行政による経済的不利益賦課制度、財産の隠匿散逸防止策に...

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行政による経済的不利益賦課制度、財産の隠匿散逸防止策について (資料編) 資料1 消費者安全法第 12 条第2項に基づき 消費者事故等として通知された情報 ·······························1 資料2 年度別にみた消費生活相談の契約当事者年代別の割合 ···············2 資料3 消費者の財産被害に係るすき間事案への行政措置の導入 ·············3 資料4 破産事案の相談件数推移 ·········································4 資料5 消費者庁に寄せられる財産分野の情報の処理及び それに基づく対応の実施について ·································5 資料6 独占禁止法上の課徴金制度の概要 ·································6 資料7 金融商品取引法上の課徴金制度の概要 ·····························7 資料8 公認会計士法上の課徴金制度の概要 ································8 資料9 独占禁止法及び景品表示法の一部を改正する法律案(抄) ···········9 資料 10 独占禁止政策(競争政策)と消費者政策の関係について ············10 資料 11 消費者庁における処分事業者一覧(景品表示法) ··················12 資料 12 消費者庁及び経済産業局における処分事業者一覧(特定商取引法) ··15 資料 13 特定商取引法関連の警察による摘発件数について ··················20 資料 14 販売購入形態別の年度別推移及び相談全体に占める割合 ············21 資料 15 二重処罰との関係について ······································22 資料 16 民事上の請求権との調整について ································24 資料 17 独占禁止法・金融商品取引法・公認会計士法の 課徴金及び刑事罰の比較 ········································26 資料 18 行政調査権限の比較 ············································29 資料 19 課徴金制度における手続保障について ····························30 資料 20 課徴金制度における徴収手続等について ··························31 資料 21 仮差押えの担保基準 ············································32 資料 22 財産の特定の程度について ······································33 資料 23 民事執行法上の財産開示制度 ····································34 資料 24 行政調査の権限について ········································35 資料 25 民事法律扶助業務(総合法律支援法) ····························36 資料 26 自治体による訴訟費用の援助制度の例(東京都消費生活条例) ······37 資料 27 暴対法で検討された供託命令制度 ································38 資料 28 会社法上の会社解散命令について ································39 資料 29 会社解散命令制度の調査権限について ····························41 資料 30 破産手続開始申立制度について ··································43 資料 31 個々の被害者からの 破産手続開始申立てが期待できない理由について ··················49

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Page 1: 行政による経済的不利益賦課制度、財産の隠匿散逸防止策に ......行政による経済的不利益賦課制度、財産の隠匿散逸防止策について (資料編)

行政による経済的不利益賦課制度、財産の隠匿散逸防止策について

(資料編)

資料1 消費者安全法第 12条第2項に基づき

消費者事故等として通知された情報 ······························· 1

資料2 年度別にみた消費生活相談の契約当事者年代別の割合 ··············· 2

資料3 消費者の財産被害に係るすき間事案への行政措置の導入 ············· 3

資料4 破産事案の相談件数推移 ········································· 4

資料5 消費者庁に寄せられる財産分野の情報の処理及び

それに基づく対応の実施について ································· 5

資料6 独占禁止法上の課徴金制度の概要 ································· 6

資料7 金融商品取引法上の課徴金制度の概要 ····························· 7

資料8 公認会計士法上の課徴金制度の概要 ································ 8

資料9 独占禁止法及び景品表示法の一部を改正する法律案(抄) ··········· 9

資料 10 独占禁止政策(競争政策)と消費者政策の関係について ············ 10

資料 11 消費者庁における処分事業者一覧(景品表示法) ·················· 12

資料 12 消費者庁及び経済産業局における処分事業者一覧(特定商取引法) ·· 15

資料 13 特定商取引法関連の警察による摘発件数について ·················· 20

資料 14 販売購入形態別の年度別推移及び相談全体に占める割合 ············ 21

資料 15 二重処罰との関係について ······································ 22

資料 16 民事上の請求権との調整について ································ 24

資料 17 独占禁止法・金融商品取引法・公認会計士法の

課徴金及び刑事罰の比較 ········································ 26

資料 18 行政調査権限の比較 ············································ 29

資料 19 課徴金制度における手続保障について ···························· 30

資料 20 課徴金制度における徴収手続等について ·························· 31

資料 21 仮差押えの担保基準 ············································ 32

資料 22 財産の特定の程度について ······································ 33

資料 23 民事執行法上の財産開示制度 ···································· 34

資料 24 行政調査の権限について ········································ 35

資料 25 民事法律扶助業務(総合法律支援法) ···························· 36

資料 26 自治体による訴訟費用の援助制度の例(東京都消費生活条例) ······ 37

資料 27 暴対法で検討された供託命令制度 ································ 38

資料 28 会社法上の会社解散命令について ································ 39

資料 29 会社解散命令制度の調査権限について ···························· 41

資料 30 破産手続開始申立制度について ·································· 43

資料 31 個々の被害者からの

破産手続開始申立てが期待できない理由について ·················· 49

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資料 32 債権者による破産手続開始申立てに必要な疎明資料について ········ 50

資料 33 過去の事案における予納金・配当率等について ···················· 51

資料 34 破産債権の順位について ········································ 52

資料 35 更生特例法上の破産手続の概要 ·································· 53

資料 36 監督官庁による破産手続開始申立てについて

(法制審における議論) ········································· 54

資料 37 疎明資料として考えられるものの例 ······························ 55

資料 38 破産手続の役割について ········································ 56

資料 39 行政の役割について ············································ 57

資料 40 アメリカ合衆国における

「消費者被害回復」(consumer redress)について ················· 58

資料 41 差止命令制度について ·········································· 67

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資料1

消費者安全法第 12 条第2項に基づき消費者事故等として通知された情報

(件数)

22 年度

上半期

22 年度

下半期 22 年度

23 年度

上半期

23 年度

下半期 23 年度

24 年度

上半期

消費者事故等

全体 9,007 8,877 17,614 7,980 7,137 15,117 6,519

財産事案 7,934 7,759 15,693 6,614 5,614 12,228 5,236

(参考)割合 90.8% 87.4% 89.1% 82.9% 78.7% 80.9% 80.3%

(出典)消費者庁「消費者安全法に基づく消費者事故等に関する国会報告について」より。

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2

資料2

年度別にみた消費生活相談の契約当事者年代別の割合

(出典)国民生活センター「PIO-NETにみる 2011年度の消費生活相談」より。

3.4

3.4

3

3.1

3.7

3.7

3.9

6.4

5.9

4.1

9.8

10.6

12.1

13.4

15.4

15.3

16.3

20.7

26.7

22.5

15.9

16.8

18.5

19.6

20.8

19.7

19.5

25.5

25.3

22.6

16.3

16.1

16.5

16.6

16.9

14.9

15

17.2

13.9

14.3

12.9

13.2

13.3

13.7

14

14.4

13

11.5

9.6

11.8

14.2

13.8

12.7

11.9

10.2

11

12.4

6.8

6.4

8.4

16.8

15.5

13.6

12.2

10.4

12.1

10.7

6.7

6.6

8.8

10.7

10.7

10.2

9.4

8.7

8.9

9.2

5.2

5.6

7.6

0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100%

2011

2010

2009

2008

2007

2006

2005

2004

2003

2002

20歳未満 20歳代 30歳代 40歳代 50歳代 60歳代 70歳代 不明

(年度)

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資料3

消費者の財産被害に係るすき間事案への行政措置の導入

(消費者安全法の一部を改正する法律の概要)

経緯

【消費者安全法 附則(抄)】

2 政府は、この法律の施行後三年以内に、消費者被害の発生又は拡大の状況その他経済社会

情勢等を勘案し、消費者の財産に対する重大な被害を含め重大事故等の範囲について検討を

加え、必要な措置を講ずるものとする。

概要

①事業者に対する措置

(「すき間事案」の場合(被害の発生・拡大防止を図るために実施し得る他の法律に基づく措置がない場合))

(例)実態のない利用権の取引、換金困難な外国通貨の取引 等

○措置の要件:「多数消費者財産被害事態」(消費者に重大な財産被害を生じさせる事態)

取引の分野の「消費者事故等」(※1)のうち、

消費者の財産上の利益を侵害することとなる不当な取引であって

事業者が示す内容・取引条件と実際のものが著しく異なる取引など(※2)が行われることにより、

多数の消費者の財産に被害を生じさせ又は生じさせるおそれのある事態

(※1)不実のことを告げること、故意に事実を告げないこと等が事業者により行われた事態

(※2)そのほか政令で定める取引

○措置の内容:事業者に対して、内閣総理大臣が措置

・被害を生じさせている取引の取りやめその他必要な措置を勧告

・勧告に正当な理由なく従わない場合、勧告に従う旨を命令(命令違反に対しては罰則)

【「すき間事案」への勧告・命令のイメージ】

②関係機関等への情報提供

被害の発生・拡大の防止に資する情報を、内閣総理大臣が関係機関等へ提供

(例)消費者庁が犯罪利用預金口座等を発見した場合、いわゆる振り込め詐欺救済法に基づく

口座の凍結のため、金融機関に対し、必要な協力を行った上で情報提供

(安全)消費生活用製品安全法 等

措置要求 措置要求

消費者庁

(消費者安全法)

(※1)「重大事故等」が発生した場合 (※2)「多数消費者財産被害事態」が発生した場合

(生

(生

            消費者庁

   (取引)特定商取引法、特定電子メール法、

       預託法、貸金業法、割賦販売法、

       宅建業法、旅行業法、 等

   (表示)景品表示法、JAS法、食品衛生法 等

(財

(財

消費者庁

(消費者安全法)

  事業者への

  勧告・命令等(※1)

       事業者への

       勧告・命令(※2)

今回の改正で

新たに導入

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4

H 17 18 19 20 21 23 247 4 1 5 7 11 11 12 3 5 7 5 3 5 1

30 31 22 26 21 21 22 23 28 8 27 23

(備考)PIO-NETに登録された「ワールドオーシャンファーム」に関する消費生活相談件数

 代表者ら14名が組織的詐欺罪で起訴

 代表者ら有罪判決

(

代表者について懲役14年の実刑判決確定

)

 代表者が旅券法・入管法違反で逮捕

配当停止

 警察による関係先20か所への捜索差押えの際に8億200万円の現金押収

投資募集開始

事案の概要

相 談 件 数 の 推 移

主  な  事  象

 WOF

(※1

)設立

年月日

●フィリピンのマニラ近郊で営んでいるブラックタイガー養殖事業(東京ドーム300~450個分の広さ)や不動産事業などを投資対象とする匿名組合に出資して投資すると1年で倍になる(10日毎に5.556%、1年間で36回で合計100%の配当)との宣伝文句で多数の消費者から投資を募った事案。●匿名組合員が他の投資家を紹介すると3~19%の紹介料を得られる仕組み(マルチ商法的要素)であり、口コミで被害が拡大した。●実際には、宣伝文句の20分の1程度の養殖場しか持っておらず、養殖事業の実体がほとんど存在していなかった。不動産事業その他の収益事業も行っていなかった。

WOF代理人弁護士がFBI

に4000万米ドルを凍結されたので民事再生を申

し立てる旨の通知

※2 ワールドオーシャンファーム基金株式会社

 米国司法省から4026万9890.20ドルが返還

 中間配当WOF10%

、代表者1%

ワールドオーシャンファーム事件 被害者数

WOF名義以外も含め7億3438万円の預金口座も事実上凍結

 被害対策弁護団がWOF

、WOF基金

(※2

)及び代表者個人について東京地裁

に破産申立て

 破産手続開始決定

(

予納金 WOF1500万円

、WOF基金1000万円

、個

人500万円の合計3000万円

)

 FBI

が4000万米ドル凍結したと報道される

 WOF被害対策弁護団発足

4万人 被害額 850億円(破産債権届出約1万人、届出額249億5832万円、1人平均249万円)

 最後配当通知WOF約6.59%

、代表者約1.65%他合計約

8.49%

※1 株式会社ワールドオーシャンファーム   

3 0 1 1 1 0 213 12

218 20 14

35

13

39

17

48

105

24 183

11

269

146

178

4133 33 37

59

2413 8 8 8

44

4 80 6 2 2 1 3 0 2 1 2 8

0 4 0 0 1 3 1 1 1 0 0 0 1 1 4 2 2 011 11

1 0 1 1 1 316 18

32

10 4

0

50

100

150

200

250

300

破産事案の相談件数推移 資料4

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5

資料5

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6

資料6

独占禁止法上の課徴金制度の概要

○課徴金の対象行為

(1) 不当な取引制限(カルテル、談合等)(法7条の2第1項)

(2) 支配型私的独占(法7条の2第2項)

(3) 排除型私的独占(法7条の2第4項)

(4) 不公正な取引方法の一部(①共同の取引拒絶(法 20条の2)、②差別対価(法

20条の3)、③不当廉売(法 20条の4)、④再販売価格の拘束(法 20条の5)、

⑤優越的地位の濫用(法 20条の6))

○課徴金の算定率 (注:( )内は中小企業の場合)

製造業等 小売業 卸売業

不当な取引制限 10%(4%) 3%(1.2%) 2%(1%)

支配型私的独占 10% 3% 2%

排除型私的独占 6% 2% 1%

共同の取引拒絶

差別対価

不当廉売

再販売価格の拘束

3% 2% 1%

優越的地位の濫用 1%

※不当な取引制限に対する課徴金算定率については、加減算要素あり。

○課徴金と罰金の調整

法7条の2第1項、同条4項の場合において、同一事件について、課徴金と罰金

の双方が課(科)されるときは、罰金額の2分の1に相当する金額が課徴金から控

除される(法7条の2第 19項)。

○課徴金の裾切基準

課徴金算定額が 100 万円未満のときは納付を命じられない(法7条の2第1項、

同条4項及び法 20条の2から法 20条の6まで)。

(公取委ウェブサイト〔http://www.jftc.go.jp/dk/katyokin.html〕より)

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資料7

金融商品取引法上の課徴金制度の概要

○課徴金の対象行為

(1) 不公正取引 (インサイダー取引、相場操縦(仮装・馴合売買、違法な安定操作取引等)、風説の流布又は偽計)

(2) 有価証券届出書等の不提出・虚偽記載等(発行開示義務違反)

(3) 有価証券報告書等の不提出・虚偽記載等(継続開示義務違反)

(4) 公開買付開始公告の不実施、公開買付届出書等の不提出・虚偽記載等

(5) 大量保有報告書等の不提出・虚偽記載等

(6) プロ向け市場等における特定証券等情報の不提供等、虚偽等及び発行者等情報の虚偽等

○課徴金額

(1) インサイダー取引については、「重要事実公表後2週間の最高値×買付等数量」から「重要

事実公表前に買付け等した株券等の価格×買付等数量」を控除する方法等により算出。

(2) 有価証券届出書等の不提出・虚偽記載等については、募集・売出総額の 2.25%(株券

等の場合は 4.5%)を法定。

(3) 有価証券報告書等の不提出については、直前事業年度の監査報酬相当額(該当するも

のがない場合は 400万円)を法定(四半期・半期報告書の場合はその2分の1)。

有価証券報告書等の虚偽記載等については、発行する株券等の市場価額の総額等の 10

万分の6又は 600万円のいずれか大きい額を法定(四半期・半期・臨時報告書等の場

合はその2分の1)。

(4) 公開買付開始公告の不実施については、買付総額の 100 分の 25を法定。

公開買付届出書等の不提出・虚偽記載等については、公開買付開始公告日前日の終値

等×買付等数量の 100の 25を法定。

(5) 大量保有報告書等の不提出・虚偽記載等については、当該報告書等に係る株券等の発

行者の時価総額等の 10万分の1を法定。

(6) 特定証券等情報の不提供等・虚偽等については、以下を法定。

イ)発行価額又は売付価格の総額の 2.25%(株券等の場合は 4.5%)

ロ)虚偽等の場合において当該特定証券等情報が公表されていない場合:

イ)の額に、 (当該虚偽等のある特定証券等情報の提供を受けた者の数) を乗じて得た額

(当該特定勧誘等の相手方の数)

(7) 発行者等情報の虚偽等については、以下を法定。

イ)当該発行者等情報が公表されている場合:

600万円又は発行する株券等の市場価額の総額等の 10万分の6のいずれか大きい額

ロ)当該発行者等情報が公表されていない場合:

イ)の額に、 (当該虚偽等のある発行者等情報の提供を受けた者の数) を乗じて得た額

(発行者等情報を提供すべき相手方の数)

(金融庁ウェブサイト〔http://www.fsa.go.jp/policy/kachoukin/02.html〕より)

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資料8

公認会計士法上の課徴金制度の概要

○課徴金の対象行為

(1) 監査法人の社員(又は公認会計士)が、故意に、虚偽、錯誤または脱漏のある財務書

類を虚偽、錯誤及び脱漏のないものとして証明すること。

(2) 監査法人の社員(又は公認会計士)が、相当の注意を怠り、重大な虚偽、錯誤又は脱

漏のある財務書類を重大な虚偽、錯誤及び脱漏のないものとして証明すること。

○課徴金額

(1) 故意により虚偽証明を行ったときは監査報酬相当額の 1.5倍に相当する額

(2) 相当の注意を怠ったことにより重大な虚偽証明を行ったときは監査報酬相当額

(金融庁ウェブサイト〔http://www.fsa.go.jp/policy/kachoukin/02.html〕より)

(※) 違反行為が認定される場合であっても、以下の場合には課徴金納付命令を行わないこ

とができる。

(1) 故意の虚偽証明を行ったことに対し一定の行政処分(公認会計士法 29条2号及び3

号・34条の 21第2項)がなされる場合であって、財務書類における虚偽が当該財務

書類全体の信頼性に与える影響が比較的軽微であると認められる場合(同法 31条の2

第2項1号及び 34条の 21の2第2項1号、会計士課徴金府令(注)1条1項)

(2) 相当の注意を怠り虚偽証明を行ったことに対し一定の行政処分(公認会計士法 29条1

号及び2号・34条の 21第2項)がなされる場合であって、当該監査または証明が一

般に公正妥当と認められる監査に関する基準および慣行に照らして著しく不十分であ

った場合に当たらない場合(公認会計士法 31条の2第2項2号・34条の 21の2第2

項2号、会計士課徴金府令1条2項)

(3) 被監査会社との間で締結されている監査証明業務の停止が命じられる場合(公認会計

士法 31 条の2第2項3号・34 条の 21の2第2項3号、会計士課徴金府令1条3項)

(4) 登録抹消処分または解散命令が行われる場合(公認会計士法 31条の2第2項4号・34

の 21 の2第2項4号)

(注: 公認会計士法の規定による課徴金に関する内閣府令(平成 19年内閣府令第

82 号))

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資料9

独占禁止法及び景品表示法の一部を改正する法律案

(第 169回国会 閣法第 73号)(抄)

