 加藤 初弘 医学部 講師 深澤 瑞也

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音響信号によるヘルスモニタリング装置(病変,欠陥,故障診断支援システム)

山梨大学 総合分析実験センター

○助教 鈴木 裕

工学部 准教授 阪田 治

准教授 加藤 初弘

医学部 講師 深澤 瑞也

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音響診断とは

これはおいしい スイカの音だ!

コンッ

八百屋さん ・・・熟練した専門家

異常が起こると正常な時に比べ、その音が変化したり、 異音がしたりする。これらの音を聞き分ける事で検査を行う。

熟練者(検査技師や医師の耳)の判断に委ねられることが多い

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想定される用途:音響診断とは

・・・打音、回転音、摺動音、流動音など 例:鋳造やコンクリート壁の打音検査、HDDのカリカリ音、エンジン音、ブレーキ音、

→製品や建造物などの状態を知る

・・・呼吸音、心音、腸雑音、血流音、声など →健康状態を知る

工業分野

医療分野

非破壊・非侵襲・簡便 である音響検査は広い分野で行われている

熟練者(検査技師や医師の耳)の判断に委ねられることが多い

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音響診断によるヘルスモニタリング 熟練者(検査技師や医師の耳)の判断を機械に代替させる

・熟練者の不足 ・判断に個人差 ・疲れ、エラー ・高コスト

熟練者の診断の欠点 機械に判断させる

・熟練者の判断に置き換える(熟練の継承) ・客観的な判断 ・疲れ知らず ・低コスト ・ヒトの能力を超えた診断が期待できる (多点同時計測、長時間計測、ヒトの能力を超えた計測、高速信号処理、データベース化) ・在宅管理,遠隔医療 ・人の入り込むことのできない場所での検査

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新技術による成果紹介

シャント狭窄診断支援システムおよび方法、アレイ状採音センサ装置、ならびに遂次細分化自己組織化マップ作成装置、方法およびプログラム

特願2012-147530

①医療分野:シャント音(血流音)による血管狭窄スクリーニング ②工業分野:工業製品劣化診断

研究成果例

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研究紹介①シャント音による血管狭窄診断

動脈

静脈 シャント

十分な血流量を確保するため,動脈と静脈を縫い合わせるシャントを作成

血液透析内シャント

血管の狭窄が起こることがある

・血液透析を行うことができず患者の生命に関わる ・拡張手術(PTA)のために早期発見が望まれる

診断のスクリーニングができる狭窄診断支援装置が望まれている

腎不全患者(30万人)は人工血液透析を行う

H23 JST A-STEP 探索タイプ 採択 H24 JST A-STEP 復興支援,探索タイプ 採択

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シャント音による血管狭窄診断

提案法

・血管造影検査 ・超音波検査 など ・聴診

大掛かりな装置、 操作技術が必要

・・・・・・・経験が必要

シャント音(血流音)による狭窄診断装置

狭窄かもしれません。

正常範囲です。

従来のシャント狭窄検査

誰でも簡単に扱えるスクリーニング装置

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シャント音の分類 多くのシャント音(100例以上)調べることで,狭窄音のタイプを分類した。

正常音

高周波A

断続的

高周波B

高周波C

・スペクトルは高周波ほどなだらかに減衰 ・拍動間で途切れることはなく連続的

・高周波の減衰が少ない

・高周波に局所的ピークが存在する

・正常音とは明らかに異なった特性であるが,高周波A、Bに該当しない

・周波数特性は様々 ・拍動間で途切れる 狭窄の特徴は時間-周波数特性に現れる

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狭窄診断システムの構成 ・特徴的な狭窄音ばかりではない(狭窄の程度や個人差)

・シャント音を自動的に分類・特徴抽出する ・狭窄の程度、個人差を示すことができる →SOM 狭窄診断システム

シャント音をマイクで採音

時間周波数解析(Short Time MEM法)

自己組織化マップ SOM(Self Organizing Map)

正常、狭窄の特徴が分かりやすいベクトルにする

多くのサンプルを学習(機械におぼえさせる)

