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243 課題 13 顕微鏡と検鏡法 Section 13.1 はじめに 顕微鏡 (microscope) は微小物体を拡大して観察する装置で,ふつうは光を用いる光学顕微鏡 (light microscope) をさす.一般には,集光器 (コンデンサー)・対物レンズ・接眼レンズの 3 光学系よりなる ものを光学顕微鏡といい,1~数個のレンズを組合わせた単一光学系よりなる拡大鏡 (magnifier) とは 区別する.光学顕微鏡には次のような種類がある. 形式による分類 : 正立顕微鏡 試料の上方から観察する通常のタイプ. 倒立顕微鏡 試料の下方に対物レンズを置き,下方から観察するタイプ.シャーレ中の培養試料な どを観察するのに用いられる. 照明方向による分類 : 透過照明 試料を透過した光を観察する.生物顕微鏡で一般的な方法. 反射照明 試料に反射した光を観察する.金属,鉱物などの観察に用いる. 観察する光の扱いによる分類 : 明視野観察 試料を透過してきた光を,バックグラウンドの光とともにそのまま観察する最も一般 的な方法.生細胞のような無色透明な試料は観察しにくく,通常は染色を行って観察するこ とが多い (ただし,一般的な染色法では細胞は死んでしまうことになる)暗視野観察 特殊な集光器を用いて,試料からの反射・散乱光のみを観察する方法.顕微鏡本来の 分解能より小さなものでも,そこから反射・散乱される光によって観察できる. 位相差観察 試料を透過してきた光と,バックグラウンドの光との間に生じる位相のずれを検出す ることにより,無色透明な試料の細部を観察できるようにする方法. 微分干渉観察 互いに直交する偏光を用い,試料を透過した後起こる干渉を利用して,無色透明な 試料を観察できるようにする方法. 蛍光観察 蛍光色素で試料を染色し,これに励起光をあてて生ずる蛍光を観察する方法.色素に は,細胞・組織の特定の部分 (成分) に特異的に結合するものを選ぶことができ,これにより 物質の分布や特定の構造を選択的に観察することができる.

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課題 13

顕微鏡と検鏡法

Section 13.1

はじめに

顕微鏡 (microscope) は微小物体を拡大して観察する装置で,ふつうは光を用いる光学顕微鏡 (lightmicroscope)をさす.一般には,集光器 (コンデンサー)・対物レンズ・接眼レンズの 3光学系よりなるものを光学顕微鏡といい,1~数個のレンズを組合わせた単一光学系よりなる拡大鏡 (magnifier)とは区別する.光学顕微鏡には次のような種類がある.

形式による分類 :

正立顕微鏡 試料の上方から観察する通常のタイプ.

倒立顕微鏡 試料の下方に対物レンズを置き,下方から観察するタイプ.シャーレ中の培養試料などを観察するのに用いられる.

照明方向による分類 :

透過照明 試料を透過した光を観察する.生物顕微鏡で一般的な方法.

反射照明 試料に反射した光を観察する.金属,鉱物などの観察に用いる.

観察する光の扱いによる分類 :

明視野観察 試料を透過してきた光を,バックグラウンドの光とともにそのまま観察する最も一般的な方法.生細胞のような無色透明な試料は観察しにくく,通常は染色を行って観察することが多い (ただし,一般的な染色法では細胞は死んでしまうことになる).

暗視野観察 特殊な集光器を用いて,試料からの反射・散乱光のみを観察する方法.顕微鏡本来の分解能より小さなものでも,そこから反射・散乱される光によって観察できる.

位相差観察 試料を透過してきた光と,バックグラウンドの光との間に生じる位相のずれを検出することにより,無色透明な試料の細部を観察できるようにする方法.

微分干渉観察 互いに直交する偏光を用い,試料を透過した後起こる干渉を利用して,無色透明な試料を観察できるようにする方法.

蛍光観察 蛍光色素で試料を染色し,これに励起光をあてて生ずる蛍光を観察する方法.色素には,細胞・組織の特定の部分 (成分)に特異的に結合するものを選ぶことができ,これにより物質の分布や特定の構造を選択的に観察することができる.

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244 課題 13 顕微鏡と検鏡法

これらのうちで最もふつうに用いられている生物顕微鏡は,正立・透過・明視野型のものである.ここでは,自然科学総合実験で用いられる生物顕微鏡,オリンパス CHT型について,顕微鏡の構造,機能,使用法について解説する.さらに,観察したものをスケッチする上での留意点についても触れる.