(課徴金納付命令)

第六条の二 事業者が、第四条第一項の規定に違反する行為(同項第一号又は第二号に該当す

るものに限る。)をしたときは、公正取引委員会は、当該事業者に対し、当該行為をした日

から当該行為に係る表示が不当に顧客を誘引し、公正な競争を阻害するおそれがあると認め

られなくなる日までの期間(当該期間が三年を超えるときは、当該行為に係る表示が不当に

顧客を誘引し、公正な競争を阻害するおそれがあると認められなくなる日からさかのぼつて

三年間とする。)における当該商品又は役務の政令で定める方法により算定した売上額に百

分の三を乗じて得た額に相当する額の課徴金を国庫に納付することを命じなければならない。

ただし、当該事業者が当該行為をした日から当該行為がなくなる日までの全期間において当

該行為に係る表示が次の各号のいずれかに該当することを知らず、かつ、知らないことにつ

き相当の注意を著しく怠つた者でないと認められるとき、又はその額が三百万円未満である

ときは、その納付を命ずることができない。

一 商品又は役務の品質、規格その他の内容について、実際のものよりも著しく優良である

こと又は事実に相違して当該事業者と競争関係にある他の事業者に係るものよりも著しく

優良であることを示す表示

二 商品又は役務の価格その他の取引条件について、実際のものよりも取引の相手方に著し

く有利であること又は事実と相違して当該事業者と競争関係にある他の事業者に係るもの

よりも取引の相手方に著しく有利であることを示す表示

2~3 (略)

(参考)不当景品類及び不当表示防止法(昭和 37年 5月 15日法律第 134号)(抄)

(不当な表示の禁止)

第四条 事業者は、自己の供給する商品又は役務の取引について、次の各号のいずれかに該

当する表示をしてはならない。

一 商品又は役務の品質、規格その他の内容について、一般消費者に対し、実際のものよ

りも著しく優良であると示し、又は事実に相違して当該事業者と同種若しくは類似の商

品若しくは役務を供給している他の事業者に係るものよりも著しく優良であると示す表

示であつて、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害す

るおそれがあると認められるもの

二 商品又は役務の価格その他の取引条件について、実際のもの又は当該事業者と同種若

しくは類似の商品若しくは役務を供給している他の事業者に係るものよりも取引の相手

方に著しく有利であると一般消費者に誤認される表示であつて、不当に顧客を誘引し、

一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められるもの

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資料 10

独占禁止政策(競争政策)と消費者政策の関係について

○独占禁止法基本問題懇談会(第 29回(平成 19年4月 10日))資料1(1~2頁)

1 独占禁止政策(競争政策)と消費者政策の関係について

独占禁止政策(競争政策)と消費者政策との関係をどのように整理すべきか、という論

点がある。

独占禁止法は、その直接の目的である公正かつ自由な競争の維持・促進を通じて、直接

的には、価格引上げのための事業者間のカルテルや消費者を欺まんするような取引等を防

止することにより、また、根本的には、消費者のニーズに的確に対応できる事業者が生き

残り、それができない事業者は淘汰されるという市場メカニズムの活用によって良質で安

価、そして多様な商品やサービスの供給を確保することにより、消費者の利益の擁護・増

進を図るものである。したがって、消費者政策(消費者の利益の擁護及び増進に関する総

合的な施策)の観点からみれば、独占禁止政策(競争政策)は、その大きな一翼を担って

いると整理することができる。とりわけ、独占禁止法は、「市場における公正かつ自由な競

争を確保する」ことを通じて消費者の利益を確保するという点で手段の制約はあるものの、

業法等による消費者保護規制とは異なり業種横断的に適用されることから特に重要である

と考えられ、消費者政策の観点からも、独占禁止法違反に対する抑止力を確保することが

必要である。

「一般消費者の利益を確保する」という独占禁止法の目的を達成するためには、消費者

に良質で安価、そして多様な商品・サービスが十分に供給されていることに加え、供給さ

れている商品・サービスの選択について消費者が主体的・合理的に意思決定できなければ

ならない。この両条件が整って初めて消費者は自分のニーズに合った商品・サービスを購

入することによりその効用を最大限に高めることが可能となる。消費者が主体的・合理的

に意思決定できる環境を創出・確保する消費者政策は、独占禁止法の目的である「一般消

費者の利益を確保する」ことを実現するために不可欠である。さらに、消費者が主体的・

合理的に意思決定できる環境を創出・確保するという意味での消費者政策は、市場メカニ

ズムをより有効に機能させるという点で、独占禁止政策(競争政策)と密接に関連してい

る。

このため、市場メカニズムを有効に機能させる独占禁止政策(競争政策)と消費者が主

体的・合理的に意思決定できる環境を創出・確保するという消費者政策を一体的に推進す

るという視点が重要である。(以下略)

○『独占禁止法基本問題懇談会報告書』(平成 19年6月 26日)4頁

(消費者政策との関係)

独占禁止法は、市場メカニズムを機能させることにより、良質で安価、そして多様な商品

やサービスの供給を確保して、消費者の利益の確保と併せて国民経済の発達を図るものであ

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る。また、独占禁止法は、「市場における公正かつ自由な競争を促進」することを手段として

いる点はあるものの、業法等による消費者保護規制とは異なり、業種横断的に適用されると

いう特色がある。

消費者政策(消費者の利益の擁護及び増進に関する総合的な施策)に関する基本的事項を

定める消費者基本法(平成 16年施行)は、①商品や役務について消費者の自主的かつ合理的

な選択の機会が確保されることなどを消費者の権利とし、②消費者の権利の尊重と消費者の

自立支援等により消費者政策を推進することを国の責務としている。

以上の点にかんがみると、独占禁止政策(競争政策)は、消費者政策の重要な一翼を担っ

ている。同時に、消費者政策が推進されることは独占禁止法の目的の実現に資するという面

もある。すなわち、消費者が主体的・合理的に選択できる環境が整備されれば、良質で安価、

そして多様な商品等の供給が促され、市場メカニズムがより有効に機能することになる。

このように、消費者政策と独占禁止政策(競争政策)は相互に密接に関係しており、両政

策を一体的に推進するという視点が重要である。

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資料 11

消費者庁における処分事業者一覧(景品表示法)

※網掛け部分:過去10年以内に消費者庁又は公正取引委員会から景品表示法に基づく行政処分を受けていた事業者

事業者名 適用法条 表示媒体 対象商品・役務 措置日

1 ㈱ファミリーマート 第4条第1項第1号(優良誤認) シール おにぎり H21.11.10

2 ㈱三陽商会 第4条第1項第1号(優良誤認) 下げ札及び品質表示タッグ ニット商品 H21.12.9

3 ㈱ボンシック 第4条第1項第3号(原産国表示) ラベル 化粧品及び化粧雑貨 H22.3.25

4 ㈱日本一 第 4 条第 1 項第 1 号(優良誤認) プライスカード、チラシ、ポップ及び

ポスター うなぎ蒲焼及びうな重 H22.3.29

5 ㈱QVCジャパン 第4条第1項第1号(優良誤認) テレビショッピング番組及びウェブ

サイト 布団 H22.3.31

6 住金物産㈱ 第4条第1項第1号(優良誤認) テレビショッピング番組及びウェブ

サイト 布団 H22.3.31

7 ㈱山方屋 第4条第1項第1号(優良誤認) シール 牛の内臓を袋詰めした商品 H22.4.8

8 ㈱益正グループ 第4条第1項第1号(優良誤認) ウェブサイト 牛の内臓を袋詰めした商品及びもつ

鍋の原材料を詰め合わせた商品 H22.4.8

9 ㈱シップス 第4条第1項第1号(優良誤認) ウェブサイト 婦人靴 H22.6.24

10 コーナン商事㈱ 第4条第1項第1号(優良誤認) 商品パッケージ、ポップ及びウェブ

サイト 園芸用シート H22.9.29

11 ㈱大藤 第4条第1項第1号(優良誤認) 包装紙 焼き菓子 H22.10.13

12 ㈱光洋 第4条第1項第3号(原産国表示) 新聞折り込みチラシ サザエ H22.11.30

13 全国農業協同組合連

合会 第4条第1項第1号(優良誤認) 米袋、ウェブサイト等 特別栽培米 H22.12.8

14 ㈱ジェイアール西日本ホテル開発

第4条第1項第1号(優良誤認) メニュー、チラシ、ウェブサイト及び

新聞折り込みチラシ 料理 H22.12.9

15 ㈱サンシャインチェーン本部

第4条第1項第2号(有利誤認) 新聞折り込みチラシ 食料品 H23.2.4

16 ㈱外食文化研究所 第4条第1項第1号(優良誤認)

同項第2号(有利誤認) ウェブサイト 加工食品 H23.2.22

17 ㈱レナウン 第4条第1項第1号(優良誤認) 下げ札及びシール 紳士用シャツ H23.2.24

18 シンワオックス㈱ 第4条第1項第1号(優良誤認) カタログ、ウェブサイト及び商品説

明書 牛肉加工食品 H23.3.3

19 ㈱バークジャパン 第4条第1項第1号(優良誤認) メニュー、ウェブサイト及び新聞折り

込みチラシ 料理 H23.3.4

20 ㈱カンノ蜜蜂園本舗 第4条第1項第1号(優良誤認) ラベル はちみつ H23.3.10

21 ㈱ユナイテッドアローズ

第4条第1項第3号(原産国表示) 下げ札、タグ及びウェブサイト 衣料品等 H23.3.24

22 ㈱ガリバーインターナショナル

第4条第1項第2号(有利誤認)

テレビコマーシャル、ラジオコマー

シャル、駅貼り広告及びウェブサイ

中古自動車 H23.3.28

23 ㈱アシックス 第4条第1項第1号(優良誤認) 下げ札及びウェブサイト 女性用シューズ及び女性用スノーボー

ドウェア H23.3.30

24 ㈱DMM.com 第4条第1項第1号(優良誤認)

同項第2号(有利誤認) ウェブサイト

ペニーオークションサービス及びオー

クションに出品した商品 H23.3.31

25 ㈱アギト 第4条第1項第1号(優良誤認)

同項第2号(有利誤認) ウェブサイト

ペニーオークションサービス及びオー

クションに出品した商品 H23.3.31

26 ㈱ゼロオク 第4条第1項第1号(優良誤認)

同項第2号(有利誤認) ウェブサイト

ペニーオークションサービス及びオー

クションに出品した商品 H23.3.31

27 ㈱K&Sトレーディング

第4条第1項第1号(優良誤認) ウェブサイト 中古自動車 H23.4.8

28 ㈲KUC 第4条第1項第1号(優良誤認) ウェブサイト 中古自動車 H23.4.8

29 ㈱市進ホールディングス

第4条第1項第1号(優良誤認) パンフレット、新聞折り込みチラ

シ、ポスター及びウェブサイト 大学入学試験受験対策の役務 H23.4.26

30 ㈱市進ウイングネット 第4条第1項第1号(優良誤認) パンフレット及びポスター 大学入学試験受験対策の役務 H23.4.26

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31 ㈱ウィザス 第4条第1項第1号(優良誤認) 新聞折り込みチラシ及びウェブサイ

ト 大学入学試験受験対策の役務 H23.4.26

32 日本緑茶センター㈱ 第4条第1項第1号(優良誤認) ラベル及びウェブサイト 食用塩 H23.6.14

33 学校法人北海道安達学園

第4条第1項第1号(優良誤認) パンフレット及び新聞広告 専門学校における専門課程 H23.6.29

34 ㈱日本ホットライフ 第4条第1項第2号(有利誤認) チラシ 住宅用太陽光発電システム H23.7.15

35 ㈱東祥 第4条第1項第1号(優良誤認) 新聞折り込みチラシ及びウェブサイ

ト スポーツクラブにおける浴場利用役務 H23.7.21

36 ㈱AOKI 第4条第1項第2号(有利誤認) テレビコマーシャル及び新聞折り込

みチラシ 衣料品等 H23.7.26

37 青山商事㈱ 第4条第1項第2号(有利誤認) テレビコマーシャル及び新聞折り込

みチラシ 衣料品等 H23.7.26

38 ㈱コナカ 第4条第1項第2号(有利誤認) 新聞折り込みチラシ 衣料品等 H23.7.26

39 はるやま商事㈱ 第4条第1項第2号(有利誤認) テレビコマーシャル及び新聞折り込

みチラシ 衣料品等 H23.7.26

40 ㈱フタタ 第4条第1項第2号(有利誤認) 新聞折り込みチラシ 衣料品等 H23.7.26

41 ㈱フイッシュランド 第4条第1項第2号(有利誤認) 新聞折り込みチラシ 遠近両用眼鏡 H23.8.31

42 ㈱アイランド食品 第4条第1項第1号(優良誤認) 包装紙及びラベル 干しそば H23.9.9

43 ㈱トップアート 第4条第1項第2号(有利誤認) 新聞広告、ダイレクトメール、雑誌

広告、カタログ及びウェブサイト 美術品、工芸品等 H23.10.20

44 ㈱アールディーシー 第4条第1項第1号(優良誤認) チラシ、ポスター、メニュー、新聞

折り込みチラシ及びウェブサイト 生食用かきを用いた料理 H23.10.28

45 ㈱リアル 第4条第1項第1号(優良誤認)

同項第2号(有利誤認)

(同条第2項適用)

ウェブサイト 食品 H23.11.25

46 ㈱ビューティーサイエンス

第4条第1項第1号(優良誤認)

同項第2号(有利誤認)

(同条第2項適用)

ウェブサイト 食品 H23.11.25

47 ㈱安愚楽牧場 第4条第1項第1号(優良誤認) 雑誌広告 「黒毛和種牛売買・飼養委託契約」と

称する契約に基づき提供する役務 H23.11.30

48 ㈲モアナエモーション 第4条第1項第2号(有利誤認) クーポンマガジン及びウェブサイト スクーバダイビングに係る技能認定を

受けるための教育コース H24.2.9

49 岩切自動車こと岩切明春

第4条第1項第1号(優良誤認) 中古自動車情報誌 中古自動車 H24.2.28

50 ㈱オートプレンティ 第4条第1項第1号(優良誤認) 中古自動車情報誌 中古自動車 H24.2.28

51 ガレージZEROこと奥

津明夫 第4条第1項第1号(優良誤認) 中古自動車情報誌 中古自動車 H24.2.28

52 ㈱キガサワ 第4条第1項第1号(優良誤認) 中古自動車情報誌 中古自動車 H24.2.28

53 Benetsaこと小林隆幸

第4条第1項第1号(優良誤認) 中古自動車情報誌及びウェブサイト 中古自動車 H24.2.28

54 ㈱リソウ 第4条第1項第1号(優良誤認)

(同条第2項適用) 新聞折り込みチラシ 化粧品 H24.3.8

55 ㈲エム・ワイ産業 第4条第1項第1号(優良誤認) 店頭看板及び計量器 自動車ガソリン H24.4.19

56 松村㈱ 第4条第1項第2号(有利誤認) 冊子 振袖に袋帯、長襦袢等を組み合わせ

たセット商品 H24.4.27

57 お茶の水女子アカデミーこと浜田敏彦

第4条第1項第1号(優良誤認) パンフレット及びウェブサイト 入学試験受験対策の役務 H24.5.10

58 ニフティ㈱ 第4条第1項第1号(優良誤認)

同項第2号(有利誤認) ウェブサイト モバイルデータ通信サービス H24.6.7

59 ㈱アガスタ 第4条第1項第1号(優良誤認) 商品パッケージ及びウェブサイト 一般照明用電球形LEDランプ H24.6.14

60 ㈱エコリカ 第4条第1項第1号(優良誤認) 商品パッケージ及びウェブサイト 一般照明用電球形LEDランプ H24.6.14

61 ㈱エディオン 第4条第1項第1号(優良誤認) 商品パッケージ及びウェブサイト 一般照明用電球形LEDランプ H24.6.14

62 ㈱オーム電機 第4条第1項第1号(優良誤認) 商品パッケージ及びポップ 一般照明用電球形LEDランプ H24.6.14

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63 ㈱タキオン 第4条第1項第1号(優良誤認) 商品パッケージ及びポップ 一般照明用電球形LEDランプ H24.6.14

64 ㈱グリーンハウス 第4条第1項第1号(優良誤認) 商品パッケージ及びウェブサイト 一般照明用電球形LEDランプ H24.6.14

65 恵安㈱ 第4条第1項第1号(優良誤認) 商品パッケージ及びウェブサイト 一般照明用電球形LEDランプ H24.6.14

66 ㈱光波 第4条第1項第1号(優良誤認) ウェブサイト 一般照明用電球形LEDランプ H24.6.14

67 コーナン商事㈱ 第4条第1項第1号(優良誤認) 商品パッケージ、ポップ及びウェブ

サイト 一般照明用電球形LEDランプ H24.6.14

68 スリー・アールシステム㈱

第4条第1項第1号(優良誤認) 商品パッケージ及びウェブサイト 一般照明用電球形LEDランプ H24.6.14

69 セントレードM.E.㈱ 第4条第1項第1号(優良誤認) 商品パッケージ及びウェブサイト 一般照明用電球形LEDランプ H24.6.14

70 リーダーメディアテクノ㈱

第4条第1項第1号(優良誤認) 商品パッケージ及びウェブサイト 一般照明用電球形LEDランプ H24.6.14

71 ㈱クリスタルジャポン 第4条第1項第1号(優良誤認)

(同条第2項適用) ウェブサイト 化粧品 H24.6.28

72 ㈱コアクエスト 第4条第1項第1号(優良誤認)

(同条第2項適用) ウェブサイト 化粧品 H24.6.28

73 ㈱コジマ身長伸ばしセ

ンター

第4条第1項第1号(優良誤認)

(同条第2項適用) ウェブサイト

「身長伸ばし」及び「美顔矯正術」と称

する役務 H24.7.10

74 サニーヘルス㈱ 第4条第1項第1号(優良誤認)

(同条第2項適用)

ウェブサイト、新聞広告及び新聞折

り込みチラシ 化粧品 H24.7.19

75 ㈱コスモスイニシア 第4条第1項第1号(優良誤認)

パンフレット及び新聞折り込みチラシ

分譲マンション H24.8.21

76 ㈱ドクターシーラボ 第4条第1項第1号(優良誤認)

(同条第2項適用)

会報誌 美容機器 H24.8.31

77 桐灰化学㈱ 第4条第1項第1号(優良誤認)

商品パッケージ

冷凍庫で凍結させた上で人

が首に巻いて冷却・冷感効果を得るための商品

H24.9.6

78 ㈱ケンユー 第4条第1項第1号(優良誤認)

