論文内容の要旨ginmu.naramed-u.ac.jp/dspace/bitstream/10564/3501/1/01甲...distal radioulnar...

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様 式 第5 号(第 9 条関係) 論文内容の要旨 報告番号 空欄 氏名 山藤滋 Magnetic resonance imaging a n a l y s i s of t h e e x t e n s o r c a r p i u l n a r i s tendon and d i s t a l r a d i o u l n a r j o i n t i n t r i a n g u l a r f i b r o c a r t i l a g e complex t e a r s (三角線維軟骨複合体損傷における尺側手根伸筋腫と遠位榛尺関節の MRI 画像分析) 論文内容の要旨 [ 諸 言】近年の画像診断の進歩や詳細な理学的所見の開発によって、手関節尺側部痛の診断能は向上し てきた。しかしながら、手関節尺側部は手関節の b l a c k box と呼ばれており、多様な病態が関与し診断に難 渋することも多い。三角線維軟骨複合体 (TFC) 損傷や尺骨突き上げ症候群を含む関節内病変と、尺側手 根仲筋 (ECU) 臆(鞘)炎を含む関節外病変とを区別することがしばしば困難になる 。また疹痛を引き起こす 病態が解剖学的に隣接しており、それらが同時に起こっている可能性がある。 Kakar は遠位榛尺関節 (DRUJ) の機能障害が多様な病態によって引き起こされるため、 “ F o u r - L e a f C l o v e r " a l g o r i t h m を提唱してい る。つまり骨の変形、軟骨欠損、 TFCC 損傷、 ECU 健の不安定性の4 つの病態があり、それぞれの病態が重 なっている可能性があると述べている。しかし TFCC 損傷患者における ECU 臆障害の頻度や部位について の情報は少ない。 [目的】本研究の目的は、 hI 解析により TFCC 損傷患者群における ECU 騨と DRUJ の障害の発生頻度 とその予測因子を調査することである。 【方法 1 2 0 6 年から 2 0 1 3 年までに手関節 M 則を撮影した連続する 5 9 6 を有する 2 0 8 例のうち、理学的所見および画像所見から TFCC 損傷と診断し、手術によって確定診断を行 った連続する 7 0 例を TFCC 損傷群とした。手関節尺側部痛のない 3 8 例のうち、年齢・性別を TFCC 損傷 群とマッチさせた 7 0 例を対照群とした。両群における MRI 上の ECU 腿および DRUJ 障害の有無を調査 し、その頻度について両群間で、比較した。各種の患者因子やレントゲン形態 ( u l n a r v a r i a n c e の程度)、 TFCC 損傷のタイプ(榛尺靭帯損傷あるいは円板部損傷)の関連を分析し、 ECU 臆および DRUJ 障害発生 の予測因子を同定した。 【結果】TFCC 損傷群において、 ECU 健および DRUJ 障害が対照群と比較して有意に多く発生した (TFC 損傷群 :ECU 腿鞘炎 59% ECU 健縦断裂 51% DRUJ 関節炎 41% 、対照群:それぞれ 6% 20% 13% p<O.Ol) o TFCC 損傷群の 7 0 例のうち、年齢と u1 n a rv a r i a n c e の程度が ECU 腿鞘炎の重症度と有意に相 闘があった(年齢 :r=0.28 p < 0 . 0 5 ; u 1 n a rv a r i a n c e : r= 0. 4 4p<0.05) 0 DRUJ 関節炎を伴う u l n a r v a r i a n c e 程度は、 DRUJ 関節炎がなしものより有意に大きかった( p<0 . 0 5 ) 0 TFCC 円板部損傷の有無が DRUJ 関節 炎と有意に相関があった( p<0 . 0 5 ) 0 DRUJ 関節炎はより高齢に認める傾向があった ( p = 0 . 0 9 ) [ 考察1TFCC 損傷に伴う DRUJ の不安定性や関節炎により、 s e c o n d a r y s t a b i l i z e r である ECU 健の障害が増 大すると示唆された。 {まとめ】 TFCC 損傷患者において ECU 腔および DRUJ 障害はより高率に合併し、尺側手関節痛の診断を 困難にする。障害発生の危険因子の同定は、尺側痛の診断治療の一助となりうる。

