債券投資クォータリー - sc.mufg.jp ·...

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米国内で配布される場合:本レポートは、機関投資家向けに作成されたものであって、負債性有価証券に関するリテール 投資家向けのリサーチレポートであれば適用される一連の独立性及び開示の基準については、そのすべての適用を受ける わけではありません。本レポートは、MUSA 又は MUMSS が保有する利害との関係において、独立性を有さない可能性が あります。MUSA 及び MUMSS は、自己勘定において又は顧客のため行う一任運用の一環として、本レポートで取り上げ た有価証券の取引を行っています。このような取引による利害は、本レポートにおいてなされる推奨と相反する場合があ ります。本レポートの末尾に記載されているアナリストによる証明事項及び重要な開示事項をご覧ください。 2019 3 1 Debt Research 債券・⾦利・外国為替 債券投資クォータリー ~ 債券投資ウィークリー;3月および2019年度~21年度のシナリオ特集号~ No.444 インベストメントリサーチ部 ≪円債市場分析≫ 石井 チーフ債券ストラテジスト [email protected] 六車 治美 シニア・マーケットエコノミスト [email protected] 戸内 修自 シニア・マーケットエコノミスト [email protected] 稲留 克俊 シニア債券ストラテジスト [email protected] ≪外債市場分析≫ 井上 健太 シニア・マーケットエコノミスト [email protected] 大塚 崇広 マーケットエコノミスト [email protected] ≪外国為替市場分析≫ 植野 大作 チーフ為替ストラテジスト [email protected] eメール/郵送先の追加・変更: 弊社営業担当者 JGB アウトルック 3 月および 2019 年度~21 年度の長期・超長期金利&イールドカーブ・シナリオ. 3 長期金利は日銀の誘導目標レンジ内で往来相場を続けてゆく。操作目標が0.2%程 度に引き上げられるまでは▲0.05%~0.15%、以後は0.05%~0.35%を想定。 (石井) ファンダメンタルズアナリシス 3 月および 2019 年度~21 年度の景気・物価シナリオ................ 17 輸出は当面弱い動き、19年度終盤から緩やかながらも持ち直し。CPIは増税等のかく 乱要因を除けば人件費増を背景に上昇持続も、加速感は出にくい。 (戸内) ポリシーウォッチ 3 月および 2019 年度~21 年度の政策シナリオ.................. 31 「20年4月会合で長期金利水準を微調整」のメインシナリオ維持。しばらくは下振れリスク 注視も、海外経済の逆風が和らげば微調整に向けた「地均し」再開とみる。 (六車) 債券需給ウォッチ 楽観できない 3 月の 10 年・30 年両利付国債入札................. 43 金利低下トレンドに一服感が出ていることや日銀・長国買入オペの減額再開を受け て、3月の10年・30年両利付国債入札は消化に時間を要す可能性が出てきた。(稲留) TREASURY アウトルック 20 年・米景気は 0%台成長へ:予防的利下げの可能性否定できず.......... 51 19年後半に米国景気は失速。20+0.1%成長へ。FRBは政策金利据え置き継続を予も、サブシナリオとしてディスインフレ対応で予防的利下げを206月(+12月)に追加。(井上) 欧州債アウトルック ユーロ圏経済物価・金利見通し:利上げの有無を占う 4 つの指標.........57 ECBは利上げを諦めず。市場で利上げがほとんど織り込まれていない中では、フラット ナーやアセット・スワップで、キャリーを獲得しつつ、金利リスク抑制へ。 (大塚) 外為ウォッチ ドル円相場:動意欠乏症に罹患、極端な円高もドル高も進まぬ展開が続く....67 米日政策金利差が拡大も縮小もしなくなる中、1ドル=110円±5円程度のレンジ取引を 継続。米金融政策の「次の一手」が見えてくるまで、忍耐強い米指標観察が必要。 (植野)

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米国内で配布される場合:本レポートは、機関投資家向けに作成されたものであって、負債性有価証券に関するリテール

投資家向けのリサーチレポートであれば適用される一連の独立性及び開示の基準については、そのすべての適用を受ける

わけではありません。本レポートは、MUSA 又は MUMSS が保有する利害との関係において、独立性を有さない可能性が

あります。MUSA 及び MUMSS は、自己勘定において又は顧客のため行う一任運用の一環として、本レポートで取り上げ

た有価証券の取引を行っています。このような取引による利害は、本レポートにおいてなされる推奨と相反する場合があ

ります。本レポートの末尾に記載されているアナリストによる証明事項及び重要な開示事項をご覧ください。

2019 年 3 月 1 日

Debt Research

債券・⾦利・外国為替

債券投資クォータリー

~ 債券投資ウィークリー;3月および2019年度~21年度のシナリオ特集号~ No.444 インベストメントリサーチ部

≪円債市場分析≫ 石井 純 チーフ債券ストラテジスト [email protected]

六車 治美 シニア・マーケットエコノミスト [email protected]

戸内 修自 シニア・マーケットエコノミスト [email protected]

稲留 克俊 シニア債券ストラテジスト [email protected]

≪外債市場分析≫

井上 健太 シニア・マーケットエコノミスト[email protected]

大塚 崇広 マーケットエコノミスト [email protected]

≪外国為替市場分析≫ 植野 大作 チーフ為替ストラテジスト [email protected]

■ eメール/郵送先の追加・変更:

⇒ 弊社営業担当者

JGB アウトルック

3 月および 2019 年度~21 年度の長期・超長期金利&イールドカーブ・シナリオ.3

長期金利は日銀の誘導目標レンジ内で往来相場を続けてゆく。操作目標が0.2%程

度に引き上げられるまでは▲0.05%~0.15%、以後は0.05%~0.35%を想定。 (石井) ファンダメンタルズアナリシス

3 月および 2019 年度~21 年度の景気・物価シナリオ................ 17

輸出は当面弱い動き、19年度終盤から緩やかながらも持ち直し。CPIは増税等のかく

乱要因を除けば人件費増を背景に上昇持続も、加速感は出にくい。 (戸内) ポリシーウォッチ

3 月および 2019 年度~21 年度の政策シナリオ.................. 31

「20年4月会合で長期金利水準を微調整」のメインシナリオ維持。しばらくは下振れリスク

注視も、海外経済の逆風が和らげば微調整に向けた「地均し」再開とみる。 (六車) 債券需給ウォッチ

楽観できない 3 月の 10 年・30 年両利付国債入札................. 43

金利低下トレンドに一服感が出ていることや日銀・長国買入オペの減額再開を受け

て、3月の10年・30年両利付国債入札は消化に時間を要す可能性が出てきた。(稲留) TREASURY アウトルック

20 年・米景気は 0%台成長へ:予防的利下げの可能性否定できず.......... 51

19年後半に米国景気は失速。20年+0.1%成長へ。FRBは政策金利据え置き継続を予想

も、サブシナリオとしてディスインフレ対応で予防的利下げを20年6月(+12月)に追加。(井上) 欧州債アウトルック

ユーロ圏経済物価・金利見通し:利上げの有無を占う 4 つの指標.........57

ECBは利上げを諦めず。市場で利上げがほとんど織り込まれていない中では、フラット

ナーやアセット・スワップで、キャリーを獲得しつつ、金利リスク抑制へ。 (大塚) 外為ウォッチ

ドル円相場:動意欠乏症に罹患、極端な円高もドル高も進まぬ展開が続く....67

米日政策金利差が拡大も縮小もしなくなる中、1ドル=110円±5円程度のレンジ取引を

継続。米金融政策の「次の一手」が見えてくるまで、忍耐強い米指標観察が必要。 (植野)

債券投資クォータリー 2019年3月1日

三菱 UFJ 銀行

≪グローバルマーケットリサーチ≫

橋本 将司 シニアアナリスト 東京

井野 鉄兵 シニアアナリスト シンガポール

石丸 伸二 シニアアナリスト 東京

三菱 UFJ 銀行 寄稿

豪ドル 金融政策スタンスの中立化:(井野) ·········································· 74

人民元 注目される米中通商合意の内容:(橋本) ·································· 75

ブラジル:膨らむ期待と残る不安:(石丸) ·············································· 82

経済指標予想・イベント(3月4日~3月10日分).................. 86

マーケット・カレンダー(2019年3月~19年12月分)................ 88

チャート集........................................ 92

お知らせ

74ページから85ページは、三菱UFJ銀行グローバルマーケットリサーチによる

寄稿レポートになります。

三菱UFJモルガン・スタンレー証券インベストメントリサーチ部と三菱UFJ銀行

グローバルマーケットリサーチでは、見通しやシナリオのすり合わせや意見調整

などは行っておりません。

また、三菱UFJモルガン・スタンレー証券インベストメントリサーチ部は、本寄稿

レポートに掲載された情報の正確性・信頼性・完全性・妥当性・適合性につい

て、いかなる表明・保証するものでなく、一切の責任又は義務を負わないものと

します。

- 3 - 債券投資クォータリー 2019 年 3 月 1 日

JGB アウトルック

3 月および 2019 年度~21 年度の長期・超長期金利&イールドカーブ・シナリオ

チーフ債券ストラテジスト 石井 純

2月の長期金利(新発10年利付国債利回り)は、1月末比▲0.015%ポイントの▲0.015%に

小反落した。変動レンジは▲0.050%~▲0.005%の0.045%ポイント(図1)。予想レンジは▲

0.010%~0.030%だった。新発20年利付国債利回りは同▲0.005%ポイントの0.435%。1月、

総じて見るとブル・フラット化した国債イールドカーブ(図2)は、2月は全般的に2bp前後、上方

シフトした(図3)。

図1:一時▲0.050%と1月4日以来の低水準を付けた2月の長期金利動向

出所:Bloombergより三菱UFJモルガン・スタンレー証券作成

図2:1月の国債イールドカーブ変化 図3:2月の国債イールドカーブ変化

注: 「O/N」は無担保コールレート翌日物。国債利回りは複利

出所:三菱UFJモルガン・スタンレー証券

注: 「O/N」は無担保コールレート翌日物。国債利回りは複利

出所:三菱UFJモルガン・スタンレー証券

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(月)

2月

1月

15日:10年物価連動国債入札が順調な落札結果

13日:5年利付国債入札が無難な落札結果

20日:1月・FOMC議事録『政策金利の調整は様子見が適切』

11日:米与野党・議会指導部が連邦政府予算案で基本合意

14日:12月米小売売上高、前月比▲1.2%、09年9月以来の大幅減

12日:日銀が残存期間「10年超25年以下」の超長期債買い入れを減額オファー

19日:20年利付国債入札が順調な落札結果

19日:黒田日銀総裁『必要となれば追加緩和も検討する』

2月1日:1月・米非農業部門雇用者数;前月比+30.4万人、平均時給;前年同月比+3.2% 5日:10年利付国債入札が順調な落札結果

5日:1月の米ISM非製造業景況感指数;前月比▲1.3ポイントの56.7

26日:メイ英首相がEU離脱時期の先送りに言及 26日:1月の米住宅着工件数が前月比▲11.2%と急減

22日:トランプ米大統領『中国製品への関税引き上げを延期』

22日:月例経済報告で生産の判断が40カ月ぶりに下方修正

7日:トランプ米大統領『(3月1日までに米中首脳会談を開く可能性は現時点で)ない』

7日:EU欧州委員会が19年の経済成長率見通しを大幅に下方修正

28日:2年利付国債入札が無難な落札結果

7日:30年利付国債入札が無難な落札結果

28日:日銀が3月・長期債買い入れオペの実質減額方針を公表

2 月の長期・超長期金利&

イールドカーブ・レビュー

- 4 -債券投資クォータリー 2019 年 3 月 1 日

2月の長期金利は1月末比▲0.010%ポイントの▲0.010%で始まり、13日に月間最高値▲

0.005%、22日に月間最低値▲0.050%を付け、▲0.015%で取引終了。月を通して“水面下”

だった(図1)。新発20年利付国債利回りは同▲0.005%ポイントの0.435%で始まり、13日に月

間最高値0.440%、22日に月間最低値0.390%を付け、始値と同じ0.435%で取引を終えた。

上旬の長期金利は、1日に▲0.025%まで急低下するなど弱含みに推移し、8日に一時▲

0.035%を付けた。日銀が1月末に公表した「当面の長期国債等の買入れの運営について」で、

2月の1回当たりオファー金額と買い入れ日数を1月から据え置いたことで、債券需給の引き締

まりが改めて意識された。米長期金利(図4)が1月・米雇用統計の上振れ(1日)1を受けて上昇

したが、影響は限られた。10年利付国債入札(5日)の順調な落札結果を手掛かりにした買い

も入った。

米欧では米雇用統計の公表後、低調な経済指標等が続出した。米独長期金利が弱含み

に推移し(図4)、国内金利に影響を与えた。例えば、1月の米ISM非製造業景況感指数(5日)

は市場予想を下回った。12月の独製造業新規受注(6日)と独鉱工業生産(7日)が市場予想

に反してマイナス。欧州連合(EU)の欧州委員会は7日、2019年の実質経済成長率の見通し

を前回予想から大幅に下方修正した。トランプ米大統領が7日、貿易協議の期限である3月1

日までに米中首脳会談を開く可能性は『(現時点で)ない』と述べたため、米中貿易摩擦の長

期化観測も強まった。

図4:2月の米独仏・長期金利動向 図5:2月の日米株式相場動向

出所:Bloombergより三菱UFJモルガン・スタンレー証券作成 出所:Bloombergより三菱UFJモルガン・スタンレー証券作成

3連休(9~11日)明けの週の長期金利は小反発し、13日に月間最高値▲0.005%を付けた。

米長期金利の反発に連れ高となった。9日、中国商務省が『相互に関わる問題について一段

と深く協議を進める』と声明を発表。11日より米中次官級の貿易協議が開かれ、交渉が前進

するとの期待が高まった。そうしたなか、日米債券市場では、持ち高調整や目先の利益確定

を目的とした売りが優勢に転じた。12日の国内市場では、日銀が残存期間「10年超25年以下」

の超長期債買い入れを減額オファー(2,000億円→1,800億円)したことも売りを誘った。米与

野党の議会指導部が11日夜、米連邦政府の予算案で基本合意したことから2、翌日の米債市

場では、政府機関閉鎖が回避されるとの見方から売りが出た。米長期金利は13日に2.70%台

に上昇した。

1 非農業部門雇用者数は前月比+30.4 万人と Bloomberg 調査などの市場予想(17 万人増程度)を大きく上回った。一方、失業率は政府機関の一部

閉鎖の影響で 4.0%と 0.1%ポイント悪化。ただし労働参加率が 63.2%に改善した。平均時給は前年同月比+3.2%と 0.1%ポイント鈍化した。 2 ただしトランプ米大統領は、メキシコ国境の壁建設費が盛り込まれていないことから、『満足していない』と述べた。

2.0

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(月)

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フランス(左軸)

ドイツ(左軸)

米 国(右軸)2月

18,000

19,000

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23,000

24,000

21,000

22,000

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25,000

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12 1 2 3

(ドル)

日経平均株価(右軸)

(円)

(月)

NYダウ(左軸)

2月

2 月の長期・超長期金利

の 4 本値

長 期 金 利 は 8 日 の ▲

0.035%まで弱含み推移

米欧で続出した低調な経

済指標

長期金利は 13 日、持ち高

調整/利益確定売りを受け

て月間 高値▲0.005%

に小反発

- 5 - 債券投資クォータリー 2019 年 3 月 1 日

国内長期金利は14日より再び低下余地を探る動きに転じた。直接的な要因は米長期金利

の再低下で、背景は低調な米経済指標だった。14日に公表された12月の米小売売上高が前

月比▲1.2%と市場予想に反して減少し、09年9月以来の大幅マイナス。1月の米生産者物価

指数も予想に反して前月から低下した。15日発表の1月の米輸入物価指数は同▲0.5%と市

場予想以上に低下。1月の米鉱工業生産指数は市場予想に反して前月から低下した。また、

国内債券市場では、19日の20年利付国債入札が超長期債需要の底堅さを裏付けたため、需

給の引き締まりを意識した買い(戻し)が入った。長期金利は22日に一時、月間最低値の▲

0.050%まで低下。20年債利回りも21日に心理的な節目の0.400%を割り込み、22日に月間最

低値の0.390%を付けた。ちなみに、内閣府は22日に公表した2月の月例経済報告で、全体

の景気判断は『緩やかに回復』を14カ月連続で据え置いたが、生産は40カ月ぶりに下方修正

し、企業収益も引き下げた。

一方、米長期金利は米中貿易協議が進展しているとの見方から、2.65%を割り込むと売り

が優勢になり下げ渋った。20日公表された1月29・30日のFOMC議事録は想定の範囲内でノ

ー・サプライズ。『(大半の参加者が)政策金利の調整を様子見するのが適切だ』、『(参加者の

ほぼ全員が)年内に保有資産の縮小を停止する方針を早めに発表するのが望ましい』などの

くだりは新味を欠いた。ただ、FRB保有資産縮小の年内終了の可能性を好感した米株高を受

け、リスクオン売りがやや優勢になる場面があった。また、『(他の数人は)経済が想定どおりに

推移すれば19年中の利上げが適切』に着目した売りも多少出たもよう。ただ22日には、米長

期金利は独長期金利とともに急低下した。2月の独Ifo企業景況感指数の低下、米欧貿易摩

擦の激化観測の強まり3、米年内利上げ観測の後退を背景に、押し目買いが膨らんだことによ

る。なお、FRBは22日公表の金融政策報告書で、『金利調整に関して忍耐強くなれる』との姿

勢を改めて示した。

25日週の長期金利は相場の高値警戒感を背景に反発し、28日に先週末比+0.030%ポイン

トの▲0.015%で2月の取引を終了。20年債利回りも同+0.040%ポイントの0.435%で終えた。

トランプ米大統領が22日、米中貿易交渉の進展を理由に、3月2日に予定していた中国製

品への関税引き上げを延期すると表明。3月下旬をめどにトランプ米大統領と習近平・中国国

家主席が会談し、最終合意を目指す方向で調整しているとも報じられ、リスクオフ・ムードが後

退。26日には米長期金利が米住宅着工件数の急減(前月比▲11.2%と3年2カ月ぶりの低水

準)やパウエルFRB議長の議会証言を受けて2.63%台に低下したが、国内長期金利は持ち

高調整売りや利益確定売りを受け、連れ安とはならなかった。なお、パウエルFRB議長は議会

証言で『中国や欧州など海外経済が減速している』とし、『政策判断を様子見するのが適切』と

の考えを示した。一方、27日の米長期金利は欧州債安を受けて2.69%台に急反発。独長期

金利は一時0.165%まで急上昇した。メイ英首相が26日、欧州連合(EU)からの離脱時期の先

送りに言及し、合意なき離脱への警戒感が後退したことによる。米企業の大型起債による米債

需給を巡る荷もたれ感も影響した。翌28日、国内長期・超長期金利はそのような米欧債安を受

けて強含み。17:00に日銀が3月・長期債買い入れオペの実質減額方針を公表4すると、小幅

上振れした。

5日に実施された10年利付国債(353回債リオープン、クーポン0.1%、発行予定額2兆2,000

億円)入札では、最低落札価格が101.11円と市場予想<日経QUICK調査、以下同じ>を1銭

3 トランプ米大統領が欧州連合(EU)との貿易交渉に合意できなければ自動車に関税を課す姿勢を示している。一方、EU は関税が発動されれば米

企業の製品に報復関税を課す準備を進めていると 22 日に報じられた。 4 日銀は「当面の長期国債等の買入れの運営について」で、残存期間「5 年超 10 年以下」の「1 回当たりオファー金額」のレンジ上限を 500 億円引き

上げ 6,500 億円とした一方、買い入れ予定日数を 1 日減らし 4 日とした。

長期金利は月後半、海外

経済の下振れリスクや需

給逼迫を意識して再低下

米長期金利は 2.60%台

前半では下げ渋り

月末週の長期金利はリス

クオフ・ムード後退を背景

に米欧債安を受け反発

順調だった10 年利付国債

入札(5 日)

- 6 -債券投資クォータリー 2019 年 3 月 1 日

上回った。応札倍率は4.80倍と前回(1月8日、4.04倍)より拡大し、05年7月債以来の高水準

(図6)。テールは前回と同じ1銭だった(図7)。

7日の30年利付国債(61回債リオープン、クーポン0.7%、発行予定額7,000億円)入札では、

最低落札価格が102.80円と市場予想どおりだった。応札倍率は4.72倍と前回(1月10日、4.03

倍)を上回ったが、テールは5銭と前回(2銭)から拡大した(図8・9)。

13日の5年利付国債(131回債リオープン、クーポン0.7%、発行予定額2兆円)入札では、最

低落札価格が101.22円と市場予想に一致。応札倍率は4.84倍と前回(1月16日、5.15倍)を下

回り、テールは1銭と前回(0銭)から拡大した(図10・11)。

15日の10年物価連動国債入札は最低落札価格が103.60円と、市場予想を10銭も上回った。

ただ、応札倍率は3.34倍と、前回(11月6日、3.70倍)から低下した。

19日の20年利付国債(167回債リオープン、クーポン0.5%、発行予定額1兆円)入札では、

最低落札価格が101.40円と市場予想にほぼ一致した。応札倍率は4.67倍と前回(1月24日、

4.57倍)を上回り、14年1月債以来の高水準(図12)。ただ、テールは7銭と前回(4銭)より広が

った(図13)。

28日の新発2年利付国債(398回債、クーポン0.1%、発行予定額2兆1,000億円)入札では、

最低落札価格が100.505円と市場予想どおりだった。応札倍率は5.27倍と前回(1月31日、

6.08倍)より低下し、テールは6厘と前回(2厘)から拡大した(図14・15)。

図6:10年利付国債入札の発行予定額と応札倍率 図7:10年利付国債入札の発行予定額とテール

出所:財務省より三菱UFJモルガン・スタンレー証券作成 出所:財務省より三菱UFJモルガン・スタンレー証券作成

図8:30年利付国債入札の発行予定額と応札倍率 図9:30年利付国債入札の発行予定額とテール

出所:財務省より三菱UFJモルガン・スタンレー証券作成 出所:財務省より三菱UFJモルガン・スタンレー証券作成

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(兆円) (倍)

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発行額(左軸)

応札倍率(右軸)QQE補完措置 YCC付きQQE

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QQE補完措置

マイナス金利付きQQE

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YCC付きQQE 政策修正

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(兆円) (倍)

(年度)

発行額(左軸)

QQE補完措置 YCC付きQQE

マイナス金利付きQQE 応札倍率(右軸)政策修正

0.0

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(兆円) (円)

(年度)

テール(右軸)

マイナス金利付きQQE

発行額(左軸)

YCC付きQQE 政策修正QQE補完措置

無難だった30 年利付国債

入札(7 日)

無難だった 5 年利付国債

入札(13 日)

順調だった10 年物価連動

国債入札(15 日)

順調だった20 年利付国債

入札(19 日)

無難だった新発 2 年利付

国債入札(7 日)

- 7 - 債券投資クォータリー 2019 年 3 月 1 日

図10:5年利付国債入札の発行予定額と応札倍率 図11:5年利付国債入札の発行予定額とテール

出所:財務省より三菱UFJモルガン・スタンレー証券作成 出所:財務省より三菱UFJモルガン・スタンレー証券作成

図12:20年利付国債入札の発行予定額と応札倍率 図13:20年利付国債入札の発行予定額とテール

出所:財務省より三菱UFJモルガン・スタンレー証券作成 出所:財務省より三菱UFJモルガン・スタンレー証券作成

図14:2年利付国債入札の発行予定額と応札倍率 図15:2年利付国債入札の発行予定額とテール

出所:財務省より三菱UFJモルガン・スタンレー証券作成 出所:財務省より三菱UFJモルガン・スタンレー証券作成

2月の国庫短期証券(TB)の利回り(図16)は、3カ月物が1月末比+0.059%ポイントの▲

0.191%で取引を終えた。需給逼迫感の後退が背景。1年物は▲0.2%前後の横這い圏で推

移した。同+0.010%ポイントの▲0.200%で取引終了。中期利付国債の利回り(図16)は上昇

→低下→上昇という往来相場だった。結局、2年債は同+0.020%ポイントの▲0.155%、5年債

は同+0.005%ポイントの▲0.160%で取引を終えた。一方、ドル円ベーシス・スワップ・スプレッ

ド(図17)は、3カ月物が「下に往って来い」の展開、1年物が月後半に強含みだった。結局、3

カ月物は同+0.125bpの▲14.500bp、1年物は同+3.500bpの▲24.750bpで取引終了。

1

2

3

4

5

6

0.0

0.4

0.8

1.2

1.6

2.0

2015 16 17 18 19

(兆円) (倍)

発行額(左軸)

(年度)

応札倍率(右軸)QQE補完措置 YCC付きQQE

マイナス金利付きQQE

政策修正

0.0

0.1

0.2

0.3

0.4

0.5

0.6

0.0

0.5

1.0

1.5

2.0

2015 16 17 18 19

(兆円) (円)

(年度)

発行額(左軸)

テール(右軸)

QQE補完措置 YCC付きQQE

マイナス金利付きQQE

政策修正

1

2

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5

6

0.0

0.4

0.8

1.2

1.6

2.0

2015 16 17 18 19

(兆円) (倍)

発行額(左軸)

(年度)

応札倍率(右軸)QQE補完措置 YCC付きQQE

マイナス金利付きQQE

政策修正

0.0

0.1

0.2

0.3

0.4

0.5

0.6

0.0

0.5

1.0

1.5

2.0

2015 16 17 18 19

(兆円) (円)

(年度)

発行額(左軸)

テール(右軸)

QQE補完措置 YCC付きQQE

マイナス金利付きQQE

政策修正

3

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5

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9

10

0.0

0.5

1.0

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2.0

2.5

3.0

3.5

2015 16 17 18 19

(兆円) (倍)

(年度)

応札倍率(右軸)

QQE補完措置 YCC付きQQE

マイナス金利付きQQE

発行額(左軸)

政策修正

0.00

0.01

0.02

0.03

0.04

0.05

0.06

0.07

0.08

0.0

0.5

1.0

1.5

2.0

2.5

3.0

3.5

4.0

2015 16 17 18 19

(兆円) (円)

(年度)

テール(右軸)QQE補完措置

発行額(左軸)

マイナス金利付きQQE

YCC付きQQE 政策修正

2 月の国庫短期証券(TB)

&中期利付国債市場のレ

ビュー

- 8 -債券投資クォータリー 2019 年 3 月 1 日

図16:2月の国庫短期証券&中期利付国債市場 図17:2月のドル円ベーシス・スワップ・スプレッド

出所:Bloombergなどより三菱UFJモルガン・スタンレー証券作成 出所:Bloombergより三菱UFJモルガン・スタンレー証券作成

2月の利付国債利回り・主要年限間スプレッド<10年債基準>は、総じて見ると横這い圏で推

移した(図18)。月間平均値は40年-10年が+0.696%ポイント。節目の+0.700%ポイントが心理

的な天井になっていた。30年-10年は+0.618%ポイント。節目の+0.600%ポイントが心理的なフ

ロアになっていた。20年-10年は+0.441%ポイントで、10年-5年は+0.144%ポイント。

図18:2月の利付国債・主要年限間スプレッド 図19:20年‐10年利回りスプレッドの長期推移

出所:QUICKより三菱UFJモルガン・スタンレー証券作成 注: 「逆効果」とは、いわゆるリバーサル・レート問題のこと

出所:QUICKより三菱UFJモルガン・スタンレー証券作成

図20:30年‐10年利回りスプレッドの長期推移 図21:40年‐10年利回りスプレッドの長期推移

出所:QUICKより三菱UFJモルガン・スタンレー証券作成 出所:QUICKより三菱UFJモルガン・スタンレー証券作成

▲ 45

▲ 40

▲ 35

▲ 30

▲ 25

▲ 20

▲ 15

▲ 10

▲ 5(bp)

(月)

3カ月物

1年物

2月

0.2

0.3

0.4

0.5

0.6

0.7

0.8

0.9

1.0

0.10

0.15

0.20

0.25

0.30

0.35

0.40

0.45

0.50

12 1 2 3 (月)

(%ポイント) (%ポイント)

20年-10年(右軸)

30年-10年(右軸)

10年-5年(左軸)

40年-10年(右軸)

2月

0.2

0.3

0.4

0.5

0.6

0.7

0.8

0.9

1.0

1.1QQE QQE拡大 マイナス金利付きQQE

YCC付きQQE

(%ポイント)

(年)

<

総括検証ショック>

<逆効果解消ライン>

<過去 低水準>

政策修正

0.2

0.3

0.4

0.5

0.6

0.7

0.8

0.9

1.0

1.1

1.2

1.3

1.4(%ポイント)

(年)

<

総括検証ショック>

<過去 低水準>

<逆効果解消ライン>

QQE QQE拡大 マイナス金利付きQQE

YCC付きQQE 政策修正

0.2

0.3

0.4

0.5

0.6

0.7

0.8

0.9

1.0

1.1

1.2

1.3

1.4

1.5

1.6(%ポイント)

(年)

<

総括検証ショック>

<逆効果解消ライン>

<過去 低水準>

QQE QQE拡大 マイナス金利付きQQE

YCC付きQQE 政策修正

2 月の利付国債利回り・主

要年限間スプレッドのレビ

ュー

- 9 - 債券投資クォータリー 2019 年 3 月 1 日

3月の長期・超長期金利&イールドカーブ・シナリオ

3 月の長期・超長期金利は強含みもみ合い。

トランプ米大統領は 2 日に予定していた 2,000 億ドル分の中国製品の関税引き上げを延期

し、3 月中に習近平・中国国家主席と会談、米中貿易問題で合意を目指す。貿易戦争の泥沼

化による世界経済の下振れリスクが低下し、株高が持続するなか、金利は持ち高調整や利益

確定売りを目的とした債券売りを受けて強含み。

2 日、米連邦政府の借入限度額を定めた債務上限が復活する。米議会での与野党対立が

続き、上限を速やかに引き上げられない場合5、米長期金利はリスクオフの米国債買いを受け

て弱含み。国内金利は連れ安となる。

中国では5日より、全国人民代表大会(全人代)が開催される。景気減速色が強まるなか6、

中国政府は景気刺激策を打ち出す。景気失速懸念が和らげば、世界経済の先行きを巡る過

度な悲観論も後退し、各国金利は強含みとなる。

7 日開催される ECB 理事会は、金融政策の現状維持を決め、TLTRO(貸出条件付き長期

資金供給オペ)の再開を示唆、または決定する。政策金利のフォワード・ガイダンスは据え置

き、または微修正。また、経済・物価見通しは今年を中心に下方修正する。独長期金利は低

下余地を探り、日米の長期金利は連れ安となる。

英国では、29 日に期限が迫る EU 離脱について、12 日までに英・EU で協議中の現行案が

採決される予定。それが否決された場合は 13 日に「合意なき離脱」の是非を問う採決が行わ

れ、さらにそれも否決された場合に離脱期限の延期を議会に問う。延期の場合、「合意なき離

脱」が 終的には回避されるとの期待感が台頭し、リスクオフ・ムードが後退する。欧州金利

が強含みとなり、日米金利は連れ高となる。

日銀は14・15日に政策委・金融政策決定会合を開き、現行緩和策の維持を決める。黒田東

彦総裁が会合後の会見で『必要となれば追加緩和も検討する』(2 月 19 日の衆院財務金融委

員会)と答えると、思惑的な買いを受けて金利は弱含み。

FRBは19・20日開催するFOMCミーティングで、『利上げの可能性は弱まった』(1月30日)

というパウエル議長の示唆どおり、追加利上げを見送り、FF レート(年 2.25%~2.50%)の現

状維持を決める。注目の FF レート見通し(通称ドット・チャート)も下方修正される。日米債券

市場の反応は、想定どおりとして限られる。

中旬頃の春季労使交渉・集中回答では、ポジティブ・サプライズは生じない。安倍晋三首相

は昨年末、経済界に対し 6 年連続で賃上げを要請したが(=官製春闘・第 6 弾)、「3%」といっ

た具体的な数値目標には言及しなかった。加えて、このところ海外経済の下振れリスクが高

まるなど経営環境の先行き不透明感が強まっている。賃上げ率は例年並みにとどまり、期待

インフレ率は高まらず、金利も上がらない。

今 3 月期より、海外に営業拠点を持たない国内基準行を対象に、IRRBB(Interest Rate Risk

in the Banking Book の略、銀行勘定の金利リスク)の新規制が導入される。金利リスクを一段

5 今夏には米政府資金が枯渇するとされる。パウエル FRB 議長は 2 月 26 日の議会証言で、『利払いが不能になれば、米経済に巨大な負の影響を

もたらす』と述べ、強い懸念を表明した。 6 2 月 28 日発表された 2 月の製造業購買担当者景気指数(PMI)は前月比▲0.3 ポイントの 49.2 と、好不調の節目となる 50 を 3 カ月連続で下回り、

16 年 2 月以来の低水準だった。

3 月の長期・超長期金利&

イールドカーブ・シナリオ

- 10 -債券投資クォータリー 2019 年 3 月 1 日

と取りづらくなった国内基準行の押し目買いが手控えられるようになれば、金利は下がりにく

く、上振れしやすくなる。もっとも、銀行勢の売買高はすでに大きく減少しているので、そのよう

な非連続的な地合いの変化は起きない。

【予想レンジ】 10 年債 ▲0.030%~0.030%

20 年債 0.420%~0.480%

2019年度~21年度の長期・超長期金利&イールドカーブ・シナリオ 〔確率50%〕

国内金利動向のカギを握ってゆくのは、引き続き日銀の金融緩和政策の行方。現行の「長

短金利操作<YCC>付き量的・質的金融緩和<QQE>」のメイン/リスクシナリオは、今般、表2の

とおり、「債券投資マンスリー(1月25日号)No.439」で提示した前回見直し分(表1)の大枠を維

持する一方、リスクシナリオの具体策を一部修正した。修正箇所には下線を付した。

表1:【旧シナリオ俯瞰図】 国内金利動向のカギを握る「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」の行方〔~2021年度〕

注: 「債券投資マンスリー(1月25日号)No.439」のJGBアウトルックより

出所:三菱UFJモルガン・スタンレー証券

表2:【新シナリオ俯瞰図】 国内金利動向のカギを握る「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」の行方〔~2021年度〕

注: 「政策変更時期」は日銀「展望レポート」会合を想定。「リバーサル・レート」とは、金融緩和効果を反転させ、逆効果を生じさせるほどに低過ぎる利回り。「ヘリマネ」は

ヘリコプター・マネー政策の略称で、一般に、中央銀行のファイナンスによる利払い・償還負担を伴わない財政資金と定義される

出所:三菱UFJモルガン・スタンレー証券

日銀は経済・物価の不確実性がくすぶり続ける 2019 年度中、政策金利のフォワード・ガイ

ダンス7に則り、短期政策金利(政策金利残高付利)の年▲0.1%、長期金利操作目標のゼ

ロ%(±0.2%ポイント)程度を粘り強く維持する。その間、「 適なイールドカーブ」に規定さ

れ、日銀が許容する長期金利の下限~上限の推定値は▲0.05%~0.15%程度(図 22)8。長

期金利は当該誘導目標レンジを中心として、往来相場を続けてゆく。なお、他の主要年限の

推定誘導レンジは、2 年債と 5 年債が▲0.20%~▲0.05%程度、20 年債が 0.40%~0.70%程

度、30 年債が 0.60%~0.90%程度、40 年債が 0.70%~1.00%程度(図 23)。

7 具体的には、『2019 年 10 月に予定されている消費税率引き上げの影響を含めた経済・物価の不確実性を踏まえ、当分の間、現在の極めて低い

長短金利の水準を維持することを想定』。 8 黒田東彦日銀総裁はこの点に関し、昨年 7 月末の政策修正後の会見で、『変動幅は概ねプラスマイナス 0.1%の幅から、その倍程度を念頭に置い

ている』と述べた。しかし、リバーサル・レート問題への配慮を示さざるを得ない日銀の本音は、『▲0.200%へのマイナス深掘りは許容できない』では

ないか。

確率 政策変更時期 トリガー 狙い・理由 具 体 策

メイン

50% 2020年4月・消費増税後の景気後退回避 ⇒経済・物価の不確実性の低下・金融仲介機能の停滞リスクの高まり

・景気拡大/脱デフレの持続に応じた長短金利水準の調整・リバーサルレート対策(金融システムの不安定化回避)

・マイナス金利解除=短期政策金利(無担O/N)ゼロ%~0.1%・長期金利操作目標ゼロ%程度→0.2%程度<±0.2%ポイント>・長期国債購入額の漸減による市場機能の回復促進

A 金利水準調整の先送り 30% ―・貿易戦争激化、消費増税、五輪需要一巡 ⇒経済・物価の不確実性の上昇

・景気低迷による脱デフレの頓挫・実質金利上昇による円高リスクの回避

・短期政策金利▲0.1%、長期金利操作目標ゼロ%程度を堅持・長期国債購入額の漸減による市場機能の回復促進

B 追 加 緩 和 20% 2020年4月・貿易戦争の泥沼化⇒世界的な景気後退・信用コストの顕在化⇒金融システムの不安定化

・デフレスパイラル(=景気後退+物価下落)の阻止・金融システムの安定化

・長短政策金利のフォワード・ガイダンス強化・質的緩和の再増強(+ヘリマネ的な財政拡張)

金利水準調整+

粘り強い緩和継続

リスク

YCC付きQQEのシナリオ

確率 政策変更時期 トリガー、または前提 狙い、または理由 具 体 策

メイン

50% 2020年4月・経済・物価の不確実性の低下 =消費増税後の景気拡大・脱デフレの持続・金融仲介機能の停滞リスクの高まり

・長短政策金利の水準調整(正常化)・リバーサルレート対策、もしくは金融システムの不安定化回避

・マイナス金利解除=短期政策金利(無担O/N)ゼロ%~0.1%・長期金利操作目標ゼロ%程度→0.2%程度<±0.2%ポイント>・長期国債購入の弾力的減額による市場機能の回復促進

A粘り強い現状維持

(手詰まり)30% ―

・経済・物価の不確実性の上昇 =世界的な景気減速、消費増税後の景気低迷

・景気低迷による脱デフレ頓挫とデフレ逆戻りの防止・実質金利上昇による円高進行の回避

・短期政策金利▲0.1%、長期金利操作目標ゼロ%程度を堅持・長期国債購入の弾力的減額の見合わせ

B 追 加 緩 和 20% 2020年4月・貿易戦争の泥沼化⇒世界的な景気後退・信用コストの顕在化⇒金融システムの不安定化

・円高デフレスパイラル(=景気後退+持続的物価下落)の阻止・金融システムの安定化

・短期政策金利のマイナス深掘り、長期金利操作目標据え置き・質的緩和の再増強(+ヘリマネ的な財政拡張)

YCC付きQQEのシナリオ

金利水準調整+

粘り強い緩和継続

リスク

【メインシナリオ<総論>】

- 11 - 債券投資クォータリー 2019 年 3 月 1 日

日銀は 20 年 4 月の「展望レポート」会合で、リバーサル・レート9対策を主眼に調整利上げを

敢行する10。政策金利残高付利のマイナスを解除し、無担保コールレート翌日物の誘導目標

水準を0%~0.1%に設定する。長期金利操作目標は0.2%(±0.2%ポイント)程度に引き上げ

る。これに伴い長期金利の推定誘導目標レンジも 0.05%~0.35%程度に上方シフトする(図

22)。長期金利は当該レンジを中心として、往来相場を再開してゆく。なお、他の主要年限の

推定誘導レンジも、2 年債が▲0.05%~0.10%程度、5 年債が 0.00%~0.15%程度、20 年債

が 0.50%~0.80%程度、30 年債が 0.70%~1.00%程度、40 年債が 0.80%~1.10%程度に、

それぞれ 0.10%~0.20%ポイント切り上がる(図 24)。

なお、表3の利付国債・主要年限利回りの予想レンジは、上述した日銀の推定誘導(目標)

レンジをベースに、需給・投資家動向やその時々の相場材料等を加味して設定している。した

がって、「予想レンジ≠日銀の推定誘導(目標)レンジ」である。

図22:【2019年度~21年度】日銀の長期金利操作目標&推定誘導目標レンジ

注: 週末値で2月28日現在

出所:Bloombergより三菱UFJモルガン・スタンレー証券作成(シナリオは弊社)

図23:【~19年度】日銀による国債イールドカーブ・推定誘導レンジ 図24:【20年度~】日銀による国債イールドカーブ・推定誘導レンジ

出所:QUICKより三菱UFJモルガン・スタンレー証券作成(下限/上限は弊社推定) 出所:QUICKより三菱UFJモルガン・スタンレー証券作成(下限/上限は弊社推定) 9 預貸金利鞘の縮小を通じて銀行部門の自己資本制約をタイト化させ、金融仲介機能を停滞させたり、ひいては金融システムを不安定化させたりす

るなど、金融緩和の効果を反転させ、逆効果を招くほどに低過ぎる利回りのこと。 10 日銀は昨年 10 月の「展望レポート」より、金融政策運営の観点から重視すべきリスクとして、海外経済の下振れリスクとともに、金融仲介機能の停滞

リスクと金融システムの不安定化リスクを挙げている。

▲ 0.4

▲ 0.3

▲ 0.2

▲ 0.1

0.0

0.1

0.2

0.3

0.4

0.5

0.6

0.7

0.8

0.9

1.0(%)

(年度)

QQE QQE拡大

マイナス金利付きQQE

YCC付きQQE

<0.2%程度>

<ゼロ%程度>

シナリオ

政策修正

短期政策金利

長期金利

- 12 -債券投資クォータリー 2019 年 3 月 1 日

20

21

年度

4-6

月7

-9月

10

-12月

1-3月

4-6月

7-9

月10

-12月

1-3

月4-

6月

7-9月

10-1

2 月1

-3月

【予

想】

前期

比年

率[%

]―

2.2

▲ 2

.61.

40

.71

.11

.6▲

1.9

1.0

0.5

1.1

0.7

1.0

前年

度比

[%

]1

.90.

7

コア

消費

者物

価指

数前

年比

[%

]0

.70.

70.

90.

90

.80

.60

.40.

60.

80

.91

.10

.60.

50.

6

政策

金利

残高

付利

金利

▲ 0

.1▲

0.1

▲ 0

.1▲

0.1

▲ 0

.1▲

0.1

▲ 0

.1▲

0.1

▲ 0

.1-

--

--

--

--

--

--

--

--

--

無担

保コー

ルレー

ト翌日

物▲

0.0

68

▲ 0

.06

9▲

0.0

64▲

0.0

55▲

0.0

65

▲ 0

.06

5▲

0.0

65

▲ 0

.065

▲ 0

.065

0.0

300.

040

0.0

50

0.0

50

0.0

50

円TIB

OR

3カ

月物

0.0

69

0.0

690.

069

0.06

90

.06

90

.06

90

.06

90.

