会津若松市におけるスマートコミュニティ 構築の取組み€¦ · (1)...

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FUJITSU. 64, 6, p. 616-622 11, 2013616 あらまし 会津若松市は,豊かな自然と歴史文化を誇る日本有数の観光都市であり,豊かな自然 の恩恵を生かし,再生可能エネルギー導入促進と,地産地消型エネルギー利用促進を通 じて,「産業の創出・誘致・振興」「豊かな生活基盤の提供」「市民への安心・安全の提供」 に取り組んでいる。 富士通は半導体事業の生産拠点として40年来,会津若松市とともに歩んできた縁もあ り,会津若松市が推進する「スマートシティ会津若松」の実現に向けて,市と東北電力と の共同により,2011年度からスマートコミュニティ導入促進事業に携わってきた。 本稿では,「会津若松地域スマートコミュニティ導入促進事業」の概要として,エネル ギーコントロールセンター(ECC)による,再生可能エネルギー普及に向けたサービスな どを紹介するとともに,地域活性化に向けた将来展開についても述べる。 Abstract Aizuwakamatsu City is a leading city in Japan for tourism with abundant nature, a long history and rich culture. By harnessing the benet of its abundant nature, the City is promoting the installation of renewable energy facilities and a program by which local products are used locally. Through these activities, Aizuwakamatsu City is working to create, invest in, and stimulate industries, build infrastructure for a good quality of life, and provide peace of mind and security to its residents. Fujitsu has moved forward together with the City for more than forty years to establish a production base for the semiconductor business. Through this relationship, Fujitsu has been engaged in the Aizuwakamatsu Area Smart Community Deployment Project since 2011. Here, we introduce the Aizuwakamatsu Area Smart Community Deployment Project which we are advancing with Aizuwakamatsu City and Tohoku Electric Power. We also explain activities such as visualizing energy with an energy control center and describe our aim to have regional vitalization which is mandatory for Smart Community development. Since we are introducing the Project for Promoting Introduction of Smart Communities of the Minister of Economy, Trade and Industry here, we use the term Smart Communityfor Smart City,a term which Fujitsu normally uses. 多田尚人   丸井智浩   水谷彰宏    会津若松市におけるスマートコミュニティ 構築の取組み Approach to Smart Community Development in Aizuwakamatsu City

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Page 1: 会津若松市におけるスマートコミュニティ 構築の取組み€¦ · (1) 地域の再生可能エネルギー発電状況の可視化 ま え が き 富士通は,本稿で紹介する「会津若松地域ス

FUJITSU. 64, 6, p. 616-622 (11, 2013)616

あ ら ま し

会津若松市は,豊かな自然と歴史文化を誇る日本有数の観光都市であり,豊かな自然

の恩恵を生かし,再生可能エネルギー導入促進と,地産地消型エネルギー利用促進を通

じて,「産業の創出・誘致・振興」「豊かな生活基盤の提供」「市民への安心・安全の提供」

に取り組んでいる。

富士通は半導体事業の生産拠点として40年来,会津若松市とともに歩んできた縁もあり,会津若松市が推進する「スマートシティ会津若松」の実現に向けて,市と東北電力と

の共同により,2011年度からスマートコミュニティ導入促進事業に携わってきた。本稿では,「会津若松地域スマートコミュニティ導入促進事業」の概要として,エネル

ギーコントロールセンター(ECC)による,再生可能エネルギー普及に向けたサービスなどを紹介するとともに,地域活性化に向けた将来展開についても述べる。

Abstract

Aizuwakamatsu City is a leading city in Japan for tourism with abundant nature, a long history and rich culture. By harnessing the benefit of its abundant nature, the City is promoting the installation of renewable energy facilities and a program by which local products are used locally. Through these activities, Aizuwakamatsu City is working to create, invest in, and stimulate industries, build infrastructure for a good quality of life, and provide peace of mind and security to its residents. Fujitsu has moved forward together with the City for more than forty years to establish a production base for the semiconductor business. Through this relationship, Fujitsu has been engaged in the Aizuwakamatsu Area Smart Community Deployment Project since 2011. Here, we introduce the Aizuwakamatsu Area Smart Community Deployment Project which we are advancing with Aizuwakamatsu City and Tohoku Electric Power. We also explain activities such as visualizing energy with an energy control center and describe our aim to have regional vitalization which is mandatory for Smart Community development. Since we are introducing the Project for Promoting Introduction of Smart Communities of the Minister of Economy, Trade and Industry here, we use the term “Smart Community” for “Smart City,” a term which Fujitsu normally uses.

