論文内容の要旨ginmu.naramed-u.ac.jp/dspace/bitstream/10564/3667/1/01乙...様式第5号(第9条関係)...

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様式第5 号(第9 条関係) 論文内容の要旨 報告番号 氏名 森田剛平 N A C 1 , a s a t a r g e t o f M i c r o R N A - 3 1 - 3 p , r e g u l a t e s c e l l p r o l i f e r a t i o n i n u r o t h e l i a l c a r c i n o m a c e l s ( M i c r o R N A - 3 3 p N A C I を標的とし、尿路上皮癌細胞の増殖を制御する。) C a n c e r s ( B a s a l ) , 2 0 1 8 S e p 2 1 ; 1 0 ( 1 0 ) . p i : E 3 4 7 . d o i : 1 0 . 3 9 0 / c a n c e r s l 0 1 0 3 4 7 . 論文内容の要旨 尿路上皮癌は勝目光、尿管、腎孟などに異時性、同時性に単発ないし多発性に発生する上皮性腫療であ り、尿中の癌細胞を検出する事が診断の糸口となる。尿中の癌細胞検出は細胞学的、形態学的な診断が 行われるが、尿中の細胞は変性が強く、形態学的な評価には限界があり、その感度は低い。感度、特異度 の上昇のためには免疫染色や遺伝子診断などの補助診断が望まれるが、腫蕩性病変と非腫蕩性病変とを 鑑別する特異的な分子マーカーは知られていない。 NACCl は全身の細胞に発現しており、細胞の分化、増殖及びアポトーシス、遊走などに関与している。 NACCl は種々の癌細胞(卵巣癌、口腔癌、大腸癌、隣癌)での関与が報告されており、我々も子宮頚癌、 前立腺癌において NACCl の関与を報告してきた。今回、我々は尿路上皮癌における NACCl の関与を 病理組織学的・免疫組織学的、及び遺伝子解析を行し、検討した。 免疫組織学的検討では、 NACCl は非浸潤癌(p T a , p T i s )では発現が保たれているが、浸潤癌(p T l , pT2 )において発現の低下が確認された。 引き続き、尿路上皮癌細胞株(T 2 4 , UMUC6, KU7 )を用いた遺伝子学的、細胞学的検討を行った。 SA- f 3 g e l a s s a y では、 NACCl の抑制は尿路上皮癌の増殖を GO/Gl 期で停止させることが確認された。また NACCl の抑制により細胞周期関連因子(C y c l i n A l , A 2 , B l , 82 )の発現低下が確認された。 m i c r o RNA を用いた検討では、 m i R - 3 3 p の導入により NACCl m-RNA の発現低下が確認された。ま MTS a s s a y では、 m i R 3 3 p の導入により尿路上皮癌細胞の増殖抑制が確認された。 細胞株 T24 を用いて行った i n v a s i o n a s a y 及び wound h e a l i n g t e s t では、 NACCl の導入により遊走・浸 潤能の上昇がみられた。 以上の結果から、 NACCl は尿路上皮癌における大きな予後因子である浸潤能との関わりが示唆され、予 後予測マーカーとなり得る可能性があると考えられる。

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Page 1: 論文内容の要旨ginmu.naramed-u.ac.jp/dspace/bitstream/10564/3667/1/01乙...様式第5号(第9条関係) 論文内容の要旨 報告番号 氏名 森田剛平 NACC 1, as

様式第5号(第9条関係)

論文内容の要旨

報告番号 氏名 森田剛平

NACC 1, as a target of MicroRNA-331-3p, regulates cell proliferation in urothelial carcinoma cells (Micro RNA-33 ト3p はNACCI を標的とし、尿路上皮癌細胞の増殖を制御する。)

Cancers (Basal) , 2018 Sep 21;10(10). pii: E347. doi: 10.3390/cancersl 0100347.

論文内容の要旨

尿路上皮癌は勝目光、尿管、腎孟などに異時性、同時性に単発ないし多発性に発生する上皮性腫療であ

り、尿中の癌細胞を検出する事が診断の糸口となる。尿中の癌細胞検出は細胞学的、形態学的な診断が

行われるが、尿中の細胞は変性が強く、形態学的な評価には限界があり、その感度は低い。感度、特異度

の上昇のためには免疫染色や遺伝子診断などの補助診断が望まれるが、腫蕩性病変と非腫蕩性病変とを

鑑別する特異的な分子マーカーは知られていない。

NACCl は全身の細胞に発現しており、細胞の分化、増殖及びアポトーシス、遊走などに関与している。

NACCl は種々の癌細胞(卵巣癌、口腔癌、大腸癌、隣癌)での関与が報告されており、我々も子宮頚癌、

前立腺癌において NACCl の関与を報告してきた。今回、我々は尿路上皮癌における NACCl の関与を

病理組織学的・免疫組織学的、及び遺伝子解析を行し、検討した。

免疫組織学的検討では、 NACCl は非浸潤癌(pTa, pTis )では発現が保たれているが、浸潤癌(pTl,pT2 )において発現の低下が確認された。

引き続き、尿路上皮癌細胞株(T24, UMUC6, KU7 )を用いた遺伝子学的、細胞学的検討を行った。SA-f3 gel assay では、 NACCl の抑制は尿路上皮癌の増殖を GO /Gl 期で停止させることが確認された。また

NACCl の抑制により細胞周期関連因子(Cyclin Al, A2, Bl, 82 )の発現低下が確認された。

micro RNA を用いた検討では、 miR-33 ト3p の導入により NACCl m-RNA の発現低下が確認された。ま

た MTS assay では、 miR33 ト3p の導入により尿路上皮癌細胞の増殖抑制が確認された。

細胞株 T24 を用いて行った invasion assay 及び wound healing test では、 NACCl の導入により遊走・浸

潤能の上昇がみられた。

以上の結果から、 NACCl は尿路上皮癌における大きな予後因子である浸潤能との関わりが示唆され、予

後予測マーカーとなり得る可能性があると考えられる。