069

0.0

690

.13

00

.15

00

.17

00.

170

0.1

70

長期

金利

操作

目標

ゼロ

%程

度セ

゙ロ%

程度

ゼロ

%程

度セ

゙ロ%

程度

ゼロ

%程

度セ

゙ロ%

程度

ゼロ

%程

度セ

゙ロ%

程度

ゼロ

%程

度0.2

%程

度0.2

%程

度0.2

%程

度0.

2 %程

度0

.2%

程度

レン

ジ [

%]

▲0.

230

- ▲0

.11

0▲

0.1

55

- ▲0

.13

0▲

0.1

35-

▲0

.09

5▲

0.1

60-

▲0.

110

▲0.

185

- ▲0.

130

▲0.

180

- ▲0.

050

▲0

.18

0- ▲

0.0

50

▲0

.18

0-▲

0.0

50

▲0

.18

0-▲

0.0

50

▲0

.15

0-0

.10

0▲

0.0

20-

0.1

00

▲0

.020

-0.1

00

▲0.

020

-0.1

00▲

0.02

0-0

.100

期末

値 [

%]

▲ 0

.13

5▲

0.1

30

▲ 0

.115

▲ 0

.140

▲ 0

.150

▲ 0

.12

0▲

0.1

20

▲ 0

.120

▲ 0

.100

0.0

300.

030

0.0

30

0.0

30

0.0

30

レン

ジ [

%]

▲0.

180

- ▲0

.03

5▲

0.1

25

- ▲0

.09

0▲

0.1

20-

▲0

.05

0▲

0.1

55-

▲0.

055

▲0.

185

- ▲0.

120

▲0.

150

- ▲0.

020

▲0

.15

0- ▲

0.0

20

▲0

.15

0-▲

0.0

20

▲0

.15

0-0

.00

0▲

0.1

00-

0.1

50

0.0

20-0

.150

0.0

20

-0.1

50

0.0

20-

0.1

50

0.0

20-

0.2

00

期末

値 [

%]

▲ 0

.10

5▲

0.1

10

▲ 0

.070

▲ 0

.155

▲ 0

.130

▲ 0

.08

0▲

0.0

80

▲ 0

.100

▲ 0

.050

0.1

000.

100

0.0

80

0.1

00

0.1

00

レン

ジ [

%]

▲0

.015

-0.1

00

0.0

25

-0.0

60

0.0

20-

0.1

30

▲0

.01

0-0

.15

5▲

0.0

45-

0.0

30

▲0

.02

0-0

.13

50

.04

0-0

.18

00

.00

0-0

.15

00

.05

0-0

.25

00.

050

-0.3

500.

150

-0.3

500

.15

0-0

.35

00

.15

0-0

.35

00

.15

0-0

.40

0

期末

値 [

%]

0.0

45

0.0

30

0.1

25

▲ 0

.010

0.0

100.

055

0.1

10

0.1

00

0.1

50

0.2

500.

250

0.2

00

0.2

50

0.2

50

レン

ジ [

%]

0.51

5-0

.645

0.5

00

-0.5

45

0.4

75-

0.6

55

0.4

90-

0.6

90

0.3

95-0

.500

0.4

20-0

.600

0.5

00

-0.6

50

0.4

50-

0.6

00

0.5

00-

0.7

50

0.5

50-0

.850

0.6

50-0

.850

0.6

50

-0.8

50

0.6

50-

0.8

50

0.6

50-

0.9

00

期末

値 [

%]

0.5

30

0.5

00

0.6

55

0.4

900.

460

0.52

00

.60

00

.55

00

.65

00.

750

0.7

500

.70

00

.75

00

.75

0

レン

ジ [

%]

0.73

0-0

.905

0.6

95

-0.7

65

0.6

70-

0.9

05

0.7

05-

0.9

50

0.5

65-0

.700

0.6

00-0

.780

0.6

80

-0.8

50

0.6

30-

0.7

80

0.6

80-

0.9

30

0.7

50-1

.050

0.8

50-1

.050

0.8

50

-1.0

50

0.8

50-

1.0

50

0.8

50-

1.1

00

期末

値 [

%]

0.7

40

0.7

05

0.9

05

0.7

050.

630

0.70

00

.78

00

.73

00

.83

00.

950

0.9

500

.90

00

.95

00

.95

0

レン

ジ [

円/ドル

]1

04.5

6-1

14.

73

105

.66-

11

1.4

010

9.7

8-1

13.7

11

09.

56-

114

.55

104

.87

-11

5.0

105.

5-1

16.

51

05.

5-1

17.

51

06.0

-118

.01

05.5

-117

.510

4.5

-117

.510

4.0

-11

7.0

10

3.5

-11

6.5

10

3.5-

11

6.5

103

.0-1

17.0

期末

値[円

/ドル

]1

06.

28

110

.76

113

.70

109

.69

11

0.0

111

.01

11.5

112

.011

1.5

11

1.0

110

.51

10.0

110

.011

0.0

レン

ジ [

円/ユ

ーロ]

114

.85

-13

7.5

012

4.6

2-1

33.

49

124.

91-

133

.13

12

5.4

1-1

32.4

611

8.7

1-1

31.

711

9.6

-13

3.5

12

1.8

-13

6.9

124

.6-1

39.7

126

.3-1

41.3

127

.3-1

43.6

127.

7-1

44

.11

28.

2-1

44.

61

29.

3-1

45.

71

28.7

-146

.3

期末

値[円

/ユ

ーロ]

13

0.9

71

29.3

61

31.9

312

5.8

31

25.

41

26.5

139

.313

2.2

133.

81

35.

41

35.9

136

.413

7.5

137.

5

レン

ジ [

円]

18,

224

-24

,12

921

,05

6-2

3,0

50

21,4

62-

24,

286

18

,94

8-2

4,4

481

9,2

41-2

2,5

00

20,

000

-23

,00

020

,50

0-2

3,5

00

20,0

00-

23,

000

20

,50

0-2

3,5

002

0,5

00-2

3,5

00

21,

000

-24

,00

021

,00

0-2

4,0

00

21,5

00-

24

,500

22

,00

0-2

5,0

00

期末

値 [

円]

21,4

54

22,3

04

24

,12

02

0,0

142

2,0

0021

,50

022

,50

02

0,5

00

21,

000

22,

000

22,

000

22,5

00

23,0

00

24

,00

0

前期

比年

率[%

]―

4.2

3.4

2.6

3.0

1.0

▲ 0

.40.

2▲

0.7

0.4

0.5

0.8

0.8

暦年

・前年

比 [

%]

2.2

1.0

FFレ

ート

期末

値 [

%]

1.0

0-1

.75

1.7

5-2

.00

2.0

0-2

.25

2.25

-2.5

02

.25

-2.5

02

.25

-2.5

02

.25

-2.5

02.

25-

2.5

02.

25-

2.5

02

.25

-2.5

02

.25

-2.5

02

.25

-2.5

02

.25-

2.5

02.

25-

2.5

0

レン

ジ [

%]

2.0

387

-2.9

500

2.7

298-

3.1

11

22.

809

8-3

.09

642

.68

42-

3.2

373

2.3

5-2

.85

2.5

5-3

.05

2.5

5-3

.05

2.1

5-2

.65

2.1

5-2

.65

2.2

5-2

.75

2.1

5-2

.65

1.9

5-2

.45

2.1

5-2

.65

2.2

5-2

.65

期末

値 [

%]

2.7

42

.86

3.0

62.

68

2.8

02

.80

2.8

02

.40

2.4

02.

50

2.4

02

.20

2.4

02

.40

レン

ジ [

ドル

]2

0,38

0-2

6,6

17

23,3

45-

25

,40

324

,07

8-2

6,7

692

1,7

13-

26,

952

25,

600

-27

,40

02

5,0

00-2

6,9

00

26,7

00

-28

,60

027

,10

0-2

9,0

002

8,6

00-

30,

500

28,

500

-30

,30

02

9,6

00-3

1,6

00

29,3

00

-31

,20

029

,60

0-3

1,7

002

8,4

00-

31,

700

期末

値 [

ドル

]24

,10

324

,27

12

6,4

58

23,

327

26,

400

26,1

00

27,1

00

28

,00

02

9,5

002

9,1

003

0,00

030

,20

030

,60

03

1,7

00

前期

比年

率[%

]―

1.7

0.6

0.8

1.0

1.7

1.9

1.9

1.7

1.7

1.6

1.5

1.3

暦年

・前年

比 [

%]

2.5

1.3

預金

ファ

シリ

ティ

金利

期末

値 [

%]

▲ 0

.40

▲ 0

.40

▲ 0

.40

▲ 0

.40

▲ 0

.40

▲ 0

.40

▲ 0

.40

▲ 0

.25

▲ 0

.25

0.0

00

.00

0.0

00

.00

0.0

0

レン

ジ [

%]

0.1

6-0

.77

0.2

6-0

.65

0.2

9-0

.54

0.23

-0.5

80

.00

-0.5

00

.20

-0.7

50

.25

-0.8

00.

35-

0.8

50.

40-

0.9

00

.45

-0.9

50

.50

-1.0

00

.50

-1.0

00

.50-

1.0

00.

35-

0.9

5

期末

値 [

%]

0.5

00

.30

0.4

70.

24

0.2

50

.50

0.6

00

.60

0.6

50.

70

0.7

50

.75

0.7

50

.65

1.7

独10

年国

ユ ー ロ 圏

実質

GD

P1.

81

.3

2.9

2.1

0.1

10年

国債

NYダ

株 式 日

経平

均株

米 国

実質

GD

P

外 国 為 替

ドル

ユー

ロ円

10年

利付

国債

20年

利付

国債

30年

利付

国債

0.5

日 銀 関 連

期末

値 [

%]

利 付 国 債

2年

利付

国債

5年利

付国

日 本

実質

GD

P0.

40

.5

20

17年

度2

01

8年

度 【

予 想

】2

01

9年

度 【

予 想

】2

02

0年

度 【

予 想

表3:

2019

年度

~21

年度

の金

利・相

場予

想レ

ンジ

〔3月

1日時

点〕

注:

1.

実績

値に

つい

て~

日・米

・ユ

ーロ

圏の

国債

利回

りは

“終値

ベー

ス”。

日本

の2年

~30

年利

付国

債は

新発

物。

日経

平均

株価

、ド

ル円

・ユー

ロ円

、N

Yダ

ウは

“ザ

ラバ

・ベ

ース

2.

予想

レン

ジお

よび

予想

期末

値に

つい

て~

3月1日

時点

でア

ップ

デー

ト(前

回は

2月15

日)。

「日

本」「

短期

金利

」「中

長期

金利

」「株

式」は

円債

チー

ム、

「外

国為

替」は

外国

為替

チー

ム、

「米

国」「ユ

ーロ

圏」は

外債

チー

ムに

よる

3.

日銀

の短

期政

策金

利は

当座

預金

(政

策金

利残

高)付

利、

長期

金利

操作

目標

は10

年利

付国

債利

回り

。コ

ア消

費者

物価

指数

は消

費増

税と

教育

無償

化の

影響

を除

いた

4.

米F

Fレ

ート

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米国

とユ

ーロ

圏の

実質

GD

P成

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(暦

年)は

前年

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出所

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タン

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証券

作成

(予

想は

弊社

- 13 - 債券投資クォータリー 2019 年 3 月 1 日

2019 年度~21 年度の国内景気動向は、実質 GDP 成長率が潜在成長率(0.8%程度)を基

調としてやや下回る低空飛行。19 年度は消費増税後の駆け込み需要の反動減、20 年度はオ

リンピック需要一巡の影響を主因に、前年度比+0.4%~0.5%程度に低迷する。ただし米中・

米欧貿易摩擦の悪影響が限定的にとどまるなか、米景気のソフトランディングと 1 ドル 110 円

前後の円安地合いを背景に、純輸出が失速を免れる。万全の消費増税対策11や人手不足対

策投資の持続的拡大にも支えられ、景気は後退局面入りを回避する。そして、21 年度には米

景気のピックアップに牽引されて、実質 GDP 成長率は同+0.7%に持ち直す。

物価動向は、インフレ・ギャップ(=総需要>総供給)の持続を受け、脱デフレ状態が曲がり

なりにも持続する。ただしインフレ・ギャップが拡大頭打ちとなるなか、原油安や携帯電話料金

引き下げなどの影響で物価上昇率は伸び悩む。コア消費者物価指数<CPI>(消費税増税と教

育無償化の影響を除く)は、19 年度が同+0.4%、20 年度が同+0.5%、21 年度が同+0.6%と、

2%の「物価安定の目標」には遠く及ばない。

このような景気・物価動向のもと、日銀は経済・物価の不確実性がくすぶり続ける 19 年度中

までは、政策金利のフォワード・ガイダンス12に則り、短期政策金利(政策金利残高付利)の年

▲0.1%、長期金利操作目標のゼロ%程度を粘り強く維持する。また、長期国債の買い入れを

弾力的に減額するなどして、債券市場の機能度回復に引き続き配慮する。そして、20 年 1-3

月期に経済・物価の不確実性の低下、すなわち消費増税後の景気後退リスクの低下、あるい

は景気拡大・脱デフレの持続を確認。そのうえで、20 年 4 月の「展望レポート」会合でリバーサ

ル・レート13対策を主眼に調整利上げを敢行する。具体策は、金融機関の収益悪化の元凶の

一つになっている政策金利残高付利のマイナスを解除し、短期政策金利を無担保コールレー

ト翌日物に代え、その誘導目標水準を 0%~0.1%とする。長期金利操作目標はゼロ%程度を

解除し、0.2%程度に引き上げる(許容変動レンジは±0.2%に据え置き)。その後は 21 年度中

にかけて、金融仲介機能の停滞リスクの低下を確認しつつ、2%の物価安定目標の早期実現

を目指し、YCC 付き QQE を粘り強く続けてゆく。

なお、景気・物価・政策シナリオの詳細は本レポートのファンダメンタルズアナリシスとポリシ

ーウォッチを、米欧の景気・物価・政策シナリオはTREASURYアウトルックと欧州債アウトルッ

クを参照されたい。

4-6 月期の長期金利は強含みに推移する。米中貿易戦争の泥沼化や「合意なき英 EU 離

脱」の回避を背景に、昨秋来くすぶり続けてきた海外経済の下振れリスクが低下。悲観バブ

ルの終息に伴い期待潜在成長率と期待インフレ率が持ち直す。相場の高値警戒感から利益

確定売りが出て、長期金利は前述した日銀の誘導目標レンジ内へと回帰する。なお、4 月 27

日にスタートするゴールデン・ウィーク 10 連休前の各市場におけるポジション調整、および連

休明け後のポジション再構築の動きは波乱要因。

長期金利は 7-9 月期も強含みにもみ合う。改元(5 月~)を誘因とする消費性向の高まりや

消費増税(10月)前の駆け込み需要の拡大を背景に景況感が改善。増税後も対策効果により

景気後退局面入りは回避されるとの見方が強まり、政策金利のフォワード・ガイダンスの時間

11 消費増税による家計の負担増は約 6.3 兆円。一方、負担軽減措置は合計約 6.6 兆円が見込まれる。消費“減税”との揶揄も聞かれる。 12 具体的には、『2019 年 10 月に予定されている消費税率引き上げの影響を含めた経済・物価の不確実性を踏まえ、当分の間、現在の極めて低い長

短金利の水準を維持することを想定』。 13 預貸金利鞘の縮小を通じて銀行部門の自己資本制約をタイト化させ、金融仲介機能を阻害し、金融緩和の効果を反転させ、ひいては逆効果を招

くほどに低過ぎる利回りのこと。

景気・物価・金融政策シナ

リオ<サマリー>

長期金利シナリオ<各論>

- 14 -債券投資クォータリー 2019 年 3 月 1 日

軸効果は弱まる。早期のリバーサル・レート対策、すなわち調整利上げの前倒し観測が台頭

すると、長期金利は、黒田日銀総裁が示唆した許容上限;0.200%を意識して上昇余地を探

る。ただし、日銀が長期債の買い入れオペ増額や臨時オペ、さらには無制限購入・指値オペ

を機動的に実施するので、0.200%超への金利上昇は未然に防止される。日銀の大規模な長

期国債保有残高や保有シェアのストック効果も、引き続き潜在的な上昇抑制要因として効い

てゆく。

10-12 月期の長期金利は反落する。駆け込み需要の反動減が個人消費関連データに顕在

化するため景気後退懸念が再燃。物価上昇率<消費増税と教育無償化の影響を除く>も 0%

台前半へと鈍化する。期待潜在成長率と期待インフレ率が弱含みに転換。長期金利は押し目

買いの拡大を受け、節目のゼロ%を視野に入れ、低下余地を探る。

新年 1-3 月期の長期金利は再び強含みに転じる。日銀が 1 月公表の「展望レポート」で、消

費増税後の景気拡大と脱デフレの持続を確認し、海外経済の下振れリスク、および国内経

済・物価の不確実性の低下を認める。半面、金融仲介機能の停滞リスクや金融システムの不

安定化リスクに対しては警戒感を引き上げる14。債券市場では、『それは 4 月の次回「展望レ

ポート」会合におけるリバーサル・レート対策を主眼とする調整利上げの地ならしではない

か?』との疑心暗鬼が浮上15。すると持ち高調整売りや仕掛け売りが膨らみ、長期金利は上振

れする。日銀は臨時オペや指値オペを駆使して、許容上限の 0.200%前後で抑え込んでゆく。

20年度~21年度の長期金利は、日銀の新・誘導目標レンジ;0.05%~0.35%内で往来相場

を続けてゆく。日銀が 20 年 4 月の「展望レポート」会合で、リーク報道などによる入念な地なら

しを行ったうえで調整利上げを敢行。長期金利は当該レンジへと誘導されて上方シフト。日銀

はその後、2%物価目標の実現めどが杳として立たないなか、短期政策金利(無担保コール

レート翌日物)を事実上のゼロ%、長期金利操作目標を 0.2%程度(±0.2%ポイント)とする

YCC 付き QQE を粘り強く続けてゆく。そうしたなかでは、長期金利は米欧金利に釣られて上

がったり下がったりはするものの、上昇基調や低下基調をたどるには至らない。

2%物価目標の実現へ超(?)長期戦覚悟の日銀が YCC 付き QQE を粘り強く続けてゆくと

見込まれるなかでは、ロールダウン戦略により、キャリー収益(=インカム+ロールダウン)を

地道に取り込んでゆくのが、やはり合理的である。ターゲットは、20 年 4 月に想定される調整

利上げまでは引き続き 20 年カレント債ゾーン。金利リスク量の大きさが難点16だが、パフォー

マンスの 大化をトップ・プライオリティとするなら、リスクテイクは避けて通れない。ただし調

整利上げの地ならしが始まったと感知したら、いったん手仕舞う必要があることは言うまでも

ない。調整利上げ後に再開する。利回り水準が全般的に多少なりとも上方シフトするので、タ

ーゲットには 10 年カレント債ゾーンも加える。

リスクシナリオA;粘り強い現状維持〔確率30%〕

米中貿易戦争や「合意なき英EU離脱」の悪影響で世界的に景気減速色が濃くなる。国内

景気も消費増税後、個人消費の反動減とオリンピック需要一巡を受けて低迷する。インフレ・

ギャップの縮小と予想物価上昇率の低下を背景に脱デフレが頓挫。物価上昇率は0%近傍ま

14 日銀は昨年 10 月の「展望レポート」より、金融政策運営の観点から重視すべきリスクとして、海外経済の下振れリスクと、金融仲介機能の停滞リスク

や金融システムの不安定化リスクを挙げている。 15 黒田日銀総裁が金融緩和政策の総括的な検証の第 2 弾を指示したら、債券市場はそれを同・第 1 弾の経験則に基づき、次回「展望レポート」会合

における政策変更の決定的サインと捉えるだろう。 16 19 年 3 月期より、国内基準行への「銀行勘定の金利リスク(IRRBB)」規制が適用される。

【リスクシナリオ A】

国債イールドカーブ戦略

- 15 - 債券投資クォータリー 2019 年 3 月 1 日

で鈍化してしまう。日銀はリバーサル・レート対策の必要性を認めつつも、脱デフレの頓挫や

デフレ逆戻りを防止し、実質金利上昇による円高を回避するべく現行緩和策を粘り強く維持。

長期金利は日銀の誘導目標レンジ(▲0.100%~0.150%)内で往来相場を延々続けてゆく。

リスクシナリオB;追加緩和〔確率20%〕

報復関税の応酬により世界貿易戦争が泥沼化する。19年後半、世界的な景気後退局面が

到来。国内では、日銀が監視を強化していた「ミドルリスク企業」向けの与信コストが顕在化し、

地域金融機関を中心に収益悪化に拍車がかかる。マイナス金利政策の累積的な悪影響も相

まって自己資本比率が低下し、金融仲介機能が停滞、ひいては金融システムが不安定化し

てしまう。日銀は円高デフレスパイラル(=景気後退と持続的な物価下落の同時進行)の阻止

と金融システムの安定化を期して追加緩和に踏み切る。円高対策として短期政策金利のマイ

ナス深掘り。長期金利操作目標はリバーサル・レート問題に配慮してゼロ%程度に据え置く。

金融システムの安定化策としては質的緩和の再増強。デフレスパイラルに陥ってしまった場合

には、いよいよヘリコプター・マネー的な財政拡張策17も発動される。長期金利は、日銀の誘

導目標レンジ(▲0.200%~0.10%)内で低下余地を探る。一方、ヘリマネ的な財政拡大が敢

行された場合には、「悪い金利上昇」を仕掛ける売りが膨らみ、急上昇する場面がある。

表4:2019年 注目される国内外のイベント・スケジュール〔3月1日現在〕

注: ( )内の数字は日付。「*」は、日銀会合が「展望レポート」の、FOMCが経済・FFレート見通しの公表を示す

出所:各種報道等より三菱UFJモルガン・スタンレー証券作成

(3月1日 13:30)

17 ヘリコプター・マネー政策とは、一般に、利払い・返済義務なき財政資金(例えば無利息・永久国債)の中央銀行によるファイナンス(引き受け)のこ

と。政府債務の中銀によるマネタイゼーション。

1日銀会合(22・23)*通常国会召集(28)景気拡大が戦後 長期間73カ月を更新か

ねじれ議会開始(3)トランプ大統領就任2年(20)FOMC(29・30)

英EU離脱の英議会採決(15)日ロ首脳会談(モスクワ,21)ECB理事会(24)

2 日EUのEPA発効(1)大統領一般教書演説(5)FRB議長半期議会証言(27)

中国春節(5)

3日銀会合(14・15)春季労使交渉の集中回答国内基準行にIRRBB適用開始

米中貿易協議の交渉期限(1)連邦債務の法定上限引き上げ期限(1)FOMC(19・20)*大統領が予算教書提出

中国全人代開幕(5)ECB理事会(7)英EU離脱期限(29)

4

新元号の公表(1)改正出入国管理法施行(1)統一地方選(7・21)日銀会合(24・25)*GW 10連休スタート(27)天皇陛下が退位(30)

FOMC(30・1)財務省半期為替報告書

ECB理事会(10)

5 皇太子さまが即位,改元(1) 欧州議会選挙(23~26)

6日銀会合(19・20)大阪G20首脳会議(28・29)

FOMC(18・19)*ECB理事会(6)ECBフォーラム(17~19)

7参院選(21?)東京五輪開幕まで1年(24)日銀会合(29・30)*

FOMC(30・31)FRB議長半期議会証言景気拡大が戦後 長期間120カ月を更新?

ECB理事会(25)

8 仏G7首脳会議(24)

9日銀会合(18・19)ラグビーW杯日本大会開幕(20)

FOMC(17・18)* ECB理事会(12)

10消費税率;8%→10%(1)日銀会合(30・31)*

FOMC(29・30)財務省半期為替報告書

ECB理事会(24)ドラギECB総裁任期満了(31)

11ベルリンの壁崩壊から30年(9)中国「独身の日」(11)

12日銀会合(18・19)日経平均が 高値から30年(29)

FOMC(10・11)* ECB理事会(12)

日 本 米 国 アジア,欧州ほか

【リスクシナリオ B】

【参 考】

- 16 -債券投資クォータリー 2019 年 3 月 1 日

月 日

2 22 アウトルック 長期金利の「ストック効果モデル」による根強い低下圧力の検証

15 羅針盤 下方修正~YCCによる主要年限利回りの誘導レンジ<推定値>

12 羅針盤 チャート分析に基づく超長期債利回りのブル・フラット化めど

50%まで引き下げたメインシナリオの確率になおかかる下方バイアス

金利の“反転・上昇”のきっかけは何か? タイミングはいつか?

5 羅針盤 未だ温存されている「買い入れ利回りへの下限設定」という妙手

「FRBプット」のおかけで復活しつつある米国市場の「適温相場」

陽線だった1月足が示唆するリスクシナリオB<追加緩和>の蓋然性

1 31 羅針盤 昨秋来の長期金利・低下サイクルを延伸させている複合要因

世界経済の下振れリスクの高まりでメインvs.リスクシナリオの確率は五分五分に

立春の2 月も出てきそうにない金利上昇の「芽」

24 羅針盤 「操作目標;ゼロ%程度」が解除されたら長期金利は何%?

22 羅針盤 昨年10~12月の大幅ブル・フラット化の牽引役は外国人?

18 アウトルック 長期金利の往来相場~1 月21 日は昨秋来の低下サイクル・ 終日

17 羅針盤 日銀は長期金利のマイナス圏定着や深掘りを容認できるか?

15 羅針盤 「悪い金利上昇」リスクをヘッジする超高齢社会のプラス貯蓄率

経済・物価の不確実性上昇で上方バイアスがかかるリスクシナリオA・B の蓋然性

2連敗を喫した「債券先物・1 月足の予言」、敗因は?

9 羅針盤 リバーサル・レート対策の喫緊性は後退しているが…

7 羅針盤 転機が近そうな昨秋来の日米株安/債券高

4 羅針盤 債券市場動向;2018年レビュー&19年プレビュー

雲散霧消した新年1 月「展望レポート」会合における早期政策修正/変更期待

新年の株式相場で待望される割安修正狙いの押し目買いの誘因

19 羅針盤 日銀は長期金利のマイナス圏突入・定着を許容するか?

12・19「ドット・プロット」が“フラット化”した場合の米長期金利動向の影響

根強い早期政策修正期待~黒田日銀総裁の12・20 会見での回答は?

13 羅針盤 イールドカーブ・コントロールの持続性のカギを握るストック効果

11 羅針盤 為替ヘッジ付き外債投資のコスト高で見直される円債投資妙味

低下サイクルの日柄では6 合目、値幅では7 合目に位置している現下の長期金利

長期金利に低下圧力をかける「業況判断DI スプレッド」の2 期連続マイナス

6 羅針盤 米景気減速・後退の予兆が日銀金融政策見通しに及ぼす影響

30 アウトルック 12月および18年度下期~21年度の長期・超長期金利&イールドカーブ・シナリオ

26 羅針盤 現実的な「出口」の模索へと舵を切っている第二期・黒田日銀

金利低下の要因分解~株安/原油安による期待潜在成長率/期待インフレ率低下

改めて確認された生損保と農林系金融機関の超長期債投資の積極化

現在は10 月4・9 日の毛抜き天井0.155%から始まった金利低下サイクルの4合目

底打ち感が台頭した新規貸出金利、低下ペースが減速している既存貸出金利

15 羅針盤 日銀の「次の一手」と国債イールドカーブ変化の関係

市場機能回復が『若干』にとどまるなか、否応なく強まる政策修正・第2 弾観測

金融仲介機能の先行き停滞懸念を払拭? 近の銀行「国債残高減/貸出残高増」

9 羅針盤 どうやら緒に就いた長期国債購入額漸減・第2弾の効果

8 羅針盤 11・6米中間選挙後の国内長期金利動向をどう読むか?

*** 「JGBアウトルック」と「JGB羅針盤」のバック・ナンバー ***

【JGBレポートのご活用法】 随時発行の「JGB羅針盤」は、債券市場の相場材料やトピックを掘り下げた実証分析レポートです。これに対し、毎週末に定期発行している「JGBアウトルック」

(債券投資ウィークリー/マンスリー/クオータリーに掲載)は、長期金利&イールドカーブ・シナリオの定点観測という位置付けです。シナリオという織物を作成していくうえで、

「JGB羅針盤」はいわば横糸、「JGBアウトルック」は縦糸にあたります。横糸の織り方を変えたとき 、すなわち「JGB羅針盤」で新たなファクトファインディングがあった場合には縦糸の織り方も変える、すなわち「JGBアウトルック」でシナリオを軌道修正することになります。このように両レポートは密接に連関しております

ので、どちらもお見逃しなく !

タイトル

8 アウトルック

1 アウトルック

25 アウトルック

11 アウトルック

1225 アウトルック

14 アウトルック

7 アウトルック

11

22 アウトルック

16 アウトルック

9 アウトルック

- 17 - 債券投資クォータリー 2019 年 3 月 1 日

ファンダメンタルズアナリシス

3 月および 2019 年度~21 年度の景気・物価シナリオ

シニア・マーケットエコノミスト 戸内 修自

今週公表された景気・物価統計のうち主要なものに関しては、後掲「2月の景気・物価レビ

ュー」にて概略を紹介しております。

来週公表が予定されている主な経済指標は、表1のとおり。なお、通常翌々月10日までに

公表されることが多い毎月勤労統計<速報>の1月分については、本稿執筆時点で発表日

が公表されていない。

表1:来週(3月4日~8日)公表予定の主要景気指標

出所:各種資料より三菱UFJモルガン・スタンレー証券作成

10-12月期GDP<2次速報>では、実質GDPを前期比年率+1.3%と予想。1次速報は同年

率+1.4%だった。法人企業統計では、設備投資(名目、ソフトウェア除く、金融・保険除く)が

前期比+3.3%と製造業がけん引する形で堅調。ただし金融・保険業の投資等には伸び悩み

もみられたことから、GDPでの設備投資(実質)は同+1.9%と、1次速報(同+2.4%)から若干

の下方修正を予想。他方、在庫投資は上方修正され(実質GDP前期比に対する寄与度:▲

0.1ppt←1次速報:▲0.2ppt)、両者がほぼ打ち消し合う姿となりそう。

1月家計調査での実質消費支出(二人以上世帯、変動調整値)は前年同月比▲0.4%と予

想(←12月:同+0.1%)。1月の商業動態統計・小売業販売額(名目)は対前年増加率が12月

から縮小、季調済前月比はマイナスだった。堅調だった衣料品が減少に転じるなど、過半の

業態で12月を下回っている。家計調査でもここ数ヵ月は衣料品(被服及び履物)が伸びてい

たことから、1月は息切れ感が現れると想定。

1月景気動向指数・一致CIは、前月比▲2.8ptと3ヵ月連続の前月比低下を予想。後掲「2月

の景気・物価レビュー」欄でも述べるとおり、1月鉱工業生産が大幅低下、関連指標も総じて悪

化。一致CIに基づく景気判断は昨年9月以降「足踏み」が続いているが、当方予想どおりとな

れば一段の下方修正(「下方への局面変化」)の条件を満たす。

1月国際収支統計での経常収支は、400億円の小幅な黒字を予想。同月の貿易統計では、

アジア旧正月時期のずれもあって輸出が下振れ、赤字が拡大。国際収支ベースでも貿易収

支は前年同月を上回る赤字となりそう。第1次所得収支の大幅黒字に変化はないものの、12

月に続いての前年割れを見込む。直接投資収益(受取)が2ケタの減少と比較的減少幅が大

きく、世界景気鈍化の影響が現れ始めているとの印象を受ける。

公表日 指標 公表日 指標

3月7日(木) 景気動向指数<速報> 1月分 3月8日 (金) 家計調査・消費動向指数 1月分

消費活動指数 1月分 四半期GDP<2次速報> 10-12月期分

貸出・預金動向 2月分

国際収支 1月分

景気ウォッチャー調査 2月分

2 月 25 日~3 月 1 日の景

気・物価レビュー

3 月4 日~8 日の景気・物価

プレビュー

10-12 月期 GDP・2 次速

報は 1 次速報とほぼ変わ

らずと予想

家計調査の実質消費は前

年比減少を予想、衣料品

等が下押し

1 月景気動向指数・一致

CI に基づく景気判断は下

方修正か

1 月経常黒収支は小幅の

黒字見込み

- 18 -債券投資クォータリー 2019 年 3 月 1 日

2018年10-12月期のGDP<1次速報>(14日(木))では、実質GDPは前期比+0.3%、同年

率+1.4%と、2四半期ぶりプラス成長。前回減少していた個人消費や設備投資、輸出がいず

れも増加に転じた。個人消費は、石油製品や食品の値上がり一服が支えとなり、自然災害に

よる7-9月期レジャー関連支出低調の反動もみられた。輸出も財輸出・インバウンド消費が持

ち直したが、財輸出は年終盤にかけアジア・中国向けが減少したため、7-9月期の落ち込みを

完全には取り戻せなかった。また、輸入が幅広い品目で高い伸びとなり、GDPに対しては抑

制要因として働いた。

1月の財・サービス輸出はアジア旧正月要因がかく乱しているが、昨年終盤からトレンドは変

わっていないと考えられる。1月貿易統計(20日(水))では輸出数量が前年同月比▲9.1%と12

月の同▲5.8%から減少率が拡大。米国・EU向けは底堅さを維持も、アジア向け・中国向けが

落ち込んだ。アジア旧正月のスタートが昨年に比べ早かったため、1月の輸出に対して抑制要

因になったとみられるが、それを除いた実勢としても前年割れが続いたものと推測される(図1

は実質輸出入)。1月の訪日外客数(20日(水))は同+7.5%と12月(同+4.4%)から伸び率が

拡大。海外旅行者数やインバウンド消費(サービス輸出の一部を構成)については旧正月休

暇の前倒しがプラスに働いており、自然災害による落ち込みの後の回復は緩慢。

設備投資については、機械投資の先行指標とされる12月の機械受注<船舶・電力を除く民

需>(以下「コア受注」)が前月比▲0.1%。非製造業は通信等が増加したが、電気機械や資本

財等主要輸出セクターからの受注が減少しコア受注を下押しした。コア受注は10-12月期では

前期比▲4.2%と6四半期ぶりに前期比減少(図2)。製造業(同▲6.2%)については、期初見通

しからのずれを示す達成率が90.3%と2017年1-3月期以来の低さで、米中貿易摩擦激化への

懸念やアジア・中国向け輸出の減少が慎重姿勢につながったとみられる。同時に公表された

1-3月期のコア受注は同▲1.8%と減少が続くとの見通しで、製造業では3四半期連続のマイ

ナスが見込まれている。

図1:実質輸出入と訪日外客数 図2:設備投資関連指標

注: 訪日外客数は弊社試算の季調値

出所:財務省、日本銀行、政府観光局より三菱UFJモルガン・スタンレー証券作成

注: 機械受注の直近(点線部分)は 1-3 月期見通し(名目値で先延ばし)

出所:内閣府、経済産業省より三菱 UFJ モルガン・スタンレー証券作成

個人消費は、12月は消費総合指数が前月比マイナス、消費活動指数はプラスと異なる動き

(図3)。12月は消費財総供給(国内向け出荷+輸入)が前月比マイナス、家計調査では食品

による下押しがみられたことが、総合指数の低調となっ手現れた。他方、活動指数では、主要

基礎統計である小売業販売額(商業動態統計)の伸びが素直に反映された。なお、その小売

業販売額は、1月は前月比低下。衣料品の増加が一服感するなど、過半の業態で売上が12

月を下回っている。

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2012 2013 2014 2015 2016 2017 2018 2019

実質輸出 (同・四半期) 実質輸入

(同・四半期) 訪日外客数<右軸>

(15年=100) (15年=100)

(年)90

95

100

105

110

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130

135

2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 2018 2019(年)

SNA民間設備・実質 資本財<除く輸送機械>・総供給

実質機械受注<船舶・電力除く民需> 建設業活動指数(民間非住宅+土木)

(10年=100)

2 月の景気・物価レビュー:

10-12 月期 GDP はプラス

成長も輸出は災害からの

回復鈍く、1 月も弱い動き

需要項目別動向

- 19 - 債券投資クォータリー 2019 月 3 月 1 日

12月分の家計所得は年末賞与が押し上げ。12月毎月勤労統計(22日(金)、確報)の現金

給与総額(一人当たり賃金)は前年同月比+1.5%(図4)。ボーナスを含む特別給与(12月現

金給与のほぼ半分を占める)が同+2.4%としっかりした伸びだったことによる。ベンチマーク

更新等の影響を調整し、トレンドをとらえるために作成されている共通事業所ベースでの賃金

上昇率は、公表値を下回る月が多いが、12月現金給与総額は同+2.0%と、珍しく公表値より

高かった。特別給与が公表値を上回る増加だった(同+3.4%)ためで、前回11月に同+1%

台に改善していた所定内給与は、12月は同+0.6%と再び+0%台に戻っている。

図3:個人消費関連指標 図4:現金給与総額

注: 実質・季調値(当方試算)

出所:内閣府、日本銀行より三菱 UFJ モルガン・スタンレー証券作成

注: 共通事業所=ベンチマーク更新等の影響を調整

出所:厚生労働省より三菱 UFJ モルガン・スタンレー証券作成

1月鉱工業生産(28日(木)、速報)は前月比▲3.7%(図5)。中国向け需要が落ち込んでい

る資本財関連(生産用機械等)や電子部品・デバイスがいずれも大幅なマイナス。自動車大

手による一時生産停止といった一時的要因も生産を下押しした。1月までの生産実績を2・3月

予測指数で延長すると、1-3月期は前期比▲1.4%(←10-12月期:同+1.9%)。ただし2月につ

いては予測誤差を考慮した経産省「先行き試算値」の数字をあてはめると、1-3月期のマイナ

ス幅はこれより大きくなる。大企業を対象とした月次サーベイでは景況感の悪化が続き、中小

企業のマインドも足元冴えない動きがみられる。

1月消費者物価は持ち直し。1月全国消費者物価(22日(金))・<生鮮食品を除く総合>

(コアCPI)は前年同月比+0.8%となり、12月の同+0.7%から上昇率が拡大(図6)。<生鮮食

図 5:鉱工業生産【業種別】 図 6:消費者物価

注: 直近2ヵ月(18年2・3月)は予測指数で先延ばし

出所:経済産業省より三菱UFJモルガン・スタンレー証券作成 出所:総務省統計局より三菱UFJモルガン・スタンレー証券作成

-1.0

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1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112

2016 2017 2018

現金給与総額 現金給与総額(共通事業所)

所定内給与 所定内給与(共通事業所)

(前年同月比%)

(年/月)

80

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95

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105

110

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120

2014 2015 2016 2017 2018 2019(年)

電子部品・デバイス 輸送機械

汎用・業務用機械+生産用機械 鉱工業計

予測指数により延長

(2015年=100)

-3

-2

-1

0

1

2

3

4

2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 2018 2019

コアCPI<全国> 同(増税分調整)

コアCPI<東京都区部> 同(増税分調整)

生鮮食品・エネルギー除く総合<全国> 同(増税分調整)

(年)

(前年同月比%)

生産・企業活動

物価動向

- 20 -債券投資クォータリー 2019 年 3 月 1 日

品・エネルギーを除く総合>(コアコアCPI)も同+0.4%と12月を上回る上昇。自動車保険料・

宿泊料および新聞代の3品目でコアを+0.12ppt押し上げており、値上げ品目の広がりはあま

りみられなかった。エネルギーの上昇率縮小が続いており、食品も米価格の上昇一服等に伴

い前年比では鈍化が続いている。2月東京都区部のCPI(3月1日(金))は前年同月比+1.1%

で、1月と同水準。

10-12月期GDP<2次速報>はプラス成長を保つ。ただし、1月分以降の国内主要指標で

は輸出の弱さが続くとともに、設備投資への波及も警戒される状況。2月の輸出に関しては、

アジア旧正月時期のずれにより財輸出は1月から改善、インバウンド動向を示す訪日外客数

は逆に悪化。1月と併せてみれば財輸出はアジア・中国向けで弱い動きが継続、訪日外客数

は緩慢な回復。設備投資については、機械投資の先行指標である1月の機械受注<船舶・電

力を除く民需>では、電気機械等からの受注が減少傾向、他の輸出セクターも伸び悩む。個

人消費は、均してみれば緩慢な回復。全体としては石油製品や食品の値下がりが下支えとな

るが、堅調だった10-12月期の直後でもあり、やや足取りが重い展開。毎月勤労統計の現金給

与総額(一人当たり賃金)は賞与のプラス効果がはく落も、共通事業所ベースで+0%台と

2018年度内の平均的な伸びを確保。鉱工業生産は、1-3月期を通じては前期比マイナス、

10-12月期のプラスと均しても減少傾向。輸出の弱さに加え、国内向けの資本財も受注の増加

一服を受けて伸び悩む。2月全国コアCPIは、同+0.7%へと再び鈍化。エネルギーの上昇率

縮小が続き、1月の改善に寄与した品目も持続的な押し上げは見込みにくい。予想インフレも、

高まりにくい状況が続く。2019年春闘(3月14日集中回答日)での賃上げ率・ベアは、先行き不

透明感から企業が賃上げに慎重姿勢を強め、2018年を小幅下回る。

3月の景気・物価シナリオのポイント

(1) 輸出・生産の下振れ警戒が続く

(2) 食品値上げにもかかわらず、CPIは鈍化方向を予想

(3) 2019年春闘でのベアは18年を小幅下回る見込み、企業収益鈍化が逆風に

1・2月の月例経済報告では景気判断が「緩やかに回復している」で据え置かれており、1月

には今次景気拡大局面(2012年12月~)が戦後 長を更新した可能性への言及があったば

かり。しかし先述のとおり、1月の一致CIに基づく景気判断は、「下方への局面変化」1に下方

修正されることが予想される(12月までの一致CIの推移は図7)。一致CIは生産関連統計の変

動を反映する傾向が強い。1月の生産は、前月比で大幅低下。先述のとおり、自動車大手に

よる一時生産停止で同社の生産が前年比半減たことの影響は小さくなかった。自動車の減産

は既に解消されたようで、2月には反動が想定され、そのことは予測指数にもそのことが織り込

まれているように見える。もっとも、輸出の弱さが生産を下押ししていることにも変わりはない。

対中国輸出が減少している資本財や電子部品の生産は、当初計画からの下振れ傾向が続い

ている。海外需要の弱さが国内に波及する兆しも現れ始めている。10-12月期の機械受注統

計では、設備投資の先行指標である<船舶・電力を除く民需>が、6四半期ぶりに前期比で

減少。1-3月期の見通しも小幅マイナスとなっていた。

1 「事後的に判定される景気の山が、それ以前の数か月にあった可能性が高いことを示す」と定義されている。

3 月の景気・物価シナリオ

ポイント(1) 輸出・生産の

下振れ警戒が続く

- 21 - 債券投資クォータリー 2019 月 3 月 1 日

2~3月のCPIは、上昇率鈍化方向をみている。2月のレビュー欄でも簡単に触れたとおり、1

月の上昇率拡大は一部品目による押し上げが大きく、上昇に広がりはうかがえなかった。2月

に入り石油製品価格は下げ止まりの様相ながら、電気代が今後は値下がりに転じる見込みで

あることも考慮すると、エネルギーの対前年上昇率は縮小に向かうと予想。

このところ食品値上げに関する報道が増えており、3月は魚介製品等、4月以降は菓子類

等の値上げがCPI上昇要因となりそう。ただし食品価格全体としては、原材料コストの上昇一

服もあってここもと上昇率が鈍化。 近の食品値上げは人件費や物流費等の高騰を理由とす

るケースが多く、円安による原材料コスト増を主因とする2013~15年のそれとは異なり、持続

性を有する。ただし原材料コスト増による後押しがないと、CPI全体として上昇が加速する展開

はなかなか想定しにくい。

2019年春闘は3月13日(水)に集中回答日を迎え、自動車・電機等の主要製造業企業での

妥結結果が一斉に公表される。労使間の賃金交渉において政府が賃上げを要求する、いわ

ゆる官製春闘は2014年に始まり、今年2019年で6年目となる。ベアは2014年以降プラスが定

着しているとは言うものの、0%台半ばと伸び悩んでいる(図8)。昨年2018年は企業収益好調

という追い風があったにもかかわらず、ベアは0.54%と、2017年(0.48%)からの上乗せはわず

かだった。当方では、今春春闘でのベアは、小幅鈍化を予想している。企業を対象とする各

種アンケートでは、賃金の決定要因として も重要な要素は企業収益であり、その先行きに懸

念があるなかでは、企業はベアに慎重にならざるを得ない。当方見通しどおり若干のプラス幅

縮小となれば、個人消費や消費者物価の改善には弾みがつきにくい。

図 7:一致 CI 図 8:春闘賃上げ率

出所:内閣府より三菱 UFJ モルガン・スタンレー証券作成

出所:厚生労働省、連合、日本経団連より三菱 UFJ モルガン・スタンレー証券作成

2019年春闘での賃上げ率・ベアの下方リスクとしては、“官製”度合いの後退が挙げられる。

今年の春闘は、さまざまな意味で曲がり角を迎えつつあるといわれる。昨年5月に新たに就任

した日本経団連の中西宏明会長は、賃上げの必要性について折に触れ言及すると同時に、

近の賃上げが官制春闘と評されることに対して違和感を表明、その点は今春春闘における

経団連の基本方針(「経営労働政策特別委員会報告」)にも反映されている2。政府による賃

上げ要請も、昨年は「3%」という水準を示すなど踏み込んだ内容になってきていたものが、今

2 「経営労働政策特別委員会報告」では、2017・18 年と続けて政府要請を踏まえた記述(2018 年は 3%賃上げ)が登場していたが、今年は「賃金の引き

上げは、政府に要請されて行うものではない」という文言が盛り込まれた。

65

70

75

80

85

90

95

100

105

110

2000 2002 2004 2006 2008 2010 2012 2014 2016 2018

景気後退期間 一致CI

(2015年平均=100)