Section 13.2

顕微鏡の構造と各部の名称・機能

図 13.1に顕微鏡の各部の名称を示した.

●●  13.2.1器械的装置 ●●鏡脚 (base; foot) : 光源ランプが内蔵されている.そのためのパワースイッチと調光ダイヤルがある.

鏡柱 (arm; pillar) : レンズ部分を支える.

鏡筒 (body tube) : 双眼鏡筒で眼幅の調節が出来る.

ステージ (stage,戴物台) : 標本を載せる部分.

粗動焦準ハンドル (マクロスクリュー)(coarse adjustment; macroscrew)

微動焦準ハンドル (ミクロスクリュー)(fine adjustment; microscrew)

対物レンズ交換装置 (レボルバー)(revolver; objective changer) : 4個の対物レンズ取り付け穴がある.

粗動ストッパーレバー (stopper) : 片側の粗動ハンドルの基部にあり,上に押し上げると,粗動ハンドルが上方向には動かなくなる.

クリップ (stage clip; clamping lever) : 本実験のものはメカニカルステージと呼ばれるスライド移動装置の一部となっており,ステージ下のハンドルによって,プレパラートを X軸 Y軸に沿って移動することができる.

●●  13.2.2光学的装置 ●●光源 (light) : 近年,明るく劣化の少ないハロゲンランプや,さらに発熱の少ない LEDが普及してきて

いるが,本実験のものはタングステンランプである.

開口絞り (aperture stop) : 下記コンデンサーと一体となっており,虹彩絞り装置 (iris)によりレンズに入る光量を調節する.

集光器 (コンデンサー)(condenser) : 光源からの光を標本に集光するためのレンズであり,ステージ下部のハンドルにより上下動する.レンズ上部には開口数 (視野の明るさや対物レンズの解像力と関係あり)が刻まれている.本実験のものは 1.25である.

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13.2. 顕微鏡の構造と各部の名称・機能 245

図 13.1: オリンパス CHT型顕微鏡の各部の名称

対物レンズ (objective; objective lens) : 収差 1の処理の仕方により,次のような種類がある (後へ行くほど性能は高く値段も高い).

アクロマート (色消しレンズ)(achromatic obj.) : 一般用.C線 (赤)・F線 (青)の 2色に対し色収差補正,d線 (橙)に対し球面収差補正.視野周辺部ではピントは甘くなる.一般用ハイゲンス接眼レンズと併用する (本実験で使用).

プランアクロマート (plan-achr. obj.) : レンズ胴に planの記号付き.色収差の除去に加えて,像面湾曲を除去し,周辺部のボケが補正されているため平坦性が良く,広視野観察や写真撮影に使用.

アポクロマート (apochromatic obj.) : レンズ胴に Apo.の記号付き.超低分散光学ガラス (extralow dispersion; ED)を組み合わせて 3線 (C, Fに加えて g線 (紫))の色収差を可能なかぎり補

1レンズにより結像される像の理想からのずれ.光の波長に由来する色収差と,単色光でも起こる単色収差がある.

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246 課題 13 顕微鏡と検鏡法

正してあり,性能は最高.

その他使用目的による特殊レンズ : ノーカバー (記号 NC,カバーグラス不要で塗沫標本観察用),長焦点 (記号 Cまたは LWD,シャーレの観察に使用,長作動距離),位相差用,偏光用,落射用などがある.これらの対物レンズはさらに乾燥系 (dry system: 1.2×~40×) と液浸系 (immersion system:シダー油,アニソールなどによる油浸系 oil immersion system と,水による水浸系 waterimmersion systemとがある.ふつう 100×)に大別される.それぞれの系のレンズは互いに転用できない.本実験で使用するものは,すべて乾燥系である.

図 13.2に,本実験で用いる対物レンズに記されている記号の意味を示した.

図 13.2: 対物レンズに示されている各種記号.開口数については 13.2.3を参照.

プリズムボックス (prism box) : プリズムにより光路を 45度に調整する装置.

接眼レンズ (ocular; ocular lens; eye-piece) : 視野絞り (field stop)が内蔵され,見える面積を限定することで対物レンズの収差補正の欠陥を補っている.接眼レンズには次のような種類がある.

ハイゲンス (Huyghenian eyepiece) : Hの記号付きか無記号.一般用低倍対物レンズと併用 (本実験の 5×はこの型).