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Page 1: 論文内容の要旨ginmu.naramed-u.ac.jp/dspace/bitstream/10564/3501/1/01甲...distal radioulnar joint in triangular fibrocartilage complex tears (三角線維軟骨複合体損傷における尺側手根伸筋腫と遠位榛尺関節の

様式第5号(第 9条関係)

論文内容の要旨

報告番号 空欄 氏名 山藤滋

Magnetic resonance imaging analysis of the extensor carpi ulnaris tendon and

distal radioulnar joint in triangular fibrocartilage complex tears

(三角線維軟骨複合体損傷における尺側手根伸筋腫と遠位榛尺関節の MRI 画像分析)

論文内容の要旨

[諸 言】近年の画像診断の進歩や詳細な理学的所見の開発によって、手関節尺側部痛の診断能は向上し

てきた。しかしながら、手関節尺側部は手関節の black box と呼ばれており、多様な病態が関与し診断に難

渋することも多い。三角線維軟骨複合体 (TFCC) 損傷や尺骨突き上げ症候群を含む関節内病変と、尺側手

根仲筋 (ECU) 臆(鞘)炎を含む関節外病変とを区別することがしばしば困難になる 。また疹痛を引き起こす

病態が解剖学的に隣接しており、それらが同時に起こっている可能性がある。Kakar は遠位榛尺関節

(DRUJ) の機能障害が多様な病態によって引き起こされるため、 “Four-Leaf Clover " algorithm を提唱してい

る。つまり骨の変形、軟骨欠損、 TFCC 損傷、 ECU 健の不安定性の4つの病態があり、それぞれの病態が重

なっている可能性があると述べている。しかし TFCC 損傷患者における ECU 臆障害の頻度や部位について

の情報は少ない。

[目的】本研究の目的は、 hほ I解析により TFCC 損傷患者群における ECU 騨と DRUJ の障害の発生頻度

とその予測因子を調査することである。

【方法12006 年から 2013 年までに手関節 M 則を撮影した連続する 596 {J~を対象とした。 手関節尺側部痛を有する 208 例のうち、理学的所見および画像所見から TFCC 損傷と診断し、手術によって確定診断を行

った連続する 70 例を TFCC 損傷群とした。手関節尺側部痛のない 388 例のうち、年齢・性別を TFCC 損傷

群とマッチさせた 70 例を対照群とした。両群における MRI 上の ECU 腿および DRUJ 障害の有無を調査

し、その頻度について両群間で、比較した。各種の患者因子やレントゲン形態 (ulnar variance の程度)、

TFCC 損傷のタイプ(榛尺靭帯損傷あるいは円板部損傷)の関連を分析し、 ECU 臆および DRUJ 障害発生

の予測因子を同定した。

【結果】TFCC 損傷群において、 ECU 健および DRUJ 障害が対照群と比較して有意に多く発生した (TFCC

損傷群 :ECU 腿鞘炎 59% 、ECU 健縦断裂 51% 、DRUJ 関節炎 41% 、対照群:それぞれ 6% 、20% 、13% 、

p<O.Ol) o TFCC 損傷群の 70 例のうち、年齢と u1na r variance の程度が ECU 腿鞘炎の重症度と有意に相

闘があった(年齢 :r=0.28 、p < 0.05; u1na r variance: r= 0.4 4、p<0.05) 0 DRUJ 関節炎を伴う ulnar variance の

程度は、 DRUJ 関節炎がなしものより有意に大きかった(p < 0.05) 0 TFCC 円板部損傷の有無が DRUJ 関節

炎と有意に相関があった(p < 0.05) 0 DRUJ 関節炎はより高齢に認める傾向があった (p=0.09) 。

[考 察1TFCC 損傷に伴う DRUJ の不安定性や関節炎により、 secondary stabilizer である ECU 健の障害が増

大すると示唆された。

{まとめ】 TFCC 損傷患者において ECU 腔および DRUJ 障害はより高率に合併し、尺側手関節痛の診断を

困難にする。障害発生の危険因子の同定は、尺側痛の診断治療の一助となりうる。