(年)

-0.5

0.0

0.5

1.0

1.5

2.0

2.5

3.0

2000 2002 2004 2006 2008 2010 2012 2014 2016 2018

(%)

(年度)

春闘賃上げ率(連合) 同・うちベースアップ分(連合)

春闘賃上げ率(厚生労働省) 同・うちベースアップ分(中労委)

春闘賃上げ率(日本経団連) 同・うちベースアップ分(日本経団連)

官製春闘

ポイント(2) 食品値上げに

もかかわらず、CPI は鈍

化方向を予想

ポイント(3) 2019 年春闘で

のベアは 18 年を小幅下

回る見込み、企業収益鈍

化が逆風に

- 22 -債券投資クォータリー 2019 年 3 月 1 日

年は水準への言及を避けている。ただ、官製春闘スタート直後はともかく、ここ2~3年の賃上

げ率・ベアは小幅の変動にとどまっており、政府賃上げ要請の効果もはっきりとは見て取れな

い。一方、タイトな労働需給環境は、賃金の上振れ要因。企業アンケートをみると、賃金決定

の際に重視した要素として雇用者確保を挙げる割合が上昇している。ただ労働需給ひっ迫の

影響は、パートタイム労働者等の非正規雇用賃金には現れやすいものの、正規社員の賃金

には反映されにくいと思われる。

【メインシナリオ】 <確率:50%>~平均すれば、潜在成長率(+1%程度)を下回る成長。

2019年10月の消費増税後の個人消費の下振れは政府の需要平準化策によって軽減される

ほか、東京五輪後の投資の反動減も深刻なものとはならないが、19~20年度の成長抑制要

因となることは避けられず。21年度はやや持ち直し。コアCPIは需要平準化策の効果がかく

乱要因となるが、基調としては需給改善の足踏みを背景に改善は緩やか

〔2019年度〕 ~ 消費増税に伴う家計負担増で成長鈍化。コアCPIはかく乱要因を除けばエ

ネルギー高一巡で上昇鈍化

・年度成長率は2018年度並みで伸び悩む。10%への消費税率引き上げは予定通り10月に

実施される。個人消費は、年度前半は増税前の駆け込み(1.4兆円程度)で加速、後半はそ

の反動と家計負担増で落ち込みを強いられる。軽減税率が導入(食品等の税率を8%で据

え置き)されるほか、政府が用意した一連の家計支援策(教育無償化措置、各種給付金、

自動車税制等)は増税後の家計負担増を軽減するものの、一定の負担は残ることから、増

税後の個人消費は抑制される。輸出は弱い動きが続くが、年度終盤にはIT関連需要で底打

ちの動き。また、「防災・減災、国土強靭化のための3か年緊急計画」(3年間で7兆円)が、公

共投資を下支えする。

・CPIは、一過性の押し上げ・押し下げ要因が交錯。消費増税の影響により10月から+1.0pt

程度押し上げられる(年度平均で+0.5pt)半面、教育無償化が10月から▲0.6pt(年度平均

で▲0.3pt)下押し。政府要請を受けての携帯電話料金引き下げも、追加的な押し下げ要因

となる。これらの要因を除くCPIの基調は、コアCPがエネルギーの押し上げ寄与はく落で鈍

化。コアコアは人件費・物流費転嫁の動きがみられるも、原材料コストの上昇が鈍化、緩慢

な上昇にとどまる。

〔2020年度〕 ~ 五輪関連投資がピークアウト、CPIは人件費・物流費上昇転嫁の動きがサ

ポート

・年度成長率は2019年度とほぼ同水準。消費増税の影響が一巡し、個人消費は緩慢なが

らも回復軌道に復帰する。東京五輪・パラ開催期間にかけては関連グッズ販売や映像・音

響機器の需要が支出を押し上げるほか、外国人観光客増加に伴いインバウンド消費も一時

的な盛り上がりをみせる。交通制限等に伴う経済活動の制約はあるものの、7-9月期の成

長率は小幅ながら高まる。他方、五輪開催に向け進められてきたインフラ整備や宿泊施設

建設は一巡に向かうことに加え、広義の五輪関連投資とされるオフィス再開発も、急減には

至らないもののめ増加ペースは一服となり、設備投資の伸びを抑える

・コアCPIは、消費増税・教育無償化の影響が年前半にかけて残る。コアコアCPIでみれば、

人件費・物流費の持続的な増加を転嫁する動きが継続し上昇率は若干加速。五輪・パラ開

催期間には宿泊料等の一時的な上昇も発生。

2019 年度~21 年度の

景気・物価シナリオ

- 23 - 債券投資クォータリー 2019 月 3 月 1 日

〔2021年度〕 ~ 成長率は持ち直し。CPIは緩やかな上昇が継続

・成長率は20年度を上回る。五輪関連投資の一巡により、民間の建設投資は失速には至ら

ずも、弱めの動きが続く。他方、個人消費においては、年度ベースでは増税の影響が解消、

2020年度を上回る増加となる。ただし、加速感は出にくい。社会保障費負担の増加、マクロ

経済スライドの発動により家計の可処分所得は抑制され、高齢者世帯を中心に先行き懸念

が根強く残る

・コアCPIは、人件費増転嫁の動きを背景に緩やかな上昇を継続。ただし+1%には届かず

表2:日本経済見通し

出所:内閣府等より三菱UFJモルガン・スタンレー証券作成(見通しは弊社)

景気・物価とも、従来のシナリオを概ね踏襲。実質GDPについては、足元の輸出・生産の

弱さを勘案し、2018・19年度をそれぞれ0.1pt下方修正。CPIに関しては、原油・為替相場の前

提について足元調整を行ったことに伴う小幅修正が発生しているが、緩慢な上昇が続くとの

見方については維持している。

2019年10月に予定されている消費増税、および教育無償化を含む家計負担軽減策・需要

平準化策については、予定どおりの実施を前提としている。当方は従来より、教育無償化は

CPIに反映されると想定。表2中のコアCPI(生鮮食品を除く総合)・コアコアCPI(生鮮食品・エ

ネルギーを除く総合)見通し欄では、1行目に消費増税と教育無償化の影響を含む公表ベー

スの数字、2行目( )内には両者の影響を除いた数字を掲載。

(単位:%)

17年度 18年度 19年度 20年度 21年度

4-6 7-9 10-12 1-3 4-6 7-9 10-12 1-3 4-6 7-9 10-12 1-3 【予想】 【予想】 【予想】 【予想】

実質GDP 0.6 ▲ 0.7 0.3 0.2 0.3 0.4 ▲ 0.5 0.2 0.1 0.3 0.2 0.2 1.9 0.4 0.5 0.5 0.7

(前期比年率) 2.2 ▲ 2.6 1.4 0.7 1.1 1.6 ▲ 1.9 1.0 0.5 1.1 0.7 1.0

(前年比) 1.5 0.1 ▲ 0.0 0.4 0.1 0.9 0.4 0.4 0.3 0.2 0.8 0.8

国内需要* 0.7 ▲ 0.5 0.6 ▲ 0.1 0.6 0.5 ▲ 0.8 0.2 0.1 0.3 0.1 0.2 1.5 0.6 0.8 0.3 0.5

民間需要* 0.7 ▲ 0.5 0.5 0.1 0.5 0.4 ▲ 0.8 0.1 0.1 0.2 0.1 0.1 1.3 0.7 0.7 0.2 0.5

個人消費 0.6 ▲ 0.2 0.6 0.0 0.4 0.9 ▲ 1.9 0.2 0.3 0.5 0.1 0.1 1.1 0.6 0.4 0.1 0.5

住宅投資 ▲ 2.0 0.5 1.1 0.6 1.2 0.1 0.0 ▲ 0.1 ▲ 0.6 ▲ 1.1 ▲ 0.9 ▲ 0.6 ▲ 0.7 ▲ 4.4 2.4 ▲ 2.1 ▲ 2.2

設備投資 2.5 ▲ 2.7 2.4 0.1 0.7 0.6 0.5 0.4 0.5 0.5 0.4 0.3 4.6 3.3 2.1 1.8 1.9

民間在庫* 0.0 0.1 ▲ 0.2 0.1 0.1 ▲ 0.2 0.2 ▲ 0.0 ▲ 0.1 ▲ 0.1 0.1 0.0 0.1 ▲ 0.0 0.1 ▲ 0.1 ▲ 0.0

公的需要* ▲ 0.0 ▲ 0.1 0.1 ▲ 0.2 0.1 0.1 ▲ 0.0 0.1 ▲ 0.0 0.0 ▲ 0.0 0.0 0.1 ▲ 0.1 0.1 0.1 0.0

政府消費 0.1 0.2 0.8 ▲ 0.6 0.3 0.2 ▲ 0.3 0.2 0.0 0.5 0.0 0.2 0.4 0.8 0.4 0.6 0.3

公的固定 ▲ 0.6 ▲ 2.1 ▲ 1.2 ▲ 0.7 0.3 0.1 0.9 0.5 ▲ 0.6 ▲ 1.0 ▲ 0.8 ▲ 0.3 0.5 ▲ 4.1 ▲ 0.4 ▲ 1.1 ▲ 1.1

純輸出* ▲ 0.2 ▲ 0.2 ▲ 0.3 0.3 ▲ 0.3 ▲ 0.1 0.3 0.0 0.0 0.0 0.1 0.1 0.4 ▲ 0.2 ▲ 0.3 0.2 0.2

輸出 0.4 ▲ 1.4 0.9 ▲ 0.3 0.0 0.1 0.2 0.4 0.6 0.8 0.7 0.8 6.4 1.7 0.1 2.2 2.8

輸入 1.3 ▲ 0.7 2.7 ▲ 1.7 1.7 0.7 ▲ 1.4 0.2 0.5 0.8 0.3 0.5 4.0 2.7 1.7 1.0 1.7名目GDP 0.5 ▲ 0.6 0.3 1.0 ▲ 0.0 0.6 0.3 0.0 0.0 0.5 0.8 ▲ 0.1 2.0 0.5 1.4 1.1 1.4

(前年比) 1.4 ▲ 0.3 ▲ 0.3 1.2 0.7 2.0 2.0 1.0 1.0 0.9 1.3 1.3GDPデフレータ (前年比) ▲ 0.1 ▲ 0.4 ▲ 0.3 0.8 0.6 1.0 1.6 0.6 0.7 0.7 0.6 0.5 0.1 0.0 1.0 0.6 0.6内需デフレータ (同) 0.5 0.6 0.5 0.6 0.3 0.5 1.0 0.8 0.8 0.6 0.4 0.3 0.6 0.6 0.6 0.5 0.5CPI・除く生鮮食品(前年比) 0.7 0.9 0.9 0.8 0.6 0.4 0.6 0.8 0.9 1.1 0.6 0.5 0.7 0.8 0.6 0.7 0.6

【増税・教育無償化除く】 ( 0.2) ( 0.4) ( 0.5) ( 0.6) ( 0.6) ( 0.4) ( 0.5)

同・除く生鮮・エネルギー(同) 0.3 0.3 0.3 0.4 0.4 0.4 0.7 0.7 0.8 0.9 0.6 0.6 0.2 0.3 0.6 0.8 0.6

【増税・教育無償化除く】 ( 0.4) ( 0.4) ( 0.6) ( 0.7) ( 0.6) ( 0.4) ( 0.6)

鉱工業生産 (前期比) 1.2 ▲ 1.3 1.9 ▲ 1.5 1.1 1.1 ▲ 0.8 0.7 0.0 0.5 0.6 0.7 2.9 0.6 1.1 1.3 1.7

   (前年比) 1.2 ▲ 0.1 1.2 0.2 0.1 2.6 ▲ 0.2 2.0 1.0 0.3 1.9 1.9

米国GDP(前期比年率) 4.2 3.4 2.6 3.0 1.0 ▲ 0.4 0.2 ▲ 0.7 0.4 0.5 0.8 0.8 2.2 2.9 2.1 0.1 1.0

注: 1. *印は前期比成長率に対する寄与度。米国GDPの年度欄は暦年値 ドル円レート(年度平均) 110.8 110.8 111.5 110.5 110.0

CPIは、上段が消費増税・教育無償化の影響を勘案、下段カッコ内はそれを除いた数値 原油価格(入着、ドル/バレル) 57.1 71.5 65.0 66.5 67.5

2. 前提条件:19年10月に消費増税(8%→10%)、食品・新聞に軽減税率(税率据え置き) 経常収支(兆円) 21.8 18.8 18.5 20.4 21.2

       19年10月から教育無償化(幼児教育・大学〔所得制限つき〕等))  同・対名目GDP比(%) 4.0 3.4 3.3 3.6 3.7

19・20年度当初予算で「臨時・特別の措置」 貿易収支(通関、兆円) 2.5 ▲ 3.5 ▲ 0.5 ▲ 2.1 2.1

3. 予想は3月1日時点(前回は2月15日)。

2018年度【予想】 2019年度【予想】 2020年度【予想】

予想

【見通しの前提および景

気・物価のリスクシナリオ】

- 24 -債券投資クォータリー 2019 年 3 月 1 日

図9:実質GDP成長率と需要項目別寄与度の推移

注: 見通しは弊社

出所:内閣府より三菱UFJモルガン・スタンレー証券作成

景気・物価のリスクシナリオの枠組みは下記のとおり3。A・Bは、いずれも景気・物価の下振

れケース。

【リスクシナリオA:】 <確率:30%>

・国内では消費増税後の個人消費の低迷が長引き、2014~15年に近い様相。増税後の

家計負担は政府の対策もあり前回増税時に比べ軽微ながら、社会保障給付抑制で所得が

伸び悩む高齢者世帯が将来不安も手伝って一段と支出抑制姿勢を強める。五輪期間はお

祭りムードも手伝って幾分明るさを取り戻すものの、20年度後半はその反動に宿泊施設建

設、広義の五輪関連とされる再開発一巡で設備投資の調整が深まる。

・需給ギャップの改善が止まるととも、賃金上昇圧力も後退。CPIは下落基調こそ免れるも

停滞色を強め、脱デフレ頓挫の様相を呈する。

【リスクシナリオB】 <確率:20%>

・米国景気が堅調を保つなか、トランプ米大統領は支持率テコ入れ、国内の難局打破をも

くろみ中国批判を再開、米中間の関税合戦の様相。貿易収支均衡の要求はわが国を含め

他の地域に対しても行われ、先行き不透明感の高まりから企業の投資は委縮。英国EU離

脱を巡る混迷も他国にも波及し停滞感が強まる。日本も頻繁に米国による直接の批判の対

象となるほか、中国製造業による産業高度化投資の委縮も加わって、わが国の輸出は急

減。省人化投資等が支えていた本邦製造業企業の設備投資計画も修正を迫られる

・先行きリスクの高まりから円高圧力が強まるとともに、原油価格も急落。コアCPIはマイナ

ス圏へ

3 財政・金融政策の前提については、後掲「ポリシーウォッチ」をご参照ください。

-4

-3

-2

-1

0

1

2

2014 2015 2016 2017 2018 2019 2020 2021

(前期比%)

(年)個人消費 公需 外需 設備投資・住宅 民間在庫 実質GDP

予想

駆け込みの反動

消費税率引き上げ(5%→8%)前の駆け込み

消費税率引き上げ(8%→10%)前の

駆け込み

駆け込みの反動

東京オリンピック・

パラリンピック

リスクシナリオ

- 25 - 債券投資クォータリー 2019 月 3 月 1 日

2019年度~21年度の景気・物価シナリオのポイント

(1) 複数の輸出下押し要因と今後の見通しについて

(2) 外国人労働者受け入れ拡大の影響

(3) 物流費・人件費上昇と物価の好循環は実現するか

2017年度のわが国の高成長(実質GDPは前年比+1.9%)とけん引した輸出は、18年に入

り増勢が鈍化。18年終盤には中国向けが減少、直近1月は春節休暇の影響を割り引く必要が

あるとは言え、傾向は変わっていないと思われる(図10)。昨年終盤以降の世界的な景気減速

の要因として、米中貿易摩擦の悪影響がまず挙がることが多いようだ。米中の貿易摩擦が表

面化した当初、両国の経済規模や貿易依存度の違いから、経済への打撃は中国にとってより

深刻であるとの見方が広がった。昨年終盤以降の景気動向を製造業PMI等で比べると、米

国・中国ともに鈍化しているが、中国の低下幅が相対的に大きくなっている。

貿易摩擦が実体経済に及ぼす影響としては、さまざまな経路が考えられる。IMFは2018年

10月の世界経済見通しにおいて、貿易摩擦の世界GDPへの影響に関するシミュレーションを

紹介。発効済の追加関税がもたらす世界GDPへの影響は限定的ながら、関税の対象が拡大

すればマイナスインパクトは拡大。企業のセンチメント悪化、あるいは金融市場の反応が加わ

ると、マイナスインパクトは一段と増幅されるという結果になっている。

昨年後半以降、先行き不透明感が強まるとともに(図11)、実体経済への波及と思しき変化

も観察された。わが国の中国向け輸出は、17年にかけ好調だった資本財を中心に減少。貿易

摩擦激化への懸念、米国による中国の産業政策への批判が、中国企業の投資マインドにネ

ガティブな影響を及ぼした可能性が考えられる。また、わが国の機械受注統計では、昨年

10-12月期における製造業の達成率(実績÷当初予想)が低下。先行き不確実性が高まると

達成率は低下する傾向がみられ、 近ではトランプ政権発足直後にあたる17年1-3月期にも

達成率の急低下が起こっていた。

図 10:実質輸出 図 11:経済政策不確実性指数

出所:日本銀行より三菱UFJモルガン・スタンレー証券作成

出所:Economic policy Undertaintyより三菱UFJモルガン・スタンレー証券作成

2月に入り、米中間で一定の合意に向けた動きが断続的に伝えられている。追加関税見送

りとなれば、先に述べたようなマインド悪化から来る景気下押しへの懸念は後退することが予

想される。当方メインシナリオでも、貿易に関しては何らかの合意が成立、追加関税回避を想

80

90

100

110

120

130

140

2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 2018 2019

(15年=100)

(年)実質輸出 同(対中国)

0

50

100

150

200

250

300

350

400

2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 2018 2019

経済政策不確実性指数(世界)

(指数)

(年)

ポイント(1) 複数の輸出

下押し要因と今後の見通

しについて

- 26 -債券投資クォータリー 2019 年 3 月 1 日

定している。ただ、一連の報道や要人コメントの内容も錯綜しており、今後の展開は必ずしも

予断を許さない。また、貿易不均衡以外の問題(技術移転、為替等)についての米中の見解

の差は大きく、今後も対立の火種としてくすぶっていくことになりそうだ。

昨年終盤以降の世界景気の悪化は、全てが米中貿易摩擦激化によって引き起こされたわ

けではないと考える。例えば中国景気は、GDP成長率でみれば2018年前半から減速傾向を

たどった。中国当局は昨年途中より、それまでの構造改革重視姿勢を転換、景気支援へと

徐々に舵を切っていた。 近では景気支援姿勢が鮮明になってきており、インフラ投資や減

税、個人消費促進策等を相次いで打ち出してきている。ただしこれらの政策は、中国景気の

過度の下振れ回避にはつながっても、成長率を反転されるほどの効果は見込みにくい、もしく

は効果を確認するには時間を要すると予想される。インフラ投資は、足元既に持ち直している

ことが確認される。半面、減税や個人消費促進策がもたらす効果は、今の段階では明確では

ないようだ。追加での政策発動余地は残されていそうが、中国景気は予測期間を通じて基本

的には減速方向を予想している。

情報通信機器や半導体等、いわゆるIT関連財のグローバルな需要サイクルも、下向き方

向にある。世界の半導体需要は、一定のサイクルで変動している(図12)。2016~17年にかけ

ては、比較的高い伸びが継続。ビットコイン等の新たな市場の登場もあって先行きに対する楽

観論が広がった時期であり、足元での調整はそうした期待感の反動もあるのかもしれない。

半導体・電子部品の需要のすそ野は広がっているが、主力は依然としてスマートフォンや

コンピューター等の情報通信機器と考えられる。世界の情報通信機器需要は拡大が続いて

いるとは言え、長期的には鈍化傾向にある(図13)。 近中国でのスマートフォン販売不振が

注目されたが、中国のスマートフォン国内出荷は2017・18年と2年連続で2桁の減少、市場の

成熟を示している。ただ、今後5G(第5世代移動通信システム)が世界各国で商用段階に入っ

ていくことは、スマートフォンや関連設備投資も含めた需要を押し上げる効果をもたらすことが

予想される。以上の点を勘案、わが国の輸出は、年度ベースでは2019年度にかけ鈍化、20年

度以降は持ち直しを予想している。

図12:世界半導体売上高 図 13:世界の携帯電話保有者数・インターネット利用者数

出所:WSTS より三菱 UFJ モルガン・スタンレー証券作成

注: 普及率と人口から試算

出所:世界銀行より三菱UFJモルガン・スタンレー証券作成

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1996 1998 2000 2002 2004 2006 2008 2010 2012 2014 2016 2018

(前年同月比)

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携帯契約者数 インターネット利用者

(前年比%)

(年)

- 27 - 債券投資クォータリー 2019 月 3 月 1 日

就業者・雇用者は、2018年も増加傾向を維持した。総人口が既に減少に転じているものの、

高齢者・女性の労働参加拡大傾向が続いた。労働力調査によれば、労働力人口比率(労働

力人口〔就業者+失業者〕÷15歳以上人口)比率は2018年平均で61.5%と、17年から1.0pt上

昇。性・年齢問わず上昇しているが、女性、高齢者での上昇スピードが速い(図14)。高齢者

に関しては社会保障給付への不安、社会参加欲求等が就業を後押ししている。女性の就労

に関しても、家計補助の観点からの就業が増えていると推測される。これらの要因は、強まる

ことはあれ弱まることは考えにくい。高齢者や女性が支える形での労働参加の拡大、雇用者

の増加は、当面続く可能性が高いように思われる。

就業者・雇用者の増加にもかかわらず、人手不足感は高止まりしている。短時間労働者が

多い非正規が足元の雇用者増を支えていることから、雇用者の増加ほどに労働投入の増加

はそれに比べ鈍いことが一因と考えられる。いわゆる労働代替投資、あるいは営業時間見直

し等、広い意味での生産性向上に向けた取り組みも続いているようだが、そのことが人手不足

の解消につながるのは難しそうだ。

昨年末の臨時国会にて、改正出入国管理法が成立した。外国人労働者の受け入れ拡大

のため、新たな在留資格として特定技能1号・2号が創設され、それに基づく受け入れが4月か

ら始まる予定。現在の技能実習生では在留の上限が3年までとなっているところ、特定技能1

号は5年まで、2号については一定の要件を満たせば延長が可能となっている4。14業種を対

象に5、今後5年間で32万人を上限に受け入れていくとの方針が示されている。

閣議決定された、新しい在留資格の運用方針によれば、今後5年間で34.5万人を上限に、

新たな資格による受け入れを行っていく方針。厚生労働省によれば昨年10月時点での外国

人雇用者数は146万人(図15)。ここ2~3年の年間純増数は10万人台後半で推移しており、年

平均にすれば、外国人労働者の増加が急加速するというイメージでは必ずしもない。

図 14:労働力人口比率 図 15:外国人労働者

出所:総務省統計局より三菱UFJモルガン・スタンレー証券作成

注: 特定活動=ワーキング・ホリデー等。

出所:厚生労働省より三菱UFJモルガン・スタンレー証券作成

受け入れ数の算出根拠は、各分野別の人手不足の見通しから、国内での人材確保および

生産性向上分を除いたものとされている。14業種計での今後5年間の不足は145万人との想

4 2 号については、要件の厳しさ(技能試験。実務経験等)もあり、本格的な受け入れはかなり先の見通しと報じられている。 5 介護業、ビルクリーニング業、素形材産業、産業機械製造業、電気・電子情報関連産業、建設業、造船・舶用工業、自動車整備業、航空業、宿泊業、

農業、漁業、飲食料品製造業、外食業。

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2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 2018

同(男性・15~64歳) 同(男性・65歳~)

同(女性・15~64歳) 同(女性・65歳~)

(%)

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2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 2018

専門+技術 特定活動+技能実習 留学等 永住者等

(万人)

(年)

ポイント(2) 外国人労働者

受け入れ拡大の影響

- 28 -債券投資クォータリー 2019 年 3 月 1 日

定であり、外国人材によってカバーするのはその2割強にとどまる。したがって、外国人材受け

入れが予定通り進んでも、人手不足の緩和効果は限定的であるように思われる。同時に、一

部で懸念されるような賃金押し下げへの懸念もやや行き過ぎと言えそうだ。

高齢化が進む台湾等でも近年は外国人労働者受け入れを拡大しており、今後人材獲得競

争が一段と激化することが予想される。今回の新在留資格に向けた議論の過程において、一

部の技能実習生の過酷な労働実態が表面化。そうした状況が続けば、外国人材の受け入れ

に支障をきたすことも懸念される。「外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策」が策定

されたのは一歩前進であろうが6、今後は外国人材の待遇や受け入れに必要なコストが様々

な局面で問題となることが予想される。

2013年以降にCPIは3回ほど上昇率を高めていく局面があったが、いずれも持続的でなか

った。円安や原油高等、輸入価格上昇が主因だったため、円安や原油高の一服に伴いCPIも

勢いを失っていった。輸入価格上昇のみでは安定的な物価上昇の実現は困難で、15年等は

値上げの広がりが個人消費停滞の一因ともなった。こうした経緯もあり、持続的な物価上昇に

は、賃金上昇を伴う、賃金・物価の好循環が必要との認識が広がっているように思われる。

その賃金上昇率は緩やかながらもプラスが定着、雇用者数の変動を加味した雇用者報酬

も持続的に増加している。CPIを構成する品目の中で、総コストに占める人件費の割合が高い

サービスでは、値上げの動きがみられる。加えて 近では、財においても値上げの理由として

人件費等の上昇に言及される例が増えているように思われる。このところ、大手メーカーによる

麺類や飲料、菓子類といった品目での価格改定に関するリリースが増えている。その多くが、

価格改定の理由として原材料価格の上昇に加えて人件費・物流費の上昇を挙げていた。物

流費の上昇も、人件費の上昇が起点になっていると思われる

ここ数年の雇用者報酬は平均すると前年比+2~+3%程度の伸びを維持している(図16)。

雇用者報酬の+3%の増加があらゆる流通段階で完全に転嫁されれば、CPIに対しては+1%

程度のプラス効果を持ちうる(図17)。ただし実際のCPI上昇率は、エネルギーを除くコアコア

CPIベースでもその半分以下にとどまる。個人消費が緩慢な回復にとどまるなか、企業は消費

者向けの価格改定には慎重にならざるを得ない状況は変わっていない。 近実施された値

図16:人件費・物流費の動き 図17:人件費・物流費上昇のCPI押し上げ効果

出所:内閣府、日本銀行より三菱 UFJ モルガン・スタンレー証券作成

注: 産業連関表による試算(コスト増 100%転嫁された場合)

出所:総務省統計局より三菱 UFJ モルガン・スタンレー証券作成

6 行政情報の多言語化、医療等のサービスの整備、日本語教育の充実等が挙げられている。

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2005 2007 2009 2011 2013 2015 2017

企業向けサービス価格・陸上貨物輸送 雇用者報酬

(前年同月比%)

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貨物輸送コスト+3% 雇用者報酬(全産業)+3%

(pt)

ポイント(3) 物流費・人件

費上昇と物価の好循環は

実現するか

- 29 - 債券投資クォータリー 2019 月 3 月 1 日

上げに対する消費者の反応はさまざまで、売上の減少につながった事例も報告されている。

人件費増を価格に転嫁するのは、企業にとっては依然として一筋縄ではいかない作業である

ようだ。日銀が展望レポートでも指摘している、省人化投資の増加を通じた生産性向上も、価

格への転嫁を限定的にとどめていると考えられる。人件費は今後も着実に増加していく可能

性が高く、値上げに踏み切る企業も増えてきそうだが、企業は消費者の反応を見極めつつ慎

重に対応していくことになろう。

2021年度にかけてのコアCPIの見通しは図18のとおり。19~20年度にかけては複数のかく

乱要因があるが(後述)、それらを除けば上昇は緩慢なペースにとどまり、物価目標である2%

は見通せない状態が続く見込み。コアCPIは18年中に一時+1%まで上昇率を高めたが、寄

与度でみれば3分の2はエネルギーによるものだった。当方の原油価格見通しの前提(2021年

にかけ基本的には横ばい圏)に立てば、エネルギーのプラス寄与は縮小に向かうことになる。

図18:コアCPIの推移

出所:総務省統計局より三菱UFJモルガン・スタンレー証券作成

エネルギーを除くコアコアベースでは、かく乱要因を除けば+0%半ばを予想。20年7-9月

期にかけ上昇ペースが高まっているのは、五輪開催に伴う一時的な動き。外国人観光客数の

増加に伴いホテル代(宿泊料)の値上がりが予想される。五輪大会組織委員会では渋滞緩和

に向け、開催期間中の首都高速道路料金上乗せを検討中と伝えられる。

2019~20年度にかけてのかく乱要因がもたらすインパクト(消費増税、教育無償化、携帯

料金値下げ)については、従来の想定を維持。①消費増税に伴うコアCPIへの押し上げは、

軽減税率の効果を合わせて+1.0pt(19・20年度ベースでそれぞれ+0.5pt)。②教育無償化は

▲0.6pt程度(19・20年度ベースでそれぞれ▲0.3pt)。消費増税・教育無償化実施が近づくな

か、政府・日銀でもその影響を物価見通しに反映した数字を公表7、当方想定とさほど違いは

なかった。③携帯料金値下げについては、本稿執筆段階では依然確定的な情報はない。菅

義偉官房長官の「携帯料金に4割下げ余地」を受け、3大キャリアの一角が19年4-6月期に2~

4割程度の利用料金の低廉化を行う考えを表明。残る2社は既にかなりの値下げを実施済とし

7 昨年 12 月の 2019 年度政府経済見通しにおいて、無償化の CPI(総合)へのインパクトを▲0.3ppt として織り込んでいる。日銀は 1 月の展望レポートに

て、19・20 年度コア CPI に対する無償化の影響をそれぞれ▲0.3ppt、▲0.4ppt 想定。政府見通しでは幼児教育無償化の効果のみを織り込んでいるの

に対し、日銀では大学教育無償化(20 年 4 月)についても反映させている。

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2013 2014 2015 2016 2017 2018 2019 2020 2021FY21

教育無償化分 消費税率引き上げ分

食料(除く生鮮・酒類) エネルギー

食料(除く酒類)・エネルギー・教育無償化分除く コアCPI

コアCPI(消費増税・教育無償化調整) コアCPI(消費増税調整)

見通し

(前年比%)

- 30 -債券投資クォータリー 2019 年 3 月 1 日

て様子見姿勢ながら、追随の可能性もある。過去の新料金導入に伴うCPIへのインパクトも踏

まえ、今回は暫定的に▲0.1ppt程度と控え目に想定している。

なお、日銀は展望レポートのCPI見通しにおいて、従来より消費増税の影響を含む数値と

除く数値を示していたが、今年1月より後者を「消費税率引き上げ・教育無償化政策の影響を

除くケース」に切り替え、参考値扱いとした。教育無償化に伴うコアCPIへの影響は、2019年度

が▲0.3ppt、20年度が▲0.4pptとなっており、当方想定とほぼ一致。消費増税の影響は19・20

年度各+0.5pptと、年度ベースでみれば無償化効果とおおよそ打ち消し合うことになる。日銀

が両者の影響を除く数値を参考値扱いとしたことから、19年度後半から20年にかけては、両者

の影響を含むヘッドラインの数値を日銀としては重視していくことになりそう。日銀見通しとの

比較の観点から、前掲表2の見通し表においては、消費増税教育無償化の影響を含む・除く

両方の実績・見通し数値を掲載している。

(3月1日 15:00)

- 31 - 債券投資クォータリー 2019 年 3 月 1 日

ポリシーウォッチ

3 月および 2019 年度~21 年度の政策シナリオ

シニア・マーケットエコノミスト 六車むぐるま

治美

2月、国会では、政府と野党が毎月勤労統計の不適切調査問題を巡って応酬を続けた。こ

の問題を受けて、厚生労働省は実質賃金の再集計結果を発表。2018年1~11月の伸び率は

全体的に下方修正されたものの5カ月分はプラスを維持した。だが、野党は2月4日の衆院予

算委員会で、1年前も調査対象となった「共通事業所」の賃金上昇率を比べた「参考値」をベ

ースに、「大半の月はマイナスだった」と指摘し、アベノミクスの成果に疑問を呈した。これに対

し、安倍晋三首相は「総雇用者所得は名目も実質もプラスだ」と主張した。

12日、毎月勤労統計の再集計を受けて、内閣府が潜在成長率と需給ギャップの修正結果

を発表した。1980年1~3月期から2018年7~9月期までの数値を見直したところ、従来公表値

からの修正幅は 大0.1ポイントの結果だった。17年度分については、潜在成長率が+1.0%

(図1)、GDPギャップは+0.5%(図2)で再集計前と変わらなかった。

図 1:潜在成長率(内閣府による再計算) 図 2:GDP ギャップ(内閣府による再計算)

出所:内閣府より三菱 UFJ モルガン・スタンレー証券作成 出所:内閣府より三菱 UFJ モルガン・スタンレー証券作成

14日、18年10-12月期のGDP統計(1次速報)が発表された。実質GDPは前期比+0.3%(同

年率+1.4%)。自然災害の影響などからマイナス成長となった7-9月期(前期比▲0.7%、同年

率▲2.6%)から反発するも、減少分を取り戻すには至らなかった。前期比の寄与度は、個人

消費や設備投資の持ち直しを反映して内需が+0.6%のプラス寄与。一方、純輸出は▲0.3%

のマイナス寄与。輸出は増加に転じたが、輸入も大きく伸びたことによる。名目GDPは前期比

+0.3%(7-9月期:同▲0.6%)だった。茂木経済再生相は同日の記者会見で、『民需の増加

に支えられた成長になった。景気は緩やかに回復している』との認識を示した。

2月は米中貿易摩擦の国内経済への影響が明らかになった。内閣府は18日、機械受注統

計の基調判断を「持ち直しの動きに足踏み」から「足踏みがみられる」に下方修正した。また、

政府は21日公表の月例経済報告(2月分)で、14の景気判断項目のうち「生産」と「企業収益」

を引き下げた。生産については「一部に弱さがみられるものの、緩やかに増加」とし、40カ月ぶ

りの下方修正。「企業収益」についても、「高い水準にあるものの、改善に足踏み」と判断を弱

めた。基調判断は「緩やかに回復」に据え置いた。据え置きは14カ月連続。

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1990 1995 2000 2005 2010 2015

(潜在成長率、%)

(年度)-5

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1990 1995 2000 2005 2010 2015

(GDPギャップ、%)

(年度)

【2 月のレビュー:経済財

政政策】国会では政府と

野党が毎勤統計を巡って

応酬

内閣府が潜在成長率と需

給ギャップを再計算、17

年度の結果には影響なし

10-12 月期の実質 GDP

は前期比+0.3%に反発

米中貿易摩擦の国内経済

への影響が明らかに

- 32 -債券投資クォータリー 2019 年 3 月 1 日

18日、日本経済新聞社とテレビ東京による世論調査(調査期間:15日~17日)の結果が明

らかになった。安倍内閣の支持率は51%と1月下旬の前回調査から2%ポイント下落し、不支

持率は37%から42%に上昇した。厚生労働省の毎月勤労統計の不適切調査問題について、

「 も責任があるのは誰か?」との質問には、「これまでの厚生労働大臣」が34%、「厚生労働

省の官僚」が31%。「安倍晋三首相」は16%、「根本匠厚労相」は3%だった。不適切調査の問

題で政府が「組織的隠蔽はなかった」と説明していることについては、「納得できない」が76%、

「納得できる」が14%の結果だった。

この世論調査で、今年夏の参院選について、自民・公明両党が「過半数を維持する方がよ

い」と答えた人は49%で、「維持しない方がよい」の39%を上回った。野党が「統一候補を立て

るべきだ」との回答は57%で、「立てるべきではない」の25%を大きく上回った。参院選で憲法

改正に賛成する勢力が参院の3分の2以上の議席を維持する方がよいかを聞くと「維持する方

がよい」が47%で、「維持しない方がよい」の38%を上回った。

予算審議は、18年度・第2次補正予算案(歳出総額2.7兆円)が7日に参院で可決、成立し

た。19年度予算案については、年度内成立を巡る与野党の攻防が大詰めを迎えている。憲

法の規定で、予算案は衆院通過から30日で自然成立するが、年度内成立には3月2日までの

衆院通過が必要。自民、公明両党は本日(3月1日)にも衆院予算委員会と本会議で採決する

方針だが、野党は「審議不十分」と反対の姿勢。

2月の無担保コールレート・翌日物の加重平均値は▲0.063%(18日、19日)~▲0.043%(8

日)のレンジで推移(図3)。前月と比べると上限が切り上がった。レポ金利と国庫短期証券

(TDB)利回りは、月半ばまで低下基調を辿った後、月末にかけて急速に水準を切り上げる展

開となった。日銀は13日オファーのTDB買入れオペを前回の2,500億円から5,000億円に増額

し、21日のオファーも5,000億円を維持(図4)。これを受けてTDB需給の引き締まりが意識され、

レポ金利・TDB利回りに下押し圧力がかかった。国債利回りの低下も影響した。もっとも、日銀

は26日のTDB買入れを2,500億円に減額。3月末や5月の大型連休に備えた国内投資家によ

るTDB確保の動きも一巡。資金運用側のビッドも薄くなり、東京レポ金利(トムネクスト物)は28

日のフィキシングで▲0.049%と、17年12月以来の高水準を付けた。なお、3カ月物TIBORは

月を通じて0.06909%で変わらずで推移した。

図 3:レポ金利は月末にかけて上昇の展開 図 4:日銀は 2 月前半に TDB 買入れオペを増額

出所:日銀、ブルームバーグより三菱 UFJ モルガン・スタンレー証券作成 出所:日銀より三菱 UFJ モルガン・スタンレー証券作成

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2/1 3/1 4/1 5/1 6/1 7/1 8/1 9/1 10/1 11/1 12/1 1/1 2/1 3/1

レポ金利(T/N)

6カ月物TDB

3カ月物TDB

無担保コール翌日物(加重平均値)

(月/日)

1年物TDB

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18/2 18/3 18/4 18/5 18/6 18/7 18/8 18/9 18/10 18/11 18/12 19/1 19/2 19/3

(兆円)

(年/月)

日経新聞・テレビ東京の

世論調査で内閣支持率は

小幅低下

夏の参院選では「自公両

党の過半数維持」の支持

が 49%

19 年度予算は年度内成

立に向けた攻防が大詰め

【2 月のレビュー:短期金

融市場】レポ金利は月末

にかけて上昇の展開

- 33 - 債券投資クォータリー 2019 年 3 月 1 日

日銀が18日に発表した1月分の「業態別の日銀当座預金残高」によると、1月の積み期間(1

月16日~2月15日)における政策金利残高は平残ベースで18.7兆円と、前月の22.9兆円から

減少した(図5、6)。業態別にみると、都銀と地銀(含む第二地銀)はほぼゼロで変わらず。信

託銀行は前月の9.8兆円から8.8兆円に、「その他の準備預金制度適用先」も4.6兆円から3.0

兆円に減少した。「非適用先」も2.9兆円から0.7兆円に減った。他方で、外銀は前月の5.5兆円

から6.2兆円に増加。日銀は昨年7月会合で、マイナス金利を適用する政策金利残高の縮小

を決定。翌8月の積み期間から、計算上の政策金利残高1をそれまでの「10兆円程度」から「5

兆円程度」に縮小するよう基準比率を調整してきた。それ以降、①政策金利残高は減少傾向、

②「その他の準備預金制度適用先」の政策金利残高が減少傾向、③外銀の政策金利残高の

増加傾向、がみられている。

図 5:日銀当座預金・政策金利残高(平残)の推移 図 6:1 月積み期間の業態別日銀当座預金残高(平残)