商品パッケージ 冷凍庫で凍結させた上で人が首に巻いて冷却・冷感効

果を得るための商品

H24.9.6

79 ㈱白元 第4条第1項第1号(優良

誤認) 商品パッケージ

冷凍庫で凍結させた上で人が首に巻いて冷却・冷感効果を得るための商品

H24.9.6

80 ㈱やまとセレモニー 第4条第1項第2号(有利

誤認) パンフレット 葬儀に係る役務 H24.9.7

81 ㈱アビバ 第4条第1項第2号(有利誤認)

新聞折り込みチラシ 資格取得対策の役務 H24.9.10

82 ㈲藤原アイスクリーム

工場

第4条第1項第3号(原産

国表示) ラベル及び封緘シール 天然はちみつ H24.9.28

83 ㈱ホテル椿館 第4条第1項第1号(優良

誤認) ウェブサイト 宿泊プラン H24.10.18

84 三光ホーム㈱ 第4条第1項第2号(有利誤認)

新聞折り込みチラシ、チラシ及びウェブサイト

住宅用太陽光発電システム H24.10.30

85 イー・アクセス㈱ 第4条第1項第1号(優良誤認)

新聞広告、雑誌広告及び鉄道車両広告

モバイルデータ通信サービス

H24.11.16

86 シャープ㈱ 第4条第1項第1号(優良

誤認) カタログ及びウェブサイト 電気掃除機 H24.11.28

87 VanaH㈱ 第4条第1項第1号(優良誤認)

会員宛てのファックス文書 ペットボトル入り飲料水 H24.12.20

(平成 21年9月~平成 25年1月1日時点)

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資料 12

消費者庁及び経済産業局における処分事業者一覧(特定商取引法)

※網掛け部分:過去10年以内に国又は都道府県から特定商取引法に基づく行政処分を受けていた事業者

事業者名 処分内容 取引類型 取扱商品・役務 処分日

1 ネイチャーウェイ(株) 指示 通信販売 健康食品 2012.11.29

2 (株)アイアイ 業務停止命令

(3ヶ月) 訪問販売 メガネ等 2012.11.22

3

アドクリエイト(株)

業務停止命令

(3ヶ月) 通信販売 開運ブレスレット

2012.11.15 4

業務停止命令

(6ヶ月) 電話勧誘販売 祈とうサービス

5 指示

6

(株)ジェイコーポレーション

業務停止命令

(3ヶ月) 通信販売 開運ブレスレット

2012.11.15 7

業務停止命令

(6ヶ月) 電話勧誘販売 祈とうサービス

8 指示

9

(株)アドライン

業務停止命令

(3ヶ月) 通信販売 開運ブレスレット

2012.11.15 10

業務停止命令

(6ヶ月) 電話勧誘販売 祈とうサービス

11 指示

12

「三報通信」又は「総和通信」

こと星川善紀、福田雄繁、高

橋康晴

業務停止命令

(12ヶ月) 電話勧誘販売

業界新聞への名詞広告

掲載に関する役務提供 2012.11.6

13 (株)Rida

業務停止命令

(3ヶ月) 連鎖販売取引 美容機器付音響機器等 2012.10.18

14 指示

15 (株)ジェムケリー 業務停止命令

(6ヶ月) 訪問販売 宝石、貴金属、装身具 2012.9.18

16 (株)ビリーフコーポレーショ

業務停止命令

(12ヶ月) 訪問販売

布団、除湿マット、家庭

用温熱電位治療器等 2012.8.9

17 エルフレーム(株) 指示 訪問販売 学習教材等 2012.7.10

18 (有)ひかわ 指示 訪問販売 排水管洗浄、住宅リフォ

ーム工事 2012.6.19

19 やよいトレード(株) 業務停止命令

(12ヶ月) 訪問販売

CO2排出権に係る店頭

デリバティブ取引 2012.6.19

20 (株)ほほえみ広場 指示 電話勧誘販売 健康食品 2012.5.21

21 (株)まつや

業務停止命令

(6ヶ月) 電話勧誘販売 健康食品 2012.4.20

22 指示

23 (株)ピーエヌサービス 業務停止命令

(3ヶ月) 電話勧誘販売

皇室関係図書その他美

術品等 2012.3.29

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24 (株)テレテックイノベーション

ズ 指示 電話勧誘販売 カニ等の海産物 2012.3.23

25 (株)SONIC 業務停止命令

(3ヶ月) 電話勧誘販売 カニなどの海産物等 2012.3.23

26 (株)海善 業務停止命令

(3ヶ月) 電話勧誘販売 カニなどの海産物等 2012.3.23

27 ルネッサ21、ロイヤル21こ

と武山圭佑

業務停止命令

(3ヶ月) 電話勧誘販売

皇室写真集その他美術

品等 2012.3.8

28 セゾンアルファ(株)

業務停止命令(6ヶ

月) 電話勧誘販売 行政書士教材 2012.2.14

29 指示

30 グローバルスクエア(株)

業務停止命令

(6ヶ月) 電話勧誘販売 ビジネス教材 2012.2.14

31 指示

32 枝川英昭こと亀田達也

業務停止命令

(6ヶ月) 電話勧誘販売 行政書士教材 2012.2.14

33 指示

34 (株)美研

業務停止命令

(3ヶ月) 電話勧誘販売 健康食品 2012.2.9

35 指示

36 (株)クラモト 業務停止命令

(6ヶ月) 訪問販売 眼鏡等 2012.2.9

37 (株)蔵長(※注1)

業務停止命令

(12ヶ月) 訪問販売 味噌 2012.1.26

38 指示

39 (株)セカンドライフ

業務停止命令

(3ヶ月) 訪問販売 土地のインターネット広

告掲載等 2012.1.26

40 指示

41 (株)関東ライフサービス(※

注2)

業務停止命令

(9ヶ月) 訪問販売 台所用浄水器等 2011.12.1

42 (株)エクセルシア

業務停止命令

(6ヶ月) 電話勧誘販売 健康食品 2011.10.27

43 指示

44 (株)イヴコスメティクス

業務停止命令

(6ヶ月) 電話勧誘販売 健康食品 2011.10.27

45 指示

46 朝日ソーラー(株) 指示 訪問販売 太陽熱温水器、石油給

湯器等 2011.10.25

47 (株)ユトリホーム 業務停止命令

(6ヶ月) 訪問販売

鋼板外装材による外壁

工事等 2011.10.13

48 (株)アクオリティ 指示 通信販売 出会い系サイト 2011.9.13

49 帝国人事(株)

業務停止命令

(9ヶ月) 電話勧誘販売 紳士録 2011.8.23

50 指示

51 アートライフ(株)

業務停止命令

(9ヶ月) 電話勧誘販売 絵画、短歌等の作品の

掲載サービス 2011.8.9

52 指示

53 現代通信(株)

業務停止命令

(9ヶ月) 電話勧誘販売 絵画、短歌等の作品の

掲載サービス 2011.8.9

54 指示

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55 (株)東宝堂

業務停止命令

(9ヶ月) 電話勧誘販売 絵画、短歌等の作品の

掲載サービス 2011.8.9

56 指示

57 (株)東広通信

業務停止命令

(9ヶ月) 電話勧誘販売 絵画、短歌等の作品の

掲載サービス 2011.8.9

58 指示

59 (株)アドクリエイト

業務停止命令

(9ヶ月) 電話勧誘販売 絵画、短歌等の作品の

掲載サービス 2011.8.9

60 指示

61 (株)ジョインツ 指示 通信販売 出会い系サイト 2011.8.3

62 (株)Luv je 業務停止命令

(3 ヶ月) 訪問販売 宝石、貴金属、装身具 2011.8.3

63 (株)アートコミュニケーション 指示 電話勧誘販売 俳句等の書籍への掲載 2011.6.17

64 PRO(株) 業務停止命令

(3 ヶ月) 訪問販売 学習教材 2011.4.27

65 (株)創巧伎建 業務停止命令

(12 ヶ月) 訪問販売 リフォーム工事 2011.4.21

66 (株)アロンジェ 業務停止命令

(3ヶ月) 訪問販売 かつら 2011.3.29

67 (株)国内保証援助会 業務停止命令

(3ヶ月) 通信販売 保証人の紹介・斡旋 2011.3.11

68 (有)中央通信社 業務停止命令

(3ヶ月) 電話勧誘販売

企画広告掲載・氏名等

広告掲載 2011.3.4

69 (株)信州志賀一 業務停止命令

(6ヶ月) 訪問販売 味噌 2011.2.15

70 (株)幸の華

業務停止命令

(3ヶ月) 電話勧誘販売 健康食品 2010.12.17

71 指示

72 「(株)スクエア、ナショナルア

カデミー等」こと

「菅野 智昭」

業務停止命令

(6ヶ月) 業務提供誘引販売

取引

CD-ROM 等の商品

CAD 研修 2010.12.7

73 指示

74 日本教育出版(有)

業務停止命令

(6ヶ月) 業務提供誘引販売

取引

CD-ROM 等の商品

CAD 研修 2010.12.7

75 指示

76 (有)イプシロン

業務停止命令

(6ヶ月) 業務提供誘引販売

取引

CD-ROM 等の商品

CAD 研修 2010.12.7

77 指示

78

(株)ドリームネット

業務停止命令

(6ヶ月) 業務提供誘引販売

取引

CD-ROM 等の商品

CAD 研修 2010.12.7

79 指示

80 (株)ネクスト

業務停止命令

(6ヶ月) 訪問販売 リフォーム工事 2010.12.2

81 指示

82 (株)クラフト

業務停止命令

(6ヶ月) 訪問販売 リフォーム工事 2010.12.2

83 指示

84 道産子フーズ(株) 業務停止命令

(3ヶ月) 電話勧誘販売 カニ等の海産物 2010.11.25

85 (株)リンク

業務停止命令

(3ヶ月) 電話勧誘販売 CD-ROM 2010.11.19

86 指示

87 (株)BEAR 指示 通信販売 出会い系サイト 2010.10.14

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88 (有)アテンド

業務停止命令

(6ヶ月) 訪問販売 住宅基礎補強工事等 2010.8.27

89 指示

90 (合)S・T 企画 指示 通信販売 出会い系サイト 2010.8.5

91 (合)パルク 指示 通信販売 出会い系サイト 2010.8.5

92 (株)グローバルマネジメント

(屋号:「再生工房」)

業務停止命令

(6ヶ月) 訪問販売 不用品の回収 2010.8.5

93 (株)デパーズ

業務停止命令

(9ヶ月) 業務提供誘引販売

取引

書籍、CD 等を含む教材

一式 2010.7.23

94 指示

95 B-サポート(株)

業務停止命令

(9ヶ月) 業務提供誘引販売

取引

書籍、CD 等を含む教材

一式 2010.7.23

96 指示

97 (株)アクティブ

業務停止命令

(9ヶ月) 業務提供誘引販売

取引

書籍、CD 等を含む教材

一式 2010.7.23

98 指示

99 (株)ウエスト

業務停止命令

(9ヶ月) 業務提供誘引販売

取引

書籍、CD 等を含む教材

一式 2010.7.23

100 指示

101 (有)アプローズ

業務停止命令

(9ヶ月) 業務提供誘引販売

取引

書籍、CD 等を含む教材

一式 2010.7.23

102 指示

103 B-サポート(株)

業務停止命令

(9ヶ月) 業務提供誘引販売

取引

書籍、CD 等を含む教材

一式 2010.7.23

104 指示

105 (株)ネクスト

業務停止命令

(9ヶ月) 業務提供誘引販売

取引

書籍、CD 等を含む教材

一式 2010.7.23

106 指示

107 (株)アルファ

業務停止命令

(9ヶ月) 業務提供誘引販売

取引

書籍、CD 等を含む教材

一式 2010.7.23

108 指示

109 (株)IB

業務停止命令

(12 ヶ月) 業務提供誘引販売

取引 ドロップシッピング 2010.7.9

110 指示

111 (株)エナジック

業務停止命令

(9ヶ月) 連鎖販売取引

健康補助食品

還元水・強酸性水連続

生成器

2010.4.27

112 指示

113 (株)ゼア

(屋号:「マネージメントアカ

デミー」)

業務停止命令

(3ヶ月) 電話勧誘販売 ビジネス教材 2010.4.15

114 指示

115 (株)ウインド

業務停止命令

(6ヶ月) 業務提供誘引販売

取引 ドロップシッピング 2010.4.9

116 指示

117 (株)グレース・アイコ

業務停止命令

(3ヶ月) 連鎖販売取引 化粧品 2010.4.8

118 指示

119 (株)サミットインターナショナ

業務停止命令

(6ヶ月) 連鎖販売取引 補正下着、健康食品、

健康関連機器 2010.3.2

120 指示

121 (株)ベストメディア

業務停止命令

(3ヶ月) 電話勧誘販売 資格教材 2010.3.2

122 指示

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123 (株)ウィング

業務停止命令

(3ヶ月) 電話勧誘販売 資格教材 2010.3.2

124 指示

125 「プランニングゾーン・ゼロ」

こと「三田村高志」

業務停止命令

(3ヶ月) 電話勧誘販売 資格教材 2010.3.2

126 指示

127 (株)FORTRESS,JAPAN

業務停止命令

(6ヶ月) 特定継続的役務提

供 英会話レッスン 2010.2.18

128 指示

129 (株)シンコー 業務停止命令

(3ヶ月) 訪問販売 寝具類 2010.2.10

130 (株)リフレックス

業務停止命令

(6ヶ月) 電話勧誘販売 ビジネス教材 2010.2.2

131 指示 2010.2.2

132 (株)実務教育システム

業務停止命令

(3ヶ月) 電話勧誘販売 ビジネス教材 2010.2.2

133 指示 2010.2.2

134 (有)寝具のくどう 業務停止命令

(3ヶ月) 訪問販売 布団の打ち直し 2010.1.29

135 (株)ビズインターナショナル

業務停止命令

(6ヶ月) 連鎖販売取引

仮想空間サービス

DVD,IPフォン等のビジ

ネスキット

2009.11.27

136 指示

137 コンプライアンスファクト(株)

業務停止命令

(12ヶ月) 電話勧誘販売 書籍

(ビジネス教材) 2009.11.20

138 指示

139

(株)プライマリー

業務停止命令

(6ヶ月) 連鎖販売取引

健康食品、石けん、アク

セサリー 2009.11.18

140 指示

141 (株)エース

業務停止命令

(12ヶ月) 電話勧誘販売 資格教材

(書籍及びDVD) 2009.10.9

142 指示

143

(株)ニュース

業務停止命令

(12ヶ月) 電話勧誘販売

資格教材

(書籍及びDVD) 2009.10.9

144 指示

(平成21年9月~平成25年1月1日時点)

※注1:過去に平成21年12月17日付けで、東京都等5都県から業務停止命令を受けている(取引類型・取扱商品は同様)。

※注2:商号変更前の名称((株)プレジャス)で、過去に平成21年6月18日付けで、埼玉県から業務停止命令を受けている(取引類型・取

扱商品は同様)。

※注3:過去に平成21年8月31日付けで、宮城県から業務停止命令を受けている(取引類型・取扱商品は同様)。

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資料 13

特定商取引法関連の警察による摘発件数について

<特定商取引等事犯(※)の検挙状況の推移(平成 19年~23 年)>

平成 19 年 平成 20 年 平成 21 年 平成 22 年 平成 23 年

検挙事件数

(事件) 112 142 152 193 161

検挙人員

(人) 299 279 371 430 314

(出所)「警察白書」より

(※)特定商取引法違反及び特定商取引に関連する詐欺、恐喝等の刑法犯

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資料 14

販売購入形態別の年度別推移及び相談全体に占める割合 ※以下の表は 2013年2月 28日現在までの相談件数です。

年度別総件数

年度 2007 2008 2009 2010 2011 2012

件数(件) 1,050,826 950,500 902,209 896,832 883,122 694,994

(1)訪問販売

年度 2007 2008 2009 2010 2011 2012

件数(件) 118,042 99,580 97,866 98,900 97,059 74,968

割合(%) 11.2 10.5 10.8 11.0 11.0 10.8

(2)通信販売

年度 2007 2008 2009 2010 2011 2012

件数(件) 336,646 280,820 249,376 243,371 268,615 208,963

割合(%) 32.0 29.5 27.6 27.1 30.4 30.1

(3)マルチ取引

年度 2007 2008 2009 2010 2011 2012

件数(件) 24,332 19,159 15,788 11,632 10,223 8,089

割合(%) 2.3 2.0 1.7 1.3 1.2 1.2

(4)電話勧誘販売

年度 2007 2008 2009 2010 2011 2012

件数(件) 52,888 49,276 49,588 64,174 69,752 60,031

割合(%) 5.0 5.2 5.5 7.2 7.9 8.6

(5)ネガティブ・オプション

年度 2007 2008 2009 2010 2011 2012

件数(件) 3,032 3,057 2,554 2,903 2,129 2,462

割合(%) 0.3 0.3 0.3 0.3 0.2 0.4

(6)他の無店舗販売

年度 2007 2008 2009 2010 2011 2012

件数(件) 12,195 10,377 9,594 9,845 8,918 6,875

割合(%) 1.2 1.1 1.1 1.1 1.0 1.0

(1)~(6)合計

年度 2007 2008 2009 2010 2011 2012

件数(件) 547,135 462,269 424,766 430,825 456,696 361,388

割合(%) 52.1 48.6 47.1 48.0 51.7 52.0

(国民生活センターウェブサイトより http://www.kokusen.go.jp/soudan_topics/data/mutenpo.html)

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資料 15

二重処罰との関係について

<最判平成 10年 10月 13日(判例時報 1662号 83頁)(社会保険庁シール談合課徴金

事件)>

【事案の概要】

社会保険庁が発注する支払通知書貼付用シールの調達につき入札談合を行った法

人事業者らに対して、既に刑罰が確定し、かつ当該違反事実を原因として国から不当

利得返還請求訴訟が提起されている状況において、原告が課徴金は懲罰的制裁の実質

しか有さず、二重処罰に当たるので憲法 39 条に違反するとともに、実質的に法の適

正手続を保障する憲法 31条及び財産権を保障する憲法 29条の趣旨にもとると主張し

て、課徴金の納付を命ずる審決の取消しを求めた事案。

【判旨】

本件カルテル行為について、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律違反

被告事件において上告人に対する罰金刑が確定し、かつ、国から上告人に対し不当利

得の返還を求める民事訴訟が提起されている場合において、本件カルテル行為を理由

に上告人に対し同法七条の二第一項の規定に基づき課徴金の納付を命ずることが、憲

法三九条、二九条、三一条に違反しないことは、最高裁昭和二九年(オ)第二三六号

同三三年四月三〇日大法廷判決・民集一二巻六号九三八頁の趣旨に徴して明らかであ

る。

<原審:東京高裁平成9年6月6日判決(判例時報 1621号 98頁)>

「独占禁止法における課徴金制度は、一定のカルテル行為による不当な経済的利得を

カルテルに参加した事業者から剥奪することによって、社会的公正を確保するととも

に、違反行為の抑止を図り、カルテル禁止規定の実効性を確保するために設けられた

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23

ものであって、課徴金の納付命令は、右の目的を達成するために行政委員会である被

告が、同法の定める手続にしたがってカルテルに参加した事業者に対して課す行政上

の措置である。右のところからも窺われるように、課徴金制度にはカルテル行為に対

する一定の抑止効果が期待されているという側面があり、それは社会的には一種の制

裁としての機能をもつことを否定できないが、課徴金の基本的な性格が社会的公正を

確保するためのカルテル行為による不当な経済的利得の剥奪という点にあることは

明らかである。

したがって、課徴金は、カルテル行為の反社会性ないし反道徳性に着目し、これに

対する制裁として、刑事訴訟手続によって科せられる刑事罰とは、その趣旨・目的、

性質等を異にするものであるから、本件カルテル行為に関して、原告らに対し刑事罰

としての罰金を科すほか、さらに、被告において、独占禁止法七条の二、五四条の二

等の規定に基づいて課徴金の納付を命ずるとしても、それが、二重処罰を禁止する憲

法三九条に違反することになるものでないことは明らかといわなければならない。」

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資料 16

民事上の請求権との調整について

【参考(裁判例)】(独占禁止法上の課徴金と民事上の請求権の関係)