フォト : 記号 P付き,色収差・非点収差補正,視野平坦,高倍対物レンズと併用 (本実験の 15×は,この型).

コンペンゼーション (記号 K)またはハイアイポイントコンペンゼーション (記号 HK) : 色収差・非点収差補正,高倍対物レンズと併用.

広視野 : 記号WF付き,観察視野が広く,射出瞳 (eye point)の位置が高いので,眼鏡をかけたまま使用することができる.色収差・非点収差補正.本実験の 10×はハイアイポイントコンペンゼーション広視野 (CWHK)である.

視度差調節環 (focusing ring) : 左側の接眼レンズ基部に目盛りのついたリングがあり,左側鏡筒のみの焦準を調節できる.これにより左右の視度の調節を行う.

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13.2. 顕微鏡の構造と各部の名称・機能 247

●●  13.2.3顕微鏡の性能に関わる概念 ●●顕微鏡の性能を規定するいくつかの指標について概説する.

倍率 (magnification)

倍率は標本の大きさと像の大きさの比で定義される.顕微鏡の場合,総合倍率は対物レンズの倍率と接眼レンズの倍率の積となる.倍率の大きなレンズを用いれば,あるいは,レンズを重ねていけば,倍率はいくらでも上げることができる.しかし,これは,どんな細部をも観察できることを意味しない.次項以降を見よ.

開口数(numerical aperture,NA)

対物レンズ,コンデンサーの性能を示す指標で,

NA = n · sin θ (13.1)

n: 標本と対物レンズ間の媒体の屈折率で空気は 1,オイルでは 1.515,θ: 光軸と,一番外側を通る光線とがなす角

で定義される (図 13.3参照).正弦の値は 1以下なので,乾燥系対物レンズの NAは 0.05~0.95,液浸系では水浸系が 0.1~1.25で,油浸系が 0.85~1.40である.分解能(次項)は NAに逆比例するので,高倍率ほど NAは大きい.そのためには θと nとを大きくする必要があり,θを大きくするために集光器に工夫をこらし,nを大きくするために液浸法を用いる.同単独倍率なら,NAが大きいほど優秀なレンズということになる.本実験で用いている対物レンズの NAは表 13.1に,またコンデンサーレンズの NAは 13.2.2光学的装置の項に示してある.

図 13.3: 開口数

分解能 (resolution),あるいは解像力 (resolving power)

分解能とは顕微鏡など多くの結像光学系において,その系が見分けうる 2点間の最小距離のことである.光束がレンズやスリットなどの光学系を通過すると,その光束は,回折により拡散される.その

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248 課題 13 顕微鏡と検鏡法

ため,点光源から発せられた光でも,レンズを通して結像させると,その像は点とはならずに,光の円(エアリーディスク Airy disk)が外周を幾重もの暗い環(暗環)と明るい環(明環)に交互に取り囲まれた模様として観測される 2.ある光源由来のエアリーディスクが,他の光源のエアリーディスクと重なってしまうと二つの像は融合して観測され,結像上では二つは区別できなくなる.レイリー(LordRayleigh, John William Strutt)は,一つの回折像の中心が他の回折像の第一暗環の帯の中心に位置した時を,二つの像が分かれて観測されるぎりぎりの条件として,以下の式を導いた.

δ = 0.61λ

NA(13.2)

ただし,δ:分解能,λ:光の波長,NA:開口数である.

分解能が開口数と光の波長にのみ依存し,倍率とは無関係であることが分かる.高倍率のレンズであってもその開口数が小さければ,ぼやけた大きな像が得られるのみとなる.上式は,試料や光源,レンズなどが理想的な状態であることを仮定して導かれたものであるが,光学顕微鏡の分解能はこれによく従うことが知られている.可視光の波長は,400~700 nm程度であり,対物レンズの NAは最大で 1.4程度なので,顕微鏡の解像力は約 0.2 µm (200 nm)が最高である(ヒトの眼に最も感度の高い波長である550 nmで計算).

焦点深度 (focal depth; penetration)

単純な幾何光学からは焦点の合う位置は厳密に1点に決まることになるが,実際には以下に挙げる様々な要因によって,ある幅の範囲は焦点が合っていると見なすことができる.この範囲を焦点深度という.焦点深度の値が大きければ同一の焦準で標本の表層から深部まで一度に観察することができるが,この値が標本の厚みよりも有意に小さければ,標本の厚みのうちの一部にしかピントは合っていないことになる.

