超速応励磁装置 - hitachi磁気移相器制 ∪.d.c.占21.31る.721.078:る21.322.013.8...

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磁気移相器制 ∪.D.C.占21.31る.721.078:る21.322.013.8 る21.313.12.025:る21.31る.727:占21.314 サイリスタ増幅器を用いた 超速応励磁装置 =ighlnitia■Response Excitation SYStem Using MagneticallY Control】ed ThYristor Amplifier 最近,遠隔地に大形発電所を建設し,長距離大容量送電を行なうことが計画され ているが,それには系統の安定度確保のため極めて速い応答速度と高い頂上電圧を もつ発電機励磁装置が必要である。このような装置には,交流励磁機を設けこれを 電源としてサイリスタ装置により発電機の励磁電圧を直接制御する直結交流励磁機 サイリスタ励磁方式が最も優れていると考えられるが,交流励磁機の端子電圧が著 しくひずむため安定な制御が困難であるという問題があった。そこで,波形ひずみ の影響を受けにくい磁気移相器制御のサイリスタ増幅器を主体とした交流発電機励 磁装置を開発し,東京電力株式会社鶴見発電所で試験を行なった結果,優れた応答 と安定性を示し実用化の見通しを得た。 tl 最近,都市近郊での発電所の建設が困難になってきたため, 遠隔地に大形発電所を建設し長距離大容量送電を行なうこと が計画されている。従来,大谷竜交流発電機の電圧制御系で は,励磁電圧の応答速度が一一般に0.8秒程度であるが,東京 電力株式会社で現在計画中の1,000万kW級隔地発電所では, 送電線の長さが200kmにも達するので系統の安定度確保のた め,応答速度を0.06秒以内にし頂上電圧も1,200V程度にす る必要がある。 そこで東京電力株式会社と日立製作所は共同でこの方式の 開発を目標として検討を進め,磁気移和器制御のサイリスタ 増幅器を主体とした、超適応励磁装置を開発した。ここでは, ニの検討結果について述べる。 超速応励磁装置の計画 2.1超速応励磁装置 いま図l(a)のような送電系統を考える。このときの発電機 と負荷の電動機の公称誘起電圧間の相差角対発電機出力の関 係をみると,最初2回線で送電している場合は同図(b)のAの 曲線とf㌔で示した負荷の電力との交点に対応した相差角∂0で 送電されている。このとき1回線に短絡故障か生ずると,発 電機に大電流が流れ電機子反作用によって出力は低下し,B の曲線のようになる。そして発電機からの電気的出力が低下 するため発電機は加速され,相差角は∂0から∂1に向かって増 大して行き,慣性によって行き過ぎを生じ∂1を中心に振動し ながら収束する。しかし相差角の移動が大きく,∂′を超える ようなことがあると発電機の出力は相差角の増加とともに逆 に減少するので相差角はますます増大し,∂1に復帰すること ができず遂には脱調して系統の安定が保てなくなる。 このように短絡故障時などの過渡安定度から送電容量が制 限される傾向は,送電線が長くなるほどインピーダンスが増 し,初期の∂。が大きくなるので顕著に現われてくる。 ところで,故障発生後直ちに発電機の界磁を強力に励磁す ると故障後の発電機出力の曲線は図1(b)のCの曲線のように 斉藤 修* 松尾光昭** 斉藤国夫*** 木脇久勝*** 北村 哲**… 5ロブg∂ 0ざα椚〟 〃α~5以0 〃iJざ祉α丘∫ SαJJ∂ ∬祉†l~0 〟∠従犯たJ〃~ざαんαr∫址 J〃~αm址γロ Sα†耶んJ なるので相差角の移動が小さくて済み,安定度が向上し送電 容量を大きくすることができる。 このように発電機界磁の励磁を制御して,過渡安定度面 からの送電容量が低下するのを防ぐためには,ユニット容量 1,000MW碑の発電機の場合、発電機には励磁電圧の応答適 度が0.06秒以内で頂上電圧も1,200V程度にとった超適応励磁 装置が必要になるが,国内ではまだ実施された例がない0 こで,今回このような装置を試作し試験することになったも のである。 2.2 各種励磁方式 ところで,この超適応励磁方式には図2に示したような幾 っかの方式が考えられる。同図(a)のコミュテ【タレス励磁方 式では,発電機の電圧を検出して基準値と比較しサイリスタ を制御して交流励磁機の界磁を調整する。発電機の界磁電流 は交流励磁機の出力をシリコン整流器で整流して与えられる0 この方式ではサイリスタは,交流励磁機の界磁を制御するの に用いられ,発電機の界磁は時定数の大きい交流励磁機を介 して制御されるので,応答速度を速めることが困難である0 同図(b)のサイリスタ分巻自励方式では,発電機の界磁を発 電機自身の出力から変圧器を介してサイリスタで制御してい るので,速い応答速度が得られる。しかし,送電線が故障L て発電機の端子電圧が著しく低下した場合には,強力な励磁 が必要であるにもかかわらず,励磁が困難になる。 ところで,交流励磁機の出力を直接サイリスタで制御して 発電機の界磁に与える同図(c)の直結交流励磁機サイリスタ励 磁方式では,速い応答速度が得られ,しかも発電機の端子電 圧が低下した場合にも励磁が可能である。そこで,我々はこ の(C)方式を採用することにした。この交流励磁機とサイリス タを組み合わせた励磁装置は,アメリカG.E.社では既に製品 化している1)が,国内では初めてのものである。 2.3 直結交流励磁機サイリスタ励磁方式 この方式を更に詳細なブロック図で示すと,図3のように なる。すなわち,発電機の電圧と電流を検出して横流補償し *東京電力株式会社福島第一原子力発電所 **東京電力株式会社火力部 柑*日立製作析日立研究所 ****日立製作所大みか工場 49