<東京高判平成 13年2月8日(判例時報 1742号 96頁)(社会保険庁シール談合不当

利得返還請求事件)>

【事案の概要】

社会保険庁が発注する支払通知書貼付用シールの入札における指名業者らが、談

合を行い落札・契約したことに対して、国が、指名業者らとの間で締結した契約は無

効であるとして、指名業者らに対して3億円余の不当利得返還請求訴訟を提起した事

案。

【判旨】

独占禁止法における課徴金制度は、一定のカルテル行為による不当な経済的利得

をカルテルに参加した事業者から剝奪することによって、社会的公正を確保するとと

もに、違反行為の抑止を図り、カルテル禁止規定の実効性を確保するために設けられ

たものである。課徴金の納付命令は、右の目的を達成するために、行政委員会である

公正取引委員会が、独占禁止法の定める手続に従ってカルテルに参加した事業者に対

して課す行政上の措置である。

独占禁止法は、カルテル行為に対しては別途刑事罰を規定しているから、課徴金

の納付を命ずることが制裁的色彩を持つとすれば、それは二重処罰を禁止する憲法三

九条に違反することになる。したがって、課徴金制度は、社会的にみれば一種の制裁

という機能を持つことは否定できないとしても、本来的には、カルテル行為による不

当な経済的利得の剥奪を目的とする制度である。そして、このような課徴金の経済的

効果からすれば、課徴金制度は、民法上の不当利得と類似する機能を有する面がある

ことも否めない。

しかしながら、課徴金制度は、カルテル行為があっても、その損失者が損失や利

得との因果関係を立証して不当利得返還請求をすることが困難であることから、カル

テル行為をした者に利得が不当に留保されることを防止するために設けられたもの

である。そのような制度の趣旨目的からみるならば、現に損失を受けているものがあ

る場合に、その不当利得返還請求が課徴金の制度のために妨げられる結果となっては

ならない。すなわち、利得者はまず損失者にその利得を返還すべきであり、現実に損

失者が回復していないにもかかわらず、利得者が課徴金を支払ったことだけで、損失

者の不当利得返還請求権に影響を及ぼすべきものではない。(中略)

なお、民法上の不当利得制度において返還を命じられる不当利得と課徴金として

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剥奪を命じられる不当な利得とは、必ずしも同一範囲のものではない。しかし、利得

者が、損失者にすべての利得を返還し、他に剥奪されるべき不当な利得はないにもか

かわらず、なおも課徴金が課されるというときには、そのような課徴金の納付命令の

合憲性については検討が必要であろう。また、すでに課徴金を納付した後、利得者が

損失者にすべての利得を返還したという場合、先に納付した課徴金の扱いについても

検討が必要な場合があろう。しかし、それらのことがあるからといって、先の結論を

変更するのは、制度全体の整合性を破るものというべきであり、適正な法解釈とはい

えない。(※ なお、同判決に対しては、上告及び上告受理申立てがなされたが、平

成 14年3月 28日付け上告棄却、不受理決定により、上記東京高裁判決が確定した。)

<独占禁止法基本問題懇談会報告書(平成 19年6月 26日)22頁>

4 違反金と損害賠償(違約金)等との関係

違反行為の抑止のためには、抑止につながる様々な法執行手段があることが効果的

であり、これらの手段がそれぞれの機能を発揮することが期待される。

個々の措置等はそれぞれ趣旨・目的が異なっており、違反金と民事上の損害賠償金

等との調整を制度上図る必要はない。

違反行為を行った事業者に対しては、独占禁止法の法執行に加えて、違反行為に

より損害を受けた者等による損害賠償請求・不当利得返還請求、発注者による違約金

請求といった金銭的不利益を受ける可能性があり、更に、発注者による指名停止、監

督官庁による監督処分(業務停止命令等)も行われ得る。違反行為の抑止のためには、

抑止につながる様々な法執行手段があることが効果的であり、これらの手段がそれぞ

れの機能を発揮することが期待される。

個々の措置等はそれぞれ趣旨・目的が異なっており、独占禁止法に違反した事業

者が不利益を受ける点において共通するものの、そのために、これらの措置等の間で

当然に調整が必要(例えば、損害賠償や違約金の支払いをした場合には違反金はその

分減額するなど)ということにはならないと考えられる(欧米主要国の状況について

資料 10参照〔引用者注:同資料は省略〕)。

違反金の水準を見直す際には、その時点における諸事情(違約金の水準や実際の

請求・支払状況、損害賠償請求訴訟の活用状況、指名停止の運用状況等を含む。)も

総合的に考慮されることになると考えられるが、違反金は違反行為抑止のための行政

措置であることから、違反金の水準を検討するに当たっては、主として抑止力の確保

の観点から行うことになると考えられる。

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資料 17

独占禁止法・金融商品取引法・公認会計士法の課徴金及び刑事罰の比較-1

独占禁止法 金融商品取引法

課徴金対象行為

私的独占 不当な取引制限等

インサイダー取引 相場操縦 仮装・馴合売買 安定操作取引

風 説 の流布・偽計

継続開示書類の虚偽記載・不提出

発行開示書類の虚偽記載・不提出

課徴金の 算定方法

売上額に一定率(10%等)を乗じて得た額に相当する額

例)買付け等の総額と、重要事実公表後 2週間の最高値に買い付けた数量を乗じた額の差額

例)600万円 or時価総額の 10万分の6のいずれか高い方

例)募集・売出総額の 2.25%(株券 等 の 場 合 は4.5%)

罰則(法人) 5億円以下の罰金

5億円以下の罰金 7億円以下の罰金 虚偽記載:7億円以下の罰金 不提出:5億円以下の罰金

罰則(個人)

5年以下の懲役又は 500万円以下の罰金又はこの併科(注1)

5年以下の懲役若しくは 500 万円以下の罰金又はこの併科

10年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰金又はこの併科

虚偽記載:10 年以下の懲役若しくは 1000万円以下の罰金又はこの併科 不提出:5年以下の懲役若しくは500万円以下の罰金又はこの併科

没収・追徴に係る特例規定

- 不公正取引により得た財産を没収・追徴 -

課徴金と刑事罰等の調整(注2)

罰金額の2分の1相当額を控除

没収・追徴相当額を課徴金額より控除 罰金相当額を控除

その他(注3)

算定率の加減算及び課徴金の減免に関する規定あり

課徴金の加減算に関する規定あり

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独占禁止法・金融商品取引法・公認会計士法の課徴金及び刑事罰の比較-2

金融商品取引法 公認会計士法

課徴金対象行為 公開買付届出書等の虚偽記載・不提出

大量保有報告書の虚偽記載・不提出

プロ向け市場等における

故意による虚偽証明等

相当の注意を怠ったことによる重大な虚偽証明等

特定証券等情報の不提供等、虚偽等

発行者等情報の虚偽等

課徴金の 算定方法

例)買付け総額の 25%等

例)対象株券等の発行者の時価総額の 10 万分の1

例)発行価額又は売付価格の総額の 2.25%(株券等の場合は 4.5%)

例)600 万円又は発行する株券等の市場価額の総額等の10 万分の6のいずれか大きい額

監査報酬相当額の1.5倍に相当する額

監査報酬相当額

罰則(法人) 5億円以下の罰金 -

罰則(個人) 5年以下の懲役若しくは 500万円以下の罰金又はこの併科 -

没収・追徴に係る 特例規定

- -

課徴金と刑事罰 等の調整(注2)

- -

その他(注3) 課徴金の加減算に関する規定あり 免除に関する規定あり

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(注1)私的独占又は不当な取引制限をした者に対するもの (注2)具体的な調整手続は以下のとおり

独占禁止法 金融商品取引法

① 課徴金納付命令時に罰金額が確定している場合、当該罰金相当額の半分を控除した額の課徴金納付命令を出す。 ② 課徴金納付命令後に罰金が確定した場合、公正取引委員会の審決をもって、当該罰金相当額の半分を控除した額の課徴金納付命令に変更する。既に課徴金が納付されている場合、必要に応じ還付を行う。

① 課徴金納付命令時に罰金等の刑事判決が確定している場合 …当該金額相当額を控除した額の課徴金納付命令 ② 課徴金納付命令時に刑事裁判が係属している場合 …判決確定まで納付命令の効力停止。判決確定後に罰金額等と調整し、納付命 令の変更又は取消し ③ 課徴金納付後に起訴された場合 …判決確定後、納付済みの課徴金と罰金額等を調整し、納付命令変更し、還付

(注3)加減算及び減免の概要については以下のとおり。

独占禁止法 金融商品取引法・公認会計士法

【加算(算定率)】 10 年以内に課徴金納付命令を受けていた者に対しては5割増しの率を適用 【減算(算定率)】 違反行為を早期に取りやめた者に対しては2割減の率を適用 【減免(金額)】 立入検査前に違反行為について 1番目に申請した者→納付命令せず 2番目に申請した者→50%減額 3番目に申請した者→30%減額 4番目に申請した者(公取委に把握されている事実以外)→30%減額 5番目に申請した者(公取委に把握されている事実以外)→30%減額 立入検査後に違反行為について申請した者(公取委に把握されている事実以外)→課徴金を 30%減額 (検査前検査後全体で 5番目まで、検査後は、3番目まで)

【加算(金額)】(金融商品取引法) 違反行為者が過去5年以内に金融商品取引法上の課徴金納付命令等を受けたことがあるときは、課徴金額が 1.5倍に加算される 【減算(金額)】(金融商品取引法) 一定の違反行為を行った者が当局の調査前に内閣総理大臣(証券取引等監視委員会)に対し報告を行った場合、課徴金額が半額に減算される (一定の違反行為) ・法人による自己株の取得におけるインサイダー取引 ・継続開示書類・発行開示書類の虚偽記載・不提出 ・大量保有報告書の不提出 ・特定証券等情報・発行者等情報の虚偽等 【免除】(公認会計士法) 一定の戒告・業務停止、解散命令等を行う場合であって、課徴金の賦課が適当でないと認められるときは、命じないことができる

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29

行政調査権限の比較

独占禁止法

金融商品取引法 公認会計士法

届出者等に対す

る調査

金融商品取引業者等に

対する調査

不公正取引を理由とする

課徴金に係る事件の調査

懲戒事実(課徴金)

に係る事件の調査

公認会計士の業務に対す

る調査

調査形態 間接強制調査(正当な理由なく拒絶する場合に罰則あり)

許可状 の要否 否

処分・権限

出頭命令

(法 47条 1項 1号) - - -

出頭命令

(法 33条 1項 1号) -

審尋

(法 47条 1項 1号) - -

質問

(法 177条 1号)

審問

(法 33条 1項 1号) -

報告徴収

(法 47条 1項 1号)

報告徴収

(法 26条)

報告徴収

(法 56条の 2)

報告徴収

(法 177条 1号)

報告徴収

(法 33条 1項 1号)

報告徴収

(法 49条の 3第 1項)

立入検査

(法 47条 1項 4号)

立入検査

(法 26条)

立入検査

(法 56条の 2)

立入検査

(法 177条 2号)

立入調査

(法 33条 1項 4号)

立入調査

(法 49条の 3第 2項)

提出命令

(法 47条 1項 3号)

提出命令

(法 26条)

提出命令

(法 56条の 2) -

提出命令

(法 33条 1項 3号)

提出命令

(法 49条の 3第 1項)

物件留置

(法 47条 1項 3号) - - -

物件留置

(法 33条 1項 3号) -

資料 18

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資料 19

課徴金制度における手続保障について

<独占禁止法上における課徴金制度>

・ 課徴金納付命令の事前手続として、意見申述・証拠提出の機会が付与される(独

占禁止法 50条6項、49条3項~5項)。

・ 課徴金納付命令書には、納付すべき課徴金の額及びその計算の基礎、課徴金に

係る違反行為 並びに納期限を記載する(同法 50条6項、49条5項)。

・ 課徴金納付命令に不服がある者は、審判請求(同法 50条4項)をして、公正

取引委員会の審判手続 において同命令の当否を争うことができる(不服審査

型審判手続。なお、平成 17年の同法改正前は、課徴金納付命令の事前手続と

しての審判手続〔事前審査型審判手続〕とされていた。)。

・ 審判手続は、同法 52条以下の規定によるほか、手続の細則として定められた

規則(※)に従う。 (※ 公正取引委員会の審判に関する規則)

・ なお、上記の審判制度の廃止を内容とする独占禁止法改正法案が国会に提出さ

れている(第 174回国会閣法第 49号)

<金融商品取引法上における課徴金制度>

・ 内閣総理大臣は、課徴金納付命令を基礎付ける事実(違反事実)があると認め

るときは、審判手続開始決定を行わなければならず(金融商品取引法 178条1

項)、これにより審判手続が開始される(事前審査型審判手続)。

・ 審判手続は、同法 178条以下の規定によるほか、手続の細則として定められた

府令(※)に従う。(※金融商品取引法第六章の二の規定による課徴金に関す

る内閣府令)

<公認会計士法上における課徴金制度>

・ 内閣総理大臣は、課徴金納付命令を基礎付ける事実(違反事実)があると認め

るときは、審判手続開始決定を行わなければならず(公認会計士法 34条の 40

第1項)、これにより審判手続が開始される(事前審査型審判手続)。

・ 審判手続は、同条以下の規定によるほか、手続の細則として定められた府令(※)

に従う。(※公認会計士法の規定による課徴金に関する内閣府令)

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資料 20

課徴金制度における徴収手続等について

<独占禁止法上における課徴金制度>

・ 督促:課徴金が納期限までに納付されない場合、督促が行われる(独占禁止法 70条の9

第1項) 。

・ 延滞金:納期限の徒過後、延滞金(原則年 14.5%の日割計算)が発生する。延滞金が 1,000

円未満のときは徴収せず、端数が 100 円未満の場合は切り捨てる(同条3項及び4

項)

・ 強制徴収:上記の督促を受けた者がその指定する期限までに納付すべき金額を納付しな

いときは、国税滞納処分の例により徴収することができる(同条5項)。

・ 先取特権:課徴金の徴収について、先取特権の順位は、国税及び地方税に次ぐものとさ

れ、その時効は国税の例による(納期限から5年で時効消滅し、督促や他の執行機

関への交付要求などにより時効中断する〔国税通則法 72条及び 73条〕。)。

<金融商品取引法上における課徴金制度>

・ 督促:課徴金が納期限までに納付されない場合、督促が行われる(金融商品取引法 185

条の 14第1項) 。

・ 延滞金:納期限の徒過後、延滞金(原則年 14.5%の日割計算)が発生する。延滞金が 1,000

円未満のときは徴収せず、端数が 100円未満の場合は切り捨てる(同条2項及び3項)

・ 強制徴収:上記の督促にもかかわらず課徴金及び延滞金が完納されない場合、民事執行

法その他強制執行の手続に関する法令に従った強制徴収がなされる(同法 185 条の 15

第1項及び2項)。

・ 倒産手続上の順位:課徴金納付命令に係る請求権は、破産法等の倒産法の適用との関係

では、過料と同じ扱い(劣後債権、免責なし)とされる(同法 185条の 16)。

<公認会計士法上における課徴金制度>

・ 督促:課徴金が納期限までに納付されない場合、督促が行われる(公認会計士法 34条の

59 第1項) 。

・ 延滞金:納期限の徒過後、延滞金(原則年 14.5%の日割計算)が発生する。延滞金が 1,000

円未満のときは徴収せず、端数が 100円未満の場合は切り捨てる(同条2項及び3項)。

・ 強制徴収:上記の督促にもかかわらず課徴金及び延滞金が完納されない場合、民事執行

法その他強制執行の 手続に関する法令に従った強制徴収がなされる(同法 34条の 60

第2項)。

・ 倒産手続上の順位:課徴金納付命令に係る請求権は、破産法及び民事再生法の適用との

関係では、過料と同じ扱い(劣後債権、免責なし)とされる(同法 34条の 61)。

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資料 21

仮差押えの担保基準

※下記基準は、大阪弁護士協同組合出版委員会『平成 24年版 訟廷日誌』(全国弁護士協同組合連合会、2011年)からの抜粋であり、

あくまで一般的に知られている一応の基準であって、個々の事案における具体的な担保額と常に一致するものではない。

目的物

被保全権利

動 産 不動産

債 権 自動車

預金

給料

敷金

保証金

預託金

供託金

その他 登録 取り上げ 併用

手形金・小切手金 10~25 10~20 10~25 10~20 10~25 10~20 15~25 20~30

賃金・賃料・売買代金・その他 10~30 10~25 10~30 10~25 10~30 15~25 25~30 30~40

損害賠償 交通事故 5~20 5~15 10~25 5~15 5~20 5~15 10~20 15~25

その他 20~30 15~30 25~35 15~30 20~30 15~25 20~30 25~35

詐害行為取消権 20~30 15~35 20~40 15~35

※数値は目的物の価格に対する担保額の比率(パーセント)である。

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資料 22

財産の特定の程度について

(ア)動産の場合

「法 21条は、可動性があり個々に特定することが難しい動産については特定す

る必要はないとするが、動産についても超過仮差押の有無の判断や担保額の的確な

算定は必要であることから、申立ての理由のなかで、あるいは上申書等で具体的に

対象物を特定する必要があると思われ、実務では、保全の必要性についての判断の

際にも必要な事項であることから、実務上、ある程度特定を要求することが多い。」

(東京地裁保全研究会編『民事保全の実務 〔新版増補〕(上)』(金融財政事情研

究会、2007年)128 頁)