出所:日銀より三菱 UFJ モルガン・スタンレー証券作成 出所:日銀より三菱 UFJ モルガン・スタンレー証券作成

2月は金融政策決定会合の開催はなかったが、黒田東彦総裁のコメントが市場の関心を呼

ぶ場面があった。総裁は19日の衆院財務金融委員会で、「世界経済減速で米国が利下げに

転じた場合に日銀が追加緩和を行うか?」との質問に、『(日米の)金利差が縮んで円高にな

り、経済に何らかの影響が出て(2%の)物価目標達成のために必要になれば、追加緩和も検

討していく』と答えた(表1)。また、『(金融政策は)為替相場にリンクしたかたちで行っていない』

と断ったうえで、『為替の変動が経済・物価に影響を与えることはあり得る。それも1つの要素と

して、経済・市場の動向を見ながら金融政策を運営していくことは不可欠だ』と述べた。

表1:2月19日の衆院財務金融委員会における黒田総裁の発言(抜粋)

・(日米の)金利差が縮んで円高になり、経済に何らかの影響が出て(2%の)物価目標達成のために必要になれば、

追加緩和も検討していく

・(金融政策運営は)為替相場にリンクしたかたちで行っていない。為替の変動が経済・物価に与える影響はあり得

る。それも1つの要素として、経済・市場の動向を見ながら金融政策を運営していくことは不可欠だ

・(追加緩和は)効果とともに金融仲介機能や市場機能に及ぼす影響もバランスよく考慮する必要がある

・FRBの金融運営は米経済の持続的な成長に資するので、他国の経済にも好ましい

・(ETFの買入れについて)現時点で止めるとか大幅に見直す考えは持っていない。特定の株価に誘導するものでは

なく、個別銘柄に影響が出ないように配慮している。あくまでもリスクプレミアムの縮減を狙いとしている 出所:ロイター、時事通信より三菱UFJモルガン・スタンレー証券作成

1 金融機関間で裁定取引が行われたと仮定した金額。

0

5

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15

20

25

30

1月 4月 7月 10月 1月 4月 7月 10月 1月 4月 7月 10月 1月

都銀

地銀+第二

その他

信託

外銀

非適用先

(兆円)

2016年 2017年 2018年

80.7 

18.5  22.2 16.1 

51.9 

18.9 

57.3

24.117.2

24.3

0.0 

0.1 

6.2  8.8 

3.0 

0.7 

0

20

40

60

80

100

120

140

160

都銀 地銀+第二 外銀 信託 その他 非適用先

マイナス金利

ゼロ金利

プラス金利

(兆円)

「積み期間:1月16日~2月15日」の平残

1 月積み期間の政策金利

残高は平残ベースで 18.7

兆円

【2 月のレビュー:金融政

策】黒田総裁が追加緩和

の可能性ついてコメント

- 34 -債券投資クォータリー 2019 年 3 月 1 日

22日の昼、黒田総裁が首相官邸を訪れ、安倍首相と会談した。両者の会談は昨年の6月以

来。黒田総裁は記者団に、今回の会談は定期的なもので、日本経済や世界経済動向につい

て話したと説明。記者団の質問に対し、世界経済については『IMFも今年・来年は3%台の経

済成長とのメインシナリオは変えていないが、保護主義など色々なリスクが高まっていることは

認めており、その通りだと思う』と述べた。会談で金融政策の話があったかの質問には、『特に

話していない』と否定。消費者物価指数についても『全然話していない』と答えた。

朝日新聞は23日、黒田総裁との単独インタビューを報じた(インタビューは21日に実施)。

総裁は今年10月に予定される消費税率引き上げの影響について、『直接的に経済にネガティ

ブな影響はほとんどない』としつつも、『消費者のマインドへの影響について注視していく必要

がある』と述べた。追加緩和の可能性については、『2%に向けて物価が徐々に上昇していく

モメンタムが維持されない状況になれば、当然、追加緩和を検討することになる』と語った。さ

らに、『その際のオプションは4つある』(短期金利引き下げ、長期金利引き下げ、資産買入れ

の拡大、およびマネタリーベースの増加テンポ加速)とし、『経済や金融の実態に も適切で、

副作用を 小限にとどめられるような政策をとることになる。様々なオプションとその組み合わ

せということがあり得るのではないか』と語った。

27日、片岡剛士委員が高松市金融経済懇談会に出席。片岡委員は挨拶のなかで、物価

の先行きについて、『私自身は、2%に向けて物価上昇率が高まる蓋然性は現時点では低く、

モメンタムも強まってはいないと判断している』と発言。そのうえで、金融政策運営について、

『金融緩和を強化することで、需給ギャップの需要超過幅を一段と拡大させるよう働きかけるこ

とが適当』とし、『併せて、予想インフレ率に働き掛けるかたちでコミットメントを強化することも

必要』との見方を示した。さらに、「物価目標の達成まで粘り強く現在の金融緩和を続ける」と

いう現行の政策運営方針について、『長期化するほど、出口戦略の負荷が高まり、金融緩和

の副作用も累積的に高まる』ことから、早期の物価目標達成が求められると述べた。

片岡委員は記者会見で、具体的な追加緩和策については、10年以上の国債金利をさらに

引き下げること、および『長期の予想インフレ率が下振れするという判断がなされた場合には

間断なく金融緩和を行うとのコミットメントを結ぶ』との2つを挙げた。また、2%物価目標の達成

のため、『財政と金融が両面から息をあわせていくことが必要であるという話は、一般論として

はあり得る』との見方を示した。

28日、鈴木人司委員が茨城県金融経済懇談会に出席。鈴木委員は挨拶のなかで、世界

経済について、『下振れ方向の不確実性が高まりつつある点には留意が必要』と述べた。金

融政策運営については、『「持久力」が必要になってくる』とし、そのためには、『「走り続けると

いう意思」、「柔軟性」、そして「ランニングエコノミー」の3点』が重要と述べた。そのうえで、日銀

の国債買入れについて、『今後も市中に残存する国債残高が減少を続ければ、金融機関によ

っては保有国債残高が徐々に必要 低限の水準まで近付いていくことが予想される』とし、

『各回の国債買入れオペの金額についても適切な調整を図ることが重要』と述べた。

鈴木委員は記者会見で地域金融機関の収益環境について、『非常に厳しくなってきている』

と述べた。金融政策運営については、『副作用についても考えながら、それに対して持久力を

測るような修正を図っていく必要があるだろう』と語った。追加緩和については、『将来(2%物

価目標に向かう)モメンタムが損なわれるような場合に、追加緩和を行う場合には可能性として

は効果よりも副作用が大きい可能性があるので、私としては十分慎重な議論をしていく必要が

あると考えている』と述べた。ETFの買入れについては、『現時点で何らかの見直しが必要であ

るとは認識していない』と答えた。

安倍首相と黒田総裁が会

談、昨年 6 月以来

朝日新聞が黒田総裁との

単独インタビューを報じた

片岡委員は緩和政策の長

期化回避のためにも追加

緩和が必要と主張

片岡委員は財政と金融が

「両面から息をあわせてい

くことが必要」との見方

鈴木委員は金融政策の

「持久力」の必要性に言及

地域金融機関の収益環境

については「非常に厳しく

なってきている」と発言

- 35 - 債券投資クォータリー 2019 年 3 月 1 日

来週から3月末までの主な政策関連スケジュールは表2の通り。経済財政政策関連では、3

月13日が春闘の集中回答日となる。今年は世界経済の減速やTAG交渉の行方など不透明

要因が多く、企業側もベアには慎重な模様。21日以降は、4月7日に投開票を迎える統一地

方選(前半戦)が告示される。統一地方選は前半戦が4月7日、後半戦が21日の投開票で、衆

参両院補欠選挙も4月21日に投開票となる。福井、島根、徳島、福岡の四県知事選は、自民

党支持層の対応が割れる保守分裂選挙になる公算が大きいと報じられている。

表2:来週から3月末までの主な政策関連スケジュール

出所:日銀、各種報道資料より三菱UFJモルガン・スタンレー証券作成

金融政策関連では、3月6日に原田泰委員が甲府市金融経済懇談会に出席の予定。原田

委員は昨年7月の会合で長期金利の変動幅拡大に反対票を投じ、その後も現状維持に反対

を続けている。反対の理由は、「長期金利が上下にある程度変動しうるものとすることは、政策

委員会の決定すべき金融市場調節方針として曖昧すぎる」というもの。政策金利のフォワード

ガイダンスについても、「政策金利については、物価目標との関係がより明確となるフォワード

ガイダンスを導入することが適当である」として反対の立場。ただ、片岡委員と異なり、これまで

追加緩和は主張していない。海外経済の下振れリスクが強まるなか、6日の挨拶・記者会見で

は追加緩和の必要性や具体策に言及があるかどうかが注目される。

日銀は3月14日~15日に金融政策決定会合を開催する。当方の予想は現状維持。日銀は

1月の「展望レポート」(経済・物価情勢の展望)で海外経済に関する下振れリスクへの警戒感

を引き上げ、18年度~20年度のコアCPI見通しも下方修正した(図7)。その後に発表された月

次データは弱いものが目立つ。10-12月期・機械受注統計は前期比マイナスの結果。昨日(2

月28日)発表された1月分・鉱工業生産指数は前月比▲3.7%と3カ月連続の減少、かつ市場

コンセンサス(ブルームバーグ:同▲2.5%)からも下振れした。日銀は、4月24日~25日会合で

まとめる「展望レポート」を睨みつつ、実体経済の基調を慎重に判断するだろう。

3月会合では、一部の需要項目について「展望レポート」を待たずに判断を下方修正する

可能性がある。日銀はこれまで、輸出と鉱工業生産について「増加基調にある」との判断を示

してきた(表3)。だが、政府は1月の月例経済報告で輸出の判断を「このところ弱含んでいる」

に引き下げた。日銀発表の実質輸出も1月は2年ぶりの低水準に低下(図8)。経済産業省は

昨日、鉱工業生産の判断を「緩やかに持ち直している」から「足踏みをしている」に引き下げた。

日銀も、輸出と鉱工業生産の判断を「横ばい圏内で推移」などに下方修正しても不思議では

ない。その際、減速の背景にある海外経済の判断も弱めるのではないか。

日 財政および政治関連 日 金融政策関連

8 18年10-12月期・GDP(2次速報) 6 原田委員、甲府市金融経済懇談会で挨拶

13 春季労使交渉の集中回答日 14 金融政策決定会合(1日目)

14 G20ビジネス・サミット(都内、~15日) 15金融政策決定会合(2日目)

黒田総裁、記者会見

21

統一地方選・北海道、神奈川、福井、三重、奈良、鳥

取、島根、徳島、福岡、大分各道県知事選告示(4月7

日投開票)

20 金融政策決定会合議事要旨(1/22-23分)

24統一地方選・札幌、相模原、静岡、浜松、広島各政令

市長選告示(4月7日投開票)26 「主な意見」(3/14-15分)

29

統一地方選・41道府県議選、17政令市議選告示(4月

7日投開票)

【英国EU離脱期日(現地時間29日23:00)】

29 「当面の長期国債等の買入れの運営について」

月末 19年度予算の成立?

【3 月のプレビュー】統一

地方選・前半戦の告示、

19 年度予算の成立(見込

み)

原田委員が甲府市金融経

済懇談会に出席予定

3 月会合は「現状維持」と

予想、日銀は実体経済の

動向注視

「輸出」と「鉱工業生産」の

判断は下方修正か

- 36 -債券投資クォータリー 2019 年 3 月 1 日

図 7:日銀のコア CPI 見通し(中央値) 図 8:実質輸出の推移(日銀推計)

注: 18 年 10 月「展望レポート」分以降の 19 年度・20 年度の見通し数値は、「消費税

率引き上げ・教育無償化」の影響を含むベース

出所:日銀より三菱 UFJ モルガン・スタンレー証券作成

注:季節調整済

出所:日銀より三菱 UFJ モルガン・スタンレー証券作成

表3:3月会合では「輸出」や「鉱工業生産」の判断下方修正があり得る

出所:日銀より三菱UFJモルガン・スタンレー証券作成

日銀は、「2%の“物価安定の目標”に向かうモメンタムが維持されていれば、追加緩和の必

要はない」とのスタンス。もっとも、世界経済の下振れリスクが強まるなか、市場参加者(特に為

替市場参加者)に「日銀には追加緩和の余地も意思もない」と見做され、円高・株安が進むこ

とは回避したいはず。黒田総裁や雨宮正佳副総裁は当面、「2%物価目標の達成に必要と判

断されれば、追加緩和を検討する」との情宣活動を続けよう。特定はしないものの、具体策に

ついては従来通り、「長短金利の誘導水準の引き下げ、資産買入れの拡大、場合によっては

マネタリーベースの増加ペース引き上げ」の政策メニューを提示。市場に日銀による追加緩和

の“可能性”を意識させることで、円高・株安リスクに予防線を張る戦略と推察される。

-0.4

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13/4 13/10 14/4 14/10 15/4 15/10 16/4 16/10 17/4 17/10 18/4 18/10 19/4

(前年比、%)

(展望レポート発表、年/月)

13年度の見通し

14年度

15年度

16年度

17年度

マイナス金利追加緩和 ETF買入増

19年度

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(2015年=100)

(年/月)

中国向け

全体

日銀判断(1月22日~23日会合)前回からの

方向感

景気の現状わが国の景気は、所得から支出への前向きの循環メカニズムが働くもとで、緩やかに

拡大している↑

景気の先行き 2020年度までの見通し期間を通じて、拡大基調が続くとみられる ↑

物価の現状消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、0%台後半となっている

(1%程度となっている)→

物価見通しマクロ的な需給ギャップがプラスの状態を続けることや中長期的な予想物価上昇率が

高まることなどを背景に、2%に向けて徐々に上昇率を高めていくと考えられる↑

予想物価上昇率 横ばい圏内で推移している ↑

海外経済 総じてみれば着実な成長が続いている ↑

輸 出 増加基調にある ↑

鉱工業生産 増加基調にある ↑

設備投資企業収益が高水準で推移し、業況感も良好な水準を維持するもとで、増加傾向を続け

ている↑

公共投資 高めの水準を維持しつつ、横ばい圏内で推移している ↑

住宅投資 横ばい圏内で推移 ↑

労働需給 着実な引き締まりを続けている ↑

個人消費 雇用・所得環境の着実な改善を背景に、振れを伴いながらも、緩やかに増加している ↑

金融環境 きわめて緩和した状態にある ↑

項  目

リスク要因

米国のマクロ政策運営やそれが国際金融市場に及ぼす影響、保護主義的な動きの帰趨とその影

響、それらも含めた新興国・資源国経済の動向、英国のEU離脱交渉の展開やその影響、地政学的

リスクなどが挙げられる。

「必要と判断すれば追加

緩和を検討」と情宣活動

- 37 - 債券投資クォータリー 2019 年 3 月 1 日

2019年度~21年度の経済財政政策シナリオは下記の通りで、従来シナリオを維持。安倍

政権は19年10月の消費増税を予定通り実施するとみる。ただ、今年は地方統一選と参院選

が行われる「選挙の年」に当たり、PB黒字化に向けた国民負担増の議論は停滞とみる。安倍

首相の自民党総裁としての任期は21年9月末まで。現時点で後継総裁(首相)を予想するの

は困難だが、潜在成長率の目立った上昇が見込みづらく、日銀の異次元緩和による景気押

し上げ効果にも限界があるなか、本格的な財政緊縮に転じる可能性は低いとみている。

【財政政策メインシナリオ】

19 年度:消費増税は予定通り実施、冬に経済対策を策定へ

安倍内閣の支持率は 5 割前後で一進一退。毎月勤労統計の不適切調査問題は致命的

な打撃にはならず。野党勢力の結集気運も高まらず、春の統一地方選では与党が無難

に勝利。安倍首相は 6 月の G20 大阪サミットで、「日本が自由貿易推進やイノベーション

を通じた世界経済の成長のけん引役になる」と表明。アベノミクス(大胆な金融政策、機

動的な財政政策、民間投資を喚起する成長戦略)によって日本は「デフレではない状

況」となり、雇用・賃金の改善も続いていると成果を強調する

安倍首相は夏の参院選(投開票は7月21日の可能性が高い)の前に、経済対策の策定

を指示する。理由は、世界経済の減速を受けた中小企業対策、消費増税の影響緩和の

ための追加措置(主に低所得世帯向け)、および環境・災害対策など。夏の参院選で

は、与党が改選議席の過半数を得て勝利する

10 月 1 日、消費税率の 10%への引き上げ、教育無償化が予定通りスタート。政府は冬

に歳出規模 4 兆円程度の補正予算を策定。20 年度予算の策定では、東京五輪・パラリ

ンピック(20 年夏)関連の建設需要の一巡を視野に、官民一体となった中長期の成長プ

ロジェクト策定にも着手する

20 年度:当初予算の歳出総額は 2 年連続の 100 兆円超え

高齢化に伴う社会保障費の膨張、オリンピック後の投資下支えを目的とする公共事業の

積み増しを受け、20 年度・当初予算の歳出規模は 2 年連続で 100 兆円を超え、さらに拡

大。日銀の低金利政策(長短金利の誘導水準引き上げは小幅と想定)の恩恵により「債

務残高対 GDP 比」の上昇はかろうじて回避。だが、「PB 対 GDP 比」は▲3%前後で停

滞。21 年度の財政健全化・中間目標の達成に早くも注意信号が点滅する

21年度:自民党総裁選、「ポスト・アベノミクス」の政策議論は低調

21 年 9 月、「ポスト安倍」を決める自民党総裁選が行われる。各候補者が示す政策は総

花的で、消費税率のさらなる引き上げや痛みを伴う社会保障改革の議論には、いずれ

の候補者も及び腰。主要派閥の支持を得た新自民党総裁(首相)は、独自色を出よりも

安全運転に徹する。有権者の支持が低い財政健全化は一般論にとどまり、成長戦略も

新味に欠ける。「ポスト・アベノミクス」の政策議論は低調さが目立つ

上記の【財政政策メインシナリオ】では、安倍首相が自民党総裁としての任期が満了する21

年9月に(首相を)辞任することを前提としている。自民党の党則は、総裁任期を1期3年とし、

連続4選を禁じているため。ところが、このところ安倍首相の「連続4選」シナリオが浮上してい

る。背景には、内閣支持率の持ち直しがある(図9)。昨年前半はいわゆる「モリカケ問題」で落

ち込んだが、 近では5割前後で安定している。いったん支持率が低下しはじめると、短期間

で政権維持の危険ラインまで急低下することが多かった過去の内閣のパターンとは明らかに

異なる。前述の通り、2月中旬に行われた日本経済新聞社とテレビ東京による世論調査では、

「参院選で投票したい政党」として自民党との回答が43%と立憲民主党の15%を大きく上回り、

【2019 年度~21 年度の

財政政策シナリオ】~財政

緊縮路線に転じる可能性

は低そう

【ポイント】安倍首相(自民

党総裁)の「連続 4 選」シ

ナリオはあるか?

- 38 -債券投資クォータリー 2019 年 3 月 1 日

自民・公明党の過半数維持を望む回答も49%に上った。首相が意欲を示している憲法改正

に関し、「憲法改正賛成勢力の議席が3分の2以上の維持」を望む回答も47%と若者を中心に

高めだった。

図 9:安倍内閣の支持率は下げ渋り 図 10:派閥別の自民党議員(1 月 28 日時点)

出所:日経世論調査より三菱 UFJ モルガン・スタンレー証券作成

注:3/1 に議員辞職願を提出した田畑毅衆院議員は二階派に属する。田畑議員の辞

職後は二階派が 43 人に減り、繰り上げ当選の影響で岸田派は 49 人に増える見込み

出所:読売新聞より三菱 UFJ モルガン・スタンレー証券作成

自民党内で「連続4選」の支持が聞かれる。加藤勝信総務会長は2月27日の講演で、『首相

がどう判断するかわからない』としつつも、『国民から“さらに”という声が出てくれば、後々の状

況は生まれてくるかもしれない』と発言。4選には自民党の党則改正が必要になるが、二階派

からは容認論が出ている(2月20日の読売新聞記事など)。さらに、安倍首相は2月28日の衆

院予算委員会で「連続4選」について、『自民党のことは自民党でしっかりと議論していく。ご心

配なく』とだけ答え、否定はしなかった。「連続4選」の禁止はあくまで自民党の党則によるもの。

細田派、麻生派、二階派で自民党議員の約半数を掌握している現状からみて(上記図10)、

党則改正の“流れ”が形成されれば「安倍自民党総裁の連続4選」の可能性が出てくる。

“流れ”は、「この案件は安倍氏でないと進められない」というムードだ。例えば、夏の参院選

で勝利した後、世論調査で安倍首相の続投を望む声が高まり、党内では憲法改正に向けた

議論が進展する・・・など。あるいは、日米TAG交渉の長期化、日ロ平和条約の締結交渉の進

展などの外交問題も考えられる。「この案件が決着するまで」との暗黙の条件付きで、自民党

主流派から党則改正を求める動きが出ても不思議ではない。安倍首相が固辞した場合でも、

後継者選びと政策運営への影響力は相当に強いのではないか2。

自民党の党則改正は、毎年3月に開催される党大会で正式決定される。「連続3選」を認め

た前回の改正は、16年秋に方向性が自民党内で固まり、正式決定は17年3月の党大会。安

倍首相の2期目の任期満了(18年9月)の1年半前だった。首相の3期目の任期は21年9月に

満了するので、連続4選を可能にするためには、「19年秋に党内で議論、20年3月の党大会で

正式決定」、あるいは「東京オリンピック後の20年秋に党内で議論、21年3月の党大会で正式

決定」のどちらもあり得る。もちろん、党総裁選で勝たなければいけないので、党則改正だけ

で4選が確定するわけではない。ただ、仮に4選となれば、アベノミクスの第二の矢である「機動

的な財政政策」も変わらない。消費税率のさらなる引き上げ論は封印され、「成長なくして財政

健全化なし」路線の見直しもないと考えられる。

2 自民党総裁の任期については、「1 期 6 年」として「連続 2 選」までとする案もある。また、禁止されているのは「連続 4 選」なので、いったん総裁を退

いた後、再び総裁に就任することは禁じられていない。

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(年)

与党支持率

安倍

福田

麻生

鳩山

小泉

野田

安倍(第2次~) 内閣支持率

野党第一党(衆院)支持率

細田派, 97

麻生派, 56

二階派, 44岸田派, 48

竹下派, 56

石破派, 20

石原派, 12

無派閥, 70

(人)

・旧谷垣グループ:約20・菅官長官とそれに近い議員:約20‐30・野田氏に近い議員:約10・小泉進次郎氏

二階派からはすでに「連

続 4 選」の容認論

「流れ」が形成されれば党

則改正の可能性も

「連続 4 選」の場合、消費

税率のさらなる引き上げ

論は封印

- 39 - 債券投資クォータリー 2019 年 3 月 1 日

2019年度~21年度までの金融政策メインシナリオは下記の通り。従来シナリオから大きな

変更はなし。世界経済の減速は現実になった印象だが、米中貿易摩擦の打開に向けた動き

もみられる。FRBの柔軟な政策スタンスは世界経済・株価の下支えとなろう。他方、国内では

低金利政策長期化の副作用への警戒感が強まっている。日銀は世界経済の逆風が止んだタ

イミングを捉え、20年春に長短政策金利の誘導水準を小幅引き上げると予想する。

【金融政策メインシナリオ】

■ 19 年度:世界経済の下振れリスクを注視 <マイナス金利政策▲0.1%、10 年ゼロ%程度>

日銀は世界経済の下振れリスクとその国内経済への影響を注視。4 月および 7 月の「展

望レポート」では、経済・物価とも「下振れリスクの方が大きい」との慎重判断を維持。た

だ、外需の減速はあっても、緩やかな賃金上昇と設備投資拡大の流れは続いており、2%

物価目標に向かうモメンタム自体は途切れていないとの見方を示す。追加緩和の「可能

性」については、「2%物価目標の達成に必要と判断すれば検討する」と柔軟に構える

19 年秋、日銀は消費税率引き上げ後の景気マインドを注視。10 月の「展望レポート」では

「慎重に見極める必要がある」とし、金融政策は現状維持。そうしたなか、年前半の世界

経済の減速は徐々に収束し、輸出にも持ち直しの兆しがみられる。日銀は、海外経済の

減速は和らぎつつあり、国内経済は緩やかな拡大基調を維持するとの見通しを示す

20 年(暦年)に入ると、消費増税後の需要反動減は限定的だったことが確認される。日銀

は 20 年 1 月会合で、「政策金利のフォワードガイダンス」から「19 年 10 月に予定されてい

る消費増税引き上げの影響を含めた」(経済・物価の不確実性を踏まえ・・・)の部分を削

除し、「増税の直接的なリスクは過去のもの」との認識を示す。コアCPIの伸びはゼロ%台

後半にとどまるも、企業によるコスト上昇の転化は緩やかながら続き、企業のマークアッ

プ率3は改善方向。予想物価上昇率はプラス圏で横ばい

■ 20 年度:長短金利の誘導水準引き上げ <無担 O/N 「ゼロ~0.1%」、10 年 0.2%程度>

20 年 4 月に入ると、日銀委員が「内外の不確実性は低下しつつある」と発言。「日銀は政

策調整を視野に入れ始めた」との観測報道も相次ぐ。日銀は 4 月末の「展望レポート」会

合で、経済のリスク判断を「下振れリスクの方が大きい」から「上下にバランスしている」に

引き上げる。そのうえで、執行部は、金融システムへの累積的な副作用も考慮すれば、長

短金利の誘導水準を「微調整」したうえで、緩和政策を息長く続けることが望ましいと提

案。短期政策金利を無担保コール翌日物に戻し、誘導水準は「ゼロ~0.1%」とする。長期

金利の誘導水準は「0.2%程度(±0.2%)」に引き上げる。ETF と J-REIT については年間

の買入れ額をレンジ化し、徐々に減額の方向性を示す

同時に、日銀は物価については、「依然として下振れリスクの方が大きく、2%物価目標に

向けたモメンタムも力強さに欠けている」と指摘。2%目標を目指して、極めて緩和的な金

融政策を粘り強く続ける方針に変わりないと説明する。当面、追加利上げは想定されない

ことを示す新たな「フォワードガイダンス」も発表し、市場の追加利上げ観測をけん制。長

期金利の急激な上昇に対しては、国債買入れの増額や指値オペで対応する

■ 21 年度:YCC の緩和を通じ市場機能を改善 <無担 O/N 「ゼロ~0.1%」、10 年 0.2%程度>

金融市場調節方針は据え置き。日銀は、マイナス金利撤廃後の金融市場や景気への影

響を慎重にみていく。国債買入れの弾力化(テーパリング)は継続。長期金利の誘導水準

は「0.2%程度」に据え置くも、経済・物価情勢を反映した金利変動は以前より容認。イール

ドカーブ・コントロールの事実上の緩和を図っていく。21 年 9 月、安倍首相は自民党総裁

の任期満了に伴って辞任。巷では黒田総裁の“同時退任”も囁かれるが、後任首相はそう

した思惑を否定。13 年 1 月の共同声明の継続、2%物価目標の維持も確認する

3 仕入れ価格上昇分の販売価格への転嫁率。日銀は低いマークアップ率が長期インフレ予想の押し下げに働いてきたと分析している。

【2019 年度~21 年度の

金融政策シナリオ】「20 年

春に長短金利の誘導水準

引き上げ」シナリオを維持

- 40 -債券投資クォータリー 2019 年 3 月 1 日

13年4月に量的・質的金融緩和を開始した黒田日銀は、16年9月のイールドカーブ・コントロ

ール(YCC)の採用から徐々に政策方針を見直し、昨年はいわゆる政策の正常化に向けて少

し舵を切った(表4)。18年7月会合では、長期金利の変動幅拡大、国債およびETF等の資産

買入れの弾力化を決定(「強力な金融緩和継続のための枠組み強化」)。事実上、YCCを緩

める方向に踏み出した。同会合で導入した「政策金利のフォワードガイダンス」4は、近い将来

の利上げ観測をけん制すると同時に、長短金利の誘導水準引き上げの条件を「経済・物価の

不確実性」とし、2%物価目標の達成とは切り離した。「消費税率引き上げの影響を含めた経

済・物価の不確実性」が後退すれば、マイナス金利の解除と長期金利の誘導水準の引き上げ

があり得る枠組みに転じた格好。昨年10月会合では、低金利長期化がもたらす金融面の不均

衡リスクについて、「今後の動向には注視していく必要がある」との留意コメントを加えた。

表4:「量的・質的金融緩和」の導入以降の日銀の主な政策決定

出所:日銀より三菱UFJモルガン・スタンレー証券作成

日銀は昨年11月の第1週目までは、さらなる弾力化の余地を探っていたのではないか。傍

証は11月5日の黒田総裁による名古屋での挨拶だ(経済界代表者との懇談会)。総裁はそこ

で、『この5年間、わが国の経済ははっきりと改善した』、『物価の面でもデフレに苦しんでいた5

年前に比べれば、着実に改善している』と述べた。さらに、『デフレ克服のため、大規模な政策

を思い切って実施することが 適な政策運営と判断された経済・物価情勢ではなくなっている』

と表明。日銀がその時点で何を考えていたのかは分からないが、政策の局面変化を示唆する

発言だった。だが、その直後から世界的な株安が加速し、米中貿易摩擦による世界経済の減

速リスクが高まった。この黒田総裁の挨拶を 後に、先行きの政策調整を匂わす日銀からの

新たな情報発信5は途絶えている。FRBが段階的利上げ方針を撤回し、ECB関係者も利上げ

タイミングの後ズレの可能性を認めるなか、日銀も様子見になるのは当然だ。 4 「日本銀行は、19 年 10 月に予定されている消費税率引き上げの影響を含めた経済・物価の不確実性を踏まえ、当分の間、現在のきわめて低い長

短金利の水準を維持することを想定している」(18 年 7 月会合)。 5 早稲田大学の小枝淳子氏が日銀金融研究所に寄稿した英語の論文(“Macroeconomic Effects of Quantitative and Qualitative Monetary Easing

Measures")についても、「大規模緩和の限界を示唆した日銀の情報発信ではないか?」との憶測を呼んだ。日銀 HP 掲載は 11 月 5 日だった。

主な政策決定内容

2013 4/4量的・質的金融緩和政策を導入。「2年程度でCPI2%を達成する」ことを目指し、①金融市場調節の操作目標をマネタリーベース(MB)に変更し、MBを2年間で倍増(年間約60~70兆円)、②長期国債の買入平均残存年限を7年程度に長期化し、残高を年間約50兆円相当ペースで増加、③ETFを年間約1兆円、J-REITを年間約300億円買入れ

2/18 「貸出増加を支援するための資金供給」と「成長基盤強化を支援するための資金供給」の規模を2倍とし、1年間(~15年3月末)延長

10/31「量的・質的金融緩和」の拡大。マネタリーベース目標を「年間約80兆円」に拡大。長期国債の保有残高は「年間80兆円」に拡大、買入れの平均残存年限を「7年~10年程度」に延長。ETFは「年間約3兆円」、J-REITは「年間約900億円」に増額。

1/21「貸出増加を支援するための資金供給」と「成長基盤強化を支援するための資金供給」を1年間延長(~16年3月末)。成長基盤強化支援の上限を1兆円から2兆円、総枠を7兆円から10兆円に引き上げ。また、日本銀行の非取引先金融機関が系統中央機関を通じて制度を利用できる枠組みを導入

12/18

「量的・質的金融緩和」を補完するための諸措置を導入。ETF買入れに3,000億円の新枠設定、「設備・人材育成に積極的に取り組んでいる企業」の株式を対象とするETFを買入れ(16年4月~)。成長基盤強化支援資金供給に「設備・人材育成に積極的に取り組んでいる企業」を追加。貸出支援基金等を1年延長(~17年3月末)。日銀適格担保に外貨建て証書貸付債権、住宅ローン債権を追加。長期国債買入れの平均残存年限を「7年~12年程度」に長期化、国債補完供給の連続利用日数を緩和。J-REITの買入限度額を「10%以内」に引き上げ

1/29 「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」の導入。日銀当座預金残高を3層とし、政策金利残高に▲0.1%のマイナス金利を適用(2/16から)

7/29 「金融緩和の強化」を決定(ETF買入→年6兆円、外貨調達安定措置)、9月会合での「検証」予告

9/21「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を導入。短期政策金利は▲0.1%、長期金利は「ゼロ%程度)。マネタリーベース目標は撤廃。「オーバーシュート型コミットメント」を採用。「総括的な検証」を発表

2017 1/31「貸出増加を支援するための資金供給」、「成長基盤強化を支援するための資金供給」、東日本大震災および熊本地震にかかる「被災地金融機関を支援するための資金供給オペレーション」等の措置について、受付期間を1年間延長(~18年3月末)

1/23「貸出増加を支援するための資金供給」、「成長基盤強化を支援するための資金供給」、東日本大震災および熊本地震にかかる「被災地金融機関を支援するための資金供給オペレーション」等の措置について、受付期間を1年間延長(~19年3月末)

7/31

「強力な金融緩和継続のための枠組み強化」を決定。①フォワードガイダンスの導入、②長期金利の誘導水準は「ゼロ%程度」を維持つつも、「金利は経済・物価情勢に応じて上下にある程度変動しうるものとし、買入れ額については、保有残高の増加額年間約80兆円をめどとしつつ、弾力的な買入れを実施する」と発表、③ETFおよびJ-REITの買入れについて、「その際、資産価格へのプレミアムへの働きかけを適切に行う観点から、市場の状況に応じて、買入れ額は上下に変動しうるものとする」と発表。また、日銀当座預金・政策金利残高の水準減少、およびETF銘柄別の買入れ額の見直し(TOPIX連動の買入れ額の拡大)も発表

2019 1/23「貸出増加を支援するための資金供給」、「成長基盤強化を支援するための資金供給」、東日本大震災および熊本地震にかかる「被災地金融機関を支援するための資金供給オペレーション」等の措置について、受付期間を1年間延長(~20年3月末)

2014

2015

2016

決定日

2018

ポイント(1):正常化への

「地均し」をいったん停止し

た日銀

11 月第 1 週目まで、日銀

はさらなる枠組み弾力化

を探っていたフシも

- 41 - 債券投資クォータリー 2019 年 3 月 1 日

もっとも、世界経済の減速は永遠に続くわけではない。米国は今週、中国との貿易協議の

延長を正式に発表し、3月2日に予定していた関税引き上げは当面棚上げとした。昨日(2月

28日)に発表された2月分・シカゴPMIは前月の57.5から64.7に反発し、17年10月以来の高水

準を付けた。今朝(3月1日)発表された2月分・中国製造業PMI(財新・マークイット)も49.9と前

月の48.3から持ち直した。先行きに楽観は禁物だし、日銀はいずれにせよ、今年10月に予定

される消費増税の影響を見極めるまでは慎重姿勢と予想される。とは言え、海外経済の逆風

が和らぎ、不確実性が後退してくれば、長短金利の誘導水準の見直しにむけた「地均し」を再

開させるとみている。

日銀がマイナス金利を解除し(短期政策金利は無担保コール翌日物、誘導水準は「ゼロ~

0.1%」と予想)、長期金利の誘導水準を現行の「ゼロ%程度」から「0.2%程度」に修正するタイ

ミングは、従来どおり20年4月会合と想定している。消費税率の引き上げから半年が経過し、

直後の反動減は収束していよう。東京オリンピック・パラリンピック開催が3ヵ月後に迫り、国内

では明るい話題が多く、インバウンド需要への期待も盛り上がる。また、20年は国政選挙の予

定がない(表5)。早期解散総選挙があれば別だが、オリンピック前の解散は考えづらい。4月

は、日銀支店長会議の開催、金融システムレポートの発行もある。日銀としては、長短政策金

利の微修正を進め易いタイミングではないか。

表5:2021年度までの主な国内イベントと今年の金融政策決定会合

注:20年以降の金融政策決定会合の日程は未発表

出所:日銀、各種報道資料より三菱UFJモルガン・スタンレー証券作成

日銀・金融政策決定会合

<イギリスのEU離脱日>

新元号の発表

統一地方選(7日、21日)、衆参両院補欠選挙(21日)

日銀・金融政策決定会合(展望レポート会合)

天皇陛下退位 (4/27-5/6は10連休)

日米物品貿易協定(TAG)交渉

新天皇即位、改元

トランプ米大統領、来日(~28日)?

