進むタブレット端末の利用と 学習におけるメディア利用の可能性 · 2019....

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32 JUNE 2019 3. NHK for School の利用 (1)教師の属性別にみた NHK for School の利用 (2)担当学年別にみたNHK for School 利用番組 (3)NHK for School の認知・利用経験の状況 (4)ウェブサイト「NHK for School」の機能の利用 (5)NHK 教育サービスの利用 4. メディア教材の利用場面と重視する効果 5. 学習指導要領の改訂とメディア利用 (1)「特別の教科 道徳」の授業で利用している教材 (2)「外国語活動・外国語」の授業で 利用している教材 (3)「プログラミング教育」の授業の実施 6. 教師が今後利用したいメディア おわりに はじめに:調査の背景 1. 教師をとりまくメディア環境 (1)教師の基本プロフィール (2)仕事・授業外での利用機器 2. 授業における教師のメディア利用 (1)授業で利用できるメディア環境と 教師の利用頻度 (2)授業で児童に利用させているメディア機器 (3)授業における児童のタブレット端末の利用 (4)学年別にみたメディア教材の利用 (5)教科別にみたメディア教材の利用 進むタブレット端末の利用と 学習におけるメディア利用の可能性 ~2018年度「NHK小学校教師のメディア利用と意識に関する調査」から~ メディア研究部 宇治橋祐之 / 渡辺誓司 NHK 放送文化研究所では,全国の学校現場におけるメディア環境の現状を把握するとともに,放送・ウェブ・ イベントなど NHK 教育サービス利用の全体像を調べるために,「教師のメディア利用と意識に関する調査」を 2013 年度から実施している。この調査は,学校を単位として定期的に行ってきた「学校放送利用状況調査」(1950 ~ 2012 年)に代わり,教師個人を対象としている。2018 年度は,2013・2014・2016 年度に続き,4 回目の小学校教 師個人(1 ~ 6 年生の担任)を対象とした調査を実施した。 調査結果から,テレビ受像機やパソコンなどのメディア機器を教師が利用できる環境に大きな変化はみられな かったが,タブレット端末を利用できる環境にある教師が大きく増えるとともに,児童の1 人 1台での利用も増えて いた。また,今回から調査項目に加えた「ラジオ受信機・CD ラジカセ」の利用が多いことが明らかになった。そ の一方で,教室のインターネット接続は無線接続が増えているが,動画を問題なく再生できる環境にある教師は 38% にとどまり,依然として課題となっている。 こうした機器で提示するメディア教材の利用は全体として増え,「NHK for School 教師利用率」は 67%,「指導 者用のデジタル教科書」の利用は 65% だった。 2020 年度全面実施の新学習指導要領で重視されている項目でみると,「外国語活動・外国語」では文部科学省 が作成・配布している教材やデジタル教材の利用が多い一方,「特別の教科 道徳」では教科書が導入されたこと により,NHK for School などのメディア教材の利用は少ない。また「プログラミング教育」を先行的に実施してい る教師は 14%であった。 教師が提示するメディアに加えて,児童が 1 人 1台のタブレット端末などを使い,新学習指導要領で重視される 「主体的・対話的で深い学び」を実現するために,メディア環境の整備とメディア教材の提供がますます求められる。 〈目次〉

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Page 1: 進むタブレット端末の利用と 学習におけるメディア利用の可能性 · 2019. 6. 30. · イベントなどnhk教育サービス利用の全体像を調べるために,「教師のメディア利用と意識に関する調査」を2013

32 JUNE 2019

3. NHK for Schoolの利用(1)教師の属性別にみたNHK for School の利用(2)担当学年別にみたNHK for School利用番組(3)NHK for Schoolの認知・利用経験の状況(4)ウェブサイト「NHK for School」の機能の利用(5)NHK教育サービスの利用

4. メディア教材の利用場面と重視する効果

5.学習指導要領の改訂とメディア利用 (1)「特別の教科 道徳」の授業で利用している教材(2)「外国語活動・外国語」の授業で  利用している教材

(3)「プログラミング教育」の授業の実施

6. 教師が今後利用したいメディア

おわりに

はじめに:調査の背景

1.教師をとりまくメディア環境(1)教師の基本プロフィール(2)仕事・授業外での利用機器

2. 授業における教師のメディア利用(1)授業で利用できるメディア環境と

教師の利用頻度(2)授業で児童に利用させているメディア機器(3)授業における児童のタブレット端末の利用(4)学年別にみたメディア教材の利用 (5)教科別にみたメディア教材の利用

進むタブレット端末の利用と学習におけるメディア利用の可能性~2018年度「NHK小学校教師のメディア利用と意識に関する調査」から~

メディア研究部 宇治橋祐之 / 渡辺誓司

NHK放送文化研究所では,全国の学校現場におけるメディア環境の現状を把握するとともに,放送・ウェブ・イベントなど NHK教育サービス利用の全体像を調べるために,「教師のメディア利用と意識に関する調査」を2013年度から実施している。この調査は,学校を単位として定期的に行ってきた「学校放送利用状況調査」(1950 ~2012年)に代わり,教師個人を対象としている。2018 年度は,2013・2014・2016 年度に続き,4回目の小学校教師個人(1 ~ 6 年生の担任)を対象とした調査を実施した。

調査結果から,テレビ受像機やパソコンなどのメディア機器を教師が利用できる環境に大きな変化はみられなかったが,タブレット端末を利用できる環境にある教師が大きく増えるとともに,児童の1人1台での利用も増えていた。また,今回から調査項目に加えた「ラジオ受信機・CDラジカセ」の利用が多いことが明らかになった。その一方で,教室のインターネット接続は無線接続が増えているが,動画を問題なく再生できる環境にある教師は38%にとどまり,依然として課題となっている。

こうした機器で提示するメディア教材の利用は全体として増え,「NHK for School教師利用率」は67%,「指導者用のデジタル教科書」の利用は65%だった。

2020 年度全面実施の新学習指導要領で重視されている項目でみると,「外国語活動・外国語」では文部科学省が作成・配布している教材やデジタル教材の利用が多い一方,「特別の教科 道徳」では教科書が導入されたことにより,NHK for Schoolなどのメディア教材の利用は少ない。また「プログラミング教育」を先行的に実施している教師は14%であった。

教師が提示するメディアに加えて,児童が1人1台のタブレット端末などを使い,新学習指導要領で重視される「主体的・対話的で深い学び」を実現するために,メディア環境の整備とメディア教材の提供がますます求められる。

〈目次〉

Page 2: 進むタブレット端末の利用と 学習におけるメディア利用の可能性 · 2019. 6. 30. · イベントなどnhk教育サービス利用の全体像を調べるために,「教師のメディア利用と意識に関する調査」を2013

33JUNE 2019

表 1 2018 年度調査の概要

調査実施期間: 2018(平成 30)年 10 月 1 日(月)~ 12 月 21 日(金)調 査 対 象: 全国の小学校(休校を除く2万143校) から系統抽出した 1,204 校のクラス 担任教師計 3,612 名【学校の抽出は, 『全国学校総覧2018年版』(原書房刊) を用いて実施】

※インターバルを 33 として,連続した 2つの小学校を 602 組,計 1,204 校を抽出した。

調 査 方 法: 学校長宛ての調査協力依頼,無記名 回答。郵送法で督促 2 回。 対象校の半数(602 校)には,1・3・ 5 年生担任教師各 1 名,残り半数 (602 校)には,2・4・6 年生担任教 師の回答を依頼した。有効回答数(率) 標本数 有効

回答数有効

回答率1 年生担任教師 602 391 65%2 年生担任教師 602 432 72 3 年生担任教師 602 385 64 4 年生担任教師 602 413 69 5 年生担任教師 602 393 65 6 年生担任教師 602 426 71 教師全体(6 学年計) 3,612 2,440 68

はじめに : 調査の背景

NHKでは,公共放送の重要な使命の1つとして,ラジオの時代からテレビ,そしてインターネットが普及した現在にいたるまで,全国の小学校,中学校,高等学校や幼稚園・保育所,特別支援学校に向けて,学校放送番組を中心とする教育サービスを提供している。

NHK放送文化研究所では,こうした学校向け教育サービス全体を検討する際の基礎資料とする目的で,1950(昭和25)年から2012(平成24)年まで60年余,継続的に「学校放送利用状況調査」を実施し,新たな時代の教育サービスへの提言を続けてきた 1)。

しかし,教室にさまざまなメディア機器が導入され,授業で利用できるメディア教材も多種多様になる中,2013年度から,調査対象を「学校」から「教師個人」に変更し,各教師(クラス)単位でのメディア環境や利用の実態,教師のメディア観や教育観を調べ,デジタル化の進展等によって変容する教育現場の実態とニーズの詳細な把握を図る「教師のメディア利用と意識に関する調査」を実施している。

2014年度から原則として偶数年に小学校教師,奇数年に幼稚園や中学校・高校教師を対象として調査を実施し,結果を公開してきた 2)。2018年度は,2013・2014・2016年度に続いて小学校教師個人(1 ~ 6年生の担任)を対象とした調査を実施した。

2020年度から全面実施される小学校の新しい学習指導要領(2017年3月公示)では,「生きる力」の理念の具体化として,「何を学ぶか」

「どのように学ぶか(主体的・対話的で深い学び)」「何ができるようになるのか(資質・能力の三つの柱)」が提示された。「何を学ぶか」で

は,「外国語教育の教科化」「プログラミング教育の導入」が行われ,すでに2018年度から実施されている「道徳の教科化」と合わせて,改訂の中心となっている。

また,2018年11月に文部科学大臣名で発表された「新時代の学びを支える先端技術のフル活用に向けて~柴山・学びの革新プラン~」3)では,「遠隔教育の推進による先進的な教育の実現」「先端技術の導入による教師の授業支援」

「先端技術の活用のための環境整備」が政策の柱とされ,学校のICT環境の整備促進を重視している。

こうした時代状況のもと,調査にあたっては新学習指導要領の実施をふまえた質問項目を追加し,2018年度時点の小学校教師の状況を的確に把握することを目指した。また,2016年度と比較可能な項目では変化を読み取ることに努めた。調査の概要は表1のとおりである。

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34 JUNE 2019

1. 教師をとりまく メディア環境

(1) 教師の基本プロフィール

今回の調査の回答者となった教師の男女・年代分布は図1に示すとおりである。全体の男女比は,男性43%,女性57%で女性教師の割合が高い 4)

が,学年ごとにみると男女比はかなり異なる。1年生担任では男性19%,女性81%で圧倒的に女性教師が多いが,学年が上がるにつれて男性教師の比率が高くなり,5年生担任(男性55%,女性45%),6年生担任(男性63%,女性37%)では男性教師のほうが多くなる。回答した教師全体の年代分布をみると,20代は20%,30代は28%,40代は25%,50代は26%であった(本文中では「50 代以上」を「50

代」と記す)。

(2) 仕事・授業外での利用機器

次に教師の日常生活でのメディア利用の状況を表2に示す。教師全体でみると,日常生活

図 1 担当学年別にみた教師の男女・年代分布

では,多くの教師がスマートフォン(82%)やパソコン(81%)を利用している。スマートフォンの利用が増えて,利用が減少したパソコンと並んだ。パソコンは男女別,年代別にみても全体的に利用の減少がみられるが,スマートフォンの利用は男女ともに増え,また40代と50代でも利用が増えた。特に50代の伸びが大きい。2016年度の調査で利用が増えたタブレット端

末は,今回の調査では変化がみられなかった。しかし,後述のように授業におけるタブレット端末の利用は大きく伸びているので

(36ページ),教室のメディア環境の整備が進んだことで教師がタブレット端末に触れる機会は増えていると考えられる。

また,2018年度調査において 新たに「SNS(LINE,Facebook, Twitterなど)の利用」を調査項目に加えたところ,ほぼ半数の

表 2 教師のふだんの利用機器(仕事・授業外)(複数回答)

全体 男 女 別 年 代 別男性 女性 20 代 30 代 40 代 50 代以上

(n=2,440)(n=1,037)(n=1,385)(n=476)(n=673)(n=614)(n=644)

1. 携帯電話 24 (33) 23 (30) 25 (35) 18 (20) 20 (26) 25 (31) 34 (49)

2. スマートフォン 82 (74)83 (77) 81 (71) 89 (88) 90 (86)81 (74)70 (54)

3. タブレット端末(iPad など) 33 (31) 39 (37) 29 (27) 34 (31) 37 (33) 34 (34) 29 (25)

4. パソコン 81 (86) 82 (87) 80 (86) 76 (85) 80 (85) 85 (87) 84 (88)

5. 携帯デジタルプレーヤー(iPod など) 13 (16) 15 (19) 12 (14) 27 (35) 13 (20) 7 (10) 9 (8)

6. SNS(LINE,Facebook,Twitter など)の利用 51 52 51 74 60 44 33

注1:(  )内は2016年度の値である。ただし,「6. SNS(LINE,Facebook,Twitterなど)の利用」は,2018年度調査の新規項目である。

注2: ゴシック体は2016年度に比べて有意に増加したことを,イタリック体は減少したことを示している(95%水準)。

 (%)