● 多田尚人   ● 丸井智浩   ● 水谷彰宏   

会津若松市におけるスマートコミュニティ構築の取組み

Approach to Smart Community Development in Aizuwakamatsu City

Page 2: 会津若松市におけるスマートコミュニティ 構築の取組み€¦ · (1) 地域の再生可能エネルギー発電状況の可視化 ま え が き 富士通は,本稿で紹介する「会津若松地域ス

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会津若松市におけるスマートコミュニティ構築の取組み

いるため,スマートシティの呼称に「スマートコミュニティ」を使用している。

スマートコミュニティ導入促進事業への取組み

本事業の目的は,単に再生可能エネルギーを導入するだけではなく,災害に強く,雇用を促進し,住民に優しいまちづくりに貢献し,更には,自立的・継続的に運用できる基盤・仕組みを確立することである。具体的にはECCを中核とした以下の3事業の推進を目的とする,ECC事業の全容を図-1に示す。(1) ECCの構築(2) 太陽光発電/蓄電池の導入促進と地域防災対策との連動

(3) バイオマス資源を活用した熱供給によるまちづくりなお,(3)については導入促進事業期間中での事業化については一時保留している。本章では,これらの事業内容について述べる。

● ECCの構築ECCは,会津若松市内において,再生可能エネルギー導入拡大への寄与,今後導入される再生可能エネルギーの管理と新たなサービスの創出,地域の電力系統の安定化への寄与を狙いとして,以下の四つの機能を実現する。(1) 地域の再生可能エネルギー発電状況の可視化

スマートコミュニティ導入促進事業への取組み

ま え が き

富士通は,本稿で紹介する「会津若松地域スマートコミュニティ導入促進事業」の前段階として,会津若松地域の再生可能エネルギー量の潜在力調査を実施すべく,経済産業省「平成23年度スマートコミュニティ構想普及支援事業」を会津若松市,地元企業の協力のもとFS事業(Feasibility Study:事業化可能性の調査)を行った(2011年10月~ 2012年3月)。そして,2013年4月30日に,富士通および会津若松市,東北電力の3者が申請したスマートコミュニティ導入促進事業の平成25年度実施計画書が,経済産業省の補助金交付の決定通知を受けたことから,現在,平成26年度下期からのエネルギーコントロールセンター(ECC)事業開始に向けて準備を進めている。本稿では,まずスマートコミュニティ導入促進事業への取組みとして,ECCの構築,太陽光発電/蓄電池の導入促進と地域防災対策の連動,バイオマス資源を活用した熱供給によるまちづくりを紹介する。次に,今後の展開として,新たな価値創造に向けた事業連携,地域住民が求めるサービスについて述べる。なお,本稿では,経済産業省の「スマートコミュニティ導入促進事業」の取組みを中心に紹介して

