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離島医療における t-PA 療法の実践例についての報告 与論徳州会病院 研修医 内本 一宏 御指導 久志院長 七崎先生 要約 与論病院にて、急性期の脳梗塞に対して t-PA 療法を施行した自験3症例を報告し、SCU を持 たない離島病院における t-PA 療法施行時の実際を報告する。また、t-PA 療法施行時の観察体制 など院内環境の整備を図り、パスの作成や院内勉強会を行ったので報告する。 Case 1 76y F Diag. 脳梗塞(右 MCA 領域) 左片麻痺 構語障害 Findings 1/26 T-T 67.5 Plt30.1 ECG Af NIHSS 17 2/8 NIHSS 11 Progress H19/1/26pm2 発症。左顔面麻痺、左上下肢麻痺、構語障害あり。t-PA 療法施行した が、症状改善なし。2 日目より構語障害は改善みられたが、左片麻痺は改善せず経過中。 Case 2 88y M Diag. 右皮質下梗塞 左片麻痺 再出血 PMH PAf H18 脳出血 H18 消化管出血 バイアスピリン服用中 Findings 2/6 NIHSS 31 2/7 NIHSS 20 Progress H19/2/6 意識障害、左片麻痺にて発症。MRI にて診断後 t-PA 療法施行し、左片麻痺 の若干の改善あり。その後、容態安定していたが 2/17 未明に突如 CPA となり永眠。 Case 3 58y M Diag. 右半身不全麻痺 右顔面不全麻痺 脳幹梗塞 梗塞後出血 PMH HTN 慢性アルコール性肝障害 Findings CT にて左被殻に early CT sign 疑われるものの HDA なし。MRI-DWI および flair で脳幹部に HIA あり(φ8mmNIHSS 6 Plt 10.2 INR 1.06 Progress H19/2/21pm11:30 頃発症。翌 2/22 未明 1:00 過ぎに搬送。右半身不全麻痺あり、MRI で診断後、t-PA 療法開始したところ数分で、四肢の運動感覚低下し意識障害増悪したため、投与 を中止した。 CT にて脳幹部の梗塞後出血を認めた。その後、容態徐々に悪化し、全身の痙攣を生 じ、呼吸心拍低下し、am6:22 永眠された。 結語 離島医療では、高次の病院施設への転送は多大な時間を必要とする。したがって適応症例では、 自施設で積極的に t-PA 療法を施行するべきであろう。t-PA 療法は二次出血などのリスクが少な くなく、極力迅速にかつ安全に t-PA 療法を施行できる環境を整備するためには、外来・病棟スタ ッフの意識・知識・能力の向上を間断なく図っていく必要がある。

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Page 1: 離島医療における t-PA 療法の実践例についての報告 › menu-01 › pdf › 03 › 03_summary05.pdfたない離島病院におけるt-PA 療法施行時の実際を報告する。また、t-PA

離島医療における t-PA 療法の実践例についての報告

与論徳州会病院 研修医 内本 一宏 御指導 久志院長 七崎先生

要約 与論病院にて、急性期の脳梗塞に対して t-PA 療法を施行した自験3症例を報告し、SCU を持

たない離島病院における t-PA 療法施行時の実際を報告する。また、t-PA 療法施行時の観察体制

など院内環境の整備を図り、パスの作成や院内勉強会を行ったので報告する。 Case 1 76y F

Diag. 脳梗塞(右 MCA 領域) 左片麻痺 構語障害 Findings 1/26 T-T 67.5 Plt30.1 ECG Af NIHSS 17 2/8 NIHSS 11 Progress H19/1/26pm2 発症。左顔面麻痺、左上下肢麻痺、構語障害あり。t-PA 療法施行した

が、症状改善なし。2 日目より構語障害は改善みられたが、左片麻痺は改善せず経過中。 Case 2 88y M

Diag. 右皮質下梗塞 左片麻痺 再出血 PMH PAf H18 脳出血 H18 消化管出血 バイアスピリン服用中 Findings 2/6 NIHSS 31 2/7 NIHSS 20 Progress H19/2/6 意識障害、左片麻痺にて発症。MRI にて診断後 t-PA 療法施行し、左片麻痺

の若干の改善あり。その後、容態安定していたが 2/17 未明に突如 CPA となり永眠。 Case 3 58y M

Diag. 右半身不全麻痺 右顔面不全麻痺 脳幹梗塞 梗塞後出血 PMH HTN 慢性アルコール性肝障害 Findings CT にて左被殻に early CT sign 疑われるものの HDA なし。MRI-DWI および flairで脳幹部に HIA あり(φ8mm) NIHSS 6 Plt 10.2 INR 1.06 Progress H19/2/21pm11:30 頃発症。翌 2/22 未明 1:00 過ぎに搬送。右半身不全麻痺あり、MRIで診断後、t-PA 療法開始したところ数分で、四肢の運動感覚低下し意識障害増悪したため、投与

を中止した。CT にて脳幹部の梗塞後出血を認めた。その後、容態徐々に悪化し、全身の痙攣を生

じ、呼吸心拍低下し、am6:22 永眠された。 結語

離島医療では、高次の病院施設への転送は多大な時間を必要とする。したがって適応症例では、

自施設で積極的に t-PA 療法を施行するべきであろう。t-PA 療法は二次出血などのリスクが少な

くなく、極力迅速にかつ安全に t-PA 療法を施行できる環境を整備するためには、外来・病棟スタ

ッフの意識・知識・能力の向上を間断なく図っていく必要がある。

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