高活性カタラーゼの 菌体外生産 - jst5 e. oxidotolerans...
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高活性カタラーゼの 菌体外生産
(独)産業技術総合研究所 生物プロセス研究部門 環境生物機能開発研究グループ
副研究部門長・研究グループ長 湯本 勳
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背景
①半導体産業における半導体ウエハーの洗浄、食品産業における無 菌充填ラインの殺菌等に使用されており、その排水処理にカタラー ゼが使用されている。過酸化水素は分解すると無害化出来るので、 環境に負荷の低い、漂白および殺菌剤としての普及が望まれている。
②現在真菌由来およびMicrococcusのカタラーゼが産業用酵素として 市場で販売されており、それぞれ長所はあるが、短所としてはそれ ぞれ蛋白質当たりの活性が低い、精製にコストがかかるとともに精 製度が低い等の短所がある。
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従来技術とその問題点
既に実用化されている細菌由来の酵素には、Micrococcus luteusによる菌体内カタラーゼ等があるが、
①カタラーゼを精製するためには強固な菌体を破壊しなければならない。
②精製の際に夾雑タンパク質が多く完全な精製が容易ではない。
等の問題があり、完全精製酵素が広く利用されるまでには至っていない。
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新技術の特徴・従来技術との比較
• カタラーゼを菌体外に産生させることにより、従来技術の問題点であった、菌体を破壊して精製する労力を削減することに成功した。
• 従来は酵素の精製度の点で直接の使用に限られていたが、完全精製が容易になったため、担体固定化の際はより高濃度で固定化することが可能となった。
• 本技術の適用により、菌体破砕工程と酵素精製工程を削減できるため、精製コストが1/2~1/3程度まで削減されることが期待される。
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E. oxidotolerans T-2-2T株のカタラーゼ生産の経時変化
培養対数増殖期 (9 h) から、非常に早い培養上清へのカタラーゼ活性
=細胞外カタラーゼ生産が確認される。
生菌数
細胞内 カタラーゼ
細胞外 カタラーゼ
16000
12000
8000
4000
0 0 3 6 9 12 15 18
21 24 培養時間 (hour)
1000
100
10
1
カタラーゼ活性
(unit/m
l) 生
菌数
(10
4×c.f.u
./ml)
10000
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細胞外カタラーゼ生産量への通気量の影響
11,000 unit/ml
(2.75 times)
回収時期 :培養 48 h
100 ml 200 ml 300 ml 400 ml 500 ml 600 ml 700 ml
細胞外カタラーゼ活性
(unit/m
l) 12000
10000
8000
6000
4000
2000
0
Standard
4,000 unit/ml
(1.0) ■細胞外カタラーゼ (培養上清由来)
2L容三角フラスコ内の培地量
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カタラーゼの生産量を向上させるための添加物の検討
• アミノレブリン酸 (ALA)
• 界面活性剤(Tween 60)
カタラーゼの活性中心である補欠分子ヘムの
前駆体である天然アミノ酸。
本菌株のカタラーゼ生産向上を狙って添加した。
本菌株の細胞表層構造に存在すると考えられる
カタラーゼを培養上清として回収するために用いた。
細胞に栄養として取り込まれるのを防ぐために、
回収前の培養43 hに添加した。
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細胞外カタラーゼ生産条件検討
16,000
unit/ml
(4.0 times)
4,000 unit/ml
(1.0)
16000
12000
8000
4000
0
500 ml 200 ml 200 ml 2.0 mM
ALA
200 ml 2.0 mM ALA
0.1 % Tween 60
カタラーゼ活性
(unit/m
l)
Standard
■細胞外カタラーゼ (培養上清由来)
■細胞内カタラーゼ (細胞抽出液由来)
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表 今回の結果と市販、近年報告された高活性カタラーゼとの比較
今回の検討により得られた細胞外カタラーゼは、細胞抽出液から得られた
高活性カタラーゼと同等以上の活性量であり、安価なカタラーゼ生産への
応用が期待された。
菌体外
菌体外
菌体内
菌体内
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想定される用途
• 本技術の特徴を生かすためには、精製酵素を担体に固定化して適用することで高い精製度および高活性のメリットが大きいと考えられる。
• 上記以外に、単に酵素活性値当たりの酵素精製コスト削減効果が示されることも期待される。
• また、達成された低コスト化に着目すると、発展途上国の工業排水処理への応用に展開することも可能と思われる。
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実用化に向けた課題
• 現在、実験室レベルでフラスコを用いた実験系ついて生産が可能なところまで開発済み。しかし、通気の際気泡を発生させない事が望ましいため、大量生産の方法が未解決である。
• 今後、ジャーファーメンターを用いた培養法について実験データを取得し、大量生産に適用していく場合の条件設定を行っていく。
• 実用化に向けて、過酸化水素に耐えうる固定化技術を確立する必要もあり。
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企業への期待
• 未解決の大量生産法については、培養時の気泡の大きさを調節する技術により克服できると考えている。
• 培養制御の技術を持つ、企業との共同研究を希望。
• また、菌体・酵素固定化技術を持つ、企業との共同研究を希望。
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本技術に関する知的財産権
• 発明の名称 :過酸化水素耐性微生物による過酸化水素含有排水の処理法
• 出願番号 :特許3610372
• 出願人 :(独)産業技術総合研究所
• 発明者 :湯本 勳
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お問い合わせ先
(独)産業技術総合研究所
ライフサイエンス分野研究企画室
TEL 029-862 - 6032
FAX 029-862 - 6048
e-mail:life-liaison-ml@aist.go.jp