復興カタチにする 三陸 - 岩手県€¦ · 大槌町 山田町 大船渡市...

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大槌町の大ケ口(おがくち)地区災害 公営住宅(大ケ口一丁目町営住宅)は、 コミュニティを育み、住民同士が交流 しやすいようにと設計されました。 特集 1

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Page 1: 復興カタチにする 三陸 - 岩手県€¦ · 大槌町 山田町 大船渡市 平田晃久建築設計事務所 入居が始まった吉里吉里地区 の災害公営住宅。そのほか、山

震災から2年半

復興の進しんちょく捗状況

県では、防潮堤や復興道路の整備、

産業の再生や雇用の確保など、

東日本大震災津波からの本格復興に向け、まい進しています。

また、水産業では新商品を開発し雇用につなげたり、

まちの特徴を生かした災害公営住宅の建設が行われたりと、

未来を感じさせる歩みが始まっています。

大槌町の大ケ口(おがくち)地区災害公営住宅(大ケ口一丁目町営住宅)は、コミュニティを育み、住民同士が交流しやすいようにと設計されました。

特集

1三陸の未来を

カタチにする

復興への歩み

Page 2: 復興カタチにする 三陸 - 岩手県€¦ · 大槌町 山田町 大船渡市 平田晃久建築設計事務所 入居が始まった吉里吉里地区 の災害公営住宅。そのほか、山

釜石市

天神町災害公営住宅

暮らし安全 未 来 へ つながるなまちづくり

住民の交流に配慮した

住宅づくり

専門家と住民、行政が協働してつくる住宅

災害に強い陸前高田市のまちづくり

地域ぐるみで取り組んだ防災訓練が功を奏す

民間によって

整備された

一関市の

賃貸復興住宅

生活再建のための相談窓口 住宅再建相談会開催のお知らせ

地域の防災活動を支援する地域防災サポーター

いま、三陸では、一人ひとりの暮らしを支える災害公営住宅が建てられ、順次、入居が始まっています。安心して暮らせるまちづくりのため、

防災を考えた整備や取り組みが行われています。

 大槌町では初となる被災

者向け災害公営住宅が、同町

大ケ口地区に70戸完成しま

した。主に地元の木材を使っ

た、平屋と2階建ての木造長

屋は、子どもや高齢者、車い

す利用者などに対応した住宅

となっているほか、交流の場

所として集会所も併設してい

 東日本大震災津波の際、適

切な行動を取り、人的被害を

最小限にとどめた大船渡市赤

崎町生形地区。生形公民館自

主防災組織代表・只た

野の

富とみ

雄お

んは、「徒歩での避難訓練や

担架による負傷者搬送訓練な

ど、実践的な訓練によって地

域の防災意識を高めていたの

で、震災時に迅速な避難がで

きました。また、子どもも参

加できるバケツリレーの訓練

は、震災時の物資運搬に役立

 専門家や事業者が住民の意

見をくみ上げ、復興計画を展

開する「かまいし未来のまち

プロジェクト」。多数の中から

優れた提案を行った設計者を

選ぶプロポーザル方式で進め

られています。

 選定にあたっては、本プロ

ジェクトの復興ディレクター

である建築家・伊い

東とう

豊とよ

雄お

さん

が関わり、将来を見据えた審

査を行っています。

 「海と緑と太陽との共生・

海浜新都市」の創造を目指し

ている陸前高田市。被災した

市街地は、かさ上げにより津

波の浸水を免れるように高さ

を確保し、コンパクトな市街

地の形成を図ります。

 現在、津波復興拠点整備事

業により造成が進められてい

 一関市千厩町に、被災者が

優先して入居できる賃貸復

興住宅28戸を、民間企業が

建設しています。これは県

の「災害復興型地域優良賃

貸住宅」の補助制度を活用

して整備が進められている

もの。完成は今年度中の予

定です。民間でも被災者の

暮らしを支える住宅の整備

が始まっています。

 県では、防災意識の高まりを維持・向上させるため、「岩手県地域防災サポーター」を派遣し、地域における防災研修会での講師、防災マップ作成や自主防災組織運営のアドバイスなどを行います。講師の派遣などに関しては、市町村の防災担当課にご相談ください。