男性 女性

1年生担任(n=391)

2年生担任(n=432)

3年生担任(n=385)

4年生担任(n=413)

5年生担任(n=393)

6年生担任(n=426)

20代

40代 50代以上無回答

30代 20代 30代

40代

50代以上

74 1513%3 4 17 136

109 14137 6 16 226

1310 11 1310 11 16 215

1210 10 1312 9 15 315

2112 10814 7 14 212

2811 6 815 8 14 19

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35JUNE 2019

図 2 授業におけるメディア利用頻度

注1: グラフ右の「利用あり」は,「ほとんど毎日」から「年に数回」までの合計,「利用環境あり」は,「担任クラスの   授業に利用できる機器はあるが利用していない」まで含めた合計。注2:( )内は2016年度の値である。ただし,「ラジオ受信機・CDラジカセ」は2018年度調査の新規項目である。注3: ゴシック体は2016年度に比べて有意に増加したことを,イタリック体は減少したことを示している(95%水準)。

(100%=全教師)

教師が利用していた。年代差が大きく,20代では74%が利用しているが年代が上がるにつれて減少し,50代の利用は33%だった。調査では仕事や授業以外の日常生活での利用に限定して尋ねたため,例えば教師同士の情報交換や教育情報の取得など仕事においてもSNSが利用されているかどうかは不明だが,教師の情報ツールの1つになっていることがうかがえる。

2. 授業における教師のメディア利用

前章のとおり,教師は日常生活ではパソコンやスマートフォンをよく利用しているが,授業ではどうだろうか。担任しているクラスがどのようなメディア環境にあり,どのようなメディア教材

を使って授業をしているのかをみていく。

(1) 授業で利用できるメディア環境と 教師の利用頻度

まず,図2に示したように「テレビ受像機」や「パソコン」などのメディア機器と,こうした機器を活用するのに重要なインターネット接続などの利用環境についてみる。グラフの右側に数字で示した,該当するメディア機器を教師が利用できる環境にあることを表す「利用環境あり」は,「ラジオ受信機・CDラジカセ」と「デジタルカメラ・デジタルビデオカメラ」がともに89%で多く,以下「パソコン」(88%),「インターネット」(87%),「実物投影機」(82%),「テレビ受像機」(77%),「プロジェクター」(72%)と続き,

66%

利用あり

注1

83

51

34

65

84

77%(64) (77)

(59) (74)

(83) (89)

(33) (45)

(56) (78)

(31) (49)

(66) (83)

利用環境あり

6952

51 72

89

88

63

49

82

89

84

79

(85) (91)

(77) (86)87

担任クラスの授業に利用できる該当機器がない

無回答機器はあるが利用していない

年に数回

週に3~4回程度

月に1~3回程度

ほとんど毎日週に1~2回程度

デジタルカメラ・デジタルビデオカメラ

ラジオ受信機・CDラジカセ

実物投影機 (OHC,教材提示装置,書画カメラなど)

電子黒板

プロジェクター

タブレット端末

インターネット

パソコン

録画再生機

テレビ受像機 18% 9 13 12 15 11 15 8

20 10 18 20 16 5 76

13 14 18 24 15 5 64

12 9 17 25 16 8 76

48 9 12 5 778 5

17 9 8 13 18 17 711

9 6 151210 13 829

9 3 2685 21 820

11 3 156 97 844

11 4 12 34 17 22 9

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表 3 教師が担当クラスの授業で利用できる   インターネットの環境

インターネットの接続形態有線で接続している 45 (57)無線で接続している 42 (31)有線と無線で接続している 10 (9)無回答 3 (3)

動画視聴のスムーズさ問題なく動画を視聴できる 38 (35)時々動画をスムーズに視聴できないことがある 48 (47)動画をスムーズに視聴できないことが多い 12 (15)無回答 3 (3)

(100%=インターネット接続環境がある教師)

(%)

(%)

7割を超える教師がこれら7項目を授業で利用できる環境にあった。2016年度と比較すると,

「タブレット端末」5)を利用できる環境にある教師の割合が大幅に増加した(45%→ 63%)のが注目され,利用に向けた整備が進んだことがうかがえる。

インターネットについて,授業で利用可能な接続環境がある教師にその接続形態と動画の視聴環境について尋ねたところ(表3),2016年度と比較すると,接続形態では「有線」

(57%→45%)が減少した一方で「無線」(31%→42%)が増加し,「有線と無線」の両方の接続は変化がなかった。教師が1台のパソコンを操作して授業をする場合には有線接続で問題ないが,教師や児童がそれぞれにタブレット端末を利用するようになると無線接続の環境が必要で,利用するタブレット端末の台数が増えると無線接続が増えることが予想される。一方,動画の視聴環境については,「問題なく動画を視聴できる」教師の割合が38%で2016年度から変化がみられなかった。機器がインターネットに接続されていても,スムーズに動画を視聴できる環境にある教師は一部にとどまっている。

次に,授業におけるメディア機器とインター

ネットの利用の有無をみる。図2の「ほとんど毎日」から「年に数回」までの利用を合計した

「利用あり」の教師の割合をみると,「ラジオ受信機・CDラジカセ」と「デジタルカメラ・デジタルビデオカメラ」がともに84%で多く,以下,

「パソコン」(83%),「インターネット」(79%),「テレビ受像機」(66%),「実物投影機」(65%)と続き,これらを6割を超える教師が利用していた。「タブレット端末」は,2016年度と比べて「利用あり」の教師の割合も大きく伸び(33%→51%),半数の教師が利用していた。利用環境が整備されたことが利用に結びついたものといえる。

タブレット端末の利用状況の変化は図2の項目の中で最も顕著で 6),パソコンやタブレット端末などの機器の整備を進める,国の「教育のIT化に向けた環境整備4か年計画(平成26年度~平成29年度)」7)の成果が表れたものと考えられる。ただし,整備の実施判断は各自治体に委ねられているため自治体によって整備状況に差があり,今回の調査でも図2のように約3割の教師がタブレット端末を利用できない環境にあった。新学習指導要領の実施を見据えて「教育のICT化に向けた環境整備5か年計画

(2018 ~ 2022年度)」が策定され,2018年度から5年間,単年度1,805億円の地方財政措置を講じることとされている8)が,これによってタブレット端末を利用できる教師,利用できない教師の格差の解消が進むことを期待したい。

各項目の利用頻度をみると,「ほとんど毎日」利用している教師が多いのは,「ラジオ受信機・CDラジカセ」(48%),「パソコン」(20%),「テレビ受像機」(18%),「実物投影機」(17%)であった。2016年度と比較して「ほとんど毎日」利用する教師が増えているのは,「パソコン」

注1:(  )内は2016年度の値である。注2:ゴシック体は2016年度に比べて有意に増加したことを,イタリック体は減

少したことを示している(95%水準)。

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37JUNE 2019

図 3 担当学年別にみる   授業で児童に利用させているメディア

注1: A ~ Dの各項目の【  】内は2018年度の教師全体(n=2,440)の値,( )内は2016年度の教師全体(n=2,307)の値である。また,A ~ Dの学年別の数値の(  )内は2016年度の各学年の値である。

注2:ゴシック体は2016年度に比べて有意に増加したことを,イタリック体は減少したことを示している(95%水準)。

(16%→20%),「テレビ受像機」(11%→18%),「デジタルカメラ・デジタルビデオカメラ」(9%→13%),「インターネット」(7%→12%),「電子黒板」(7%→11%),「タブレット端末」(4%→9%)の6項目で,授業で利用される頻度が増している。「ほとんど毎日」利用している教師の割合が

最も高いのは2018年度調査で項目に加えた「ラジオ受信機・CDラジカセ」で,半数近くの教師が「ほとんど毎日」利用している。CDラジカセが学校現場で長らく利用されている現状をふまえて調査項目に加えたのだが,例えば朝の会でクラスの歌を歌う場面や運動会の準備や練習などの場面のほかに,後述のように教科によっては音声教材の再生に利用されている(44ページ)。そもそも学校教育におけるメディア機器の利用はラジオ受信機に始まり,テレビ受像機,パソコン,インターネット,電子黒板,タブレット端末と,メディアの進化とともに音声を提示する機器から映像を提示する機器の利用が中心になっていった 9)が,それに伴ってCDラジカセの利用がなくなったわけではない。誰でもスイッチ1つで容易に操作ができる安心感や持ち運びのしやすさ,他のメディア機器と比べて安価なこともあって,教師には身近な機器の1つだと考えられる。全国の小学校では,教師が教育目的や授業の内容,自身が置かれているメディア環境を考慮し,映像と音声に関わるさまざまな機器を利用しながら日々の授業を行っているといえる。

なお,図には示していないが,メディア機器の利用を教師の担当学年別にみると,どの学年でもまんべんなく利用されていたのは,「実物投影機」と「ラジオ受信機・CDラジカセ」で,これらは男女別にみても利用に差はみられなかった。

「実物投影機」は,例えば教科書の本文だけでなく挿絵や写真,グラフや表などを拡大して提示できることから学年を問わず利用されていると考えられるが,「ラジオ受信機・CDラジカセ」と同様に,操作が容易なことも大きいだろう。メディア機器を授業で利用する場合,教師が1人で授業を進めながら機器の操作もしなければならないことを考えると,機器を授業に取り入れるうえでその操作性は重要なポイントだと思われる。

(2) 授業で児童に利用させている メディア機器

図3は,A~Dの4つのメディア機器について,授業における児童の使用を尋ねた結果である。「A~Dまでのいずれかを児童が利

15%(18)

1717(10)25(16)31(15)35(20)40(22)

7(6)8(8)14(9)

16(18)

12(8)

41(47)

62(69)

23(28)

24(30)(37)

72(75)

15(13)20(16)20(21)

7

30(39)30

(9)

63(72)

47(55)

デジタルカメラ・デジタルビデオカメラ

タブレット端末

C.

D.

【25%】(30%)

【27%】(15%)

1年生担任(n=391)2年生担任(n=432)3年生担任(n=385)4年生担任(n=413)5年生担任(n=393)6年生担任(n=426)

パソコンA.【47%】(53%)

電子黒板B.【14%】(12%)

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38 JUNE 2019

用している」と回答した教師の割合は63%で,2016年度(64%)と比べて変化はなかった。全体でみると4つの機器の中で「パソコン」の利用が最も多いが,2016年度と比較すると減少している。また,「デジタルカメラ・デジタルビデオカメラ」の利用も減っている。一方,「タブレット端末」の利用は27%だが,2016年度の15%から大幅に増加し,2年生以上の担任教師で利用が増えた。

パソコンの利用の減少は,パソコンルームなどで児童に利用させるパソコンを更新する際に,キーボードつきのタブレット端末に変更する自治体がみられることも影響していると考えられる。また,これまで児童にデジタルカメラやデジタルビデオカメラを利用させていた場面でも,タブレット端末のカメラ機能を利用すると動画と静止画の両方を撮影できるので,児童が目的に応じて端末1台で撮り分けることが可能になった。撮影したものも,その場でタブレット端末の画面に映し出せば直ちに児童の間で共有できる。また,発表などの場面で児童が使う際にも,タブレット端末で撮影したものであればパソコンを介さなくても編集やデータ処理を行える。このようにタブレット端末はデジタルカメラ,デジタルビデオカメラとパソコンの機能を併せ持つため,利用の移行が進んでいると推察される(36ページも参照)。そこで次節では,教師が授業でどのようにタブレット端末を児童に活用させているのか,詳しくみることにする。

(3) 授業における児童の タブレット端末の利用

「授業で児童にタブレット端末を利用させている」と回答した教師を対象に,利用の実態について尋ねた(2018年度調査 651名,2016年

度調査350名)。児童にタブレット端末を利用させている教師のクラスでは,児童が利用できる端末の平均台数は23台(2016年度調査では20台)であった。その利用形態をみると,2016年度と比べて「1人1台での活動が多い」と回答した教師(56%→64%)が増える一方で,「3人以上のグループに1台での活動が多い」と回答した教師(32%→24%)は減少した(表4)。

ただし,「1人1台での活動が多い」場合でも,そのすべてにおいて「児童1人1人が自分専用のタブレット端末を所有し利用している」というわけではなく,校内に配備されたタブレット端末を授業ごとに交代で利用し合っていて,必ずしも教師が利用させたいときにいつでも利用できる環境にはない場合も含まれていることに留意したい。それは,児童のタブレット端末の利用頻度をみると(表5),多いのは「月に1 ~ 3回程度」(41%),「年に数回」(31%),

「週1 ~ 2回程度」(20%)の利用であって,「ほとんど毎日」(4%),あるいは「週に3 ~ 4回程度」(5%)と高い頻度で利用させている教師が少ないことからも推察される。

文部科学省は2020年に向けて「児童・生徒

表 4 タブレット端末:児童の利用形態

表 5 タブレット端末:児童の利用頻度

1 人 1 台での活動

2 人に1台での活動

3 人以上のグループに

1 台での活動 無回答

64 (56) 12 (11) 24 (32) 1 (1)