(イ)不動産の場合

「不動産の場合、不動産登記簿の記載どおりに特定する必要がある。債務者の共

有部分を対象とする場合には、物件目録中に持分割合を記載することになる。」 (東

京地裁保全研究会編『民事保全の実務〔新版増補〕(上)』(金融財政事情研究会、

2007年)129頁)

(ウ)債権その他の財産権の場合

・ 「規則は、申立書において債権の種類及び額その他の債権を特定するに足りる

事項を記載すべき旨定めている(民事保全規則 19条 2項 1号)。目的債権の特定

は、・・・執行手続における明確性(特に第三債務者による識別)のために必要

となるものであって、この点が不明確な場合、第三債務者に過大な事務負担と二

重払いの危険を負わせることになる。債権の特定に当たっては、債権者(仮差押

債務者)、債務者(第三債務者、同規則 18条 1項)、債権の種類、発生・原因、

給付内容、数額、弁済期等により、第三債務者が他の債権と識別できる程度の記

載をする必要がある。また、債権に順序を付する場合には、その論理的順序を一

義的に明確にする必要がある。」(瀬木比呂志監修『エッセンシャル・コンメンタ

ール民事保全法』(判例タイムズ社、2008年)172頁)

・ そして、例えば債務者の預金債権については、実務上、銀行等の支店まで特定

する(請求債権額を取扱店舗ごとに割り付けて差 押債権を特定する)必要があ

る。裁判例においても、銀行の全支店に順位付けをして申し立てた差押えについ

て、そのような申立は差押債権の特定を欠き、不適法とした最高裁決定がある(最

決平成 23 年9月 20 日(民集 65 巻6号 2710 頁)。本決定は本差押えの場合につ

いてであるが、仮差押えの場合であっても同様の議論が該当するとの指摘がある

(判例タイムズ第 1357号(2011年) 67頁[解説]))。

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資料 23

民事執行法上の財産開示制度

【制度概要】

同制度は、一定の債務名義を取得した債権者(民事執行法第 197 条)の申

立てにより、裁判所が、裁判所における期日(財産開示期日)に債務者(そ

の法定代理人、法人の代表者)を呼び出し(同法 198条)、債務者に対し、そ

の財産状態について宣誓のうえ陳述すべき義務を課するもの(同法 199 条)

である。

債務者は、かかる呼び出しによる財産開示期日への出頭、財産開示期日に

おける宣誓及び陳述が義務とされ、それらの義務に違反した場合には過料の

秩序罰を受ける(同法 206 条)こととなる一方、その開示により債務者の財

産状態を知った債権者に対してもこれを他の目的に使用できない義務(同法

202 条)を負わせて、その履行を同じく過料により担保するという仕組みが

とられている。

(高橋利昌「財産開示手続の有用性と限界」金融・商事判例 No1186(2004

年)91頁~)

【制度趣旨】

金銭債権についての強制執行の申立ては、原則として執行の対象となる債

務者の財産を特定してしなければならない(民事執行規則 133条2項)ため、

現行制度の下では、債権者において債務者財産に関する十分な情報を有しな

い場合には、勝訴判決等を得たにもかかわらず、その強制的実現を図ること

ができない。

このような事情も踏まえ、勝訴判決等を得た債権者が債務者財産に関する

情報を取得することができるようにするため、本制度が創設された。

(谷口園恵ほか「担保物権及び民事執行制度の改善のための民法等の一部を

改正する法律の解説」NBL No775(2003年))

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資料 24

行政調査の権限について

・ 「行政調査の権限は一定の行政目的を達成するためにあたえられるのであ

るから、行政機関が行政調査権を行使して取得した資料・情報は、当該目的

のためにのみ利用されるべきである。法律はしばしば行政調査の権限は『犯

罪捜査のために認められたものと解してはならない』(所得税法 234条2項)

などと定めているが、強制的に取得された個人情報は、犯罪捜査にとどまら

ず、他の行政目的のためにも、とくに緊急の必要のある場合のほかはみだり

に流用されてはならない(目的外使用の禁止)。他目的使用は、プライバシ

ーを侵害するなど行政権の濫用となるおそれが強いからである。」

(原田尚彦『行政法要論』(学陽書房、2000 年)237頁)

・ 「・・・個人情報保護の観点から、行政情報の共用においては、個人情報

の目的外利用や提供に歯止めをかける必要がある。行政機関個人情報保護法

は、個人情報を本人から直接書面で取得する場合、原則として、あらかじめ、

本人に対して、その利用目的を明示しなければならないこととしているが

(4条)、収集時点で利用目的が明示されていたとしても、当該行政機関が

事後に目的を変更したり、他の行政機関に当該情報を提供することが全く自

由に行えるのでは、収集時点での目的の明示の意味が没却されることになる。

そこで、同法は、行政機関が、利用目的を変更する場合には、変更前の利用

目的と相当の関連性を有すると合理的に認められる範囲を超えて行っては

ならないとし(3条3項)、法令に基づく場合を除き、利用目的以外の目的

のために保有個人情報を自ら利用し、または提供してはならないこととして

いる(8条1項)。」

(宇賀克也『行政法概説Ⅰ行政法総論〔第4版〕』(有斐閣、2011年)175頁)

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資料 25

民事法律扶助業務(総合法律支援法)

【制度概要】

本制度においては、まず申込者が法テラスの事務所、指定相談場所又は事務所相

談登録弁護士若しくは事務所相談登録司法書士の事務所において援助の申込みを

行い(日本司法支援センター業務方法書 24 条)、援助要件(同業務方法書 15 条)

を満たす場合、法律相談援助を受ける。その上で、代理援助、書類作成援助を受け

る場合には、法テラスの地方事務所長が地方扶助審査委員の中から担当審査委員を

2名指名し、下記の要件を満たしているかの審査に付する(同業務方法書9条、26

条6~8項、29条1項)。

ア.資力が一定額以下であること。

イ.勝訴の見込みがないとはいえないこと。

ウ.民事法律扶助の趣旨に適すること。

上記の要件を満たしている場合、地方事務所長は援助開始及び立替費用等の決定

を行う(同業務方法書 28条、30条)。

立替費用は、報酬、実費、保証金、その他附帯援助に要する費用とされ(同業務

方法書 11条)、それぞれ立替基準が定められている(同業務方法書 12条、別表3)。

【制度趣旨】

民事法律扶助業務とは、経済的に余裕がない者が法的トラブルにあったときに、

無料で法律相談を行い(「法律相談援助」)、弁護士・司法書士の費用の立替えを行

う(「代理援助」「書類作成援助」)業務であり、これによって憲法第 32条に定める

「裁判を受ける権利」を実質的に保障するものとして位置づけられている(法テラ

スホームページ)。

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資料 26

自治体による訴訟費用の援助制度の例(東京都消費生活条例)

【制度概要】

本制度においては、以下の要件を満たす場合には、委員会の意見を聴いて、被害者に対し、訴訟

に係る経費の貸付けその他訴訟活動に必要な援助を行うことができるとされている。(東京都消費生

活条例第 31 条。なお、都民の消費生活に特に著しく影響を及ぼし、又は及ぼすおそれがあると知事

が認めるときは、アの要件は除くこととされている。)

ア.当該訴訟に係る経費が被害額を超え、又は超えるおそれがあるため、自ら訴訟により被害の

救済を求めることが困難なこと

イ.同一又は同種の原因による被害を受けた消費者が多数生じ、又は生ずるおそれがあること。

ウ.当該被害に係る紛争が委員会の審議(※)に付されていること。

エ.当該被害者が、当該貸付けの申込みの日前3月以上引き続き都内に住所を有すること。

また、貸付の範囲は、当該訴訟の遂行に要する裁判手続費用、弁護士費用その他訴訟に要する費

用及び権利の保全に要する費用並びに強制執行に要する費用とし、その額は規則で定めることとさ

れている。(同条例第 32条)

そして、民事保全における担保である保証金についても貸付の対象となる(東京都消費生活条例

施行令第 13 条)。

【制度趣旨】

本制度は、訴訟による救済の実益に乏しい等の理由から、訴訟になりにくいいわゆる少額多数被

害の紛争について裁判による解決を促進するとともに、当該被害のみならず同種の被害救済に資す

ることを目的としている。 (東京都生活文化スポーツ局『逐条解説 東京都消費生活条例』)

【参考】「東京都消費者被害救済委員会」について

東京都の消費生活総合センターその他被害救済の相談に応じる機関が処理する事件のうち、「都民

の消費生活に著しく影響を及ぼし、又は及ぼすおそれがある紛争」について、あっせんや調停等を

行うことにより、公正かつ速やかに解決するため、知事の附属機関として、同条例 29 条に基づき、

東京都消費者被害救済委員会が置かれている。(被害発生から委員会への付託の流れは以下の図のと

おり。)

なお、上記の訴訟援助は、委員会のあっせん・調停等による紛争処理が行われた事件を前提とし

ているため、援助の対象となる案件は、「都民の消費生活に著しく影響を及ぼし、又は及ぼすおそれ

がある紛争」であることが前提となる。

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資料 27

暴対法で検討された供託命令制度

都道府県公安委員会が、不当な要求行為(次頁※2)によって被害者から金品その他の財産上

の利益を取得した指定暴力団員に対し、意見聴取手続を経た上、その価額に相当する額の金銭を

供託所に供託すべき旨を命ずることができるという制度。制度骨子は以下のとおり。

(一)都道府県公安委員会は、不当な要求行為によって被害者から金品その他の財産上の利益を

取得した指定暴力団員に対し、意見聴取手続を経た上、その価額に相当する額の金銭を供託

所に供託すべき旨を命ずることができる。

供託命令を受けた指定暴力団員が供託しなかったときは、事前に被害弁償を済ませた場合

その他正当な理由がある場合を除き、懲役又は罰金に処する。

(二)被害者は、その被害回復に係る債権について、示談が調ったり民事訴訟で請求が認容され

たりした場合には、その示談書や確定判決などを供託命令をした都道府県公安委員会に示し、

その確認を受けて、供託金の払渡しを受けることができる。これによって被害者は、供託金

額の範囲内で、他の債権者に優先してその被害を回復することができる。

(三)供託命令を受けて供託をした指定暴力団員は、別途、被害弁償をした場合には、供託命令

をした都道府県公安委員会に被害者の受取証書等を示して確認を受け、供託金を取り戻せる

こととする。

(四)供託命令を受けて供託をした指定暴力団員は、被害弁償をしないままに、被害回復に係る

被害者の債権が時効消滅した場合等には、供託命令をした都道府県公安委員会にその確認訴

訟の確定判決を示して確認を受け、供託金を取り戻せることとする。ただし、指定暴力団員

が取り戻すことができるのは、供託金全額ではなく、供託金のうち不正利得に当たらない部

分に限ることとする。この場合において、不正利得に当たる部分の供託金(指定暴力団員に

よる取戻しの残余額)は、公に帰属することとする。

(五)指定暴力団員が、被害弁償をしておらず、かつ、不当な要求行為によって被害者から一方

的に金品等の供与を受けたため供託金全額が不正利得に当たる場合など、(三)又は(四)に

より供託金を取り戻すことができない場合において、被害者が被害回復に係る債権を放棄す

るなど、被害回復に係る民事上の請求権を主張しないことが確定したときは、供託命令をし

た都道府県公安委員会は、意見聴取手続を経た上、供託金を公に帰属させることを決定する

こととする。

※1 本制度については、立案作業中に、別途、法務省において、犯罪被害者一般についての被

害回復制度の検討が行われることになったため、平成9年の暴対法(暴力団員による不当な

行為の防止等に関する法律)改正に盛り込むことは見送られた。

※2 市民に対して不安や迷惑を覚えさせるような暴力団員の反社会的な行為のうち、その被害

者から金品その他の財産上の利益を取得するもの。いわゆる民事介入暴力。(千野啓太郎「改

正暴対法の今後の課題-不正収益対策・被害者対策と供託命令制度」(警察学論集第 50 巻8

号)71 頁)

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資料 28

会社法上の会社解散命令について

• 会社の解散命令とは

裁判所は、公益を確保するため会社の存立を許すことができないと認めるときに、

法務大臣又は株主、社員、債権者その他の利害関係人の申立てにより、会社の解散

を命ずることができる(会社法第824条)。

会社とは、株式会社、合名会社、合資会社又は合同会社をいう(会社法第2条第

1項第1号)

• 類似の制度として以下のものがある。

裁判所によるもの

外国会社に対する営業所閉鎖命令(会社法第827条)

解散命令(一般社団法人及び一般財団法人に関する法律第261条)

解散命令(宗教法人法第81条)

事業者団体の解散の宣告(独占禁止法第95条の4)

行政庁によるもの

行政庁による解散命令(農業協同組合法第95条の2)

法令等の違反に対する処分(中小企業等協同組合法第106条第2項)

解散命令(私立学校法第62条)

申立要件その他

• 申立人

法務大臣又は株主、社員、債権者その他の利害関係人(法第824条第1項)

• 要件

公益を確保するため会社の存立を許すことができないこと

次に掲げる場合

□会社の設立が不法な目的に基づいてされたとき(第824条第1項第1号)。

□会社が正当な理由がないのにその成立の日から1年以内にその事業を開始せ

ず、又は引き続き1年以上その事業を休止したとき(同条同項第2号)。

□業務執行取締役、執行役又は業務を執行する社員が、法令若しくは定款で定め

る会社の権限を逸脱し若しくは濫用する行為又は刑罰法令に触れる行為をした

場合において、法務大臣から書面による警告を受けたにもかかわらず、なお継続

的に又は反復して当該行為をしたとき(同条同項第3号)。

• 担保

株主、社員、債権者その他の利害関係人が解散命令の申立てをしたときは、裁判

所は、会社の申立てにより、解散命令の申立人に対し、相当の担保を立てるべき

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ことを命ずることができる。(第824条第2項)

会社が上記担保提供命令の申立てをするには、解散命令の申立てが悪意によるも

のであることを疎明しなければならない(第824条第3項)。

• 通知義務

裁判所その他の官庁、検察官又は吏員は、その職務上解散命令の申立て又は会社

法第824条第1項第3号の警告をすべき事由があることを知ったときは、法務

大臣にその旨を通知しなければならない(会社法第826条)。

解散命令の手続・効果等

• 手続

会社解散命令は非訟事件手続であり,非訟事件手続法,会社法の非訟事件手続

に関する規定(法第868条~第876条,第904条~第906条)およびそ

の関連法令に従ってなされる。

• 効果等

会社解散命令が発せられた場合、当然に会社解散事由となる(法第471条第1

項第6号、同法第641条第1項第7号)。

ただし、会社の法人格は当然には消滅せず、消滅のためには清算手続が終了する

ことが必要である。

裁判所は利害関係人若しくは法務大臣の申立てにより又は職権で、清算人を選任

する(法第478条第3項、第647条第3項)。

清算人は、現務の結了、債権の取立て及び債務の弁済、残余財産の分配を職務と

する(法第481条、第649条)。

清算人は、会社の財産がその債務を完済するのに足りないことが明らかになった

ときは、直ちに破産手続開始の申立てをしなければならない(会社法第484条

第1項、同法第656条第1項)

会社財産の保全

• 趣旨

会社解散命令の申立てがあった場合に、解散命令を予期してその前に会社財産の

隠匿その他の不正行為が行われないように会社財産の管理・保全を行わせる。

• 管理命令

裁判所は、会社解散命令の申立てがあった場合には、法務大臣若しくは株主、社

員、債権者その他の利害関係人の申立により又は職権で、会社解散命令の申立て

につき決定があるまでの間、会社の財産に関し、管理人による管理を命ずる処分

(管理命令)その他の必要な保全処分を命ずることができる(法第825条第1

項)。

裁判所は、管理命令をする場合には、当該管理命令において、管理人を選任しな

ければならない(法第825条第2項)。

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資料 29

会社解散命令制度の調査権限について

【参考】調査権限について(文献)

「法務大臣が問題となる会社に警告を発出するためには、警告発出のための要件

の存在を認定しなければならない。いわば事実認定の問題である。ところが、現行

法では、法務大臣が要件の存否を認定するための手続規定を欠いている。・・・こ

の手続規定の欠缺は、既述のとおり、昭和 25 年の改正により解散命令請求者を検

察官から法務大臣に変更したにもかかわらず、その面の手当がなされなかったこと

に由来すると考えられる・・・法務大臣自身が証拠を収集するというのも事実上無

理であろう。従って、現行法の立場は、法務大臣は、非訟事件手続法に定められた

裁判所その他の官庁、検察官および公吏(これには警察等の捜査機関も当然含まれ

る)が適切に通知(事実の通知だけでは意味がないので、当然その事実を認定する

に足る証拠も含むと解する。)をすることを期待しているものと言える。」(大森淳

「会社の解散命令-特に法務大臣による警告を中心に一考察-」商事法務№1047

(1985年)6頁)

【参考】調査権限について(裁判例)

「原告らは、法務大臣は、(1)法務省設置法に定める所掌事務を遂行するため

の調査権限、(2)法務省組織令に定める所掌事務を遂行するための調査権限、(3)

非訟事件手続法一三四条ノ四(※)、一六条に基づく調査権限、(4)人権侵害事件

調査処理規程に基づく調査権限を有しているから、・・・法務大臣は、これらの調

査権限を行使することにより、遅くとも昭和五九年五月の時点において、前記第二

の一(1)、(2)の事実(引用者注: 豊田商事が詐欺的な純金ファミリー商法を

もって一般大衆から金銭を不法に収奪することを目的として設立された会社であ

ること、豊田商事の取締役である永野らは、豊田商事の設立当時から破産直前に至

るまで、刑罰法令に違反する行為を継続、反復していたこと)を認識し又は認識し

えた旨主張する。

しかしながら、法務大臣の前記第一の二説示の各規制権限(引用者注:警告発出

権限及び会社解散命令の申立権限)の行使に関しては、現行法上、法務大臣に何ら

の調査権限も認められていないのであって、法務大臣に右1(1)ないし(4)の

調査権限があるとする原告らの右主張は、以下に述べるとおり、その理由がない。

即ち、右1(1)、(2)の法令は、いわゆる組織規範と呼ばれるものであって、

国民に対する行政作用の根拠ないし基準を規定する行政作用法とは異なるから、こ

れに基づいて国民に対する行政作用の一つである調査権限を認めることはできな

い。

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また、右1(3)の非訟事件手続法一三四条ノ四、一六条も、単に裁判所その他

