論文題目 空調用スクロール圧縮機スラストスライド …1 論文題目...

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1 論文題目 空調用スクロール圧縮機スラストスライド軸受の高性能潤滑に関する研究 大阪電気通信大学大学院 工学研究科・制御機械工学専攻 奥達也 総論 我が国で冷凍機を使った製氷が行われ始めたのは 18721879 年(明治 512 年)頃と言われている.それ からおよそ 130 年を経て,冷凍・空調分野で使用される圧縮機はピストンを用いた往復式からスクリュー式, ロータリ式,スクロール式などの回転式へと変遷を遂げ,大きさや用途に応じてそれぞれの方式が使い分け られている.現在,冷凍機や空調機は社会の隅々まで浸透し,小は冷蔵庫やルームエアコン,カーエアコン から,大は冷凍冷蔵倉庫やビル空調システムまで,生活環境の向上や経済・産業の発展に必要不可欠なもの となっている. そのような中にあって,特にルームエアコンやカーエアコンなどで使用される比較的小形のものは使用さ れる台数が多いため高効率・高性能の要求が厳しく,より高性能な圧縮機,より低振動・低騒音の圧縮機を 実現するための機構の変遷,技術の進展があった. まず,1866 年に米国においてピストンを用いた往復式炭酸ガス圧縮機が開発された.炭酸ガス冷媒は安定 で無毒・不燃性であることから初期の舶用冷房装置によく用いられたが,臨界温度が低く高圧で作動するた め,機械強度上の難点があった.続いてアンモニア,亜硫酸ガス,メチルクロライドを冷媒として用いた冷 凍機が開発されたが,これらの冷媒は毒性が強いなど,使いこなす上で依然難点があった.小形圧縮機分野 では亜硫酸ガス密閉圧縮機が開発され,1932 年には我が国でも家庭用冷蔵庫が製品化された.この頃,冷媒 CFC12 が開発され,フロン系冷媒を用いた蒸気圧縮式冷凍サイクルの利用が急激に進展した.しかしながら, 往復動型圧縮機では特に機械損という面から性能向上に限界があり,振動・騒音も大きいという問題があっ た. その後,高性能化,低振動・低騒音化のために,1967 年にエアコン用,1980 年に冷蔵庫用のローリングピ ストン式ロータリ圧縮機が開発・製品化された.この圧縮機は,高い加工精度と組み立て精度が求められる が,機構が単純で小形,軽量,高効率化が見込めるため,省エネルギーへの注目が高まる中,圧縮機は往復 動型からローリングピストンロータリー型へと置き換えられていった. より高効率,高性能な圧縮機を求めて 1970 年代から研究開発が進められていたスクロール圧縮機は, 1980 年代後半になって製品化に成功し,現在ではロータリ式と競合しながらスクロール型がルームエアコン用圧 縮機全体の 50%余りを占めるに至っている. スクロール圧縮機は 1800 年代末期から 1900 年代初期に発明され,欧米で特許 3) が出願されている.固定 スクロールと可動スクロールの2対の渦巻きによって構成される三日月形気室を利用して冷媒を連続的に圧 縮する機械である.渦巻き曲線は基本的にはどのようなものでもよいが,一般的にはインボリュート曲線が 使われることが多い.これは固定と可動の両スクロールが同じ形状になるためである.可動スクロールは旋 回運動をさせる.それゆえ可動スクロールは一般に旋回スクロールと呼ばれる.旋回スクロールが旋回運動 すると,冷媒は外周部で閉じ込められ,徐々に内側へと圧縮され,中心部分から吐き出されていく.閉じ込 みから吐き出しまでに旋回スクロールが約 2 旋回するように設計されるのが普通である.以上のように,主 要圧縮機構部分が回転運動を行い,圧縮速度も遅い.かつ,両スクロールは非接触,構成される圧縮気室は 多気室である.それゆえ,スクロール圧縮機は基本的に低振動,低騒音という優れた特徴を持っている.さ らに,両スクロール間は非接触に保たれているのでそこから圧縮冷媒ガスが漏れるが,基本的に隣接する気 室間の圧力差が小さいために,両スクロール間の隙間を微小な 5µm 程度に抑えるなどの工夫によって体積効 率,圧縮効率ともに高い値を達成することが可能である.このようにスクロール圧縮機は基本的に高性能と いう優れた特徴も有している.かつ,機械効率面でも優れた値を達成し得る機械である. スクロール圧縮機では,固定と旋回の両スクロールは半径方向には非接触であるが,軸方向では平面同士 をお互いに強く押付け合った接触状態で旋回運動を行っている.この部分がスラストスライド軸受と呼ばれ るものであり,機構的に他には見られないスクロール圧縮機の大きな特徴の一つである.この部分に多数の ボールをはめ込むボールスラスト軸受もあるが,振動騒音の面で問題がある.そのような工夫をしなくても, かつ高圧油圧ポンプのような特別な潤滑装置を持たせなくても,平面同士を強く押付け合って旋回運動させ てもスラストスライド軸受では焼き付きなどの重大な潤滑トラブルは決して起こらず,むしろ良好な潤滑状 態が保たれているということを示唆するデータが数多くある.しかしながら,スクロール圧縮機要素技術を 研究開発,技術開発する分野においても,なぜこの部分で潤滑トラブルが起こらないのか,その部分でどの ような潤滑メカニズムが構成されているのかなどについての明瞭な知見は明らかにされていないのが現状で ある.ともかく潤滑トラブルは起こらず,良好な潤滑が形成されているようだからそれでよしとする風潮さ えある. これまでにスクロール圧縮機のスラストスライド軸受に関して実験的に研究されたものに Nishiwaki らの 論文があり,理論的に研究されたものに Morishita ら,Kulkarni による論文が幾つかある.しかしながら,本 質的な潤滑特性についてはまったく明らかにされていない.また,石井らによって冷媒の漏れ流れ等を詳細 に検討し,それを適用したコンピュータシミュレーションによるスクロール圧縮機の最適設計が行われてい るが,スラストスライド軸受における潤滑の本質についてはあまり触れられていない.スラストスライド軸 受における潤滑特性を明確にし,その潤滑メカニズムを解明しておくことが是非とも必要である.もちろん,

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論文題目 空調用スクロール圧縮機スラストスライド軸受の高性能潤滑に関する研究

大阪電気通信大学大学院 工学研究科・制御機械工学専攻

奥達也 総論 我が国で冷凍機を使った製氷が行われ始めたのは 1872~1879 年(明治 5~12 年)頃と言われている.それからおよそ 130 年を経て,冷凍・空調分野で使用される圧縮機はピストンを用いた往復式からスクリュー式,ロータリ式,スクロール式などの回転式へと変遷を遂げ,大きさや用途に応じてそれぞれの方式が使い分けられている.現在,冷凍機や空調機は社会の隅々まで浸透し,小は冷蔵庫やルームエアコン,カーエアコンから,大は冷凍冷蔵倉庫やビル空調システムまで,生活環境の向上や経済・産業の発展に必要不可欠なものとなっている.