G20財務相・中央銀行総裁代理会議(福岡)

G20財務相・中央銀行総裁会議(福岡)

日銀・金融政策決定会合

通常国会会期末

G20首脳会合(大阪)

参院選の投開票※

参院議員(改選議員)の任期満了

日銀・金融政策決定会合(展望レポート会合)

ラグビーワールドカップ開催

日銀・金融政策決定会合

消費税率を8%から10%に引き上げ

「即位の礼」(新天皇が即位を国内外に公式に宣言する儀式)

日銀・金融政策決定会合(展望レポート会合)

大嘗祭(新天皇の即位に伴う重要儀式)

年収850万超の会社員増税

東京夏季五輪(7/24~8/9)、パラリンピック(8/25~9/6)

自民党総裁任期満了

衆議院任期満了

9月30日

7月28日

11月下旬

10月22日

5月1日

1月

7月~9月

9月

6月8日~9日

6月28日~29日

10月1日

6月26日

202110月

10月30日~31日

2020

3月14日~15日

7月21日

4月1日

2019

5月26日

4月30日

4月7日、21日

3月29日

4月24日~25日

6月19日~20日

7月29日~30日

9月18日~19日

6月6日~7日

4月~5月

ポイント(2):海外経済の

逆風が和らげば、金利水

準の調整に向け「地ならし」

再開へ

「20 年 4 月会合」で金利水

準調整を予想する理由

- 42 -債券投資クォータリー 2019 年 3 月 1 日

なお、当部ではFRBは利上げ停止も利下げに転じることはなく、柔軟な政策運営が経済・

株価の下支えになると予想。ECBについては、ドラギ総裁の後任の新総裁の下で、当初の予

定よりは後ズレするものの、19年12月の理事会で利上げに着手する可能性が高いとみている。

(詳しくは本レポートの『TREASURYアウトルック』、および『欧州債アウトルック』を参照。)

日銀の金利水準引き上げが円高を加速させるのではないか、との懸念もあろう。一時的に

は、日銀の政策修正が円高材料に使われることは考えられる。だが、趨勢的な円高トレンドが

根付くリスクは小さいのではないか。理由は、①日銀は追加利上げの可能性は低いことを新た

なフォワードガイダンスで表明すると想定、②2%物価目標は堅持、③内外金利差の縮小はあ

っても小幅、④マイナス金利解除は金融セクター株にはポジティブ、などによる。(為替相場見

通しについては、本レポートの『外為ウォッチ』を参照。)

①について、例えば、「2%の“物価安定の目標”に向かうモメンタムを勘案し、当分の間、現

在の長短金利の水準を維持することを想定している」などが考えられる。②の「2%の物価安定

の目標」については、識者や市場参加者から「2%目標の撤回説」はあまり聞かれなくなってき

ている。日銀が期限を区切って目標達成を目指す姿勢を見直したこともあるが、少なくとも中

長期的な目標として(日銀が)米欧と同じ2%目標を掲げることについて、強く反対する声は少

なくなっている印象だ。日銀が2%目標を撤回して金融緩和から本格撤退する可能性が小さ

そうなことも、円高の心理的な歯止めにつながると考えられる。

金融政策のリスクシナリオは下記の2つ。【リスクシナリオA】は、内外需要の停滞から景気の

低迷が長引き、日銀が金利水準の調整になかなか踏み出せないケース。ただし、需給ギャッ

プの深刻な悪化は回避され、追加緩和には至らず。時期はメインシナリオより後ズレするも、

逆風が和らげば金利水準の微修正に乗り出すイメージだ。

【リスクシナリオB】は世界的な景気後退に陥るケース。この場合は、FRBやECBの緩和再

開も想定される。日銀は内外金利差縮小による円高回避、デフレ再燃防止のため、金融仲介

機能への副作用を手当てしたうえで、マイナス金利の深掘りを決定する。考えられる副作用対

策は、日銀当座預金・基礎残高(付利金利:0.1%)の引き上げ、条件・金額を限定したうえで

のマイナス金利での資金供給プログラムの導入、あるいは、政府・銀行業界とすり合わせたう

えで大口銀行預金へのマイナス金利適用(または口座管理手数料徴収)の容認など。政府の

財政出動・国債増発を受けた国債買入れの債増額も考えられる。

■ 【リスクシナリオ A】~金利水準調整の先送り

19 年 10 月の消費増税の引き上げ後、内外需要の停滞から景気は低迷。「経済・物価の

不確実性」が後退せず、日銀は長短金利の水準調整に動けず。円高・株安リスクが強ま

る場面では、国債買入れの弾力化(減額)も見合わせ。ただ、金融機関に与えるマイナス

金利政策の副作用を緩和するため、▲0.1%が適用される政策金利残高を 小限とし、

0.1%を付利する基礎残高は引き上げる

■ 【リスクシナリオ B】~財政出動と合わせた緩和強化

世界的な景気後退が到来。政府・日銀はデフレスパイラル再燃阻止を迫られる。日銀は

政府の財政出動に合わせ、量的・質的金融緩和を再増強。銀行への副作用緩和を手当

てしたうえで、マイナス金利を深掘り。長期金利は「ゼロ%程度」に据え置きも、政府の財

政出動に合わせて国債買入れ再増額も。信用リスクが拡大すれば、社債・CP、ETF 等の

資産買入れ増強へ

(3月1日 13:30)

日銀は新たなフォワードガ

イダンスや 2%目標堅持

で円高リスクをけん制

ポイント(3):金融政策の

リスクシナリオ

- 43 - 債券投資クォータリー 2019 年 3 月 1 日

債券需給ウォッチ

楽観できない 3 月の 10 年・30 年両利付国債入札

シニア債券ストラテジスト 稲留 克俊

昨日(2/28)17時に日銀から「当面の長期国債等の買入れの運営について」が公表された。

長期債(5-10年)の月間回数が1回減り(5回→4回)、買入額レンジの上限が引き上げられた

(6,000億円→6,500億円)。これを受けて来週以降、長期債の1回あたりの買入額が話題になる

だろう。レンジの概ね中央値である4,700億円で4回通知があった場合、月間買入額は1兆

8,800億円となり、2月(2兆1,500億円)から2,700億円減る計算になる。

来週の日銀・長国買入オペは、4日(月)・6日(水)・8日(金)の3回通知されることが予定され

ている。事前通知されている対象年限は、4日(月)が中期債と超長期債、6日(水)が長期債、8

日(金)が中期債である。6日(水)と8日(金)には、まだ通知日が決まっていない短期や物価連

動債が同時通知される可能性がある。

表1:日銀・長国買入オペ動向の整理

出所:日銀資料より三菱UFJモルガン・スタンレー証券作成 ---------------------------------------------------------------------------------------------------------------

3月5日(火)に10年利付国債入札が実施される。入札の概要と最近の落札結果は表2と表3

のとおり。この3ヵ月間程度、長期国債を大きく買い越してきた外国人が買いの手を緩めない

か否かが気掛かりな点だ。また、翌日の日銀・長国買入オペにおける「5-10年」の通知額を巡

る不透明感も抱える。入札は弱めの結果になる可能性の方が高いと予想している。

表2:10年利付国債入札(3月5日分)の概要

発行予定額 2兆2,000億円(前回債と同じ) 入札方式 価格コンベンショナル方式

発行予定日 2019年3月6日 償還予定日 2028年12月20日(前回債と同じ)

クーポン予想 0.1% WI取引 ▲0.030%(2月28日の弊社引け値)

出所:各種資料より三菱UFJモルガン・スタンレー証券作成

日 月 火 水 木 金 土 短期①:100~1,000億円1 2 短期②:100~1,000億円

3 4 5 6 7 8 9中期①1-3:2,500-4,500億円 10Y入札 30Y入札 3-5:3,000-5,500億円 長期①:3,000-6 ,500億円 中期②1-3:2,500-4,500億円超長期①10-25:1 ,500-2 ,500億円 なし なし 3-5:3,000-5,500億円 25- : 100-1 ,000億円 中期⑤1-3:2,500-4,500億円

10 11 12 13 14 15 16 3-5:3,000-5,500億円5Y入札 流動性(5-15.5年) 中期⑥1-3:2,500-4,500億円

長期②:3,000-6 ,500億円 3-5:3,000-5,500億円なし 超長期②10-25:1,500-2,500億円 なし

25- : 100-1,000億円17 18 19 20 21 22 23

20Y入札 流動性(1-5年)中期③1-3:2,500-4,500億円 長期③:3,000-6 ,500億円 長期⑤:3,000-6,000億円 3-5:3,000-5,500億円 なし 祝日 なし 長期⑥:3,000-6,000億円

24 25 26 27 28 29 30中期④1-3:2,500-4,500億円 40Y入札 2Y入札 3-5:3,000-5,500億円 長期④:3,000-6 ,500億円超長期③10-25:1 ,500-2 ,500億円 なし なし 超長期④10-25:1 ,500-2 ,500億円 25- : 100-1 ,000億円 25- : 100-1 ,000億円

超長期⑤10-25:1,500-2,500億円 25- : 100-1,000億円10年物国①:250億円10年物国②:250億円

まだ決まっていないオペ

2019年3月

日銀・長国買入オペ動向

の整理

10 年利付国債入札

【3 月 5 日(火)分】

について

- 44 -債券投資クォータリー 2019 年 3 月 1 日

表3:最近の10年利付国債入札の落札結果

回号 クーポン

(%) 入札日

発行予定

額(億円)

落札額

(億円)

最低落札

価格(円)

テール

(銭)

応札倍率

(倍)

最高落札

利回り%) 評価

349 0.1 18/02/01 23,000 24,563 100.09 2 4.58 0.090 無難

350 0.1 18/03/01 23,000 26,390 100.37 1 4.53 0.062 無難

350 0.1 18/04/03 22,000 25,276 100.66 1 4.16 0.033 無難

350 0.1 18/05/08 22,000 24,317 100.52 1 4.20 0.047 無難

350 0.1 18/06/05 22,000 22,550 100.49 1 4.38 0.049 無難

351 0.1 18/07/03 22,000 24,783 100.60 2 4.37 0.039 無難

351 0.1 18/08/02 22,000 24,850 99.62 12 4.17 0.138 低調

351 0.1 18/09/05 22,000 25,058 99.86 1 4.55 0.114 無難

352 0.1 18/10/02 22,000 24,357 99.58 1 4.21 0.142 無難

352 0.1 18/11/01 22,000 25,134 99.63 2 4.33 0.137 無難

352 0.1 18/12/04 22,000 25,260 100.22 3 3.82 0.077 低調

353 0.1 19/01/08 22,000 22,353 100.83 1 4.04 0.016 順調

353 0.1 19/02/05 22,000 25,279 101.11 1 4.80 ▲0.012 無難

注: 「評価」は過熱・順調・無難・低調・不調の5段階で、弊社によるもの。落札額には第Ⅰ非価格競争入札と第Ⅱ非価格競争入札による落札分を含む

出所:財務省等資料より三菱UFJモルガン・スタンレー証券作成

前回債入札(2/5)以降の10年国債利回りは、低位での推移が続いた(図1)。米中通商協議

の進展期待が高まったものの金利上昇圧力は限定的だった。2月22日(金)には一時▲

0.050%と1月4日以来の低水準を付けた。もっとも、そのレベルを下抜けていく勢いはなく、今

週はやや下げ渋る動きになっている。昨日に決まった3月からの「5-10年」ゾーンの日銀買入

回数引下げが、金利水準に上振れをもたらす可能性もある。昨日引け時点の利回り水準は、

カレント353回債複利と新発債WIがともに▲0.030%、弊社パーレートが▲0.019%である。今

回債は、いわゆる30bpルールが適用されるので、クーポンが0.1%になって353回債のリオー

プン発行になる公算が大きい。

前回債入札時以降のイールドカーブ変化は、小動き。中長期ゾーンで金利水準が低下す

る年限が多かった一方、超長期ゾーンでは小幅な金利上昇(図2)。10年セクターの金利低下

幅は最も大きかったので、超長期ゾーン対比でみた相対価値上の割安感はやや和らいだ。

プラスの利回りを求める市場参加者の需要が超長期債にシフトし、それが同ゾーンのブル・フ

ラット化に繋がるイールド・ハンティング的な現象には一服感が出ている。とはいえ、30-10年カ

ーブは65bp程度と16年12月以来の低い域にある他、20-10年カーブも50bpを下回る低水準の

ままだ(図3)。割安/割高どちらかと評価するなら、まだ割安ということになる。他方、10-7年カー

ブが昨年12月に付けたピーク(18.7bp)から徐々に縮小してきており、先物対比では割高化し

てきた印象だ(図4)。昨年12月に10bp台前半に縮小していた10年SWAPスプレッドは、足もと

で+17.2bpまで拡大してきており、SWAP対比でも割高感が出てきている(図4)。

絶対水準 ~ ▲0.050%

まで低下した後、底入れ

相対価値 ~ 超長期ゾ

ーン対比ではまだ割安。

先物対比・SWAP 対比は

ともに割高化

- 45 - 債券投資クォータリー 2019 年 3 月 1 日

図1:最近の10年カレント値動き 図2:前回債入札時からのイールドカーブ変化

出所:ロイター資料より三菱UFJモルガン・スタンレー証券作成 出所:三菱UFJモルガン・スタンレー証券作成

図3:10-2年、10-5年、20-10年、30-10年の各スプレッド 図4:10-7年、10年SWAP、バタフライの各スプレッド

出所:三菱UFJモルガン・スタンレー証券作成 出所:三菱UFJモルガン・スタンレー証券作成

日本証券業協会が公表している投資家別の店頭売買高データをみると、この3ヵ月間は長

期国債を大きく買い越しているのが外国人だ(図5)。米中通商・英EU離脱といった2大協議の

混乱懸念などを理由にしたリスク回避ムードが背景にあったのだろう。しかし、目先はそれらの

懸念が後退しているうえ、日銀が長国買入オペの通知回数引下げを決めた。外国人が買い

の手を緩めやすそうな材料が出てきた。外国人頼みの好需給維持は期待し難いであろう。

今次入札は、翌日の日銀・長国買入オペ(図6)における「5-10年」の通知額がいくらになる

かを探るムードの中で迎えることになる。この点も、今次入札に際しての追加的な不透明要因

であろう。1回あたりの買入額は4,500億円、4,700億円、5,000億円のいずれかと見ておくのが

自然だろう。それぞれのケースで、3月中の買入額が4回とも据え置かれる場合、月間買入額

の2月比は、▲3,500億円、▲2,700億円、▲1,500億円となる。いずれにしても減る計算になる

だけに、需給の緩みが意識されやすい。入札までに相応のプラス圏まで利回り水準が上昇し

ていなければ、十分な需要は集まらないであろう。入札は弱めの結果になる可能性の方が高

いと予想している。

-0.06

-0.04

-0.02

0.00

0.02

0.04

0.06

0.08

0.10

12/4 12/18 1/1 1/15 1/29 2/12 2/26

(%)

(月/日)

過去入札

40

45

50

55

60

65

70

75

80

85

90

10

15

20

25

30

35

40

17/2 17/5 17/8 17/11 18/2 18/5 18/8 18/11 19/2

(bp)(bp)

(年/月)

20-10年スプレッド(右軸)

10-2年スプレッド(左軸)

10-5年スプレッド(左軸)

30-10年スプレッド(右軸)

5

10

15

20

25

17/3 17/6 17/9 17/12 18/3 18/6 18/9 18/12 19/3

(bp)

(年/月)

10-7年スプレッド

10年SWAPスプレッド

10-20-30年バタフライスプレッド

ここまでの好地合いをけ

ん引してきた外国人のア

ンワインドが懸念される

翌日のオペ通知額を巡る

不透明感

- 46 -債券投資クォータリー 2019 年 3 月 1 日

図5:長期国債の投資家別売買動向

出所:日本証券業協会資料より三菱UFJモルガン・スタンレー証券作成

図6:日銀・長国買入オペの通知額の推移

出所:日銀より三菱UFJモルガン・スタンレー証券作成

-3

-2

-1

0

1

2

3

15/4 16/4 17/4 18/4

(兆円)

(年/月)

外国人 都市銀行 地方銀行

第二地方銀行

信用金庫 農林系金融機関 生損保

0

1

2

3

4

5

6

7

8

9

10

11

12

5月 6月 7月 8月 9月10月

11月

12月1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月10月

11月

12月1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月10月

11月

12月1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月10月

11月

12月1月 2月 3月 4月 5月 6月 7 月 8月 9月10月

11月

12月1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月10月

11月

12月1月 2月

2013年 2014年 2015年 2016年 2017年 2018年 2019年

(兆円)

指値オペ

物価連動債

15年変国

1年以下

1年超3年以下

3年超5年以下

1年超5年以下

5年超10年以下

10年超25年以下

25年超

10年超

14年10月追加緩和 16年9月YCC開始 18年7月政策調整

- 47 - 債券投資クォータリー 2019 年 3 月 1 日

3月7日(木)に30年利付国債入札が実施される。入札の概要等は表4と表5のとおり。今週26

日(火)の流動性供給入札では、ロングエンドゾーンの不人気ぶりが示された。また、年度末の

生保による駆け込み買いが不発に終わる懸念もある。入札は楽観視できないとみている。

表4:30年利付国債入札(3月7日分)の概要

発行予定額 7,000億円(前回債と同じ) 入札方式 価格コンベンショナル方式

発行予定日 2019年3月8日 償還予定日 2048年12月20日(前回債と同じ)

クーポン 0.7% WI取引 0.610%(2月28日(木)時点の引け値) 出所:各種資料より三菱UFJモルガン・スタンレー証券作成

表5:最近の30年利付国債入札の落札結果

回号 クーポン

(%) 入札日

発行予定

額(億円)

落札額

(億円)

最低落札

価格(円)

最高落札

利回り(%)

応札倍

率(倍)

テール

(銭) 評価

57 0.8 18/02/08 8,000 9,119 99.45 0.822 4.27 5 順調

58 0.8 18/03/06 8,000 8,873 101.15 0.753 4.24 6 無難

58 0.8 18/04/12 7,000 8,025 102.05 0.716 4.34 6 無難

58 0.8 18/05/15 7,000 7,956 101.30 0.746 4.41 1 無難

58 0.8 18/06/19 7,000 7,851 102.20 0.710 4.22 7 低調

59 0.7 18/07/05 7,000 7,806 99.85 0.706 5.01 5 無難

59 0.7 18/08/09 7,000 7,441 96.35 0.853 4.68 6 無難

59 0.7 18/09/11 7,000 7,970 96.70 0.838 4.23 1 無難

60 0.9 18/10/11 7,000 7,064 100.00 0.900 3.92 4 無難

60 0.9 18/11/13 7,000 7,583 100.55 0.876 3.99 5 無難

60 0.9 18/12/11 7,000 7,692 102.50 0.796 3.78 5 無難

61 0.7 19/01/10 7,000 7,622 99.60 0.716 4.03 2 無難

61 0.7 19/02/07 7,000 6,991 102.80 0.589 4.72 5 無難

注: 「評価」は過熱・順調・無難・低調・不調の5段階で、弊社によるもの。落札額には第Ⅰ非価格競争入札と第Ⅱ非価格競争入札による落札分を含む

出所:財務省等資料より三菱UFJモルガン・スタンレー証券作成

前回債入札(2/7)以降の30年国債利回りは、低水準でもみ合った。イールド・ハンティング的

な金利低下が進み、2月21日に0.565%を付ける場面があった(図7)。ただ、その後はやや下

げ渋る動きに転じている。昨日引け時点の利回り水準は、カレント61回債複利が0.607%、新

発債WIが0.610%、弊社パーレートが0.630%。今回債は、61回債リオープンとなるため、クー

ポンは0.7%である。

前回債入札以降のイールドカーブ変化は、図8のとおり。幅広い年限で小幅な金利低下と

なるなか、30年セクターの低下幅は小さかった。そのため、他年限と比較した30年の相対価値

はやや割安化している。それでも、30-10年や30-20年カーブはそれぞれ65bp程度、17bp程度

であり、30年を割安と評価できるカーブ形状ではない。他方、SWAPスプレッドは2月中旬に

+3.1bpまで拡大した後、足もとでゼロ近傍まで再縮小。30-20年ボックススプレッドも小幅ながら

拡大しており、SWAP対比でみたJGB30年に割高感は無い(図10)。

30 年利付国債入札

【3 月 7 日(木)分】

について

絶 対 水 準 ~ 一 時

0.565%まで低下した後、

小反発

相対価値 ~ 10 年・20

年 対 比 で は な お 割 高 。

SWAP 対比では割高感な

- 48 -債券投資クォータリー 2019 年 3 月 1 日

図7:最近の30年カレント値動き 図8:前回債入札時からのイールドカーブ変化

出所:ロイター資料より三菱UFJモルガン・スタンレー証券作成 出所:三菱UFJモルガン・スタンレー証券作成

図9:30-10年、30-20年の各スプレッド 図10:30年SWAPと20-30年ボックスの各スプレッド

出所:三菱UFJモルガン・スタンレー証券作成 出所:三菱UFJモルガン・スタンレー証券作成

今週26日(火)に実施された流動性供給入札(対象は15.5-39年)は、応札倍率が1.98倍まで

低下し、弱い落札結果と受け止められた。また、当方が試算する落札銘柄の平均デュレーシ

ョンは17.5年と、2010年11月以来約8年ぶりの低水準で、量的・質的金融緩和政策が導入され

た2013年4月以降の最低を更新した(図11)。イールドカーブのロングエンドゾーンに対する需

要が弱いことが示された。世界的なリスク回避ムードに一巡感が出るなか、30年・0.60%近傍

のレベルから更に上値を買っていこうとする向きは限られるということであろう。

例年みられるような、国内生保による年度末の駆け込み的な超長期JGB買いにも期待でき

ないかもしれない。国内生(損)保の円債の買い越しペースをみると、今年度は年度前半に最

近5年間の最高ペースで買い続けていた(図12)。年度下期に入ってやや失速しているとはい

え、1月までの累計買い越し額は3.6兆円と既に高水準にある。仮に、年度間購入予定が昨年

度(3.8兆円)と同程度であれば、2月と3月に買う必要のある金額は僅か計0.2兆円程度にとどま

る。また、日銀が2月28日に決めた長国買入オペにおける「5-10年」の買入回数引下げを受け

て、10年金利がプラス圏に浮上するような展開になれば、プラス利回りを求める消去法的な超

長期債需要(イールドハンティング的な需要)が弱まる可能性もある。楽観できない入札になる

とみている。

0.55

0.60

0.65

0.70

0.75

0.80

0.85

12/11 12/25 1/8 1/22 2/5 2/19

(%)

(月/日)

過去入札

-0.3

-0.2

-0.1

0.0

0.1

0.2

0.3

0.4

0.5

0.6

0.7

0.8

▲ 2.0

▲ 1.5

▲ 1.0

▲ 0.5

0.0

0.5

1.0

2 4 6 8 10 12 14 16 18 20 22 24 26 28 30 32 34 36 38 40

(%)(bp)

(年限)

変化幅、左軸

2019/2/7

2019/2/28

12

14

16

18

20

22

24

26

28

30

60

65

70

75

80

85

90

17/3 17/6 17/9 17/12 18/3 18/6 18/9 18/12 19/3

(bp)(bp)

(年/月)

30-20年スプレッド(右軸)

30-10年スプレッド(左軸)

-3

0

3

6

9

-8

-6

-4

-2

0

2

4

6

8

17/3 17/6 17/9 17/12 18/3 18/6 18/9 18/12 19/3

(bp)(bp)

(年/月)

20-30年ボックススプレッド(右軸)

(上に行く程、JGBがスティープ)

30年SWAPスプレッド(左軸)

ロングエンド不人気が示さ

れた 26 日の流動性供給

入札

国内生保の年度末買い不

発も

- 49 - 債券投資クォータリー 2019 年 3 月 1 日

図11:流動性供給入札における落札銘柄の平均デュレーション

注:ロングエンド(15.5年超)を対象にした同入札の落札結果のみを抽出している 出所:日本証券業協会資料より三菱UFJモルガン・スタンレー証券作成

図12:生損保による年度間円債累計買い越し額

注:円債は超長期JGBと一般債の合計額 出所:日本証券業協会資料より三菱UFJモルガン・スタンレー証券作成

(3月1日 8:00)

15

17

19

21

23

25

27

29

31

33

10/1 11/1 12/1 13/1 14/1 15/1 16/1 17/1 18/1 19/1

(デュレーション、年)

(年/月)

0

1

2

3

4

5

6

Apr May Jun Jul Aug Sep Oct Nov Dec Jan Feb Mar

(兆円)

FY2014

FY2016

FY2015

FY2017

FY2018

- 50 -債券投資クォータリー 2019 年 3 月 1 日

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- 51 - 債券投資クォータリー 2019 年 3 月 1 日

TREASURY アウトルック

20 年・米景気は 0%台成長へ:予防的利下げの可能性否定できず

シニア・マーケットエコノミスト 井上 健太

ポイント

足元の米国景気は堅調持続。19年1-3月期は+3.0%成長達成も、年後半に失速。20年は+0.1%成長へ

FRB は無理な利上げ回避で景気後退には至らず:メインシナリオは政策金利・据え置き継続を予想

サブシナリオとして、20年に低成長・ディスインフレ対応、「予防的な利下げ」を20年6月(+12月)に追加

2月28日、(政府機能部分停止で公表が遅れていた)18年10-12月期の米GDP統計が発表

された(表)。実質経済成長率は前期比年率+2.6%となり、市場予想(+2.2%)を上回った。前

期の+3.4%には及ばずとも、好調持続を確認できた。内訳をみると個人消費が+2.8%と堅調。

設備投資は+6.2%。構築物の落ち込みを機器・知的財産関連がカバーした。ただし、景気の

勢いは下降基調。当方が景気循環の源泉とみる住宅投資は▲3.5%と4四半期連続のマイナ

ス成長。今回のGDP統計を受け、当方が想定していたよりも足元の成長が堅調ゆえ、19年1-3

月の経済成長率見通しを従前の+2.2%から+3.0%へ引き上げた。一方、年初のスタートが好

調ゆえ、年央から年後半の落ち込みが目立ってしまう。19年(通年)の成長率は従来の+1.7%

から+2.1%へ上方修正した一方、20年は+0.6%から+0.1%へ下方修正。21年も+1.5%から

+1.0%へ見通しを引き下げた。19年初までの景気の強さは持続可能に非ず。翌期以降、反動

減が不可避であり、(中間選挙でのネジレによって)追加拡張財政実現の可能性が大きく低下

した現状、景気浮揚のきっかけは当面、訪れそうにない。

表:「米国経済・金融見通し」-20年の米国景気は0%成長、調整利下げの可能性を否定できず

予想 [単位:%]

2017 年 2018 年 2019 年 2020 年 2021 年

7-9 10-12 1-3 4-6 7-9 10-12 1-3 4-6 7-9 10-12 (予想) (予想) (予想)

実質GDP(前期比年率) +3.4 +2.6 +3.0 +1.0 ▲0.4 +0.2 ▲0.7 +0.4 +0.5 +0.8 +2.2 +2.9 +2.1 +0.1 +1.0

+2.5 +3.1 +1.0 +0.3 +1.4

個人消費(PCE) +3.5 +2.8 +2.7 +1.5 +1.0 +1.1 +0.9 +0.9 +1.2 +1.3 +2.5 +2.6 +2.3 +1.0 +1.5

設備投資 +2.5 +6.2 +4.7 ▲1.2 ▲2.8 ▲3.0 ▲5.1 ▲5.3 ▲3.4 ▲2.8 +5.3 +7.0 +2.3 ▲3.9 ▲1.5

民間住宅投資 ▲3.5 ▲3.5 ▲10.5 ▲4.0 ▲6.8 ▲11.7 ▲9.9 ▲5.4 ▲4.4 ▲2.4 +3.3 ▲0.2 ▲6.2 ▲7.6 ▲0.2

政府支出 +2.6 +0.4 +0.7 +2.0 +3.3 ▲0.1 +1.0 +2.2 +3.3 +1.9 ▲0.1 +1.5 +1.5 +1.7 +2.1

民間在庫投資* +2.3 +0.1 +0.1 +0.5 ▲0.8 +0.0 ▲0.4 +0.4 ▲0.3 +0.2 ▲0.0 +0.1 +0.3 ▲0.1 +0.1

純輸出* ▲2.0 ▲0.2 +0.5 ▲0.5 ▲0.2 +0.3 ▲0.1 ▲0.1 +0.0 ▲0.2 ▲0.4 ▲0.3 ▲0.2 ▲0.0 ▲0.3

PCEコア価格指数(前年比) +2.0 +1.9 +1.8 +1.6 +1.5 +1.4 +1.2 +1.1 +1.0 +1.0 +1.6 +1.9 +1.6 +1.1 +1.0

生産者物価(前年比) +3.0 +2.7 +2.3 +1.9 +1.9 +1.7 +1.2 +1.0 +1.0 +1.0 +2.3 +2.9 +1.9 +1.1 +1.0

消費者物価(前年比) +2.6 +2.2 +2.2 +2.2 +2.1 +1.9 +1.3 +1.2 +1.1 +1.1 +2.1 +2.4 +2.1 +1.2 +1.2

消費者物価コア(前年比) +2.2 +2.2 +1.7 +1.6 +1.5 +1.5 +1.3 +1.2 +1.1 +1.0 +1.8 +2.1 +1.6 +1.1 +1.1

FFレート(誘導目標) 2.00-2.25 2.25-2.50 2.25-2.50 2.25-2.50 2.25-2.50 2.25-2.50 2.25-2.50 2.25-2.50 2.25-2.50 2.25-2.50 1.25-1.50 2.25-2.50 2.25-2.50 2.25-2.50 2.25-2.50

2年国債利回り 2.82 2.49 2.70 2.60 2.50 2.50 2.40 2.30 2.30 2.30 1.88 2.49 2.50 2.30 2.30

5年国債利回り 2.95 2.51 2.80 2.70 2.60 2.50 2.40 2.40 2.30 2.30 2.21 2.51 2.50 2.30 2.20

10年国債利回り 3.06 2.68 2.80 2.80 2.80 2.40 2.40 2.50 2.40 2.20 2.41 2.68 2.40 2.20 2.40

30年国債利回り 3.21 3.01 3.10 2.90 2.80 2.60 2.60 2.60 2.60 2.50 2.74 3.01 2.60 2.50 2.60

注: 年間成長率は上段が年間対比、下段が第4四半期対比。実質GDPの需要項目は前期比年率、年間対比、*は成長率寄与度。金利は期末値

出所:米商務省統計等より三菱UFJモルガン・スタンレー証券作成 (予想は弊社: 終変更日は3月1日)

2019年 2020年2018年

19年~21年にかけて経済成長率が低迷する状況を鑑み、FRBは政策金利の据え置きを21

年まで継続しよう。しかし、従前、当方が考えていたよりも20年の景気の落ち込みが(19年初、

強すぎた分、余計に)目立つ。足元の景況感の鈍化が時間差を伴い景気・雇用へ波及するに

つれ、インフレ率も現状の+2%近傍から下振れが見込まれる。FRBの行動原理は①インフレ

対応(=利上げ)は慎重に、②ディスインフレのリスクを警戒したら思い切った金融緩和(=利

下げ)、というものだ。当方のFRB金融政策見通し(メインシナリオ)は政策金利据え置き(少な

くとも21年まで)。21年に景気が自律反転する見通しゆえ、利下げは不要、が基本シナリオ。し

かし、今回のGDP統計・速報値を受けた経済見通しの改定を受け、サブシナリオとして20年、

「ディスインフレ・リスク」に対して予防的な意味合いで「利下げ」を実施する可能性は否定でき

足元の米国景気は堅調持

続 。 19 年 1-3 月 期 は

+3.0%成長達成も、年後

半に失速。20 年は+0.1%

成長へ

FRB は無理な利上げ回

避:メインシナリオは政策

金利据え置き継続を予想

vs サブシナリオとして 20

年低成長・ディスインフレ

対応で「予防的利下げ」を

20 年 6 月+12 月に想定

- 52 -債券投資クォータリー 2019 年 3 月 1 日

ない、と考え方を改めた。具体的な利下げのタイミングとしては、20年中にマイナス成長を確

認した後、まずは20年6月会合、その後、状況に応じて12月会合を想定しておきたい。21年は

景気自律反転を受けて利下げ休止を考えたい。

米国景気がピークアウト。FRBは利上げ休止のみならず、利下げに転じる事態も否定でき

なくなってきた。本稿・後半のテーマは低金利継続に備えた「19年度・債券ポートフォリオ戦略

の再検討」。年末年始の株価急落、円高進行の傷は徐々に癒えつつある。日本銀行による更

なるイールドカーフ゛コントロールの柔軟運用実現に伴う円金利の上昇期待が消え、「円債回

帰」を積極化できそうにない19年度、(消去法的であれ)「外債」は引き続き避けて通れない投

資先であり続けよう。

図1:20年末までの各国金利・為替予想を前提とした「 適アセットアロケーション」

-1.5

-1.0

-0.5

0.0

0.5

1.0

1.5

2.0

2.5

0.5 1.0 1.5 2.0 2.5 3.0 3.5 4.0 4.5 5.0

Trade off

リスク分散ポート(JGB:UST:欧州=57:33:10)

標準偏差=1.245(リスク分散ポート・実績)

標準偏差=1.62(リバランス前・実績)

リターン(%)

(標準偏差)

リバランス前・18年9月基本

ポートフォリオの収益・実績値

@19年1月時点で評価(リターンは前年比、SDは過去5年)

リスク分散

重視

リターン

大化重視

注:1.リターン(前年同月比)はBloomberg作成指数から過去5年間(~20年12月)の平均値で計算

2.19年2月~20年12月まではインベストメントリサ チー部の日米欧金利・為替見通しを用いて延長

3.ポートフォリオはJGB(1-5、5-10、10-)、米・独・仏・伊(1-5、5-10;ヘッジコストはLibor3M)、為替ヘッジなし米・独(1-5)を対象に 適化。ただし、円の調達コストは勘案していない

4. 適ポートフォリオは①リスクファクターを 大限に分散(左端)から②リターン 大化(右端)

まで、両者のウェイトを(足して1になるように)少しずつ変えながら逐次シミュレーション

5.JGBはポートフォリオの50%(1-5:25%、5-10:15%、10-:10%)と制約条件を課した

6.許容可能なボラティリティ水準で達成できるリターン上のポートフォリオを 適値として選択出所:Bloomberg等から三菱UFJモルガン・スタンレー証券推計

結論は、できることなら①円債で金利リスクはカバーする方針を維持。②足りないキャリーは

欧州で補完。投資先は政治リスクの許容度に応じて「フランス→イタリア等の周辺国」へと展開

したい。それでも期待収益が足りない投資家は多いように思う。日本銀行の金融政策正常化

が進まなければ、円高に苦しむリスクは限定的。③日米ともに金融政策の方向感が出にくい

環境を利用して「ドル円」の為替リスクをとって、19年度はドル債でキャリー獲得を検討したい。

もし、更なる為替リスクを許容できるなら、③の発展形として、マイナス金利解除へ向けた利上

「円債回帰」 が無理なら

「外債」は19 年度も避けて

通れぬ選択肢

①出来れば金利リスクは

円債で、②足りないキャリ

ーは欧州の投資先多様化

で対応、③為替リスクの収

益化が課題

- 53 - 債券投資クォータリー 2019 年 3 月 1 日

げの願望を捨てていないECBの金融政策がユーロ高を招く期待からユーロ円相場でリスクを

とって「評価益」を狙いたい。

今回、 新データを用い、当方のアセットアロケーション・モデル(詳細は後掲・補論)の定

期リバランスを実施した(図2)。その結果、(従前より)定点観測してきた「基本ポートフォリオ

(標準偏差=1.6近辺)」のポイントは以下の3点:

① 出来れば「金利リスク」はJGBで充当(方針は不変)

② 為替リスクを収益化:金利のある米国でキャリー構築 vs 評価益ならユーロに妙味

③ 政治リスクを避けるなら無難にフランス → 投資対象拡大で政治リスクを収益化

図2:リスク分散アロケーションにおける各投資対象資産のシェア

0.0

0.1

0.2

0.3

0.4

0.5

0.6

0.7

0.8

0.9

1.0

0.80 1.24 1.36 1.49 1.63 1.77 1.93 2.10 2.91 3.29

JGB 25%制約 1-5年 JGB 15%制約 5-10年 JGB 10%制約 10年以上

米国債 1-5年 米国債 5-10年 独国債 1-5年

独国債 5-10年 仏国債 1-5年 仏国債 5-10年

米国債ヘッジなし 1-5年 独国債ヘッジなし 1-5年 伊国債 1-5年

伊国債 5-10年

ポートフォリオシェア

(標準偏差)

② 金利のある米国で為替オープン米国債

投資を拡大+政治リスクを収益化

③ 収益源を為替リスクに:利上げへと向かうユーロ圏:

為替オープン欧州債へ「通貨」でも分散投資

JGB

短期

米国債 (1-5)+FX

JGB

(超長期 10+)

独国債(1-5)

+FX

JGB

中長期① 金利(デュレーション)

リスクはヘッジコストが

かさむ外債よりも

「JGB」で

伊国債(5-10)

注:1.リターン(前年同月比)はBloomberg作成指数から過去5年間(~20年12月)の平均値で計算

2.19年2月~20年12月まではインベストメントリサ チー部の日米欧金利・為替見通しを用いて延長

3.ポートフォリオはJGB(1-5、5-10、10-)、米・独・仏・伊(1-5、5-10;ヘッジコストはLibor3M)、為替ヘッジなし米・独(1-5)を対象に 適化。ただし、円の調達コストは勘案していない

4. 適ポートフォリオは①リスクファクターを 大限に分散(左端)から②リターン 大化(右端)

まで、両者のウェイトを(足して1になるように)少しずつ変えながら逐次シミュレーション

5.JGBはポートフォリオの50%(1-5:25%、5-10:15%、10-:10%)と制約条件を課した

6.許容可能なボラティリティ水準で達成できるリターン上のポートフォリオを 適値として選択出所:Bloomberg等から三菱UFJモルガン・スタンレー証券推計

(5-10)

債券ポートフォリオ・定期

リバランスによるアロケー

ション戦略・再検討

- 54 -債券投資クォータリー 2019 年 3 月 1 日

①可能ならJGBで金利リスクをとる方針は従前どおり。米国が利上げ休止・据え置き局面に

入っても、高止まりするドル調達コストが相変わらずの懸念材料。FRBが再投資復活(@19年

後半)に伴い短期国債の集中購入に踏み切れば、LIBOR(たとえば3か月もの)に▲10bp~

▲20bp程度の低下余地がある1。調達コストの上振れリスクからは解放されるので歓迎すべき

政策転換ではあるが、LIBORの下限は政策金利(2.25%~2.50%)だろうから、調達コストが

高いことに変わりはない。

ただし、②金利リスクだけに依存したキャリー狙いの運用は19年度、一段と困難を極めよう。

活路は「為替リスク」の活用だ。年末年始、米国で利上げ期待が消滅し、利下げを織り込む事

態に至っても、ドル円相場は円高が進んでいない。為替は日米の相対的な力関係で決まり、

且つ、双方の影響度合いを表すパラメターは時々で大小関係が変化する。直近、年始のドル

円相場から窺い知れる現状は、米ドル金利より「円金利」がもたらす影響力の増大だ。日本銀

行によるイールドカーフ゛コントロールの柔軟運用で超長期ゾーンの金利上昇が実現してくれ

るなら、わざわざ外債へ行かずとも「円債回帰」が19年度の投資方針だったはず。しかし、年

末年始の海外情勢の変化によって、日本銀行の金融政策正常化シナリオは頓挫しそうな雰

囲気だ。「円債回帰」が実現できぬなら、消去法的だろうが、外債へ資金を配分せざるを得な

い。19年初、ドル円相場が1ドル110円を割り込む円高が実現した。金利のある米ドルへ本邦

投資資金が流出、ドル買い円売りフローが生じ円高進行を阻んだのではないか。さもなけれ

ば、もっと円高が進んでいたはずだ。日本銀行が金融政策柔軟化へ踏み切れぬなら、つまり、

円金利の上昇が実現しないなら、極端な円高進行は回避できそうだ。19年度は為替リスクを

収益化することで低金利環境の長期化に備えたい。日米ともに金融政策スタンスは据え置き、

金融政策ネタでドル円相場のトレンド形成は困難だろうから、米ドルならば動かぬ為替リスクを

とってキャリー構築を目指したい。もし、更なる為替リスクを許容できるなら、発展形として、マイ

ナス金利解除願望を捨てていないECBが利上げ実施へと舵を切ることに期待して、ユーロ円

相場でリスクをとって「評価益」を狙いたい。

3つ目の柱は③欧州で政治リスクの収益化。ECBの初回利上げは実行出来ても 短で19

年末。20年央にマイナス金利を解除できたとしても、調達コストはゼロ止まり。(米ドルとは違

い)ユーロ調達に際して高コストで苦しむことはなさそうだ。欧州債のローリング効果は健在。

押し目狙いで無難にフランス、欧州域内で投資対象国を周辺国(イタリア、本稿では組み入れ

対象資産として考慮していないもののスペイン、北欧、東欧)へと拡大することで、19年度のキ

ャリーを確保したい2。

<補論:当方アロケーション・モデルの考え方>

当方のアロケーション・モデルでは、投資対象として日本国債に加えて為替ヘッジ付き米国

債・欧州国債(ドイツ、フランス、イタリア)、さらには為替リスクをとった米・独の短期国債(1~5

年・為替オープン)の適切なアロケーションを追求している3。図1に当方が試算したアセットア

1 詳細は 2 月 21 日発行・米国債投資の視点(No.392)「1 月 FOMC 議事録:歓迎すべき FRB『UST 市場復帰』は 19 年後半」をご参照下さい。 2 前回のリバランス(18 年 9 月時点)では、予算案をめぐる EU との対立を鑑み、イタリア政治リスクは敢えて取る価値のあるリスクに非ず、と判断したが、

今回、再びイタリアが基本債券ポートフォリオに復活した。 3 本稿では国債に限定して議論を進めるが、JGB 保有制約を課さないケース、日米株式や新興国までも対象にしたポートフォリオ構築、外国債のみ

に焦点を当てたアロケーション・モデル等、多様なバリエーションをご用意している。

円高進行を阻止している

のはドル金利ではなく「本

邦の低金利」:動かぬドル

円リスクを高キャリーの源

泉に

基本ポートフォリオの対象

は先進 5 カ国、13 資産

- 55 - 債券投資クォータリー 2019 年 3 月 1 日

ロケーションについて「期待リターンとリスクのトレードオフ」を示した4。ここでの基本シナリオで

は、日本国債については投資資金の 低50%(1-5年:25%、5-10年:15%、10年超:10%)を

配分するよう、制約をかけた場合について考えている5。

ポートフォリオ(リバランス後)のリターンの標準偏差、いわばリスクの程度に応じた13資産の

シェアは図2のとおり。日本国債の保有制約の強さ(= 低何%日本国債を保有するか?とい

う各投資家の制約の程度)に応じてシェアは大きくも小さくもなるが、リバランスに伴う基本アロ

ケーションの「変化」にご注目いただければ、ポートフォリオ戦略改善のヒントが見えて来よう。

(3月1日 12:30)

4 図 1 には「有効フロンティア」と似たグラフが描かれている。グラフの読み方は同様だが、背後にある導出のアイディアは全く別もの。本稿では伝統

的な CAPM 等によるアロケーション策定手法ではなく、「各資産クラスに共通したマクロ経済ファクターに応じて変動するリスク要因」を識別・抽出し、

それらを可能な限り分散しつつもリターンを確保するポートフォリオ決定手法を採用している。 5 低 JGB50%保有という仮定は便宜的であり、各投資家の制約条件に合わせて変更可能である。

「どのリスクなら許容でき

るか?」 との観点からア

ロケーション選択を

- 56 -債券投資クォータリー 2019 年 3 月 1 日

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- 57 - 債券投資クォータリー 2019 年 3 月 1 日

欧州債アウトルック

ユーロ圏経済物価・金利見通し:利上げの有無を占う 4 つの指標

マーケットエコノミスト 大塚 崇広

ポイント

当方見通しは不変。一時的要因の剥落等で成長は一旦反発、ECBは19年12月(or20年1Q)に初回利上げへ 利上げの有無を占う4つの指標:(1)ユーロ圏PMI、(2)EuroCOIN、(3)独製造業受注、(4)中国製造業PMI ユーロ圏国債投資戦略:高キャリーを享受しつつも、金利リスク抑制へ。フラットナーやASWが候補に

ユーロ圏経済物価・金利見通しをアップデートした(表1~3)。見通しは不変。ユーロ圏経

済は、一時的な下押し要因(自動車産業における新規制やフランスにおける大規模なデモ

等)の剥落や中国経済の減速一服に伴い、潜在成長率を上回る成長軌道にひとまず復帰。

ECBは2019年12月(or 20年1-3月期)に利上げを開始する、と引き続き見込んでいる。もっとも、

インフレが加速し難い状況は変わらず。マイナス金利を脱したところで利上げは打ち止めにな

ろう。

利上げがあっても程度が限定的であるならば、高キャリーといったユーロ圏国債投資のメリ

ットは変わらず。ただし、マーケットで利上げがほとんど織り込まれていない状況の中では、金

利リスクを抑制した方がベターであろう。具体的には、フラットナー(独2y10y or 独2y仏10y)

やアセット・スワップのポジション構築を検討していきたい。特にフラットナーの場合は、足元の

ドイツ2年国債利回りが調達コスト込みでもマイナスかほぼゼロであるため、キャリーをほとんど

食うことなく、利上げリスクをヘッジすることが可能だ。

表1:ユーロ圏経済物価・金利見通し

[単位:%]

2017年 2018年 2019年 2020年 2021年

7-9 10-12 1-3 4-6 7-9 10-12 1-3 4-6 7-9 10-12 (予想) (予想) (予想) (予想)

実質GDP(前期比年率) +0.6 +0.8 +1.0 +1.7 +1.9 +1.9 +1.7 +1.7 +1.6 +1.5 +2.5 +1.8 +1.3 +1.7 +1.3

  (前期比) +0.2 +0.2 +0.2 +0.4 +0.5 +0.5 +0.4 +0.4 +0.4 +0.4 +2.7 +1.2 +1.6 +1.6 +1.2

個人消費 +0.5 +0.3 +0.7 +1.6 +1.9 +2.0 +1.9 +1.9 +1.9 +1.7 +1.7 +1.3 +1.0 +1.9 +1.6

総固定資本形成 +2.9 +1.9 +1.4 +3.1 +3.6 +3.6 +3.5 +3.2 +3.0 +2.5 +2.9 +3.2 +2.7 +3.3 +2.4

政府消費 +1.0 +1.5 +1.6 +1.6 +1.6 +1.6 +1.7 +1.7 +1.7 +1.7 +1.2 +1.0 +1.5 +1.7 +1.8

純輸出* ▲1.5 +0.6 ▲0.3 ▲0.2 ▲0.2 ▲0.3 ▲0.5 ▲0.4 ▲0.5 ▲0.4 +0.8 +0.2 ▲0.2 ▲0.4 ▲0.4

消費者物価(前年比) +2.1 +1.9 +1.7 +1.5 +1.3 +1.3 +1.4 +1.5 +1.6 +1.6 +1.5 +1.7 +1.4 +1.5 +1.6

同、コア +1.0 +1.0 +1.1 +1.2 +1.3 +1.4 +1.5 +1.5 +1.5 +1.5 +1.0 +1.0 +1.2 +1.5 +1.4

失業率 8.0 7.9 7.9 7.9 7.8 7.7 7.6 7.5 7.5 7.4 9.1 8.2 7.8 7.5 7.3

リファイナンス金利 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 0.25 0.25 0.50 0.00 0.00 0.00 0.50 0.50

預金ファシリティ金利 -0.40 -0.40 -0.40 -0.40 -0.40 -0.25 -0.25 0.00 0.00 0.00 -0.40 -0.40 -0.25 0.00 0.00

2年ドイツ国債利回り -0.52 -0.61 -0.55 -0.50 -0.40 -0.40 -0.30 -0.20 -0.20 -0.15 -0.63 -0.61 -0.40 -0.15 -0.20

5年ドイツ国債利回り -0.09 -0.31 -0.30 -0.20 -0.10 -0.05 0.05 0.15 0.15 0.15 -0.20 -0.31 -0.05 0.15 0.10

10年ドイツ国債利回り 0.47 0.24 0.25 0.50 0.60 0.60 0.65 0.70 0.75 0.75 0.43 0.24 0.60 0.75 0.65

2019年 20202018年

予想 予想

注 :実質GDPの需要項目は前期比年率、*は成長率寄与度、年間成長率は上段が年間対比、下段が第4四半期対比。金利・国債利回りは期末値

出所:Haver、Bloombergより三菱UFJモルガン・スタンレー証券( 終変更日:3月1日:予想は弊社)

表2:ユーロ圏主要国の成長率見通し

[単位:%]

