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取材を終えて 株式会社 加島 代表取締役社長 加島 裕次 〒534–0014 大阪市都島区都島北通1-10-7 TEL. 06-6922-5541 FAX. 06-6922-5545 資本金/10,000千円 従業員/26名 主な取引先/大手家電メーカー、大手自動車メーカー、 半導体メーカーなど 主な保有設備/ボール 盤・巻 線機 各4台、スエージ ング マシン2台、旋盤・芯なし研削機・研磨機 各1台、高温アニール炉1基 主力製品/電熱ヒーター、電熱機器、ホース外装材 07 株式会社 加島 電熱ヒーター技術と 提案力の進化で独自の地位を築く ސ٬ͷཁʹԠえて ΒϝʔΧʔͱల 産業用電熱ヒーターを扱って約60年。もともとは商社と して創業し、ヒーターに使うニクロム線など電熱素材を販売 していたが、顧客の依頼に応じて線を巻きつける加工やヒー ター自体の製作・開発も手がけるようになった。現在は売り 上げの30―40%を自社製品が占め、中でも樹脂成形用金型 の加熱などに使われるカートリッジヒーターを主力としている。 カタログで既製品を販売するというのではなく、顧客の 要望に合わせて一品ずつ作り込み、最適な形に仕上げて 提供するのが特徴だ。加島裕次社長は「顧客からニーズを 聞き出し、提案する力には長けている」と自負する。 ʹۀώʔλʔज़をԠ༻ 新事業として、自動車や建機といった業界向けに油圧用 ホースを保護するカバーなど外装材の製作・販売も始めた。 ヒーターのノウハウを活用して専用の加熱装置を開発し、 外装材と併せて供給している。 事業内容 ٸՃՄͳώʔλʔͷʹ࡞ணख 樹脂成形の現場では、加工する製品の外観不良を引き 起こすウエルドラインの発生を防ぐため、金型を急速に加熱 して射出後に急速冷却するヒート&クール方式が採用され ている。従来、加熱には蒸気を使うが、ボイラーの設置が 必要で手間がかかるうえ、蒸気による腐食も問題だった。 電気で加熱すれば、工程短縮やコスト削減が可能になり、 金型の寿命を延ばすことができる。加えて、顧客からは目的 の温度に達するまでの時間短縮が求められていた、そこで、 上限温度まで急速に加熱できるカートリッジヒーターの 製作に取り組んだ。 ܕͷώʔλʔԹͷ ヒーター径を小さく加工するためのスエージングマシン や、ヒーターで加熱した金型の熱分布を解析できるソフト ウエア、ヒーターの温度分布の状況を検証するための遠赤 外線サーモグラフィーを導入することで、性能を確立して いった。 補助事業 վॏͶώʔλʔをେ෯ʹ ヒーターは、単位面積あたりの電気容量を表す 「ワット密度」が大きいほど表面温度の上昇が速く なる。金型に使われるヒーターのワット密度は1㎠ あたり10W以下が一般的だが、新しいカートリッジ ヒーターの開発では顧客の要求に応じて改良を重ね 段階的に引き上げていった結果、目標としていた 同60Wを達成した。 ܘՃͰ෦ߴΊΔ ヒーターの製造工程は、ニクロム線を巻いた碍 がい パイプ内に挿入して絶縁用の粉末を充 じゅうてん 塡した後、スエー ジングマシンでプレス加工して直径を小さくする。新 たに導入したスエージングマシンはヒーターの直径を 5.9―10㎜の幅に加工可能で、5.9―22㎜の従来 機に比べて小径にしやすいため、加工の精度が上がっ た。工程内で絶縁効果を高めるノウハウも生かし、 ヒーターの内部密度や熱伝導効率の向上に成功した。 また、小径加工に適した新しいスエージングマシン を新カートリッジヒーター製造向けの専用機とする ことで段取り替えが不要となり、工程の内製化も進ん だため、生産効率化やリードタイムの短縮にもつな がった。 具体的成果 ಋೖઃඋͷ׆༻Ͱސ٬をଟ໘తʹԉ ヒート&クール方式の樹脂成形用金型の製造に あたりスエージングマシンを増設したことで人員も 増強し、生産能力が高まった。これまで対応しきれ ていなかった新規の大口案件の引き合いにも応えら れるようになった。加えて、金型の熱分布を解析する ソフトやヒーターの温度分布を確認するための遠赤 外線サーモグラフィーを利用し、顧客への温度分布 データの提供など技術面での支援が可能になった。 解析ソフトは金型の熱分布のほかに経時的変化が 把握できるため、ヒーターの設計にも役立っている という。こうした体制強化により、新カートリッジヒー ターを要望する顧客からの受注を拡大するとともに、 ほかのヒーター向けの顧客対応も含め導入した設備 の一層の活用を進めていく。 ΧʔτϦοδώʔλʔを৽༻ʹల։ 加島社長は「ワット密度が高く、温度の高い領域に 到達するようなヒーターが求められている」として おり、樹脂成形用金型向け以外でもカートリッジ ヒーターの性能が生かせる用途を開拓する。例えば、 現在活況を呈している半導体や、市場が拡大して いる電池といった分野への展開を見込んでいる。 今後の戦略 本社ビル外観 ଟͳछのώʔλʔΛΖɺҰҰのडੜのͰ ज़Λɻػڀݚͱの࿈ʹܞΑりのώʔλʔ։ʹも औりΉɻ ސ٬ͱのりऔりΒχʔζΛΈɺఏҊʹมΔϊϋも๛ɻ ޙࠓも··ͳཁʹٻରԠͳΒɺଞͱҰઢΛըಠ࿏ઢΛ؏くɻ 年Ίಈػݐのϗʔε֎ʹۀもɺഓज़Λ ੜɻ৽のల։Ͱۀ༰ΛͲେくもΈɻ ޙࠓͷ ۀ༰େͷʹ http://www.kashima-hot.co.jp/ 昭和30年の創業以来、「ユーザー本位の 経営」を理念として歩んできました。お客様 ごとに最適なヒーターをカスタマイズして 提供する「電熱ヒーターのトータルプラン ナー」として、ご要望にお応えします。 お客様に最適なヒーターを個別に提供します 代表取締役社長 加島 裕次 短納期 企画力 オンリー ワン技術 海外 対応 連携力 カートリッジヒーターと金型 電熱ヒーターの展示場 平成26・27年度ものづくり補助金成果事例集 平成26・27年度ものづくり補助金成果事例集 19 18