県内4カ所に設置。日替わりで専門家を配置し、生活再建や法律問題などの相談に応じています。お気軽にお問い合わせください。

●年内の開催予定

●問い合わせ先/県庁建築住宅課 ☎019-629-5933

震災により被災された方々を対象とした住宅再建相談会を開催しています。資金計画や支援策、建築士による専門的なアドバイスなど、幅広く対応しています。

10月20日(日)・11月24日(日)・12月14日(土)11月8日(金)・11月9日(土)11月10日(日)・12月8日(日)・12月9日(月)11月23日(土)11月17日(日)

●問い合わせ先/県庁総合防災室 ☎019-629-5153

●久慈地区/☎0120-934-755●宮古地区/☎0120-935-750●釜石地区/☎0120-836-730●大船渡地区/☎0120-937-700

ます。

 また、同町吉里吉里地区で

は鉄筋コンクリート造5階建

て34戸の住宅が完成するな

ど、県内各地で災害公営住宅

の建設が進んでおり、今後も

地域の皆さんと暮らしを考

え、安全で良質な災害公営住

宅を供給していきます。

ちました」と話します。これ

からも防災意識を高く持ち、

訓練をしていきたいと語って

くれました。

 その第1号事業が、天神町

災害公営住宅。設計にあた

り、事前に住民と設計者の間

で意見交換をしながら、計画

がまとめ上げ

られました。

 住民の意見

が反映された

災害公営住宅

は、来年度の完

成を目指して

います。

る高田西地区では、消防防災

センターやコミュニティホー

ル、災害公営住宅、幹部交番

などが、来年から順次完成し

ていく予定です。陸前高田市

の新しい防災拠点であり人々

が集える場所として期待され

ます。

大ケ口地区の

集会所。

集会所を併設する天神町災害公営住宅の模型(案)。

生形公民館自主防災組織代表・只野富雄さん。

伊東豊雄さんが審査委員長を務める「かまいし未来のまちプロジェクト」プロポーザルの様子。

大槌町

大お

ケが

口くち

地区災害公営住宅

陸前高田市 津波復興拠点整備事業(高田西地区)

生おいかた形

公民館自主防災組織

大船渡市

大ケ口地区災害公営住宅の内覧会の様子。多くの見学者が訪れました。

現在、整備を進めている高田西地区。

被災者相談支援センター

宮古市

石市大槌町山田町

大船渡市

平田晃久建築設計事務所

入居が始まった吉里吉里地区の災害公営住宅。そのほか、山田町豊間根、 石市平田、大船渡市赤沢など各地で建設が進んでいます。

震災から2年半

復興の進捗状況

三陸の未来を

カタチにする

復興への歩み

特集

1

05 04

過去の避難訓練の様子。

Page 3: 復興カタチにする 三陸 - 岩手県€¦ · 大槌町 山田町 大船渡市 平田晃久建築設計事務所 入居が始まった吉里吉里地区 の災害公営住宅。そのほか、山

久慈市

久慈市漁業協同組合

事業者が復興に寄与する事業(新規投資や被災者雇用など)を行う場合、東日本大震災復興特別区域法に基づく県の指定などを受けることにより、税制特例などを受けることができます。ゆわて吉田工業と久慈市漁業協同組合は、この特例を受けて再建しました。