の官庁、検察官及び公吏が、その職務上商法五八条一項の請求又は警告をなすべき

事由があることを知ったときはこれを法務大臣に通知すべきことを定めているに

すぎず、右規定を根拠として法務大臣の調査権限を認めることはできないというべ

きである。なお、原告らは、通知を受けた法務大臣は、理由があると認められる限

り会社解散命令の請求をしなければならないから、右規定は理由の有無を確認し調

査する権限を法務大臣に付与したものである旨主張するが、右規定を素直に読めば、

法務大臣に通知する者が、事実認定に足りる証拠を添えて通知することを予定して

いるものと解されるから、原告らの右主張は採用できない。

更に、右1(4)の規程は、人権侵害事件に関する調査についてのものであって、

会社解散命令の請求に関する調査権限を定めたものではない。

なお、法務大臣の前記各規制権限の行使に関し、現行法上法務大臣に何らの調査

権限も認められていないことは、従来から、立法の不備と指摘されてきたところで

あり、また、従来法務大臣により右各規制権限が行使されることが殆どなかった原

因にもなっているのである(このことは、職務上明らかである。)。

(大阪地方裁判所平成5年 10月6日判決、判例タイムズ 837号 58頁(豊田商法国

家賠償大阪訴訟第一審判決))

(※引用者注:当該規定は現在は削除されている。)

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資料 30

破産手続開始申立制度について

1-1.申立等

・ 破産手続開始の申立て

➢ 債権者、債務者、法人である債務者の理事・取締役等は、破産手続開始の申立

てをすることができる(破産法第18条第1項、法第19条第1項、2項)。

□ 特別法において監督庁に申立てを認める例がある(金融機関等の更生手続の特

例等に関する法律第490第1項)。

➢ 債権者が破産手続開始の申立てをするときは、その有する債権の存在及び破産手

続開始の原因となる事実を疎明しなければならない(破産法第18条第2項)。

□ 債権者申立の場合に、債権の存在と破産手続開始原因事実の疎明が必要とされ

るのは、破産手続開始申立てが他の債権者や債務者に与える影響が大きいことを

考慮して、無益または有害な申立てがなされることを防ぐためである。

□ 開始原因については「2.破産手続開始原因」を参照。

・ 費用の予納

➢ 破産手続開始の申立てをするときは、申立人は、破産手続の費用として裁判所の

定める金額を予納しなければならない(法第22条第1項)。(費用の予納について

は「1-2.予納金」を参照)。

・ 破産手続開始の決定

➢ 裁判所は、破産手続開始の申立てがあった場合において、破産手続開始の原因と

なる事実があると認めるときは、破産障害事由がある場合を除き、破産手続開始の

決定をする(法第30条第1項)。

□ 開始決定のためには、開始原因事実が証明されることが必要である。

・ 管轄

➢ 債務者が、営業者であるときはその主たる営業所の所在地、営業者で外国に主た

る営業所を有するものであるときは日本におけるその主たる営業所の所在地、営業

者でないとき又は営業者であっても営業所を有しないときはその普通裁判籍所在

地を管轄する地方裁判所に専属する(法第5条第1項、第6条)。

1ー2.予納金

・ 予納金制度の趣旨

➢ 破産手続に必要な費用は、破産債権者が共同で負担すべきものであるから、財団

債権として破産財団から優先的に支払われるはずのものであるが、現実に破産管財

人が財産を管理をする前には支払いが不可能であるし、財団の規模自体が費用を償

うに足るものかどうかも判明していない。そこで法は、これらの費用を償う財源を

一時的に破産手続開始申立人に求めるもの。

➢ 実際上の機能としては、破産手続開始申立ての濫用を防止することもある。

・ 予納金の額

予納金額は、破産財団となるべき財産及び債務者の負債(債権者の数を含む。)の

状況その他の事情を考慮して裁判所が定める(破産規則第18条第1項)。予納金額

決定については、裁判所に裁量権がある。

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・ 納付義務者

➢ 申立人の属性(債務者であるか債権者であるか)を問わず一律に予納義務を課し

た(法第22条第1項)。

➢ また、破産手続開始決定があるまでの間において、予納した費用が不足するとき

は、裁判所は、申立人に、更に予納させることができる(規則第18条第2項)。

・ 国庫仮支弁

➢ 破産手続が、債権者および債務者をはじめ様々な利害関係人の利益を調整すると

ともに、公益的な要素をも含む手続であることを考慮し、裁判所が、申立人の資力、

破産財団となるべき財産の状況その他の事情を考慮して、申立人および利害関係人

の利益の保護のため特に必要と認めるときは、破産手続の費用を仮に国庫から支弁

することができるものとしている(法第23条第1項)。

➢ 国庫仮支弁がなされるときには、申立人に予納義務が課されない(法第23条第

2項)

➢ 仮支弁が行われた場合の国の支弁金返還請求権は、財団債権として、破産財団か

ら償還される。

2.破産手続開始原因

・ 破産手続開始原因

➢ 債務者が支払不能であること(法第15条第1項)。

➢ 債務者が支払を停止したときは、支払不能にあるものと推定する(法第15条第

2項)。

➢ 債務者が法人の場合は、支払不能だけでなく、債務超過(債務者が、その債務に

つき、その財産をもって完済することができない状態をいう。)も破産原因となる

(法第16条第1項)。

□ 支払不能とは…

債務者が、支払能力を欠くために、その債務のうち弁済期にあるものにつき、一

般的かつ継続的に弁済することができない状態をいう(法第2条第11項)。

✓支払能力とは…

弁済能力の欠乏は、財産、信用あるいは労務による収入のいずれをとっても、

債務を支払う能力がないことを意味する。(東京高裁昭33年7月5日決定)。た

とえ、財産があっても、その換価が困難であれば、支払い不能とされるし、逆に

財産がなくとも、信用や収入にもとづく弁済能力があれば、支払不能とはされな

い。

✓一般的とは…

総債務の弁済について債務者の資力が不足しているという意味である。

✓継続的とは…

一時的な手元不如意を排除する趣旨である。

3-1.破産手続開始前の保全措置

・ 破産法は、債務者の財産散逸の防止、債権者間の公平を図る観点から、破産手続

開始前の保全措置につき、いくつかの類型を設けている。

➢ 中止命令(法第24条)

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債権者が債務者の財産に対して強制執行等をしているときは、債権者の実質的平等

を害することから、必要が認められるときは、その中止を命ずることができる。

➢ 包括的禁止命令(法第25条)

破産財団保全のために将来多発することが予想される強制執行等(国税滞納処分を

含む)をあらかじめ禁止するもの。特質として、将来行われることが予想される強制

執行をも予め禁止の対象とする予防性と、執行債権者を特定しない包括性があげられ

る。

➢ 保全処分(法第28条)

代表的な例として仮差押え、仮処分、弁済禁止、借財禁止等がある。

➢ 保全管理命令(法第91条)

債務者の財産についての管理処分権を当該債務者から奪って、保全管理人に専属さ

せる。

(園尾隆司他編『新・裁判実務体系 新版破産法』p78-94)

3-2.保全管理命令

・ 保全管理命令は債務者の財産についての管理処分権を当該債務者から奪って、保

全管理人に専属させるものであり、破産手続開始前に開始決定があったのと同等の

強力な効果をもたらすものであるから、債務者の財産散逸を防ぐ最も強力な手段と

なる。

・ 効果が大きいだけに、特に継続中の企業に対して発令する場合は、保全管理命令

が企業の信用低下、取引停止につながることもあり、債務者に及ぼす影響が極めて

大きい。

・ 保全管理命令の要件(法第91条第1項)

□ 債務者の財産の管理及び処分が失当であるとき

□ その他債務者の財産の確保のために特に必要があると認めるとき

・ 破産法上の保全管理命令は、民事再生法上の保全管理命令と異なり債務者への審

尋を必要としない(法第91条第1項)。

・保全管理命令が発令された事案

□ 債権者申立型…債務者が破産手続開始の申立てを知って、財産を処分したり、

隠匿したりする虞れが強い場合に発令される。例として住宅債権管理機構が不動

産会社に申立てた破産事件等

□ 牽連破産型…再生手続開始の申立ての棄却、再生手続廃止、再生計画の不認可

又は再生計画の取消しの決定が確定した場合に、債務者に破産手続開始原因があ

るときは、裁判所は、職権で破産手続開始の決定ができる。この際必要があると

きは、保全管理命令を命ずることができる。(民事再生法第251条第1項)。

□ 資産毀損防止型…債務者の営業が免許制になっている場合、破産手続開始が営

業免許の取消事由とされている場合があり、保全管理人に財産の管理処分権を移

し、保全管理人の手で営業上の地位を売却したうえで破産手続開始するというこ

とが行われている(築地市場内の卸売業者の自己破産等)。

□ 慎重審理型…破産原因の認定に慎重を期すべき場合(役員間に意思の一致が見

られない準自己破産等)

□ その他破産手続を開始することが不適当な場合…顧客保護型(証券会社の破た

んにおいて、一般投資家からの預かり資産返還を保全管理人の弁済禁止行為の対

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象から除外し、一般投資家に対する返還、弁済が終了した段階で破産宣告を行っ

た事例)、債権者多数型(近時は行われていない)などがある。 (園尾他

編・前掲書p81-84)

3-3.保全管理人の権限・業務

・ 債務者の財産の管理及び処分をする権利は、保全管理人に専属する(法第93条

第1項)。

・ 保全管理人には主として破産管財人の権限の規定(法第78条第2項から第6項)

が準用される(法第93条第3項)。

・ 保全管理人は、否認権の行使、役員の責任査定の申立てなどはできないが、否認

権のための保全処分や役員の財産に対する保全処分を申し立てることができる(法

第171条、法第177条第2項)。

4.破産手続開始の主な効果

・ 破産者が破産手続開始の時において有する一切の財産の破産財団化(法第34条

第1項)。

・ 破産者の破産財団に属する財産の管理及び処分する権利の喪失とこれらの破産管

財人への専属(法第78条第1項)。

・ 破産者が破産手続開始後に破産財団に属する財産に関してした法律行為は、破産

手続の関係において、その効力を主張することができない(法第47条)。

・ 破産債権者の個別的権利行使の禁止(法第100条第1項)。

・ 破産財団に属する財産に対する強制執行等他の手続の失効等(法第42条)。

・ 破産者を当事者とする破産財団に関する訴訟手続の中断(法第44条)。

・ 破産者の説明義務の発生(法第40条第1項)。

>>詳細は後述

・ 破産者の重要財産開示義務の発生(法第41条)。

>>詳細は後述

・ 説明義務とは

➢ 破産者、その代理人、法人の役員等及び従業者(裁判所の許可がある場合に限る。)

が、破産管財人、債権者委員会または債権者集会の求めに応じて破産に関して必要

な説明をしなければならない。過去にそれらの地位にあった者についても同様であ

る(法40条)。

➢ この説明義務は破産者の財産の内容や所在、破産に至った経緯などに関する情報

を提供させて、破産管財人の管財事務遂行の資料とし、また破産債権者が管財事務

に対する監督を行うための資料を提供させるためのものである。

➢ この義務に対する違反は、説明及び検査の拒絶等の罪(法第268条第1項、第

2項)となり、また免責不許可事由となる(法第252第1項第11号)。

・ 重要財産の開示義務とは

➢ 破産者は、破産手続開始の決定後遅滞なく、その所有する不動産、現金、有価証

券、預貯金その他裁判所が指定する財産の内容を記載した書面を裁判所に提出しな

ければならない(法第41条)。

➢ 破産財団に関連する情報を提供するという点では、説明義務と同趣旨のものであ

るが、破産管財人などからの求めの有無にかかわらず、裁判所に対して定型的に重

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要財産に関する書面による開示義務を課したところに、特徴がある。

➢ この義務に対する違反は、重要財産開示拒絶等の罪となり(法第269条)、ま

た免責不可事由となる(法第252条第1項第11号)。

・ 業務及び財産の状況に関する物件の隠滅等の罪(法第270条)

➢ 破産手続開始の前後を問わず、債権者を害する目的で、債務者の業務及び財産の

状況に関する帳簿、書類その他の物件を隠滅し、偽造し、又は変造した場合など

・ 審尋における説明拒絶等の罪(法第271条)

➢ 債務者が、破産手続開始の申立て(債務者以外の者がしたものを除く。)又は免

責許可の申立てについての審尋において、裁判所が説明を求めた事項について説明

を拒み、又は虚偽の説明をしたとき

5.破産財団の管理

・ 破産財団の管理

➢ 破産手続開始の決定があった場合には、破産財団に属する財産の管理及び処分を

する権利は破産管財人に専属するが(法第78条第1項)、これを背景として破産

管財人は、就職の後直ちに破産財団に属する財産の管理に着手しなければならない

(法第79条)。これは、倒産後に時間が経過すると財産や帳簿などが散逸し、破

産財団の管理が困難になるためである。

➢ 破産管財人は、破産財団管理の一環として、財産の封印(法第155条第1項)、

帳簿の閉鎖(法第155第2項)、郵便物等の管理(法第81条第1項)など、破

産財団の現状を把握し、その変更を防ぐための措置をとることができる。

□ 封印執行

裁判所書記官、執行官又は公証人に破産財団に属する財産に封印をさせ、又はそ

の封印を除去させることができる(法第155条第1項)。なお、封印を破棄する

と、刑事罰が課される(刑法第96条)。

管財人による占有管理は、対象財産を直接占有して行うが、破産管財人の占有管

理の明示方法としては、破産管財人名での公示書で行うのが一般的である。

➢ 引渡命令

管理すべき財産について破産者が占有しているものについては、破産管財人が破

産者から引渡しを受けるが、破産者が任意の引渡しを拒絶するときには、裁判所に

当該財産の引渡しを命ずべき旨を申し立て、裁判所が決定でその旨を命じる(法第

156条第1項)。

➢ 破産管財人による調査等(法第83条)

破産管財人は、破産者、破産者の代理人、法人である破産者の役員、破産者の従

業者および代理人、役員、従業者の地位にあった者に対して、破産に関し必要な説

明を求め、又は破産財団に関する帳簿、書類その他の物件を検査することができる。

また、破産管財人は、その職務を行うため必要があるときは、破産者の子会社

等に対して、その業務及び財産の状況につき説明を求め、又はその帳簿、書類その

他の物件を検査することができる。

(園尾他編・前掲書p160)

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6.大規模破産事件の特則等

・ 管轄

➢ 破産債権となるべき債権を有する債権者の数が500人以上であるときは、管轄

裁判所の所在地を管轄する高等裁判所の所在地を管轄する地方裁判所にも、申立て

をすることができる(法第5条第8項)。また、債権者の数が 1000人以

上であるときは、東京地方裁判所又は大阪地方裁判所にも、申立てをすることがで

きる(同条第9項)。

・ 破産債権者への通知等の特則

➢ 知れている破産債権者の数が1000人以上であり、かつ相当と認めるときは、

裁判所は破産手続開始の通知以外の破産債権者に対する通知をせず、かつ債権届出

をした破産債権者に対する債権者集会への呼出しをしない決定をすることができ

る(法第31条第5項)。この場合にも、裁判所は、破産債権者に対する周知を図

るために、破産管財人が、日刊新聞紙に掲載し、又はインターネットを利用する等

の方法であって裁判所の定めるものにより、一定の事項を破産債権者が知ることが

できる状態に置く措置を執るものとすることができる(破産規則第20条第3項)。

・ 代理委員

➢ 破産債権者は、裁判所の許可を得て、共同して又は各別に、一人又は数人の代理

委員を選任することができる(法第110条第1項)。

➢ 代理委員は、これを選任した破産債権者のために、破産手続に属する一切の行為

をすることができる(同条第2項)。

➢ 事実上または法律上同種の原因に基づく同種の債権等を有する債権者が多数存

在する場合には、これらの多数の債権者の権利を一括して代理する者がいれば、破

産債権者としても、破産手続内で権利の行使がしやすくなり、破産債権者の破産手

続への参加の機会の確保に資する。

➢ 例としてゴルフ場を経営する会社の破産事件における多数のゴルフ会員権者、多

数の従業員を擁する企業が未払の労働債権を抱えたまま破産した事件における従

業員等が想定される。また、耐震偽装問題によって破産した不動産業者の破産事件

では、マンション購入者の有する破産会社に対する瑕疵担保請求権の範囲が各マン

ションの耐震強度等によって異なるため、マンションごとに代理委員を選任した例

がある。

(小川編著・前掲書p60、154ー155、園尾他編・前掲書p414-415)

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資料 31

個々の被害者からの破産手続開始申立てが期待できない理由について

○ 瀬戸和宏「倒産法令による財産保全と消費者被害拡大防止」現代消

費者法№11(2011年) 48頁

「破綻が予想されながら、破産手続開始の申立てがなされない理由は、

被害者の側、換言すれば、被害者から依頼を受ける弁護士にある。・・・

弁護士は、業者の破綻を予想し、適時に破産手続開始の申立てをすれば、

それ以降の消費者被害の拡大を防止できることがわかっていても、自己

の依頼者の利益を考えると難しく、依頼者も、自分の利益を考えると、

破産申立ての依頼者にはならない。結局、事業者の破綻が予想されても、

回収が望めない、支払いが止まるなどという事態が生じない限り、個々

の被害者からの破産手続開始の申立てがなされることは期待できない。」

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資料 32

債権者による破産手続開始申立てに必要な疎明資料について

(「財産の隠匿・散逸防止策及び行政による経済的不利益賦課制度に関する検討チーム」第4回資料別紙3「田中

博尊弁護士からのヒアリング結果概要」より抜粋)

1.債権者による破産手続開始の申立てに必要な疎明資料

まず、申立債権の疎明については、個別被害者による民事訴訟が先行している場合

が多いため、確定判決があり、これにて疎明している。

破産原因の疎明(「事業実態が存在しない」、「事業が欺瞞的」といった点)につい

ては、被害者が持っているパンフレットや契約書、あとはメディアの新聞記事等にて

疎明している。また、被害者に対して、支払停止や支払猶予といったことをFAXな

どで通知することもあるが、こういった資料があれば必ず疎明に使用する。

債権者側からすると、会社の経理に関する財務資料を取得するのはほぼ不可能であ

るため、債務超過のみを破産原因として申立てることは基本的にはないのではないか

と思われる。

2.弁護士や被害者による疎明資料の情報収集方法

大きく分けると、会社の実態にかかる情報収集方法についてと、被害の実態にかか

る情報収集方法についてといった点になろうかと思われる。

まず、会社の実態については、まずは被害者から可能な限り資料などの情報を収集

する。具体的に集まる資料としては、商品のパンフレットや、契約関係書類、新聞記

事といったものになる。

なお、内部通報については、どの事件でもあるにはあるが、信憑性がない内容ばか

りであり、私の経験では疎明資料にて使用したことはない。

次に、被害の実態(被害者総数や被害規模についての正確な数字)については、一

般に自然に知る方法は我々にはない。最終的に管財人を入れて外部・内部で調査をし

てもらって初めて分かるというのが実情である。破産申立てに当たっては、マスコミ

だとか、刑事事件になっているとか、そういった事実を踏まえて行っているのが実態

である。

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過去の事案における予納金・配当率等について 第7回研究会江野委員報告資料より作成。予納金については公刊物等を参考にしており、若干実際の金額と異なる可能性がある。