そのような中にあって,特にルームエアコンやカーエアコンなどで使用される比較的小形のものは使用される台数が多いため高効率・高性能の要求が厳しく,より高性能な圧縮機,より低振動・低騒音の圧縮機を実現するための機構の変遷,技術の進展があった.

まず,1866 年に米国においてピストンを用いた往復式炭酸ガス圧縮機が開発された.炭酸ガス冷媒は安定で無毒・不燃性であることから初期の舶用冷房装置によく用いられたが,臨界温度が低く高圧で作動するため,機械強度上の難点があった.続いてアンモニア,亜硫酸ガス,メチルクロライドを冷媒として用いた冷凍機が開発されたが,これらの冷媒は毒性が強いなど,使いこなす上で依然難点があった.小形圧縮機分野では亜硫酸ガス密閉圧縮機が開発され,1932 年には我が国でも家庭用冷蔵庫が製品化された.この頃,冷媒CFC12 が開発され,フロン系冷媒を用いた蒸気圧縮式冷凍サイクルの利用が急激に進展した.しかしながら,往復動型圧縮機では特に機械損という面から性能向上に限界があり,振動・騒音も大きいという問題があった.

その後,高性能化,低振動・低騒音化のために,1967 年にエアコン用,1980 年に冷蔵庫用のローリングピストン式ロータリ圧縮機が開発・製品化された.この圧縮機は,高い加工精度と組み立て精度が求められるが,機構が単純で小形,軽量,高効率化が見込めるため,省エネルギーへの注目が高まる中,圧縮機は往復動型からローリングピストンロータリー型へと置き換えられていった. より高効率,高性能な圧縮機を求めて 1970 年代から研究開発が進められていたスクロール圧縮機は,1980

年代後半になって製品化に成功し,現在ではロータリ式と競合しながらスクロール型がルームエアコン用圧縮機全体の 50%余りを占めるに至っている. スクロール圧縮機は 1800 年代末期から 1900 年代初期に発明され,欧米で特許 3)が出願されている.固定スクロールと可動スクロールの2対の渦巻きによって構成される三日月形気室を利用して冷媒を連続的に圧縮する機械である.渦巻き曲線は基本的にはどのようなものでもよいが,一般的にはインボリュート曲線が使われることが多い.これは固定と可動の両スクロールが同じ形状になるためである.可動スクロールは旋回運動をさせる.それゆえ可動スクロールは一般に旋回スクロールと呼ばれる.旋回スクロールが旋回運動すると,冷媒は外周部で閉じ込められ,徐々に内側へと圧縮され,中心部分から吐き出されていく.閉じ込みから吐き出しまでに旋回スクロールが約 2 旋回するように設計されるのが普通である.以上のように,主要圧縮機構部分が回転運動を行い,圧縮速度も遅い.かつ,両スクロールは非接触,構成される圧縮気室は多気室である.それゆえ,スクロール圧縮機は基本的に低振動,低騒音という優れた特徴を持っている.さらに,両スクロール間は非接触に保たれているのでそこから圧縮冷媒ガスが漏れるが,基本的に隣接する気室間の圧力差が小さいために,両スクロール間の隙間を微小な 5µm 程度に抑えるなどの工夫によって体積効率,圧縮効率ともに高い値を達成することが可能である.このようにスクロール圧縮機は基本的に高性能という優れた特徴も有している.かつ,機械効率面でも優れた値を達成し得る機械である.

スクロール圧縮機では,固定と旋回の両スクロールは半径方向には非接触であるが,軸方向では平面同士をお互いに強く押付け合った接触状態で旋回運動を行っている.この部分がスラストスライド軸受と呼ばれるものであり,機構的に他には見られないスクロール圧縮機の大きな特徴の一つである.この部分に多数のボールをはめ込むボールスラスト軸受もあるが,振動騒音の面で問題がある.そのような工夫をしなくても,かつ高圧油圧ポンプのような特別な潤滑装置を持たせなくても,平面同士を強く押付け合って旋回運動させてもスラストスライド軸受では焼き付きなどの重大な潤滑トラブルは決して起こらず,むしろ良好な潤滑状態が保たれているということを示唆するデータが数多くある.しかしながら,スクロール圧縮機要素技術を研究開発,技術開発する分野においても,なぜこの部分で潤滑トラブルが起こらないのか,その部分でどのような潤滑メカニズムが構成されているのかなどについての明瞭な知見は明らかにされていないのが現状である.ともかく潤滑トラブルは起こらず,良好な潤滑が形成されているようだからそれでよしとする風潮さえある.

これまでにスクロール圧縮機のスラストスライド軸受に関して実験的に研究されたものに Nishiwaki らの論文があり,理論的に研究されたものに Morishita ら,Kulkarni による論文が幾つかある.しかしながら,本質的な潤滑特性についてはまったく明らかにされていない.また,石井らによって冷媒の漏れ流れ等を詳細に検討し,それを適用したコンピュータシミュレーションによるスクロール圧縮機の最適設計が行われているが,スラストスライド軸受における潤滑の本質についてはあまり触れられていない.スラストスライド軸受における潤滑特性を明確にし,その潤滑メカニズムを解明しておくことが是非とも必要である.もちろん,

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それによって始めて,さらに高効率なスクロール圧縮機,さらに高信頼性のスクロール圧縮機を実現することが可能となる. 以上のような観点に立って,第1部では,多目的摩擦摩耗試験装置を用いた基本的な実験を行い,スクロール圧縮機スラストスライド軸受における優れた潤滑状態とその主要因を詳細に検討した. 第2章では,空調用としてこれまでに使用されてきている様々な形式の圧縮機について概説している.