熟練スタッフの知恵と技の蓄積が、

1/100ミリメートル単位の高精度な

加工を可能にしています。

平成24年7月に大船渡市の高台に移転・竣工した新工場(下)。右は被災直後の工場の様子。

五葉山麓に建設中のメガソーラー発電所の完成予想図。平時は再生可能エネルギーの固定価格買取制度により、当面、発電された電力の全量を東北電力に売電します。

「今回の発電所建設が産業振興の起爆剤となることを願っています」と話す志田次長。

模型で工場施設を説明する工場長の加

藤と う

了さとし

さん(左)と副工場長の平

ひら

野の

工たくみ

さん(右)。

久慈市漁協では前浜で水揚げされたサンマやサバを原料に、骨とりと味付けの加工をしています。

ファストフィッシュ商品が好評のため、震災後は工場スタッフを増員。雇用の拡大にもつながっています。

久慈市漁業協同組合食品工場の工場長・松前潔さん。

従業員のほとんどが大船渡に暮らす方々。

なりわいを 再 生 す る

東日本大震災によって被害を受けた三陸の産業。しかし、関係者のたゆまぬ努力で活気が戻りつつあります。

技術の進化と共に雇用を確保

ファストフィッシュ商品を

復興の足がかりに

大船渡市

ゆわて吉田工業株式会社

再生可能エネルギーへの取り組みメガソーラー発電所を五葉山麓に建設

 大船渡市、陸前高田市、住田町の気仙2市1町と一般社団法人東日本未来都市研究会とで進行中の気仙広域環境未来都市プロジェクト。その一環として太陽光で発電を行うメガソーラー発電所の建設が進められています。「東日本大震災で長期の大規模停電を経験したことから、エネルギーの地産地消が不可欠と考えました」と大船渡市環境未来都市推進室の志

田だ

努つとむ

次長。 建設地は、五葉山麓で、発電量は年間21,200メガワットアワー(一般家庭約5,800世帯分の年間電力消費量に相当)を想定。災害時にも強く、住民の暮らしを支える再生可能エネルギーは、建設や完成後の運用に携わる技術者の雇用や産業振興などが期待されています。※再生可能エネルギー 太陽光や風力など、自然からつくられるエネルギーのこと。

岩手県産業再生特区の特例について

 地震による津波で工場と施

設の全てが全壊したゆわて吉

田工業株式会社。県内からの

撤退も懸念されましたが、平

成24年7月には大船渡市内の

高台に新工場を竣工し、平成

25年度から新卒者を含む新規

採用を再開しています。

 プラスチック製品の製造を

主に行い、携帯電話部品やス

マートフォン部品製造では、

ガラスとフレームを一体化成

形する、世界に先駆けた新技

術を開発して部品を生産。こ

うした優れた技術は、地元の

熟練スタッフの知恵と経験か

ら生まれたものでした。

 それをさらに進化させなが

ら、若手に継承していく信頼

関係や、これまで培ってきた

地元とのつながりを大切に、

雇用の場の創出にも積極的に

取り組んでいます。

●問い合わせ先/県庁復興局産業再生課 ☎019-629-6931

 地震による津波で工場内全

ての設備が流された久慈市漁

業協同組合。工場を基礎から

修繕して9カ月後に操業を再

開したものの、その時にはこ

れまでの販路が失われていま

した。その後、新しい販路を

生み出すため、「若い世代に美

味しい海の幸を再認識しても

らおう」という企画で久慈市

漁協、三陸鉄道、イオンが連

携し、水産庁が提唱する手軽

においしく食べられる魚商品

「ファストフィッシュ商品」を

開発することとなりました。

震災翌年の8月以降、全国の

イオングループ店舗で販売し

ています。

 久慈市漁協の工場長・松ま

前まえ

潔きよし

さんは「多くの支援があり、

いち早く復興できました。今

後も、魚をあまり食べない若

年層にも好まれる味付けを検

討するなど工夫を重ね、付加

価値の高い商品をつくってい

きたいです」と、三陸地域全体

の励みになる商品開発を目指

しています。

震災から2年半

復興の進捗状況

三陸の未来を

カタチにする

復興への歩み

特集

1

新しい三陸地域の創造

07 06特集 三陸の未来をカタチにする復興への歩み