主要機関見通し

ウェイト ECB 欧州委員会 IMF

(2015年) 2017年 2018年 2019年 2020年 2021年 2018年 2019年 2020年 2017年 2018年 2019年 2020年 2017年 2018年 2019年 2020年

 ユーロ圏 100% +2.5 +1.8 +1.3 +1.7 +1.3 +1.9 +1.7 +1.7 +2.4 +1.9 +1.3 +1.6 +2.4 +1.8 +1.6 +1.7   ドイツ 28% +2.5 +1.5 +1.0 +1.7 +1.3 +1.5 +1.6 +1.6 +2.2 +1.5 +1.1 +1.7 +2.5 +1.5 +1.3 +1.6   フランス 21% +2.3 +1.5 +1.4 +1.7 +1.5 +1.5 +1.5 +1.6 +2.2 +1.5 +1.3 +1.5 +2.3 +1.5 +1.5 +1.6   イタリア 16% +1.6 +0.8 +0.2 +1.0 +0.6 +1.0 +1.0 +1.1 +1.6 +1.0 +0.2 +0.8 +1.5 +1.0 +0.6 +0.9   スペイン 11% +3.0 +2.5 +2.0 +2.0 +1.6 +2.5 +2.2 +1.9 +3.0 +2.5 +2.1 +1.9 +3.0 +2.5 +2.2 +1.9

実績 当方予想

出所:Haver、Bloombergより三菱UFJモルガン・スタンレー証券( 終変更日:3月1日)

2021 年までのユーロ圏経

済物価・金利見通し

- 58 -債券投資クォータリー 2019 年 3 月 1 日

【経済】

ユーロ圏経済は、当面の間は弱さを引き摺りつつも、一時的な成長下押し要因(自動車産業

における新規制やフランスにおける大規模なデモ等)が剥落していくことで、潜在成長率(1%

強~半ば程度)を上回る成長軌道に復帰していく。設備投資の循環的な拡大や堅調な所得環

境、ECB による緩和的な金融政策も支えに。ただし、域外経済の減速や在庫拡大の一巡が

重しとなることで、2017 年のような加速感は生じない。こうした中、予測期間の終盤(2021 年

~)に入ると、設備投資の循環的な加速局面が終了に向かい、雇用の伸び代も次第に消失。

潜在成長率と同程度かそれをやや下回る成長に向かっていくことに。

【物価】

物価は、緩やかな上昇にとどまる。需給ギャップの改善による需給逼迫を背景に、コア物価

は徐々に加速。しかし、労働生産性の低迷等が賃金の加速を抑制する構図は変わらず。コア

物価の加速は、緩やかなものにとどまる。見通し期間の終盤(2021 年)に入ると、成長減速に

伴い、需給ギャップの改善が一服。内生的なインフレ圧力は弱まり、コア物価の加速も一服す

ることに。

【金融政策】

ECB は、引き続き慎重な姿勢で金融政策の正常化に向かう。2019 年の 12 月(or 20

年1Q)には預金ファシリティー金利(現在:▲0.40%)を+0.15%pt引き上げ。その後は、半年に

1 回のペースで利上げ(20 年に2 回)。預金ファシリティー金利:主要リファイナンス・オペ金利:

限界貸出金利を、▲0.25%:0.00%:+0.25%→0.00%:+0.25%:+0.50%→0.00%:+0.50%:

1.00%、とコリドーを広げながらと引き上げていくことに。もっとも、2021 年に入ると、成長減速

とコア物価の加速一服に伴い、利上げは打ち止めに。再投資停止(削減)も実施できず。

【政治】

フランスは、目先は大規模なデモへの対応に苦慮も、下院議会に多数派を形成しているマ

クロン大統領による各種経済改革はある程度前進し、EU の財政規律も遵守。ドイツは、メル

ケル首相の求心力が低下も、CDU(キリスト教民主同盟)中心の政権が継続。スペインは、カ

タルーニャ自治州の独立問題が燻りつつも、実際に独立には至らず。国政においては、総選

挙実施後も極右 or 極左主導の政権は誕生せず。EU の財政規律も遵守。他方、イタリアは不

安定な政治情勢が継続。ユーロ離脱や財政の大幅拡大は 終的には回避も、経済改革は進

まず。

【金利】

ドイツ金利は、ECB の慎重な正常化政策を反映して緩やかに上昇。目先は英 EU 離脱交渉

や一段の成長減速に対する懸念等を背景としたリスクオフ・ムードが金利上昇を抑制。もっと

も、“合意なき”英EU離脱が回避され、潜在成長率を上回る成長に回帰してくると、ドイツ金利

は再び上昇(イールドカーブはベア・スティープ化)。その後も、ECB の利上げ(観測)を背景に

金利の上昇傾向が継続(イールドカーブはベア・フラット化)。もっとも、見通し期間の終盤

(2021 年)に入ると、成長減速やコア物価の加速一服、ECB の利上げ打ち止めを背景に金利

上昇は一服(イールドカーブはブル・フラット化)。各国の対独スプレッドは、イタリアの財政拡

大問題や見通し期間の終盤における成長減速が拡大圧力となるものの、準コア国であれば

大幅に拡大するリスクは限定的。

- 59 - 債券投資クォータリー 2019 年 3 月 1 日

表3:ユーロ圏国債利回り見通し(詳細)

[単位:%]

2019年 2020年 2017年 2018年 2019年 2020年 2021年

7-9 10-12 1-3 4-6 7-9 10-12 1-3 4-6

ドイツ 2年 -0.52 -0.61 -0.55 -0.50 -0.40 -0.40 -0.30 -0.20 -0.63 -0.61 -0.40 -0.15 -0.20

5年 -0.09 -0.31 -0.30 -0.20 -0.10 -0.05 0.05 0.15 -0.20 -0.31 -0.05 0.15 0.10

10年 0.47 0.24 0.25 0.50 0.60 0.60 0.65 0.70 0.43 0.24 0.60 0.75 0.65

30年 1.08 0.88 0.85 1.05 1.15 1.15 1.15 1.20 1.26 0.88 1.15 1.20 1.15

フランス 2年 -0.36 -0.46 -0.40 -0.40 -0.30 -0.30 -0.25 -0.15 -0.47 -0.46 -0.30 -0.10 -0.10

5年 0.17 0.04 -0.05 0.00 0.10 0.10 0.20 0.25 0.00 0.04 0.10 0.30 0.30

10年 0.80 0.71 0.65 0.85 0.90 0.90 0.95 0.95 0.79 0.71 0.90 1.00 1.00

30年 1.66 1.63 1.55 1.65 1.70 1.65 1.65 1.65 1.77 1.63 1.65 1.65 1.70

イタリア 2年 1.03 0.47 0.30 0.30 0.85 0.70 0.55 0.70 -0.25 0.47 0.70 0.75 0.75

5年 2.24 1.80 1.60 1.35 1.65 1.60 1.45 1.55 0.75 1.80 1.60 1.65 1.70

10年 3.15 2.74 2.65 2.30 2.55 2.45 2.35 2.45 2.02 2.74 2.45 2.50 2.55

30年 3.72 3.53 3.45 3.05 3.25 3.20 3.15 3.25 3.21 3.53 3.20 3.35 3.55

スペイン 2年 -0.19 -0.24 -0.15 -0.15 -0.05 -0.10 0.00 0.05 -0.35 -0.24 -0.10 0.15 0.15

5年 0.52 0.34 0.30 0.35 0.40 0.45 0.50 0.60 0.40 0.34 0.45 0.65 0.70

10年 1.50 1.42 1.30 1.50 1.60 1.60 1.60 1.70 1.57 1.42 1.60 1.70 1.75

30年 2.58 2.61 2.45 2.55 2.60 2.60 2.60 2.65 2.85 2.61 2.60 2.65 2.75

(対独スプレッド)

フランス 2年 0.17 0.15 0.15 0.15 0.10 0.10 0.05 0.05 0.16 0.15 0.10 0.05 0.10

5年 0.26 0.35 0.25 0.20 0.20 0.15 0.15 0.15 0.20 0.35 0.15 0.15 0.20

10年 0.33 0.47 0.40 0.35 0.30 0.30 0.25 0.25 0.36 0.47 0.30 0.25 0.35

30年 0.58 0.76 0.70 0.60 0.55 0.50 0.45 0.45 0.51 0.76 0.50 0.45 0.55

イタリア 2年 1.56 1.08 0.85 0.85 1.25 1.10 0.85 0.90 0.37 1.08 1.10 0.90 0.95

5年 2.33 2.11 1.90 1.55 1.75 1.60 1.40 1.40 0.95 2.11 1.60 1.45 1.60

10年 2.68 2.50 2.40 1.80 1.95 1.85 1.70 1.70 1.59 2.50 1.85 1.75 1.90

30年 2.65 2.66 2.60 2.00 2.10 2.05 2.00 2.05 1.95 2.66 2.05 2.15 2.35

スペイン 2年 0.34 0.37 0.40 0.40 0.35 0.30 0.30 0.25 0.28 0.37 0.30 0.30 0.35

5年 0.61 0.65 0.60 0.55 0.50 0.50 0.45 0.45 0.60 0.65 0.50 0.50 0.60

10年 1.03 1.17 1.05 1.00 1.00 1.00 0.95 0.95 1.14 1.17 1.00 1.00 1.10

30年 1.50 1.74 1.60 1.50 1.50 1.45 1.45 1.45 1.59 1.74 1.45 1.45 1.60

2018年

予想 予想

出所:Bloombergより三菱UFJモルガン・スタンレー証券( 終変更日:3月1日:予想は弊社)

冒頭で指摘したように、ユーロ圏の成長は一旦反発すると当方は見込んでいる。もっとも、

反発のタイミングと程度については、一定の不確実性があることは認めなければならないであ

ろう。したがって、足元の経済指標の丹念なチェックを怠らないようにしたい。特に利上げの有

無を占う上では、(1)ユーロ圏PMI、(2)EuroCoin、(3)ドイツ製造業受注、(4)中国製造業

PMI、に注目すべき、と当方は考えている。

まずは、(1)ユーロ圏PMI。サーベイ・データの中でもPMIはGDPとの連動性が比較的高く、

公表時期も早い(当月下旬に速報が公表)ため、景気動向を逸早く把握する上では有用な指

標だ。Ifo景況感指数や欧州委員会サーベイは各項目の「良い」「悪い」を問うものである一方、

PMIは前月からの「拡大」「縮小」を問うもので、その意味で純粋なマインド調査とは異なる。そ

のため、PMIの方が実体経済、すなわちGDPとの連動性は高くなる。PMIのコンポジット(総合

指数)が、潜在成長率と同程度の成長を示唆する53~54を上回る、ないし上回りそうなトレンド

になれば、ECBは再び正常化含みの政策に傾斜していくことになろう。

(2)EuroCOINは、複数のハード&サーベイ・データ、金融市場のデータから、GDP(前期

比)の基調を推定したもの。こちらもGDPとの連動性が比較的高い。PMIに比べて公表がやや

遅い(当月末に公表)といったデメリットはあるものの、スムージング化されているため、月々の

振れが少なく、トレンドを見極めるには有用な指標だ。こちらも、潜在成長率と同程度かそれ

以上の成長を示す0.3%強~0.4%を上回る、ないし上回りそうなトレンドになるか否かに注目

していきたい。

利上げの有無を占う 4 つ

の指標:成長反発の時期

と程度を精査へ

- 60 -債券投資クォータリー 2019 年 3 月 1 日

図1:ユーロ圏のPMIとGDP

-2.5%

-2.0%

-1.5%

-1.0%

-0.5%

0.0%

0.5%

1.0%

1.5%

25

30

35

40

45

50

55

60

65

Jan-06 Jan-08 Jan-10 Jan-12 Jan-14 Jan-16 Jan-18

GDP(前期比、右軸)

PMIコンポジット(左軸)

PMI製造業(左軸)

PMIサービス業(左軸)

出所:Eurostat、MarkItより三菱UFJモルガン・スタンレー証券

図2:EuroCOINとユーロ圏GDP

-2.5%

-2.0%

-1.5%

-1.0%

-0.5%

0.0%

0.5%

1.0%

1.5%

Jan-06 Jan-08 Jan-10 Jan-12 Jan-14 Jan-16 Jan-18

GDP(前期比、右軸)

EuroCOIN

※EuroCOINの直近19年2月の値は、+0.24%

出所:Eurostat、イタリア中銀、Center For Economic Policy Researchより三菱UFJモルガン・スタンレー証券

(3)ドイツ製造業受注は、足元でドイツ製造業部門の不振が目立っているだけに、注目す

べき指標だ。公表が遅く(翌々月上旬)、月々の振れも激しいことが難点だが、鉱工業生産に

先行するため、目先の生産動向を占う上では有用だ。また、細かい業種別の動向も把握する

ことも可能。足元、製造業全体としては、下げ止まりつつも、持ち直しの動きは見受けられない。

他方、特に弱さが目立っていた自動車に関しては、すでに受注増に転じており、先行きの生

産回復を示唆している。

後は、(4)中国製造業PMI。中国はドイツにとって 大の貿易相手国であるため、中国経

済(特に製造業部門)の動向は、ユーロ圏全体にとっても重要である。中国経済の減速による

輸出の不振が、足元の景気減速の一因とみられるだけに、その動向には注目しておきたい。

中国当局はすでに金融・財政の両面で景気下支えに動いているため、PMIも底打ちに向かう

と当方はみているが、反発のタイミングと程度をPMIの動向から推し量っていきたい。

- 61 - 債券投資クォータリー 2019 年 3 月 1 日

図3:ドイツ製造業新規受注(実質、2015年=100)

55

65

75

85

95

105

115

125

Jan-06 Jan-08 Jan-10 Jan-12 Jan-14 Jan-16 Jan-18

自動車等 製造業全体

出所:ドイツ連邦統計局より三菱UFJモルガン・スタンレー証券

図4:中国製造業PMI(国家統計局、財新)とドイツ輸出

-80%

-60%

-40%

-20%

0%

20%

40%

60%

80%

42

44

46

48

50

52

54

56

58

Jan-06 Jan-08 Jan-10 Jan-12 Jan-14 Jan-16 Jan-18

中国製造業PMI(財新、左軸)中国製造業PMI(国家統計局、左軸)ドイツ対中国輸出(名目、右軸)ドイツ輸出(実質、右軸)

(前年比)

出所:ドイツ連邦統計局、中国国家統計局、財新より三菱UFJモルガン・スタンレー証券

当方推奨のユーロ圏国債投資戦略は不変(表4、5)。先述の通り、利上げはあっても、程度

は限定的となる可能性が高く、高キャリーといったユーロ圏国債のメリットは変わらず1。特にフ

ランス国債10年に関しては、アウトライトでの買い(通常の調達込みの買い)でも、妙味はある

と考えている(図5~8)。

もっとも、マーケットで利上げがほとんど織り込まれていない状況の中では、金利リスクを抑

制した方がベターであろう。具体的にはフラットナー(独2y10y or 独2y仏10y)やアセット・スワ

ップ2のポジション構築を検討していきたい。特にフラットナーの場合は、デュレーション・ニュ

1 利上げの影響については、欧州債投資の視点(No.345)『ユーロ圏経済物価・金利見通し:利上げの予行演習~ASW 等検討~』(2018 年 4 月 27

日)をご参照。当方推計によると、+0.10%pt の利上げでドイツ長期金利は約+0.04%pt 押し上げられることになる。当方は 2020 年末までに累計で

+0.40%pt の利上げを予想しているが、この場合、ドイツ長期金利は約+0.15%pt 押し上げられることになる。したがって、長短スプレッド(≒キャリー)

は累計で、約▲0.25%pt(=0.15%-0.40%)縮小することに。ただ、それでもフランス国債(10 年)であれば、他の主要国債対比高キャリーである可

能性が高い。 2 レポで調達すれば、フランス国債なら 10 年程度以上の年限でポジティブ・キャリーになる(図 10、12)。注意点は、ヘッジ会計の取り扱い。ユーロ圏

国債は年 1 回払いが主流であるため、ヘッジ会計の特例処理が適用できない。そのため、ヘッジ会計を適用するためには、有効性の判定が必要に

投資戦略:高キャリーを享

受しながら、金利リスク抑

制へ。フラットナーや ASW

が候補に

- 62 -債券投資クォータリー 2019 年 3 月 1 日

ートラルでも、ポジティブ・キャリー。足元のドイツ2年国債利回りが調達コスト込みでもマイナス

かほぼゼロであるため、キャリーをほとんど食うことなく(マイナスの場合はむしろキャリー上乗

せ)、利上げリスクをヘッジすることが可能だ(図9)3。

表4:今後のユーロ圏国債投資戦略(当方推奨)

(コア・準コア国国債)投資戦略 備考

フランス(ドイツ)10年

・主要他国債対比、高キャリー&高ロール効果・アウトライト(通常の調達込みの買い)なら、なるべく利上げの影響が小さい長い年限、かつクッションが厚い年限に・クッション効果でキャピタル・ロスを緩和しつつ、押し目買いでキャリーを確保・利上げでも高キャリーという優位性は変わらず・独仏の政治は安定(クレジット・リスクは限定的)

(周辺国国債)投資戦略 備考

スペイン10年弱

・フランス対比+αの期待リターン・ただし、格付け対比の割安感はない・フランス対比で+αのクレジット・リスクを負うことになるが、政治は比較的安定(反EU・ユーロの機運はほとんどない)

ポルトガル5年強

・スペインと同様に、反ユーロ・移民の機運はほとんどない。緊縮策や構造改革等で近年は高成長(イタリアとの違い)・ただし、(スペインと同様)割安感はない・銀行の不良債権比率が高いため、期間限定で(景気が底堅さを保っているうちに〔今後2年程度?〕)

イタリア2年

・デフォルトはないとの想定の下、満期保有目的で購入(時価評価を回避) … 伊ポピュリズム政権によるユーロ離脱の主張は後退・政治(財政拡大)リスクで金利が上昇したところで購入検討 … ただし、制裁手続き(EDP)回避で金利(対独スプレッド)の急上昇(拡大)リスクは低下

(アセット・スワップ)投資戦略 備考

フランス10~30年・金利(利上げ)リスクを抑制・ポジティブ・キャリーかつ相応のロール効果・レポ調達でキャリー向上を(10年程度以上の年限でポジティブ・キャリーに)

スペイン10年弱・フランス対比+αのキャリー・フランス対比で+αのクレジット・リスクを負うことになるが、政治は比較的安定(反EU・ユーロの機運はほとんどない)

(フラットナー)投資戦略 備考

ドイツ2年10年

・ドイツ10年国債ロング&同2年国債ショート、利上げ対策・足元のドイツ2年国債はレポ調達込みでもマイナスorほぼゼロ利回り(キャリーを食わず)・デュレーション・ニュートラルでもポジティブ・キャリー・フランス10年国債ロング&ドイツ2年国債ショートでも可(キャリー上乗せ)

出所:三菱UFJモルガン・スタンレー証券

なるが、有効性の判定は会計士によって判断が分かれるようであるため、確認が必要だ。詳細は、欧州債投資の視点(No.362)『ユーロ圏経済物

価・金利見通し:日銀“柔軟化”の影響は?』(2018 年 7 月 27 日)をご参照ください。 3 データの制約上、図 5~8 は為替ヘッジ(為替フォワード市場でのユーロ調達)を前提としているが、レポ調達の場合、見た目の印象はやや異なって

くる(周辺国国債のレポ・コストは中核国の国債よりもやや高い)。

- 63 - 債券投資クォータリー 2019 年 3 月 1 日

表5:今後のユーロ圏国債投資戦略(当方推奨、続き)

(一工夫)投資戦略 備考

ブンズをドル・オープンに

・スポットでドル買い円売り→ユーロ調達(ユーロ→ドル3M為替ヘッジ)→独10年国債買い・事実上のドル・オープン(変動受取)・キャリーは米債10年を上回る。ロール効果も高いため、米債10年対比で超過リターン・ただし、所謂“自然ヘッジ効果”は米債に劣る

ポーランド国債のユーロ疑似ヘッジ

・ユーロ調達(ユーロ→円3M為替ヘッジ)→スポットでユーロ売りポーランド・ズロチ(PLN)買い→ポーランド国債買い・PLN買い・EUR売りのポジション。同ポジションはヒストリカルに見て低ボラ・ユーロの低い調達コストを生かしつつ、ヘッジ効果も相応に享受・ポーランド国債の格付けはスペインよりも上・高キャリー。期待リターン(カーブ・為替不変下)はイタリアと同程度かそれ以上

出所:三菱UFJモルガン・スタンレー証券

図5:各国国債パー・カーブ(為替ヘッジ・コスト控除後) 図6:各国国債期待リターン(為替ヘッジ・コスト控除後)

-1.0%

-0.5%

0.0%

0.5%

1.0%

1.5%

2.0%

2.5%

3.0%

3.5%

4.0%

4.5%

0 5 10 15 20 25 30

アイルランド ポルトガル

(年)米国

フランスドイツ

日本

英国

スペイン

イタリア

-1.0%

-0.5%

0.0%

0.5%

1.0%

1.5%

2.0%

2.5%

3.0%

3.5%

4.0%

4.5%

0 5 10 15 20 25 30

アイルランド ポルトガル (年)

米国

フランス

ドイツ

日本英国

スペイン

イタリア

注 :Bloombergパー・イールド(2/28)。為替ヘッジ・コストは3ヵ月間年率

出所:Bloombergより三菱UFJモルガン・スタンレー証券作成

注 :Bloombergパー・イールド(2/28)より筆者概算(カーブ不変下、6ヵ月間年

率)。為替ヘッジ・コストは3ヵ月間年率

出所:Bloombergより三菱UFJモルガン・スタンレー証券作成

図7:各国国債期待リターン(為替ヘッジ・コスト控除後)/修正Dur 図8:3M為替ヘッジ・コスト(年率)

-0.2%

-0.1%

0.0%

0.1%

0.2%

0.3%

0.4%

0.5%

0.6%

0 5 10 15 20 25 30

アイルランド ポルトガル

(年)

米国

フランス

ドイツ

日本英国

スペイン

イタリア

-0.8%

-0.4%

0.0%

0.4%

0.8%

1.2%

1.6%

2.0%

2.4%

2.8%

3.2%

3.6%

Jan-13 Jan-14 Jan-15 Jan-16 Jan-17 Jan-18 Jan-19

USD EUR

GBP

注 :Bloombergパー・イールド(2/28)より筆者概算(カーブ不変下、6ヵ月間年

率)。為替ヘッジ・コストは3ヵ月間年率

出所:Bloombergより三菱UFJモルガン・スタンレー証券作成

注 :週次データ

出所:Bloombergより三菱UFJモルガン・スタンレー証券作成

- 64 -債券投資クォータリー 2019 年 3 月 1 日

図9:ドイツ国債フラットナー(2y10y)のキャリー、期待リターン/Dur

■ ドイツ国債、アウトライトの期待リターン(レポ・コスト控除後)

■ ドイツ国債、フラットナーの期待リターン/Dur(デュレーション・ニュートラル)

買い年限 売り年限 インカム/Dur ロール/Dur 期待リターン/Dur10 2 0.07% 0.08% 0.15%

※カーブ不変下、6ヵ月間保有年率

-1.5%

-1.0%

-0.5%

0.0%

0.5%

1.0%

1.5%

2.0%

2.5%

3.0%

0 5 10 15 20 25 30

キャリー

ロール

(年)

レポ・コスト

10年ロング

2年ショート ※カーブ不変下、6ヵ月間保有年率

注 :Bloombergパー・イールド(2/28)より筆者概算。レポ・コストは、RepoFunds Rateより

出所:Bloombergより三菱UFJモルガン・スタンレー証券作成

図10:各国国債ASW(vs. Libor) 図11:各国国債ASW(vs. Libor)期待リターン

-1.0%-0.8%-0.6%-0.4%-0.2%0.0%0.2%0.4%0.6%0.8%1.0%1.2%1.4%1.6%1.8%2.0%

0 5 10 15 20 25 30(年)

米国

フランス

ドイツ

日本

英国

スペイン

-1.0%-0.8%-0.6%-0.4%-0.2%0.0%0.2%0.4%0.6%0.8%1.0%1.2%1.4%1.6%1.8%2.0%

0 5 10 15 20 25 30(年)

米国

フランス

ドイツ

日本

英国

スペイン

注: Bloombergパー・イールド(2/27)より筆者概算。米国はvs.3mLibor、日英独仏

伊西はvs.6mLibor(Euribor)

出所:Bloombergより三菱UFJモルガン・スタンレー証券作成

注: Bloombergパー・イールド(2/27)より筆者概算。米国はvs.3mLibor、日英独

仏伊日はvs.6mLibor(Euribor)。6ヵ月間年率

出所:Bloombergより三菱UFJモルガン・スタンレー証券作成

- 65 - 債券投資クォータリー 2019 年 3 月 1 日

図12:Libor-Repoの推移 図13:独仏30年・西10年ASW(vs. Libor)の推移

-0.2%

0.0%

0.2%

0.4%

0.6%

0.8%

1.0%

1.2%

1.4%

1.6%

1.8%

Jan-13 Jan-14 Jan-15 Jan-16 Jan-17 Jan-18 Jan-19

スペイン(6mEuribor-RepoFundsRate)

フランス(6mEuribor-RepoFundsRate)

米国(3mLibor-1wRepo)

英国(6mLibor-1wRepo)

※プラスの分だけ、

ASWのキャリー向上可能

-3.0%

-2.0%

-1.0%

0.0%

1.0%

2.0%

3.0%

4.0%

5.0%

6.0%

Jan-04 Jan-06 Jan-08 Jan-10 Jan-12 Jan-14 Jan-16 Jan-18

独30年ASW(vs. 6mEuribor) 仏30年ASW(vs. 6mEuribor)西10年ASW(vs. 6mEuribor) EONIAスワップ金利(2年)政策金利

利上げ局面①

利上げ局面②

出所:Bloombergより三菱UFJモルガン・スタンレー証券作成

注: 利上げ局面①では、独仏30年、西10年はいずれも小幅にアウトパフォーム

(ASWスプレッド縮小)。利上げ局面②では、欧州債務危機によるクレジット

悪化により西10年はアンダーパフォーム(ASWスプレッド拡大)。他方、仏30

年は横ばい、独30年はアウトパフォーム(ASWスプレッド縮小)

出所:Bloombergより三菱UFJモルガン・スタンレー証券作成

(3月1日 12:00)

- 66 -債券投資クォータリー 2019 年 3 月 1 日

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- 67 - 債券投資クォータリー 2019 年 3 月 1 日

外為ウォッチ

ドル円相場:動意欠乏症に罹患、極端な円高もドル高も進まぬ展開が続く

チーフ為替ストラテジスト 植野 大作

ポイント

年明けの瞬間暴落の後、ドル円相場は失地回復に転じたが、総じてみれば過去約2年間のレンジ取引を継続 米財政協議や米中通商交渉は過度の悲観も楽観も許さぬ中途半端な状況が続いてドル円はどちらにも動けず 当面のドル円は動意欠乏状態、米日政策金利差が動かぬ年内は極端な円高もドル高も進まぬレンジ取引継続 ドル円相場に本格動意復活の兆候が現れる時を判断する上で、地道な米国経済指標観察を続ける忍耐が必要

年明け後のドル円相場は瞬間暴落後に反発。下値をジワジワ切り上げる展開になっている。

日本が正月休み中の1月3日早朝、NY市場の終値確定後に持ち込まれた本邦外為証拠金

(FX)取引による強制ロスカットを起点にした損失限定の売り注文が連鎖的にヒットするとクロス

円も巻き込んだ下げが加速、一時104円87銭と昨年3月以来の安値圏まで急落したが、特殊

な需給消化が終わるとすぐに反発、本稿を執筆している3月1日の東京市場正午前には一時

111円77銭と昨年12月20日以来の水準を回復する場面も観測されている。1月下旬の与野党

合意で米政府機関の閉鎖回避に必要な予算が成立、2月1日に発表された米1月雇用統計や

28日に公表された米10-12月期国内総生産(GDP)が比較的シッカリした結果となって米国経

済に対する過度の悲観論が後退する中、米中通商協議の前進期待も追い風にドル円相場の

失地回復が進んでいる。ただ、もう少し長い目で見ると足下のドル円相場は米トランプ政権発

足後では も滞在時間の長い取引レンジのセンター付近に戻ったに過ぎない(図表1)。一昨

年の春以降、ドル円相場は延々2年近くも1ドル=110円±5円程度のレンジ取引を続けており、

極端なドル高も円高も進まない動意欠乏症に罹患している。

図表1:ドル円相場(週足)の推移

出所:ブルームバーグより三菱UFJモルガン・スタンレー証券作成

年明け後のドル円相場は

瞬間暴落後に反発して失

地回復を果たしたが、総じ

てみれば過去約2年間の

レンジ取引を逸脱せず

98円

100円

102円

104円

106円

108円

110円

112円

114円

116円

118円

120円

122円

98円

100円

102円

104円

106円

108円

110円

112円

114円

116円

118円

120円

122円

16年1月 16年7月 17年1月 17年7月 18年1月 18年7月 19年1月

52週移動平均線

99.02円(0.0%)

104.37円(23.6%)

107.68円(38.2%)

110.35円(50.0%)

113.03円(61.8%)

116.34円(76.4%)

121.69円(100.0%)

2016年1月高値

121円69銭

26週移動平均線

13週移動平均線

2016年6月安値

99円02銭

- 68 -債券投資クォータリー 2019 年 3 月 1 日

この先しばらくの間、ドル円相場は下値の堅さと上値の重さが共存する状況が続き、「骨太

の方向感」を見出しにくい展開が続きそうだ。昨年のドル円相場は年間の値幅が9円99銭と

1973年の変動相場制移行後では初めて10円00銭に満たない過去 小記録を樹立したが、

恐らく今年も大同小異のプライス・アクションが観測されるだろう。当面のドル円相場は、1ドル

=110円00銭を中心に上下数円程度の狭い値幅で推移、今年の年末頃まで予測の時間軸を

延ばしても、過去約2年間続けてきた1ドル=105円00銭前後~115円00銭前後をコア・レンジ

にして極端なドル高も円高も両方進まぬ展開が続くのではなかろうか(図表2)。為替相場の予

測は「上がる」、「下がる」、「横這う」という3つのパターンの中からどれか一つを選ぶしかない

が、恐らく今年も「ドル円=概ね横這い予想」の実現確率が も高いと思われる。以下、そのよ

うに考えている理由を列記しておきたい。

図表2:2019年-21年のドル円相場の見通し

出所:実績はブルームバーグ提供の週末値。予想は三菱UFJモルガン・スタンレー証券

まず政治面では、米国議会が提出した超党派の予算案にトランプ大統領が署名したことで、

政府機関の一部閉鎖が再発するリスクは後退した。ただ、本日まで効力停止となっている米

連邦政府の債務上限がこのまま引き上げられずに放置された場合、夏場以降に米国債のデ

フォルト懸念が明滅するリスクは残っている。現在進行中の米中通商協議についても、トラン

プ米大統領が習近平・中国国家主席との首脳会談を3月中にも開催するとの意向示している

ことから、3月2日に発動される予定だった対中関税25%への引き上げは延長されることになり、

米中貿易戦争の再発懸念も緩和している。ただ、現時点までに伝えられた報道によれば、中

国による米国製品の購入拡大による対米貿易黒字の削減計画や人民元相場の安定方針な

どでは合意が成立したようだが、米国が問題視する中国による知的財産権の侵害や技術移

転の強要、国有企業への補助金などを巡る両国の対立は長期化の様相を呈している(図表

3)。米国による対中制裁関税の引き上げは当面回避されそうだが、次世代技術の覇権を巡る

両国の争いは、完全決裂も完全決着も期待できない中途半端な状態が続きそうだ。

来年の今頃には米国の大統領選挙および上下両院選挙の予備選挙が始まっている。この

ため、トランプ米大統領や米議会の与野党首脳も「ワシントン発」の株安ショックは慎重に回避

するとみられる。「円高派」が期待、「円安派」が懸念している米国経済の「政策不況入り」は恐

らく起きないだろう。だが、先の米中間選挙で米議会上下両院の多数派がねじれて以来、米

米政府機関の閉鎖リスク

は後退したが、債務上限

問題が残存、米中通商協

議は完全な決裂も決着も

ない中途半端な状態に

2019年のドル円相場は、

極端な円高もドル高も進

まない概ね横ばいのレン

ジ取引を続けると予想

米国の財政政策や米中通

商協議については、過度

の悲観も楽観も許さぬ状

況がしばらく続く

75円

80円

85円

90円

95円

100円

105円

110円

115円

120円

125円

130円

12年 13年 14年 15年 16年 17年 18年 19年 20年 21年

ドル円相場実績値

想定レンジ

- 69 - 債券投資クォータリー 2019 年 3 月 1 日

国の財政政策を巡る与野党対立が起きやすくなっているのは確かだ。米中通商協議につい

ても、まもなく示されそうな部分合意で泥沼の貿易戦争は回避しても、先端技術の覇権争いは

長期化するとみられ、完全解決の円満決着は期待できない。この先も米国の財政政策や米中

協議に関して、市場心理を好転させたり悪化させたりする報道が錯綜するだろう。朗報に接し

た場合は「株高・円安」、悪報が伝えられた場合は「株安・円高」と、上下どちらにも相場を動か

す可能性を秘めた「両刃の剣」のような材料だ。過度の悲観も楽観も許さぬ状況が続く間、ど

ちらか一方だけに相場を動かし続けることはないと考えている。

図表3:米中貿易戦争の経緯と現在の争点

出所:各種報道より三菱UFJモルガン・スタンレー証券作成

「政治ネタ」をテーマにした方向感が掴みにくくなる中、当面のドル円相場はファンダメンタ

ルズ由来の方向感を模索するのも苦労しそうだ。2月に発表された米1月雇用統計や米10-12

月期GDP成長率は比較的良好な結果になって市場に安心感を与えたが、米12月小売売上

高の大幅な落ち込みが国内外の市場関係者にショックを与える場面もあったほか、住宅関連

の米経済指標も弱いものが目立っている。ドル高・円安推しの市場関係者は良好な米経済指

標を重視する一方、円高推しの関係者は弱いデータを強調する傾向があるが、虚心坦懐に

眺めれば、 近の米経済指標は玉石混交のまだら模様になっているのが実情だ。昨年秋か

ら年末にかけて米国の株価が大幅に値崩れしていた 中には逆資産効果による景気失速も

懸念されたが、年明けからは反発して概ね急落前の水準に復帰つつあり、株価由来の景気

後退懸念も後退している。今後発表される年末年始の米経済指標には12月22日から1月25日

まで35日間も続いた政府機関の一部閉鎖や、1月末に米国北東部から中西部を襲った歴史

的な寒波による一時的な悪影響とその反動による「ノイズ」が混入しそうなため、景気の基調判

断が難しくなる。今のところ、米国景気は減速すれども失速はせず、軟着陸の軌道から逸れて

いるように見えない。この先しばらくの間、米国経済については景気再加速の期待も失速の懸

念も両方盛り上がらない中途半端な綱引きが続くのではなかろうか。

当面の米経済指標にはノ

イズが混入して基調判断

が難しく、その後も景気再

加速の期待も失速の懸念

も両方盛り上がらない状

態が続きそう

米国 中国

2018年7月6日中国製の産業機械・電子部品など340億ドルに25%の制裁関税

米国の大豆や自動車など340億ドル分に25%の対抗関税

2018年8月23日中国製の半導体・化学品など160億ドルに25%の制裁関税

米国からの古紙・銅くずなど160億ドル分に25%の対抗関税

2018年9月24日中国製の食品・家電など2000億ドルに10%の制裁関税

米国産のLNG・木材など600億ドル分に5%~10%の対抗関税

2019年3月2日上記2000億ドル分の中国製品への関税を10%から25%に引上げ

上記対抗関税の上乗せや米国産品、対米団体旅行の不買運動で対抗?

論点

貿易不均衡

為替レート

知的財産権

技術移転問題

産業保護政策

履行と罰則

現状

米国は巨額の対中貿易赤字を問題視。中国はその解消策として6年で大豆やLNGなど1兆ドル規模の輸入拡大計画を提示

米国は中国の為替操作を非難。元安で制裁関税の効果を薄めないよう釘を刺し、中国も競争的通貨切り下げの制限には合意

米国は米国企業の特許などを侵害していると非難。中国もある程度認めて知的財産権の保護を強化する方策を提示

中国に進出する米国企業が技術移転を強要されているとして非難。中国は認めておらず、強要があれば取り締まると主張

米国は中国政府によるハイテク産業の補助金や国有企業優遇の撤廃を求めているが、中国は国家資本主義の根幹で譲歩せず

米国は中国が約束を破れば制裁関税等の罰則を課す権利があると主張。中国は国家の主権や尊厳を脅かす一方的措置には同意せず

- 70 -債券投資クォータリー 2019 年 3 月 1 日

そのような状況下、米国と日本の政策金利差は大きく開いた現状のまま、拡大期待も縮小

観測も盛り上がらない状況が続くだろう。まず米国サイドでは年明け以降のパウエル米連邦準

備制度理事会(FRB)議長の発言や連邦公開市場委員会(FOMC)の結果発表を受け、政策

金利の引き上げ停止による「忍耐強い様子見モード」への移行と「バランスシート縮小の年内

終了」が既に十分市場に織り込まれた感がある。当面、米国の政策金利は先進国 高の水

準で高止まるとみられる一方、今秋の消費増税後の不確実性が晴れるまで、日銀による超低

金利政策は出口の見えない日々が続くだろう。米国と日本の政策金利差は十分に開いた状

態をキープ、しばらく動かなくなりそうだ(図表4)。米国の金利先高観が後退する中、ドルの上

値が目立って軽くなるとは思えないが、世界一の安全資産である米短期国債の利回りが日本

の超長期20年国債の6倍近くのレベルで推移している間は、ドルの下値が極端に柔らかくなる

とも思えない。現在、日本では超低金利政策の長期化が金融機関の死活問題になりつつあり、

国内金利だけで十分な金利収入を得るのが難しくなる投資家の苦悩が一段と深まっている。

ドルの値段がある程度まで下がれば、押し目買い興味も湧出してくるだろう。為替を決める

も重要な要素である金利差への期待が動かなくなるなら、ドル円相場もあまり派手には動かな

くなると見るのが自然な考え方になる。

図表4:主要通貨圏の政策金利の推移

注:各国の政策金利: 日本:無担保コール翌日物、米国:FF金利翌日物目標レンジ上限、カナダ:翌日物レポ金利、

ユーロ圏:リファイナンス金利、英国:オフィシャルレポ金利、豪州、NZ:オフィシャルキャッシュレート

出所:ブルームバーグより三菱UFJモルガン・スタンレー証券作成

テクニカル的に見ても、今年1月の月足は3日に起きた瞬間暴落(フラッシュ・クラッシュ)の

影響でローソク足実体部に比べて異様に長い下ヒゲが伸びた「下影陰線」に近い形状になり、

2月の月足も「陽の丸坊主」とまでは言えないものの、ローソク足の実体部が視認可能で下ヒゲ、

上ヒゲともに短い陽線で引けた。強い上昇シグナルが点灯したようには見えないが、下値は固

めた印象がある。ただ、我々が長期トレンド判定の際に重視している52週移動平均線をみると、

昨年の夏頃から概ね横ばい基調で推移しており(前掲の図表1)、当面は上昇・下降の分水嶺

となる52週間前の終値が現値に絡みついてくるため、明確な方向感は出にくそうだ(図表5)。

このような状況下、為替相場に瞬発力や機動力を付与する短期筋の売買興味は「動かぬドル

米日政策金利差は大きく

開いた現状のまま、拡大

も縮小もしない状態がしば

らく続きそう

1月の月足は「下影陰線」

となって下値を固めた印

象はあるが、52週移動平

均線は概ね横ばい基調

-0.5

0.0

0.5

1.0

1.5

2.0

2.5

3.0

3.5

4.0

4.5

5.0

5.5

6.0

6.5

7.0

7.5

8.0

8.5

2000 2002 2004 2006 2008 2010 2012 2014 2016 2018

(%)

豪州

ニュージーランド(NZ)

ユーロ圏

英国

米国日本

カナダ

直近値:

米国:2.25-2.5%

NZ:1.75%

カナダ:1.75%

豪州:1.50%

英国:0.75%

ユーロ圏:0.0%日本:▲0.1%

- 71 - 債券投資クォータリー 2019 年 3 月 1 日

円」からしばらく離れ、今春以降に英国の欧州連合(EU)離脱問題や欧州中銀(ECB)総裁の

交代人事などをテーマに動きそうな欧州通貨や、国内外の株価睨みで派手に動きがちな新

興国通貨にシフトする可能性が高い。現在、ドル円の3ヶ月物インプライド・ボラティリティーは

6.00%台と4年半ぶりの低水準まで落ちており、実績変動率の低下が参加者の「やる気」を殺

いで予想変動率の低下をもたらし、更なる実績変動率の低迷を招く動意欠乏の悪循環に陥り

つつある(図表6)。1月3日の1ドル=104円87銭は、恐らく今年の安値になった可能性が高い

が、本稿で縷々述べた諸々の理由から上値が目立って軽くなるとも思いにくい。この先もしも

115円を超えたとしても、追加的な上値余地は狭く、滞空時間も短いのではなかろうか。

図表5:2012年来のドル円相場と「前年同期の雲」の水準

出所:ブルームバーグより三菱UFJモルガン・スタンレー証券作成

図表6:ドル円相場の実績変動率と予想変動率(週平均値)

出所:ブルームバーグより三菱UFJモルガン・スタンレー証券作成

70円

75円

80円

85円

90円

95円

100円

105円

110円

115円

120円

125円

130円

70円

75円

80円

85円

90円

95円

100円

105円

110円

115円

120円

125円

130円

2012 2013 2014 2015 2016 2017 2018 2019 2020

52週間前の週足終値※ドル円の前年割れ

※52週線の下降ゾーン

52週移動平均線

ドル円相場(週間レンジ)

5.0%

6.0%

7.0%

8.0%

9.0%

10.0%

11.0%

12.0%

13.0%

14.0%

5.0%

6.0%

7.0%

8.0%

9.0%

10.0%

11.0%

12.0%

13.0%

14.0%

2015 2016 2017 2018 2019

ヒストリカル

ボラティリティー

実績変動率

(3ヶ月、左軸)

インプライド

ボラティリティー

予想変動率

(3ヶ月、右軸)