第3章では,スクロール圧縮機について前章よりさらに詳細に解説している.さらに,スクロール圧縮機内部の微小隙間からの冷媒漏れ流れ理論評価法の確立に関する基礎研究,機械力学的・熱工学的解析による圧縮機効率シミュレーション,それを応用した最適スクロール形状設計,スラストプレートを含めたスクロールの3次元 FEM 解析による最適設計,高性能化を目指した新スクロール形状の開発等,これまでに行われてきているスクロール圧縮機に関する研究についても概説している. 第4章では,空調用スクロール圧縮機特有の旋回運動を支えるスラストスライド軸受について,その構造および特徴,予測されている潤滑状態について述べている.さらに,スラストスライド軸受での低摩擦損失,高潤滑性能を目指したこれまでの研究を挙げ,概説している. 第5章では,スラストスライド軸受の潤滑特性を明らかにするために,摩擦摩耗試験装置を用いた実験を

行っている.基本的な実験を行うという観点から,スラスト荷重を支持していないスクロール部分を省略し,スラストスライド軸受部の複雑な形状をリング状に簡略化したモデルを用いている.実機スクロール圧縮機ではスラストスライド軸受内外に圧力差が生じているが,それも正確に取り入れている.スラスト荷重を変化させて軸受の摩擦力,摩擦係数および摩擦面温度を詳細に測定し,スラスト荷重の増加によって潤滑状態が大幅に改善されることを検討している.さらに,スラストスライド軸受部の潤滑状態を検討するために試験後の摩擦面の摩耗状態を詳しく観察している. 第6章では,スラストスライド軸受の潤滑メカニズムに関する詳細な検討を行っている.前章の摩擦面摩

耗状態の観察より,スラスト荷重によってスラスト板が弾性変形し,それによって摩擦面外周にくさび状隙間が形成され良好な潤滑状態を形成していたことを明らかにしている.さらにスラスト板の FEM 弾性変形解析を行いスラスト荷重とくさび角度との関係を明らかにしている.スラスト板のひずみを計測することによって FEM 解析結果の検証も行っている.

第2部では,スクロール圧縮機スラストスライド軸受の潤滑の本質を明らかにするために,固体接触と流体潤滑を考慮した境界潤滑理論解析を行った.理論解析結果が第1部第 5 章の実験結果と一致することを示し,スラストスライド軸受の潤滑理論解析法を確立している. 第2章では,潤滑解析に関する基礎理論を概説している.潤滑油に浸された低しゅう動速度,高負荷のス

ラストスライド軸受では,流体潤滑と固体接触が同時に生じている境界潤滑状態であり,さらに軸受表面の粗さの影響も受けると考えられる.そこで,ここではレイノルズ方程式に粗さの影響を考慮した平均レイノルズ方程式および表面の突起の接触を考慮した固体接触理論について概説している.

第3章では,外周部にくさび状隙間を持ったスラスト板が旋回運動する場合に前章で述べた基礎理論を適用し,具体的理論解析を行っている.境界潤滑理論解析によってスラスト板に働く油膜力,固体接触力,油膜粘性抵抗力,固体摩擦力を求め,それらの釣合いの関係を解いている.また,具体的な解を求める方法についても解説している. 第4章では,理論解析の解を数値計算によって求める手順を示し,第1部第 5 章で求めた潤滑油粘度と第

1部第6章で求めたくさび特性を与え,具体的に摩擦力,摩擦係数を求めている.理論計算結果が実験結果と良く一致することを示し,さらに実験的研究では明らかにできなかった油膜圧力分布,油膜厚さ,軸受支持力および摩擦力の内訳を示している. 第5章では,前章で始めて明らかにされた油膜圧力分布,油膜厚さ,軸受支持力および摩擦力の内訳を詳

細に検討し,スラストスライド軸受の潤滑の本質について検討している. 第3部では,スラストスライド軸受の境界潤滑理論解析法を応用展開し,高効率・高信頼性スラストスラ

イド軸受を実現するための最適設計法について検討した. 第2章では,スラストスライド軸受の潤滑性能を最も高くする最適設計モデル例を示している.スラスト

スライド軸受では,スラスト板の旋回運動に伴って摩擦面のくさび状隙間に潤滑油が押し込まれることによって発生する動圧が潤滑性能を向上させている.そのため軸受面積が大きくなると,摩擦面に発生する動圧が増大し,軸受浮上量が大きくなり,それによって固体接触の影響が低減され,摩擦力が減少することになる.一方,軸受面積がある程度以上大きくなると,粘性抵抗の影響が顕著に現れ始め,摩擦力が逆に増大することになる.このように相反する摩擦要因が存在するために,スラストスライド軸受には摩擦による損失動力が最も小さくなる軸受面積の最適値が存在するものと想定できる.以上のような観点に基づいて,現在量産されているスクロール圧縮機をベースにし,規定のスラストスライド軸受内径に対して最適外径値を見いだす最適設計理論解析モデルを示している. 第3章では,前章で示したスラストスライド軸受最適設計モデル例に関して具体的な数値計算を行ってい

る.標準運転状態におけるくさび角度と潤滑油粘度を与え,旋回速度を変化させて潤滑特性,摩擦損失動力および最適軸受半径比を詳細に検討している. 最終的に,第4章では,潤滑油粘度が変化した場合,スラストプレートが薄くなってくさび角度が大きく

なった場合,軸受内外圧力差が増加してくさび角度が大きくなった場合について最適設計計算を行い,スラストスライド軸受の最適設計指針を検討している.これによってスクロール圧縮機の性能をさらに高めることができるものと期待される.