ま え が き

図-1 ECC事業の全容

メガソーラーメガソーラー

PV導入住宅PV導入住宅

水力発電水力発電

バイオマス発電バイオマス発電

発電状況の管理サービス

防災拠点防災拠点

熱供給管理サービス

防災拠点設備の管理サービス

エネルギーコントロールセンター

エネルギーコントロールセンター

配電変電所配電変電所売電公共施設公共施設

工場工場オフィスビルオフィスビル

学校学校

モニタ

太陽光発電太陽光発電

HGW

分電盤PCS

住民サービス

ECC契約需要家向けサービス1.発電予測2.再エネ貢献度ランキング3.再エネ機器状態管理4.省エネ見える化 ほか

ECC契約需要家向けデマンドレスポンス(DR)サービス

発電量収集 使用電力量

収集

地域サービスのための基盤として,契約家庭に宅内装置を配置

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会津若松市におけるスマートコミュニティ構築の取組み

構築する。なお,ECCによるDRサービスは,EMS(Energy

Management System)の開発が完了する2014年度下期からの試行実施を予定している。スマートコミュニティ導入促進事業期間においては,富士通,東北電力がピークカット,需要シフトなどDRサービスの実施効果(インセンティブ付与に対する需要の感応度など)を検証するとともに,顧客ニーズの分析を行う。導入促進事業終了以降,DRサービスメニューを拡充し加入者増を図るとともに,電力システム改革の動向を踏まえた上で,ECC,顧客,電気事業者間のDRサービスの実施スキームを再検討する。

【雪国型メガソーラー】

今回導入予定の雪国型メガソーラーは,「降雪期間においても発電できる」ことを基本コンセプトとしている。雪国型メガソーラーの特徴は以下のとおりである。

(1) 積雪対策として太陽電池パネル設置角度を30度に設定し,自然落雪により冬季積雪時でも発電可能とする。

(2) 駐車場利用部分は,架台の高さを十分に確保し,その上に太陽電池パネルを設置する。落雪による危険回避,駐車場内の路面確保などを考慮した配置とする。

(3) 駐車場を利用しないエリア(既築建物を取り壊し更地化)では融雪設備を導入し,人手を介さない先進的な消雪型として導入する(図-3)。太陽光パネルの設置場所は,富士通セミコンダクター(FSL)会津若松工場の敷地(駐車場,更地)とし,スペースを有効活用するとともに,安全性

(2) 地域の再生可能エネルギー発電・熱供給設備の状態管理と情報提供

(3) ECC契約需要家(低圧)向けデマンドレスポンス(DR)サービスの提供

(4) 雪国型メガソーラーの導入ここでは,特徴的な(3),(4)の機能について紹介する。

【ECC契約需要家(低圧)向けDRサービス】

このサービスは既存の電力会社の電力需給契約とは別に,ECCとECC契約需要家で契約を締結する。本事業で提供するDRサービスは,ECC契約需要家のピーク時間帯およびオフピーク時間帯の使用電力量に応じて,ECCのサービス契約に基づいてポイントの加算/減算を行い,トータルポイントに基づき地域振興券やクーポンなど,インセンティブを付与することで,ECC契約需要家のピークカット,需要シフトを促すものである(図-2)。なお,横浜市,豊田市,けいはんな学研都市,北九州市の4地域で実施されている実証実験(次世代エネルギー・社会システム実証事業)におけるDR実証実績の知見も活用することで,会津若松地域の特性に適したDRサービスメニューを開発していく。

DRサービスに対するインセンティブの原資については,地域の再生可能エネルギー発電・熱供給設備の状態管理と地域情報サービスの提供による収益,雪国型メガソーラー事業(後述)向けのサポートサービスによる収益を予定している。また,地域貢献を目的とし,地域の商店街・商業施設などからの拠出による販促費(クーポン券,地域振興券など)の活用も検討している。ECC契約需要家がこれらの地域振興券などを利用することにより,地元の商店街・商業施設などでの購買増につなげ,地域にも経済効果を還流できるようなスキームを

図-2 ピークカットのイメージ 図-3 融雪設備の導入

0:00 6:00 12:00 18:00 0:00

ピーク予測

ピークカット実績

ピークカットの実績

使用電力量

クーポン,地域商品券金券 などを提供

00 18:00 0:0:00ク

時刻融雪用パイプ

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会津若松市におけるスマートコミュニティ構築の取組み

(人,車)・太陽光設備のメンテナンス性を十分確保することを考慮している(図-4)。雪国型メガソーラーの導入・運用については,富士電機グループが実施する。

ECCは以下のサービスを提供し,メガソーラーの安定稼働をサポートする。(1) 状態計測サービス日射量,気温などの設置環境状態,受電電圧,電流などの設置状態,故障検知,警報などの設置故障計測。(2) 監視サービス発電/収益などの予測,異常時初動,故障修理,定期報告(パフォーマンスなど)。また,ECCの提供サービスで得られた利益の一部を,前述のDRサービスのインセンティブ原資の