- 72 -債券投資クォータリー 2019 年 3 月 1 日

そのような状況がいつまで続くかは、結局この先の米国経済次第だ。パウエル米FRB議長

は年明け後の記者会見や議会証言で再三、金融政策に予め決まったコースはなく、あくまで

今後の経済指標の結果に応じて判断するとの姿勢を崩していない。 近は改めて指摘する

のも食傷気味になっているが、現行の長短金利操作に基づく日銀の超低金利政策は、しばら

く動きそうにない。「米日政策金利差が動かぬ間はドル円相場も派手に動かない」という我々

の判断が正しければ、米国の「次の一手」が「利上げ再開」なのか「利下げ開始」なのかが明

確になるまで、値幅も方向感も出にくい日々が続くだろう。為替変動に由来する企業業績の

振れ幅が小さくなって、個々の企業が本来持っている「本業で稼ぐ力」や「経営判断の巧拙」

が素直に株価に反映されやすくなるのは、事業法人にとっては悪くない環境だ。ただ、ある程

度のボラがないと活発な商売が難しくなるドル円絡みの金融商品を取り扱う我々業者や短期

の空中戦トレードを好むドル円ファンにとっては、欲求不満の溜まる展開が続くだろう。ドル円

相場に動意復活の兆候が現れ、「骨太の方向感」が生まれる時期を判断する上で、地道な米

国経済指標の観察を粘り強く続ける忍耐力が求められている。

図表7:為替相場見通し

注:ユーロドルは小数点以下4桁四捨五入。弊社予想の 終変更日時は2月28日10:00

出所:ブルームバーグより三菱UFJモルガン・スタンレー証券作成

(3月1日 12:40)

ドル円相場に「骨太の方

向感」が現れる時期を判

断する上で、地道な米国

経済指標観察が必要に

予想 予想

2018年 2019年 2020年 2021年

7-9月期 10-12月期 1-3月期 4-6月期 7-9月期 10-12月期 1-3月期 4-6月期 (実績) (予想) (暫定) (暫定)

レンジ 109.78-113.71 109.56-114.55 104.87-115.0 105.5-116.5 105.5-117.5 106.0-118.0 105.5-117.5 104.5-117.5 104.56-114.55 104.87-118.0 103.5-117.5 103.0-117.0

期末値 113.70 109.69 110.0 111.0 111.5 112.0 111.5 111.0 109.69 112.0 110.0 110.0

レンジ 124.91-133.13 125.41-132.46 118.71-131.7 119.6-133.5 121.8-136.9 124.6-139.7 126.3-141.3 127.3-143.6 124.62-137.50 118.71-139.7 126.3-144.6 128.7-146.3

期末値 131.93 125.83 125.4 126.5 129.3 132.2 133.8 135.4 125.83 132.2 136.4 137.5

レンジ 1.130-1.182 1.122-1.163 1.085-1.195 1.080-1.200 1.095-1.225 1.115-1.245 1.135-1.265 1.150-1.290 1.122-1.256 1.080-1.245 1.135-1.310 1.180-1.320

期末値 1.160 1.147 1.140 1.140 1.160 1.180 1.200 1.220 1.141 1.180 1.240 1.250

ユーロドル[ドル/ユーロ]

2018年 2019年 2020年

ドル円[円/ドル]

ユーロ円[円/ユーロ]

- 73 - 債券投資クォータリー2019 年 3 月 1 日

74 ページから 85 ページは、三菱 UFJ 銀行グローバルマーケットリサーチによる寄

稿レポートになります。

三菱 UFJ モルガン・スタンレー証券インベストメントリサーチ部と三菱 UFJ 銀行グロ

ーバルマーケットリサーチでは、見通しやシナリオのすり合わせや意見調整などは

行っておりません。

また、三菱 UFJ モルガン・スタンレー証券インベストメントリサーチ部は、本寄稿レ

ポートに掲載された情報の正確性・信頼性・完全性・妥当性・適合性について、い

かなる表明・保証するものでなく、一切の責任又は義務を負わないものとします。

- 74 -債券投資クォータリー2019 年 3 月 1 日

三菱 UFJ 銀行 寄稿

豪ドル 金融政策スタンスの中立化

三菱UFJ銀行グローバルマーケットリサーチ シニアアナリスト 井野 鉄兵

豪ドルの対ドル相場は、5日の準備銀理事会においてハト派姿勢が確認されず上昇する場

面もあったが、翌6日のロウ総裁講演(後述)を受け急落。12日には0.70台半ばまで下値を広

げた。その後は徐々に下げ幅を縮小させ、21日には0.72台を回復するも、地場銀行が発表し

た年内2回の利下げを予想するレポートを材料に0.70台後半まで下落。ただ、月末にかけて

は米中協議を巡る期待感など外部要因が下支えとなり0.71台後半まで持ち直している。

ロウ総裁は6日の講演で、金融政策の方向性が中立であることを明らかにした。次の政策変

更についてはこれまで、利上げであると引き締めバイアスをかけて説明していたが、現時点で

は、利上げ、利下げ双方への変更があり得ると中立化させた。「その可能性はほぼ均衡してい

る」としたものの、「失業率が上昇を続け、インフレターゲットの達成に向けた一段の進展がな

い場合」は利下げに踏み切る必要があると語った。この総裁の発言を受けて、市場では俄か

に利下げ期待が高まる展開となったが、現時点では利下げの「条件」を充足する状況に至ら

ないと考えられる。まず、直近1月の雇用統計でも労働市場の堅調さが確認された(第1図)。

これを受け総裁は、22日の議会証言において求人件数などの先行指標が近い将来の労働市

場の堅調さを示唆していると言及した。また、燃料価格を主因に昨年第4四半期時点のインフ

レ率は若干低下、準備銀はインフレ見通しを修正したものの、賃金指数は前年比+2.3%と緩

やかながら伸びが拡大しているため、ディスインフレには相応の抵抗力があると考えられる(第

2図)。

ドル安が意識されることで、対ドル相場では豪ドルの持ち直しを予想しているが、今般の金

融政策スタンス中立化は豪ドルの上値を重くするものとしてみておく必要があろう。したがって、

対ドル相場の予想レンジを若干下方修正することとする。

(資料)豪統計局より三菱UFJ銀行グローバルマーケットリサーチ作成 (資料)豪統計局より三菱UFJ銀行グローバルマーケットリサーチ作成

(2月28日脱稿)

2 月のレビュー

ロウ総裁がスタンスの修

正を宣言

対ドル相場の予想レンジ

を若干下方修正

第 1 図: 雇用統計 第 2 図: 賃金指数前年比上昇率、インフレ率

3

3.5

4

4.5

5

5.5

6

6.5

7‐3

‐2

‐1

0

1

2

3

4

5

Jan‐10 Jan‐11 Jan‐12 Jan‐13 Jan‐14 Jan‐15 Jan‐16 Jan‐17 Jan‐18 Jan‐19

(%)(万人)

常勤雇用者数変化(左軸) 非常勤雇用者数変化(左軸) 失業率(右軸)

0

0.5

1

1.5

2

2.5

3

3.5

4

4.5

5

Mar‐10 Mar‐11 Mar‐12 Mar‐13 Mar‐14 Mar‐15 Mar‐16 Mar‐17 Mar‐18

(%)

賃金指数 消費者物価指数(総合) 消費者物価指数(基調)

- 75 - 債券投資クォータリー 2019 年 3 月 1 日

三菱 UFJ 銀行 寄稿

人民元 注目される米中通商合意の内容

三菱UFJ銀行グローバルマーケットリサーチ シニアアナリスト 橋本 将司

2月のオンショア人民元(以下人民元)対ドル相場は、月初1日に6.7097で寄り付いた。4日

~8日は旧正月の連休でオンショア人民元は取引休止となったが、7日にトランプ米大統領が

通商協議期限の3月1日までに習近平中国国家主席と会談する予定がないと発言したことを

嫌気してオフショア人民元(CNH)が下落。すると連休明け11日のオンショア人民元は、人民

元安方向へ下離れて取引を再開し、翌12日には月間安値6.7965をつけた。もっとも、その12

日にトランプ大統領が米中通商協議の期限延長の余地を排除しない主旨の発言を行なうと人

民元は小幅に反発し、6.75~6.80近辺でのレンジ推移へ移行した。19日に同大統領が改めて

同様の発言を行なうと共に、ブルームバーグ通信が、米中協議において米国が中国に対し人

民元相場の安定を要求と伝えると、人民元相場は上記レンジ相場を人民元高方向へ大きく上

抜けた。21日~24日に開催された米中閣僚級通商協議を受けて、24日にトランプ大統領が米

中通商協議期限の延長を表明すると、節目の6.7を上抜け、25日に月間高値6.6738をつけた。

その後小幅に戻し、本稿執筆時点でも6.68近辺で推移している(第1、2図)。

(資料)Bloomberg より三菱 UFJ 銀行グローバルマーケットリサーチ作成

(注)2 月 28 日午後 1 時 30 分時点

(資料)Bloomberg より三菱 UFJ 銀行グローバルマーケットリサーチ作成

2月の人民元対ドル相場は、引き続き米中通商摩擦関連の材料に一喜一憂しつつ、 終

的に同問題の進捗を確認して昨年10月以来の反発局面での戻り高値を再び更新した。米中

協議の期限延長が決定したことで、関税の引き上げ合戦で中国景気にさらなる悪影響が及ぶ

リスクが大きく後退。加えて、米中が人民元相場の安定について何らかの合意に至った模様

であり、市場がこれを事実上の人民元安抑制合意と解釈したことも、人民元高材料となった。

人民元相場は、昨年10月以来の反発の流れが継続中であり、昨年7月半ば以来の水準まで

の戻りを実現した。一方、12月、1月と比べると上昇率は限定的となっており、反発のモメンタ

ムに一服感が出始めているとも考えられ、ここからさらなる上値を試すかどうか、追加材料を含

めて見極めが重要になって来よう。

2 月のレビュー

第 1 図 : 人民元対ドル相場(18 年 12 月 1 日~19 年 2 月 28 日) 第 2 図 : 人民元対ドル相場(2005 年以降)

通商協議合意の公算が高

まり人民元名目実効為替

レートは上昇が続く

6.65

6.70

6.75

6.80

6.85

6.90

6.95

18/12 19/01 19/02

(CNY)

今月

(CNY)

ドル高人民元安

6

6.5

7

7.5

8

8.5

05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19

(CNY)

ドル高人民元安

- 76 -債券投資クォータリー 2019 年 3 月 1 日

2月はドルの名目実効為替レートが月前半に上昇後、月後半に反落(第3図)。一方、人民

元名目実効為替レートは、総じて上昇基調を維持し、引き続き中国当局が長期的に望ましい

価格帯と考えていると想定される、2016年後半以降形成して来たレンジ1内の推移を継続中だ

(第4図)。同レートの緩やかな安定は維持されている。もっとも、昨年7月前半以来の水準まで

反発し、上記レンジの上半分の領域へ到達するなど、人民元名目実効為替レートベースでは

そろそろ当局が過度な上昇を意識し始めても不思議ではない状況となって来た。この点、今

般の米中による人民元相場安定の合意が、今後人民元の名目実効為替レートの相場形成に

与える影響が注目される2。

(資料)Bloomberg より三菱 UFJ 銀行グローバルマーケットリサーチ作成 (資料)Bloomberg より三菱 UFJ 銀行グローバルマーケットリサーチ作成

(注)CFETS 公表の各通貨基準レートと通貨バスケット構成ウェイトに基づき作成

第5、6図は、前日16時30分の日中取引終値に基づく人民元名目実効為替レートに対する、

当日9時15分発表の人民元基準値に基づく人民元名目実効為替レートの比率から、基準値

設定による当局の人民元誘導方針を定点観測したものである3。同比率は昨年12月頃までプ

ラス領域での推移が続き、中国当局が基準値による人民元高方向への誘導を志向しているこ

とを示唆していた。しかし、人民元名目実効為替レートの上昇基調が明確になった1月以降は、

この比率のプラス幅が明確に縮小し、マイナス領域での推移(人民元安方向への誘導を志向)

も散見されるようになった(第6図)。2月も旧正月明けに一定程度の人民元安が予想された際

を除けば、引き続きこうした基準値の設定傾向が続いており、中国当局が急ピッチな人民元

高を警戒し始めている可能性があろう。

1 2016 年後半以降形成して来た名目実効為替レートのレンジは、IMF 推計の長期的な均衡レートにも概ね相当しており、中国当局も望ましいとみて

いる価格領域と考えられる。 2 例えば、これまでよりも人民元名目実効為替レートの高い水準を許容し始めるかなど。 3 現在オンショア人民元の取引は、現地時間 9 時 30 分から 16 時 30 分まで日中取引が行なわれた後、16 時 30 分から 23 時 30 分まで夜間取引が

行なわれている。中国人民銀行による毎朝の人民元の 24 通貨に対する基準値の設定は、前日日中取引終了時の 16 時 30 分から当日 7 時 30 分

までの人民元名目実効レートが安定するように決定するとされている。しかし、実際には人民元高・安方向にバイアスがある場合が多く、これを観測

することによって人民元基準値設定を通した当局の人民元誘導スタンスを検証することができる。尚、第 5 図は同比率の 1 ヶ月移動平均ベース、第

6 図は同比率の日次ベースと 1 ヶ月移動平均ベースをみたもの。

第 3 図 : ドル名目実効為替レート(2017 年以降) 第 4 図 : 人民元名目実効為替レート(2017 年以降)

中国当局は人民元高を警

戒し始めている可能性

87

89

91

93

95

97

99

101

103

105

17/01 17/04 17/07 17/10 18/01 18/04 18/07 18/10 19/01

ドル高

(ポイント)

97

98

99

100

101

102

103

104(2017年初=100)

人民元高

<2016年半ば以降形成中のレンジ>

6/15、米政府対中制

裁関税を正式決定

8/3、中国人民銀行が人民元

売り外貨買い先物取引に対す

る20%の外貨リスク準備金を

再導入

8/24、中国人

民銀行、人民

元基準値に

反循環的要

素を再導入

12/3、対中制

裁関税引き上

げを延期して

米中通商協議

を開始

- 77 - 債券投資クォータリー 2019 年 3 月 1 日

(資料)Bloomberg より三菱 UFJ 銀行グローバルマーケットリサーチ作成 (資料)Bloomberg より三菱 UFJ 銀行グローバルマーケットリサーチ作成

第7、8図は、日々の人民元基準値に基づく人民元名目実効為替レートに対する、取引始

値(寄付き)ベースの人民元名目実効為替レートの比率から、市場の地合いを定点観測した

ものである。1ヶ月平均ベースの第7図(青いグラフ)をみると、この比率がこれまでのマイナス

領域からプラス領域へ推移し始めており、毎朝の寄り付きが基準値に対して人民元高で始ま

るケースが増えていることから、相場の地合いが相応に人民元高方向へ改善して来たことを

確認できる。

(資料)Bloomberg より三菱 UFJ 銀行グローバルマーケットリサーチ作成 (資料)Bloomberg より三菱 UFJ 銀行グローバルマーケットリサーチ作成

米中通商摩擦に関しては、2月は14日~15日、21日~24日と2回の閣僚級通商協議が開

催された(第9図)。特に21日~24日の協議は当初予定より2日間日程が延長され、終了後の

24日にトランプ大統領は、協議に相応の進展があったとして、3月1日までの米中通商協議の

期限、及び3月2日からの第3弾2,000億ドルへの制裁関税率引き上げ(10%→25%)の先延ば

第 5 図 : 基準値設定による人民元誘導スタンス(17 年~) 第 6 図 : 基準値設定による人民元誘導スタンス(18 年 7 月~)

人民元相場の寄り付き

動向からは、足元相場の

地合いが人民元高方向へ

改善しつつある

第 7 図 : 人民元始値の対基準値上昇・下落率(17 年~) 第 8 図 : 人民元始値の対基準値上昇・下落率(18 年 7 月~)

米中通商協議での合意の

公算が高まったことを受け、

今後は合意内容が焦点

0.975

0.98

0.985

0.99

0.995

1

1.005

1.01

1.015

1.02

‐0.5

‐0.4

‐0.3

‐0.2

‐0.1

0

0.1

0.2

0.3

0.4

0.5

18/07 18/08 18/09 18/10 18/11 18/12 19/01 19/02

前日16時30分時点に対する当日基準値の上昇率上記の1ヶ月平均人民元名目実効レート

(基準値上昇率:%) (人民元名目実効レート:ポイント)

人民元高バイアス 人民元高

0.98

0.99

1

1.01

1.02

1.03

1.04

1.05

‐0.2

‐0.15

‐0.1

‐0.05

0

0.05

0.1

9時30分の始値の基準値に対

する上昇率(1ヶ月平均)

人民元名目実効レート

(始値の基準値に対する上昇率:%) (人民元名目実効レート:ポイント)

人民元高バイアス 人民元高

0.975

0.980

0.985

0.990

0.995

1.000

1.005

1.010

1.015

1.020

‐0.8

‐0.6

‐0.4

‐0.2

0

0.2

0.4

0.6

18/07 18/08 18/09 18/10 18/11 18/12 19/01 19/02

9時30分の始値の基準値に対する上昇率1ヶ月平均(9時30分)人民元名目実効レート

(始値の基準値に対する上昇率:%) (人民元名目実効レート:%)

人民元高バイアス 人民元高

0.98

0.99

1

1.01

1.02

1.03

1.04

1.05

‐0.06

‐0.04

‐0.02

0

0.02

0.04

0.06

0.08

0.1

0.12

前日16時30分時点に対する当日基準値の上昇率(1ヶ月平均)

人民元名目実効レート

(前日16時30分時点に対する当日基準値の上昇率:%) (人民元名目実効レート:ポイント)

人民元高人民元高バイアス

<2016年後半以降

のレンジ>

- 78 -債券投資クォータリー 2019 年 3 月 1 日

しを表明した。少なくとも、米中間でさらなる制裁関税率引き上げの応酬となる事態は回避さ

れつつある。

もっとも、トランプ大統領のコメントなどからすると、まだ両者は完全に合意には至っていな

いようだ。各種報道によれば、協議事項のうち、貿易不均衡の是正(中国による米国製品の購

入増加)や通貨に関しては、概ね合意に達したものの、知的財産権保護や先端技術産業へ

の補助金政策(中国製造2025)などを巡って依然隔たりが解消されていない模様(第10図)。

終的に合意に至る可能性は高まってはいるものの、まだ一定の警戒は解けない状況だ4。

加えて、合意に達した場合でもどのような合意内容になるかによって、今後の中国経済や

世界経済、延いては金融市場への影響も異なって来よう。例えば、これまで賦課した制裁関

税を全て除去するのか、あるいは一部に止まるのかなどである。米中の対立は技術覇権や政

治・経済体制を巡る対立でもあり、簡単に収束し得ないことは十分に考えられることから、当方

はどちらかと言えば後者のような状況を想定している。その場合、合意に至った場合の人民元

相場のポジティブな反応は限定的となり易い。トランプ大統領は、3月にも習近平国家主席と

首脳会談を行い、 終的に協議を妥結したいとしており、そのタイミングまでには合意内容の

全容は明らかとなって来よう。

(資料) 各種報道より三菱 UFJ 銀行グローバルマーケットリサーチ作成

(資料) ロイターを中心とした各種報道より三菱 UFJ 銀行グローバルマーケットリサーチ作成

今回の協議事項の中で特に目を引いたのは、既に妥結しているとされる通貨に関する合意

だ。トランプ大統領は通貨の安定とだけコメントし、詳細は適切な時期に開示するとしている。

ブルームバーグ通信によれば、米国は中国が制裁関税の相殺を目的に人民元安へ誘導す

ることを抑制するために、人民元相場の安定を要求したとしている。これを前提にすると、人民

4 ライトハイザーUSTR 代表は、27 日の米議会での証言で、米中通商協議の合意にはまだ多くの作業が必要であり、合意後も公約の履行という難し

い問題があると述べた。

第 9 図 : 米中通商交渉に関する動向(2 月以降)

第 10 図 : 米中通商協議における主要論点

米中通貨合意もその内容

やそれに対する相場の反

応が注目される

発言者など 内容2月

5日 トランプ大統領 中国との通商合意は、真に構造的な変化を含むものでなければならない(一般教書演説)。7日 トランプ大統領 3月1日の交渉期限までに習近平国家主席と首脳会談を行なう予定は現時点ではない。12日 トランプ大統領 真の合意に達する見込みがあるのであれば、交渉期限を若干延期することも可能(基本的にはやりたくないが)。14日 - 米国は米中通商協議(制裁関税率引き上げ)の期限を60日間延期することを検討(ブルームバーグ通信報道)。14日~15日 - 米中閣僚級通商協議を再開(北京)。19日 トランプ大統領 米中協議は極めて複雑な協議だが、順調に進んでいる。3月1日は「魔法の期日」ではない(期日延長示唆)。

- 米国は中国に対して、人民元相場安定の保証を要求している模様(ブルームバーグ通信)。21日~22日 - 米中閣僚級通商協議を再開(ワシントン)。その後予定を24日まで延長。24日 トランプ大統領 米中協議で進展があったため、3月1日の交渉期限を延期し、3月2日からの関税率引き上げも先延ばしする。

日時

①技術移転強要とサイバー攻撃 ⑤非関税障壁・中国で事業を行なう外国企業に対する技術移転や知的財産提供の強要の停止。・中国による、米国企業からの企業秘密のハッキングによる詐取の支援の停止。

・「中国製造2025」の是正。

②知的財産権 ⑥通貨・中国における、米国企業による自社技術の管理の妨害となる許認可慣行の改善。 ・人民元相場の安定。

③農業 ⑦貿易赤字削減・中国に対する米国産鶏肉、牛肉などの農産物の市場開放。 ・米国産農産物や液化天然ガスなどの輸入拡大。

④サービス ⑧合意事項の実施状況の検証・金融サービス市場の開放。 ・中国による合意事項の実施状況を監視する枠組みと罰則規定。

- 79 - 債券投資クォータリー 2019 年 3 月 1 日

元相場の安定とは対ドルベースのものである可能性がある。しかし、これまで度々指摘して来

たように、中国当局は人民元相場を対ドルでの安定から名目実効為替レートでの安定へシフ

トさせ、対ドルでの柔軟性を拡大して来た。IMFの評価によれば、人民元は実質実効為替レ

ートベースで2016年頃より概ね長期均衡値に達していることに加え、人民元の対ドルでの柔

軟性を拡大することで、より独立した金融政策を運営する余地を拡大できるためだ。

ここで対ドルでの安定方向に回帰することは、人民元のより柔軟性のある変動相場制への

移行と同時に、より望ましいマクロ経済管理政策の枠組みを目指すというこれまで実施して来

た人民元通貨制度改革に逆行することになる。

こうした考察から、中国が対ドルでの安定を受け入れたとしても、ある程度のレンジを持たせ

ている可能性もある。あるいは対ドルではなく実は人民元名目実効為替レートの安定に合意

した可能性も完全には排除できず、この場合は中国当局も合意し易いと思われる。詳細な公

式発表が待たれるところだが、市場では人民元安抑制というヘッドラインが一人歩きして、人

民元高材料と解釈される可能性もあるため注意を要しよう。

旧正月の影響で一部のみの発表となった1月分を中心とする中国の月次指標は、輸出入

の前年比などで、持ち直しの動きがみられたが、旧正月前の駆け込み発注の影響などを含ん

でいる可能性もあり、慎重に見ておく必要がありそうだ(第11図)。本日発表された2月分の製

造業PMIは49.2と市場予想(49.5)、前月(49.5)共に下回り、非製造業PMIも54.3とやはり市場

予想(54.5)、前月(54.7)共に下回るなど、低下基調に歯止めが掛かっていないことが確認さ

れた。12月分までの生産や固定資産投資の減速には歯止めがかかる兆しもみられていたが、

先行きはまだ慎重にみておく必要があろう。

(資料) 中国国家統計局、Bloomberg より三菱 UFJ 銀行グローバルマーケットリサーチ作成

(注)青色の部分は前月から伸び率が低下した項目

2月の中国の市中金利は、長期ゾーンを中心に幾分反発もみられたが、全体としては当面

先行き景気不透明感からさらなる下振れが見込まれる。米金利もFRBの利上げ休止観測から

頭打ち感を強めているものの、米中金利差は、尚もドル有利な方向へ動く余地があり、金利差

要因は引き続き人民元の上値抑制要因として機能しよう(第12、13図)。

1 月分の一部月次経済指

標の持ち直しは一時的で

あるに過ぎない可能性

第 11 図 : 中国の主要経済指標推移

米中金利差は引き続き

人民元の上値抑制要因

5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 1月 2月

実質GDP成長率(前年比:%)

社会消費財小売総額(前年比:%) 8.5 9.0 8.8 9.0 9.2 8.6 8.1 8.2 - -

固定資産投資(年初来、前年比:%) 6.1 6.0 5.5 5.3 5.4 5.7 5.9 5.9 - -

工業生産(前年比:%) 6.8 6.0 6.0 6.1 5.8 5.9 5.4 5.7 - -

製造業PMI(インデックス) 51.9 51.5 51.2 51.3 50.8 50.2 50.0 49.4 49.5 49.2

非製造業PMI(インデックス) 54.9 55.0 54.0 54.2 54.9 53.9 53.4 53.8 54.7 54.3

輸出(前年比:%) 11.9 10.7 11.6 9.5 14.4 15.5 3.9 ▲ 4.4 9.1 -

輸入(前年比:%) 26.1 13.8 27.0 20.7 14.5 20.8 2.9 ▲ 7.6 ▲ 1.5 -

消費者物価(前年比:%) 1.8 1.9 2.1 2.3 2.5 2.5 2.2 1.9 1.7 -

2019年2018年

6.46.56.7 -

- 80 -債券投資クォータリー 2019 年 3 月 1 日

(資料)Bloomberg より三菱 UFJ 銀行グローバルマーケットリサーチ作成 (資料)Bloomberg より三菱 UFJ 銀行グローバルマーケットリサーチ作成

3月の人民元相場も、引き続き米中通商協議の行方が焦点となろう。トランプ大統領の言う

ように、3月中に米中通商協議が一定の合意に達する可能性は高まっているが、焦点はその

合意の中身に移ろう。前月号でも指摘した通り、特に既に実行されている制裁関税の取り扱

い次第では、中国景気に対する不透明感が完全には払拭されず、人民元の反発が早々に頭

打ちとなる、あるいは場合によっては下落に転じる展開も完全には排除できないだろう。

また、米司法当局がファーウェイを起訴するなど、技術覇権などを巡る争いが継続すると見

込まれることも、中国経済への緩やかな重荷になって行こう。中国景気は引き続き減速する流

れにあり、追加金融緩和期待と金利低下による人民元下落圧力は燻りそうだ。

合意内容の中で も注目されるのは、人民元相場の安定に関する部分だ。内容によって

は、市場が人民元安抑制策と受け止めて、一定の人民元高材料となる展開には注意が必要

だ。

3月の人民元相場も、米中通商協議における一定の合意や通貨に関する合意を受けてあ

る程度の強含みをみておく必要があろう。ドルが月中の米指標を受けて再び軟化方向にある

こともこれを下支えしよう。もっとも、米中対立の長期化や中国景気の減速傾向から、人民元

相場に先行き次第に頭打ち感が出て来るとの見方は引き続き維持する(年内レンジ見通しは、

今月の人民元上昇分を反映させて若干人民元高方向へシフト)。

尚、中国景気が景気刺激策もあって早々に持ち直し、グローバル景気の見通しも改善して

来れば、ドルも緩やかに下落することで、サブシナリオながら、予想レンジ程に対ドルでの人

民元安が進まなくなる展開もあり得るのではないかとみている(人民元下落が1ドル=6.8人民

元程度までに止まるイメージ)。

その他、3月5日より国会に相当する全人代(全国人民代表大会)が開催される予定だ。

2019年の経済政策運営方針と、そこで公表される各種経済指標の目標、とりわけ2019年の実

質GDP成長率目標が注目される。2018年は前年比+6.5%前後とされていた(2018年実績は同

+6.6%)。中国政府はこの成長率目標を下回らないように政策運営を行なうとされており、今年

の中国経済の見通しを考える上でも重要な手掛かりとなろう。

第 12 図 : 米中国債 3 年物金利と金利差(2018 年~) 第 13 図 : 人民元対ドル相場と米中 3 年金利差(2018 年~)

来月の見通し

1.5

2

2.5

3

3.5

4

‐2

‐1

0

1

2

3

4

18/01 18/04 18/07 18/10 19/01

米3年国債利回り‐中国3年国債利回り

米3 年国債金利(右軸)

中国3年国債金利(右軸)

(米中金利差:%) (米中金利水準:%)

6.2

6.3

6.4

6.5

6.6

6.7

6.8

6.9

7

‐2

‐1.8

‐1.6

‐1.4

‐1.2

‐1

‐0.8

‐0.6

‐0.4

‐0.2

0

18/01 18/04 18/07 18/10 19/01

米3年国債利回り‐中国3年国債利回り

CNY

(USD/CNY)(%)

米金利>中国金利

米金利<中国金利

- 81 - 債券投資クォータリー 2019 年 3 月 1 日

3 月 4 月~6 月 7 月~9 月 10 月~12 月

USD/CNY 6.60~6.80 6.60~6.83 6.70~6.90 6.75~6.95

CNY/JPY 15.8~17.1 15.6~16.9 15.2~16.5 14.9~16.2

(2月28日脱稿)

予想レンジ

- 82 -債券投資クォータリー 2019 年 3 月 1 日

三菱 UFJ 銀行 寄稿

ブラジル:膨らむ期待と残る不安

三菱UFJ銀行グローバルマーケットリサーチ シニアアナリスト 石丸 伸二

今、市場ではブラジルに熱い視線が注がれている。昨年10月から続いたグローバルな株安

局面においても、ブラジルの株価(ボベスパ指数)は 高値の更新を繰り返したが、年明け以

降は一段と騰勢を強めた(第1図)。株高をもたらしている主因は、政権交代である。左派政権

が退くこととなった昨年10月の大統領選挙を経て、同国経済の先行きに対する見方は大きく

改善し、ブラジルの株式や債券への投資が活発化。レアル(対ドル相場)は世界的な株安がド

ル買いを誘発する中にあっても底堅く推移した(第2図)。

市場の見方は一変したと言えるが、マクロ経済にはどのような変化が生じ得るのか。結論を

先取りすれば、景況感の改善が実体経済にも好影響を及ぼすと見込まれる。ただし、新政権

の政策運営とそれに対する市場や国民の評価は高い不確実性を伴うため、時間を掛けて慎

重に見極める必要がある。本稿では、景況感と実体経済の関係を整理し、レアルの今後につ

いて纏めたい。

まず、選挙を挟んだ景況感の動向について確認しておこう。家計や企業の景況感は2018

年5月に発生した物流ストなどを背景に悪化していたが、選挙を受けて大きく改善。新政権が

発足した2019年1月に家計マインドは2012年12月以来、企業マインドは2010年6月以来の高

水準を記録している(第3、4図)。過去の相関関係1を元に、直近の家計マインドと企業マイン

ドを個人消費と設備投資に置き換えると、それぞれ前年比+5.4%2、同+15.4%3という数値が求

まる。

1 期間は 2006 年 1-3 月期~2018 年 7-9 月期。 2 家計マインドを説明変数 X、家計消費支出の前年比を被説明変数 Y とした場合、Y=0.238X-20.934、R²=0.81。 3 企業マインドを説明変数 X、総固定資本形成の前年比を被説明変数 Y とした場合、Y=1.224X-63.801、R²=0.81。

市場は政権交代を好感

景況感と実体経済の関係

を整理

第 1 図: 株価の推移 第 2 図: レアルの推移

(注)ボベスパ指数。

(資料)Bloomberg より三菱 UFJ 銀行グローバルマーケットリサーチ作成

(資料)Bloomberg より三菱 UFJ 銀行グローバルマーケットリサーチ作成

家計・企業マインドは数年

ぶりの高水準へ

70,000

75,000

80,000

85,000

90,000

95,000

100,000

105,000

18/8 18/9 18/10 18/11 18/12 19/1 19/2

(指数)

(年/月)

10/7大統領選挙

第1回投票

10/28大統領選挙

決選投票

1/1新政権発足

3.5

3.6

3.7

3.8

3.9

4.0

4.1

4.2

4.3

18/8 18/9 18/10 18/11 18/12 19/1 19/2

(対ドル相場、レアル)

(年/月)

10/7大統領選挙

第1回投票

10/28大統領選挙

決選投票

1/1新政権発足

- 83 - 債券投資クォータリー 2019 年 3 月 1 日

足元の景況感に応じる個人消費と設備投資の伸びが維持されれば、この2項目だけで4実

質GDPは同+6.4%に至る計算となる。金融危機による落ち込みの反動が出た2010年以来の

高い成長率であり、数字の上では資源価格の上昇とバラマキ財政が生み出した2000年代前

半に並ぶ好景気に当たる(第5図)。

しかし、中銀が纏める2019年の景気見通しには、若干の振れを除くと同+2.5%から目立った

変化がない(第6図)。2018年が同+1.3%程度に減速していたことを踏まえれば、2019年の景

気持ち直しに自信を深めた面はあるとみられるが、先行きに対して慎重な姿勢が窺える。実際、

新政権の発足前後から構造改革に対して前向きな方針は多く示されてきたが、2月1日に議

会が召集されたばかりで、具体的な取り組みはまだこれからである。特に、前政権からの課題

となっている財政再建については、議会運営の面から実現が楽観できないばかりか、実現し

た場合、国民に痛みを強いる面もあるため景況感を損なう危うさが伴う。市場の反応だけでな

く、景況感においても期待先行の感が強いため、現行の水準を維持できるかどうかは不透明

と言わざるを得ず、現時点で個人消費や設備投資がどれほどの伸びを示すかは読み難い。

4 2018 年 7-9 月期の実質 GDP におけるウェイトは、家計消費支出が 67%、総固定資本形成が 18%。

第 3 図: 個人消費と家計マインドの推移 第 4 図: 設備投資と企業マインドの推移

(注)家計消費支出は実質ベース。家計マインドは 1 四半期(3 ヵ月)先行。

(資料)Bloomberg より三菱 UFJ 銀行グローバルマーケットリサーチ作成

(注)総固定資本形成は実質ベース。企業マインドは 1 四半期(3 ヵ月)先行。

(資料)Bloomberg より三菱 UFJ 銀行グローバルマーケットリサーチ作成

個人消費と設備投資の牽

引が期待できる

景況感の持続力は不確か

60

70

80

90

100

110

120

▲ 8

▲ 6

▲ 4

▲ 2

0

2

4

6

8

10

06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19

家計消費支出

家計マインド(右目盛り)

(前年比、%) (2005年9月=100)

(年)

30

35

40

45

50

55

60

65

70

▲ 30

▲ 20

▲ 10

0

10

20

30

06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19

総固定資本形成

企業マインド(右目盛り)

(前年比、%) (%)

(年)

- 84 -債券投資クォータリー 2019 年 3 月 1 日

政権交代によって景況感が改善している以上、程度の問題はあるにせよ着実に景気の押

し上げに作用すると見込まれる。今後、2019年の成長率見通しが上方修正される可能性は十

分ある。一方、足元で新政権に対する期待が膨らんでいる分だけ、先々の不安もまた大きいと

言える。今後、各種政策を実行に移していく段階で幾らか期待が剥落し、あるいは失望を招く

展開が想定される。長い目でみて、政局が混乱を脱し経済が再生に向かう中、レアルは上値

余地を広げると考えられるが、その過程では小さくない下落を経るだろう。先行き、値幅が広

がるリスクに備えておきたい。

(2月13日脱稿)

第 5 図: 実質 GDP の推移 第 6 図: 景気見通しの推移

(資料)Bloomberg より三菱 UFJ 銀行グローバルマーケットリサーチ作成 (注)実質 GDP のエコノミスト予想、中央値。

(資料)ブラジル中銀より三菱 UFJ 銀行グローバルマーケットリサーチ作成

レアルは上値余地が広が

る一方で下落リスクも抱え

▲ 10

▲ 8

▲ 6

▲ 4

▲ 2

0

2

4

6

8

10

12

08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19

在庫・誤差脱漏

純輸出

政府支出

総固定資本形成

家計消費支出

実質GDP

(前年比、%)

(年)

前年比+6.4%

1.0

1.5

2.0

2.5

3.0

3.5

18/1 18/3 18/5 18/7 18/9 18/11 19/1

2019年

2018年

(前年比、%)

(年/月)

- 85 - 債券投資クォータリー 2019 年 3 月 1 日

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- 86 -債券投資クォータリー2019 年 3 月 1 日

経済指標予想・イベント(3 月 4 日~3 月 10 日分)

予想値と実績値 市場予想 コメント

3/4 日本 8:50

(月)

3/5 日本 10:30

(火) 0:00

0:00 米ISM非製造業指数(2月分 市場予想 57.2、1月分 56.7)

n.a 中国・全国人民代表大会開幕

3/6 日本 10:30

(水) 22:30 米貿易収支(12月分 市場予想 赤字額 542億ドル、1月分 同493億ドル)

22:15 米ADP雇用統計(2月分 市場予想 前月比 +18.5万人、1月分 同 +21.3万人)

4:00

3/7 10:20

(木) 10:30

14:00 景気動向指数(速報) 1月est. 前月差 ▲1.8pt ▲1.6pt

<先行CI> 12月 同 ▲1.6pt

11月 同 ▲0.7pt

<一致CI> 1月est. 前月差 ▲2.8pt ▲2.9pt

12月 同 ▲1.1pt

11月 同 ▲1.7pt

14:00 消費活動指数(1月分)*

19:00 ユーロ圏GDP(速報値) 18/4Qest. 前期比 +0.2% +0.2%

18/3Q 同 +0.2%

17/2Q 同 +0.2%

21:45

22:30 米労働生産性(10-12月期分改定値 市場予想 前期比年率 +1.5%、7-9月期 同+2.2%)

米地区連銀経済報告

ヘッドラインは、暫定速報から不変と予想。需要項目別の内訳をみて、成長鈍化の背景を探りたい

ECB理事会〈結果発表〉

海外

マネタリーベース(2月分)

30年利付国債入札(発行予定額 7,000億円程度) <12:35 結果発表>

海外

海外

日本

6ヵ月国庫短期証券入札(発行予定額 2兆3,000億円程度) <12:30 結果発表>

一致CIによる基調判断は「下方への局面変化」に下方修正へ

10年利付国債入札(発行予定額 2兆2,000億円程度) <12:35 結果発表>

米新築住宅販売(12月分 市場予想 年率 58.0万戸、11月分 同 65.7万戸)

原田日銀審議委員、挨拶(甲府市金融経済懇談会)

発表日・時刻 経済指標等

- 87 - 債券投資クォータリー 2019 年 3 月 1 日

注: 1.*は未定。est.は予想値。市場予想(中央値)は各種サーベイより集計

2.発表時刻は日本時間

出所:各種報道より三菱 UFJ モルガン・スタンレー証券作成

予想値と実績値 市場予想 コメント

3/8 8:30 家計調査 1月est. 前年比 ▲0.4% ▲0.5%

(金) <実質消費支出(二人以上世帯) 12月 同 +0.1%

・変動調整値> 11月 同 ▲0.5%

8:50

8:50 経常収支 1月est. 収支額 400億円 1,665億円

12月 同 4,528億円

18年1月 同 5,924億円

8:50 実質GDP 18/4Q est. 前期比年率 +1.3% +1.4%

(2次速報値) 18/3Q 同 ▲2.6%

17/2Q 同 +2.2%

10:20

14:00

11:00 中国貿易統計(2月分)

16:00 ドイツ製造業受注 1月est. 前月比 ▲0.2% +0.5%

12月 同 ▲1.6%

11月 同 ▲0.2%

16:45 フランス鉱工業生産 1月est. 前月比 +1.0% +0.0%

12月 同 +0.8%

11月 同 ▲1.5%

21:30 米雇用統計<非農業部門就業者数> (2月 市場予想 +18.5万人、1月分 +30.4万人)

米雇用統計<時間当り賃金> (2月 市場予想 +0.3%、1月分 +0.1%)

米雇用統計<失業率> (2月 市場予想 +3.9%、1月分 +4.0%)

3/9 海外 10:30

(土)

3/10 海外 米国が夏時間へ以降

(日)

中国消費者物価・生産者物価(2月分)

3ヵ月国庫短期証券入札(発行予定額 4兆3,400億円程度) <12:30 結果発表>

景気ウォッチャー調査(2月分)

海外

自動車産業での新規制等の一時的要因による悪影響は緩和も、全体としては小幅ながら受注減となった模様

既公表のサーベイ・データを踏まえると、大規模デモによる影響の緩和で増産となった見込み

発表日・時刻 経済指標等

日本

再び前年比マイナスを予想。12月にかけて伸びていた衣料品関連で増加一服が見込まれる

貸出・預金動向(2月分)

前年を上回る貿易赤字が続くとともに、第1次所得収支黒字も伸び悩みが予想される

1次速報(年率+1.4%)とさほど変わらずと予想。関心は1-3月期の景気に

- 88 -債券投資クォータリー 2019 年 3 月 1 日

マー

ケッ

トカ

レン

ダー

(20

19

年3

月分

)

注:

3月

1日

現在

( )内

の時

刻は

日本

時間

。*は

日時

未定

出所

:各種

報道

より

三菱

UF

Jモ

ルガ

ン・ス

タン

レー

証券

作成

24

25

26

27

28

≪債

券投

資クォー

タリー

≫1

208

:30

完全

失業

率(1

月)

08:3

0 都

区部

CPI

(2月

)

08:5

0 法

人企

業統

計調

査(1

8/4Q

)

10:2

0 3 ヵ

月国

庫短

期証

券入

14:0

0 消

費動

向調

査(2

月)

14:0

0 新

車販

売台

数(2

月)

10:4

5 中

国製

造業

PMI 〈

財新

〉(2

月)

19:0

0 ユ

ーロ圏

CPI

〈速

報値

〉(2

月)

22:3

0 米

個人

所得

・支

出(1

2 月) ・

所得

(1月

)

00:0

0 米

ISM

〈製

造業

〉(2

月)

米連

邦債

務の

上限

引き

上げ

期限

【月

内】

34

56

7≪

債券

投資

ウィー

クリー

≫8

908

:30

毎月

勤労

統計

〈速

報〉(1

月)*

08:5

0 マ

ネタリー

ベー

ス(2

月)

10:3

0 10

年利

付国

債入

札10

:30

原田

日銀

審議

委員

挨拶

10:2

0 6 ヵ

月国

庫短

期証

券入

札08

:30

家計

調査

・消費

動向

指数

(1月

)

(甲

府市

金融

経済

懇談

会)

10:3

0 30年利

付国債

入札

08:5

0 貸

出・預

金動

向(2

月)

14:0

0 景

気動

向指

数〈速

報値

〉(1

月)

08:5

0 国

際収

支(1

月)

14:0

0 消

費活

動指

数(1

月)*

08:5

0 G

DP 〈

2 次速

報〉(1

8/4Q

)

10:2

0 3 ヵ

月国

庫短

期証

券入

14:0

0 景

気ウ

ォッチ

ャー

調査

(2月

)

【月

内】

00:0

0 米

新築

住宅

販売

件数

(12 月

)22

:30

米貿

易収

支(1

2 月)