物理光学的な焦点深度光は波であるために集光点においても完全に1点に集光することはありえず,ある範囲に決まった強度分布で広がることになる.光が最小のスポットとなる位置の前後では,スポットの大きさの変化が小さくなるため,ある許容量を設ければその範囲では焦点が合っていると見なすことができる.最小のスポットサイズ w0は,w0 = 2λ/(π ·NA)で与えられる.この前後のスポットサイズ変化は2次関数で近似できるとされるので,焦点から距離 d離れた位置でのスポットサイズ w

は,w2 = w20 + (2NA · d)2 と表すことができる.したがって,焦点深度 ∆は

∆ = aλ

NA2 (13.3)

係数 aはスポットの大きさの変化の許容量によって決まる.

同じ式は光の波面収差を用いても導出できる.

幾何光学的な焦点深度幾何光学的には焦点は幅を持たないと上述したが,実際にはヒトの目の分解能を考慮すれば,ある範囲は焦点が合っていると見なすことができる.この範囲は許容錯乱円と呼ばれ,その直径を

2明暗の光環模様はエアリーパターンと呼ばれる.いずれも発見者 George Biddell Airyにちなんだ名称である.

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13.2. 顕微鏡の構造と各部の名称・機能 249

wとすると,ある点光源からの結像が wに収まる範囲が焦点深度 ∆となり,以下の式で表すことができる.

∆ =w

M · NA(13.4)

M: 総合倍率

wの大きさは人によって異なることになるし,撮影する場合にはカメラの CCDの素子の大きさや光学系によって変わることになる.

焦点調節能力によって生じる焦点深度ヒトの目は無限遠から近接点までの位置の異なる物体に対して焦準することのできる調節能力を持っているため,目視で観察する場合にはこの能力による焦点深度が生じうることになる.明視距離を 250 mmとすると,焦点深度 ∆(mm)は

∆ =250M2 (13.5)

M: 総合倍率

と見積もられる.

焦点深度を表す式以上述べたように,焦点深度にはヒトの目の解像力,調節能力などが要素として入ってくるため,単純に計算することはできない.

顕微鏡の焦点深度については古くはアッベ (Abbe)により提唱されているが,現在は以下の二つの式が参照されることが多いようである.

ベレック (Berek)の式

∆ =12

λ

NA2 +ω × 250000

M · NA(13.6)

ただし,ωは目の分解能で,通常は 0.0014とする(目の視角を 5分とする).

マーチン (Martin)の式

∆ =nλ

NA2 +n

7M · NA(13.7)

ただし,nは標本と対物レンズ間の媒体の屈折率で,空気の場合 1.

いずれの式も,物理光学的焦点深度と幾何光学的焦点深度の和となっているが,それぞれの寄与の見積りはいくらか異なる.したがって,それぞれの式から算出される焦点深度の値は異なるが,いずれにしても,解像力や倍率を高めると焦点深度は急激に浅くなる.

本実験の 40倍の対物レンズ (NA = 0.65)で,それぞれ計算すると,1.997,1.302(いずれも µm)となる.標本の厚みは 10 µm以上はあるから,高倍率対物レンズを使うときには,微動を上下して,標本の各層を焦準して立体的に観察する必要がある(フォーカス・スキャンという技術である).

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250 課題 13 顕微鏡と検鏡法

像の明るさ (lightsomeness)

像の明るさは,光源の明るさだけでなく,倍率,開口数に影響される.すなわち,

I = Io(NAM

)2 (13.8)

I: 像の明るさ,Io: 標本面の明るさ,NA:開口数,M: 総合倍率となる.

作動距離,または作業距離 (working distance, WD)

作動距離WDは一般にレンズ先端から焦点までの距離を指す.すなわち,フォーカスの合った状態での,レンズ先端から物体までの距離となる.ただし,顕微鏡においては,より実用的に,対物レンズ先端からカバーグラス上面までの距離をWDとしている(カバーグラスを用いる対物レンズの場合).対物レンズの倍率が高くなると(NAが大きくなると)WDは急激に小さくなる.表 13.1に示すように,40倍の対物レンズではWDは 0.5 mm程度しかない.

対物レンズの性能表

本実験で用いている対物レンズの性能を表 13.1に示した.高倍率の対物レンズほど開口数が大きいため,同一倍率であるなら,対物レンズに高倍率のものを,接眼レンズに低倍率のものを用いた方がよいことになる.