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株式会社前川製作所技術研究所

基盤技術開発G

 奥達也

空調用スクロール圧縮機スラストスライド軸受の高性能潤滑に関する研究

1872年~ 冷凍機を用いた製氷

社会の隅々まで浸透生活・経済活動に必要不可欠

冷凍・空調技術

産業用冷凍冷蔵倉庫

ビル空調システムエネルギ産業

家庭用冷蔵庫

ルームエアコンヒートポンプ給湯器

熱冷

ヒートポンプ

圧縮機でガスを圧縮 高温高圧ガス

高圧液低温低圧液

低圧過熱ガス

圧縮機圧縮機に入力した動力で熱を移動させている

往復式 スクリュー式

スクロール式

圧縮機圧縮機

ロータリ式

大形

家庭用エアコン冷蔵庫

ルームエアコン、冷蔵庫用小形圧縮機

使用される台数が非常に多いため、高効率・高性能の要求が厳しい

1866年 密閉形往復式圧縮機開発(米国)

1967年 ローリングピストン式ロータリ圧縮機

1980年後半 スクロール圧縮機

         →ルームエアコン用圧縮機

機械損失、振動、騒音

より高性能、高信頼性

要求に応えるための進歩

1932年に家庭用冷蔵庫が製品化(日本)

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・旋回スクロールの旋回運動 →外周で閉じこまれた冷媒が内側へと圧縮される・約2回転かけて圧縮

圧縮速度が遅く、多気室構造であるため低振動圧縮機構部が非接触非接触なため高信頼性

両スクロールが非接触

三日月形気室から冷媒が漏れる

気室間の圧力差が小さいため漏れを抑えやすい

高効率化が達成可能!

非接触を保ちながらの正確な旋回運動

旋回スクロールを固定スクロールに

強く押し付けた状態強く押し付けた状態で旋回運動させている。

スラスト軸受

背圧を設定

スラストスライド軸受

スクロール圧縮機スラスト軸受

ボールスラスト軸受

振動・騒音の面で不利

平面同士を押し付けあっている特別な潤滑装置は用いられていない

詳しい潤滑メカニズムは解らないが、深刻なトラブルは起こっておらず、詳しい潤滑メカニズムは解らないが、深刻なトラブルは起こっておらず、技術開発によって高性能が達成できているので現状でよしとされている。技術開発によって高性能が達成できているので現状でよしとされている。

スクロール圧縮機スラスト軸受

さらに高効率、高信頼性のスクロール圧縮機

スラストスライド軸受設計法

潤滑メカニズムの解明

平面同士をかなりの大荷重で押し付けあっているのに

なぜ焼きつかない?

riro

実験モデル

スラスト軸受面スラスト軸受面

Orbiting thrust plate

Fixed thrust plate Axial force

Fixed and orbiting thrust platesTest piecesFixed scroll

Orbiting scroll

(a) (b) (c)

R65.0R37.85

Positioning thrust shaft

Ball slide bush

Strain gauge

Strain gauge

軸の曲げひずみ

摩擦力

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Thrust spring

Positioning thrust shaft

Pivot

Tank

Heater

Thrust load spring

Mechanical seal

Orbiting thrust plate

Refrigerantoil

Thermo-couple

Shaft couplingDriven shaft

Crank shaft

Balance weight

Thrust load shaft

Oil vessel

Presusre vessel

Oldham's ring

Strain gauges

Pressure difference control valve

FpFsFf

Positioning thrust shaftPivot thrust bearing

Thrust slide-bearing

Fixed thrust plate

Screw

Orbiting thrust plate

Fixed thrust plate

Axial force

High pressurespace

Low pressurespace

Fixed and orbiting thrust platesTest piecesFixed scroll

Orbiting scroll

(a) (b) (c)

R65.0R37.85

旋回スクロールを固定スクロールに押し付けるための背圧

圧力差

Capillary tube

Fixed thrust plate

Pressurecontrol Valve

Pressuregauge

Atmospheric pressure

High pressure

Low pressure

0 0.05–50

0

50

50 100 1500

10

20

30

0 0.05–5

0

5

30.0Hz25.5N

Time [sec]

Forc

e [N

]

Friquency [Hz]

Forc

e [N

]O

utpu

t [V

]

(a)

(b)

(c)

ばねスラスト荷重Fs =600N

旋回速度 N =1800rpm

1000 2000 30000

100

200

300

400

500

600

Orbiting speed N [rpm]

Fric

tion

forc

e F f

[N]

∆p=1.0MPa ; Ft=9.5kN0.9MPa ; Ft=8.6kN

0.8MPa ; Ft=7.7kN0.7MPa ; Ft=6.8kN

0.6MPa ; Ft=5.9kN0.5MPa ; Ft=5.0kN

0.4MPa ; Ft=4.2kN0.3MPa ; Ft=3.3kN

0.2MPa ; Ft=2.4kN0.1MPa ; Ft=1.5kN

0MPa ; Ft=0.6kN

摩擦係数µ

圧力差を設定

Orbiting thrust plate

Fixed thrust plateAxial force

Gas thrust force

Lower pressure space

Higher pressurespace

摩擦係数µ

( ) ⎟⎠⎞

⎜⎝⎛ −

−+−=2

)( 222 inoutioinoutip

pprrpprF ππ

ps

f

FFF+

≡µ

1000 2000 30000

0.1

Orbiting speed [rpm]

Coe

ffic

ient

of f

rictio

n µ

∆p= 0MPa:0.1MPa:0.2MPa:0.3MPa:0.4MPa:0.5MPa:

0.6MPa:0.7MPa:0.8MPa:0.9MPa:1.0MPa:

∆p= 0MPa ; Ft=0.6kN

∆p=0.2MPa ; Ft=2.4kN

∆p=1.0MPa ; Ft=9.5kN

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実験結果

0 0.5 1

0.05

0.1

Pressure difference ∆p [MPa]

Coe

ffic

ient

of f

rictio

n µ

300rpm600rpm

900rpm1200rpm

1500rpm1800rpm

2100rpm

2400rpm2700rpm3000rpm3300rpm3600rpm

1000 2000 300040

50

60

70

80

90

100

Orbiting speed N [rpm]

Fric

tion

surf

ace

tem

p. T

f [de

gC]

∆p= 0MPa: 0.1MPa: 0.2MPa: 0.3MPa: 0.4MPa: 0.5MPa:

0.6MPa: 0.7MPa: 0.8MPa: 0.9MPa: 1.0MPa:

