金属・セラミックス材料のレーザ焼結技術に関する研究 -...

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電気炉などを用いて金属粉末やセラミックス粉 末を加熱すると、粒子同士が結合して焼結します。 一方で、非常に高いエネルギを持ったレーザ光を物 質に照射することで、ごく短時間で融点を超える熱 を発生させ、金属などの粉末を焼結することが可能 です。 そこで本研究では、グリーンテープレーザ焼結法 (図1参照)を用い、金属粉末やセラミックス粉末を 焼結して膜を形成します。具体的には、まず金属粉 末やセラミックス粉末と高分子材料のバインダを 混合し、液体状のグリーンペーストを作製します。 次にペーストを基板上に塗布して乾燥させ、グリー ンテープとします。最後に高出力なレーザ光を集光 照射して焼結膜を形成します。 このようなレーザ焼結法を用いると、ビームの大 きさであるサブミリメートルサイズの、局所的な領 域でのみ焼結可能です。またレーザ光の出力や発振 時間(パルス幅)などのパラメータを変えることで、 膜中の気孔の割合(気孔面積率)を制御できます。 図2にNd:YAGレーザ光の照射で得られた焼結膜 の電子顕微鏡像を示します。ここでは、基板とし てイットリア安定化ジルコニア(YSZ)を、また焼 結材料としては酸化ニッケル(NiO)/YSZ、ランタ ンストロンチウムマンガナイト(LSM)を使用し ました。これらの材料は固体酸化物形燃料電池の電 解質膜(YSZ)や燃料極膜(NiO/YSZ)、空気極膜 (LSM)膜として利用され、レーザ焼結法でも気孔 面積率が20%を超える多孔質膜の形成に成功してい ます。 図1 グリーンテープレーザ焼結法 図2 レーザ焼結膜表面の電子顕微鏡像 (a) NiO/YSZ膜 (b) LSM膜 124 何に 使える? 一言 アピール ものづくり 研究概要 研究 テーマ 本研究で形成した焼結膜は、固体酸化物形燃料電池の電極膜や電解質膜への応用を考えて います。 本研究は、金属粉末やセラミックス粉末のレーザ焼結パラメータを明らかにし、局所的 な領域にバルクや多孔質な焼結膜の形成を行います。 工学部 機械工学科 准教授 山崎 和彦 TEL 0294-38-5278 FAX 0294-38-5278 URL http://laser-lab.mech.ibaraki.ac.jp/ e-mail kyama @ mx.ibaraki.ac.jp ◆キーワード レーザ焼結  固体酸化物形燃料電池 ◆産業界の相談に対応できる分野 ものづくり レーザプロセシング 金属・セラミックス材料のレーザ焼結技術に関する研究

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Page 1: 金属・セラミックス材料のレーザ焼結技術に関する研究 - …h.scc.ibaraki.ac.jp/seeds2015/124.pdf電気炉などを用いて金属粉末やセラミックス粉

電気炉などを用いて金属粉末やセラミックス粉末を加熱すると、粒子同士が結合して焼結します。一方で、非常に高いエネルギを持ったレーザ光を物質に照射することで、ごく短時間で融点を超える熱を発生させ、金属などの粉末を焼結することが可能です。

そこで本研究では、グリーンテープレーザ焼結法(図1参照)を用い、金属粉末やセラミックス粉末を焼結して膜を形成します。具体的には、まず金属粉末やセラミックス粉末と高分子材料のバインダを混合し、液体状のグリーンペーストを作製します。次にペーストを基板上に塗布して乾燥させ、グリーンテープとします。最後に高出力なレーザ光を集光照射して焼結膜を形成します。

このようなレーザ焼結法を用いると、ビームの大きさであるサブミリメートルサイズの、局所的な領域でのみ焼結可能です。またレーザ光の出力や発振時間(パルス幅)などのパラメータを変えることで、膜中の気孔の割合(気孔面積率)を制御できます。

図2にNd:YAGレーザ光の照射で得られた焼結膜の電子顕微鏡像を示します。ここでは、基板としてイットリア安定化ジルコニア(YSZ)を、また焼結材料としては酸化ニッケル(NiO)/YSZ、ランタンストロンチウムマンガナイト(LSM)を使用しました。これらの材料は固体酸化物形燃料電池の電解質膜(YSZ)や燃料極膜(NiO/YSZ)、空気極膜

(LSM)膜として利用され、レーザ焼結法でも気孔面積率が20%を超える多孔質膜の形成に成功しています。

図1 グリーンテープレーザ焼結法 図2 レーザ焼結膜表面の電子顕微鏡像

(a) NiO/YSZ膜 (b) LSM膜

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何に使える?

一言アピール

ものづくり

ものづくり

研究概要

研究テーマ

本研究で形成した焼結膜は、固体酸化物形燃料電池の電極膜や電解質膜への応用を考えて

います。

本研究は、金属粉末やセラミックス粉末のレーザ焼結パラメータを明らかにし、局所的

な領域にバルクや多孔質な焼結膜の形成を行います。

工学部 機械工学科 准教授山崎 和彦

TEL 0294-38-5278FAX 0294-38-5278URL http://laser-lab.mech.ibaraki.ac.jp/e-mail kyama@mx.ibaraki.ac.jp

◆キーワードレーザ焼結  固体酸化物形燃料電池

◆産業界の相談に対応できる分野ものづくり レーザプロセシング

金属・セラミックス材料のレーザ焼結技術に関する研究