ほとんど毎日

週 3 ~ 4 回程度

週 1 ~ 2 回程度

月に 1 ~ 3回程度

年に数回

4(2) 5(5) 20(15) 41(44) 31(34)

(100%=授業で児童にタブレット端末を利用させている教師)(%)

(100%=授業で児童にタブレット端末を利用させている教師)(%)

注1:(  )内は2016年度の値である。注2:ゴシック体は2016年度に比べると有意に増加したことを,イタリック体は

減少したことを示している(95%水準)。

注1:(  )内は2016年度の値である。注2:ゴシック体は2016年度に比べると有意に増加したことを,イタリック体は

減少したことを示している(95%水準)。

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39JUNE 2019

1人1台ずつの情報端末の導入」を推進している。タブレット端末のさまざまな授業における利用実践の蓄積やタブレット端末にインストールして利用する「学習者用デジタル教科書」(40ページ)の利用の広がりに伴って,児童がタブレット端末を利用する機会は増えることが予想される。児童1人1人が専用のタブレット端末を利用できる環境整備を継続して進めることが求められるだろう。

次に,児童に利用させているタブレット端末がインターネットに接続されているかどうか,またその端末で動画を視聴しているかどうかをみる(図4)。タブレット端末をインターネットに接続している割合は84%で,児童に利用させているタブレット端末は多くがインターネットを利用できる環境にある。インターネットで動画を視聴させている教師の割合は37%で,2016年度と比べて変化はみられなかった。動画を視聴させるかどうかは,動画をスムーズに視聴できる環境にあるかどうかによっても左右されることから,その状況が改善されていない結果

(36ページ)が反映されているといえる。教師が児童にタブレット端末を利用させてい

る授業では「総合的な学習の時間」(63%)が最も多く,以下,「社会」「国語」「理科」「算数」

と続く。後者の4つの教科はいずれも3割前後でほぼ同じ割合であった(表6)。「その他」の欄に書かれた自由回答の記述で最も多かった教科は「体育」であった。

タブレット端末を利用した活動の内容を尋ねた結果が表7である。回答が多いのは「2.インターネットで検索をする」(67%),「1.カメラで撮影する」(60%)で,「7.作品やまとめを制作する」

(21%)にも回答がみられたことから,例えばタブレット端末の利用教科で回答の多かった「総合的な学習の時間」では,個々の児童,あるいはグループで行う調べ学習やそのまとめの作業などにタブレット端末が利用されている様子が推察される。表6の「その他」で回答の多かった

「体育」の場合も,マット運動や鉄棒などで,カメラの機能を使ってお互いの姿を撮影し合って自分のフォームの確認や修正に役立てていることが考えられる。「3.ドリルなどで個別学習をする」

(24%),「6.ツールなどを利用して協働学習をする」(16%)からは,児童個人の学習やグループ学習での利用がみてとれる。

図 4 児童が利用するタブレット端末の  インターネット接続と動画視聴

表 6 児童がタブレット端末を利用する教科(複数回答)

表 7 児童がタブレット端末を利用して行う活動(複数回答)

国語 社会 算数 理科 総合的な学習の時間 その他

33 37 27 33 63 31

(100%=授業で児童にタブレット端末を利用させている教師)(%)

(100%=授業で児童にタブレット端末を利用させている教師)(%)

1. カメラで撮影する 602. インターネットで検索をする 673. ドリルなどで個別学習をする 244. 学習者用デジタル教科書を利用する 85. NHK for School のウェブサイトや公式アプリを

利用する 32

6. ツールなどを利用して協働学習をする 167. 作品やまとめを制作する 218. 家に持ち帰って利用する 19. その他 3

動画は視聴していない動画を視聴している

2018年度

2016年度

37%

34

タブレット端末がインターネットに接続されている

タブレット端末がインターネットに接続されている

動画を視聴している

84

81

動画は視聴していない動画を視聴している

2018年度

2016年度

37%

34

タブレット端末がインターネットに接続されている

動画を視聴している

84

81

(100%=授業で児童にタブレット端末を利用させている教師)

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40 JUNE 2019

NHK for Schoolのウェブサイトで提供しているデジタルコンテンツは,これまでパソコンで利用されてきたが,タブレット端末で児童にウェブサイトやアプリを利用させている教師が一定数存在した(32%)。NHK for Schoolの公式アプリ(51ページ)は,タブレット端末やスマートフォンでの利用を図るために2016年度にリリースされ,無料でダウンロードすることができる。

なお,タブレット端末で「4.学習者用デジタル教科書を利用する」と回答した割合は今回の調査では8%とタブレット端末を利用した活動の中では多くはなかったが,今後は増えることが予想される。「学習者用デジタル教科書」は,教師が電子黒板などに映し出して利用する「指導者用のデジタル教科書」とは異なり,1人1人の児童が手にする通常の紙の教科書と同一の内容をデジタル化したもので,拡大表示や書き込み,学習データの保存,音声による読み上げなどの機能が加わる。動画・音声やアニメーション,自己学習用のドリルなどのデジタルコンテンツと一体的に活用することが想定されていて,視覚障害や発達障害などのために紙の教科書での学習が困難な児童への利用も期待されている。紙の教科書の代わりに学習者用デジタル教科書を使用できるように,2018年5月25日に学校教育法の改正法案が成立し,2019年4月1日に施行された 10)。2018年12月には,文部科学省が「学習者用デジタル教科書の効果的な活用の在り方等に関するガイドライン」11)を公開するなど,利用に向けた動きが活発化している。

児童が学習者用デジタル教科書を利用するためには1人1台の端末が必要であることから,全国の小学校が導入するためにはさらなる環境整備が求められることになる。今回の調査では

一部の教師の間で学習者用デジタル教科書の利用が始まっていることがみてとれたが,今後,授業で利用することによって児童の学習にどのような効果をもたらすのか,教師に知見が蓄積されることも必要だろう。児童のタブレット端末の利用が広がる中で,学習者用デジタル教科書がどのように利用されていくのか,またそのほかのメディア機器や既存のメディア教材の利用に変化は生じるのか,注目していきたい。

(4) 学年別にみたメディア教材の利用

図2(35ページ)で示したように,教師はその環境に応じて授業の中でさまざまなメディア機器を利用しているが,本節ではこうした機器とともに活用するメディア教材の利用状況に着目する。放送番組やDVD教材,インターネット上のコンテンツなど,図5に示した10種類のメディア教材の2018年度の利用状況をみると,「F.指導者用のデジタル教科書」(65%),

「A.NHK学校放送番組」(54%),「D.NHKデジタル教材」(53%),「I.ラジオ番組やCDなどの音声教材」(50%),「E.NHKデジタル教材以外のインターネット上のコンテンツや動画,静止画」(47%),「J.自作教材」(43%)の6項目が4割以上の教師に利用されていた。また,詳細は次章で触れるが,「A.NHK学校放送番組」と「D.NHKデジタル教材」のいずれかを利用した教師の割合を示す「NHK for School教師利用率」は67%で,他のメディア教材の利用を上回っていた。

学年別にみると,「I.ラジオ番組やCDなどの音声教材」を除く9項目で,学年が上がるほど利用教師の比率は高かった。特に「F.指導者用のデジタル教科書」の利用は3年生以上の担任教師で8割を超えた。その背景の1つとして,

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41JUNE 2019

3年生以上が対象の「外国語活動・外国語」の授業で,文部科学省が作成した「指導者用のデジタル教科書」が多くの教師に利用されていることを反映していると考えられる(55ページ)12)。

「NHK for School教師利用率」も3年生以上で高いが,こちらもNHK for Schoolで利用が多い理科や社会の授業が3年生から始まるためであろう(46ページ)13)。一方,「I.ラジオ番組やCDなどの音声教材」は,大きな学年差はみられず,どの学年でもほぼ半数程度の教師に利用されていた。「ラジオ受信機・CDラジカセ」の利用には学年差がみられなかったが(37ペー

ジ),それと呼応した結果ともいえる。次に,各教材の利用頻度について尋ねた結

果を図6に示した。利用頻度が高いと考えられる「週1 ~ 2回程度」以上利用している教師の比率が高いメディア教材は,「F.指導者用のデジタル教科書」(45%),「I.ラジオ番組やCDなどの音声教材」(25%),「A.NHK学校放送番組」(14%),「D.NHKデジタル教材」(13%)で,

「NHK for School教師利用率」でみると24%であった。

利用頻度の高い「F.指導者用のデジタル教科書」と「I.ラジオ番組やCDなどの音声教材」

図 5 担当学年別にみたメディア教材の利用

注:【  】内は2018年度の教師全体(n=2,440)の値である。

A.

B.

C.

D.

E.

F.

【54%】

【11%】

【10%】

【53%】

【47%】

【65%】

指導者用のデジタル教科書

「D」以外のインターネット上のコンテンツや動画,静止画

NHKデジタル教材

NHK以外の放送番組

「A」以外のNHKの放送番組

NHK学校放送番組

32%27

6610

468111216

26

2929

3131

57

575763

82828187

47

657476

22

131318

181926

2627

24

24

35

3639

43

54525047

49

39

45

43

434350

3835

73808689

8

2211

11

41

23

59666574

1年生担任(n=391)2年生担任(n=432)3年生担任(n=385)4年生担任(n=413)5年生担任(n=393)6年生担任(n=426)

G.

H.

J.

NHK学校放送番組とNHKデジタル教材のいずれかを利用

A~Jのどの教材も利用しなかった

あなたや他の先生が作成した教材〈自作教材〉

市販のビデオ教材やDVD教材

「F」以外の,パソコン用教材【22%】

【34%】

【43%】

I. ラジオ番組やCDなどの音声教材【50%】

【4%】

【67%】

NHK for School教師利用率

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42 JUNE 2019

図 6 メディア教材の利用頻度

図 7 担当学年別にみた利用頻度の高いメディア教材(上位 2 項目)

(100%=全教師)

注:全体 n=2,440,1年生担任 n=391,2年生担任 n=432,3年生担任  n=385,4年生担任 n=413,5年生担任 n=393,6年生担任 n=426

2018年度に授業で利用65%

31

31

82

82

81

87

50

54

52

50

47

45

49

利用頻度無回答

年に数回程度週3回以上

月1~3回程度

週1~2回程度

12 33%

11 7 5 5 3

11 6

10 35

14 54 9 22

16 57 10 2 3

30 4 3

8 36 30 5 3

7 5

16 9 12 9 4

12 9 12 9 4

11 8 12 11 3

13 9 15 10 3

18 10 13 7 3

20 10 11 8 5

20 9 11 8 4

2

15 4 3

1年生担任

全 体

2年生担任

3年生担任

4年生担任

5年生担任

6年生担任

1年生担任

全 体

F.

指導者用のデジタル教科書

I.

ラジオ番組やCDなどの音声教材

2年生担任

3年生担任

4年生担任

5年生担任

6年生担任

に注目して頻度の分布を学年別に調べると(図7),両者の利用のしかたは異なることがわかる。「F.指導者用のデジタル教科 書」は利用頻度においても3年生以上で高く,「週1 ~ 2回程度」以上利用している教師の割合は,3年生45%,4年生44%,5年生68%,6年生では73%であった。「指導者用のデジタル教科書」を利用できる環境にある3年生以上の担任の教師はほぼ日常的に「指導者用のデジタル教科書」を利用していると考えられ,特に5・6年生担任教師の利用頻度が高い。一方,

「I.ラジオ番組やCDなどの音声教材」は,1 ~ 3年生で利用頻度が高い教師が比較的多いものの,「F.指導者用のデジタル教科書」ほど顕著な学年差はみられず,どの学年でもほぼ同じ頻度で利用されてい

※NHK学校放送番組(A)とNHKデジタル教材(D)のいずれかでも利用

I. 独自に撮影したり、編集したりしてあなたや他の先生が作成した教材(自作教材)

H. 市販のビデオ教材やDVD教材

G.「F」以外の、パソコン用教材

F. 指導者用のデジタル教科書

E.「D」以外のインターネット上のコンテンツや動画、静止画

D.NHKデジタル教材

C.NHK以外の放送番組

B.「A」以外のNHKの放送番組

A NHK学校放送利用利用頻度無回答

年に数回程度週3回以上 月1~3回程度週1~2回程度

利用あり

9%2

2 4 12 24 4

7 11 2

12

6

13 10 8 3

6 21

81

1

19 14 6

00

5 19 18 4

21 7 9 3

102 28 3

0

0

2016 129

19 13 6

62

50%

11

9

48

46

47

23

43

46 NHK for School教師利用率 (「A. NHK学校放送番組」 「D. NHKデジタル教材」のいずれかを利用)

J. あなたや他の先生が作成した教材 〈自作教材〉 

H. 市販のビデオ教材やDVD教材

I. ラジオ番組やCDなどの音声教材

G. 「F」以外の,パソコン用教材

F. 指導者用のデジタル教科書

E. 「D」以外のインターネット上の  コンテンツや動画,静止画

D. NHKデジタル教材

C. NHK以外の放送番組

B. 「A」以外のNHKの放送番組

A. NHK学校放送番組(44)

(38)