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Page 1: 提案力の進化で独自の地位を築く - maido.or.jp · ヒート&クール方式の樹脂成形用金型の製造に あたりスエージングマシンを増設したことで人員も

取材を終えて

株式会社 加島代表取締役社長 加島 裕次〒534–0014 大阪市都島区都島北通1-10-7TEL. 06-6922-5541  FAX. 06-6922-5545資本金/10,000千円 従業員/26名主な取引先/大手家電メーカー、大手自動車メーカー、

半導体メーカーなど主な保有設備/ボール盤・巻線機各4台、スエージング

マシン2台、旋盤・芯なし研削機・研磨機各1台、高温アニール炉1基

主力製品/電熱ヒーター、電熱機器、ホース外装材

07株式会社 加島

電熱ヒーター技術と提案力の進化で独自の地位を築く

顧客の要望に応えて商社からメーカーへと発展

産業用電熱ヒーターを扱って約60年。もともとは商社として創業し、ヒーターに使うニクロム線など電熱素材を販売していたが、顧客の依頼に応じて線を巻きつける加工やヒーター自体の製作・開発も手がけるようになった。現在は売り上げの30―40%を自社製品が占め、中でも樹脂成形用金型の加熱などに使われるカートリッジヒーターを主力としている。

カタログで既製品を販売するというのではなく、顧客の要望に合わせて一品ずつ作り込み、最適な形に仕上げて提供するのが特徴だ。加島裕次社長は「顧客からニーズを聞き出し、提案する力には長けている」と自負する。

他事業にもヒーター技術を応用新事業として、自動車や建機といった業界向けに油圧用

ホースを保護するカバーなど外装材の製作・販売も始めた。ヒーターのノウハウを活用して専用の加熱装置を開発し、外装材と併せて供給している。

事業内容

急速加熱が可能なヒーターの製作に着手樹脂成形の現場では、加工する製品の外観不良を引き

起こすウエルドラインの発生を防ぐため、金型を急速に加熱して射出後に急速冷却するヒート&クール方式が採用されている。従来、加熱には蒸気を使うが、ボイラーの設置が必要で手間がかかるうえ、蒸気による腐食も問題だった。