一部として,地域活性に貢献することも検討していく。なお,ECCの運用センターもFSL会津若松工場に設置することにより,再生可能エネルギーの普及促進とエネルギーマネジメントによる取組みを推進し,会津若松地域の雇用促進に貢献する。● 太陽光発電/蓄電池の導入促進と地域防災対策

との連動会津若松市が主体で推進する「太陽光発電/蓄電

池の導入促進と地域防災対策との連動」モデルについては,図-5に示すとおりである。これは,EV(電気自動車)車両を有効活用する

ことにより,防災拠点への太陽光/蓄電池の効率的な導入を促進するモデルである。本モデルのポイントは,平常時は会津若松市の公用車として使用されているEV車両を,災害時には蓄電池として有効活用する点にある。防災拠点には,災害時に備え,太陽光発電に加え定置式の蓄電池を設置する予定であるが,これらの設備だけでは防災拠点に必要な電力としては不足することが想定される。このため,ECCでは,平常時からEV車両の位置や蓄電池残量などの情報を収集し,災害が発生した際には,それらの情報を基にEV車両を適切な防図-4 積雪防止を考慮したパネル設置

エネルギーコントロールセンター

市災害対策本部

EV車両から電力供給

<災害時>電力需給予測機能を用いた災害拠点の72時間電力安定供給実現の支援

<平常時>太陽光発電量の予測・実績の提供太陽光パネル・蓄電池の状態把握

災害時

凡例

平常時@電力

@データ

災害時

平常時

提供データ太陽光発電量蓄電池残量の監視・管理

V2Hシステム

急速充電器からの充電急速充電器からの充電

市の公用車(EV車両)V2Hシステム

防災拠点

EV車両から電力供給

夜間に充電

蓄電池

太陽光パネル

商用電力

太陽光発電データ蓄電池残データ

防災拠点鳥瞰データ

EV車両のバッテリー残量データ

事業実施主体 会津若松市

(EV車両誘導など)

急速充電器

図-5 太陽光発電/蓄電池と地域防災対策連動モデル

正面 側面

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会津若松市におけるスマートコミュニティ構築の取組み

今後の展開

今回「再生可能エネルギー活用によるまちづくり」としてスマートコミュニティ導入促進事業が各地域で実施されているが,自治体,地元企業は「スマートコミュニティが雇用創出・地域活性化につながらなくては意味がない」との意見が多い。また,スマートコミュニティ関連の会議では,上記を実現するには以下の2点が重要であると説いている。(1) 異業種連携による新たな価値創造異業種や,異なる事業を連携させることで新たな価値創造が可能となる。(2) 地域住民目線のサービス提供スマートコミュニティの主役は地域住民である。住民が求めるサービスが提供できて,事業継続が可能となる。上記を踏まえ,今回取り組んでいるスマートコミュニティ導入促進事業(ECC,メガソーラーなど)を基盤として,会津若松地域の発展に貢献できるスマートコミュニティをどのように構築していくかを述べる。● 新たな価値創造に向けた事業連携会津若松市では,今回紹介した「会津若松地域スマートコミュニティ導入促進事業」以外に,スマートグリッド通信インタフェース導入事業(総務省)など様々な事業に取り組んでいる。HEMS,高機能センサーを活用し,エネルギー有効活用促

今後の展開災拠点に誘導する仕組みを構築する。これにより,防災拠点では,太陽光発電と定置式の蓄電池のほか,EV車両の蓄電池からも電源供給を受けることが可能となるため,電源が途絶えた場合でも最大72時間程度の電力を確保できるものである。● バイオマス資源を活用した熱供給によるまち