表 13.1: 対物レンズの性能表

種類 単独倍率 開口数 (NA) 作動距離 (WD) (mm) 焦点距離 (mm)

アクロマート 4× 0.10 29.00 31.05

アクロマート 10× 0.25 6.30 16.45

アクロマート 40× 0.65 0.53 4.59

●●  13.2.4取り扱い上の注意事項 ●●顕微鏡は精密器械であるから,取り扱いは慎重にかつ細心の注意を要する.

1. 顕微鏡を収容箱のままで持ち運ぶときには,必ず両手で箱の底をかかえること.取手を片手でぶらさげないこと.取手のしめネジがゆるんで床に落とす危険がある.

2. 顕微鏡自体を持ち運ぶときにも両手を使う.片手で鏡柱をにぎり,他方の手で鏡脚を下から支える.

3. 顕微鏡ならびに付属品は,落下を防ぐため机の端には置かないこと.

4. 接眼レンズはホールダー (レンズ棚)ごと収容箱から出し,使用しないレンズは,必ずホールダーにもどしておく.接眼レンズを横倒しにして机上に置いてはいけない.また,接眼レンズを外したまま顕微鏡を放置すると,プリズム内にほこりが入り,これは鏡筒部分を分解しないと取り除くことができない.常に接眼レンズかキャップをはめた状態にしておくこと.

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13.3. 顕微鏡操作法 251

5. 対物レンズを机上に置くときは,必ずネジ面を下にして立てて置くこと (本実験では対物レンズを外す必要はほとんどない).

6. レボルバーの回転は,レボルバーの縁に指をかけて,慎重に行うこと.対物レンズに指をかけてまわすと,光軸を狂わし顕微鏡を廃品にすることがある.

7. 絞りは繊細な金属部品を組み合わせたものである.開閉はゆっくりと行ない,手荒く操作しないこと.

8. 顕微鏡を格納するときには,低倍率の対物レンズ (もしくはレンズのないところ)が光路上にくるようにし,さらに粗動ストッパーをかけておくこと.

9. レンズは顕微鏡の生命であるから,接眼・対物・コンデンサーともに,レンズ面に指でふれたり,水・薬品をつけたり,布や紙で手荒くこすったりしないように,取り扱いと保存には十分に注意すること.レンズがちりその他のもので汚れたときには,スタッフに申し出る.一般にはレンズの汚れは,まずブロワーで吹き飛ばし,それでもとれないものは,レンズペーパーで軽く拭く.染色液などの汚れは,キシロール・石油ベンジンなどで拭きとる (これらを混合した専用のクリーナー液がある).

10. 接眼ミクロメーターを扱う際には,ミクロメーターのガラス面に直接指で触れてはいけない.指紋が付き,観察に著しく支障をきたす.ミクロメーター上にちりやほこりがついた場合もきわめて見にくくなる.レンズペーパーなどを用いるようにする.また,接眼ミクロメーターは,小さい部品であるが高価なものである (1枚¥6,000程度).落として縁を欠かないように注意.

11. 実習の前後には,必ず顕微鏡とその付属品とを点検し,汚れのほか破損,付属品の忘失・紛失などの有無を確かめ,異常があれば直ちにスタッフに申し出ること.

Section 13.3

顕微鏡操作法

●●  13.3.1検鏡の準備 ●●1. 顕微鏡を最も見やすい位置におく.椅子の高さを調節する.

2. 電源コードをコンセントに接続する.

3. 接眼レンズは 10×から始める.

• 低い倍率から観察を始め,順次倍率を上げていくのが基本的な使用法であるが,本実験で用いている 5×の接眼レンズは視野が狭く,あえて低倍率で観察する必要がある時にのみ用いればよい.通常は 10×の接眼レンズから観察を始めた方がよい.

4. 対物レンズも最も倍率の小さい 4×を光路上におく.

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252 課題 13 顕微鏡と検鏡法

5. 光源スイッチを入れ ( Iマークが押し込まれた状態が入),調光ダイアルを回して光量を調節する(通常,ダイアルの目盛 8程度が適切であるが,対物レンズの変倍率によって,光量を変化させる).

6. 粗動ストッパーを緩める.

●●  13.3.2検鏡の実施 ●●1. ステージを下げ,片方の手でクリップの弓型レバーを開き,プレパラート (標本)をクリップの固定側にあたるまでさしこみ,静かに弓形レバーを戻して標本を固定する.カバーグラス内の標本が穴の中央にくるように,メカニカルステージで移動させる.