(41)

(43)

(24)

(44)

(41)

(55)

( 9)

( 9)

54%

11

10

53

47

65

22

34

50

43

67

利用頻度無回答年に数回程度週3回以上 月1~3回程度

週1~2回程度

11%3

10 12 9203

3 7 6 42

145 17 43

9 9 41216

16 18 1788

33 15 4 312

7 20 15 41

7 21 3 21

18 13 9

001

011 6 2

8 2

2018年度に授業で利用

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43JUNE 2019

た。また,図には示していないが,3年生以上の教師で比率が高い「NHK for School教師利用率」を利用頻度でみると,3年生以上の教師の「週1 ~ 2回程度」以上利用の割合は3年生22%,4年生29%,5年生33%,6年生43%で学年が上がるにつれて頻度が増し,「F.指導者用のデジタル教科書」や「I.ラジオ番組やCDなどの音声教材」とは異なる傾向がみてとれた。

以上から,小学校教師はメディア機器と合わせてメディア教材もよく利用しており,その利用は教材によって学年差がみられた。また,利用頻度では,「指導者用のデジタル教科書」が3年生以上の教師に高い頻度で利用されていること,頻度に学年差がある教材とあまりない教材があることがわかった。

(5) 教科別にみたメディア教材の利用

メディア教材の利用を,教科ごとにみたのが表8である。当該教科で何らかのメディア教

材を利用した教師がどの教材を利用したのか,上位3 項目をみると,算数と「外国語活動・外国語」では「指導者用のデジタル教科書」が最も多く,国語でも多く利用されている。特に「外国語活動・外国語」における利用は89%と高率であるが,これは文部科学省が無償で全国の学校に配布している外国語活動の教材“Hi, friends!”,“Let’s Try!”や新設された外国語の教材“We Can!”14)に連動したデジタル教材の利用も含むためと考えられる。

理科,社会と「特別の教科 道徳」(「特別の教

科 道徳」については54ページを参照)では「NHK学校放送番組」「NHKデジタル教材」の利用が多い。この3教科は2012年度まで行っていた「学校放送利用状況調査」でも同様の結果が得られていた15)。いずれも教科の特性として映像教材との相性がよく,長年,映像を利用した授業実践が続いていると考えられる。また,家庭科や体育でもNHK学校放送番組,NHKデジタル教材

表 8 教科別にみた 2018 年度の授業で利用が多かったメディア教材(複数回答・上位 3 項目)注 1

国語 算数 理科 社会 生活科 音楽 図画工作 家庭科 体育 特別の教科道徳注2

外国語活動・外国語注2

総合的な学習の時間 特別活動

(n=1,307) (n=983) (n=1,238)(n=1,132) (n=302) (n=968) (n=421) (n=189) (n=846) (n=774) (n=1,388) (n=741) (n=577)

1 音声教材 指導者用のデジタル教科書

NHKデジタル教材

NHK学校放送番組

自作教材 音声教材 自作教材 NHK学校放送番組

NHK学校放送番組

NHK学校放送番組

指導者用のデジタル教科書

ネット上のコンテンツ

自作教材

42 47 68 57 45 83 42 32 42 35 89 49 35

2 指導者用のデジタル教科書

自作教材 NHK学校放送番組

NHKデジタル教材

ネット上のコンテンツ

ネット上のコンテンツ

ネット上のコンテンツ

NHKデジタル教材

NHKデジタル教材

NHKデジタル教材

音声教材 自作教材 ビデオ教材

26 27 65 56 26 12 33 30 37 22 9 30 23

3 自作教材 パソコン用教材

ネット上のコンテンツ

ネット上のコンテンツ

NHK学校放送番組

ビデオ教材 NHKデジタル教材

ネット上のコンテンツ

ネット上のコンテンツ

自作教材 NHK学校放送番組

NHK学校放送番組

音声教材

20 18 22 27 19 10 12 21 28 20 7 18 22

※ 25 23 88 76 31 4 18 47 56 44 9 26 27

(100%= 2018 年度に該当教科で何らかのメディア教材を利用している教師)(%)

※【NHK for School利用】=「NHK学校放送番組」「NHKデジタル教材」のいずれかを利用した教師の比率。

注1:図5に示した10種類のメディア教材に対する複数回答の結果から,上位の3項目である。注2:「特別の教科 道徳」は教科化された「道徳」の名称。5・6年生向けに新設された「外国語」は「外国語活動」と合わせて尋ねた。 選択肢の詳細は次のとおりである。   ・「NHKデジタル教材」以外のインターネット上のコンテンツや動画,静止画⇒「ネット上のコンテンツ」    ・「指導者用のデジタル教科書」以外のパソコン用教材⇒「パソコン用教材」   ・市販のビデオ教材やDVD教材⇒「ビデオ教材」  ・ラジオ番組やCDなどの音声教材⇒「音声教材」   ・回答した教師自身や他の教師が作成した教材⇒「自作教材」注3:全教師を100%とした場合の各教科におけるメディア教材利用教師の比率は,利用が多い順に以下のとおりである。 「外国語活動・外国語」57%,国語54%,理科51%,社会46%,算数40%,音楽40%,体育35%,「特別の教科 道徳」32%,総合的な学習の時間30%,特別活動24%, 図画工作17%,生活科12%,家庭科8%

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を利用している教師が多く,このような実技教科においても映像が活用されていると考えられる。

表 8の欄外の【NHK for School利用】の値をみると,利用が多いのは,多い順に理科,社会,体育,家庭科,「特別の教科 道徳」である。「指導者用のデジタル教科書」が算数,

「外国語活動・外国語」,国語でよく利用されているのに対し,【NHK for School利用】が多いのは理科,社会,「特別の教科 道徳」,そして家庭科,体育の実技教科である。授業が教科書のテキストベースで進むのか,教科書だけでなく映像資料を加えるほうが効果的なのか,教科の特性を考慮して,教師がメディア教材を使い分けている実態がみてとれる。

なお,国語と音楽で最も多く利用されているメディア教材は「ラジオ番組やCDなどの音声教材」である。特別活動や「外国語活動・外国語」でも利用がみられる。例えば,国語では教科書の範読や物語の朗読,音楽では曲の鑑賞や歌の伴奏,楽器の演奏,「外国語活動・外国語」では英語の発音や歌などに使われるほか,特別活動には入学式,卒業式のような場面やBGMが流れることが多い清掃活動なども含まれることから,広く利用されていると考えられる。小学校の教育現場において,音声教材の利用の場面は少なくないといえる。

3. NHK for School の利用

この章ではNHK学校放送番組,NHKデジタル教材の利用の実態について詳述する。ここでいうNHK学校放送番組は,テレビで見ることができ,対象学年,教科・領域を明示して放送している番組(2018年度の調査時点では61ページに示す67番組)を指す。また

NHKデジタル教材は,インターネットで利用できる,学校放送番組のストリーミング配信,資料映像を短くまとめた動画の「クリップ」,番組内容の理解を深めるための双方向教材などの

「きょうざい」,教師向けの番組活用情報「先生向け」などのウェブサイトのサービスを指す。

NHKデジタル教材は,学校や家庭でパソコンやインターネットが利用できる環境に向けた新たな教育サービスとして2001年に開始され,段階的に番組数やサービスを拡大してきた。2011年度からはNHKが提供する学校向け教育サービスを「NHK for School」(画像1)

という名称で統一して,ウェブサイトの名称もNHK for Schoolとして,各サービスにアクセスできるようになっている。調査時点では2,000本以上の番組,7,000本以上の動画クリップをストリーミングで公開していた。

(1) 教師の属性別にみた NHK for School の利用

NHKの学校放送番組・デジタル教材の量的

https://www.nhk.or.jp/syakai/dokiri/

各番組のウェブサイトでは,番組のストリーミング視聴と「クリップ」「きょうざい」「先生向け」のコンテンツが利用できる。

画像 1 NHK for School 『歴史にドキリ(6 年社会)』

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45JUNE 2019

な利用を表す指標として,本調査では「NHK for School教師利用率」を用いている。これは,調査実施年の4月から12月までにテレビの

「NHK学校放送番組」,あるいは番組と連動

したインターネットの「NHKデジタル教材」を授業で利用した教師の割合である(図8)。

2018年度のNHK for School教師利用率は,1 ~ 6年生担任教師全体で67%であり,図5

図 8 教師の属性別にみた NHK for School の利用

*NHK for School教師利用率:調査実施年(2018年)の4月から12月までにテレビのNHK学校放送番組あるいは番組と連動したNHKデジタル教材を授業で利用した教師の割合。NHKの学校放送番組・デジタル教材利用の量的側面をとらえる指標として用いている。注1:上段は2018年度,下段は2016年度の結果である。 注2:ゴシック体は2016年度に比べて有意に増加したことを示している(95%水準)。

①and/or②NHK

for Schoolの利用

①テレビ学校放送番組の利用

②NHKデジタル教材の利用

女 性

男 性

6年生担任

5年生担任

4年生担任

3年生担任

2年生担任

1年生担任

全 体

(n=391)

(n=399)

(n=432)

(n=367)

(n=385)(n=388)

(n=413)

(n=372)

(n=393)

(n=399)

(n=426)

(n=382)

(n=1,037)

(n=944)

(n=1,385)

(n=1,353)

(n=2,440)

(n=2,307)

■ 男女別

■ 学年別

67 54 53 62 50 48 38 32 26 34 30 20 35 27 22 36 30 22 73 59 57 60 47 46 80 66 65 74 59 58 86 65 74 80 63 66 89 74 76 87 69 74 75 60 61 73 57 59 61 49 47 54 45 40

67% 54 53 62 50 48

38 32 26

34 30 20

35 27 22

36 30 22

73 59 57 60 47 46

80 66 65 74 59 58

86 65 74 80 63 66

89 74 76

87 69 74

75 60 61

73 57 59

61 49 47 54 45 40

②NHKデジタル教材の利用

①NHK学校放送番組の利用

NHK for School教師利用率

①and/or②NHK

for Schoolの利用

①NHK学校放送番組の利用

②NHKデジタル教材の利用

NHK学校放送番組のみ利用

両方の利用 NHKデジタル教材のみ利用

14% 1340

14 1235

12 619

14 416

13 814

14 616

16 1443

14 1333

14 1235

14 1031

15 1451

16 1543

13 2252

14 1748

14 1546

15 1643

14 1660

13 1856

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46 JUNE 2019

(41ページ)でもみたとおり,「指導者用のデジタル教科書」(65%)と並んで,授業でよく利用されていた。また2016年度(62%)から増加している。

学年別にみると,高学年になるほど利用率が高い。1年生担任は38%,2年生担任は35%であるが,3年生担任は73%,4年生担任は80%,5年生担任は86%,6年生担任は89%が利用していた。2016年度と比較すると,3年生担任の利用が60%から73%に増えたほか,4・5年生担任で増えている。男女別にみると,男性教師のほうが多いのは2016年度と変わらないが,その差は縮まっており,女性教師の利用が増えてきている。また,図には示していないが,これまでの調査結果と同様に,教師の年代による差はみられなかった。

図8のグラフの左端の「NHK学校放送番組のみ利用」は,テレビで学校放送番組を放送時間に合わせて視聴したり録画視聴したりした教師の割合である。図8のグラフの右端の「NHKデジタル教材のみ利用」は,インターネットで番組のストリーミング配信や資料映像(「クリップ」)などを利用した教師の割合である。「両方の利用」はNHK学校放送番組とNHKデジタル教材の両方の利用である。「NHK学校放送番組のみ利用」と「両方の

利用」を合わせたものを「①NHK学校放送番組の利用」,「NHKデジタル教材のみ利用」と「両方の利用」を合わせたものを「②NHKデジタル教材の利用」としてグラフの右側にそれぞれの数値を示している。全教師でみると,

「①NHK学校放送番組の利用」が54%,「②NHKデジタル教材の利用」が53%で同程度であった。また「NHK学校放送番組のみ利用」は14%,「NHKデジタル教材のみ利用」は13%

にとどまり,多くの教師は放送とインターネットの両方でNHKの教育サービスを利用していた。この傾向は2016年度と変わらない。

放送とインターネットの両方を利用している教師が多いのは,図2(35ページ)で示したように,多くの教室でテレビや録画再生機が利用できる環境にあることと,表3(36ページ)で示したように,インターネットでの動画再生がスムーズでないとしている教師が多いためであると考えられる。

2016年度と比較してみると,「①NHK学校放送番組の利用」は3年生担任と女性で増加し,「②NHKデジタル教材の利用」は3・4・5年生担任と女性で増加していた。これまで利用の中心であった高学年(5・6年生)担任と男性だけでなく,中学年(3・4年生)担任と女性にも利用が広がってきている。