づくり熱供給または熱電供給(熱と電気を合わせて供給)事業は,既に欧州では先進的に取り組まれている。ドイツの地方都市では,木質バイオマスを燃焼させ,発電を行うと同時にそのときに生まれる「熱」を暖房,給湯といった生活環境のエネルギーに利用し,余った「熱」で施設園芸などに供給する「熱電併給事業モデル」(図-6)を展開している。これは,再生可能エネルギーの創出と同時に,林業・農業振興などによる雇用を創出できるモデルとして注目されている。今回,森林資源が豊富で,寒冷地という気候を考慮し,会津若松地域において同様のモデル事業化,およびECCによる熱・電気供給事業者向けサービス(エネルギーの安定供給に向けた需給調整,監視など)を検討している。本事業モデルは木質バイオマスによる発電・熱だけでなく,林業・農業振興につながる期待もあり,今後,中長期的な視野を持って取組みが必要と考えている。

木質燃料供給事業者(地元企業)

会津若松市

国内森林

木質燃料供給事業者(地元企業)

発熱&発電事業者

熱源供給事業者

電力供給事業者

公共施設

施設園芸事業者

地域需要家(法人)

地域需要家(法人)

環境価値

流通事業者

外食産業事業者

食品加工事業者

カーボンオフセット事業者

木質バイオマス発電

木質チップ

木質チップ

野菜

電気

電気

電気

地元材

民間流通

図-6 熱電供給事業モデル全体像

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会津若松市におけるスマートコミュニティ構築の取組み

らを単なる施設ではなく「新たな地域貢献,活性化の資源」と位置付けた検討も進めていく。一方,ECCが提供するDRサービスなどを活用し,例えば夏季の電力需要ピーク時を避け,植物栽培用の照明を夜間に集中させるなど,地域の電力安定供給に貢献するスマートコミュニティにふさわしい植物工場の在り方を検討していく。また,教育用のコンテンツとしても活用していく。半導体製造,植物工場,再生可能エネルギー管理などを,聞いて・見て・体験できる体験学習の場を提供することで,小中高校生の再生可能エネルギー,ITへの関心を高め,理解を深めてもらうことができる。既に,会津地域のスマートコミュニティ事業の取組みについて,地域の学校から問合せもあり,この分野で地域貢献できる可能性は高い。更に,産業観光のコンテンツとしても期待できる。再生可能エネルギー活用のモデル事例として,自治体,企業向け産業観光のコンテンツとして整備する。日中は現地視察,夜は会津の温泉と郷土料理でくつろぐなど,利用者の満足度向上と,地

進,地域住民が安心して暮らせるまちづくりを進めている。今後,ECCはこれら事業と連携することで,「スマートシティ会津若松」の実現に向けて,エネルギーの安定供給や再生可能エネルギー拡大への貢献を進めていく(図-7)。次に,富士通独自の取組みを述べる。FSL会津若松工場のクリーンルームを植物工場に転用し,復興庁・経済産業省の補助事業として,大規模植物工場の実証事業を富士通ホーム&オフィスサービスが補助事業者となり,地元の会津富士加工(株)を含む6社1大学でコンソーシアムを組んで行う。人工透析・慢性腎臓病患者など,カリウムの摂取制限が必要な患者の方に,低カリウムレタスを出荷(2014年1月量産開始)する予定である。また,半導体製造で培った雑菌管理などのノウハウで,安全,高品質な野菜を提供し,食・農クラウド「Akisai」(1)の活用(リファレンスモデル化)により効率的な植物工場経営を目指す。これにより,FSL会津若松工場にECC,雪国型メガソーラー,植物工場が集約されるため,これ

社会インフラ

エネルギーコントロールセンター

エネルギーコントロールセンター

風力発電水力発電

バイオマス発電

ビル

HEMS(ホームエネルギー管理システム)

ナビゲーション機能とスマートメーターの連動

スマートシティ(タウン)づくりへの高機能センサーによる情報把握(総務省)