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  • 磁気移相器制

    ∪.D.C.占21.31る.721.078:る21.322.013.8

    る21.313.12.025:る21.31る.727:占21.314.る3・07

    サイリスタ増幅器を用いた

    超速応励磁装置=ighlnitia■Response Excitation SYStem Using MagneticallY

    Control】ed ThYristor Amplifier

    最近,遠隔地に大形発電所を建設し,長距離大容量送電を行なうことが計画され

    ているが,それには系統の安定度確保のため極めて速い応答速度と高い頂上電圧を

    もつ発電機励磁装置が必要である。このような装置には,交流励磁機を設けこれを

    電源としてサイリスタ装置により発電機の励磁電圧を直接制御する直結交流励磁機

    サイリスタ励磁方式が最も優れていると考えられるが,交流励磁機の端子電圧が著

    しくひずむため安定な制御が困難であるという問題があった。そこで,波形ひずみ

    の影響を受けにくい磁気移相器制御のサイリスタ増幅器を主体とした交流発電機励

    磁装置を開発し,東京電力株式会社鶴見発電所で試験を行なった結果,優れた応答

    と安定性を示し実用化の見通しを得た。

    tl 緒 言

    最近,都市近郊での発電所の建設が困難になってきたため,

    遠隔地に大形発電所を建設し長距離大容量送電を行なうこと

    が計画されている。従来,大谷竜交流発電機の電圧制御系で

    は,励磁電圧の応答速度が一一般に0.8秒程度であるが,東京

    電力株式会社で現在計画中の1,000万kW級隔地発電所では,

    送電線の長さが200kmにも達するので系統の安定度確保のた

    め,応答速度を0.06秒以内にし頂上電圧も1,200V程度にす

    る必要がある。

    そこで東京電力株式会社と日立製作所は共同でこの方式の

    開発を目標として検討を進め,磁気移和器制御のサイリスタ

    増幅器を主体とした、超適応励磁装置を開発した。ここでは,

    ニの検討結果について述べる。

    回 超速応励磁装置の計画

    2.1超速応励磁装置

    いま図l(a)のような送電系統を考える。このときの発電機

    と負荷の電動機の公称誘起電圧間の相差角対発電機出力の関

    係をみると,最初2回線で送電している場合は同図(b)のAの

    曲線とf㌔で示した負荷の電力との交点に対応した相差角∂0で

    送電されている。このとき1回線に短絡故障か生ずると,発

    電機に大電流が流れ電機子反作用によって出力は低下し,B

    の曲線のようになる。そして発電機からの電気的出力が低下

    するため発電機は加速され,相差角は∂0から∂1に向かって増

    大して行き,慣性によって行き過ぎを生じ∂1を中心に振動し

    ながら収束する。しかし相差角の移動が大きく,∂′を超える

    ようなことがあると発電機の出力は相差角の増加とともに逆

    に減少するので相差角はますます増大し,∂1に復帰すること

    ができず遂には脱調して系統の安定が保てなくなる。

    このように短絡故障時などの過渡安定度から送電容量が制

    限される傾向は,送電線が長くなるほどインピーダンスが増

    し,初期の∂。が大きくなるので顕著に現われてくる。

    ところで,故障発生後直ちに発電機の界磁を強力に励磁す

    ると故障後の発電機出力の曲線は図1(b)のCの曲線のように