電気で加熱すれば、工程短縮やコスト削減が可能になり、金型の寿命を延ばすことができる。加えて、顧客からは目的の温度に達するまでの時間短縮が求められていた、そこで、上限温度まで急速に加熱できるカートリッジヒーターの製作に取り組んだ。

金型の熱分布やヒーター温度の分布も確認ヒーター径を小さく加工するためのスエージングマシン

や、ヒーターで加熱した金型の熱分布を解析できるソフトウエア、ヒーターの温度分布の状況を検証するための遠赤外線サーモグラフィーを導入することで、性能を確立していった。

補助事業

改良重ねヒーター性能を大幅に向上ヒーターは、単位面積あたりの電気容量を表す

「ワット密度」が大きいほど表面温度の上昇が速くなる。金型に使われるヒーターのワット密度は1㎠あたり10W以下が一般的だが、新しいカートリッジヒーターの開発では顧客の要求に応じて改良を重ね段階的に引き上げていった結果、目標としていた同60Wを達成した。

小径加工で内部密度や熱効率高めるヒーターの製造工程は、ニクロム線を巻いた碍

がい子し

をパイプ内に挿入して絶縁用の粉末を充

じゅうてん塡した後、スエー

ジングマシンでプレス加工して直径を小さくする。新たに導入したスエージングマシンはヒーターの直径を5.9―10㎜の幅に加工可能で、5.9―22㎜の従来機に比べて小径にしやすいため、加工の精度が上がった。工程内で絶縁効果を高めるノウハウも生かし、ヒーターの内部密度や熱伝導効率の向上に成功した。

また、小径加工に適した新しいスエージングマシンを新カートリッジヒーター製造向けの専用機とすることで段取り替えが不要となり、工程の内製化も進んだため、生産効率化やリードタイムの短縮にもつながった。

具体的成果

導入設備の活用で顧客を多面的に支援ヒート&クール方式の樹脂成形用金型の製造に

あたりスエージングマシンを増設したことで人員も増強し、生産能力が高まった。これまで対応しきれていなかった新規の大口案件の引き合いにも応えられるようになった。加えて、金型の熱分布を解析するソフトやヒーターの温度分布を確認するための遠赤外線サーモグラフィーを利用し、顧客への温度分布データの提供など技術面での支援が可能になった。解析ソフトは金型の熱分布のほかに経時的変化が把握できるため、ヒーターの設計にも役立っているという。こうした体制強化により、新カートリッジヒーターを要望する顧客からの受注を拡大するとともに、ほかのヒーター向けの顧客対応も含め導入した設備の一層の活用を進めていく。

カートリッジヒーターを新用途に展開加島社長は「ワット密度が高く、温度の高い領域に

到達するようなヒーターが求められている」としており、樹脂成形用金型向け以外でもカートリッジヒーターの性能が生かせる用途を開拓する。例えば、現在活況を呈している半導体や、市場が拡大している電池といった分野への展開を見込んでいる。

今後の戦略

本社ビル外観

多様な種類の電熱ヒーターをそろえ、一品一様の受注生産や自社製品の拡充で技術を蓄積してきた。研究機関との産学連携により次世代のヒーター開発にも取り組む。顧客とのやり取りからニーズをつかみ、提案に変えるノウハウも豊富だ。今後もさまざまな要求に対応しながら、他社と一線を画す独自路線を貫く。近年始めた自動車や建機向けのホース外装材事業にも、培った電熱技術を生かす。新分野への展開で業容をどう拡大していくかも楽しみだ。

今後の業容拡大の方針に注目

http://www.kashima-hot.co.jp/

昭和30年の創業以来、「ユーザー本位の経営」を理念として歩んできました。お客様ごとに最適なヒーターをカスタマイズして提供する「電熱ヒーターのトータルプランナー」として、ご要望にお応えします。

お客様に最適なヒーターを個別に提供します

代表取締役社長 加島 裕次

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