事 件 名 事案の概要 被害者数 被害額 予 納 金 配 当 率

ワールドオーシャンファーム事件

養殖事業、不動産事業への投資勧誘事案

4万人 850億円

合計 3000万円(WOF1500万円、WOF基金 1000万円、個人 500万円)

会社、代表者合計約 8.49%

エフ・エー・シー事件

CD セット販売を通じた利殖詐欺事案

約 8000人 約 130 億円

500万円※ -

ファーストオプション事件

ファンドへの投資勧誘事案

600人以上 78億円 230万円 -

エル・アンド・ジー事件

擬似通貨等を通じた利殖詐欺事案

約3万 7000人

約 1260 億円

合計 3000万円(法人 2000万円、個人 1000万円)

近未來通信事件 IP 電話事業への投資勧誘事案

2000人 400億円

合計 1900万円(法人 1000万円、個人 500 万円、個人 400万円)

約 0.1%

ジーオー事件 バナバ茶販売事業等への投資勧誘事案

1600人 100億円 700万円 4.234%

平成電電匿名組合事件

通信機器リース事業への投資勧誘事案

1万 7000人 487 億4100万円

平成電電設備株式会社: 中間配当 7.5895% 最後配当 2.825688258% 追加配当 0.01905604% 平成電電システム株式会社: 中間配当 5.6452% 最後配当 1.998687259% 追加配当 0.01830128%

NOVA事件 解約金の精算方法に不当な条項があった事案

約 30万人 約 564 億円 (債権届出額)

- 配当見込みなし

※保全管理命令申立時。残金 323万円が破産管財人に引き継がれた。

資料 33

Page 54: 行政による経済的不利益賦課制度、財産の隠匿散逸防止策に ......行政による経済的不利益賦課制度、財産の隠匿散逸防止策について (資料編)

52

資料 34

破産債権の順位について

破産法上、それぞれの権利がもつ実体法上の優先権や政策的理由等から、破産手続

において、各債権について以下のような扱いをしている。

○ 財団債権(破産手続によらないで破産財団から随時弁済される)

破産配当に先立って満足を与えるべき債権として定められているもの。

破産管財人の報酬請求権等(破産法第 148 条第1項第1号、2号)、開始決定前の

原因に基づく租税等の請求権の一部(同法第 148 条第1項第3号)、使用人の給料等

の一部(同法第 149条第 1項、2項)等。

○ 破産債権(破産手続内で以下の順位により配当される。)

① 優先的破産債権

一般の先取特権その他一般の優先権をもつ債権(同第 98 条第1項)。破産手続

開始前の原因に基づいて生じた労働債権はこれに含まれる(一部は上記のとお

り、使用人の給料等の一部として財団債権となる)。

② 一般の破産債権(消費者被害に関する損害賠償請求権はここに含まれる)

①、③、④以外の破産債権。

③ 劣後的破産債権

破産手続開始後の利息の請求権(同法第 99 条第1項第1号、第 97 条第 1 号)

等。

④ 約定劣後破産債権

破産債権者と破産者との間で、破産手続開始決定前に、当該債務者について破

産手続が開始されたとすれば、当該破産手続におけるその配当の順位が劣後的

破産債権に後れる旨の合意がされた債権(同法第 99条第2項) 。

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53

資料 35

更生特例法上の破産手続の概要

金融機関等の更生手続の特例等に関する法律

○ 目的等

-金融機関の不良債権問題が契機となり、金融機関の更生手続等についての特例を定める

法律

-金融機関等(※)の破産手続について、監督庁に破産手続開始の申立権を付与(参考1

2-1)

○ 趣旨等

-金融機関が、実質的には破たんしていても資金の流動性が確保される限り事業を継続す

ることによって、更に経営状態が悪化し、破たん処理コストが一層増大することを防止

すること

(金融機関の内実、財務状況等をよく知り得る立場にあって、預金者等の保護に責任を

負う監督庁に申立権を認めることによって、 早期の破たん処理を可能にし、処理の

着手の遅れによる処理コストの増大等を防止しようとするもの。)

○ 要件等(更生特例法第 490条、第 494条、第 495 条)

-手続開始原因は、一般の破産手続開始の場合と異ならず、金融機関等に破産原因がある

こと

-保全処分、保全管理命令の申立権も付与

(※)金融機関(銀行、協同組織金融機関又は株式会社商工組合中央金庫)、金融商品取引

業者、保険会社及び少額短期保険業者

←平成 22年 5月施行の改正法が施行される前は、金融商品取引業者に対する当局によ

る破産手続開始の申立権は、証券会社についてのみ認められていた。同改正法により、

第二種金融商品取引業者に該当するファンドの販売業者や、投資運用業者に該当する

ファンドの運用業者も対象とされた。

内堀宏達=川畑正文「金融機関の更生手続等の概説」NBL第 612・613 号(1997 年)

「更生特例法においては、監督庁に更生手続開始の申立権が認められている。その趣旨は、

金融機関は、実質的に破綻しても資金の流動性が確保されているかぎり事業を継続すること

ができ、その結果さらに経営状態が悪化し、破綻処理コストが一層増大し、預金者に不利益

をもたらす懸念があることから、監督検査権をもち、銀行の内実、財務状況等をよく知りう

る立場にあり、預金者保護に責任を負う監督庁に申立権を認め、早期の破綻処理を可能にし、

処理の着手の遅れによる信用不安の招来、処理コストの増大等を防止しようとするものであ

る。」

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54

資料 36

監督官庁による破産手続開始申立てについて

(法制審議会における議論)

○ 倒産法部会第 21回会議資料 28(平成 14年 12月 13日)

「(破産の申立て関係後注)

監督官庁による破産の申立ての制度等について、破産法中に一般的な規定を設ける

ことはせず、個別法の規定に委ねるものとすることで、どうか。

この問題については、これまでの倒産法部会の審議において、公益的な観点から、

一般的な監督官庁による申立権を認める規定を破産法に設けるべきであるとの意見

も述べられていたところであるが(a)破産手続は債務者の解体・清算を内容とする

ものであって、社会的な影響が大きいものであり、政策的な見地からも慎重な検討を

要する、(b)監督官庁に一律に申立権を付与する場合には、監督権限を強化するこ

とについて合理性が認められない法人についてまで監督権限を強化することになる

等との指摘がされている。

このような反対意見の指摘するところをも踏まえて、監督官庁に破産の申立権を認

める必要性があると考えることができる場合を検討すると、具体的には、①定型的に

多数の債権者が存在し、かつ、迅速な破産の申立てができないと、多数の債権者に深

刻な影響が生ずるおそれがある場合であって、②債権者自らが破産の申立てを行うこ

とを期待することができない場合ということができると思われる。金融機関等の更正

手続の特例等に関する法律は、預金債権者保護の観点(①)から、調査権限等を有す

る監督官庁が、預金債権者を代理する立場にある(②)として、破産申立権を認めた

ものであり、このような観点からの説明が可能であると解されるが、一般には、監督

官庁といっても、業種によって規制の程度や態様が異なって、金融機関に対する規制

のあり方と同様に考えることはできず、破産申立てが必要となる業種を一義的に明確

な概念によって画することは困難であると考えられる。

これに対しては、破産の申立権を付与するかどうかについては監督官庁の権限によ

って画するという意見もあるが、個別の各業法において与えられている監督官庁の権

限は様々であって、共通の権限であっても、その趣旨、目的は異なり、権限から業種

を限定することはできないと考えられる。

このように考えると、監督官庁による破産の申立権を破産法に一般的に規定するこ

とは極めて困難であるといわざるを得ないと考えられるが、どうか。」

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55

資料 37

疎明資料として考えられるものの例

必要性

決算書(貸借対照表、損益計算

書) 事業者の資産・負債を把握するため

法人税確定申告書 (決算書を入手できない場合において)事業者の資

産・負債を把握するため

顧客名簿・勧誘マニュアル

事業者に対する不当利得に基づく利得金返還請求権な

いし不法行為に基づく損害賠償請求権(負債)を把握

するため (資産)

勘定項目 必要な資料等

現金 現金出納帳、事業所の調査

預貯金 預金出納帳、銀行口座の(預金、当座など)入出金記

受取手形・小切手 受取手形記入帳

売掛金 売買契約書、売掛台帳、請求書、納品書など

貸付金 金銭消費貸借契約書

不動産 固定資産課税台帳

賃借保証金・敷金 賃貸借契約書、領収書 (負債)

勘定項目 必要な資料等

借入金 金銭消費貸借契約書、社債など各種申込書

手形・小切手債権 支払手形記入帳、当座預金の入出金記録

買掛金 売買契約書、買掛台帳、請求書など

リース債権 リース債権台帳、契約書など

その他の債権(特に、顧客の不当利得返還ないし損害賠償請求権)

顧客名簿、勧誘マニュアル、陳述書、会社のパンレット、各種申込書、契約書、領収書(控え) (現地調査をした場合、調査報告書) (パイオネットにおける同種被害の情報) など

労働債権 雇用契約書、源泉徴収に関する書類(源泉徴収票)

公租公課 法人の確定申告書、保険料の滞納に関する書類など

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資料 38

破産手続の役割について

○ 最大決昭和 45年6月 24日(民集 24巻6号 610頁) (破産宣告決定に対する抗

告棄却決定に対する特別抗告事件)

「破産手続は、狭義の民事訴訟手続のように、裁判所が相対立する特定の債権者と

債務者との間において当事者の主張する実体的権利義務の存否を確定することを目

的とする手続ではなく、特定の債務者が経済的に破綻したためその全弁済能力をもつ

てしても総債権者に対する債務を完済することができなくなつた場合に、その債務者

の有する全財産を強制的に管理、換価して総債権者に公平な配分をすることを目的と

する手続であるところ、破産裁判所がする破産宣告決定は右に述べたような目的を有

する一連の破産手続の開始を宣告する裁判であるにとどまり、また、その抗告裁判所

がする抗告棄却決定は右のような破産宣告決定に対する不服の申立を排斥する裁判

であるにすぎないのであつて、それらは、いずれも、裁判所が当事者の意思いかんに

かかわらず終局的に事実を確定し当事者の主張する実体的権利義務の存否を確定す

ることを目的とする純然たる訴訟事件についての裁判とはいえないからである。」

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資料 39

行政の役割について

「司法は、当事者間に法律上の争訟のあることを前提として、紛争の

対象となっている事実を正しく認定するとともに、何が正しい法である

かを判断し決定する作用であるから、この作用を公正に行うことができ

るよう、独立の裁判所において、一定の争訟手続により、当事者双方の

主張を聴いたうえで行うことを建前としている点にその特色を認めるこ

とができるのであるが、行政は、法の下に法の規制を受けながら、現実

に国家目的を実現すること、いいかえれば、種々の利害を調整し、全体

としてより大きな公益を実現することを目的とする作用である点に特色

を有する。」

(田中二郎『新版 行政法 上巻[全訂第2版]』(有斐閣、1974年)7

頁)

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資料 40

アメリカ合衆国における「消費者被害回復」(consumer redress)について

(第7回研究会 中川丈久委員提出資料)

Ⅰ.概要

政府機関による消費者被害回復(government-obtained redress)については,いくつかの国に

おける立法例(または立法中)があるとされるが,そこで必ず挙げられるのが,米国のもの

である 1

FTC(連邦取引委員会。日本の公取委にあたる)の設立および権限を定めた連邦取引委

員会法(FTC法)の5(a)条は,「不公正な競争」(unfair methods of competition)と「不公正又

は欺瞞的な行為又は慣行」(unfair or deceptive acts or practices:UDAPs)を禁止している。前

者は競争法であるが,後者が消費者保護法であり(1938 年に挿入),UDAP規定と略称される 2

次に,FTCが,地方裁判所に,UDAP 規定に反する行為をした事業者を被告として,イ

ンジャンクションを求める訴え,および民事制裁金(シビルペナルティ)の納付を求める訴

えを提起できる旨が規定されている。

1980 年代以降のFTCは,この規定を用いて,消費者保護のために,次のような訴訟提起

をしている。

①当該行為の禁止,および事業者による被害者への不法収益の返還 (restitution and

disgorgement)を命ずる判決を求める訴え ← インジャンクションの規定

②国庫への民事制裁金納付の納付を命じる判決を求める訴え ←民事制裁金の規定

上記①においては,違法行為の差止めに止まらず,違法行為による利得の剥奪も行われて

いる。それにより違反行為の繰り返しが効果的に防げるからである。

この「UDAPsの発見→政府が違反事業者に対する訴訟(上記の①②)を提起する」と

いうスタイルは,連邦取引委員会(FTC)法の影響を受けて,現在ではすべての州法にお

いても採用されている。

近時,ある文書で,FTCは,このような「消費者被害回復」がアメリカ法では確立され

た方法であり,かつ実効性が上がっているとの自己評価を述べている 3

1 See, e.g., M. Faure, A. Ogus & N. Philipsen, “Enforcement Practices for Breaches of Consumer Protection Legislation,” 20 Loyola Consumer Law Review 361 (2008) and “OECD Workshop on Consumer Dispute Resolution and Redress in the Global Marketplace: Background Report,”

。以下はその要旨であ

る。

http://www.oecd.org/dataoecd/59/21/34699496.pdf. 2 FTC は,trade regulation rules と総称される委任命令(法規命令)を制定している。Kintner & Smith, The Emergence of the Federal Trade Commission as a Formidable Consumer Protection Agency, 26 Mercer L. Rev. 651 (1975). 3 イギリスの消費者保護当局からの問合せに対するFTCの回答である。United States Federal Trade Commission Staff Response to the U.K. Department for Business Enterprise & Regulatory Law Reform’s Consumer Law Review: Call for Evidence. (April, 2008) http://www.ftc.gov/oia/berrconsumerlaw.pdf

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・ われわれの経験に照らすと,政府機関が消費者被害回復のための権限をもつことは,消費者

被害救済にとってきわめて重要である。金銭的な消費者被害回復措置(monetary consumer redress)

は,違反者から,不法収益を剥奪し,これを被害消費者に配分することにより,被害を補填する

機能とともに,被害を予防する機能をもつ。消費者の損害を緩和するともに,消費者の市場への

信頼を回復するために重要な手段である。合衆国以外にも,数カ国が,効果的な消費者保護の手

段として,金銭的被害回復措置の重要性を認識しており,過去5年間に,ヨーロッパを含む数カ

国が,消費者保護当局に,被害者のために被害回復措置をとる権限を付与する立法を行った。2

008年のイギリスの新法も同様のものと理解する。

・ この措置を積極的に使えば,消費者は,通常の方法では得られない被害回復を得ることが可

能となる。FTC は,2007年3月から2008年2月の1年間で,38件の提訴を行い,11

1の判決を得て,$240ミリオン(1$=100円として240億円)の支払命令を得た。そ

の前年は,$414ミリオン(414億円)である。FTC はこれらの金額を国内外の被害者に還

付している。むろん,FTC は,判決で命じられた全額を回収できているわけではないが,それで

も,金銭的被害回復措置は,われわれの消費者保護施策の重要な部分である。

・ 政府に被害回復措置権限(governmental redress authority)があることは,とりわけ,国境を越え

た取引に有効である。通常の訴訟や,クラスアクション,少額請求訴訟,ADR などは,多数の消

費者被害を出す償金詐欺(sweepstakes and lottery scams), ネズミ講(pyramid schemes),ネット

詐欺などには,不向きである。

・ 政府機関であればこそ,国境と超えた取引事案についての複雑な訴訟も行うことができる。

FTC は,世界中の被害者に対する被害回復をしている。また,刑事や公法的な判決の外国におけ

る執行が難しいことにかんがみると,金銭的被害回復を命じる判決は,国境を越えた事案に適合

的である。たとえば,米国・オーストラリア間の FTA(自由貿易協定)では,消費者被害回復判

決の執行についての取り決めをおいている。

Ⅱ.連邦法について

※詳細は,2009 年 6 月 27 日に消費者庁研究会で筆者が行った報告を参照されたい。

(1)FTC の権限

■ FTCが民事制裁金(civil money penalty)の国庫への支払を求める訴訟を提起 FTC 法§

5(m)

自らの行為が,「不公正競争」又は「欺瞞的慣行」に関する FTC 規則(trade regulation rules)

に違反するものであることを知りながら,同規則に違反した者に対し,FTC は,civil money

penalty の納付を求めて提訴することができる。1個の違反につき1万ドル以下。

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「不公正競争」又は「欺瞞的慣行」に関して第三者(GM)に FTC の排除命令が出された後,自

らの行為がFTC法違反であることを知りながら,同法に違反した者(Ford)〔排除命令の当事者

以外の者〕に対して,FTC は civil money penalty のための提訴をすることができる(排除命令

の対象者に限らない)。1個の違反につき1万ドル以下。

上記2つの訴訟において,1日の違反をもって1個の違反とする。また,裁判所は,故意の程

度,違反歴,支払い能力,事業継続への影響等を考慮するものとする。

■ FTC がインジャンクション訴訟を提起 FTC 法§13(b)

FTC Act§13(b)には,「恒久的インジャンクション」のただし書(Provided further, That in

proper cases the Commission may seek, and after proper proof, the court may issue, a permanent

injunction.)という短い条文が挿入されているだけである。

§13(b)の立法意図は,別の趣旨(企業合併を行政手続の係属中に暫定的に止めること)

にあったとされるが,FTC は,1980 年代以降,消費者保護の分野において,この条文をフ

ルに用い始め,裁判所もそれを認めてきた。エクイティ上の救済は,事案の効果的解決の

ために裁判所の裁量で命じるものである。「被害回復」も,FTC法に明文の定めがあるわ

けではないが,裁判所の裁量で命じうるものとして始まったのである。裁量であるから,「被

害回復」にさえ止まるわけではない(それがメインではあるが)。たとえば,事業再開にあ

たっての保証金の提出を命じることもある。

FTC側は,「欺瞞的な行為又は慣行」に対して,まずは暫定的差止,資産凍結,仮管財人

(temporary receivers)の指名などを求め,その後本案訴訟として,恒久的差止判決その他のエ

クイティ上の救済(restitution[restoration, such as refunding overpayments], disgorgementなど)

などを求める 4。なお,多くの場合は和解しているとされる 5

FTC が提出する訴状では,違反行為の恒久的差止のほか,「契約の取消,支払われた金額の

返還(refund of monies paid),不法収益の吐き出し(disgorgement of ill-gotten monies)その他を命

じるよう求める」という定型文句が使われており,restitution か disgorgement かを原告側で特

定する必要はないようである。

また,FTC Act §13(b)における差止めや被害回復は,内容的には,被害者がみずから訴え

たり,クラスアクションを提起したりして求めることもできる。こうした訴訟が継続してい

る場合は,§13(b)訴訟と併合されることがある。

なお,「その他のエクイティ上の救済」として,「被害回復」が裁判所によって命じられる

ことに関して,次の点(実務的取扱い)は不明である。すなわち,ア)事業者(被告)が直

接に,被害者(訴外)に対し,返金(その前提としての契約の合意解除など)をすることを

意味するのか,それとも,イ)事業者(被告)は単にFTC(原告)に対して,違反行為に

かかる収益を納付すれば済むのか(FTCは基金として管理し,被害者に払い戻しをする)。

4 FTC Practice and Procedure Manual, at 168-169; Calkins, An Enforcement Official’s Reflections on Antitrust Class Action, 39 Ariz.L.Rev. 413, 432 (1997) 5 Consumer Protection Handbook, at 46 n.50 にその例がある。

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おそらくは,ア)とイ)を両極として,個々の事案(事業者が逃走ないし倒産したか,事業

再開の意思があるかなど)にあった様々な組合せを,裁判所の監督のもとに決めていくのか

と推測される。

また,仮の救済の行い方も不明である(凍結の範囲など)。

(2)FTC Act §13(b)による訴訟事例

以下は顧客リストがあり被害者特定がある程度容易な事案の例である。

虚偽広告(痩身)の事案

FTC v. SlimAmerica, Inc., 77 F. Supp. 2d 1263 (S.D.Fla. 1999)

held that: (1) defendants violated FTC Act provisions barring deceptive trade practices and false

advertising of food and drug products; (2) owner of company still owned proceeds from sale of

products ostensibly conveyed to third parties; (3) permanent injunction against violations of

FTC Act were warranted; (4) company was required to provide redress by returning all proceeds

of sale of products; (5) redress requirement extended to owner and key employee; and (6) owner

and key employee were required to post performance bonds before engaging in any business

involving weight-loss products.