• スライドグラスおよびカバーグラスは,当該顕微鏡の規格にあったものを使用すること.本実験のものでは,スライドグラスは厚さ 0.9~1.2 mm (JIS R 3703:1998),カバーグラスの厚さ 0.15~0.18 mm (JIS R3702-1996 No. 1-S)である.

• スライドグラス上の余分の水分は,表裏ともにきれいに拭きとること.スライドグラス下面についた水分は,スライドグラスを動かす妨げになるし,上面の水分は対物レンズを汚す危険がある (染色剤などの場合はレンズをだめにしてしまう可能性すらある).カバーグラス上についた水分は除去が困難であるから,カバーグラスをはずして新しいものと取りかえるとよい.

2. 対物レンズを横から見ながら,粗動ハンドルを静かにまわしてステージを上げ,カバーグラスと対物レンズとの距離を作動距離内におく (作動距離については表 13.1参照).

3. 眼鏡をはずしてから (乱視者はかけたまま),接眼レンズをのぞきながら,粗動ハンドルをまわしてステージを下げてゆき,標本におおよその焦点を合わせる.さらに微動ハンドルによって正確に焦準する.

• 粗動ハンドルでステージを上げる (標本とレンズを近付ける)時には,レンズを横から見ながら行い,レンズをのぞいている時はステージは下げる (標本とレンズを遠ざける)方向にのみ動かすという原則を守ること.むろん,標本とレンズの衝突を防ぐためである.

4. 両接眼レンズを覗いて,両眼の視野が一致するよう眼幅調節を行う.目盛りの数字を記録しておけば,次回からの調節が簡単になる.

5. 視度差調節環によって視度差を調節する.右目で右接眼レンズをのぞき,正確に焦準する.つぎに左目で左接眼レンズをのぞきながら,視度差調節環をまわして焦準を行う.これによって両眼とも焦点のあった状態となる.このときの目盛りを記録しておくと,次回から便利である.

• 検鏡は最初は低倍率で行う.一般に,低倍対物レンズほど視野が広くかつ明るく,また焦点深度が深いので,標本を発見しやすく,また焦点も合わせやすい.40×の対物レンズで直接焦準することは事実上不可能であり,プレパラートやレンズを破損する危険もある.40×の対物レンズの作動距離は 0.5 mmほどしかない (表 13.1の作動距離を見よ).

6. さらに高倍で観察する場合には,標本を視野の中央に位置させ,ステージを動かさずにレボルバーを回転させて,目的の倍率のレンズに換えてから,微動で焦点を合わせる.

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13.3. 顕微鏡操作法 253

• 変倍操作には,対物レンズと接眼レンズの交換の二方法があるが,解像力はほとんど対物レンズに依存するため,接眼レンズの変倍操作は補助的なものである.対物レンズ 10×を 40×に換えた場合には,微動の 1/2回転以内で焦準できるよう設計されている.この操作で焦点が合わないときには,低倍対物レンズに戻して正確に焦準しなおす.接眼レンズを交換する場合には,そのままでほぼ焦点が合っているが,さらに微動で正確に焦準する.

7. 多くの場合,標本の全域を一度に視野に入れることは出来ない.そのような場合には,標本の下辺(もしくは上辺)の左端(もしくは右端)を視野にいれ,そこからメカニカルステージを操作することで,視野を横方向に移動させ,標本の逆の端までの区画をつぶさに観察する.端にたどりついたら視野を前方(もしくは後方)に適度にずらし,先ほどとは逆方向に視野を移動させ,端まで観察を行う.この操作を繰り返し行って,標本の全域をくまなく観察し,目的の標本または構造のうち,最良のものを探し出し,それを視野の中心にもってきてから検鏡する.また,高倍対物レンズを使用する場合には,高倍率ほど焦点深度が浅いので,微動を絶えず動かし,立体的に観察しなければならない.

• 視野の広さは総合倍率に逆比例するので,高倍率ほど視野は狭くなる.したがって各対物レンズについて光軸のくせ (中心部からのズレ)を調べておくと,高倍率に換えたときに対象物を探しやすい.

• 高倍率の対物レンズで検鏡中に標本を見失ったときには,低倍率の対物レンズに戻し,あらためて標本を探す.視野の狭い高倍率での再発見は著しく困難である.