一方で,低学年(1・2年生)担任の利用はともに2016年度と同程度であった。これは低学年対象の番組が少ないこと,利用率の高い理科・社会の授業が低学年にはないこと,低学年対象の生活科の定時番組がなかったことなどが原因であると考えられる。

NHK学校放送番組を利用している教師には,番組を放送時間に合わせて視聴する,いわゆる「ナマ利用」と,録画した番組を視聴する「録画利用」の状況についても調査をしている(図9)。NHK学校放送番組を利用している教師全体では,ナマ利用(「ほとんどナマ利用」と「ナマ・録画併用」の合計値)は11%,学年でみると1年生担任(23%)と2年生担任

(24%)で多い。2018年度のNHK教育テレビ(Eテレ)では平日の9:00~10:15の時間帯に学校放送番組を放送していたが,9時台に編成された低学年対象の『新・ざわざわ森のがんこ

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47JUNE 2019

ちゃん』(1年道徳),『おはなしのくに』(1 ~ 3年国語)などの番組を授業でナマ利用する教師が多かったと考えられる。

(2) 担当学年別にみた NHK for School 利用番組

担当学年別に利用教師の多い番組をまとめたのが表9である。NHK for Schoolの利用の少ない低学年は上位3番組,利用の多い中学年,高学年は上位5番組を表にしている。

低学年と,中・高学年では利用の多い番組の教科による差がみられた。低学年では「特別の教科 道徳」と国語の番組,中・高学年では理科と社会の番組の利用が多い。この傾向は2016年と同様である。

1年生で最も利用が多かった『新・ざわざわ森のがんこちゃん』(1年道徳)は1996年から20年を超えて放送され,教師の認知度の高い番組である16)。しかし,2016年度の結果

表 9 担当学年別にみた利用教師の多い番組(2018 年度)

図 9 NHK 学校放送番組の利用形態

(%)

注1:■印は2018年度の新番組,●印は2017年度の新番組である。注2:1年生担任 n=391,2年生担任 n=432,3年生担任 n=385,4年生担任

n=413,5年生担任 n=393,6年生担任 n=426

番組名(該当学年)NHK

for Schoolの利用

NHK学校放送番組の利用

NHKデジタル教材の利用

1年生担任

新・ざわざわ森のがんこちゃん(1年 道徳) 16 12 7

おはなしのくに(1 ~ 3年 国語) 13 8 7

さんすう犬ワン(1 ~ 3年 算数) 8 6 5

2年生担任

おはなしのくに(1 ~ 3年 国語) 8 7 3

はりきり体育ノ介(3 ~ 6年 体育) 8 6 4

新・ざわざわ森のがんこちゃん (1年 道徳) 7 6 2

3年生担任

ふしぎがいっぱい(3年)(3年 理科) 52 34 33

ふしぎだいすき(3年 理科) 28 18 18

■ふしぎエンドレス 理科3年(3年 理科) 21 12 14

はりきり体育ノ介(3 ~ 6年 体育) 20 13 12

●コノマチ☆リサーチ(3年 社会) 15 11 10

4年生担任

ふしぎがいっぱい(4年)(4年 理科) 56 40 35

ふしぎ大調査(4年 理科) 29 23 17

知っトク地図帳(3 ~ 4年 社会) 26 17 17

■ふしぎエンドレス 理科4年(4年 理科) 22 16 14

はりきり体育ノ介(3 ~ 6年 体育) 20 14 10

5年生担任

ふしぎがいっぱい(5年)(5年 理科) 52 34 35

未来広告ジャパン!(5年 社会) 43 30 29

ふしぎワールド(5年 理科) 25 15 18

はりきり体育ノ介(3 ~ 6年 体育) 23 16 13

■ふしぎエンドレス 理科5年(5年 理科) 12 8 8

6年生担任

歴史にドキリ(6年 社会) 66 47 44

ふしぎがいっぱい(6年)(6年 理科) 48 33 34

はりきり体育ノ介(3 ~ 6年 体育) 24 17 13

ふしぎ情報局(6年 理科) 20 14 14

■ふしぎエンドレス 理科6年(6年 理科) 12 9 6

5 89%6

16 777

13 7611

4 933

4 934

3 907

9361

ほとんどナマ利用 (放送時間に合わせて利用)

ほとんど録画利用ナマ・録画併用

6年生担任(n=232)

5年生担任(n=197)

4年生担任(n=191)

3年生担任(n=174)

2年生担任(n=85)

1年生担任(n=88)

全 体(n=967)

■ 学年別

(100%= NHK 学校放送番組利用形態回答教師)

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と比べてみると,1年生(20%→16%),2年生(12%→7%)でともに減少している。これは54ページで詳述するように道徳が教科化され,教科書を中心に授業が行われることが多いためであると考えられる。

中学年,高学年ではいずれも理科,社会,体育の利用が多く,複数の理科番組が上位に入っているのが特徴的である。

3年生から6年生までの理科番組で最も利用が多いのは,2011年度から放送している現行の学習指導要領に沿った理科番組『ふしぎがいっぱい』シリーズである。次に利用が多いのは2002年度から実施の学習指導要領の際に制作された『ふしぎだいすき』(3年理科),『ふしぎ大調査』(4年理科),『ふしぎワールド』(5年理科),『ふしぎ情報局』(6年理科)である。これら4番組はすでに放送は終了しているので,放送時に教師が録画したものや,NHKデジタル教材のストリーミング配信での視聴である。さらに,2020年度からの新学習指導要領に沿って制作され,2018年度に放送が始まった

『ふしぎエンドレス』シリーズも利用されていた。この3つの理科番組のシリーズはねらいや構成が異なるので,教師がそれぞれの授業のねらいに合わせて使い分けていると考えられる。

6年生では,社会科番組『歴史にドキリ』の利用が66%で最も多い。2016年度の利用

(61%)よりも増え,利用された番組を学年別にみると最も高い値であった。

全学年を通して注目されるのは,体育番組『はりきり体育ノ介』(3 ~ 6年体育)である。2016年度調査でも5年生(15%),6年生(15%)で理科,社会科に次いでよく利用されていたが,今回は,番組の対象学年ではない1年生で5番目(5%),2年生で2番目(8%)に利用が多

く,中学年と高学年では20%以上の教師が利用していた。『はりきり体育ノ介』は一流アスリートによる

お手本映像の「できるポイント」や,よくあるつまずきをお手本と2画面で比較して見せる「できないポイント」などで構成されている。実技教科ではその場で模範映像を見たり,個々の進度に合わせて必要な部分を見たりすることで学習効果が高まるとされる。無線でインターネットに接続できる環境が整い,体育館や校庭,プールでもタブレット端末などで番組視聴が可能になったこともあり,利用が増えたと考えられる。

全国から寄せられた番組活用のアイデアを紹介するNHKのウェブサイト「すくレポ」(画像2)

には,『はりきり体育ノ介』を利用した実践事例も取り上げられている。例えば,愛媛県松山市立椿小学校4年生担任の石田年保教諭の,番組視聴と体育館でのタブレット端末活用を組み合わせたマット運動の実践を紹介している17)。

https://www.nhk.or.jp/school/aw/

画像 2 すくレポ

https://www.nhk.or.jp/school/aw/

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49JUNE 2019

(3) NHK for Schoolの 認知・利用経験の状況

NHK学校放送番組やNHKデジタル教材の利用について,ここからは過去の利用も含めた利用経験と認知についてみていく。

図10に示したように,テレビで見る「NHK学校放送番組」と,インターネット上のコンテンツをパソコンやタブレット端末などで見る

「NHKデジタル教材」では,教師の認知・利用の状況が異なる。「NHK学校放送番組」の場合は,「認知あり」

が92%,「過去も含めた利用経験あり」が80%と極めて高い。これは全学年で共通した傾向であり,2016年度と変わらない(図10左側)。

学年別でみると学年が上がるほど「認知あり」「利用経験あり」が多くなる。男女の差はないが,年代別でみると20代の「利用経験なし」

(21%)と「認知なし」(6%)が,他の年代に比べて多い。現在20代の教師が小学生だった1990年代後半から2000年代はNHK学校放送番組の利用が減少していた時期で,番組を利用した授業を受けた経験が少ないため,教師になって

図 10 NHK for School の認知・利用経験の状況

無回答

認知なし

利用経験なし

2013年度は利用ないあが,過去には利用あり

2013年度授業利用あり

50代(n=823)

40代(n=851)

30代(n=622)

20代(n=479)

女性(n=1,657)

男性(n=1,132)

6年生担任(n=477)

5年生担任(n=467)

4年生担任(n=475)

3年生担任(n=446)

2年生担任(n=465)

1年生担任(n=465)

全 体(n=2,795)

26 12 2 654%〈31〉 〈12〉〈2〉〈5〉〈50〉

〈 〉内は2016年度

〈15〉 〈17〉〈8〉〈12〉〈48〉

46 13 8232

45 14 10427

22 14 3259

17 11 566

16 61265

13 10 31

1

1

174

21 12 4260

30 12 749

2113 6654

22 15 5257

31 11 51

0

53

37 8550

無回答

認知なし

利用経験なし

2013年度は利用ないあが,過去には利用あり

2013年度授業利用あり

50代(n=823)

40代(n=851)

30代(n=622)

20代(n=479)

女性(n=1,657)

男性(n=1,132)

6年生担任(n=477)

5年生担任(n=467)

4年生担任(n=475)

3年生担任(n=446)

2年生担任(n=465)

1年生担任(n=465)

全 体(n=2,795)

17 612 1253

32 17 11 1526

35 16 171022

15 14 11357

9 9 12565

5 9 10274

5 7 10276

14 9 12461

19 14 13747

15 8 171150

17 10 10460

18 10 6 957

21 1661445

■ 男女別

■ 年代別

■ 学年別

50代以上

40 代

30 代

20 代

女 性

男 性

6年生担任

5年生担任

4年生担任

3年生担任

2年生担任

1年生担任

全 体

(n=644)

(n=614)

(n=673)

(n=476)

(n=1,385)

(n=1,037)

(n=426)

(n=393)

(n=413)

(n=385)

(n=432)

(n=391)

(n=2,440)

2018年度授業利用あり 過去には利用あり

2018年度授業利用あり 過去には利用あり

利用経験なし 認知なし 認知なし利用経験なし無回答 無回答

NHK学校放送番組 NHKデジタル教材

 

利用経験あり 80〈81〉認知あり 92〈93〉

利用経験あり 70〈63〉認知あり 82〈80〉

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からも利用しない傾向にあることが考えられる。一方,インターネットで利用することができる

「NHKデジタル教材」については,「認知あり」が82%,「利用経験あり」が70%で,「利用経験あり」は2016年度(63%)から増加している

(図10右側)。学年別でみると,学年が上がるほど「認知あ

り」「利用経験あり」が多くなる。また,「NHK学校放送番組」の利用と異なり,「認知あり」

「利用経験あり」ともに,男性教師のほうが女性教師より多い。

年代別でみると,20代の「NHKデジタル教材」の「利用経験なし」(15%)と「認知なし」(8%)は「NHK学校放送番組」と同様に他の年代より多い。一方,50代は,「NHKデジタル教材」の

「利用経験なし」(14%),「認知なし」(6%)の割合が「NHK学校放送番組」よりも高い結果になっている。

まとめると,「NHK学 校 放 送番 組 」では20 代で「利用経験なし」「認知なし」が多く,

「NHKデジタル教材」では女性と20 代,50 代の教師で「利用経験なし」「認知なし」が多い

傾向がみられた。ただし,2016年度と比べると,それぞれの「利用経験なし」「認知なし」は減少の傾向がみられた。

(4) ウェブサイト「NHK for School」の 機能の利用

ウェブサイト「NHK for School」には,番組やクリップのストリーミング,児童向けの教材,教師向けの番組活用情報のほかにも,動画の検索システムをはじめさまざまなウェブコンテンツがある。こうしたコンテンツの授業や授業の準備における利用の有無を尋ねた(表10)。

教師全体で利用が多かったのは「4.動画クリップセレクション100 ~小学校社会編~,~小学校理科編~」(25%),「1.教科書からの検索」(21%)であった。また,いずれか1つでも利用した教師は48%である。

学年別にみると,NHK for School教師利用率と同様に,中学年と高学年での利用が多い。特に高学年担任教師は「6.動画を見せたい順番に並べておける「プレイリスト」」や「5.理科の学習項目同士のつながりを構造化した「りかまっ

表 10 教師が利用している NHK for School のウェブコンテンツ(複数回答)  (%)

全 体男 女 別 学 年 別 年 代 別

男性 女性 低学年担任教師

中学年担任教師

高学年担任教師 20 代 30代 40 代 50 代

以上(n=2,440)(n=1,037)(n=1,385)(n=823)(n=798)(n=819)(n=476)(n=673)(n=614)(n=644)