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自己組織化マップSOMによる分類

高周波B 高周波A 高周波C

正常

断続

・正常、狭窄音の種類ごとに「島」が形成される

・類似したサンプルが近くに配置される

コンピュータが知らないデータ「黒」が入力された場合

正常

狭窄

狭窄疑い 狭窄疑い

「正常の島」にどれだけ近いかで狭窄の疑いが示される 「病変の程度」を示すことができる

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自己組織化マップSOMによる分類

正常 高周波A

高周波B

高周波C 断続 狭窄疑い

PTA前(狭窄のある被験者) 14 19 10 12 17 27 PTA後 (瘤など、明らかな異常がある) 8 31 0 8 31 23 PTA後 (normal) 37 2 8 2 12 40

PTA手術前後のシャント音を診断させた結果[%]

PTA前

PTA後

・PTA前よりもPTA後のほうが正常音に近づいている

・正常領域と狭窄領域の間に出力されたデータは「狭窄疑い」として診断した結果 ・明らかに「正常音」「狭窄音」と判断のつくものはほぼ100%検出できている

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自己組織化マップSOMによる分類

PTA前後におけるシャント音の変化. 4つのシャント音データが属するセルの取得位置毎の狭窄レベルの平均値

PTA前

PTA後

狭窄音

正常音

従来型のアプローチ: ・大型装置を使う ・聴診する ・時間周波数解析結果を見る。 ⇒×素人には判定が難しい

提案法のアプローチ: ・機械学習によって2次元平面上で判定 ・狭窄レベルを数値としてあらわせる ⇒×素人でも扱えるスクリーニング装置

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音響センサ部の開発

インターフェース→マイク→シート→アンプ

・アレイセンサ ・粘着型インターフェース ・中空内にマイク ・巻きつけ型

従来型のセンサ:ダイアフラム型,チューブ型,心音計の流用⇒原則として1ch ⇒×狭窄シャント音は狭窄部で顕著に聴取される

提案センサ⇒患者自身・家族等,熟練者でなくとも扱える

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音響センサ部の開発

・アレイセンサ ・粘着型インターフェース ・中空内にマイク ・巻きつけ型

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演算処理部の改良

ΔMFCC,ΔΔMFCC,及び対数パワー,Δ対数パワー,ΔΔ対数パワー

特徴抽出部

解析判定部

複数の信号処理を並行して行うことで,狭窄の取りこぼしを低減させることに成功

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演算処理部の改良(逐次細分化SOM) 従来型のSOM:初期配置がランダム。 計算上でもランダム性が多く取入れられている。 ⇒×学習を行うごとに異なったマップとなる ⇒×サンプル数や特徴ベクトルが大きくなると時間が遅い

提案するSOM:主成分分析を取入れ逐次に細分化していくSOM (逐次細分化SOM) ⇒○再現性の高いマップを得ることができる(1%未満) ⇒○処理時間が速い(半分以下)

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演算処理部の改良(逐次細分化SOM) 提案するSOM:主成分分析を取入れ逐次に細分化していくSOM (逐次細分化SOM) ⇒○再現性の高いマップを得ることができる(1%未満) ⇒○処理時間が速い(半分以下)

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今後、さらに発展するための課題・企業への期待 ・センサ部の発展 ・環境音を遮断する ・さらに人体(製品)に合わせたスマートなセンサができれば、精度は向上する ・慣れていない人にも使いやすいシステム ・誰でも容易に操作ができるようなスマートな操作部・表示法 ・個人差・個体差への対応 ・複数の患者さん(工業製品)を追跡した長期的なデータ採取 ・システムが具現化できれば手広く調査することができます

人間の耳で音を聞き分けることで何かの内部の異常を検知するといった問題について、それを自動化するとき、本研究で行った一連の音響信号解析プロセスが多くの場合に適用可能であると思われます。 つまり、「専門家の経験と勘に基づく正常音と異常音の聞き分け」を機械にさせるための技術です。その応用範囲は広いと考えています。

応用できると想定できる産業・製品・技術等

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本技術に関する知的財産権 • 発明の名称 : シャント狭窄診断支援システムおよび方法、アレイ 状採音センサ装置、ならびに逐次細分化自己組織化マップ作成装置、方法およびプログラム

• 出願番号 :特願2012-147530 • 出願人 :山梨大学 • 発明者 :鈴木 裕、加藤 初弘、深澤 瑞也、 阪田 治、脇 隼人

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お問い合わせ先

産 Industry

官 Administration

国立大学法人 山梨大学

産学官連携・研究推進機構 地域連携室

室長 還田 隆

TEL:055-220-8758

FAX:055-220-8757

e-mail:[email protected]

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