    斉藤 修*

    松尾光昭**

    斉藤国夫***

    木脇久勝***

    北村 哲**…

    5ロブg∂ 0ざα椚〟

    〃α~5以0 〃iJざ祉α丘∫

    SαJJ∂ ∬祉†l~0

    〟∠従犯たJ〃~ざαんαr∫址

    J〃~αm址γロSα†耶んJ

    なるので相差角の移動が小さくて済み,安定度が向上し送電

    容量を大きくすることができる。

    このように発電機界磁の励磁を制御して,過渡安定度面

    からの送電容量が低下するのを防ぐためには,ユニット容量

    1,000MW碑の発電機の場合、発電機には励磁電圧の応答適

    度が0.06秒以内で頂上電圧も1,200V程度にとった超適応励磁

    装置が必要になるが,国内ではまだ実施された例がない0 そ

    こで,今回このような装置を試作し試験することになったも

    のである。

    2.2 各種励磁方式

    ところで,この超適応励磁方式には図2に示したような幾

    っかの方式が考えられる。同図(a)のコミュテ【タレス励磁方

    式では,発電機の電圧を検出して基準値と比較しサイリスタ

    を制御して交流励磁機の界磁を調整する。発電機の界磁電流

    は交流励磁機の出力をシリコン整流器で整流して与えられる0

    この方式ではサイリスタは,交流励磁機の界磁を制御するの

    に用いられ,発電機の界磁は時定数の大きい交流励磁機を介

    して制御されるので,応答速度を速めることが困難である0

    同図(b)のサイリスタ分巻自励方式では,発電機の界磁を発

    電機自身の出力から変圧器を介してサイリスタで制御してい

    るので,速い応答速度が得られる。しかし,送電線が故障L

    て発電機の端子電圧が著しく低下した場合には,強力な励磁

    が必要であるにもかかわらず,励磁が困難になる。

    ところで,交流励磁機の出力を直接サイリスタで制御して

    発電機の界磁に与える同図(c)の直結交流励磁機サイリスタ励

    磁方式では,速い応答速度が得られ,しかも発電機の端子電

    圧が低下した場合にも励磁が可能である。そこで,我々はこ

    の(C)方式を採用することにした。この交流励磁機とサイリス

    タを組み合わせた励磁装置は,アメリカG.E.社では既に製品

    化している1)が,国内では初めてのものである。

    2.3 直結交流励磁機サイリスタ励磁方式

    この方式を更に詳細なブロック図で示すと,図3のように

    なる。すなわち,発電機の電圧と電流を検出して横流補償し

    *東京電力株式会社福島第一原子力発電所 **東京電力株式会社火力部 柑*日立製作析日立研究所****日立製作所大みか工場

    49

  • 738 日立評論 VO+・58 No.9(1976一-9)

    発電機

    ~1

    図l送電線故障時の発電寸幾出力

    安定度が向上する。

    PT

    √l、、-/ヽ_.__

    タービン 発電機

    シリコン

    整流器

    しや

    断器

    送電線

    ■■■-

    負 荷

    (電動機)

    ト姦-1変圧器l

    是政障点(a)送電系統

    Po

    /

    /

    \ヽ

    \B \

    \■\

    ざ0 ♂1 ♂r

    相差角

    (b)相差角対発電機出力特性

    超速応励磁装置を用いると▼故障時の相差角の移動が小さくなり.