8. 標本が透明であり,染色しない場合には,開口絞りをしぼってコントラストを増す必要がある.絞りの開度をさまざまに変えて,明るさとコントラストを変え,最も観察に適した状態を見つける.光量調節ダイアルによって光量を絞っても,コントラストは変化しないので注意せよ.

9. プレパラートを交換する際には,レボルバーを回転して低倍率の対物レンズ (または対物レンズのないところ)を下にして,プレパラートとレンズの距離を取ってから行う.この方法でプレパラートの交換を行えば,焦準操作は実験中1回ですむ.むろん,粗動ハンドルでステージを下げてプレパラートを取り外してもよいが,その場合にはふたたび焦準操作が必要になる.粗動ストッパーを用いてこの操作を簡単にする方法もある.

10. 検鏡後は,低倍率の対物レンズ (または対物レンズのないところ)を下に合わせ,ステージを下げて粗動ストッパーをかけて格納する.

• 顕微鏡を収容箱に格納する際は,顕微鏡の清掃や付属品の点検を忘れないこと.また,プリズム内にほこりが入るのを防ぐため,必ず接眼レンズかキャップをはめたままにしておく.

• 検鏡中に顕微鏡に異常が起こったら,直ちにスタッフに申しでること.自己流の処置を勝手に施してはならない.特に,レンズの汚れを堅い布や紙で拭き取ると,レンズのコーティングを傷つけて,レンズを使用不能にしてしまう.

●●  13.3.3接眼ミクロメーターによる計測法 ●●接眼レンズには視野数 (number of view)があり (H5×:19,P15×:9.9,CWHK10×:18),これを併用

する対物レンズの単独倍率で割ると,視野の直径 (視野径)が得られるので,標本の大体の大きさを推定することができるが,長さを正確に測定するには接眼ミクロメーターを用いる.

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254 課題 13 顕微鏡と検鏡法

接眼ミクロメーター (eyepiece/ocular micrometer)は円形のガラス板に 10 mmの長さを 100等分した目盛りを刻んだもので,接眼レンズ筒内部の視野絞り板上に,刻み目を下にしてのせ,接眼レンズを鏡筒にはめて使用する.接眼ミクロメーターの1目盛りが,実長ではどのくらいに相当するかは,対物ミクロメーターを用い

て算出しなければならない.ここでは,本実験に用いるオリンパス CHT型で実際に計測した値から算出した,接眼ミクロメータの目盛りが示す実長を示した下表を用いて,実長を算出せよ.

表 13.2: 接眼ミクロメーターの 1目盛の示す実長 (µm)

レンズ CWHK10× P15×4× 33.3∗ 25

10× 13.3∗ 10.0

40× 3.33∗ 2.5

*CWHK10×の接眼レンズでは,それぞれ 3目盛りで 100,40,10 µmとなる.

●●  13.3.4スケッチ ●●なぜスケッチか 現在では,顕微鏡で観察した像は,カメラによって撮影・記録することが一般的になってきており,研究の現場でスケッチによる記録を行うことは稀になっている.スケッチよりもカメラ撮影の方が正確に,かつ効率良く記録できることはもちろん,近年発達した画像処理技術により,記録像をさまざまに加工できることも大きなメリットである.しかし,スケッチは,対象物をしっかりと観察しないと記録できないという意味で,初学者にとって

は,顕微鏡観察の非常に効果的な訓練になる.しっかりとスケッチができるような観察力があってはじめて,カメラ撮影するに足る像がどんなものかがわかるのであり,漫然と撮影した像からは十分な情報は得られない.諸君には,いわば「しっかりと見る」ためにスケッチを行ってもらうのだと考えられたい.したがって「絵の上手い下手」は問題ではなく,いかに正確,精密に,丁寧に描くかが重要である.この他に,高倍率での観察で,焦点深度が浅いため単一の焦点位置ではわからない標本の立体性を,

焦点位置を細かく変えて観察した結果を頭の中で再構築して立体物として記録できるという,カメラ撮影にはない利点もある (現在,この問題を解決したレーザー共焦点顕微鏡が発達してきているが,非常に高価な装置である).

スケッチに用いる用具

• 用紙: 表面の滑らかなケント紙を用いる.表面のざらついたいわゆる画用紙ではいけない.

• 鉛筆: Hから 2Hの硬い鉛筆を,よく先端を尖らせて用いる.筆圧の高い者はさらに硬い 3H, 4Hといった鉛筆を用いてもよい.

• ものさし: スケッチそのものはフリーハンドで行うが,スケールを書き入れるさいにはものさしがあった方がよい.ごく一般的なもので構わない.