1. 教科書からの検索 21 23 19 16 23 23 26 23 17 20

2. 学習指導要領(現行版)からの検索 5 7 3 3 4 6 6 6 3 4

3. 実践事例から~「授業力アップ!」~ 4 4 5 4 4 5 4 5 4 4 4. 動画クリップセレクション100

~小学校社会編~,~小学校理科編~ 25 29 21 18 27 30 27 24 28 21

5. 理科の学習項目同士のつながりを構造化した「りかまっぷ」 3 4 3 2 3 5 3 3 3 4

6. 動画を見せたい順番に並べておける「プレイリスト」 7 7 7 5 8 9 10 9 6 6

7. 1 ~ 6のいずれも利用したことがない 43 38 47 53 40 36 38 44 43 46

1 ~ 6いずれかの利用あり 48 55 43 36 52 56 54 51 47 42

注:■ にゴシック体は全体に比べて有意に高い層であることを,■ にイタリック体は低い層であることを示している(95%水準)。

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ぷ」」などの新しいサービスも利用していた。年代別にみると,20 代でいずれか1つでも

利用した教師が5割を超えて最も多く,年代による差がみられなかった「NHK for School教師利用率」(46ページ)とは異なっていた。特に「1.教科書からの検索」が他の年代より多く,授業経験の少ない20 代の教師は,教科書に沿った映像を検索して授業で利用していると考えられる。「6.動画を見せたい順番に並べておける「プレ

イリスト」」は,ウェブサイトと合わせて,タブレット端末やスマートフォンから「NHK for School公式アプリ」(画像3)でも利用できる。表7(39ページ)でも,児童にタブレット端末を利用させている教師の32%が,タブレット端末を使って児童が行う活動としてNHK for Schoolのウェブやアプリの利用を挙げていた。

プレイリストは教師が設定して児童に一斉に送ったり,グループごとに異なるプレイリストの映像を見たり,児童同士が作成したプレイリストを交換したり,さらには家庭で利用することもできる。例えば,静岡県浜松市立雄

ゆうとう

踏小学校の菊地寛教諭は,小学 4年理科「夏の星」の授業でプレイリストを活用した。星空の

観察は学校ではできないため児童が自宅で行う。菊地教諭は事前に星空の観察方法などのクリップのプレイリストを作成し,児童はそれぞれ自宅のタブレット端末などでそのプレイリストからクリップを確認することで,スムーズに観察が進められたという18)。

NHK for Schoolの動画は番組,クリップを合わせると1万本近くになる。一般にコンテンツが多くなると,検索機能に加えてレコメンド機能やリスト機能が必要とされる。目的に合わせて映像を選択・共有する「プレイリスト」や「りかまっぷ」などの機能は,授業や授業の準備において教師の利用のしやすさを向上させるだけでなく,児童のタブレット端末の活用が進むにつれて必要性が高まると考えられる。

(5) NHK 教育サービスの利用

NHKでは「NHK学校放送番組」や「NHKデジタル教材」以外にも,さまざまな教育イベントやサービスを行っている。図11は,図の注に示した12項目の利用経験を尋ねたものである。「NHK for School教師利用率」に,NHKの

実施する教育イベント等も含めたNHKの教育サービスを利用または利用予定のある教師を加

えて,「NHK教育サービス利用教師」として算出したところ,その比率は教師全体で68%となり,2016年度の63%より増えていた。

学年別でみると,NHK for School教師利用率と同様に高学年と男性で多い。図には示していないが,年代による差はみられなかった。

個別の教育サービスで利用が多かったのは,「NHK for School番組&WEBガイド(冊子)」(32%),「NHK

画像 3 NHK for School 公式アプリと    NHK for School のプレイリスト

https://www.nhk.or.jp/school/playlist/

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for School公式アプリ」(11%),「NHK全国学校音楽コンクール」(7%),「最寄りのNHKや,東京のNHK放送センター,放送博物館の見学・訪問」(6%)であった。

4. メディア教材の利用場面と  重視する効果

ここまで教師のメディア利用の実態をみてきたが,この章では小学校教師が NHK for Schoolや指導者用のデジタル教科書などのメディア教材をどのような場面で利用し,どのような効果が得られることを重視しているかといった,教師の授業におけるメディア利用観を

みていく。表11は,図5(41ページ)で示した

ようなメディア教材を利用することが多い授業の場面である。全体として多かったのは,「1.授業の導入として利用する」(55%),「2.授業の展開で利用する」(53%),「3.学習のまとめとして利用する」(49%),「6.教科書や資料集,板書を補う形で利用する」(46%)で,学年や年代にかかわらずこの4つの場面でメディア教材を利用することが多い。この順位は2016年度と変わらないが,いずれも増えていた。小学校教師は導入,展開,まとめという授業のそれぞれの段階でメディア教材を利用していること,メディア教材を中心に授業を進めるよりも,教科書や資料集などの教材を補う形で利用している教師が多いことがわかる。

学年ごとにみると,低学年よりも高学年でさまざまな場面で利用されてい

る。特に高学年で特徴的なのが,「3.学習のまとめとして利用する」と「8.児童が自分たちで調べる活動に利用する」が低学年・中学年より多いことである。「3.学習のまとめとして利用する」が多いのは,高学年になると教える内容が増加しメディアを利用して短時間でまとめるためで,また,「8.児童が自分たちで調べる活動に利用する」が多いのは,タブレット端末等で児童が総合的な学習の時間などで調べ学習に利用するためと考えられる。

次に,メディア教材を利用する際に,教師がどのような効果を得ることを重視しているのかを表12でみてみる。8つの選択肢を挙げて質問したところ,「1.児童の関心・意欲を高める」

図 11 教師による NHK 教育サービスの利用

注:「NHK for School教師利用率」は,NHK学校放送番組,NHKデジタル教材のいずれか,あるいは両方を授業で利用した教師の比率である。

  「NHK教育サービスの利用」は,NHK for Schoolの利用のほかに,NHKが実施する教育イベント等も含めた,NHKの教育サービスのいずれかでも利用した教師の比率である。

  調査ではNHKの教育サービスとして,下記を選択肢に示した。  ● NHK for School番組&WEBガイド(冊子) ● NHK for School公式アプリ  ● NHKティーチャーズ・ライブラリー  ● NHKクリエイティブ・ライブラリー   ● キミが主役だ! NHK放送体験クラブ  ● NHK全国学校音楽コンクール  ● NHKこども音楽クラブ  ●全日本なわとびかっとび王選手権   ● 最寄りのNHKや,東京のNHK放送センター,放送博物館の見学・訪問   ●「NHK for School基礎セミナー」の利用  ●「NHK for School×アクティブ・ ラーニング実践ワークショップ」への参加  ● 放送教育・視聴覚教育研究会の全国大会や地域大会への参加

■ 男女別

■ 学年別

女 性

男 性

6年生担任5年生担任4年生担任3年生担任2年生担任

1年生担任

(n=1,385)

(n=1,037)

(n=426)

(n=393)

(n=413)

(n=385)

(n=432)

(n=391)

 

NHK教育サービスの利用

NHK for School教師利用率全 体

2018年度(n=2,440)

2016年度(n=2,307)

68%67%

62

38

35

73

80

86

89

75

61

63

40

38

75

81

87

90

77

62

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53JUNE 2019

(89%),「4.児童の知識・理解を深める」(73%)で多かった。以下,「6.一斉提示することで,情報が早く確実に伝わる」(37%),「2.児童の思考・判断を促す」(32%),「8.児童の活動が活性化する」(26%)と続く。この順位は2016年度と変わらない。

学年別にみると,「4.児童の知識・理解を深

める」が低学年では63%であるのに対して,高学年では81%に達するのが注目される。表11の結果と合わせると,メディア教材をまとめとして使うことで,知識の定着を期待していると考えられる。また,高学年で「2.児童の思考・判断を促す」が低・中学年より多いのも特徴的である。知識の定着だけでなく,児童が主体

表 11 メディア教材を利用することが多い場面(複数回答) (%)

 (%)

注1:ここでいう「メディア教材」とは,図5に示した項目である。注2:■ にゴシック体は全体に比べて有意に高い層であることを,■ にイタリック体は低い層であることを示している(95%水準)。

注1:ここでいう「メディア教材」とは,図5に示した項目である。注2:■ にゴシック体は全体に比べて有意に高い層であることを,■ にイタリック体は低い層であることを示している(95%水準)。

全 体男 女 別 学 年 別 年 代 別

男性 女性 低学年担任教師

中学年担任教師

高学年担任教師 20 代 30代 40 代 50 代

以上(n=2,440)(n=1,037)(n=1,385)(n=823)(n=798)(n=819)(n=476)(n=673)(n=614)(n=644)

1. 授業の導入として利用する 55 56 53 54 52 57 57 59 53 50

2. 授業の展開で利用する 53 56 50 48 54 57 50 56 53 51

3. 学習のまとめとして利用する 49 54 46 35 51 62 45 56 52 44

4. 発展教材として利用する 23 22 23 21 23 23 19 21 23 26

5. メディア教材を元に授業を進める 11 12 10 8 12 12 11 12 11 9

6. 教科書や資料集,板書を補う形で利用する 46 45 46 41 46 49 48 48 47 41

7. 新しい話題や情報を示すのに利用する 19 18 20 22 18 17 20 18 19 19

8. 児童が自分たちで調べる活動に利用する 19 21 17 12 19 25 17 18 20 20

9. その他 0 0 1 1 0 0 0 0 1 0

10. 授業でメディア教材を利用していない 4 3 5 9 2 2 4 3 3 7

全 体男 女 別 学 年 別 年 代 別

男性 女性 低学年担任教師

中学年担任教師

高学年担任教師 20 代 30代 40 代 50 代

以上(n=2,440)(n=1,037)(n=1,385)(n=823)(n=798)(n=819)(n=476)(n=673)(n=614)(n=644)

1. 児童の関心・意欲を高める 89 89 89 89 89 89 92 89 88 86

2. 児童の思考・判断を促す 32 36 29 29 31 36 33 32 32 30

3. 児童の技能育成に役立つ 15 17 14 12 17 17 12 20 17 12

4. 児童の知識・理解を深める 73 74 72 63 74 81 71 74 75 70

5. 個人の能力に合わせた学習ができる 6 8 5 6 6 8 5 7 6 6 6. 一斉提示することで,情報が早く

確実に伝わる 37 35 38 38 35 38 33 38 39 36

7. 授業で意見の共有や議論をする機会が増える 9 11 7 7 9 10 8 10 10 6

8. 児童の活動が活性化する 26 26 26 29 24 24 25 25 27 28

9. その他 0 1 0 0 0 0 0 0 0 0

10. 特に重視することはない 1 1 1 2 1 0 1 2 0 1

表 12 メディア教材を利用する際に教師が重視する効果(複数回答)

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54 JUNE 2019

的に調べる活動をする中で,思考・判断を促す効果をメディア教材に求める教師が高学年で多くなると考えられる。

5. 学習指導要領の改訂と  メディア利用

この章では2020年度全面実施の学習指導要領で,新規の教科として改訂が行われた「特別の教科 道徳」「外国語活動・外国語」の授業で,小学校教師が教科書やメディア教材をどのように利用しているのか,また,新しく加わった

「プログラミング教育」の実施状況をみていく。道徳の時間は,これまで教科として位置づ

けられていなかった 19)が,新学習指導要領では「特別の教科」となり,検定教科書が導入され,児童の評価も行われるようになった。また,外国語活動はこれまで小学校5・6年生で行われていたが,新学習指導要領では3・4年生で実施することとなり,5・6年生では「外国語」という教科が設置されることとなった。

(1) 「特別の教科 道徳」の授業で 利用している教材

図12は「特別の教科 道徳」の授業での,教科書も含む教材の利用状況である。

最も多いのは,2018年度から発行された「1.教科書」の利用で,すべての学年で95%以

図 12  「特別の教科 道徳」で利用している教材(複数回答)

注:【  】内は2018年度の教師全体(n=2,440)の値である。

1.

2.

3.

4.3以外の読み物教材(絵本や新聞など)

地域の教育委員会や研究会などが発行 している読み物教材(副読本・補助教材)

指導者用デジタル教科書

教科書 5.

6.

7.