摩擦面温度の計測結果

Bearing characteristic number G

Fric

tion

coef

ficie

nt µ

Fluid lubrication

Mix

ed lu

bric

atio

n

Bou

ndar

y lu

bric

atio

n

LFVG

t

⋅≡

潤滑状態の判定

ストライベック線図 軸受特性数

Coe

ffici

ent o

f fric

tion

µ

0 0.5 1 1.5 2

0.1

[×10–5]Bearing characteristic number G

Coe

ffic

ient

of f

rictio

n µ ∆p=0MPa

0.1MPa0.2MPa0.3MPa0.4MPa

0.5MPa0.6MPa

0.7MPa0.8MPa

0.9MPa1.0MPa

Bearing characteristic number G

Fric

tion

coef

ficie

nt µ

Fluid lubrication

Mix

ed lu

bric

atio

n

Bou

ndar

y lu

bric

atio

n 圧力差∆pごとに異なる線  →くさび角度の変化

圧力差∆pが大きい

  →混合潤滑領域ジャーナル軸受

a b c Before testSurface roughness Ra [µm] 0.056 0.128 0.27 0.7

くさび状隙間

くさび角度の評価法

くさび角度のFEM解析

直線的なくさび状隙間

ばねスラスト荷重Fs=600N、圧力差∆p=0.3MPa

解析結果

0.5 10

50

100

Pressure difference ∆p [MPa]

Wed

ge a

ngle

α (×

10–6

rad)

Fs=1000N800N

600N400N

200N

FEM解析結果の検証

圧力差が大きい場合でもくさび角度が増加して良好な潤滑が保たれる

ばねスラスト荷重Fs=600N圧力差∆p=0.3MPa

0 1 2 3 4 5 6

–10

–5

0

5

Resultant thrust force Ft [kN]

Stra

in (×

10−5

)

Fs=200N

400N600N

800N1000N

∆p=0MPa0.1MPa

0.2MPa

0.3MPa

1000N800N

600N400N

FEM解析値と実測値とが一致

摩擦面の圧力の取り扱い

Orbiting thrust plate

Fixed thrust plate Axial force

Gas thrust force

Lower pressurespace

Higher pressurespace

第0次近似

かなり良い近似

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スクロール圧縮機スラストスライド軸受部の潤滑メカニズムスクロール圧縮機スラストスライド軸受部の潤滑メカニズム

弾性変形によるくさび状隙間

動圧

本質的内容

スラストスライド軸受の潤滑理論解析スラストスライド軸受の潤滑理論解析これまでの研究●Morishita, E. and Sugihara, M.: Bulletin of JSME, No.29(258), 4139-4146 (1986).

レイノルズ方程式をスラスト板(平板)に適用→転覆モーメントを評価

●Kulkarni, S.S.: Proc. of International Compressor Engineering Conference at Purdue, pp.327-332, Indiana (1990).

レイノルズ方程式をスラスト板(平板)に適用

V

ro

rir

θΘU 1

V

y

x

U1

p out p in ho h=h(r, θ)

r cosθ

ψy

h=h(r, θ)

ψx

p inp out

x y

α

r sinθW 1

FS FS

p, p c p, p c

Cylindrical thrust plate

Orbiting thrust plate

z z

Lpiv

xyi rrrrhrh ψθψθαθ ⋅+⋅−−+= sincostan)(),( 0 oi rrr ≤≤

隙間内の流体

スラストスライド軸受の潤滑理論解析スラストスライド軸受の潤滑理論解析

理論解析モデル設定

Reynolds方程式

th

yW

yhW

xU

xhU

yph

yxph

xTsTsT

∂∂

+∂∂

+∂∂

+∂∂

+∂∂

=⎟⎟⎠

⎞⎜⎜⎝

⎛∂∂

∂∂

+⎟⎟⎠

⎞⎜⎜⎝

⎛∂∂

∂∂

∗∗

φσφσµ

φµ

φ22221212

111133

直交座標系

(1979, Patir & Cheng)平均流れモデルによる

修正レイノルズ方程式

Navier-Stokesの方程式

u =02

1u

xhhT

δ1

δ2

表面の粗さ

hhT =

( )( )( )( ){ }222 52870140128352563 ZZZZZhT −+−+++=σ

σ/hH r ≡

等価隙間 hT

3≤rH

3>rH

x

z

yu2

u1

h w1v1

2

v2

drrdrpFOIL θθ= ∫∫ ),(

( )[ ] drrdVhVF fsrfsfvs θφφφµ

∫∫ −+=∗

22

●油膜力

●油膜粘性抵抗力 (Patir & Cheng)

p(r, θ)=pin (p(r, θ)<pin)潤滑油中に溶解した冷媒が気泡となって現れる

U

真実接触面積

固体接触

修正Greenwood & Williamsonモデル

見掛けの接触面積rdθdr

真実接触面積dA

●固体接触力

●固体摩擦力

∫ ⋅= dApF csc

∫ ⋅= dAFss τ

∫∞

⋅−=h

dsshsNA )()(2 φσπβ

β

Ai=2πβ(s-h)

h

Imaginary flat surface

Nominal gap h

β

s

Ai=2πβ(s-h)