・訴えは,permanent injunctive and other equitable relief を SlimAmerica, Inc. 等に対して

求めるもの。訴状では,消費者被害回復(consumer restitution) も求められている。

・虚偽広告の差止めを命令した後,被害回復については次のように判示した。まず,Section

13(b) of the FTC Act が裁判所による consumer redress も認めていると解されること,そ

のためには,FTC 側は,個々の消費者が現実に広告を信じて購入したことを立証する必

要はなく,通常の慎重さをもつ人間であれば信じるであろうこと,広く広告されている

ことが示されればよいこと,そして,多数の消費者が実際に被告の商品を購入したこと

を指摘して,「被害回復を命ずるべき事案である」とする。

・そして,被害回復として,消費者が購入のために支払った金額から,被告が既に返還

した額を差し引いたものが相当である(The appropriate measure for redress is the aggregate

amount paid by consumers, less refunds made by defendants.)。被告の売上額から返還額を差

し引いた 8,374,586 ドルが適切である。

不当電話勧誘(医療器具)の事案

FTC v. Gem Merchandising Corp., 87 F.3d 466 (1996)

原審地裁:issued injunction ordering that corporation and individuals having violated Federal

Trade Commission Act through manner in which telemarketing was conducted reimburse

consumers $487,500, and to extent repayment was not feasible pay remainder to United States

Treasury.

当審判決:held that: (1) trial court had equitable power to order reimbursement, even though

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reimbursement was not specifically set forth as sanction under Federal Trade Commission Act;

(2) trial court could order that funds not feasible to pay to consumers could be paid into United

States Treasury; and (3) owner of corporation had FDC Act liability.

・恒久的差止め・被害回復・事業監視

・被害回復として disgorgement を命ずるが,可能な限り被害者に配分した後,残額があ

れば国庫に入れる旨を判決。

ネズミ講(pyramid scheme)の事案

FTC v. Trek Alliance, Inc., Docket No. CV-02-9270 SJL (C.D.Cal. Dec.16,2002) (訴状,

答弁書等)

・恒久的差止め・被害回復・遵守報告書提出等(和解判決)

サブプライムローン(欺罔的勧誘)の事案

FTC v. First Alliance Mortgage Co., Docket No. SACV-00-964 DOC (C.D.Cal. March 21,

2002)

・First Alliance 社(破産手続中)との和解判決により,その残存資産と個人経営者からの

拠出分をあわせて,被害回復資金(redress fund/consumer redress pool)が設定され,被害

者に,loan origination fee が,FTC から返還される。約 18,000 人に最大で総額60億円

分の小切手(一人あたり平均33万円)が郵送される予定。

・被害者は,settlement class members として数グループに分類される(満額受け取りの人,

別の訴訟ないし和解で一部の補填をされている人,本和解からオプトアウトしたため

受け取り資格のない人,等)。

・和解は,連邦地裁が,FTC 訴訟に,それ以前から提起されていた州による訴訟,個人

提訴訴訟を併合させて,成立させたものである。

・資金は民間会社が FTC の委託を受けて管理する(fund administrator)。被害者の特定,小

切手の郵送,小切手の現金化を忘れている人への通知その他の業務を行う。

・すべての被害者にすべての支払が終わった後に残余がある場合,FTC は,被害者への

追加の支払いを行うか,消費者教育に用いるかを選択する。いずれにも使わなかった

場合には,国庫に組み込む。

懸賞詐欺

FTC v. Windermere Big Win Int’l, Civ.Act.No. 98C 8066 (N.D.Ill. Oct. 23, 2000)

・違反行為の恒久的差止と,消費者被害回復として 19,797,982 ドルの支払いを命じた。

判決によれば,被害回復が全部又は一部不可能となった場合は,FTCが残額を,

disgorgement として国庫に払い込む。

Ⅲ.州法について

全州において,FTC法におけるUDAPs の禁止規定と同様のものが置かれている。被害

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63

者個人は,当該規定に違反した事業者に対し,損害賠償(懲罰賠償,弁護士費用を含む)を

請求する訴えが提起できるほか,ほとんど州では,当該規定についてクラスアクションもで

きる(一部にクラスアクションを認めない州がある)。

さらに全州において,司法長官(それ以外の行政機関のこともある)がUDAP規定違反者に

対して,訴訟を提起し,①違反行為の差止/消費者被害回復(consumer restitution) ,②民事制

裁金賦課の納付を命ずるよう裁判所に求めることができる旨,定められている 6

多くの州では,提訴前に必要な証拠を集められるよう,司法長官には,調査権限(召喚令

状(subpoenas),すなわち民事調査権限(Civil Investigative Demand: CID))が法律上付与されて

いる(2007年時点では,コネチカット,DC等4つの例外があるのみ)。調査に協力しな

い者には法廷侮辱罪で対応する。

なお,メリーランド州法は,行政処分と提訴のいずれでも,違反行為の差止,被害回復措

置命令,民事制裁金納付命令をすることができるという珍しい立法例である 78

【NY州の場合】(2010年秋インタビュー)

① 司法長官オフィスは,ニューヨーク市、アルバニー、ブルックリン、ハーレムに事務所

があり,ニューヨーク事務所では、常勤弁護士 14 名、ボランティアの弁護士 4、5 名がいる。

他は弁護士1~2名。ただし,すべてが消費者保護専従というわけではない。

② ニューヨーク司法長官オフィスで扱っているのは,非刑事の事案のみ。提訴によって,

差止,被害回復,制裁金賦課を求める。

③ 被告の事業者は,被害回復費用として,事務費用,公告費用も負担する。被告に,司法

長官オフィスが管理する「被害回復基金」(Restitution Fund)ないし「被害回復会計」(Restitution

Account)に,被告から一定額(消費者から得た利益全部など)を払い込ませる。司法長官オ

フィスは,顧客リストを出させたうえ,その執行担当者(Claims Administrator)を任命して,被

害者からの被害回復請求に対する支払を行わせる。

④ 不正収益の引渡請求(disgorgement)は,制裁金ではなく,被害者への原状回復(restitution)

の額が算出困難な場合に使用される。これが実際に利用されることはすくないが,最近裁判

所における認知度は高まってきているのではないか。和解においても,返還額の算定が困難

な場合は,不正収益の引渡請求としての算定を行う。

⑤ 悪質な被告に対しては,提訴前に,裁判所に暫定的差止命令(temporary restraining order:

6 See, e.g., E. Myers & L. Ross (eds), STATE ATTORNEYS GENERAL POWERS AND RESPONSIBILITIES, 2nd Ed., 233-245 (National Association of Attorneys General, 2007) and N. Bernstine, Prosecutorial Discretion in Consumer Protection Divisions of Selected State Attorney General Offices, 20 Howard L. J. 247 (1977) 7 アメリカ法においては,政府にある措置をとらせるときに,行政処分の権限として規定するか,政府が提

訴して裁判所が命ずるという方法で規定するかは,いずれのパタンもある。「UDAPs」の場合,一部の州

で,提訴だけでなく,行政処分によっても,①~④を命じうると定めるものもある。その場合でも,行政処分

のほうがよく使われているわけではない。どちらでも手続的な厳重さに変わりは無く,かつ仮の財産凍結

を求めるには裁判所の手を借りなければならないためである。 8 Maryland Commercial Law, Section 13-301- Section 13-410 (prohibition of unfair or deceptive trade practice, the Office of the Attorney General’s authority to issue a cease and desist order, its dual authority to seek an injunctive order from the court, and its authority to impose civil money penalty whenever necessary).

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TRO)を求め,資産の凍結を求める。企業の全資産に対する凍結命令は,最終手段であるた

め,裁判所は厳格な基準で判断する。

(事例1)某社の食器洗機に発火の恐れがあることが判明したときに,同社は,廉価なはず

の修理費用を大幅に割り増しした料金を請求した。NY 州司法長官オフィスは,被害者一人ひ

とりに 100 ドル程度の被害回復をさせようとして,提訴した。最終的に和解。この件に関す

るクラスアクションでは,被害者1人当たり 25 ドルの補償額だった。

(事例2)大学の学資援助担当者と学生ローンを提供する金融機関に関する問題が摘発され,

全米各地で和解となった。NY 州司法長官オフィスは,金融機関に制裁金納付は求めなかった

が,基金への出資を求めた。基金は,被害学生の援助や学生教育に利用される。この事案で

は,被害学生人数を把握できなかったため,不正利益の吐き出し請求が採用された。

【メリーランド州の場合】(同上)

① 司法長官オフィスは,年間13,000件以上の苦情を消費者から受け付け,そのなかか

ら,問題の深刻なものを取り上げて,提訴する。法執行担当者は3人定員の弁護士。苦情を

聞き,調停などに筋道を付けるのは,70名程度のボランティア(退職した職員6名が指導

する)。

② 司法長官オフィスの目的は,消費者被害の回復(restitution)にあり,民事制裁金(penalty)

だけを賦課することは,ほとんどない。被害回復を第1に考えている。

③ 非常に悪質な事例では,まず刑事事件としての処理を検討する。例えば,病人や高齢者

に車椅子や医療機器製品の代金を請求しておきながら,製品を提供しなかった男は,刑事起

訴された。民事的対応として差止命令によって被害拡大を防いだ上で,刑事的に処理するこ

ともある。刑事捜査が開始されたからといって,民事提訴用の調査が中止されるわけではな

い。第1段階で民事的措置として利益返還や不正行為の中止を要求し,この命令に従わない

場合は刑事事件として起訴するという手続を取ることもある。

④ 和解について。差止命令(injunction)や被害回復(restitution)に関する話し合い交渉は,

比較的容易である。被害回復(restitution)に関する話合交渉も,比較的容易である。

⑤ 和解では,被害回復命令(restitution order)の一種類としての,製品リコールが行われ

ることもある。玩具や衣服に鉛が含まれていた事例では,製造者との和解によって製品が取

り替えられた。

⑥ 判決や和解による金員が支払われないケースは発生する。大企業の場合は通常,問題な

いが,中小の場合は,資産が少なく,回収は困難である。

⑦ 資産凍結は,裁判所の権限において行われる。緊急停止命令(temporary restraining order:

TRO)は,10 日間のみの一時的な停止命令であり,その 10 日間に裁判所の審理が行われ,

本案勝訴の見込みありと裁判所が判断すると,TRO は暫定的差止命令(preliminary injunction)

となり,事件が解決するまで資産は凍結される。このような手段は,提訴しようとしている

相手の資産が消失する可能性が高いと判断した場合に用いられる。頻繁に使用されるわけで

はない。

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(事例1)司法長官オフィスは,「アロエで癌を治せる」という広告を打っていた事業者につ

いて,不公正かつ欺瞞的取引にあたると判断し,召還令状(subpoena)に基づき,製品購入

者名,購入者数,購入金額,製品の宣伝方法,宣伝回数などについて情報を求めた。この事

例では,製品約 350 万ドル相当を州内の消費者に販売していた。消費者保護法(Consumer

Protection Act)に基づき,不法に得た利益 350 万ドル分を被害回復(restitution)に充てさせ

た。

(事例2)弁護士が,自分のクライアント多数から総額で約 300 万ドルを騙し取っていた事

例。被告が逮捕され刑務所に収容されたため,裁判所が被害回復命令や制裁金納付命令を行

ったにもかかわらず,回収できなかった例もある。

(事例3)あるリフォーム会社は,13 名の被害者に対し,総額 79,000 ドルの詐欺被害を及ぼ

し,廃業,自己破産した。リフォーム会社は全額返金の被害回復が命令された。資金を回収

できる状況ではなかったため,被害回復命令に加えて制裁金は求めなかった。

〔追補〕Restitution / disgorgement について

消費者被害の回復(consumer redress)とは,“restitution and disgorgement, collectively termed

“consumer redress” by the Commission”を指す 9。詐欺(fraud)の場合,すなわち被害者が詐欺的

仕組みに取り込まれ,特定可能であるのでrestitutionが機能しやすい。他方で,虚偽公告の場

合は事情が異なり,むしろdisgorgementのほうが適切であるとする指摘がある 10

そもそも,私法一般において,restitution は,「自らの非違行為によって受益することは許

されない(one should not gain by one’s own wrong)」ゆえ,「加害者(被告)が保持すべきでな

い利益」(unjust enrichment)を被害者に引き渡すべきであるとする様々な法理を総称する言葉

である。

また,restitution は,加害者が被害者から取得した財産を返還する(giving back)も意味する

し,加害者が独自に得た利得の引渡し=吐き出し(giving up)も意味する。したがって,日本法

でいう不当利得返還請求と同じ意味にもなりうるが,それに限定されない。Disgorgement

doctrine は,違反行為によって加害者に利得が生じる場合には,被害者の被害の範囲で補填し

たのでは正義に反することがあり,「原告の損失を限度としない吐き出し的救済」すなわち,

「不法収益をすべて被害者に引き渡せ」という考え方である。Restitution は,広義にはこれ

も含む概念である。

Restitution and disgorgement というように並列して用いるときは,両者をとくに区別しない

用語法のこともある。他方,FTC による 13(b)提訴の文脈で restitution and disgorgement とい

うように並列されるときは,前者が give back(日本法でいう不当利得返還であり restoration で

もある),後者が give up を意味するというように区分する意味で用いられることもある。

どういう要件が充足されれば,被害者に不法収益の吐き出しが認められるべきなのか,ま

9 Consumer Protection Handbook, at 46. 10 Consumer Protection Handbook, at 46.

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たその理論的根拠をどう説明すべきか(restitution を全体としてどう整理し,そこにどう

disgorgement を位置づけるか)は,なお明確ではない。

リステートメント:Restatement of the Law Third Restitution and Unjust Enrichment

§3 コメント b

b. Disgorgement. Where the defendant has acted in conscious disregard of the plaintiff’s rights,

the whole of any resulting gain is treated as unjust enrichment, even though the defendant’s

gain exceed both (i) the measurable injury to the plaintiff, and (ii) the reasonable value of a

license authorizing the defendant’s conduct.

(訳) 被告が,原告の権利を自覚的に踏みにじる場合には,たとえ,被告が得た利得が(i)

原告に発生した算定可能な損失を超えていても,また(ii)被告の行為を適法化するために

必要な合理的価格を超えていても,なお,被告が得た利得のすべては,不当な収益とみ

なされる。

契約法/不法行為法/restitution 法の関係は,きわめて錯綜している。契約違反に対する救済

として,当該事案の性質に鑑みて,契約法による救済ではなく,restitution 法による救済が適

切であるとして disgorgement を認める判決も出ている。これもまた,extraordinary な救済で

あるとされることと整合する。

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資料 41

差止命令制度について

○ 独占禁止法第 70条の 13に基づく緊急停止命令

・ 排除措置命令が出されるまでの仮の措置を命ずる裁判所の決定。裁判所は、緊

急の必要があると認める場合、公正取引委員会の申立てにより、同法に違反する

疑いのある行為をしている者に対し、当該行為等を一時停止すべきことを命じ、

又はその命令を取り消し、若しくは変更することができる。

・ 日本政府と GHQの交渉を経て制定された、独占禁止法(昭和 22年法律第 54号)

制定当初から設けられた規定である。(泉水文雄・西村暢史「原始独占禁止法の

制定過程と現行法への示唆」CPRC平成 20年度共同研究報告書(2008 年)39 頁)

・ 申立てに係る裁判手続は、非訟事件手続法による(独占禁止法 70条の 13第2

項が準用する同法第 70条の6第2項)。

○ 金融商品取引法第 192条に基づく禁止・停止命令

・ 裁判所は、緊急の必要性があり、かつ、公益及び投資者保護のため必要かつ適

当であると認めるときは、内閣総理大臣又は内閣総理大臣及び財務大臣の申立て

により、同法又は同法に基づく命令に違反する行為を行い、又は行おうとする者

に対し、その行為の禁止又は停止を命ずることができるとされている(商品先物

取引法 328条にも同様の規定がある。)。

・ 証券取引法(昭和 23年法律第 25号)制定当初から設けられた規定であり、ア

メリカの 1933年証券法(Securities Act of 1933)20 条(b)項の規定に倣ったも

のとされる。(神田秀樹=黒沼悦郎=松尾直彦編『金融商品取引法コンメンター

ル4』(商事法務、2011年)475頁)

・ 申立てに係る裁判手続は、非訟事件手続法による(金融商品取引法第 192条第

4項)。

○ 労働組合法第 27条の 20に基づく緊急命令

・ 不当労働行為事件について、使用者が都道府県労働委員会の救済命令等につい

て中央労働委員会に再審査の申立てをしないとき、または中央労働委員会が救済

命令等を発したときにおいて、使用者が取り消し訴訟を提起した場合、受訴裁判

所は、当該労働委員会の申立てにより、使用者に対し、判決の確定に至るまで救

済命令等の全部又は一部に従うべき旨を命じることができるとされている。

・ 旧労働組合法(昭和 20 年法律第 51 号)を全部改正した労働組合法(昭和 24

年法律第 174号)の制定時に設けられた。