    PT

    励磁用

    変圧器

    サイリスタ

    サイリスタ

    交流励磁機 副励磁磯 タービン 発電機

    PT

    サイリスタ

    し________J交流

    タービン 発電機 励磁機

    注:AVR=自動電圧調整器 PT=計器用変圧器

    図2 同期発電機のサイリスタ式励磁装置 起速応励磁装置には(c)の方式が最も適していると考えられる。

    電圧偏差を検出し,これを増幅して制御信号として移相器に

    与える。移相器はこの制御信号に応じて移相されたパルスを

    つくり,パルス増幅器でこれをゲート パルスに増幅してサイ

    リスタを制御して発電機の界磁を調整する。このほか,低励

    磁制限装置,電力安定化装置などを設けている。

    ところで,交流励磁機の端子電圧はサイリスタの転流によ

    り著しく波形が乱れる。すなわち,サイリスタ装置の出力の

    容量に比べ交流励磁機の容量を大きくするとこの波形ひずみ

    は小さくなるが,このようにすると励磁機が大形化し値段も

    高くなr)望ましくない0 そこで励磁機はできるだけ小さくす

    る必要があり,このような条件でサイリスタを位相制御する

    とサイリスタの転流で著しく波形が乱れるのである。

    50

    この交流励磁機の端子電圧波形は,図4に示すように計画

    した0 定格界磁電圧のときには,同図(a)に示した程度のひず

    みであるが,頂上電圧出力時には同図(b)に示したように波形

    が乱れる。

    したがって,サイリスタ ゲート制御装置にこのように乱れ

    た波形のものをそのまま用いると,ゲート制御装置がこの波

    形の乱れの影響を受け,更に波形の乱れを助長し安定な運転

    ができなくなることがある2)。

    したがって,本装置を実現する上で最も問題になるのは,

    交流励磁機の波形ひずみの影響を受けず,しかも応答速度が

    速くかつ信頼度の高い制御装置を得ることである。そこで,

    このような装置の開発を目標に特にサイリスタ増幅器のゲー

  • 磁気移相器制御サイリスタ増幅器を用いた超速応励磁装置 739

    パ ル ス

    トランス

    計器用

    変圧器

    変流器

    変流器

    タ‾ピン\発電機+.__

    横流補償

    低励磁

    制 限

    電力安定

    化装置

    電圧偏差

    検 出

    混 合

    増幅器移相器

    同期信号

    パ ル ス

    増幅器

    >>\/

    {

    図3 直結交流励磁機サイリスタ増幅器方式の自動電圧制御系

    の同期信号とするが,サイリスタの転流により著Lく波形がひずむ。

    直流電圧

    端子電圧

    制御省くれ角重なり角

    α≒70度

    以≒柑度

    サイリスタ㌻

    /交流励磁磯J

    _....._...-_.__..._.._._._.._J

    交流励磁機の端子電圧を移相器

    α≒20度

    址≒30度

    (a)定格電圧出力時

    図4 交;充励磁機の端子電圧波形 波形ひずみはこの程度になるよう計画した。

    ト制御装置を検討した。

    6】サイリスタ ゲート制御装置の開発

    3.1基本構成

    上述の目的を満足するものとして図5に示す構成のゲート

    制御装置を立案した。最も重要な移相器には回路が簡単で信

    束副生の点でも優れている平衡半波形の磁気移相器を]采用し

    た。磁気移相器はもともと波形ひずみの影響を受けにくいも

    のであるが,電源の波形ひずみが図4(b)に示した程度になる

    と問題である。そこで,移相範囲を広くすることも考えて同

    期電i原回路を設けることにした。このようにすると,フィル

    タは同期電子原回路に同期信号を与える程度の簡単なものでよ

    (b)頂上電圧出力時

    いことになる。

    つまり,交流励磁機の端子電圧をフィルタを通して正弦波

    にし同期インバータで方形波に変換する。そしてこれを電源

    として々滋気移相器で移相された波形を得るものである。

    固定移相器は最大の制御遅れ角に対応したいわゆるエンド

    パルスを確保するためのものである。移相器の出力はトラン

    ジスタ回路で波形整形した後,ゲート パルス増幅器に与え

    られる。ゲート パルス増幅器はサイリスタに立上r)が急峻で

    かつ広幅のゲート パルスを与えるよう,パルストランスを

    二つに分けサイリスタ スイッチを用いた立上りの速い狭幅パ

    ルスとトランジスタ スイッチを用いた広幅パルスを合成する

    ようにした。

    51

  • 740 日立評論 VOL.58 No.9(1976-9)