pc 塑性流動圧力τ せん断強さ

r

θ

y

x

ho

r cosθ

ψy −ψx

x yr sinθ

FS FS

r dθ

drFf

Θ

Ff cosΘ (p+p c)rdθdr

Fpo

Fpi

z z

Fpo

Fpi Ff sinΘ

Lpiv Lpiv

(p+pc)rdθdr

00 =−−+++− posscOILpi FFFFFhm &&

0sinsin),(sin),( =⋅−⋅⋅⋅+⋅⋅+− ∫∫∫∫ ∗ Θθθθαθθθψ fcxx FLpivrdrdrprrdrdrrpI &&

0coscos),(cos),( =⋅+⋅⋅⋅−⋅⋅−− ∫∫∫∫ ∗ Θθθθαθθθψ fcyy FLpivrdrdrprrdrdrrpI &&

固定スラスト板に働く力の釣合い

初期条件 ルンゲクッタ法

( ){ ( ) } ( ){ ( ) } PweP

snP

PHHR

RHRHRR ⎥

⎤++⎢

⎡+ 33

2233

2

1111 φφθ∆

φφ∆

( ) ( ) SsP

NnP

PRHRR

PRHRR

⋅−⋅− 32

32

1111 φ∆

φ∆

( ) ( ) WwP

EeP

PHR

PHR

⋅−⋅− 322

322

1111 φθ∆

φθ∆

( ) ( ){ }

( ) ( ){ }wTeTP

sTnTPP

HHR

RHRHRR

)sin()sin(11

)cos(11

ΘθΘθθ∆

λ

Θθ∆

λ

−−−−

−−=

( ) ( ){ }

( ) ( ){ }wsesP

ssnsPP

R

RRRR

)sin()sin(11

)cos(11

ΘθφΘθφθ∆

λσ

φφΘθ∆

λσ

−−−−

−−+

差分格子

pn

N

sS e

E

w W

∆R∆θ

pWWEESSNNpp cPaPaPaPaPa =⋅+⋅+⋅+⋅+⋅

o/ rrR ≡

a/ ppP ≡

ref/ hhH ≡

ref/ hhH TT ≡

tωτ ≡

2

ref

o

ao

6⎟⎟⎠

⎞⎜⎜⎝

⎛≡

hr

prVµλ

2

ref

o

as

12⎟⎟⎠

⎞⎜⎜⎝

⎛≡

hr

pωµσ

油膜圧力の数値計算

Oil film pressure: (a) Color display at ∆p=0MPa & 3600rpm ; (b) Color display at ∆p=0.6MPa & 3600rpm;

(c) Color display at ∆p=1.0MPa & 3600rpm; (d) Highest pressure distribution vs. radial position.

V

(a)

(b)

(c)(d)

0 0.5 1

0.5

1

1.5

2

2.5

3

Oil

film

pre

ssur

e p[

MPa

]

Non dimensional radial position

∆p=1.0MPa3600rpm1800rpm

300rpm

∆p=0.6MPa3600rpm1800rpm300rpm

∆p=0MPa3600rpm

1800rpm300rpm

ri rop(r)r

3.25MPa

2.53MPa

1.37MPa

0.28

油膜圧力分布

Page 8: 論文題目 空調用スクロール圧縮機スラストスライド …1 論文題目 空調用スクロール圧縮機スラストスライド軸受の高性能潤滑に関する研究

8

スクロール圧縮機スラストスライド軸受部の潤滑理論解析スクロール圧縮機スラストスライド軸受部の潤滑理論解析

理論解析結果が実験結果と良く一致理論解析結果が実験結果と良く一致

1000 2000 30000

100

200

300

400

500

600

700∆p=1.0MPa

0.8MPa0.7MPa

0.6MPa

0.5MPa

0MPa

Res

ulta

nt fr

ictio

n fo

rce

F f [N

]

Orbiting speed N [rpm]

0.9MPa0.4MPa

0.3MPa0.2MPa

0.1MPa

1000 2000 30000

0.05

0.1 ∆p=0MPa

0.5MPa

0.4MPa

0.2MPa0.1MPa

1.0MPa

Fric

tion

coef

ficie

nt µ

Orbiting speed N [rpm]

0.3MPa 0.6MPa0.7MPa

0.8MPa0.9MPa

固体摩擦・粘性抵抗・真実接触面積・油膜厚さ

●平均流れモデルによる修正レイノルズ方程式●修正Greenwood-Williamsonモデル● FEM解析により求めたくさび角度

●潤滑油粘度●スラスト板に働く力の釣合い

スラストスライド軸受部の潤滑の本質的内容潤滑の本質的内容を明らかにした

応用

スクロール圧縮機高性能化のための軸受設計

軸受面積を考慮した潤滑性能最適設計法の検討

軸受面積による潤滑特性の変化 面積小→固体摩擦 面積大→粘性抵抗

最適面積

Thrust plate thickness

Friction surface

Friction surface

riro

ro

スクロール圧縮機スラストスライド軸受部の潤滑理論解析スクロール圧縮機スラストスライド軸受部の潤滑理論解析

渦巻き部分の寸法は一定

ri

x

ro

y

ri

x

ro

αα

Orbiting thrust plate

W 1

U 1

Θ

V

U1

Cylindrical thrust plate

最適設計計算

実機スラスト軸受面積と同一面積のリング状摩擦面

内半径を固定し外半径を変化させる

摩擦力摩擦損失動力

渦巻き部分の寸法は一定

io rr≡γ半径比

現行設計 4.1=γ

riro

1000 2000 30000123456789

1011

1000 2000 3000012345678

∆p=0MPa0.1MPa

0.2MPa

0.9MPa1.0MPa

∆p=1.0MPa

0.8MPa

0.6MPa

0.4MPa0.3MPa

0MPa

Oil film force FOILSolid contact force FSC

Oil

film

thic

knes

s h0 [

µm]

Thru

st fo

rce

F OIL

, FSC

[kN

]

0.9MPa

0.7MPa

0.5MPa

0.2MPa0.1MPa

0.3MPa0.4MPa

0.6MPa0.7MPa0.8MPa

0.5MPa

Orbiting speed N [rpm]

1000 2000 30000

100

200

300

400

500

600

700

Orbiting speed N [rpm]

Fric

tion

forc

e F v

s, F s

s [N

] Oil viscous friction force Fvs

Solid shearing force Fss

∆p=1.0MPa

0.8MPa

0.6MPa0.5MPa

0.3MPa0MPa

0.9MPa

0.7MPa

0.4MPa

0.2MPa 0.1MPa

1000 2000 30000

100

200

300

400

500

600

700∆p=1.0MPa

0.8MPa0.7MPa

0.6MPa

0.5MPa

0MPaR

esul

tant

fric

tion

forc

e F f

[N]

Orbiting speed N [rpm]

0.9MPa0.4MPa

0.3MPa0.2MPa

0.1MPa

1000 2000 30000

0.05

0.1 ∆p=0MPa

0.5MPa

0.4MPa

0.2MPa0.1MPa

1.0MPa

Fric

tion

coef

ficie

nt µ

Orbiting speed N [rpm]

0.3MPa 0.6MPa0.7MPa

0.8MPa0.9MPa

0 0.5 1

0.05

0.1

Fric

tion

coef

ficie

nt µ

N=300rpm600rpm

900rpm1200rpm

1500rpm1800rpm

Pressure difference ∆p [MPa]

2100rpm2400rpm

2700rpm3000rpm

3300rpm

3600rpm

Page 9: 論文題目 空調用スクロール圧縮機スラストスライド …1 論文題目 空調用スクロール圧縮機スラストスライド軸受の高性能潤滑に関する研究

9

最適設計計算

実機スクロール圧縮機実機スクロール圧縮機

圧力差∆p=0.6MPa

標準条件

旋回速度N=3600rpm

1000 2000 300040

50

60

70

80

90

100

Orbiting speed N [rpm]

Fric

tion

surfa

ce te

mp.