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13.4. 暗視野照明 255

スケッチ法

• 用具を見てわかるように,美術のデッサン,クロッキーなどとはまったく技法が異なる.美術ではさまざまな描写技法によって物体を表現するのであろうが,生物学的なスケッチでは物体の輪郭を重視する.「どう見えているか」ではなく,「そこに何があるか」を記録することが目的であるためである.

• 当然,物体の形状,大きさの比は正確でなくてはならず,デフォルメすることは許されない (そうでなければスケールを入れる意味はない).対象を少なくとも2方向から計測して正確な形状を描くこと.

• 輪郭は均一な細さの,つながった一本の線で描く.硬い鉛筆と滑らかな紙はこのためである.描線や点は太さや面積のないものと見なされる.すなわち,粒子状の物体を表すのには,点を打つのではなく粒子の形状を描く必要があり,ある幅のある物体を表すためには,太い線を描くのではなく,内外の輪郭をそれぞれ別の描線で描く必要がある.

• 立体の表現は,基本的に点描で行う (点の密度によって濃淡を付ける技法である).ただし,本実験では時間的な制約があり,スケッチに十分な時間をかけられないであろうから,完全な立体表現は難しいであろう.輪郭をはっきり描くことを重視し,立体表現については簡便に済ませても構わない.なお,塗りつぶしやハッチングによる陰影表現は行ってはならない.

• 前述のように,高倍率での観察では,焦点深度が浅いため,単一の焦点では対象物の形を把握しきれないことが多い.微動焦準ハンドルを少しずつ上下に振って,対象物の立体的構造を把握し,再構築してスケッチに描き込むようにする.

• スケッチは,本来,鉛筆で描いた後,墨入れをして仕上げるものであるが,本実験では時間的な制約から,鉛筆描きで止める.

• (右利きの場合)左目で顕微鏡の右側の接眼レンズをのぞき,右目ではスケッチを見て描画を進めるという方法がある.慣れないうちは目の焦点が合わず難しいが,慣れてくると正確なスケッチを描くのに役立つ.

• 染色した標本などでは,色が重要な情報を担うことも多く,白黒の鉛筆画のみでは十分な記録を残せないこともある.こうした場合には,色鉛筆,パステル,水彩絵の具などを用いてカラーのスケッチを作成することもある.色彩を入れたスケッチの作成は,連続的に変化する色彩を再現するために,グラデーションを付ける必要があり,白黒の輪郭線のみのスケッチに比べて高度な観察力と作画技法が要求される.

スケール スケッチには必ず実長のスケールを描き込む.スケールは 100 µm,500 µmなど区切りのよい単位長さとすること.スケールを割り出すためには,観察物 (あるいはその部分)の長さを接眼ミクロメーターを用いて測定し,表 13.2によって実長に換算し,対応するスケッチの大きさに当てはめて算出する.当然のことだが,拡大率の異なるスケッチには,それぞれに対応するスケールを入れなければなら

ない.

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256 課題 13 顕微鏡と検鏡法

Section 13.4

暗視野照明

暗視野観察は,照射光を視野に入れず試料からの反射・散乱光のみを観察する方法である.

図 13.4: 暗視野照明の原理.A:専用の暗視野コンデンサを用いた場合.B:リングスリットのみを用いる簡易暗視野法.

照射光は,コンデンサの下部にあるリング絞りでリング状の照射光となる.暗視野コンデンサを用いた場合には,リング状の光は暗視野コンデンサ内の半球ミラーとコンデンサ内壁で反射されて試料に集光する.リングスリットのみを用いる簡易 (疑似)暗視野法の場合には,リング状の照射光が観察試料に焦点を結ぶようにコンデンサが調節されている必要がある.いずれにしても,試料にあたった光のうち,透過光はそのまま光路に沿って進むため,対物レンズには入射しないが,反射,散乱された光は対物レンズによって集光される.このため,観察者の視野には照明の透過光は入らず視野は暗くなる.その中に試料によって反射・散乱された光が浮かび上がるように見えるため,光の透過性が大きい (透明に近い)微粒子や細い繊維など,通常の明視野照明では観察の困難なものも観察することができる.また,十分な反射・散乱光があれば,試料物体の大きさが顕微鏡の解像度より小さくても観察することができる 3.

3実際,太さ 10~35 nm しかない細菌の鞭毛も,暗視野法によって観察することができる.