1~ 7いずれかの利用あり

その他

あなたや他の先生が作成した動画や静止画,テキストやワークシート

テレビ番組やラジオ番組,市販のビデオ教材やDVD教材,CD教材などの映像教材・音声教材

【97%】

【9%】

【18%】

【1%】

【99%】

【16%】

【26%】

【9%】

97%

97

9797

98

95%

96

99

999999989898

16

17

1613

16

19

17

18

17

1818

15

23

15

9

7

89

10

11

7

9

10

109

8

9

8

1

03

1

111

26

2428

24

28

28

1年生担任(n=391)2年生担任(n=432)3年生担任(n=385)4年生担任(n=413)5年生担任(n=393)6年生担任(n=426)

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上であった。続いて「3.地域の教育委員会や研究会などが発行している読み物教材」(26%),

「6.あなたや他の先生が作成した動画や静止画,テキストやワークシート」(18%),「2.指導者用デジタル教科書」20)(16%)と続く。

図には示していないが,選択肢に示した教材の選択数をみると,「教材が1つ」(44%),「教材が2つ」(38%),「教材が3つ以上」(17%)で,利用している教材が2つまでの教師が8割を超えている。「5.テレビ番組やラジオ番組,市販のビデオ

教材やDVD教材,CD教材などの映像教材・音声教材」の利用は9%にとどまり,「特別の教科 道徳」の授業では教科書とテキスト教材の利用が中心で,動画の利用は少ないという結果であった。

ただし,こちらも図には示していないが,「5.テレビ番組やラジオ番組,市販のビデオ教材やDVD教材,CD教材などの映像教材・音声教材」の利用を年代別でみると,20 代が4%,30 代と40 代が9%であるのに対して,50代は12%であった。50 代は他の年代よりメディア教材の利用が少ない傾向にあるが,道徳の授業では映像教材や音声教材をよく利用していた。さらに50 代の教師は「3.地域の教育委員会や研究会などが発行している読み物教材」

(30%),「4. 3以外の読み物教材(絵本や新聞など)」(11%)の利用も多い。経験の豊かな分,他の年代の教師よりも幅広く教材を利用して道徳の授業をしている様子がうかがえる。

(2) 「外国語活動・外国語」の授業で 利用している教材

図13は「外国語活動・外国語」の授業での,教科書も含む教材の授業での利用状況で

ある。外国語活動は3・4年生,外国語は5・6年生で行われるため,1・2年生の利用は少ない。

個々の教材でみると「1.文部科学省が配布している『Hi, friends!』『Let’s Try!』『We Can!』の教科書」(60%)と「2.文部科学省が配布している『Hi, friends!』『Let’s Try!』『We Can!』のデジタル教材」(60%)の利用が多い。続いて

「5.あなたや他の先生が作成した動画や静止画,テキストやワークシート」(27%),「4.市販の絵本,テキストや絵カード」(22%)と続く。

図には示していないが,選択肢に示した教材の選択数をみると,「教材が1つ」(17%),「教材が2つ」(47%),「教材が3つ以上」(36%)で,利用している教材が2つ以上の教師が8割を超えている21)。

文部科学省が発行しているテキストとデジタル教材 22)に加えて,映像教材も含む多様な教材を授業で利用している様子がみられた。

(3) 「プログラミング教育」の授業の実施

2020年度からすべての小学校で実施されることになるプログラミング教育は,文部科学省の「小学校プログラミング教育の手引(第二版)」によれば,「①「プログラミング的思考」を育むことと,②プログラムの働きやよさ等への「気付き」を促し,コンピュータ等を上手に活用して問題を解決しようとする態度を育むこと,③各教科等の内容を指導する中で実施する場合には,各教科等の学びをより確実なものとすること」23)と定められている。

先行的に取り組みを行っている自治体や学校もあり,本調査でも2018年度のプログラミング教育の実施および年度内の実施予定について尋ねたところ,表13に示すように,全体では14%

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の教師が実施あるいは実施を予定していた。学年別にみると,5年生(23%),6年生(21%)

で多い。学習指導要領で示された事例が,6年生理科「電気の利用」と5 年生算数「正多角形の作図」であったこともあり,高学年でプログラミング教育に取り組み始めている様子がみられた。

男女別でみると男性が多く,年代別にみると50 代が少ない。もともと高学年の担任は男性が多く,50 代が少ないためで(図1,34ページ),性差や年代差より高学年担任であるため取り組みを行っていると考えられる。

プログラミング教育の授業で利用している,あるいは利用予定の教材を自由記述で記入して

もらったところ,「Scratch(スクラッチ)」24)が最も多く,「プログラミン」25)と「Viscuit(ビスケット)」26)が続き,さらに「Pepper」27),「Hour of Code」28),「ジャストスマイル」29)などが挙げられた。

例えば千葉県柏市では,2017年4月から市内42 校のすべての小学校4年生を対象に,プログラミング教育を実施している 30)。授業計画は市内で共通しており,総合的な学習の時間の授業を年間で2時間使い,プログラミングソフト「Scratch」を利用している。授業では「コンピュータに意図した処理を行うように指示することができるようになる」ことを目標に,児童は「前に進む」「壁にぶつかったら方向を変える」

図 13  「外国語活動・外国語」で利用している教材(複数回答)

1.

2.

3.

4.市販の絵本,テキストや絵カード

テレビ番組やラジオ番組,市販のビデオ教材やDVD教材,CD教材などの映像教材・音声教材

文部科学省が配布している『Hi,friends!』『Let’s Try!』『We Can!』のデジタル教材

文部科学省が配布している『Hi,friends!』『Let’s Try!』『We Can!』の教科書

5.

6.

7.

1~ 6いずれかの利用あり

今年度,「外国語活動」,「外国語」を担当していない

その他

あなたや他の先生が作成した動画や静止画,テキストやワークシート

60%

5

8991

87

7%

85

77

4439

94949597

60

6

8690

83

9

85

2

22011

4

27

24

3231

27

21

26

11

1210101010

11

20

43

24

4956

22

18

2421

22

23

26

1年生担任(n=391)2年生担任(n=432)3年生担任(n=385)4年生担任(n=413)5年生担任(n=393)6年生担任(n=426)

【60%】

【27%】

【2%】

【20%】

【77%】

【60%】

【11%】

【22%】

注:【  】内は2018年度の教師全体(n=2,440)の値である。

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などの要素を使って,「ネコが歩いて左右の壁にぶつかったら方向を変える」などのプログラムを作成する。

プログラミング教育は取り組みが始まったばかりであるが,プログラミングを体験するためにはメディア利用が必須となるので,今後も,どのような教材が利用されているのかを継続的に調査していく予定である。

6. 教師が今後利用したいメディア

この章では,今後の教師のメディア利用の方向性について考える。そのために,教師が今後利用したいメディアの全体の傾向だけでなく,積極的にメディアを利用している教師が今後,どのようなメディア利用を考えているかもみ

ていく。具体的には,①メディア教材で最も利用されているNHK for Schoolの利用頻度,②今後さらに整備が進むと考えられる「タブレット端末」の児童の利用の有無,③プログラミング教育の授業の実施の有無,の3つの観点でみる。

表14は現在の利用の有無にかかわらず,選択肢に挙げた6つのメディアの今後の利用意向について尋ねた結果である。教師全体でみると,「2.タブレット端末」(72%),「1.電子黒板」

(55%),「3.指導者用のデジタル教科書」(51%)の3つで5割を超えていた。2016年度と比べると上記3項目に加えて,「4.学習者用のデジタル教科書」を利用したいとした教師が増えている。

次に,①NHK for Schoolの利用頻度でみると,「2.タブレット端末」「1.電子黒板」「3.指導者用のデジタル教科書」の利用意向が多いのは変わらないが,利用頻度が高い教師では,

「4.学習者用のデジタル教科書」「5.協働学習で利用できるソフトウェアやツール」「6.教材などについて情報交換できるサイトやソーシャルメディア」の利用意向が多くなる傾向がみられた。

また,②タブレット端末の児童の利用の有無,③プログラミング教育の授業の実施の有無でみると,「タブレット端末を児童に利用させている」「プログラミング教育を実施している」教師で「4.学習者用のデジタル教科書」「5. 協働学習で利用できるソフトウェアやツール」

「6.教材などについて情報交換できるサイトやソーシャルメディア」を利用したいとする教師が多かった。

まとめると,NHK for Schoolの利用頻度が高く,児童にタブレット端末を利用させたり,プログラミング教育に先進的に取り組んだりしている教師は,「タブレット端末」や「指導者

表 13 プログラミング教育の実施状況

授業を実施した(2018年度内の実施予定を含む)

2018年度内に授業の実施・予定はない

無回答

全 体(n=2,440) 14 % 84 2

学年別

1年生担任(n=391) 6 93 1

2年生担任(n=432) 10 88 2

3年生担任(n=385) 11 88 1

4年生担任(n=413) 15 83 2

5年生担任(n=393) 23 75 2

6年生担任(n=426) 21 77 2

男女別

男 性(n=1,037) 18 81 2

女 性(n=1,385) 12 86 2

年代別

20 代(n=476) 17 81 2

30 代(n=673) 16 83 1

40 代(n=614) 14 85 2

50代以上(n=644) 11 87 3

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用のデジタル教科書」という現時点で整備が進み始めているメディアだけでなく,これからの学習の場で必要と考えられているメディアの利用を考えていた。また表 2(34ページ)に示したように日常生活での教師のSNSの利用は全体で51%,20 代(74%),30 代(60%)で多く,授業や教材についてSNSを通じて情報交換をする環境も整ってきていると考えられる。

テレビ受像機やパソコンなど,これまでの学校へのメディアの普及の経緯をみても,時間は一定程度かかるが,先進的な教師が取り組み始めているメディアは徐 に々浸透している。今後,タブレット端末の利用が広がるとともに,タブレット端末で利用できる「学習者用のデジタル教科書」や「協働学習で利用できるソフトウェアやツール」の利用が進み,さらに教師が新しいメディアを使った授業や「教材などについて情報交換できるサイトやソーシャルメディア」の利用も広がる可能性があると考える。

おわりに

全国の先生方の協力を得て,小学校の授業でのメディア利用に関する4回目の調査を実施することができた。最後に,小学校教師の授業におけるメディア利用の現状から考えられる課題と可能性を3点にまとめる。

1点目は,タブレット端末の「利用環境あり」と「利用あり」が増加した以外,教室で利用できるメディア機器の利用環境はあまり変化がないことである。

教育のICT化に向けた予算措置はとられているが,整備に関する最終判断は各自治体に任されているため,文部科学省の調査でも自治体間の整備の差が明らかになっている 31)。東京都渋谷区や兵庫県淡路市,岡山県備前市など,1人の児童に1台のタブレット端末がすでに貸与されている自治体がある一方で,パソコンの更新が進まず,最新のソフトウェアを利用

表 14 教師が今後,授業で利用したいメディア(複数回答) (%)

注1: 選択肢の詳細は,「教師が教材などについて情報交換できるウェブサイトやソーシャルメディア(ブログやSNS,掲示板など)」である。注2: ■にゴシック体は全体に比べて有意に高い層であることを,■にイタリック体は低い層であることを示している(95%水準)。

全 体

    ①NHK for Schoolの利用頻度 ②児童のタブレット 端末の利用

③プログラミング 教育の授業の実施

週3回以上 週1~2回程度

月1~3回程度

年に数回程度 利用あり 利用なし

授業を実施した

(2018年度内の実施予定を

含む)

2018年度内に授業の実施・予定

はない(n=2,440) (n=194) (n=384) (n=430) (n=204) (n=651) (n=1,650) (n=352) (n=2,046)

1. 電子黒板 55 51 54 60 58 54 56 60 55

2. タブレット端末 72 68 77 70 71 71 71 76 72

3. 指導者用のデジタル教科書 51 55 52 50 52 53 50 55 51

4. 学習者用のデジタル教科書 40 47 46 39 43 47 38 46 40

5. 協働学習で利用できるソフトウェアやツール 30 40 38 32 26 43 26 43 29

6. 教材などについて情報交換できるサイトやソーシャルメディア注1

12 19 14 11 13 17 11 17 12

7. この中にはない 2 3 2 3 2 2 3 2 2

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できないままの自治体もある。そのような格差が生じていることの一端は本調査からもみてとれた。

またタブレット端末の普及が急速に進み,無線インターネットの環境整備も行われているが,動画を問題なく見られるような環境が整っているとはいえない。これから先,児童1人1人がタブレット端末を持つようになると,個々に動画を見られるようなネットワーク環境の構築は大きな課題である。

授業を進めながら機材の操作をしなければならない教師の立場に立つと,メディア機器は操作が容易で,安定して運用できるものでないと安心して使えない。今回の調査でも,全学年の教師がまんべんなく利用しているのはCDラジカセと実物投影機であり(37ページ),NHK学校放送番組の利用において,2割程度の低学年教師に放送時間に合わせたナマ利用がみられる(46ページ)のは,テレビもスイッチ1つで使えることが大きい。アップデートや機器の接続などで煩わされることがなく,安心して利用できるメディア環境が整わないと,すべての教師に機器の利用が広がるのは難しいと考える。

2点目は,6割以上の教師が利用していたメディア教材は指導者用のデジタル教科書とNHK for Schoolだけだったことである(40ページ)。また,「特別の教科 道徳」ではテキストの教科書を中心に授業を進める教師が多い。授業でのメディア教材利用の幅はあまり広がっていない。この背景には1点目で述べたような教室のメディア環境の問題や,教師の多忙化により,教科書以外の教材研究をする時間がないことなどがあると考えられる。

教科書は法令で「主たる教材」と定められて

いるが 32),教科書以外の教材の使用を否定するものではない。学習指導要領でも「視聴覚教材や教育機器などの教材・教具の適切な活用を図ること」と定めており33),児童が理解しやすいように,映像を含む多様な教材を活用していくことは今後ますます必要であると考える。