Tf [

degC

]

∆p= 0MPa: 0.1MPa: 0.2MPa: 0.3MPa: 0.4MPa: 0.5MPa:

0.6MPa: 0.7MPa: 0.8MPa: 0.9MPa: 1.0MPa:

実験で測定した温度 70℃

50 55 60 65 70 75 80 85 90

0.005

0.01

0.015

0.02

0.025

0.03

Oil temperature [oC]

Oil

visc

osity

[Pa

s]

Rat

ed c

ondi

tion

潤滑油粘度 0.013Pa s

0 0.5 1

50

100

150

Pressure difference ∆p [MPa]

Wed

ge a

ngle

α [×

10−6

rad]

FEM解析

くさび角度α =80×10-6

io rr≡γ半径比

旋回速度

1.5 2 2.5 30

50

100

150

200

Fric

tion

forc

e Ff [

N]

Radius ratio γ

N=6000rpm4800rpm

3600rpm2400rpm

1200rpm

4.1=γ 85.1=γ 80.2=γ

全摩擦力Ff

最小値

最適軸受半径比

摩擦損失動力で評価

1.5 2 2.5 30

0.5

1

1.5

Wf /

Wra

ted

Radius ratio γ

N=6000rpm

γ =2.

08

Con

vent

iona

l com

pres

sor

5700rpm5400rpm

5100rpm4800rpm

4500rpm4200rpm

3900rpm3600rpm3300rpm3000rpm2700rpm

2100rpm1800rpm1500rpm1200rpm

2400rpm

γ =1.

85

摩擦損失動力

現行スクロール圧縮機の標準運転旋回速度

における損失動力で無次元化

最適設計指針を検討

2000 3000 4000 5000 6000

1.5

2

2.5

3

Opt

imum

radi

us r

atio

γ opt

Orbiting speed N [rpm]

2.08

1.85

3600

rpm

旋回速度が大きいほど最適軸受半径が小さい

θ&××= obtff rFW

軸受半径比γ=2.08で動力損失が80%低減 4.1=γ 85.1=γ 08.2=γ

最適設計指針を検討

(1)摩擦雰囲気温度の変化(1)摩擦雰囲気温度の変化

(2)スラストプレート厚みの変化(2)スラストプレート厚みの変化

(3)軸受内外圧力差の変化(3)軸受内外圧力差の変化

50 55 60 65 70 75 80 85 90

0.005

0.01

0.015

0.02

0.025

0.03

Oil temperature [oC]

Oil

visc

osity

[Pa

s]

Rate

d co

nditi

on

潤滑油粘度変化

くさび角度変化

スラスト荷重くさび角度

変化

0.5 0.6 0.7 0.8 0.9 170

80

90

100

110

120

Wed

ge a

ngle

tan

α (×

10–6

)

Pressure difference ∆p [MPa]

Rat

ed c

ondi

tion

5 6 7 8 9 1070

80

90

100

110

120

130

140

Wed

ge a

ngle

tan

α (×

10–6

)

Thrust plate thickness [mm]

Rat

ed c

ondi

tion

0.01 0.015 0.02

1.5

2

2.5

3

Opt

imum

radi

us ra

tio γ o

pt

Oil viscosity µ* [Pa s]

2.32

1.73

N=6000rpm

N=3600rpm

2.05 1.882.08

Oil temperature Tf [oC]

60 65 70 75 80

摩擦損失動力および最適半径比

1.5 2 2.5 30

0.5

1

Wf /

Wre

ted

Radius ratio γ

µ* =0.009Pa s

Conv

entio

nal c

ompr

esso

r

0 .011Pa s0 .013Pa s

0 .015Pa s0.019Pa s

4.1=γ

温度が低い・潤滑油粘度が大きいほど最適軸受半径比が小さい

(1)摩擦雰囲気温度の変化∆p=0.6MPa、N=3600rpmにおける実測摩擦面温度

60℃から80℃の範囲でばらついている

50 55 60 65 70 75 80 85 90

0.005

0.01

0.015

0.02

0.025

0.03

Oil temperature [oC]

Oil

visc

osity

[Pa

s]

Rat

ed c

ondi

tion

1000 2000 300040

50

60

70

80

90

100

Orbiting speed N [rpm]

Fric

tion

surf

ace

tem

p. T

f [de

gC]

∆p= 0MPa: 0.1MPa: 0.2MPa: 0.3MPa: 0.4MPa: 0.5MPa:

0.6MPa: 0.7MPa: 0.8MPa: 0.9MPa: 1.0MPa:

1000 2000 300040

50

60

70

80

90

100

Orbiting speed N [rpm]

Fric

tion

surf

ace

tem

p. T

f [de

gC]

∆p= 0MPa: 0.1MPa: 0.2MPa: 0.3MPa: 0.4MPa: 0.5MPa:

0.6MPa: 0.7MPa: 0.8MPa: 0.9MPa: 1.0MPa:

1000 2000 300040

50

60

70

80

90

100

Orbiting speed N [rpm]

Fric

tion

surf

ace

tem

p. T

f [de

gC]

∆p= 0MPa: 0.1MPa: 0.2MPa: 0.3MPa: 0.4MPa: 0.5MPa:

0.6MPa: 0.7MPa: 0.8MPa: 0.9MPa: 1.0MPa:

1000 2000 300040

50

60

70

80

90

100

Orbiting speed N [rpm]

Fric

tion

surf

ace

tem

p. T

f [de

gC]

∆p= 0MPa: 0.1MPa: 0.2MPa: 0.3MPa: 0.4MPa: 0.5MPa:

0.6MPa: 0.7MPa: 0.8MPa: 0.9MPa: 1.0MPa:

1000 2000 300040

50

60

70

80

90

100

Orbiting speed N [rpm]

Fric

tion

surf

ace

tem

p. T

f [de

gC]

∆p= 0MPa: 0.1MPa: 0.2MPa: 0.3MPa: 0.4MPa: 0.5MPa:

0.6MPa: 0.7MPa: 0.8MPa: 0.9MPa: 1.0MPa:

ばねスラスト荷重Fs=200 ~ 1000N

(2)スラストプレート厚みの変化

5 6 7 8 9 1070

80

90

100

110

120

130

140

Wed

ge a

ngle

tan

α (×

10–6

)