    同期信号 フィルタ

    (志望笠璧機)l

    皿図5 ゲート制御装置のブロック図

    フィルタ

    同期信号 C

    図6 移相器回路]婁続図

    して用いている。

    180

    忘go鞍…

    !習

    同期電源

    r

    制御信号

    磁 気

    移柏器

    固定磁気移相器

    △ 占磁気移相器を主体とした装置を立案Lた。

    同期電源

    1

    波形整形

    こ二[:コ

    狭幅パルス増幅器主サイ

    広幅パルス増幅器

    磁気移相器

    リスク

    上コゲート パルス

    仙J▲Vrノ・

    凡;

    尺エ

    +V上

    爪′

    Rβ■′

    且β‾

    バイアス

    回 路

    月c

    制御信号

    方形波状の同期電源で動作する高ゲインの平衡半波形磁気移相器に負帰還を施

    ×、・ゲイン≒40度/V

    口~ゲイン≒20度/V

    O一}ゲイン≒10度/V

    5 10 15

    制御電圧(V)

    0 10 20 30 40 50

    制御電洗(mA)

    (a)移相特性

    図7 移相器回路の特性 超速応励磁に必要な移相特性,時定数が得られる。

    52

    50

    40

    30

    ∈≡

    …軒

    雷20

    10

    ′イ

    ′′

    月j

    兄∫:貞婦遵抵抗

    短絡回路

    ′/

    ′/

    ′/ ′/イ

    ′イ

    20 40

    ゲイン(度/V)

    (b〉時定数

  • 磁気移相器制御サイリスタ増幅器を用いた超速応励磁装置 741

    所内電渡

    「‾

    ⊥+ 「

    「二

    基準電圧

    電圧偏差

    検 出

    ++

    アナログ計算横‾

    混 合

    増幅器

    ゲート

    制御装置

    +丁-

    試作磁気制御

    サイリスタ増幅器

    サイリスタ

    ブリ ッジ

    二+

    アナログ計算機

    「二発電機

    劃負荷

    (界磁を模擬)

    三+図8 試作装置による予備実験 アナログ計算機と組み合わせ,シミュレーションを行なった。

    3.2 移相器回路

    このゲート制御装置ではフィルタから磁気移相器までの移

    相器回路が中心となる。

    この部分の接続図は,図6に示すようなものである。フィ

    ルタは各種の形式のものを検討し、同図に示したような形式

    のLCフィルタとした。

    i欠に図3に示した混合増幅器からの制御信号のレベルから

    みて,才滋気移相器には高い感度が必要である。また応答速度

    を上げるため,スⅥパーマロイ系であるセンパーマックス鉄

    心(東北金属工業株式会社製)を使った高利得の平衡半波形の

    磁気移相暑削二,負帰還を施して用いた。石義気移相器の鉄心に

    センパーマックスを用いると高感度になるが,しかし正弦波

    イ0・1s卜

    0.03s

    基準電圧

    界磁電圧

    発電機電圧 [二三,:

    [100V

    1,000V

    0.23s

    図9 シミュレーション結果の一例 応答速度,頂上電圧など所要の

    性能を満足Lている。

    を電i原とすると飽和リアクタンスが大きいため,移相範囲が

    小さくなる。そこで,前述のように方形波を発生する同期電

    源回路を用い,更にコンデンサを設けることにより方形波の

    立上りの部分にパルス電圧を重畳するようにしたのである3)。

    この移和器回路の特性は図7のようになる。移相特性には

    バイアス回路は除いてあるが,移相範囲は所要の値を満足し

    直線性も大体良好でゲインも負帰還抵抗月Fを変えることで所

    要の値が得られた。また時定数は磁気移相器の短絡回路抵抗

    の値と負帰還後のゲインによって変わるが,所要のゲインの

    範囲で20~50msとなっている。

    3.3 予備実験

    この才滋気制御サイリスタ増幅器を用いた装置で,発電機を

    励磁した場合の応答を知るため,アナログ計算機で発電機を

    模擬し試作装置と組み合わせ,シミュレーションを行なった。

    図8がこの場合のブロック図である。ゲート制御装置とサイ

    リスタ ブリッジの部分は試作したセットを用いた。発電機は

    一次遅れ系で近似した。また交流励磁機の波形ひずみの影響

    については,電源側に適当なインピーダンスを接続してほぼ

    計画どおりの波形ひずみとした。

    実験結果のオシログラムの一例を図9に示す。これは基準

    電圧を約10%変化させた場合の応答で,界磁電圧は速い立上

    り時間で高い頂上電圧を出力している。実験の結果,試作し

    た装置は所定の波形ひずみのもとでも良好に動作し,応答速

    度も所要の値を満足する見通しを得た。

    B 現地試験

    本方式の交流発電機励磁装置を試作し,工場試験の後,東

    京電力株式会社鶴見発電所において,昭和48年9月に66MWの

    4号機と組み合わせ現地試験を行なった。装置を図川に示す。

    その結果,交流励磁機の波形ひずみが最大で図11(a)に示し

    たようになる条件でも波形ひずみの影響による問題は全くな

    く,インディシャル応答試験,周波数応答試験,電力安定化

    装置試験などの各種の試験を好調に終了した。インテナィ シャ

    ル応答試験では,同図(b)に示したように速い応答速度で高い

    頂上電圧を出力してしミる。また基準電圧の変化量を種々与え

    た場合にも応答速度は0.鵬秒以内で,所要の性能の超適応励

    磁が実現できた。

    本装置は,現地試験の後約1箇月系統に接続運転された

    が,これも順調に終了した。

    53

  • 742 日立評論 VO+.58 No.9(柑76-9)

    約…鵬㍑

    Ii事iii

    忘表

    書 さi暮芳書

    図10 交流発電寸幾励磁装置 AVR及びサイリスタ ゲート制御装置などのキューピクルを示す。

    基準電圧 10%

    ㌫表

    さill=

    ノ†

    ∨■

    250V/d

    界磁電圧

    発電機電圧

    (a)交流励磁横端子電圧波形

    図Il現地試験結果の一例 波形ひずみの下でも良好に動作L,所期の性能が得られた。

    l田 結 言

    以上,j滋気制御サイリスタ増幅器を用いた交流発電機超過

    応励磁装置の開発について述べた。要約すると,

    (1)東京電力株式会社で計画中の1,000万kW級隔地発恵所用

    の超過応励磁装置を得ることを目標に,交流励磁機の波形ひ

    ずみの影響を受けない安定な制御方式を開発した。

    (2)そして試作装置を東京電力株式会社鶴見発電所の66MW

    交流発電機と組み合わせて現地試験を行なった結果,所要の

    性能を満足した。

    これより,遠隔地の大形火力・原子力発電所の超適応励磁

    装置にも,本制御方式を適用できる見通しを得た。

    54

    0、04s Jo・1sト

    60V

    560V

    70V一■■■L

    0.2s13,610V

    11,850V

    13,200V

    (b)インディシヤル応答

    なお、本報告は東京電力株式会社と日立製作所との共同研

    究の一部であり,御子旨導,御援助いただいた関係各位に対し

    厚くお礼申しあげる。

    参考文献

    1)M.L.Crenshaw,W.J.Millerほか:"Althyrex Excitation

    System with Power System Stabilizer”IEEE Conference

    Paper No.70 CP563-PWR(1970)

    2)斉藤,木脇:「耳滋気制御サイリスタ増幅器を用いた交流発電機

    励磁装置+,第17回自動制御連合講演会2011(昭49-11)

    3)木脇,黒滝ほか:「オーバーシュート付方形波電子原による磁気移

    相器特性の改善+,昭和49年電気学会全国大会484(昭49-3)