3点目は,タブレット端末の利用環境の整備が進んだことで利用が増え,児童が1人1台の端末を持つことが現実化してきたことである。

新学習指導要領で重視される「主体的・対話的で深い学び」を実現していくために求められるのは,これまでのように授業における教師の利用のしやすさに焦点をあてるだけではなく,学びの主体である児童が調べたりまとめたり,自律的に学習することを支援するメディアである。例えば NHK for Schoolの「クリップ」は,当初から児童が自分で映像を選択して学習することを考えて制作されてきた。児童が1人1人自分でタブレット端末などを操作して,必要な情報を入手したり,さらにグループ活動などで協働しながら学習を深めていったりする,そのような「学び」を実現していくためのメディアがこれからの時代に必要であろう。

グローバル化が進み,ますます多様化する環境の中で生きていく子どもたちが,よりよく未来を歩んでいくにはどのようなメディア環境やメディア教材が必要なのか。これからの学びのあり方について,今後も調査を通して明らかにしていきたい。

(うじはし ゆうじ/わたなべ せいじ)

全 体

    ①NHK for Schoolの利用頻度 ②児童のタブレット 端末の利用

③プログラミング 教育の授業の実施

週3回以上 週1~2回程度

月1~3回程度

年に数回程度 利用あり 利用なし

授業を実施した

(2018年度内の実施予定を

含む)

2018年度内に授業の実施・予定

はない(n=2,440) (n=194) (n=384) (n=430) (n=204) (n=651) (n=1,650) (n=352) (n=2,046)

1. 電子黒板 55 51 54 60 58 54 56 60 55

2. タブレット端末 72 68 77 70 71 71 71 76 72

3. 指導者用のデジタル教科書 51 55 52 50 52 53 50 55 51

4. 学習者用のデジタル教科書 40 47 46 39 43 47 38 46 40

5. 協働学習で利用できるソフトウェアやツール 30 40 38 32 26 43 26 43 29

6. 教材などについて情報交換できるサイトやソーシャルメディア注1

12 19 14 11 13 17 11 17 12

7. この中にはない 2 3 2 3 2 2 3 2 2

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注: 1) 調査の詳細については次の文献が参考となる。

・小平さち子(2014)「調査 60 年にみる NHK学校教育向けサービス利用の変容と今後の展望~「学校放送利用状況調査」を中心に~」

『NHK 放送文化研究所年報 2014 第 58 集』pp.91-169.

2) 調査結果については下記のような報告があり,いずれも NHK 放送文化研究所のウェブサイトで全文が公開されている。・宇治橋祐之・小平さち子(2017) 「進む教師

のメディア利用と 1 人 1 台端末時代の方向性~ 2016 年度「NHK 小学校教師のメディア利用と意識に関する調査」から~」『放送研究と調査』2017 年 6 月号,pp.26-51.

・宇治橋祐之(2016)「理科を中心に広がる中学校でのメディア利用~ 2015 年度「NHK 中学校教師のメディア利用と意識に関する調査」から~」『放送研究と調査』2016 年 6 月号,pp.50-73.

・宇治橋祐之・小平さち子(2018)「アクティブ ・ ラーニング時代のメディア利用の可能性~ 2017 年度「高校教師のメディア利用と意識に関する調査」から①~」『放送研究と調査』2018 年 7 月号,pp.48-77.

3) 「新時代の学びを支える先端技術のフル活用に向けて~柴山・学びの革新プラン~」(2018年11月)については下記を参照。http://www.mext.go.jp/a_menu/other/1411332.htm

4) 「学校基本調査」(平成30年度文部科学省)によると,主幹教諭,指導教諭,教諭の合計は32万4,081人で,男性は11万7,902人(36%),女性は20万6,179人(64%)である。http://www.mext.go.jp/b_menu/toukei/chousa01/kihon/1267995.htm 

5) タブレット端末には,キーボードのない「スレート型」と,キーボードを着脱できる「セパレート型」,ディスプレーを回転させたり折りたたむとキーボードが使える「コンパーチブル型」がある。

6) 図 2 の項目のうち,2018 年度調査で新規項目として加えた「ラジオ受信機・CD ラジカセ」を除く。

7) 「教育のIT化に向けた環境整備4か年計画(平成26年度~平成29年度)」は下記を参照。http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/zyouhou/detail/1376787.htm

8) 「教育のICT化に向けた環境整備5か年計画(2018 ~ 2022年度)」は下記を参照。http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/zyouhou/detail/1402835.htm 

9) 学校教育におけるメディア利用の変化の実態は

前出の注 1 小平(2014)に詳しい。 10) デジタル教科書をめぐる学校教育法の改正につ

いては下記を参照。http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/kyoukasho/gaiyou/04060901/1349317.htm 

11) 「学習者用デジタル教科書の効果的な活用の在り方等に関するガイドライン」については下記を参照。http://www.mext.go. jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/139/houkoku/1412207.htm

12) 担当学年が3年生以上の指導者用デジタル教科書の利用教師のうち,外国語活動・外国語で利用している割合は74%(学年別にみると3年生73%,4年生73%,5年生73%,6年生76%)であった。

13) 担当学年が3年生以上の【NHK for School利用教師】のうち,理科あるいは社会で利用している割合は80%(学年別にみると3年生68%,4年生75%,5年生83%,6年生86%)であった。

14) 2011年度の小学校学習指導要領から,5年生および6年生で,週1コマの外国語活動が導入され,文部科学省では,外国語活動教材の“Hi, friends!”を作成し,希望する小学校等に配布した。配布物は「児童用教材」「教師用指導書」,そして児童用教材の誌面や歌・音声などを収録した「デジタル教材」である。2020年度から実施される新学習指導要領をふまえ,2018年度から外国語活動の授業は3年生および4年生に前倒しされ,5年生および6年生では外国語の授業が始まった。文部科学省は,新たに外国語活動の教材として“Let’s Try!”,外国語の教材として“We Can!”を作成したが,いずれも“Hi,friends!”と同じく,「児童用教材」「教師用指導書」「デジタル教材」から成る。

15) 前出の注 1 小平(2014) 16) 今回の調査では『新・ざわざわ森のがんこちゃん』

の教師全体の認知率は42%で最も高かった。 17) 「すくレポ」では,NHK for Schoolの活用事例を

紹介しており,「体育」などの教科名や学年から事例を検索することができる。https://www.nhk.or.jp/school/aw/

18) 「すくレポ」掲載の「お家で星を観察しよう !」h t t p s : / / w w w . n h k . o r . j p / s c h o o l / a w /sukurepo/201709230124/

19) 現行の学習指導要領で道徳は,「道徳教育の目標に基づき,各教科,特別活動及び総合的な学習の時間における道徳教育と密接な関連を図りながら,計画的,発展的な指導によってこれを補充,深化,統合し,道徳的価値の自覚を深め,道徳的実践力を育成する」時間と位置づけられている。http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/

Page 30: 進むタブレット端末の利用と 学習におけるメディア利用の可能性 · 2019. 6. 30. · イベントなどnhk教育サービス利用の全体像を調べるために,「教師のメディア利用と意識に関する調査」を2013

61JUNE 2019

cs/1320005.htm 20) 道徳の指導者用デジタル教科書には,朗読音声

やスライドショー,映像資料などの機能がある。 21) 「外国語活動・外国語」の教材の選択数を算出し

た母数は,図13の1~6の選択肢に示した教材を1つでも使っている教師(n=1,876)である。

22) 調査を行った2018年度時点では,外国語活動・外国語では文部科学省制作の教材がそれぞれ配布されていたが, 2020年度からの外国語の授業では,検定教科書の使用が始まる。

23) 「小学校プログラミング教育の手引(第二版)」p.17にプログラミング教育の目的が記載されている。http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/zyouhou/detail/1403162.htm

24) アメリカのMIT(マサチューセッツ工科大学)メディアラボが開発した,テキストではなくブロックなどを視覚的に操作してプログラミングを行うビジュアルプログラミング言語。

25) 文部科学省が Scratch を参考に開発したビジュアルプログラミング言語。

26) NTTの研究で開発されたビジュアルプログラミング言語。

27) ソフトバンクが制作しているヒト型ロボット。Scratchをベースに開発されたRobo Blocksでプログラムを組むことができる。

28) アメリカの非営利団体Code.orgが運営するプログラミング学習のウェブサイト。

29) ジャストシステムが販売している小学校向け学習・授業支援ソフト。「スマイルブロック」というツールでプログラミングを学べる。

30) 千葉県柏市のプログラミング教育の取り組みは下記に詳しい。http://www.city.kashiwa.lg.jp/soshiki/270100/p038654.html

31) 「平成 29 年度 学校における教育の情報化の実態等に関する調査結果(概要)〔確定値〕」を参照。http://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/micro_detail/__icsFiles/afieldfile/2018/10/30/1408157_001.pdf

32) 教科書は「教科書の発行に関する臨時措置法第2条」で「小学校,中学校,義務教育学校,高等学校,中等教育学校及びこれらに準ずる学校において,教育課程の構成に応じて組織排列された教科の主たる教材として,教授の用に供せられる児童又は生徒用図書」と定義されている。

33) 「小学校学習指導要領(平成 29 年告示)」p.22http://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/micro_detail/__icsFiles/afieldfile/2019/03/18/1413522_001.pdf

※注に挙げたウェブサイトは,いずれも 2019 年4 月 1 日閲覧

2018 年度放送の NHK 学校放送番組(67 番組)注:■印は2018年度の新番組,●印は2017年度の新番組である

ことばドリル (1 ~ 2年 国語)おはなしのくに (1 ~ 3年 国語)ひょうたんからコトバ (3 ~ 6年 国語)おはなしのくにクラシック (3 ~ 6年 国語)お伝と伝じろう (3 ~ 6年 国語)わかる国語 読み書きのツボ 5・6年 (5 ~ 6年 国語)●コノマチ☆リサーチ (3年 社会)■よろしく!ファンファン (4年 社会)知っトク地図帳 (3 ~ 4年 社会)見えるぞ!ニッポン (3 ~ 4年 社会)未来広告ジャパン! (5年 社会)歴史にドキリ (6年 社会)さんすう犬ワン (1 ~ 3年 算数)さんすう刑事ゼロ (4 ~ 6年 算数)マテマティカ2 (4 ~ 6年 算数)■ふしぎエンドレス 理科3年 (3年 理科)ふしぎがいっぱい(3年) (3年 理科)ふしぎだいすき (3年 理科)■ふしぎエンドレス 理科4年 (4年 理科)ふしぎがいっぱい(4年) (4年 理科)ふしぎ大調査 (4年 理科)■ふしぎエンドレス 理科5年 (5年 理科)ふしぎがいっぱい(5年) (5年 理科)ふしぎワールド (5年 理科)■ふしぎエンドレス 理科6年 (6年 理科)ふしぎがいっぱい(6年) (6年 理科)ふしぎ情報局 (6年 理科)カガクノミカタ (1 ~ 6年 理科)考えるカラス (1 ~ 6年 理科)大科学実験 (1 ~ 6年 理科)ミクロワールド (1 ~ 6年 理科)新・ざわざわ森のがんこちゃん (1年 道徳)銀河銭湯パンタくん (1 ~ 2年 道徳)時々迷々 (3 ~ 4年 道徳)ココロ部! (5 ~ 6年 道徳)オン・マイ・ウェイ! (5 ~ 6年 道徳)おんがくブラボー (3 ~ 6年 音楽)はりきり体育ノ介 (3 ~ 6年 体育)キミなら何つくる? (5 ~ 6年 図工)テイクテック (5 ~ 6年 技術)カテイカ (5 ~ 6年 家庭科)Q~こどものための哲学 (3 ~ 4年 総合)げんばるマン (3 ~ 6年 総合)●ドスルコスル (3 ~ 6年 総合)しまった!~情報活用スキルアップ~ (4 ~ 6年 総合)●メディアタイムズ (4 ~ 6年 総合)メディアのめ (4 ~ 6年 総合)スマホ・リアル・ストーリー (4 ~ 6年 総合)ど~する?地球のあした (4 ~ 6年 総合)JAPANGLE (4 ~ 6年 総合)●Why!?プログラミング (3 ~ 6年 総合)昔話法廷 (5 ~ 6年 総合)学ぼうBOSAI (5 ~ 6年 総合)●エイゴビート (3 ~ 4年 外国語)えいごリアン (3 ~ 4年 外国語)■基礎英語0~世界エイゴミッション~ (5 ~ 6年 外国語)プレキソ英語 (5 ~ 6年 外国語)スーパーえいごリアン (5 ~ 6年 外国語)で~きた (1年 特別活動)えいごでがんこちゃん (1 ~ 2年 特別活動)子ども安全リアル・ストーリー (4 ~ 6年 特別活動)カラフル! (2 ~ 6年 特別活動)いじめをノックアウト (3 ~ 6年 特別活動)ストレッチマンⅤ (1 ~ 6年 特別支援)ストレッチマンハイパー (1 ~ 6年 特別支援)スマイル! (1 ~ 6年 特別支援)コミ☆トレ (1 ~ 6年 特別支援)