Thrust plate thickness [mm]

Rat

ed c

ondi

tion

スラストプレートを薄くすると弾性変形しやすくなる

くさび角度と最適軸受半径比の関係

Wedge

固定スラスト板の厚みを変化

FEM解析

スラスト板厚みーくさび角度特性

1.5 2 2.5 30

0.5

1

Wf

/ Wre

ted

Radius ratio γ

α =80×10–6

Con

vent

iona

l com

pres

sor

90×10–6

100×10–6

110×10–6

120×10–6

摩擦損失動力および最適半径比

70 80 90 100 110 120 130

1.5

2

2.5

3

Opt

imum

radi

us ra

tio γ

opt

Wedge angle α (×10–6)

2.08

1.75

N=3600rpm

N=6000rpm

1.961.85

Page 10: 論文題目 空調用スクロール圧縮機スラストスライド …1 論文題目 空調用スクロール圧縮機スラストスライド軸受の高性能潤滑に関する研究

10

(3)軸受内外圧力差の変化

旋回スクロールのより安定した旋回運動

0.5 0.6 0.7 0.8 0.9 170

80

90

100

110

120W

edge

ang

le ta

n α

(×10

–6)

Pressure difference ∆p [MPa]

Rat

ed c

ondi

tion

背圧を増加 → 圧力差増加

くさび角度が変化

1.5 2 2.5 30

0.5

1

Wf

/ Wre

ted

Radius ratio γ

∆p =1.0MPa

Con

vent

iona

l com

pres

sor

0.9MPa0.8MPa0.7MPa0.6MPa

摩擦損失動力および最適半径比

0.5 0.6 0.7 0.8 0.9 1

1.5

2

2.5

3

Opt

imum

radi

us ra

tio γ

opt

Pressure difference ∆p

2.08

1.85

N=3600rpm

N=6000rpm

最適軸受半径比 → 変化しない

現行のスクロール圧縮機スラスト軸受

Thrust plate thickness

Friction surface

Friction surface

riro

ro

摩擦損失動力が最も小さくなる半径比が存在することを示した

最適設計計算

1.5 2 2.5 30

0.5

1

1.5

Wf

/ Wra

ted

Radius ratio γ

N=6000rpm

γ =2

.08

Con

vent

iona

l com

pres

sor

5700rpm5400rpm

5100rpm4800rpm

4500rpm4200rpm

3900rpm3600rpm3300rpm3000rpm2700rpm

2100rpm1800rpm1500rpm1200rpm

2400rpm

γ =1

.85

γ =1.4 γ =2.08

スラストスライド軸受の損失動力が80%減!

4.1=γ 85.1=γ 08.2=γ

0.01 0.015 0.02

1.5

2

2.5

3

Opt

imum

val

ue o

f rad

iul r

atio

γ

Oil viscosity µ* [Pa s]

2.32

1.86

70 80 90 100 110 120 130

1.5

2

2.5

3

Opt

imum

val

ue o

f rad

iul r

atio

γ

Wedge angle α (×10–6)

2.08

1.94

0.5 0.6 0.7 0.8 0.9 1

1.5

2

2.5

3

Opt

imum

val

ue o

f rad

iul r

atio

γ

Pressure difference ∆p

2.08

摩擦雰囲気温度 くさび角度 軸受内外圧力差

スクロール圧縮機スラストスライド軸受の温度、くさび角度、軸受内外圧力差を変化させた場合の軸受設計指針

これまで試行錯誤に頼っていた軸受設計を効率よく行うことができる

まとめ実用化からおよそ20年が経過したスクロール圧縮機

さらなる高性能化

ほとんど研究されていなかったスラスト軸受に着目

①摩擦摩耗実験を行い、潤滑メカニズム潤滑メカニズムを初めて明らかにした

1 0 0 0 2 0 0 0 3 0 0 00

0 . 1

Orb i tin g sp eed [rp m]

Coe

ffic

ient

of

fric

tion

µ

∆p= 0MPa:0. 1MPa:0. 2MPa:0. 3MPa:0. 4MPa:0. 5MPa:

0. 6MPa:0. 7MPa:0. 8MPa:0. 9MPa:1. 0MPa:

∆p= 0MPa ; Ft=0. 6kN

∆p=0. 2MPa ; Ft=2. 4kN

∆p=1. 0MPa ; Ft=9. 5kN

くさび状隙間による動圧効果

②潤滑理論解析を行いスラスト軸受の潤滑の本質スラスト軸受の潤滑の本質を明らかにした

ho

r cosθ

ψy

x

FS

Ff cosΘ (p+pc)rdθdr

Fpo

Fpi

Lpiv

1000 2000 30000

0.05

0.1 ∆p = 0 M P a

0 .5 M P a

0 .4 M P a

0 .2 M P a0 .1 M P a

1 .0 M P a

Fric

tion

coef

ficie

nt

µ

Orbiting speed N [rpm]

0 .3 M P a 0 .6 M P a0 .7 M P a

0 .8 M P a0 .9 M P a

修正レイ ノルズ方程式

くさび角度を与えた

剛体モデル

③最適設計計算を行い、スラスト軸受の設計指針スラスト軸受の設計指針を明らかにしたThrust plate thickness

Friction surface

Friction surface

riro

ro

1 . 5 2 2 . 5 30

0 . 5

1

1 . 5

Wf

/ W r

ated

Rad iu s rat io γ

N=6000r pm

γ =2

.08

Conv

enti

onal

com

pres

sor

5700r pm5400r pm

5100r pm4800r pm

4500r pm4200r pm

3900r pm3600r pm3300r pm3000r pm2700r pm

2100r pm1800r pm1500r pm1200r pm

2400r pm

γ =1

.85

4.1=γ 85.1=γ 08.2=γ

1000 2000 30000123456789

1011

8

∆p =1 .0 M P a

0 .8 M P a

0 .6 M P a

0 .4 M P a0 .3 M P a

0 M P a

Oil film fo rce FOI LS o lid co n tact fo rce FSC

Thru

st fo

rce

F OIL

, FSC

[kN

]

0 . 9 M P a

0 .7 M P a

0 .5 M P a

0 .2 M P a0 .1 M P a

理論・実験がよく一致 固体摩擦・粘性抵抗