エネルギーマネジメント,データ集積への技術の集積

気象センサー

スマート・メータ

電化製品

電気自動車の充電

ZigBeeおよびPLC

ZigBeeおよびPLC

LED照明ZigBeeおよびPLCルータ/モデム

電子レンジ 電気ポット エアコン 冷蔵庫

WiFiPCZigBeeおよびPLC家庭内

モニタ

プラント監視センサー 医療用センサー スマートメーター

GPSなど交通情報センサー

建築物劣化診断センサー

都市防災総合推進事業との連携(国土交通省)

統合GIS(地図情報システム)の構築

工場・商業施設

BEMSサービス

家庭

見える化

太陽光発電&蓄電池(GND基金)

林地残材 チップ加工

メガソーラー

PV導入住宅PV導入住宅

地域内「再生可能エネルギー」の「地産地消」を目指して

◆スマートグリッド通信インタフェース導入事業(総務省)

見える化

供給 供給

今後連携を検討する他事業スマートコミュニティ導入促進事業

ECCを基盤とするスマートタウンづくり情報ネットワーク

電力ネットワーク

エネルギーコントロールセンター

エネルギーコントロールセンター

防災時EV車両誘導

BEMSサービス

図-7 会津若松市におけるスマートコミュニティ事業を基盤とした事業展開

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会津若松市におけるスマートコミュニティ構築の取組み

ていただき,そのそれぞれの思いを描いているが,実現には相当の時間と資金がかかる。長期にわたりモチベーションを保ち続けるために最も重要なことは,地域のステークホルダーである地域住民,企業の意見を取り入れ,参画意識を高めることである。今回のスマートコミュニティ導入促進事業では,地域住民に対する取組みとして,再生可能エネルギーの見える化,DRサービスを利用した地域活性化(クーポン連携など)など,地域住民の意識向上につながる仕組みを織り込んでいる。今後,これらを基に地元ステークホルダーの皆様とともに,会津若松市の「スマートシティ会津若松」の実現に貢献していきたい。本事業の一部は経済産業省,一般社団法人新エネルギー導入促進協議会の「スマートコミュニティ構想普及支援事業」および「先端農業産業化システム実証事業」により実施したものである。

参 考 文 献

(1) 富士通:食・農クラウドAkisai(秋彩). http://jp.fujitsu.com/solutions/cloud/agri(2) 富士通:フィールド・イノベーション. http://jp.fujitsu.com/about/corporate/philosophy/ businesspolicy/fi eldinnovation/

元観光産業への貢献が期待できる。このほか,会津若松市には,水力・風力・バイオマスなど,会津の豊かな自然を活用した再生可能エネルギー事業者も多数存在しており,各事業者,自治体と連携し,会津若松地域全体のモデル事例として検討していきたい。● 地域住民が求めるサービスこれまで紹介してきた取組みについては,本当に求めているものを提供できなくては,継続可能な事業とはなり得ない。富士通では,課題・ニーズを可視化する手法として「フィールド・イノベーション」(2)を活用している。従来,主に企業向けに適用し,課題の本質明確化,変革に向けた施策立案・合意形成を支援してきた。今後,スマートコミュニティ導入促進事業にこの手法を活用し,自治体・地域住民の真の課題・ニーズの明確化に貢献していく。この部分の取組みについては,本誌掲載の「住民の思いを反映するスマートコミュニティに向けて~あわじ環境未来島構想事例~」に詳述してあるので参照いただきたい。

む  す  び

会津若松地域において,スマートコミュニティ導入促進事業の取組みを始めて3年になる。その間,自治体,地元企業など,様々な方の意見を聞かせ

む  す  び

多田尚人(ただ なおと)

スマートシティ・エネルギー推進本部 所属現在,地域スマートコミュニティ導入促進に従事。

丸井智浩(まるい もとひろ)

スマートシティ・エネルギー推進本部ソリューション統括部 所属現在,会津若松地域スマートコミュニティ導入促進事業に従事。

水谷彰宏(みずたに あきひろ)

スマートシティ・エネルギー推進本部ソリューション統括部 所属現在,会津若松地域スマートコミュニティ導入促進事業,植物工場構築事業に従事。

著 者 紹 介