胆道系酵素について(alpとggt)胆道系酵素について(alpとggt) idexx...
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胆道系酵素について(ALPとGGT)
IDEXX Diagnostic Tips アイデックス お役立ち情報発行:2013年1月
平田 雅彦 先生 (IDEXX診断医)
No.4
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ALPとGGT アルカリフォスファターゼ(ALP)は肝臓のスクリーニング検査
に必ず含まれるが、異常値が出てもあまり気にされない項目の 1
つである。GGT に関しても院内検査の項目として取り入れている
病院は少ないように思われる。ALP や GGT などの酵素を調べる
際には、単に基準値よりも高値を示すかどうかではなく、その異
常値の出る原因をよく理解しておく必要がある。この 2 つの酵素
はALTやASTなどの障害された肝細胞から漏出する酵素(逸脱
酵素)とは異なっており、胆道系における胆汁のうっ滞により合
成が亢進し血中の濃度が増加することから、誘導酵素や逸脱酵
素と呼ばれている。
ALP とGGTの増加 ALP の増加の原因として犬猫に共通するものとしては、成長期
にみられる上昇や胆道系疾患における上昇が挙げられる。成長期
にみられる ALP は骨芽細胞由来であり、GGT にはこの機序での
上昇はないため ALP 単独の上昇となる。犬で最も重要なことは、
犬ではステロイド誘発性の ALP や GGT の上昇があるということ
である。これはクッシング症候群やステロイド投与のみでなく、体
に内因性コルチゾールが増加するような変化が起きた場合でもそ
の増加は起こりえる。例えば激しい痛みが持続するような症例で
は、胆道系疾患に関係なくこれらの酵素の顕著な増加がみられる
ことがある。よくステロイド投与中にALPの上昇がみられたため投
薬を中止したと聞くが、投与によるALPやGGTの上昇は肝障害
の程度と相関するものではなく,肝障害の指標とはならない。ス
テロイド投与による肝障害を懸念するのであれば、逸脱酵素であ
るALT や AST、そして胆道系を評価するのであればビリルビンの
測定が必要となる。一方、猫ではステロイド誘発性の ALP や
GGT の上昇はみられず、ステロイド投与中にこれらの酵素の上昇
がみられた場合、肝疾患などの原因を検討する必要がある。
肝臓由来の ALP の半減期を考えると、犬で 72 時間、猫で 5
時間程度と記載されているものが多い。つまり猫の ALP は犬の
ALP の 10 倍以上速く減少するということであり、半減期の大きく
異なる犬のALP 300 IU/ Lと猫のALP 300 IU/ Lを同じ土俵の
上で評価してはならないということである。猫は犬のようにステロイ
ド誘発性の ALP の上昇もなく、肝胆道系疾患があってもALP の
上昇がみられないことがあり、逆に ALP が軽度の上昇でも重篤
な胆道系疾患が存在する可能性が考えられるということである。
犬の ALP と GGT の使い方は、肝胆道系疾患における感度は
ALP >GGT である。しかし、両酵素とも肝臓に特異性が高いと
は言えず、肝疾患を疑う場合、両方の酵素のみを測定する意義
はそれほど高くはない。肝疾患を疑う場合は、Tbil や Tchol およ
び画像診断などを併せて総合的に評価する必要がある。猫の
ALP とGGT の使い方は、肝胆道系疾患における感度は ALP <
GGT と犬とは逆となる。但し、ALP が著しく上昇する疾患として
肝リピドーシスおよび甲状腺機能亢進症が挙げられる。肝リピドー
シスの約 80%の症例は ALP が高値を示すにも関わらず、GGT
が基準値内である。また、猫の肝疾患で ALP が ALT の値を越
えることは少ないとされているが、肝リピドーシスに関しては逆転し
ていることが多いとされている。甲状腺機能亢進症に関しては、
骨芽細胞由来の ALP の上昇であり、ALT や AST の上昇を伴う
ことがあるが、Tbil や GGT の上昇を伴うことは少ない点で胆管
炎などの肝疾患とは異なっている。また猫では敗血症性黄疸と呼
ばれる Tbil の上昇がみられることがしばしば経験される。これは
敗血症の際に肝細胞の血中ビリルビンの取り込みが減少すること
によりみられる現象であり、肝細胞性黄疸(肝細胞の障害により
ビリルビンが上昇する病態)の範疇に含まれている。この場合、
胆道系に胆汁のうっ滞所見は認められず、理論的には ALP や
GGTおよびTcholの上昇を伴うことはない。
ALP とGGTの測定意義 犬では猫と比べ ALP、GGT とも胆道系疾患において感度は高
いが特異性が低いとされており、逆に猫では犬と比べ ALP、
GGT とも胆道系疾患において感度は低いが特異性が高い酵素で
ある。犬で肝疾患を疑う場合、ALP、GGT 単項目を測定する意
義に関しては高いものではないが、胆道系疾患やクッシング症候
群などを考える際には重要な項目と言える。猫では ALP と GGT
が高値を示した場合、肝胆道系疾患の疑いが高くなる。特に肝
リピドーシスや甲状腺機能亢進症では両酵素を測定することによ
り、単項目で測定するより多くの情報が得られることがある。
血液化学検査というものは、1 つ 1 つの項目で評価を行うもの
ではなく、各項目を関連付けて評価することが重要であり、ぜひ
院内検査としての ALP や GGT の測定意義を今一度検討して頂
きたい。