19:0

0 ユ

ーロ圏

GD

P 〈詳

細値

〉(1

8/4Q

)11

:00

中国

貿易

統計

(2月

)*10

:30

中国

CPI

・PP

I(2月

)

米中

首脳

会談

00:0

0 米

ISM

〈非

製造

業〉(2

月)

04:0

0 米

地区

連銀

経済

報告

21:4

5 EC

B理

事会

〈結

果発

表〉

22:3

0 米

雇用

統計

(2月

)

中国

・全

国人

民代

表大

会開

幕22

:30

米労

働生

産性

( 改定

値)(

18/4

Q)

10

11

12

13

14

≪債

券投

資ウ

ィークリー

≫1

51

608

:50

マネ

ース

トック(2

月)

08:5

0 法

人企

業景

気予

測調

査(1

9/1Q

)08

:50

企業

物価

指数

(2月

)10

:20

3 ヵ月

国庫

短期

証券

入札

09:0

0 日

銀金

融政

策決

定会

08:5

0 機

械受

注(1

月)

10:3

0 国債流

動性供

給入札

(5-1

5.5 年

)15

:30

黒田

日銀

総裁

記者

会見

13:3

0 第

3 次産

業活

動指

数(1

月)

14:0

0 日

銀金

融政

策決

定会

春季

労使

交渉

の集

中回

答日

G20

ビジ

ネス

サミ

ット

(都

内、

~15日

米国

が夏

時間

へ移

行23

:00

米企

業在

庫(1

2 月)

21:3

0 米

CPI

(2月

)21

:30

米PP

I(2月

)11

:00

中国

生産

・小

売・投

資(1

・2 月

)19

:00 ユーロ圏

CPI〈確報

値〉

(2月

)

02:0

0 米

3 年国

債入

札02

:00

米10年

国債

入札

02:0

0 米

30年

国債

入札

21:3

0 米

輸入

物価

指数

(2月

)22

:15

米鉱

工業

生産

(2月

)

ユー

ロ圏

財務

相会

合(ブ

リュ

ッセ

ル)

EU財

務相

理事

会(ブ

リュ

ッセ

ル)

21:3

0 米

小売

売上

高(1

月)

23:0

0 米

ミシガン

大消

費者

信頼

感指

  

  

〈速

報値

〉(3

月)

【当

週】

17

18

19

20

21

≪債

券投

資ウ

ィークリー

≫2

22

3政

府月

例経

済報

告(3

月)*

08:5

0 貿

易統計

(2月

)08

:50

資金

循環

統計

(18/

4Q)

08:5

0 日

銀金

融政

策決

定会

合議

事要

旨◎

春分

の日

08:3

0 全

国C

PI(2

月)

14:0

0 全

国ス

ーハ

゚ー売

上高

(2月

)*13

:30

鉱工

業生

産< 確

報>(

1 月)

10:2

0 1 年

国庫

短期

証券

入札

  

  

〈1/

22,2

3 〉10

:20

3 ヵ月

国庫

短期

証券

入札

14:3

0 全

国百

貨店

売上

高(2

月)*

17:0

0 業

態別

の日

銀当

座預

金残

高(2

月)

10:3

0 20

年利

付国

債入

札09

:00 公社

債投資

家別売

買高

(2月

)10

:30

国債

流動

性供

給入

札(1

-5年

)

16:0

0 訪

日外

客数

(2月

)

FOM

C03

:00

FOM

C〈結

果発

表〉

21:0

0 英

BO

E 金融政

策委員

会18

:00

ユー

ロ圏

PMI 〈

速報

値〉(3

月)

   

 〈結

果・議事録

〉23

:00

米中

古住

宅販

売(2

月)

21:3

0 米

フィラ

連銀

製造

業指

数(3

月)

21:3

0 米

経常

収支

(18/

4Q)

23:0

0 米

景気

先行

指数

(2月

)

EU首

脳会

議(ブ

リュ

ッセ

ル、

~22日

02:0

0 米

10年

TIPS

国債入札

【当

週】

24

25

26

27

28

≪債

券投

資マ

ンス

リー

≫2

93

014

:00

景気

動向

指数

〈改

定値

〉(1

月)*

13:3

0 全

産業

活動

指数

(1月

)08

:50

企業

向け

サー

ビス

価格

指数

(2月

)10

:30

2 年利

付国

債入

札08

:30

都区

部C

PI(3

月)

08:5

0 日

銀「主

な意

見」(3

/14,

15)

08:3

0 完

全失

業率

(2月

)

10:3

0 40

年利

付国

債入

札08

:50

鉱工

業生

産< 速

報>(

2 月)

08:5

0 商

業動

態統

計< 速

報>(

2 月)

14:0

0 住

宅着

工件

数(2

月)

17:0

0 当

面の

長期

国債

等の

買入

れの

  

  

運営

につ

いて

17:3

0 ド

イツ

IFO

景況

感指

数(3

月)

22:0

0 米

S&

P コア

ロジッ

クC

S住

宅価

格指

数00

:30

米2 年

変動

利付

国債

入札

18:0

0 ユーロ圏マネ-サプライ

(2月

)21

:30

米個

人所

得・消

費支

出(2

月)

08:0

0 英

国EU

離脱

期日

(予

定)

  

  

(1月

)02

:00

米5 年

国債

入札

19:0

0 ユ

ーロ圏

景況

感サ

ーヘ

゙イ(3

月)

  

  

 ( 現

地29

日、

23:0

0)

23:0

0 米

消費

者信

頼感

指数

(3月

)21

:30

米G

DP 〈

確報

値〉(1

8/4Q

)

02:0

0 米

2 年国

債入

札02

:00

米7 年

国債

入札

31

12

34

56

国内

基準

行に

IRR

BB

適用

開始

欧州

が夏

時間

へ移

行10

:00

中国

PMI 〈

統計

局〉(3

月)

10:3

0 5 年

利付

国債

入札

日月

火水

木金

- 89 - 債券投資クォータリー 2019 年 3 月 1 日

マー

ケッ

トカ

レン

ダー

(20

19

年4

月分

)

注:

3

月1

日現

在。

)内の

時刻

は日

本時

間。

*は日

時未

出所

:各種

報道

より

三菱

UF

Jモ

ルガ

ン・ス

タン

レー

証券

作成

31

12

34

≪債

券投

資ウ

ィークリー

≫5

608

:50

日銀

短観

〈3 月

調査

・概

要〉

08:5

0 日

銀短

観〈3 月

調査

・全

容、

10:2

0 3 ヵ

月国

庫短

期証

券入

札10

:30

30年

利付

国債

入札

08:3

0 家

計調

査・消

費動

向指

数(2

月)

14:0

0 新

車販

売台

数(3

月)

企業

の物

価見

通し

〉10

:20

3 ヵ月

国庫

短期

証券

入札

新元

号の

公表

08:5

0 マ

ネタリー

ベー

ス(3

月)

13:3

0 生

活意

識に

関す

るア

ンケ

ート調

査*

改正

出入

国管

理法

の施

行10

:30

10年

利付

国債

入札

14:0

0 景

気動

向指

数〈速

報値

〉(2

月)

14:0

0 消

費活

動指

数(2

月)*

10:4

5 中

国製

造業

PMI 〈

財新

〉(3

月)

23:0

0 米

ISM

〈非

製造

業〉(3

月)

21:3

0 米

雇用

統計

(3月

)

18:0

0 ユ

ーロ圏

CPI

〈速

報値

〉(3

月)

G7 外

相会

合(フランス

、~

6 日)

23:0

0 米

ISM

〈製

造業

〉(3

月)

 

78

91

01

1≪

債券

投資

ウィー

クリー

≫1

21

3【当

週】

08:5

0 国

際収

支(2

月)

10:2

0 6 ヵ

月国

庫短

期証

券入

札08

:50

貸出

・預金

動向

(3月

)08

:50

マネ

ース

トック(3

月)

10:2

0 3 ヵ

月国

庫短

期証

券入

08:3

0 毎

月勤

労統

計〈速

報〉(2

月)*

14:0

0 消

費動

向調

査(3

月)

10:3

0 5 年

利付

国債

入札

08:5

0 企

業物

価指

数(3

月)

10:2

0 2 ヵ

月国

庫短

期証

券入

統一

地方

選(前

半)

15:0

0 景

気ウ

ォッチ

ャー

調査

(3月

)*08

:50

機械

受注

(2月

)10

:30

国債

流動

性供

給入

【当

月】

日銀

支店

長会

議、

黒田

総裁

挨拶

*

日銀

地域

経済

報告

( さくら

レホ

゚ート)

(4月

)*

02:0

0 米

3 年国

債入

札20

:45

ECB

理事

会〈結

果発

表〉

10:3

0 中

国C

PI・PP

I(3月

)21

:30

米輸

入物

価指

数(3

月)

21:3

0 米

CPI

(3月

)21

:30

米PP

I(3月

)23

:00

米ミシ

ガン

大消

費者

信頼

感指

02:0

0 米

10年

国債

入札

02:0

0 米

30年

国債

入札

  

  

〈速

報値

〉(4

月)

03:0

0 FO

MC

議事

録〈3/

19、

20〉

IMF ・

世界

銀行

春季

会合

G20

財務

相・中

央銀

行総

裁会

議( 米

ワシントン

、~

14日

)

( 米ワシントン

、~

12日

)

14

15

16

17

18

≪債

券投

資ウ

ィークリー

≫1

92

0【当

週】

10:3

0 20

年利

付国

債入

札08

:50

貿易

統計

(3月

)10

:20

1 年国

庫短

期証

券入

札08

:30

全国

CPI

(3月

)

政府

月例

経済

報告

(4月

)*17

:00

業態

別の

日銀

当座

預金

残高

(3月

)13

:30

鉱工

業生

産< 確

報>(

2 月)

10:3

0 国

債流

動性

供給

入札

08:5

0 主

要銀

行貸

出動

向ア

ンケ

ート調

日銀

「金

融シス

テム

レホ

゚ート」

*10

:20

3 ヵ月

国庫

短期

証券

入札

13:3

0 第

3 次産

業活動

指数

(2月

)

14:3

0 全

国百

貨店

売上

高(3

月)

16:0

0 訪

日外

客数

(3月

)

22:1

5 米

鉱工

業生

産(3

月)

11:0

0 中

国G

DP(

19/1

Q)

17:0

0 ユ

ーロ圏

PMI 〈

速報

値〉(4

月)

◎G

ood

Frid

ay(聖

金曜

日)

11:0

0 中

国生

産・小

売・投

資(1

1 月)

21:3

0 米

フィラ

連銀

製造

業指

数(4

月)

米国

は為

替市

場を

除き

休場

18:0

0 ユ

ーロ圏

CPI

〈確

報値

〉(3

月)

23:0

0 米

景気

先行

指数

(3月

)

03:0

0 米

地区

連銀

経済

報告

02:0

0 米

5 年TI

PS国

債入

21

22

23

24

25

≪債

券投

資マ

ンス

リー

≫2

62

7【当

週】

09:0

0 公

社債

投資

家別

売買

高(3

月)

08:5

0 企

業向

けサ

ービス

価格

指数

(3月

)14

:00

日銀

金融

政策

決定

会合

09:0

0 日

銀金

融政

策決

定会

合08

:30

都区

部C

PI(3

月)

GW

10連

休ス

ター

ト(~

5/6 )

13:3

0 全

産業

活動

指数

(2月

)*10

:30

2 年利

付国

債入

札15

:30

黒田

日銀

総裁

記者

会見

08:3

0 完

全失

業率

(3月

)

14:0

0 全

国ス

ーハ

゚ー売

上高

(3月

)*日

銀「経

済・物

価情

勢の

展望

」08

:50

鉱工

業生

産< 速

報>(

3 月)

14:0

0 景

気動

向指

数〈改

定値

〉(2

月)*

08:5

0 商

業動

態統

計〈速

報〉(3

月)

統一

地方

選(後

半)

14:0

0 住

宅着工

件数

(3月

)

17:0

0 当

面の

長期

国債

等の

買入

れの

  

  

運営

につ

いて

23:0

0 米

中古

住宅

販売

(3月

)02

:00

米2 年

国債

入札

16:3

0 ド

イツ

IFO

景況

感指

数(4

月)

02:0

0 米

7 年国

債入

札21

:30

米G

DP 〈

速報

値〉(1

9/1Q

)

◎Ea

ster

Mon

day(

英、

独等

)00

:30

米2 年

変動

利付

国債

入札

02:0

0 米

5 年国

債入

28

29

30

12

34

◎昭

和の

日◎

休日

天皇

陛下

退位

スヘ

゚イン総

選挙

17:0

0 ユーロ圏

マネ- サプライ

(3月

)10

:00

中国

PMI 〈

統計

局〉(4

月)

18:0

0 ユ

ーロ圏

景況

感サ

ーヘ

゙イ(4

月)

21:3

0 米

個人

所得

・消

費支

出(3

月)

21:3

0 米

雇用

コス

ト指数

(19/

1 Q)

22:0

0 米

S&

P コア

ロジッ

クC

S住

宅価

格指

(2月

)

23:0

0 米

消費

者信

頼感

指数

(4月

)

FOM

C

18:0

0 ユ

ーロ圏

GD

P 〈暫

定速

報値

〉(1

9/1 Q

)

日月

火水

木金

- 90 -債券投資クォータリー 2019 年 3 月 1 日

注: 3 月 1 日現在。*は日時未定

出所:各種報道より三菱 UFJ モルガン・スタンレー証券作成

日 日

1 新天皇即位、改元 米FOMC 新車登録台数 米製造業ISM 新車登録台数 米製造業ISM 1米製造業ISM 日銀短観 中国製造業PMI(財新) 英BOE金融政策委員会

ユーロ圏マネーサプライ 中国製造業PMI(財新)

2 英BOE金融政策委員会 日銀議事要旨 米貿易収支 2中国製造業PMI(財新) 米雇用統計

3 憲法記念日 米雇用統計 法人企業統計(1-3月期) 米製造業ISM 米貿易収支 3ユーロ圏CPI(速報値) 新車登録台数 中国製造業PMI(財新)ADB総会(フィジー)

4 みどりの日 ユーロ圏CPI(速報値) 米Independence Day 4

5 こどもの日 米ベージュブック *景気動向指数 米雇用統計 5家計調査・消費動向指

6 振替休日 米貿易収支 家計調査・消費動向指 6ユーロ圏GDP(1Q)(詳細値)ECB理事会

7 新車登録台数 家計調査・消費動向指数米雇用統計 日銀「主な意見」 7景気動向指数 *景気動向指数

8 日銀議事要旨 中国貿易統計 G20財務相中銀総裁会議 国際収支 国際収支 中国貿易統計 8(~9日、福岡) 貸出・預金動向 貸出・預金動向

*機械受注

9 米PPI マネーストック マネーストック 米PPI 9米貿易収支 *第3次産業活動指数

GDP1次速報(4-6月期)

10 日銀「主な意見」 米CPI GDP2次速報(1-3月期) 中国貿易統計 企業物価指数 米FOMC議事録 10家計調査・消費動向指数 国際収支 *機械受注

貸出・預金動向

11 マネーストック 米PPI 米CPI 山の日 11

12 企業物価指数 米CPI *第3次産業活動指数 米PPI 振替休日 12機械受注 中国貿易統計*第3次産業活動指数

13 景気動向指数 企業物価指数 米CPI 13

14 国際収支 米鉱工業生産指数 ユーロ圏GDP(2Q)(速報値) 14貸出・預金動向 米小売売上高

15 マネーストック 米鉱工業生産指数 海の日 中国GDP(2Q) 米小売売上高 15*第3次産業活動指数 米小売売上高 米鉱工業生産指数

ユーロ圏GDP(1Q)(速報値)

16 企業物価指数 米住宅着工件数 米小売売上高 米住宅着工件数 16米鉱工業生産指数

17 ユーロ圏CPI(確報値) 米ベージュブック 17米ベージュブック 米住宅着工件数

ユーロ圏CPI(確報値)18 米FOMC 貿易統計 18

米住宅着工件数ユーロ圏CPI(確報値)

19 日銀金融政策決定会合 米FOMC CPI(全国) 貿易統計 ユーロ圏CPI(確報値) 19貿易統計

20 GDP1次速報(1-3月期) 公社債投資家別売買高 英BOE金融政策委員会 公社債投資家別売買高 20公社債投資家別売買高 日銀金融政策決定会合 米経常収支

EU首脳会談21 CPI(全国) ユーロ圏PMI(速報値) *参院選投開票日 米FOMC議事録 21

22 貿易統計 ASEAN首脳会議 公社債投資家別売買高 ユーロ圏PMI(速報値) 22機械受注

23 ユーロ圏PMI(速報値) CPI(全国) 米新築住宅販売 23欧州議会選(~26日)

米新築住宅販売

独Ifo景況感指数24 CPI(全国) 米耐久財受注 独Ifo景況感指数 ユーロ圏PMI(速報値) G7サミット 24

米新築住宅販売 (~26日、仏ビアリッツ)ユーロ圏マネーサプライ

25 企業向け 米新築住宅販売 企業向け 米耐久財受注 25サービス価格指数 サービス価格指数 ECB理事会

日銀議事要旨 独Ifo景況感指数26 *トランプ大統領来日 スペイン地方選 通常国会会期末 米耐久財受注 CPI(東京) 米GDP(2Q・速報値) 米耐久財受注 26

 (~28日) ベルギー総選挙 *家計調査・消費動向指数 独Ifo景況感指数

27 米 Memorial Day 資金循環(1-3月期) 米GDP(1Q・確報値) 企業向け 27サービス価格指数

28 企業向け ユーロ圏マネーサプライ 日銀「主な意見」 G20首脳会合 参議院議員の任期満了 ユーロ圏マネーサプライ 28サービス価格指数 労働力調査 (~29日、大阪)

鉱工業生産 ユーロ圏CPI(速報値)CPI(東京) 米個人所得・支出

29 日銀金融政策決定会合 米GDP(2Q・改定値) 29

30 米GDP(1Q・改定値) 中国PMI(統計局) 日銀金融政策決定会合 米FOMC 鉱工業生産 ユーロ圏CPI(速報値) 30日銀「展望レポート」 米個人所得・支出 労働力調査 米個人所得・支出

鉱工業生産 CPI(東京)

労働力調査31 鉱工業生産 米個人所得・支出 米FOMC 中国PMI(統計局) 31

労働力調査 中国PMI(統計局) 米雇用コスト指数CPI(東京) ユーロ圏GDP(2Q)

(暫定速報値)ユーロ圏CPI(速報値)

中国PMI(統計局)

5月 6月 7月 8月

- 91 - 債券投資クォータリー 2019 年 3 月 1 日

注: 3 月 1 日現在。*は日時未定

出所:各種報道より三菱 UFJ モルガン・スタンレー証券作成

日 日

1 日銀短観 米製造業ISM 労働力調査 米製造業ISM 1労働力調査 ユーロ圏CPI(速報値) 新車登録台数 中国製造業PMI(財新)新車登録台数 米雇用統計

消費税率の10%への引き上げ

2 法人企業統計(4-6月期) 米Labor Day 法人企業統計(7-9月期) 米製造業ISM 2新車登録台数 中国製造業PMI(財新) 新車登録台数 中国製造業PMI(財新)

3 米製造業ISM 文化の日 米冬時間入り 3

4 米貿易収支 米雇用統計 振替休日 4米ベージュブック 米貿易収支

5 米貿易収支 米貿易収支 5ユーロ圏GDP(3Q)(詳細値)

6 *景気動向指数 米雇用統計 ポルトガル総選挙 日銀議事要旨 家計調査・消費動向指 米雇用統計 6家計調査・消費動向指数 ユーロ圏GDP(2Q)(詳細値) *景気動向指数

7 *景気動向指数 英BOE金融政策委員会 7

8 中国貿易統計 国際収支 米PPI 家計調査・消費動向指数中国貿易統計 中国貿易統計 8家計調査・消費動向指 *景気動向指数

*機械受注

9 GDP2次速報(4-6月期) 米FOMC議事録 GDP2次速報(7-9月期) 9貸出・預金動向 貸出・預金動向国際収支 国際収支

10 マネーストック 貸出・預金動向 米CPI マネーストック 米FOMC 10企業物価指数*第3次産業活動指数

11 *機械受注 米PPI マネーストック 日銀「主な意見」 米Veterans' Day 企業物価指数 米CPI 11*機械受注 国際収支 *機械受注 米FOMC

貸出・預金動向12 企業物価指数 米CPI マネーストック *第3次産業活動指数 米PPI 12

*第3次産業活動指数 ECB理事会 ECB理事会EU首脳会議

13 米小売売上高 企業物価指数 米CPI 日銀短観 米小売売上高 13

14 体育の日 米Columbus Day GDP1次速報(7-9月期) ユーロ圏GDP(3Q) 14中国貿易統計 *第3次産業活動指数 (速報値)ユーロ圏CPI(速報値) 米PPI

15 米小売売上高 15米鉱工業生産指数ユーロ圏CPI(確報値)

16 敬老の日 米小売売上高 16米ベージュブックユーロ圏CPI(確報値)

17 米FOMC 米住宅着工件数 米鉱工業生産指数 17米鉱工業生産指数 米鉱工業生産指数 米住宅着工件数

EU首脳会議18 日銀金融政策決定会合 米FOMC CPI(全国) 中国GDP(3Q) 日銀金融政策決定会合 ユーロ圏CPI(確報値) 18

貿易統計 米住宅着工件数 IMF・世界総会 貿易統計 独Ifo景況感指数ユーロ圏CPI(確報値) G20財務相・中央銀行・

総裁会議19 日銀金融政策決定会合 英BOE金融政策委員会 米住宅着工件数 日銀金融政策決定会合 米経常収支 19

米経常収支 英BOE金融政策委員会20 公社債投資家別売買高 ラグビーW杯日本大会 公社債投資家別売買高 米FOMC議事録 公社債投資家別売買高 米個人所得・支出 20

CPI(全国) (~11月2日) 貿易統計 資金循環(7-9月期) 米GDP(3Q・確報値)資金循環(4-6月期) CPI(全国)

21 公社債投資家別売買高 カナダ総選挙 21貿易統計

22 即位の礼 CPI(全国) ユーロ圏PMI(速報値) 22

23 秋分の日 ユーロ圏PMI(速報値) 勤労感謝の日 米新築住宅販売 23

24 独Ifo景況感指数 米耐久財受注 日銀議事要旨 米耐久財受注 24米新築住宅販売

ユーロ圏PMI(速報値)ECB理事会

25 日銀議事要旨 米新築住宅販売 独Ifo景況感指数 独Ifo景況感指数 企業向け 欧米Christmas Day 25企業向け サービス価格指数サービス価格指数

26 米GDP(2Q・確報値) 企業向け 米新築住宅販売 26ユーロ圏マネーサプライ サービス価格指数

27 CPI(東京) 米耐久財受注 欧州冬時間入り 米ベージュブック 日銀「主な意見」 27米個人所得・支出 米個人所得・支出 鉱工業生産

米耐久財受注 労働力調査

米GDP(3Q・改定値) CPI(東京)

28 企業向け ユーロ圏マネーサプライ 米Thanksgiving Day 28サービス価格指数 ユーロ圏マネーサプライ

29 CPI(東京) 米FOMC 鉱工業生産 ユーロ圏CPI(速報値) 29労働力調査CPI(東京)

30 日銀「主な意見」 中国PMI(統計局) 日銀金融政策決定会合 米GDP(3Q・速報値) 中国PMI(統計局) 大納会 30鉱工業生産 中国製造業PMI(財新) 米FOMC

31 日銀金融政策決定会合 中国PMI(統計局) 中国PMI(統計局) 31鉱工業生産 ユーロ圏CPI(速報値)

日銀「展望レポー ト」 ユーロ圏GDP(3Q)

(暫定速報値)

米個人所得・支出

米雇用コスト指数

ドラギECB総裁任期満了

【月内】 【月内】*日銀「金融システムレポー ト」 *20年度政府予算案

*20年度国債発行計画*20年度政府経済見通し

10月 11月9月 12月

- 92 -

チャート集

債券投資クォータリー 2019 年 3 月 1 日

イールドカーブ

パーレート(5 年,10 年)

スプレッド(10 年-5 年,10 年-7 年)

イールドカーブの変化

パーレート(20 年,30 年)

スプレッド(20 年-10 年,30 年-20 年)

国債

出所:三菱 UFJ モルガン・スタンレー証券

-0.6

-0.3

0.0

0.3

0.6

0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20

複利(%)

残存年

19/2/22 19/2/28

-0.10

-0.05

0.00

0.05

0.10

0.15

0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20

複利変化(%)

残存年

1ヵ月前比 先週末比

-0.6

-0.4

-0.2

0.0

0.2

18/02/28 18/05/31 18/08/31 18/11/30 19/02/28

(%)

5年 10年

-0.2

0.2

0.6

1.0

1.4

18/02/28 18/05/31 18/08/31 18/11/30 19/02/28

(%)

20年 30年

0.0

0.1

0.2

0.3

18/02/28 18/05/31 18/08/31 18/11/30 19/02/28

(%)

10年-5年 10年-7年

-0.2

0.0

0.2

0.4

0.6

0.8

1.0

18/02/28 18/05/31 18/08/31 18/11/30 19/02/28

(%)

20年-10年 30年-20年

- 93 - 債券投資クォータリー 2019 年 3 月 1 日

曲率(5 年-7 年-10 年,10 年-20 年-30 年)

クッション(3 ヵ月保有,ローリング基準)

15 年変動利付国債(終値-理論値)

曲率(5 年-10 年-20 年,7 年-10 年-20 年)

インプライドフォワードレート(6M)

ブレークイーブンインフレ率

国債(続き)

出所:三菱 UFJ モルガン・スタンレー証券

-0.2

-0.1

0.0

0.1

0.2

0.3

0.4

18/02/28 18/05/31 18/08/31 18/11/30 19/02/28

(%)

5年-7年-10年 10年-20年-30年

-0.01

0.00

0.01

0.02

0.03

2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20

(%)

残存年

19/2/22 19/2/28

-0.4

-0.2

0.0

0.2

0.4

0.6

0 2 4 6 8 10

(%)

10年国債(19/2/22) 10年国債(19/2/28)

0

1

2

3

18/02/28 18/05/31 18/08/31 18/11/30 19/02/28

(円)

0.0

0.1

0.2

0.3

0.4

0.5

0.6

0.7

0.8

18/02/28 18/05/31 18/08/31 18/11/30 19/02/28

(%)

#22

#19

#21

#23

#20

-0.20

-0.15

-0.10

-0.05

0.00

0.05

0.10

18/02/28 18/05/31 18/08/31 18/11/30 19/02/28

(%)

5年-10年-20年 7年-10年-20年

- 94 -債券投資クォータリー2019 年 3 月 1 日

フェアバリューからのかい離(10 年債中期セクター)

債券先物 20 日ヒストリカル/インプライド

スワップスプレッド(スワップ-国債パーレート)

フェアバリューからのかい離(10 年債長期セクター)

残存年毎の 20 日日次金利変化幅の標準偏差

スワップスプレッドの変化

国債(続き)

ボラティリティ

出所:三菱 UFJ モルガン・スタンレー証券

スワップスプレッド

-3

-2

-1

0

1

2

3

-3

-2

-1

0

1

2

3

#321

#323

#325

#327

#329

#331

#333

#335

#337

#339

#341

割高

割安

バーチャート:20日平均±1.8σ 19/2/28

(bp) (bp)

-3

-2

-1

0

1

2

3

-3

-2

-1

0

1

2

3

#34

2

#34

4

#34

6

#34

8

#35

0

#35

2

割高

割安

バーチャート:20日平均±1.8σ 19/2/28

(bp) (bp)

0

1

2

3

4

5

6

18/02/28 18/05/31 18/08/31 18/11/30 19/02/28

(%)

20日HV 四半期物IV

0

1

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20

(bp/日)

残存年19/1/28 19/2/28

-0.1

0.0

0.1

0.2

0.3

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20

(%)

残存年

6M最大 75% 50% 25% 6M最小 19/2/28

-0.04

-0.02

0.00

0.02

0.04

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20

(%)

残存年先週末比 先々週末比

- 95 - 債券投資クォータリー2019 年 3 月 1 日

■円 債 市 場 分 析 チームのレポート

お知らせ

タ イ ト ル 媒 体

四半期

2・5・8・11月の終週末

毎月初月

毎月 終週末(クォータリー時を除く)

毎週末(月 終週末を除く)

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synerGy(掲示板)

冊 子

***

向こう1ヵ月の内外金融経済見通し債券・金融・経済トピック分析過去1カ月のマーケット・ダイアリーほか

***

内 容発行時期(原則)

債券市場見通し相場材料債券先物チャート

***

毎朝7:30頃

IFIS

Bloomberg

外部メール

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synerGy(掲示板)日

IFIS

synerGy(掲示板)

イールドカーブ変化年限間/バタフライ/スワップ・スプレッドほか

**毎夕17:15頃まで

債券投資デイリー

マーケット・ダイアリー

債券投資マンスリー(ウィークリー:シナリオ特集号)

内外相場動向経済統計、財政・金融政策、要人発言などの相場材料の全記録

**

債券投資クォータリー(ウィークリー:シナリオ特集号)

債券投資ウィークリー

イールドカーブ・グラフ集

長期金利シナリオ、債券トピック分析景気・物価トピック分析ポリシーウォッチ債券需給分析

向こう2~3年の内外金融経済展望債券・金融・経済トピック分析過去1カ月のマーケット・ダイアリーほか

IFIS

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冊 子

****

タ イ ト ル 媒 体

* 債券市場のトピック分析

 *債券需給ナビゲーター

債券需給・投資家動向に関するトピック分析

 *

随 時

JGB羅針盤

金融政策ナビゲーター

ファンダメンタルズ・ナビゲーター

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住宅金融支援機構RMBSを含む国内市場と海外証券化商品の動向市場・商品

住宅金融支援機構RMBSに関するレポート*

 *

主要経済指標に対する速報コメント、景気・物価に関するトピック分析

*IFIS

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毎月

Mortgage Market Comment

ストラクチャードファイナンス・マンスリー

発行時期

日銀金融政策に関するトピック分析

内 容

- 96 -債券投資クォータリー 2019 年 3 月 1 日

■ 外 債 市 場 ・外 国 為 替 市 場 分 析 チームのレポート

タイトル 媒 体 内 容

米欧債券市場と外為市場の翌週の「プレビュー」「米国債投資の視点」、「欧州債投資の視点」、「外貨投資の視点」の再掲載・まとめを中心とした「トピックス」「金融市場動向」毎月末は「見通し特集」を掲載

*

*

*

外債投資ウィークリー 週 毎週末

IFISBloomberg

QUICK

外部メール

ホームページsynerGy(掲示板)

発行時期(原則)

タイトル 媒 体

外貨投資の視点 *時宜に応じた為替市場の動向分析、旬の注目材料の解説や予測などを提供

欧州債投資の視点 随 時

IFISBloomberg

QUICK

外部メール

ホームページsynerGy(掲示板)

*

米国債投資の視点*

欧州その他の経済指標、金融・経済政策イベント、金融市場動向等に関する速報レポート

米国の金融政策、主要経済統計、重要イベントに関する見通し・結果速報

発行時期(原則) 内 容

※ 各レポートのご要望、e メール/郵送先の変更等に関しましては、弊社営業担当者にお申し付け下さい

- 97 - 債券投資クォータリー2019 年 3 月 1 日

■ W e b サ イ ト

URL(日本語版) http://www.sc.mufg.jp/wholesale/ws_report/index.html

- 98 -債券投資クォータリー 2019 年 3 月 1 日

■ B l o o m b e r g リ サ ー チ ペ ー ジ

ティッカー(日本語版) M U F I

ティッカー(英語版) M U F E

債券投資クォータリー 2019 年 3 月 1 日

Appendix A

アナリストによる証明

本レポート表紙に記載されたアナリストは、本レポートで述べられている内容(複数のアナリストが関与している場合は、それぞれの

アナリストが本レポートにおいて分析している銘柄にかかる内容)が、分析対象銘柄の発行企業及びその証券に関するアナリスト個人

の見解を正確に反映したものであることをここに証明いたします。また、当該アナリストは、過去・現在・将来にわたり、本レポート

内で特定の判断もしくは見解を表明する見返りとして、直接又は間接的に報酬を一切受領しておらず、受領する予定もないことをここ

に証明いたします。

開示事項

三菱 UFJ モルガン・スタンレー証券株式会社(以下「MUMSS」)は、MUMSS のリサーチ部門・他部門間の活動及び/又は情報の伝

達、並びにリサーチレポート作成に関与する社員の通信・個人証券口座を監視するための適切な基本方針と手順等、組織上・管理上の

制度を整備しています。

MUMSS の方針では、アナリスト、アナリスト監督下の社員、及びそれらの家族は、当該アナリストの担当カバレッジに属するいずれ

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ート作成に関与し未公表レポートの公表日時・内容を知っている者は、当該リサーチレポートの受領対象者が当該リサーチレポートの

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を禁じられています。

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社三菱 UFJ フィナンシャル・グループ(以下「MUFG」)の子会社等であり、MUMSS の方針に基づき、MUFG については投資判断の対象

としておりません。

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報を含むことを意図したものではありません。また、MUMSS 及びその関連会社等は本レポートに掲載された情報の正確性・信頼性・完

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せん。本レポートにて言及されている投資やサービスはお客様に適切なものであるとは限りません。お客様は、独自に特定の投資及び戦

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金融サービスを提供しもしくは同サービスの提供を図ることがあります。

MUMSS の役員(以下、会社法(平成 17 年法律第 86 号)に規定する取締役、執行役、又は監査役又はこれらに準ずる者をいう)は、

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債券投資クォータリー2019 年 3 月 1 日

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本レポートの利用に際してはお客様ご自身でご判断くださいますようお願い申し上げます。 過去のパフォーマンスは将来のパフォーマンスを示唆し、又は保証するものではありません。特に記載のない限り、将来のパフォーマン

スの予想はアナリストが適切と判断した材料に基づくアナリストの予想であり、実際のパフォーマンスとは異なることがあります。従っ

て、将来のパフォーマンスについては明示又は黙示を問わずこれを保証するものではありません。 本レポートの利用に際しては、上記の一つ又は全ての要因あるいはその他の要因により現実的もしくは潜在的な利益相反が起こりうるこ

とをご認識ください。なお、MUMSS は、会社法第 135 条の規定により自己の勘定で MUFG 株式の売買を行うことを禁止されています。

本レポートで言及されている証券等は、いかなる地域においても、またいかなる投資家層に対しても販売可能とは限りません。本レポー

トの配布及び使用は、レポートの配布・発行・入手可能性・使用が法令又は規則に反する、地方・州・国やその他地域の市民・国民、居

住者又はこれらの地域に所在する者もしくは法人を、対象とするものではありません。

英国及び欧州経済地域: 本レポートが英国において配布される場合、本レポートは MUFG のグループ会社である MUFG Securities EMEA plc (以下「MUS(EMEA)」。電話番号:+44-207-628-5555)により配布されます。MUS(EMEA)は、英国で登録されており、Prudential Regulation Authority(プルーデンス規制機構、「PRA」)の認可及び Financial Conduct Authority(金融行動監視機構、以下「FCA」)と PRA の規制を

受けています(FS Registration Number 124512)。本レポートは、professional client(プロ投資家)又は eligible counterparty(適格カウン

ターパーティー)向けに作成されたものであり、FCA 規則に定義された retail clients(リテール投資家)を対象としたものではありませ

んので、誤解を回避するため、同定義に該当する顧客に交付されてはならないものです。MUS(EMEA)は、本レポートを英国以外の欧州

連合加盟国においても professional investors(若しくはこれと同等の投資家)に配布する場合があります。本レポートは、MUS(EMEA)の組織上・管理上の利益相反管理制度に基づいて作成されています。同制度には投資リサーチに関わる利益相反を回避する目的で、情報

の遮断や個人的な取引・勧誘の制限等のガイドラインが含まれています。本レポートはルクセンブルク向けに配布することを意図したも

のではありません。

米国: 本レポートは Mitsubishi UFJ Morgan Stanley Securities Co., Ltd. (以下「MUMSS」)によって作成されたものです。MUMSS は日本

で証券業務の認可を取得しております。本レポートが米国において配布される場合、本レポートは MUFG のグループ会社である MUFG Securities Americas Inc. (以下「MUSA」。電話番号:+1-212-405-7000) により配布されます。MUSA は、United States Securities and Exchange Commission(米国証券取引委員会)に登録された broker-dealer(ブローカー・ディーラー)であり、Financial Industry Regulatory Authority(金融取引業規制機構、「FINRA」)による規制を受けています(SEC# 8-43026; CRD# 19685)。本レポートが MUSA の米国外

の関連会社等により米国内へ配布される場合、本レポートの配布対象者は、1934 年米国証券取引所法の規則 15a-6 に基づく major U.S. institutional investors(主要米国機関投資家)に限定されております。本レポートは証券の売買及びその他金融商品への投資等の勧誘を目

的としたものではありません。また、いかなる投資・取引についてもいかなる約束をもするものでもありません。本レポートが米国で大

手機関投資家以外の個人に配布される限りにおいて、MUSA は以下の条件のもとでその内容について責任を負っています。本レポートの

執筆者であるアナリストは、リサーチアナリストとして FINRA への登録ないし FINRA の資格取得を行っておらず、MUSA の関係者では

ない場合があります。したがって、調査対象企業とのコミュニケーション、パブリックアピアランス、アナリスト本人の売買口座に関す

る FINRA の規制に該当しない場合があります。FLOES は MUSA の登録商標です。 IRS Circular 230 Disclosure(米国内国歳入庁 回示 230 に基づく開示):MUSA は税金に関するアドバイスの提供は行っておりません。

本レポート内(添付文書を含む)の税金に関する記述は MUSA 及び関連会社以外の個人・法人が本レポートにおいて研究する事項に関す

る勧誘・推奨を行う目的、又は米国納税義務違反による処罰を回避する目的で使用することを意図したものではなく、これらを目的とし

た使用を認めておりません。

日本: 本レポートが日本において配布される場合、その配布は MUFG のグループ会社であり、金融庁に登録された金融商品取引業者であ

る MUMSS(電話番号:03-6742-4550)が行います。

シンガポール: 本レポートがシンガポールにおいて配布される場合、本レポートは MUFG のグループ会社である MUFG Securities Asia (Singapore) Limited (以下「MUS(SPR)」。電話番号:+65-6232-7784)とのアレンジに基づき配布されます。MUS(SPR)はシンガポール政

府の承認を受けた merchant bank であり、Monetary Authority of Singapore(シンガポール金融管理局)の規制を受けています。本レポー

トの配布対象者は、Financial Advisers Regulation の Regulation 2 に規定される institutional investors、 accredited investors、 expert investors に限定されます。本レポートは、これらの投資家のみによる使用を目的としており、それ以外の者に対して配布、転送、交付、

頒布されてはなりません。本レポートが accredited investors 及び expert investors に配布される場合、MUS(SPR)は Financial Advisers Act の次の事項を含む一定の事項の遵守義務を免除されます。第 25 条:一定の投資商品に関してファイナンシャル・アドバイザーが全て

の重要情報を開示する義務、第 27 条:ファイナンシャル・アドバイザーが合理的な根拠に基づいて投資の推奨を行う義務、第 36 条:フ

ァイナンシャル・アドバイザーが投資の推奨を行う証券に対して保有する権利等について開示する義務。本レポートを受領されたお客様

で、本レポートから又は本レポートに関連して生じた問題にお気づきの方は、MUS(SPR)にご連絡ください。

香港: 本レポートが香港において配布される場合、本レポートは MUFG のグループ会社である MUFG Securities Asia Limited(以下

「MUS(ASIA)」。電話番号:+852-2860-1500)とのアレンジに基づき配布されます。MUS(ASIA)は Hong Kong Securities and Futures Ordinance に基づいた認可、及び Securities and Futures Commission(香港証券先物取引委員会;Central Entity Number AAA889)の規

制を受けています。本レポートは Securities and Futures Ordinance により定義される professional investor を配布対象として作成された

ものであり、この定義に該当しない顧客に配布されてはならないものです。

その他の地域: 本レポートがオーストラリアにおいて配布される場合、MUS(ASIA)又は MUS(SPR)により配布されています。MUS(ASIA)は Australian Securities and Investment Commission (ASIC) Class Order Exemption CO 03/1103 に基づき、Corporations Act 2001 が定め

債券投資クォータリー 2019 年 3 月 1 日

る金融サービスの提供者によるオーストラリア金融業免許の保有義務を免除されています。MUS(SPR)はASIC Class Order Exemption CO 03/1102 により同様に義務を免除されています。本レポートはオーストラリアの Corporations Act 2001 に定義される wholesale client のみを配布対象としております。本レポートがカナダにおいて配布される場合、本レポートは MUS(EMEA)又は MUSA により配布されます。

MUSA は international dealer exemption の措置により次の各州、準州において金融取引業者としての登録を免除されています:アルバー

タ州、ケベック州、オンタリオ州、ブリティッシュ・コロンビア州、マニトバ州、ニュー・ブランズウィック州、ニューファンドランド・

ラブラドール州、ノースウエスト準州、ノバ・スコシア州、ヌナブト準州、プリンス・エドワード・アイランド州、サスカチュワン州、

ユーコン準州。 MUS(EMEA) は international dealer exemption の措置により次の各州において金融取引業者としての登録を免除されて

います:アルバータ州、ケベック州、オンタリオ州、ブリティッシュ・コロンビア州、マニトバ州。本レポートはカナダにおける National Instrument 31-103 によって定義された permitted client のみを配布対象としております。本レポートに含まれる情報は、いかなる場合に

おいても、カナダの州、準州において、目論見書、広告、公募又は特定の証券の売買の勧誘若しくは申込みを目的としたものではありま

せん。また、いかなる場合においても、本レポートに含まれる情報は、カナダの州、準州において投資上のアドバイスとして解釈される

ものではなく、また顧客のニーズを考慮して作成されているものではありません。

又は本レポートは、インドネシアにおいて複製・発行・配布されてはなりません。また中国(中華人民共和国「PRC」を意味し、PRC の

香港特別行政区・マカオ特別行政区、及び台湾を除く)において、複製・発行・配布されてはなりません(ただし、PRC の適用法令に準

拠する場合を除きます)。

本レポートは、米国、日本やその他の証券規制法規により配付を制限されている投資家、および個人投資家を対象にしたものではありま

せん。

債券取引には別途手数料はかかりません。手数料相当額はお客様にご提示申し上げる価格に含まれております。Copyright © Mitsubishi UFJ Morgan Stanley Securities Co., Ltd. All rights reserved. 本レポートは MUMSS の著作物であり、著作権法により保護されております。MUMSS の書面による事前の承諾なく、本レポートの全部

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業協会

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債券投資クォータリー

二〇一九年

三月